JP2005505246A - 細胞死を調節する細胞障害性因子 - Google Patents
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Abstract
Description
(関連出願)
この出願は2001年2月15日に提出された米国仮出願番号60/269,133号の優先権を主張し、その全内容は完全に本願に引用して援用する。
【0002】
(政府の権利に関する記述)
この出願の対象は国立保健研究所(NIH)、ベセズダ、メリーランド、米国(助成金番号AI 16790-21、ES 04050-16、AI 45541、CA 09432及びN01-CM97567)からの研究助成金によって支援されている。政府は本発明の特定の権利を有する場合がある。
【0003】
(発明の分野)
本発明は、病原微生物によって分泌される細胞障害性因子及び細胞障害性因子の阻害剤及び壊死及びアポトーシスの両方によって細胞死を調節する際のそれらのその使用に関する。本発明は、又、アポトーシスを調節する際に有用な細胞障害性因子を生成、単離及び同定する方法、及び細胞死を調節する際に有用な実質的に純粋な細胞障害性因子を組み込む組成物に関する。本発明は、又、アポトーシスに関連した状態を治療する方法に関する。より詳細には、本発明は、癌細胞のアポトーシスを誘発する方法における実質的に純粋な細胞障害性因子の使用及び感染又はその他の病原体誘発性状態を治療する方法における細胞障害性因子の阻害剤の使用に関する。
【0004】
(背景)
感染症は多くの環境因子の産物であると思われる。任意の感染症の原因は原因となる病原体である。病原体は、典型的には病原微生物、例えば病原菌である。防衛機構を克服し、疾病を生じる病原微生物の程度及び能力は、その病原性に関連する。病原微生物は細胞障害性因子を発現することが知られ、病原体に、宿主免疫システムから自らを守らせ、身体から病原体を取り除くことから食細胞(例えば、マクロファージ及び肥満細胞)を防がせる。病原微生物が生き残る場合、微生物は宿主組織に侵入及び増殖でき、重篤な病徴を生じる。病原菌は、種々の衰弱又は死病、例えば結核、コレラ、百日咳、ペスト等の根本的原因として同定されている。そのような重篤の感染を治療するために、薬剤、例えば抗生物質を投与して、病原菌がもはや宿主免疫システムに対して自らを守ることができないように病原菌を殺し、細胞障害性因子を無力にする。しかしながら、病原菌は、一般に抗生物質耐性になり、そのような微生物による感染の蔓延を防止するために、改良剤が必要である。
【0005】
癌は潜在的に際限のない増殖の悪性腫瘍である。それは、主に人体で見られる種々のタイプの細胞の病原性の複製(正常な調節性コントロールの喪失)である。疾病の初期治療は、しばしば外科、放射線療法又は組み合わせであるが、しばしば局所的再発性及び転移性疾病である。特定の癌について化学療法が受け入れられているが、これらはまれに長期間の退行を誘発する。故にそれらは治療的ではない。一般に癌及びその転移は、多剤耐性の発生として知られる現象で、化学療法に対して抵抗性となる。多くの場合、癌は一部のクラスの化学療法薬に対して本質的に抵抗性である。さらに、そのような治療は非癌細胞を脅かし、人体にストレス性であり、多くの副作用を生じる。それ故、癌細胞の伝播を防止するために改良剤が必要である。患者が病原菌に感染した場合、多くの癌が退行することが知られている。しかしながら、細菌感染がどのようにしてヒトの癌の退行を生じるかについては、ほとんど知られていない。
【0006】
(要約)
本発明は、壊死又はアポトーシスによって細胞死を刺激する細胞障害性因子に関する。一の局面において、実質的に純粋な細胞障害性因子は特徴付けられ、単離される。実質的に純粋な細胞障害性因子は、病原微生物にさらされた増殖培地のカラムクロマトグラフィーのフラクションによって得られる。好ましくは、前記細胞障害性因子の生成及び分泌は、哺乳類のタンパク質の存在下で病原体の増殖中に刺激される。
【0007】
本発明の別の局面において、病原微生物と非病原微生物との境界を確定する手段として哺乳類のタンパク質の受容体の同定は、疾病治療の改良された特異性をもたらす。
【0008】
本発明のさらに別の局面は、必要に応じて医薬担体に組み込んだ細胞障害性因子、細胞障害性因子の阻害剤、又はその変異体若しくは誘導体を投与する工程を含む、細胞死抵抗性又は感受性に関する状態を治療する方法に関する。
【0009】
細胞障害性因子、又はその変異体若しくは誘導体は、異常細胞増殖に関連した状態の予防及び治療で用いる医薬組成物に組み込んでもよい。例えば、細胞障害性因子は癌を治療するために使用できる。
【0010】
細胞障害性因子の阻害剤、又はその変異体若しくは誘導体は、食細胞死を防止し、それによって宿主免疫システムに浸潤する病原体と戦わせて細菌感染を治療するために使用できる。
【0011】
本発明の別の実施態様において、細胞障害性因子、同様にその分泌機構の成分は、病原菌に対するワクチンの候補として使用できる。
【0012】
また、本発明は細胞障害性因子の分泌を制御する工程を含む細胞死を調節する方法に関する。好ましい実施態様において、細胞障害性因子は多くのヒトの癌細胞に対する抗癌剤として使用できる。さらに、細胞障害性因子は阻害剤のスクリーニング又は合理的な設計による薬剤開発の標的として使用できる。
【0013】
本発明のこれら及びその他の局面、利点、及び特徴は、好ましい実施態様についての添付図面及び詳細な説明から明らかになるであろう。
【0014】
(好ましい実施態様の詳細な説明)
(定義)
本明細書に記載した目的で、用語“細胞障害性因子”は病原微生物によって分泌される因子を意味し、それは壊死又はアポトーシスによって細胞死を刺激する。用語“ATP-依存性”は、用語“細胞障害性因子”を修飾するために使用される場合、アデノシン5'-三リン酸塩(ATP)の存在下で細胞死を誘発するために作用する細胞障害性因子を意味する。用語“ATP-非依存性は、用語“細胞障害性因子”を修飾するために使用される場合、ATPの非存在下で細胞死を誘発するために作用する細胞障害性因子を意味する。
【0015】
本明細書に記載した目的で、用語“治療”には、治療される状態又は症状の進行又は重症度の防止、低下、停止、又は反転が含まれる。従って、用語“治療”には、必要に応じて医療、治療、及び/又は予防行為が含まれる。
【0016】
本明細書で使用されるように、用語“細胞死に対する抵抗性に関する状態”は、適切な熟練した内科医又は臨床医によって決定される種類のような健康な細胞と比較した場合に、少なくとも細胞寿命を長くする傾向を特徴とする疾病、状態、又は病気を意味する。本明細書で使用されるように、用語“細胞死感受性に関する状態”は、適切な熟練した内科医又は臨床医によって決定される種類のような健康な細胞と比較した場合に、少なくとも細胞死を早める傾向を特徴とする疾病、状態、又は病気を意味する。
【0017】
用語“実質的に純粋”は、用語“細胞障害性因子”又は“病原性因子”を修飾するために使用される場合、本明細書で使用されるように、活性阻害化合物を実質的に含まない形態又は活性阻害化合物による混ぜもののない形態の分泌された増殖培地から単離される因子を意味する。用語“実質的に純粋”は、分離フラクションの少なくとも約75重量%の量の因子、又は少なくとも“75%の実質的に純粋”を意味する。より好ましくは、用語“実質的に純粋”は、少なくとも約85重量%の化合物、活性化合物、又は少なくとも“95%の実質的に純粋”を意味する。実質的に純粋な細胞障害性因子又は病原性因子は、1種以上のその他の実質的に純粋な化合物又は分離細胞障害性因子と組み合わせて使用することができる。
【0018】
本明細書で使用されるように、用語“その変異体又は誘導体”とは、化合物又は物質をコードする遺伝子の化学修飾又はマニピュレーションによって得られる化合物又は物質を意味する。細胞障害性因子の変異体又は誘導体を参照する場合、この変異体又は誘導体は細胞障害性因子の化学修飾、又はこのような細胞障害性因子をコードする遺伝子のマニピュレーションによって、例えば細胞障害性因子の基本組成又は特性を変えるがその毒性を変えないことによって得ることができる。同様に、細胞障害性因子の阻害剤の誘導体には、この阻害剤の化学構造に対する化学修飾又はこの阻害剤をコードする遺伝子のマニピュレーションが含まれる。例えば、抗菌性ペニシリンを化学修飾して、ペニシリン自身よりも高い効力を有し、又はより広いスペクトルを有する誘導体が得られる。
【0019】
“治療上有効な量”は、治療される対象の発生の防止、又は存在する症状を軽減するのに有効な量である。治療上有効な量の決定は、当業者の能力の十分範囲内である。
【0020】
(一般)
本発明は、病原微生物によって分泌され、壊死又はアポトーシスによって細胞死を刺激する細胞障害性(病原性)因子を与える。病原微生物がヒト又は動物組織に侵入する場合、食細胞は宿主免疫システムにおける防御の第一線である。典型的には、食細胞は身体に侵入する外来性病原体を見つけ出し、破壊する。しかしながら、細菌病原体によって分泌される細胞障害性因子は食細胞の細胞死を刺激することができる。従って、食細胞はその防御免疫機能を遂行できないように妨げられる。
【0021】
本発明者らは、多くの病原菌がATP-依存性細胞障害性因子(壊死によって食細胞の細胞死を引き起こす)、例えばATP-利用酵素を分泌することを以前報告した[Zaborina O.ら、Infect. Immun. 67: 5231-5242 (1999); Melnikov A.ら、Mol. Microbiol. 36: 1481-1493 (2000);及びPunjら、Infect. Immun. 68: 4930-4937 (2000)]。ATP-利用酵素は、ATP,アデノシン5'-二リン酸(ADP)、アデノシン5'-一リン酸(AMP)、又はアデノシンのような種々のエネルギー関連ヌクレオチド誘導体に作用し、プリン受容体の活性化によりマクロファージ及び肥満細胞のような食細胞の死を調節できる種々の生成物にそれらを変換する。
【0022】
本発明の一の局面は、ATP-非依存性細胞障害性因子、例えばレドックスタンパク質が病原微生物の一部の種によって分泌され、このような因子がアポトーシスによって食細胞の細胞死を引き起こす発見に関する[Zaborina O.ら、Microbiology 146: 2521-2530 (2000)を参照のこと]。
【0023】
本発明の別の局面は、ATP-非依存性細胞障害性因子が癌細胞のアポトーシスを誘発するという意外な発見に関する。本来なら、癌細胞はアポトーシスの死に対して感受性がない。哺乳類細胞のアポトーシスはp53タンパク質の存在を必要とすることが知られている。しかしながら、ヒトの癌の50%において、p53癌抑制タンパク質をコードする遺伝子の不活性化変異が存在する。また、p53は哺乳類細胞のレドックスタンパク質の発現を調節することが知られているが、哺乳類のレドックスタンパク質は癌細胞アポトーシスに直接関係しない。癌細胞におけるアポトーシスの誘発又は示される腫瘍サイズの減少において、微生物のATP-非依存性細胞障害性因子の役割も有さない。従って、このような細胞障害性因子は、細胞死に対する抵抗性に関連した状態を治療するために使用できる。このような状態としては、例えばヒトメラノーマ、白血病、乳癌、卵巣癌、肺癌、間葉癌、大腸癌及びアエロ消化管(aerodigestive tract)癌(例えば胃、食道、咽頭及び口部癌)を挙げることができる。
【0024】
本発明の別の局面は病原微生物によって分泌される細胞障害性因子の同定及び特徴付けの方法に関する。このような方法は細胞死の適切な阻害剤又は刺激物質を発見する手段を提供できる。阻害剤及び刺激物質は医薬品として開発され、細胞死に対する抵抗性又は感受性を特徴とする状態を治療するために使用できる。
【0025】
本発明の別の局面は、特徴付け及び単離される細胞障害性因子及びこのような細胞障害性因子の阻害剤に関する。細胞障害性因子は、本発明の方法に従って活性化又は不活性化されて細胞死に関連する状態の防止又は治療できる。細胞障害性因子の阻害剤を使用して細胞死感受性に関する状態を治療できる。
【0026】
(細胞障害性因子の分泌)
本発明の一の局面において、本発明の細胞障害性因子は、細菌及び原生動物を含む多くの異なる病原微生物によって分泌される。細胞障害生因子を与えるのに適した病原菌の例としては、これに限定されないが、緑膿菌、セパシア菌(Burkholderia cepacia)、コレラ菌、及びウシ結核菌が挙げられる。さらに、細胞障害性因子はレーシュマニア(Leishmania amazonensis)及びマレー糸状虫(Brugia malayi)のような病原体によって分泌される。
【0027】
緑膿菌(日和見病原体)、セパシア菌(嚢胞性線維症及び慢性肉芽腫症に苦しむ患者において致死性感染症の原因となる)、コレラ菌(コレラの原因となる腸内病原体)及び結核の原因となるヒト結核菌又はウシ結核菌のようなマイコバクテリアの病原性群のゆっくりとした成長は、ATP-利用酵素を分泌することがわかっている。
【0028】
ATP-利用酵素の分泌に加えて、本発明者らは、緑膿菌がATP-非依存性細胞障害性因子を分泌することを見出だした。これらは2つのレドックスタンパク質、アズリン及びシトクロムc551として同定された。また、セパシア菌もレドックスタンパク質を分泌していることがわかった。また、ウシ結核菌も食細胞に関して高いATP-非依存性細胞障害性を有する細胞障害性因子を分泌することがわかった。
【0029】
(哺乳類のタンパク質の存在下で細胞障害性因子の分泌の刺激)
本発明の別の局面において、細胞障害性因子の生成及び分泌は、哺乳類のタンパク質の存在下で病原微生物の増殖中に刺激される。例えば、緑膿菌、ウシ結核菌及びセパシア菌のような病原微生物による細胞障害性因子の分泌は、κ-カゼイン、ウシ血清アルブミン、オボアルブミン又はα2-マクログロブリンのような哺乳類のタンパク質の存在によって刺激される。病原微生物が哺乳類の宿主環境の指標として特定の哺乳類のタンパク質の存在を感知し、それにより宿主の防御に対抗し、それを打ち破るために細胞障害剤の分泌機構が開始することが示唆されるが、本明細書においてはそれに頼らない。
【0030】
本発明者らは、セパシア菌のいくつかの臨床(病原性)単離物がアデニル酸キナーゼ又は5'-ヌクレオチダーゼのようなATP-利用酵素を多量に分泌し、いくつかの環境(非病原性)単離物が少量のこれらの酵素のみを分泌することを決定した。セパシア菌株38のような臨床単離物において、細胞障害性因子の分泌のレベルは、増殖培地におけるα2-マクログロブリンの存在下で大いに高められる。臨床単離物由来の分泌生成物は、マクロファージ及び肥満細胞に関して環境単離物由来のものよりも高いレベルの細胞障害性を有する。α2-マクログロブリンの存在下で細胞障害性因子の高められた分泌を示す臨床単離物は、またその表面でα2-マクログロブリンの受容体の存在を示す。
【0031】
本発明の好ましい実施態様において、ATP-非依存性細胞障害性因子の生成及び分泌は、哺乳類のタンパク質の存在下で病原体の増殖の際に刺激される。
【0032】
従って、細胞障害性因子の分泌の増加は、哺乳類のタンパク質を含む増殖培地における病原体を増殖することによって得ることができる。適した増殖培地は、例えばLブロス、栄養素ブロス、トリプティカーゼソイブロス(Trypticase soy broth)及びトリプトン酵母抽出物ブロス(ディフコラボラトリーズ、メリーランド、米国)である。典型的には、約500〜1,000mlの無菌オートクレーブ増殖培地は約104〜106細胞/mlで接種される。次いで、接種した培地は、通常回転式振盪培養機で、30〜37℃で微生物を増殖させるのに適した状態でインキュベートされる。増殖培地の分泌、インキュベーション条件、及び細菌及びその他の微生物の増殖をうまく行うためのその他の因子は、当業者にとって明らかである。本発明者らは、増殖培地における細胞障害性因子の最大濃度が指数増殖フェーズの後期及び定常増殖フェーズの初期に生じることを観測した。
【0033】
本発明の別の実施態様において、哺乳類のタンパク質の受容体の同定は、微生物の病原性株と非病原性株との境界を確定する手段を提供する。例えば、環境単離物ではなく、臨床単離物において、主としてα2-マクログロブリンの受容体の存在は、宿主の防御に対抗する手段として細胞障害剤を分泌する前者の能力と相関するだけでなく、臨床、病原性株と環境、非病原性株との境界を確定する。従って、微生物の病原性株は同定され、次いでそれらの抗生物質感受性又はその他の臨床目的について試験される。
【0034】
(ATP-非依存性細胞障害性因子の精製)
本発明の別の局面において、実質的に純粋なATP-非依存性細胞障害性因子は、分泌する微生物の増殖培地のカラムクロマトグラフィー分別により得られる。好ましくは、細菌細胞は分別前に増殖培地から取り除かれる。これは増殖培地の初期遠心分離及び続く濾過により達成することができる。適したフィルターは、典型的には約0.5μm以下の細孔サイズであり、好ましくは約0.2μm以下である。しかしながら、病原体除去の他の方法は当業者によく知られている。
【0035】
分別されていない増殖培地は、高いATP-非依存性細胞障害活性を有さず、従ってカラムクロマトグラフィー分別はアポトーシス誘導活性を高めるために必要である。分別はATP-依存性細胞障害性因子を除去する。本明細書はこれに頼るわけではないが、分別は、また分別されていない増殖培地に存在するかもしれないATP-非依存性細胞障害性因子の阻害剤も除去することも示唆される。
【0036】
細胞障害性因子の精製に有用であるクロマトグラフィー方法は、当業者によく知られている。これらとしては、例えばイオン交換クロマトグラフィー、ヒドロキシアパタイトクロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー、及びゲル濾過クロマトグラフィーが挙げられる。細菌増殖培地の分別に有用なクロマトグラフィーカラムとしては、例えば:アマシャムファルマシアバイオテックAB、ウプサラ、スウェーデン又はバイオラドラボラトリーズ、ハーキュリーズ、カリフォルニア、米国から入手できるヒドロキシアパタイト;Superdex 75又は200;Superose 6又は12;Sephacryl S;Sephadex G又はSephadex LH;Mono Q又はMono S;Q-Sepharose;DEAE Sepharose又はCM Sepharose;Sepharose XL;ATP-Sepharose;Hi Trap Blue;Blue Sepharose;DNA Cellulose又はSepharose 2B、4B又は6Bが挙げられる。
【0037】
好ましくは、ATP-利用酵素は、ヒドロキシアパタイト及びATP-アガロースカラムの貫流する又は抽出したフラクションとしてカラムクロマトグラフィー分別により単離される。このような分別の際、ATPアーゼ又はアデニル酸キナーゼのようなATP-利用酵素はカラムに吸着され、除去され、又はさらに精製される(例えば、Markaryanら、J. Bacteriol., 183, pp 3345-3352, 2001を参照のこと)。
【0038】
本発明の好ましい実施態様において、ATP-非依存性細胞障害性因子は、Q-セファロースカラム(QSFT)の貫流フラクションとして単離される。Q-セファロースは四級アンモニウム強陰イオン交換体である。このようなカラムはアマシャムファルマシアバイオテックAB、ウプサラ、スウェーデンから得られる。上澄み(SUP)又はヒドロキシアパタイトカラム貫流フラクション(HAFT)又はATP-アガロースカラム貫流フラクション(AAFT)のようなその他のカラムフラクションは、高いATP-非依存性細胞障害性を通常は示さない。
【0039】
(ATP-非依存性細胞障害性因子の特徴)
本発明のさらなる局面において、分別した増殖培地はATP-非依存性細胞障害性因子の存在を決定するために試験される。細胞死の程度は、Zaborinaら、Infection and Immunity, 67, 5231-5242 (1999)及びZaborinaら、Microbiology, 146, 2521-2530 (2000)に記載されるように細胞内酵素乳酸デヒドロゲナーゼ(LDH)の放出によって測定することができる。
【0040】
アポトーシスを誘導するATP-非依存性細胞障害性因子の能力は、MITOSENSOR(登録商標)APOLERT(登録商標)Mitochondrial膜センサーキット(クローンテックラボラトリーズ社、パロアルト、カリフォルニア、米国)を用いるmitosensor ApoAlert共焦点顕微鏡によって観測できる。このアッセイにおいて、健康な非アポトーシスの細胞は赤色の蛍光を発し、アポトーシス死細胞は緑色の蛍光を発する。赤色及び緑色の組み合わせは、アポトーシス死細胞を示す黄色い蛍光を発する細胞を生じる(Zaborinaら、Microbiology, 146, 2521-2530 (2000)を参照のこと)。
【0041】
アポトーシスは、アスパラギン酸残基で切断するシステインプロテアーゼであるカスパーゼとして知られる酵素のカスケードの活性により媒介される。従って、アポトーシスは、また2つの重要なカスパーゼ活性、すなわちカスパーゼ9及びカスパーゼ-3(これらは、Zouら、J. Biol. Chem., 274: 11549-11556 (1999)に記載される方法を用いて、アポトーシスの際にサイトゾルタンパク質α-1によってミトコンドリアから放出されるシトクロムcのオリゴマー形成により活性化されることが知られている)を測定することによって決定できる。
【0042】
さらに、アポトーシスは、APOLERT DNA断片化キット(クローンテックラボラトリーズ社、パロアルト、カリフォルニア、米国)を用いて、アポトーシス誘導核DNA断片化を検出することによって観測できる。このアッセイは、末端デオキシヌクレオチジルトランスフェラーゼ(Tdt)-媒介dUTPニック末端標識(TUNEL)に基づき、Tdtは、アポトーシスを起こす細胞において断片化DNAの遊離3'-ヒドロキシル末端でフルオレセイン-dUTPの組み込みを触媒する。断片化核DNAにおけるフルオレセイン-dUTPの組み込みは共焦点顕微鏡によって検出される緑色蛍光を発する。
【0043】
本発明の好ましい実施態様において、分別した増殖培地は、アポトーシスを誘導するこのようなフラクションの能力を決定するために試験される。このような方法は、ATP-非依存性細胞障害性因子の同定及び特徴付けに有用である。
【0044】
(ATP-非依存性細胞障害性因子の同定)
別の局面において、本発明は、ATP-非依存性アポトーシス誘発細胞障害性を示すことを特徴とする細胞障害性因子を提供する。本発明者らは、緑膿菌及びセパシア菌のQSETフラクションにより2つのタンパク質、アズリン及びシトクロムc551が富化されることを見出した。これらの2つのタンパク質の同定は、SDS-PAGEにおけるその分離及びそれらのN-末端アミノ酸配列の同定に基づく。その一方、ウシ結核菌のQSFTフラクションのSDS-PAGE分析は、ウシ結核菌を増殖するために使用される7H9培地の成分である濃い65kDaバンドのウシ血清アルブミン(BSA)を示し、同様に45kDaよりも大きい分子質量のいくつかのバンドを示すが、シトクロムc551又はアズリンの特徴的なバンドではない(実施例9を参照のこと)。
【0045】
アズリン及び/又はシトクロムc551及びQSFTフラクションは、食細胞に関するアポトーシス誘発細胞障害性を示す。精製したアズリン/シトクロムc551混合物、又は抗-アズリン及び抗-シトクロムc551抗体の混合物で処置したセパシア菌のQSFTフラクションは、マクロファージ細胞障害性の大きな減少を示す。その一方、ウシ結核菌のQSFTフラクションは、抗-アズリン/抗-シトクロムc551抗体で予め処置した場合、細胞障害性の非常にわずかな減少を示し、ウシ結核菌のQSFTフラクションがアズリン又はシトクロムc551以外の細胞障害性因子を含んでいることを証明する。このように、異なる病原体は、異なるアポトーシス誘発細胞障害因子を分泌し、そのすべては抗感染薬の開発の優れたターゲットであろう。
【0046】
(ATP-非依存性細胞障害性因子による癌細胞のアポトーシスの誘導)
本発明は、癌細胞のアポトーシス細胞死を誘発するためのATP-非依存性細胞障害性因子の使用方法を提供する。アズリン及びシトクロムC551のようなATP-非依存性細胞障害性因子は、細胞死の異常不全に関連する状態を治療するために使用できる。癌細胞がアポトーシスを受けないことはよく知られている。本発明の一の局面に従って、癌細胞のアポトーシスを誘発するのに十分な量の細胞障害性因子の分泌を刺激する細胞障害性因子又は活性剤を投与することは、インビボで腫瘍サイズを小さくし、腫瘍の増殖を抑える際に役立つであろう。例えば、アズリン及びシトクロムC551を公知の抗メラノーマ制癌剤[5-(3,3'-N,N'-ジメチルトリアゼン-1-イル)-イミダゾール-4-カルボキシアミド](DTIC)と比較した検査は、アズリン及びシトクロムC551の混合物がヌードマウスにおけるインビボの腫瘍退行を促進する強力な無毒性組成物を提供することを示す。
【0047】
(感染症の治療における細胞障害性因子の使用)
本発明の別の局面において、細胞障害性因子の特徴は、例えば感染症の細胞死を阻害する新しい物質を同定するのに有用である。例えば、ATP-利用細胞障害性因子の分泌又は活性の阻害、又はATPの産生は、病原体によって細胞障害性活性を低下させ、又は除去できる。
【0048】
従って、細胞障害性因子の分泌又は活性を阻害する化合物を適切に投与することは、抗感染薬開発に有用なツールを提供する。細胞障害性因子等の細胞死の活性を阻害するのに有用な活性剤の例として、細胞障害性因子の抗体、同様にATP-利用酵素の活性化を妨げるATPの類縁物質を挙げることができる。細胞障害性因子の分泌又は発現を阻害又は刺激する細胞障害性因子及び活性剤の例としては、これに限定されないが、ATP-利用酵素、レドックスタンパク質、ATP産生の活性剤、ATP産生の阻害剤、レドックスタンパク質の活性剤、及びレドックスタンパク質の阻害剤が挙げられる。
【0049】
(細胞障害性因子を含む医薬組成物の投与)
細胞障害性因子を含む医薬組成物は、任意の従来の方法、例えば従来の混合、溶解、粒状化、糖衣錠形成、乳化、カプセル化、取りこみ(entrapping)、又は凍結乾燥プロセスで製造できる。実質的に純粋な細胞障害性因子又はその他の薬剤は、当該技術においてよく知られる医薬的に許容される担体と容易に組み合わせることができる。このような担体は、製剤が錠剤、ピル、糖衣錠、カプセル、液体、ゲル、シロップ、スラリー、懸濁液等として処方されることを可能にする。また、適切な賦形剤も、例えばフィラー及びセルロース製剤を含むことができる。その他の賦形剤として、例えば香料添加剤、着色剤、粘着除去剤(detackifiers)、増粘剤、及びその他の許容される添加剤、アジュバント、又は結合剤を挙げることができる。
【0050】
本発明の組成物は、細胞死に関連する状態の治療又はその予防に使用できる。実質的に純粋な細胞障害性因子は、例えばワクチンとして、宿主免疫システムの正常な応答及び宿主生物体の分泌機構を刺激するのに十分な量で投与できる。典型的には、宿主生物体はヒト又は動物のような哺乳類である。
【0051】
この組成物は、適した経路、例えば経口、口腔、吸入、舌下、直腸、膣、経尿道、経鼻、局所的、経皮的(percutaneous)、すなわち経皮的(transdermal)又は非経口的(parenteral)(静脈内、筋肉内、皮下及び冠内等)投与により投与できる。この組成物及びその医薬製剤は、その使用目的を達成するのに十分な任意の量で投与することができる。より詳細には、この組成物は治療上有効な量で投与される。
【0052】
正確な処方、投与の経路、及び服用量は患者の状態を見て主治医により決定される。服用量及び間隔は、治療効果を維持するのに十分である活性な細胞障害性因子の血漿レベルを与えるために、個別に調整される。一般に、所望の細胞障害性因子は、意図される投与の経路及び標準薬務に関して、選択される医薬担体との混合物で投与される。本発明で使用される医薬組成物は、細胞障害性因子の分泌を阻害又は刺激するために細胞障害性因子、活性剤、又は治療上使用できる製剤中のその混合物の処理を促進する賦形剤及び助剤を含む1種以上の生理学的に許容される担体を用いる従来の方法で処方できる。
【0053】
(細胞障害性因子の分泌の刺激及び阻害)
また、細胞障害性因子の同定及び特徴付けは、細胞障害性因子の分泌の刺激方法の開発をもたらし得る。病原体は、哺乳類のタンパク質の存在下で多量の細胞障害性因子を分泌することを示した。この原理は人体において修正されて、所望の細胞障害性因子の産生を刺激し、望まれていない細胞障害性因子の産生を阻害する新しい方法を提供する。このような方法は細胞のアポトーシスを阻害又は刺激するのに有用である。細胞障害性因子の理解、及びその特徴付け及び開発は、また細胞障害性因子の活性又は分泌を調節するのに適した活性剤又は化合物の薬剤開発及びスクリーニングを可能にする。細胞における細胞障害性因子の分泌に関連する分泌機構の理解は、細胞障害性因子の有用な阻害剤又は刺激剤の設計を開発及び同定する新しい道をさらに提供する。哺乳類のタンパク質の受容体の存在の有無及び同定は、また病原微生物と非病原微生物とを区別する手段として使用でき、疾病の治療に特異性を与えることができる。分泌機構の成分、及び細胞障害性因子自体は、ワクチンとして使用できる。
【0054】
(細胞障害性因子の修飾)
細胞障害性因子は、また化学的に修飾され、又は遺伝学的に変更されて、ATP-利用酵素又はレドックス活性を欠いているが毒性を維持する変異体を産生することができる。遺伝子の変異及び/又は切断は、組成物を変化させ、また機能活性を示す細胞障害性剤を産生することができる。特に、高い効力及び低い抗原性を有する切断された誘導体は、元の細胞障害性因子から産生できる。このような修正又は変更された細胞障害性因子、及びこのような細胞障害性剤は、また本発明の範囲に包含される。
【0055】
本発明のより完全な理解は、以下の特定の実施例を参照することによって得ることができる。この実施例は説明の目的でのみ記載され、本発明の範囲を限定することを意図しない。状況が手段を示唆又は与えるため、均等の形態の変化及び置換は考慮される。特定用語は本明細書において使用されるが、このような用語は記述的な意味において意図され、制限することを目的としない。上記の本発明の修正及び多様性はその意図及び範囲から離れることなしに行われ、従って特許請求の範囲によって示されたこのような限定のみが課されるべきである。
【0056】
(実施例)
(実施例1.哺乳類のタンパク質による細胞障害性因子の分泌の刺激)
α2-マクログロブリン(1mg/ml)を加えて、及び加えないでプロテオースペプトン-酵母抽出物(PPY)ブロス中で、セパシア菌の臨床及び環境単離物(それぞれ5個)を増殖した。34℃で10時間、振盪機で増殖した後、各培養物由来の増殖培地の一部を遠心分離し、その上澄みを0.22μmのミリポアフィルターにより濾過し、全細胞及び細片を除去した。次いで濾過した上澄みを、Melnikov A.ら、Mol. Microbiol.m 36: 1481-1493 (2000)に記載されるアデニル酸キナーゼ活性について試験した。アデニル酸キナーゼは、末端ホスフェートを[γ-32P]ATPからADPを生み出すAMPに移動させる。次いで、この反応生成物を薄層クロマトグラフィーにより検出した。アデニル酸キナーゼの分泌は、セパシア菌細胞がPPYブロスで増殖される場合に最小となった。しかしながら、臨床単離物からの分泌は(環境単離物についてはないが)、α2-マクログロブリンの存在下で刺激された。
【0057】
抗-α2-マクログロブリン抗体による免疫蛍光顕微鏡法は、臨床単離物がα2-マクログロブリンと結合した受容体を有し、環境単離物がこのような受容体を欠いていることを示した。セパシア菌の臨床及び環境単離物を1mg/mlのα2-マクログロブリンの非存在下又は存在下、PPYブロス中1時間増殖した。外来性α2-マクログロブリンをリン酸緩衝生理食塩水で洗浄することによって除去した。細胞をフルオレセインイソチオシアネート(FITC)-複合α2-マクログロブリン抗体と共に2時間インキュベートし、ラビットにα2-マクログロブリンを注入することによって得た。リン酸緩衝生理食塩水で洗浄した後、細胞を処置したFITC複合抗体を16%パラホルムアルデヒドに固定し、ポリ-L-リジン被覆スライドに被覆し、共焦点顕微鏡で調べた。示した臨床単離物のみが蛍光を発したα2-マクログロブリン(緑色蛍光細胞)の存在下で細胞障害性因子の分泌を高め、α2-マクログロブリンの受容体の存在を示した。
【0058】
(実施例2.セパシア菌増殖培地由来の濾過した上澄み又はカラムクロマトグラフィーフラクションにより死滅するATP-依存性マクロファージ)
セパシア菌の臨床株(菌株38-収集番号95828、D.G. Allison、マンチェスター科学技術大学、マンチェスター、イギリス)を34℃でTBブロス(水1リットル当たり10gのバクト(Bacto)トリプトン、3gのバクト(Bacto)牛肉エキス)中振盪機で1.3のOD550nmに増殖した。次いで、増殖培地遠心分離し、この上澄みを0.22μmのミリポアフィルターにより濾過して全細胞及び細片を除去した。マクロファージ細胞をJ774細胞株から単離し、Zaborina O.ら、Infect. Immun. 67: 5231-5241 (1999)に記載されるようにRPMI培地1640(GIBRO-BRL、グランドアイランド、ニューヨーク)中で増殖した。濾過した増殖培地をヒドロキシアパタイトカラム、ATP-アガロースカラム、及びQ-セファロースカラムに順に加えた。ヒドロキシアパタイトカラム(HAFT)を貫流したフラクションをATP-アガロースカラム(AAFT)で分別した。次いで、AAFTフラクションをQ-セファロースカラム(QSFT)で分別した。
【0059】
106のマクロファージを96ウエルプレートのウエルに加え、2時間付属のCO2インキュベーター中でインキュベートした。上記カラムのそれぞれからの上澄み又は貫流フラクションからの2μgのタンパク質を、1.0mMのATPの存在下又は非存在下で4時間インキュベートした細胞及びプレートに加えた。次いで、マクロファージ細胞死の程度をZaborina O.ら、Infect. Immun. 67: 5231-5241 (1999)に記載されるように細胞内酵素乳酸デヒドロゲナーゼ(LDH)の放出により測定した。1.0mMのATPの存在下及び非存在下で、濾過した上澄み(SUP)及びHAFT、AAFT及びQSFTカラムフラクションにより死滅するマクロファージの程度を図1に示す。すべてのアッセイは3通り行い、エラーバーが示される。
【0060】
(実施例3.セパシア菌増殖培地由来の濾過した上澄み又はカラムクロマトグラフィーフラクションにより死滅するATP-非依存性マクロファージ)
セパシア菌増殖培地の上澄み(SUP)及びカラムクロマトグラフィーフラクション(HAFT、AAFT及びQSFT)は実施例2と同様にした。マクロファージ単離物は実施例2と同様にした。マクロファージの細胞死の程度は、実施例2と同様にLDHの放出によって決定し、それを図2に示す。QSFTフラクションのみがマクロファージに関して高いATP-非依存性細胞障害性を示す。
【0061】
(実施例4.緑膿菌の細胞障害性因子によるマクロファージのアポトーシスの誘導)
緑膿菌をLブロス中12時間37℃で1.2のOD550nmに増殖した。次いで、増殖培地を遠心分離し、この上澄みを0.22μmのフィルターにより濾過した。上澄み(SUP)及びカラムクロマトグラフィーフラクション(HAFT、AAFT及びQSFT)を実施例2と同様に収集した。マクロファージ単離物を実施例2と同様にした。上澄み又は貫流フラクションの1つからの2μgのタンパク質を200μlのRPMI培地中1×105のマクロファージに加え、この混合物を一晩インキュベートした。SUP又はHAFT、AAFT又はQSFTフラクションと共に一晩インキュベーションすることにより処置された又は処置されないマクロファージにおけるアポトーシスの誘導を、Zaborina O.ら、Microbiology 146: 2521-2530 (2000)に記載されるようにApoAlertミトコンドリア膜センサーキット(クローンテックラボラトリーズ社、パロアルト、カリフォルニア、米国)を用いて共焦点顕微鏡法により測定した。
【0062】
このアッセイにおいて、健康な非アポトーシス細胞は赤色の蛍光を発し、アポトーシス死細胞は緑色の蛍光を発する。赤色及び緑色の組み合わせは黄色の蛍光を発する細胞を生じ、アポトーシス死が進行している細胞を示す。非処置マクロファージ又はSUP、HAFT又はAAFTフラクションにより一晩処置されたマクロファージは主に赤色の蛍光を発し、アポトーシス細胞死の欠如を示す。QSFTフラクションにより一晩処置されたマクロファージはほとんど緑色の蛍光を発し、ほとんどのマクロファージのアポトーシス死を示す。時間経過の研究は、アポトーシスが約6時間で起こり(黄色の細胞を生成する赤色及び緑色蛍光の組み合わせによって示される)、12〜16時間で完了した。
【0063】
(実施例5.セパシア菌の細胞障害性因子による肥満細胞におけるアポトーシスの誘導)
肥満細胞を、Melnikov A.ら、Mol. Microviol. 36: 1481-1493 (2000)に記載される方法により単離した。セパシア菌のフラクション増殖培地を実施例2と同様に調製した。セパシア菌細胞障害性因子による肥満細胞におけるアポトーシスの誘導を、実施例4に記載されるように、共焦点顕微鏡法を用いて決定した。
【0064】
非処置の肥満細胞又はセパシア菌増殖培地のSUP、HAFT又はAAFTフラクションにより一晩処置された肥満細胞は主に赤色の蛍光を発し、アポトーシス細胞死の欠如を示した。セパシア菌のQSFTフラクションにより一晩処置された肥満細胞はほとんど緑色の蛍光を発し、ほとんどの肥満細胞のアポトーシス死を示した。
【0065】
(実施例6.セパシア菌及びウシ結核菌のQSFTフラクションによるマクロファージにおけるアポトーシスの誘導)
マクロファージ単離物を実施例2と同様にした。セパシア菌及びウシ結核菌の細胞障害性因子によるマクロファージにおけるアポトーシスの誘導を、実施例4の方法を用いて決定した。マクロファージのアポトーシスの誘導は、それらがセパシア菌及びウシ結核菌のQSFTフラクションにより処置された場合に観測された。
【0066】
(実施例7.セパシア菌のQSFTフラクションにより処置されたマクロファージのサイトゾル抽出物におけるカスパーゼ活性(カスパーゼ-3及びカスパーゼ-9)の測定)
マクロファージの単離を実施例2と同様にした。マクロファージを、実施例2に記載される方法を用いてセパシア菌のQSFTフラクションにより一晩処置する。マクロファージサイトゾル抽出物の調製及びカスパーゼアッセイは、Zaborina O.ら、Microbiology 146: 2521-2530 (2000)に記載される通りであった。
【0067】
簡単に述べると、カスパーゼ-3活性の決定は、基質としてAc-DEVD-pNA(N-アセチル-Asp-Glu-Val-Asp-p-NO2-アニリン)を用いて行った。非処置のマクロファージサイトゾル抽出物、セパシア菌のQSFTフラクション(10μgのタンパク質)により一晩インキュベートしたマクロファージのサイトゾル抽出物、及びセパシア菌のQSFTフラクション(10μgのタンパク質)により一晩インキュベートされ、阻害剤(DEVD-CHO)を加えたマクロファージのサイトゾル抽出物により37℃で15、30、45、60、75及び90分間のインキュベーション後(図3A)、pNA(p-ニトロアニリン)の放出をカスパーゼ-3基質(200μm)からの405nmでの分光光度法で決定した。10μgのマクロファージサイトゾルタンパク質をそれぞれの場合に用いた。
【0068】
カスパーゼ-9アッセイにおいて、非処置のマクロファージサイトゾル抽出物、セパシア菌のQSFTフラクション(10μgのタンパク質)により一晩インキュベートしたマクロファージのサイトゾル抽出物及びセパシア菌のQSFTフラクション(10μgのタンパク質)と阻害剤(LEHD-CHO)により一晩インキュベートされたマクロファージのサイトゾル抽出物により15、30、45、60、75及び90分間のインキュベーション後(図3B)、200μMのカスパーゼ-9基質Ac-LEHD-pNA(N-アセチル-Leu-Glu-His-Asp-p-NO2-アニリン)からのpNAの放出を決定した。10μgのマクロファージサイトゾルタンパク質をそれぞれの場合に用いた。
【0069】
DEVD-CHO及びLEHD-CHOは、それぞれカスパーゼ3及びカスパーゼ9活性をブロックし、それはバイオモルリサーチラボラトリーズ、Plymouth Meeting、PA、米国から入手できる。カスパーゼ-9及びカスパーゼ-3の両活性は、マクロファージがセパシア菌のQSFTフラクションにより一晩処置された場合に増加した(図3A及びB)。これらの活性は、非処置のマクロファージ又は阻害剤が存在する場合には非常に低く、QSFTフラクションによるアポトーシスの誘導がカスパーゼの活性化に関連することを示す。
【0070】
(実施例8.ウシ結核菌又はセパシア菌のQSFTフラクションにより処置されたマクロファージにおける核DNAの断片化を測定するためのTUNELアッセイ)
分別したセパシア菌増殖培地を、実施例2に記載される方法を用いて得た。ウシ結核菌BCGを、2%グリセロール、0.02%TWEEN(登録商標)80及びADC(アルブミン/デキストロース/シトレート)(ディフコラボラトリーズ、メリーランド、米国から入手可能)により補充されたMiddlebrook 7H9ブロス(ディフコラボラトリーズ、メリーランド、米国)中で増殖した。細菌を、収集前に32℃で数日間、振盪機で増殖した。分別したウシ結核菌増殖培地を、実施例2に記載される方法を用いて得た。マクロファージの単離は実施例2と同様にした。未処置の、又はSUP若しくはHAFT、AAFT又はQSFTフラクションの一晩のインキュベーションにより処置されたマクロファージにおけるアポトーシスの誘導を、ApoAlert DNA断片化キット(クローンテックラボラトリーズ社、パロアルト、カリフォルニア、米国)でアポトーシス誘導核DNA断片化を検出することによる共焦点顕微鏡法を用いて測定した。このアッセイを末端デオキシヌクレオチジルトランスフェラーゼ(Tdt)-媒介dUTPニック-末端ラベリング(TUNEL)に基づき、ここでTdtは、アポトーシスを起こす細胞において断片化DNAの遊離3'-ヒドロキシル末端でのフルオレセイン-dUTPの組み込みを触媒する。断片化核DNAにおけるフルオレセイン-dUTPの組み込みは、共焦点顕微鏡法により検出される緑色の蛍光を生じる。
【0071】
ウシ結核菌又はセパシア菌のQSFTフラクションのいずれかで処置されたマクロファージは赤色の細胞質のバックグラウンドにおいて黄緑色の核を示し、核DNA断片化を示す。断片化は、未処置のマクロファージ又はその他のカラムフラクションで処置されたマクロファージでは少ないか、或いは全く観測されなかった。
【0072】
(実施例9.緑膿菌、セパシア菌及びウシ結核菌由来の増殖培地の上澄み及びAAFT、HAFT及びQSFTフラクションにおけるタンパク質のSDS-PAGE分析)
SDS-PAGE分離は、緑膿菌、セパシア菌及びウシ結核菌の上澄み及びAAFT、HAFT及びQSFTフラクションに存在するタンパク質を示した。ムコイド緑膿菌の菌株8821由来のQSFT培地フラクションは、2つのバンド、N-末端分析によりアズリンに対応する18kDaとシトクロムc551に対応する9kDaの存在を示した。セパシア菌のQSFTフラクションは、75kDa、20kDa及び8kDaの3つの主なバンドの存在を示した。エドマン分解により決定される20kDaバンドの10個のアミノ酸のN-末端アミノ酸配列(AHHSVDIQGN)は、緑膿菌のアズリンのN-末端の10個のアミノ酸配列と80%の配列相同性を示し、8kDaバンドの10個のアミノ酸のN-末端アミノ酸配列(EDPEVLFKNK)は、緑膿菌のシトクロムc551のそれと100%の一致を示した。従って、緑膿菌及びセパシア菌の両方の高い細胞障害活性を有するQSFTフラクションは、レドックスタンパク質のアズリン及びシトクロムc551タイプを豊富に含むことを示す。その一方、ウシ結核菌のQSFTフラクションはウシ血清アルブミン(BSA)の薄い65kDaバンドを示し、それはウシ結核菌を増殖するために使用される7H9培地の成分であり、又同様に45kDaよりも大きい分子量のいくつかのバンドも示すが、8kDa又は22kDaのシトクロムc551又はアズリンタイプのタンパク質ではない。
【0073】
(実施例10.アズリン/シトクロムc551で処置されたマクロファージにおける細胞死)
精製したアズリン及びシトクロムc551(シグマケミカルズ、セントルイス、米国)を、実施例2と同様に調製したマクロファージに加え、この混合物を2時間インキュベートした。アズリン及びシトクロムc551の濃度は、実施例4と同様にした。数値はμgのタンパク質を表す。マクロファージの細胞死を、実施例2の方法を用いて細胞内酵素乳酸デヒドロゲナーゼ(LDH)の放出により測定した。アズリン及びシトクロムc551の両方はマクロファージ細胞死を引き起こす。アズリン及びシトクロムc551の組み合わせは、より大規模なマクロファージの細胞死を引き起こす。緩衝剤コントロール(緩衝剤)は右側に示す(図4)。
【0074】
(実施例11.アズリン/シトクロムc551で処置されたマクロファージにおけるアポトーシスの誘導)
マクロファージの単離は実施例2と同様にした。このマクロファージをアズリン/シトクロムc551(50/25μg)で4及び6時間処置し、次いで実施例4と同様にApoAlertミトコンドリア膜センサーキットを用いて共焦点顕微鏡法により試験し、アポトーシスの程度を決定した。マクロファージは、アズリン/シトクロムc551混合物の存在下でインキュベーションの期間を長くすると、アポトーシスのレベルは増加した。処置しない(リン酸緩衝生理食塩水で6時間処置した)コントロールマクロファージはアポトーシスを示さなかった。
【0075】
(実施例12.抗-アズリン及び抗-シトクロムc551抗体で予め処置した後のマクロファージにおけるアズリン/シトクロムc551混合物又はセパシア菌若しくはウシ結核菌由来のQSFTフラクションの細胞障害性)
マクロファージの単離は実施例2と同様にした。マクロファージを、精製したアズリン/シトクロムc551混合物(50/25μg)、又はラビットにおいて調製した抗-アズリン及び抗-シトクロムc551抗体の混合物の存在下及び非存在下でセパシア菌又はウシ結核菌のQSFTフラクションで処置した。抗体を1:1の比で混合し、この混合した抗体(1、2、3、又は4mg)をマクロファージの処置で使用した。
【0076】
マクロファージの細胞死の程度を、実施例2と同様にLDHの放出によって決定した。図5は、抗-アズリン及び抗-シトクロムc551抗体が存在する場合に、アズリン/シトクロムc551混合物(A+C)、又はセパシア菌(Bc-QSFT)由来のQSFTフラクションで処置したマクロファージに関する細胞障害性の低下を示した。この低下は、ウシ結核菌由来のQSFTフラクション(Mb-QSFT)では観測されなかった。
【0077】
従って、アズリン/シトクロムc551混合物又はセパシア菌のQSFTフラクションが抗-アズリン及び抗-シトクロムc551抗体の混合物で処置され、マクロファージの細胞障害性について試験した場合、細胞障害性は大きく減少した。その一方、上記でSDS-PAGEゲルによってアズリンとシトクロムc551バンドが欠如していることを示した(実施例9)ウシ結核菌のQSFTフラクションが抗-アズリン/抗-シトクロムc551抗体で予め処置され、細胞障害性について試験された場合、細胞障害性における非常に小さな減少が観測された。
【0078】
(実施例13.共焦点顕微鏡法によって測定されるセパシア菌のQSFTフラクション及びアズリン/シトクロムc551による腫瘍細胞株のアポトーシスの誘導)
H460肺癌、PA-1卵巣癌、NCF乳癌、HT-29大腸癌及びHT-1080白血病細胞株をthe American Type Culture Collection(マナッサス、ヴァージニア、米国)から得た。MDD7及びMN1乳癌細胞株をAndrei Gudkov, Ph.D., Cleveland Clinic Foundation(クリーヴランド、オハイオ、米国)から得た。UISO-BCA-9乳癌及びUSIO-MEL-1、MEL-2、MEL-6及びMEL-29メラノーマ細胞株をRauth, SらのIn vitro Cellular and Developmental Biology, 30a(2): 79-84 (1994)及びRauth, SらのAnticancer Research, 14(6): 2457-2463 (1994)に記載されるように発生させ、維持した。約1×105個の各細胞タイプを、セパシア菌のQSFTフラクション(5μgのタンパク質)又はアズリン/シトクロムc551混合物(50/25μg)の存在下、0.15mm厚のdTC3皿(Bioptech、バトラー、ペンシルヴェニア、米国)で一晩培養した。続いて、細胞を、実施例4と同様に共焦点顕微鏡により試験して、アポトーシスの程度を決定した。セパシア菌のQSFTフラクションとアズリン/シトクロムC551混合物の両方は、一晩のインキュベーション後にH460肺癌、HT-29大腸癌、HT-1080白血病、PA-1卵巣癌、MDD7、NCF及びNM1乳癌、及びUSIO-MEL-1、MEL-2、MEL-6及びMEL-29メラノーマ細胞における広範なアポトーシスを誘導した。いずれの場合にも、細胞障害性因子(リン酸緩衝生理食塩水を加えた)で処置されない細胞は広範なアポトーシスを示さなかった。
【0079】
(実施例14.TUNELアッセイによって測定されたウシ結核菌のQSFTフラクションによるUSIO-Mel-6メラノーマ細胞株におけるアポトーシスの誘導)
USIO-Mel-6メラノーマ細胞をRauth, SらのAnticancer Research, 14(6): 2457-2463 (1994)に記載されるように調製した。ウシ結核菌のQSFTフラクションを実施例8と同様に調製した。ウシ結核菌のQSFTフラクション(5μgのタンパク質)で処置したメラノーマ細胞及び未処置のコントロール細胞を12時間インキュベートした。アポトーシスの誘導は、実施例8と同様にTUNELアッセイを用いて測定し、アポトーシス誘導核DNA断片化を検出した。ウシ結核菌のQSFTフラクションで処置したメラノーマ細胞は赤色の細胞質バックグラウンドに黄緑色の核を示し、核DNA断片化を示す。断片化は未処置のメラノーマ細胞では少ないか、又は観測されなかった。
【0080】
(実施例15.アズリン/シトクロムc551で処置した後、ヌードマウスにおけるメラノーマ腫瘍細胞(USIO-Mel-2)の増殖の減少)
約106個のUSIO-Mel-2細胞をヌードマウス(フレデリック癌研究開発センター、フレデリック、メリーランド、米国から入手可能)に皮下に注入した。約3週間後小さな腫瘍が発生した。その後、このマウスは、公知の抗-メラノーマ薬、DTIC[5-(3,3'-N,N-ジメチルトリアゼン-1-イル)-イミダゾール-4-カルボキシアミド](7.5μg)(AhlmaisらのCancer 63: 224-7 (1989))の腹腔内注入を週1回又は高(150μgのアズリン/75μgのシトクロムc551)、低(10μgのアズリン/5μgのシトクロムc551)用量のアズリン/シトクロムc551混合物の腹腔内注入を週3回又はコントロール(シトレート緩衝剤)を週4回受けた。腫瘍の体積は、コントロール、DTIC処置、及び高並びに低用量アズリン/シトクロムc551処置マウスで、時間をあけて決定した。
【0081】
コントロール、DTIC処置及びアズリン/シトクロムc551処置ヌードマウスの腫瘍サイズの増加を図6に示し、前記マウスの体重増/減のデータを図7に示す。150μgのアズリン/75μgのシトクロムc551の高用量の注入後、DTICに匹敵する腫瘍サイズの増殖の遅れ及び減少を生じた。図7は、DTIC又はアズリン/シトクロムc551混合物のいずれかの注入がマウスの体重増に作用しなかったことを示す。すべてのマウスは実験期間中体重が増加した。
【0082】
(実施例16.メラノーマ腫瘍細胞(Mel-6)の注入後腫瘍サイズに対するヌードマウスのアズリン及びウシ結核菌のQSFTフラクションの注入後の影響)
約106個のUSIO-Mel-6細胞を3匹のヌードマウス(フレデリック癌研究開発センター、フレデリック、メリーランド、米国)の皮下に注入した。小さな腫瘍は約3週間後発生した。その後、1匹のマウスに、リン酸緩衝生理食塩水を腹腔内に注入し(コントロール)、別の1匹のマウスに、ウシ結核菌のQSFTフラクション(5μgのタンパク質)を注入し、さらに別の1匹のマウスに、ウシ結核菌のQSFTフラクション(5μgのタンパク質)とアズリン(50μg)の混合物を注入した。ウシ結核菌のQSFTフラクションは実施例8と同様に調製した。コントロール、ウシ結核菌のQSFTフラクション処置及びウシ結核菌のQSFTフラクション/アズリン処置マウスの腫瘍のサイズ(腫瘍体積)は、30日間に渡って決定した。これらのデータを図8に示した。両処置マウスでは、コントロールマウスと比較して腫瘍増殖が減少することを示した。
【図面の簡単な説明】
【0083】
【図1】フィルター処理した増殖培地上澄み(SUP)又はセパシア菌増殖培地由来のヒドロキシアパタイト貫流(HAFT)、ATP-アガロース貫流(AAFT)及びQ-セファロース貫流(QSFT)カラムクロマトグラフィーフラクションの非存在下又は存在下でのマクロファージ死滅に対する1.0mMのATPの影響を示すチャートである。マクロファージ細胞死の程度は、細胞内酵素乳酸デヒドロゲナーゼ(LDH)の放出によって測定される。各フラクション由来の2μgのタンパク質をアッセイで使用した。すべてのアッセイは3通り行われ、エラーバーが示される。
【図2】ATPの非存在下でのマクロファージ細胞死に対するフィルター処理した増殖培地上澄み(SUP)及びセパシア菌のカラムクロマトグラフィーフラクション(HAFT、AAFT及びQSFT)の影響を示すチャートである。マクロファージ細胞死の程度は、細胞内酵素乳酸デヒドロゲナーゼ(LDH)の放出によって測定される。すべてのアッセイは3通り行われ、エラーバーが示される。
【図3】セパシア菌のQSFTフラクションによって処置されたJ774マクロファージのサイトゾル抽出物のカスパーゼ活性(図3A-カスパーゼ-3、図3B-カスパーゼ-9)を示すグラフである。サイトゾル抽出物は、セパシア菌のQSFTフラクション(10μgのタンパク質)によって一晩インキュベートされたマクロファージ及び未処置のマクロファージから調製された。カスパーゼ-3活性の決定用基質として、Ac-DEVD-pNA(N-アセチル-Asp-Glu-Val-Asp-p-NO2-アニリン)を使用した。カスパーゼ-9活性用基質として、Ac-LEHD-pNA(N-アセチル-Leu-Glu-His-Asp-p-NO2-アニリン)を使用した。抽出物は37℃で所定時間基質とともにインキュベートされた。10μgのマクロファージサイトゾルタンパク質がそれぞれの場合に使用された。pNA(p-ニトロアニリン)の放出は405nmで分光光度法で決定された。
【図4】アズリン(Az)、シトクロムc551(Cyt C551)及びその組み合わせの存在下でマクロファージの、%乳酸デヒドロゲナーゼ(LDH)放出によって測定される細胞障害性を示すチャートである。数値はμgのタンパク質を表す。緩衝剤コントロール(緩衝剤)は右に示される。
【図5】セパシア菌(A)及びウシ結核菌(B)のQSFTフラクションの、及び免疫前血清の存在下での細胞障害性に対する抗アズリン及び抗シトクロムc551抗体の影響を示すチャートである。A、アズリン(50μg);C、シトクロムc551(25μg);ab、抗アズリン及び抗シトクロムc551抗体の組み合わせ;P、免疫前血清。2μgのQSFTフラクションが各アッセイで使用された。ab及びP後の数値はμgの抗体又は免疫前タンパク質を表す。結果は、3通りの実験の平均±標準偏差で示される。
【図6】メラノーマ腫瘍細胞(UISO-Mel-2)の誘導後、腫瘍のサイズに対するヌードマウスのアズリン/シトクロムc551の注入後の影響を示すグラフである。約106のUISO-Mel-2細胞をヌードマウスに皮下注入し、続いて4週間クエン酸緩衝剤(コントロール)、公知の抗メラノーマ薬DTIC(7.5μg)のいずれかを週1回腹腔内注入するか、又は高(150μgのアズリン/75μgのシトクロムc551)若しくは低(10μgのアズリン/5μgのシトクロムc551)用量のアズリン/シトクロムc551混合物を週3回投与する。いろいろな時に、コントロール(処理された緩衝剤)、DTIC処理、及び高及び低用量アズリン/シトクロムc551処置マウスにおける腫瘍のサイズ(腫瘍体積)を決定し、グラフにプロットした。
【図7】図6で記載した実験中のマウスの体重の増減を示すグラフである。上記実験経過の中で、マウスの体重を測り、グラムで体重を示した。
【図8】アズリン(AZ)の存在下又は非存在下でウシ結核菌のQSFTフラクションで処置したヌードマウスにおけるMel-6腫瘍の退行を示すグラフである。約106のUISO-Mel-6細胞をヌードマウスに皮下注入した。小さな腫瘍は約1週間後に発生した。次いでマウスにリン酸緩衝生理食塩水(コントロール)、ウシ結核菌のQSFTフラクション又はウシ結核菌のQSFTフラクション及びアズリンの混合物を腹腔内注入した。
Claims (25)
- 以下の工程を含む病原微生物からのATP-非依存性細胞障害性因子の分泌を刺激する方法:
(a)哺乳類のタンパク質を含む増殖培地を用意する工程;
(b)前記増殖培地で病原微生物を増殖する工程;及び
(c)病原微生物に前記タンパク質の存在下でATP-非依存性細胞障害性因子を分泌させる工程。 - 哺乳類のタンパク質がκカゼイン、ウシ血清アルブミン、オボアルブミン、及びα2-マクログロブリンからなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
- 哺乳類のタンパク質の受容体が微生物の表面上に存在することを同定する工程を含む病原微生物と非病原微生物との境界を確定する方法。
- 哺乳類のタンパク質がκカゼイン、ウシ血清アルブミン、オボアルブミン、及びα2-マクログロブリンからなる群から選択される、請求項3に記載の方法。
- 以下の工程を含む病原微生物からのATP-非依存性細胞障害性因子を単離する方法:
(a)哺乳類のタンパク質を含む増殖培地を用意する工程;
(b)前記増殖培地で病原微生物を増殖する工程;
(c)前記病原微生物に前記タンパク質の存在下で細胞障害性因子を分泌させる工程;
(d)前記病原微生物を除去して実質的に細胞を含まない増殖培地を生成する工程;及び
(e)1つ又は複数のクロマトグラフィー工程により前記の実質的に細胞を含まない増殖培地を精製する工程。 - クロマトグラフィー工程の1つがイオン交換カラムを貫流するフラクションとして細胞障害性因子を単離する工程を含む請求項5に記載の方法。
- イオン交換カラムが陰イオン交換体を含む、請求項6に記載の方法。
- イオン交換カラムが陽イオン交換体を含む、請求項6に記載の方法。
- 陰イオン交換体がジエチルアミノエチル、四級アミノエチル及び四級アンモニウムからなる群から選択される、請求項7に記載の方法。
- 陽イオン交換体がカルボキシメチル、スルホプロピル及びメチルスルホネートからなる群から選択される、請求項8に記載の方法。
- クロマトグラフィー工程がヒドロキシアパタイトクロマトグラフィー工程、アフィニティークロマトグラフィー工程及びイオン交換クロマトグラフィー工程を含む、請求項5に記載の方法。
- クロマトグラフィー工程が以下の工程を含む、請求項5に記載の方法:
(a)増殖培地のヒドロキシアパタイトカラムを貫流するフラクションを単離する工程;
(b)ヒドロキシアパタイトカラムを貫流するフラクションをATPアフィニティーカラムに送る工程;
(c)ATPアフィニティーカラムを貫流するフラクションを単離する工程;
(d)ATPアフィニティーカラムを貫流するフラクションをイオン交換カラムに送る工程;及び
(e)イオン交換カラムを貫流するフラクションとして細胞障害性因子を単離する工程。 - ATPアフィニティーカラムがATP-アガロースカラムである、請求項12に記載の方法。
- イオン交換カラムがQ-セファロースカラムである、請求項12に記載の方法。
- 細胞障害性因子がレドックスタンパク質因子である、請求項1に記載の方法。
- さらに精製した増殖培地を分析してATP-非依存性アポトーシストリガー活性を検出する工程を含む請求項5に記載の方法。
- 必要に応じて医薬担体に組み込まれていてもよい実質的に純粋な細胞障害性因子、又はその変異体若しくは誘導体を投与して、細胞死に対する抵抗性を示す細胞において細胞死を促進することを含む細胞死に対する抵抗性に関する状態を治療する方法。
- 細胞死に対する抵抗性に関する状態がヒトメラノーマ、白血病、乳癌、卵巣癌、肺癌、間葉癌、大腸癌及びアエロ消化管癌からなる群から選択される、請求項17に記載の方法。
- 医薬担体が賦形剤、セルロース、セルロース製剤、香料添加剤、着色剤、増粘剤、粘着除去剤、添加剤、結合剤、アジュバント、及びその混合物からなる群から選択される、請求項18に記載の方法。
- 細胞障害性因子を経口的に、口腔に、吸入により、舌下に、直腸に、膣に、経尿道に、鼻に、局所的に、又は経皮的に投与する請求項18に記載の方法。
- 必要に応じて医薬担体に組み込まれていてもよい治療上有効な量の細胞障害性因子の阻害剤、又はその誘導体を投与して、細胞死に対する感受性を示す細胞の細胞死を阻害する工程を含む細胞死感受性に関する状態を治療する方法。
- 阻害剤が、以下のものからなる群から選択される請求項21に記載の方法:
(a)ATP-利用酵素の分泌を阻害する活性剤、
(b)ATP-利用酵素の細胞障害性活性を阻害する活性剤、
(c)レドックスタンパク質の分泌を阻害する活性剤、及び
(d)レドックスタンパク質の細胞障害性活性を阻害する活性剤。 - 実質的に純粋な細胞障害性因子、実質的に純粋な細胞障害性因子の阻害剤、実質的に純粋な細胞障害性因子の活性化物質、及び前記細胞障害性因子、阻害剤、及び活性化物質の変異体又は誘導体からなる群から選択される化合物を投与する工程を含む細胞死の割合を調節する方法。
- 細胞障害性因子がATP-利用酵素、レドックスタンパク質、ATP生成の活性化物質、及びATP生成の阻害剤からなる群から選択される、請求項23に記載の方法。
- 実質的に純粋な細胞障害性因子、又はその変異体若しくは誘導体を含む組成物を、宿主生物の天然免疫応答を刺激するのに十分な量で投与する工程を含む宿主生物の細胞死に対する抵抗性に関連した状態を治療する方法。
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