JP2005501878A - 経口ワクチン - Google Patents
経口ワクチン Download PDFInfo
- Publication number
- JP2005501878A JP2005501878A JP2003524363A JP2003524363A JP2005501878A JP 2005501878 A JP2005501878 A JP 2005501878A JP 2003524363 A JP2003524363 A JP 2003524363A JP 2003524363 A JP2003524363 A JP 2003524363A JP 2005501878 A JP2005501878 A JP 2005501878A
- Authority
- JP
- Japan
- Prior art keywords
- organism
- aquatic animal
- oral vaccine
- fish
- artemia
- Prior art date
- Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
- Pending
Links
Classifications
-
- A—HUMAN NECESSITIES
- A61—MEDICAL OR VETERINARY SCIENCE; HYGIENE
- A61K—PREPARATIONS FOR MEDICAL, DENTAL OR TOILETRY PURPOSES
- A61K39/00—Medicinal preparations containing antigens or antibodies
- A61K39/02—Bacterial antigens
- A61K39/104—Pseudomonadales, e.g. Pseudomonas
-
- A—HUMAN NECESSITIES
- A61—MEDICAL OR VETERINARY SCIENCE; HYGIENE
- A61P—SPECIFIC THERAPEUTIC ACTIVITY OF CHEMICAL COMPOUNDS OR MEDICINAL PREPARATIONS
- A61P31/00—Antiinfectives, i.e. antibiotics, antiseptics, chemotherapeutics
- A61P31/04—Antibacterial agents
-
- A—HUMAN NECESSITIES
- A61—MEDICAL OR VETERINARY SCIENCE; HYGIENE
- A61K—PREPARATIONS FOR MEDICAL, DENTAL OR TOILETRY PURPOSES
- A61K39/00—Medicinal preparations containing antigens or antibodies
- A61K2039/51—Medicinal preparations containing antigens or antibodies comprising whole cells, viruses or DNA/RNA
- A61K2039/52—Bacterial cells; Fungal cells; Protozoal cells
-
- A—HUMAN NECESSITIES
- A61—MEDICAL OR VETERINARY SCIENCE; HYGIENE
- A61K—PREPARATIONS FOR MEDICAL, DENTAL OR TOILETRY PURPOSES
- A61K39/00—Medicinal preparations containing antigens or antibodies
- A61K2039/51—Medicinal preparations containing antigens or antibodies comprising whole cells, viruses or DNA/RNA
- A61K2039/53—DNA (RNA) vaccination
-
- A—HUMAN NECESSITIES
- A61—MEDICAL OR VETERINARY SCIENCE; HYGIENE
- A61K—PREPARATIONS FOR MEDICAL, DENTAL OR TOILETRY PURPOSES
- A61K39/00—Medicinal preparations containing antigens or antibodies
- A61K2039/54—Medicinal preparations containing antigens or antibodies characterised by the route of administration
- A61K2039/541—Mucosal route
- A61K2039/542—Mucosal route oral/gastrointestinal
Landscapes
- Health & Medical Sciences (AREA)
- Life Sciences & Earth Sciences (AREA)
- Pharmacology & Pharmacy (AREA)
- Veterinary Medicine (AREA)
- Chemical & Material Sciences (AREA)
- Public Health (AREA)
- General Health & Medical Sciences (AREA)
- Medicinal Chemistry (AREA)
- Animal Behavior & Ethology (AREA)
- Immunology (AREA)
- Microbiology (AREA)
- Epidemiology (AREA)
- Mycology (AREA)
- Chemical Kinetics & Catalysis (AREA)
- Oncology (AREA)
- Communicable Diseases (AREA)
- Organic Chemistry (AREA)
- General Chemical & Material Sciences (AREA)
- Nuclear Medicine, Radiotherapy & Molecular Imaging (AREA)
- Medicines Containing Antibodies Or Antigens For Use As Internal Diagnostic Agents (AREA)
- Fodder In General (AREA)
- Farming Of Fish And Shellfish (AREA)
- Feed For Specific Animals (AREA)
Abstract
本発明は、ワクチン投与すべき水生動物(例えば、魚またはエビ)の飼料として用いられる多細胞生物と、該多細胞生物に給餌されて該多細胞生物の体内に閉じ込められる単細胞生物と含む経口ワクチンを特徴とする。単細胞生物は、水生動物内で免疫応答を誘導することができ、これにより該水生動物にワクチン投与を行う組換え抗原を発現するように形質転換されている。
Description
【技術分野】
【0001】
本発明は、水生動物(例えば、魚やエビ)を、伝染病(例えば、細菌性、ウィルス性または寄生虫性疾患)に対して免疫するのに有用な新規な経口ワクチンに関する。
【背景技術】
【0002】
水生動物を効率的に免疫化することが望まれている。たとえば、養魚場では伝染病がよく発生するが、これは水生環境における集約養殖が病原体の伝播を容易にするためである。(非特許文献1)。経口ワクチン投与によって水生動物の疾病を予防する場合、他の方法に比べて、ストレスが無く、労力を殆ど要せず、大規模な投与が可能であるといったいくつかの利点が得られる。しかしながら、多くの経口ワクチンでは、十分な用量の抗原を摂取できないこと、抗原の送達不良および消化管内での抗原の分解により、十分な効果が得られないことが分かっている。
【非特許文献1】
ダン(Dunn)ら(1990年)Aquaculture Engineering、第9巻、第23−3頁。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の目的は、水生動物(例えば、魚やエビ)を、伝染病(例えば、細菌性、ウィルス性または寄生虫性疾患)に対して免疫するのに有用な新規な経口ワクチンを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
1つの態様において、本発明は、ワクチン投与すべき水生動物の飼料として用いる多細胞生物と、多細胞生物に給餌され、その結果該多細胞生物の体内に閉じ込められる(bioencapsulated)単細胞生物とを含む経口ワクチンを特徴とする。該単細胞生物は、水生動物内で免疫応答を誘導することにより該水生動物にワクチン投与することが可能な組換え抗原を発現するように予め形質転換されている。本明細書中で用いる「飼料」という用語には、飼料そのもの(例えば、餌)と飼料添加物とが含まれる。より詳細には、単細胞生物は目的とする抗原のアミノ酸配列をコードする異種核酸を含んでいる。核酸は組換えベクターの中にあり、このベクターは、発現すべき核酸に機能的に連結された1つ以上の調節配列(例えば、プロモーターまたはエンハンサー)も含んでいる。抗原は、免疫応答を誘導できさえすれば、天然に存在する遺伝子内に見られる野生型のアミノ酸配列でなくてもよい。例えば、魚の経口ワクチンとしては、細菌抗原を発現するように形質転換された大腸菌(Escherichia coli)(単細胞生物)を餌とし、これを内部に閉じ込める(encapsulate)アルテミア(artemia)(多細胞生物)が挙げられる。
【0005】
別の態様において、本発明は、経口ワクチンの調製方法を特徴とする。本方法は、(1)水生動物内で免疫応答を誘導することにより該水生動物にワクチン投与することが可能な組換え抗原を発現するように形質転換された単細胞生物を提供することと、(2)前記単細胞生物を多細胞生物に給餌することとを含む。給餌の結果、多細胞生物(例えば、アルテミア、クルマムシ、藻類、ゾウリムシ、またはカキ胚)は、単細胞生物(例えば、細菌または酵母)を体内に閉じ込める。このような多細胞生物を、経口ワクチンとして水生動物に給餌することができる。
【0006】
また、ワクチン投与すべき水生動物に上述の経口ワクチンを給餌することにより、該動物にワクチンを経口送達する方法も本発明の範囲内である。
本発明の他の特徴、目的および利点は、明細書および特許請求の範囲から明らかであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明は、水生動物を伝染病に対して免疫するための、予防的ワクチン投与もしくは治療的ワクチン投与用の経口ワクチンに関する。経口ワクチンは、単細胞生物を餌とすることで該単細胞生物を含有する多細胞生物を含む。多細胞生物に給餌される単細胞生物は、水生動物内で免疫応答を誘導することのできる組換え抗原を発現するように形質転換されている。水生動物に給餌される上記多細胞生物は、動物に対する経口ワクチンとして機能する。言い換えれば、単細胞、多細胞生物または水生動物内で発現される抗原は、上記単細胞生物が多細胞生物へ給餌され、該多細胞生物が水生動物へ給餌されるという2段階の給餌を経て水生動物へ送達される。この送達の結果、抗原は動物内で免疫応答を誘導することができる。
【0008】
勿論、どのような抗原を発現させるかは、誘導される免疫応答が標的病原体に対するものかどうかによって異なる。免疫応答の引き金となる抗原が同定されている場合には、その抗原をクローニングして同抗原をコードする核酸とこの核酸に機能的に連結された1つ以上の調節配列とを含む組換えベクターとすることができる。調節配列としては、抗原を恒常的に発現させる調節配列、ならびに誘導可能な配列を用いることができる。組換えベクターは、単細胞生物が形質転換されるような要素に基づいて設計することができる。組換えベクターは異なる抗原をコードする2つ以上の核酸を含んでいてもよい。例えば、組換えベクターが2つの抗原をコードする核酸を含み、同一または異なる病原体に対する免疫応答を誘導できるようにしてもよい。あるいは、組換えベクターは、抗原性はないが、それ自体またはコードされるペプチドが標的病原体に対する免疫応答を高める役目をするポリペプチド(例えば、ヘルパーエピトープ)をコードする核酸を含んでいてもよい。
【0009】
上記組換えベクターは、外来の核酸(例えばDNA)を適当な宿主単細胞生物に導入するための様々な当該技術分野で認識されている技術、例えばリン酸カルシウムまたは塩化カルシウム共沈、DEAE−デキストラン媒介性トランスフェクション、リポフェクチン、またはエレクトロポーレーションを含む、従来の形質転換またはトランスフェクション技術によって、適当な単細胞生物中に導入される。適当な単細胞生物の例は、例えば、ゲッデル(Goeddel)(1990年)Gene Expression Technology: Methods in Enzymology、第185巻、Academic Press(カリフォルニア州サンディエゴ)の中に記載されている。1つ以上の上記単細胞生物を、ワクチン投与すべき水生動物への飼料または飼料添加物である適切な多細胞生物に給餌する。したがって、ここで得られる多細胞生物は経口ワクチンとして機能するが、この経口ワクチンにおいて、抗原は、多細胞生物の体内に閉じ込められた単細胞生物中にある。水生動物の消化管では様々な抗原分解が起こるため、意外にもこのような経口ワクチンが効果的であることがわかってきた。
【0010】
以下の具体例は、説明のみを意図しており、開示の残りの部分を多少なりとも限定するものではないと解釈すべきである。当業者であれば、これ以上詳述しなくても、本明細書中の記載に基づいて本発明をその最大限可能な範囲で利用できるに違いない。本願に列挙する全ての出版物は、その全体が参照により本願に組み込まれる。
【実施例】
【0011】
(材料と方法)
(動物)
ゼブラフィッシュ(Danio rerio)を用いた。ゼブラフィッシュは28.5℃などの適当な温度に維持し、再循環濾過水中で飼育した。各実験の開始時には、魚は50日齢であった。ワクチン投与までのあいだ、魚には通常のブライン・シュリンプ(アルテミアノープリウス幼生)を給餌した。ワクチン投与後、1日あたり魚の体重の5%の量のペレット状の乾燥餌による給餌を開始した。
【0012】
(プラスミドの構築と抗原の調製)
Pseudomonas aeruginosa(PE毒素)は、院内感染の原因となる細菌であり、マウスに対するLD50値(半致死量)は1μgである。組換え型のシュードモナス細菌外毒素A(PE)もまた、動物モデルにおける天然型PE毒素の負荷に対し効果的に防御することができる。
【0013】
シグナルペプチドとC末端とを有しないPE遺伝子をコードするプラスミドpJH4は、ホァン(Hwang)博士からの寄贈品である(Hwangら(1987年)、Cell、第48巻、129〜136頁)。PE遺伝子をEcoRIとHindIIIによる消化によりpJH4から単離し、単離したPE遺伝子を同じ制限酵素(EcoRIおよびHindIII)の接着末端を有する別のプラスミドpET24aに挿入することにより、プラスミドpET24a−PEを作成した。得られたプラスミドで大腸菌BL21株(DE3)を形質転換した。プラスミドを含む細菌を、カナマイシンを50μg/mLの濃度で含むLBブロス中、37℃で培養した。600nmにおける吸光度が0.6に達した時点で、イソプロピル−1−チオ−β−D−ガラクトシドを終濃度1mMとなるように添加した。150分後、細菌をハーベストし、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)で2回洗浄し、PE富化大腸菌を得た。細菌をアルテミアに給餌するまで−20℃で保存し、発現PEタンパク質をSDS−PAGEを用いて分析した。
【0014】
(PE富化アルテミアノープリウス幼生の調製)
連続光と十分な空気を与えた状態で、29±1℃の新鮮な海水中でアルテミアノープリウス幼生を孵化させた。孵化後40時間目にアルテミア幼生を回収し、PE富化大腸菌(または対照大腸菌)を給餌した。給餌後、アルテミアノープリウス幼生を回収し、PBSで5回洗浄した。アルテミアノープリウス幼生は直ちにゼブラフィッシュに給餌するか、または後で使用または分析するために−20℃で保存した。
【0015】
(SDS−PAGE電気泳動およびウェスタンブロッティング)
アルテミア試料中のPEタンパク質を、Protein Assay Kit(米国94547カリフォルニア州ハーキュリーズ、アルフレッドノーベルドライブ2000に所在のバイオラッド(BIO−RAD))を用いて分析した。試料をLaemmliバッファ(ラムリ、ユー.ケイ.(Laemmli,U.K.)(1970年)、Nature(ロンドン)、第227巻、650〜685頁)中にホモジナイズし、5分間煮沸した。SDSを含む8%ポリアクリルアミドゲル(SDS−PAGE)によってPEタンパク質を分析し、電気泳動後にクーマシーブルーで染色した。PEタンパク質は大腸菌が発現した全タンパク質の40%を超えていた。イムノブロッティングアッセイにおいては、試料中のPEタンパク質をゲル上で電気泳動し、ニトロセルロース紙に転写し、ウサギ抗PE抗体および二次抗体(アルカリホスファターゼとコンジュゲートしたヤギ抗ウサギ抗体)とともにインキュベートした後、アルカリホスファターゼ基質(バイオラッド)で染色した。実験は業者(バイオラッド)の推奨する条件下で実施した。抗PE抗体は、免疫化によりウサギにおいて産生させた。フロイント完全アジュバント中に乳化させた250μgのPEタンパク質をウサギに投与した。プールしたウサギ抗PE抗体画分をウェスタンブロット分析用に調製した。
【0016】
(ワクチン投与計画)
PE富化アルテミアノープリウス幼生を、ワクチン投与前24時間絶食させたゼブラフィッシュに給餌した。給餌の間、水流は停止させた。給餌は1日に4回行った。対照の魚(ワクチン非投与魚)には、対照のアルテミアノープリウス幼生を給餌した。6週間後、ワクチン投与魚とワクチン非投与魚のいずれにも、ペレット状の乾燥餌を給餌した。3週間後、PE毒素(シグマ(Sigma))を用いて魚に負荷をかけた。
【0017】
(PE毒素による負荷試験)
ゼブラフィッシュにおけるPEのLD50値を求めるために、5つの実験群(各群につき6匹のワクチン非投与魚)について試験した。5群を24時間絶食させ、200ppmの2−フェノキシエタノールを用いて麻酔し、それぞれ、0,0.5,1,1.5および2μgのPE毒素を腹腔内注射した。このようにして、ゼブラフィッシュに対するPEのLD50値は、50日齢のゼブラフィッシュにおいて1〜1.2μgの範囲であると決定された。続く実験において、1.2μgのPE毒素を用いてワクチン投与魚に負荷をかけた。
【0018】
(魚におけるPE摂取の免疫組織化学的研究)
富化アルテミアノープリウス幼生を給餌した後、6群(各群3匹)をそれぞれ、0,1,2,3,6および12時間目に屠殺し、氷上に1分間おいた。魚を解剖して、4%ホルマリン中で一晩固定し、PBSでリンスして脱水した後、パラフィンワックス中に包埋した。連続切片に裁断し、ポリ−L−リジン処理したスライドグラス上に置き、3%H2O2含有PBS溶液とともにインキュベートして内在性ペルオキシダーゼを不活性化した。次にスライドグラスをPBS−E(1mM EDTA含有PBS)でリンスし、50%エタノール(エタノール50%と水50%(体積比))および90%エタノール(エタノール90%と水10%(体積比))で脱水した。ウサギ抗PE血清(1:1000)と、ヤギ抗ウサギ抗体の西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)コンジュゲート(1:200)とを用いたイムノペルオキシダーゼ反応により、PEタンパク質を検出した。コンジュゲートをHRP基質(0.012%(体積比)過酸化水素水)および色素体(0.4mg/mL)によって可視化した。切片にアミノエチルカルバゾールを15分間作用させた後、スライドグラスをPBS−Eで2回洗浄した。切片を酸ヘマトキシリンで5分間対比染色し、アンモニア水で1分間処理して青色にしてから、PBSでリンスした。検出は、封入剤として水を用い、スライドグラスを顕微鏡下、40〜400倍率で観察することによって行った。組換えPEを含む組織は赤褐色に染まった。
【0019】
(結果)
(LD50の決定)
ゼブラフィッシュの体重は同じ日齢であっても異なるため、50日齢のゼブラフィッシュに対するPE毒素のLD50値は、1〜1.2μgであると決定され、1匹あたり1.2μgを負荷用量として用いた。LD50を確認するために、21匹のワクチン非投与魚に対して腹腔内注射による負荷をかけた。この群においては、10匹(50%)が1週間以内に死亡し、7匹(33%)が2〜3日で死亡した。さらに、80%を超える魚についてその皮膚および脂肪組織に出血症状が観察された。全ての魚が注射後7〜10日までの間に食欲を失った。これに対し、PBSを腹腔内注射した対照の魚は、出血の症状もみせず、食欲を失ったのはわずか1日の間であった。
【0020】
(経口ワクチンの効力)
経口ワクチンを給餌することによってワクチン投与を受けた16匹の魚に対して、1.2μgのPE毒素の腹腔内注射による負荷をかけた。4匹のワクチン投与魚が5日以内に死亡した(死亡率25%)。比較対照としては、ワクチン非投与群(通常の大腸菌で飼育したアルテミアによる模擬ワクチン投与群)の6匹の魚のうち、4匹の魚が5日以内に死亡した(死亡率75%)。この結果から、アルテミアの体内に閉じ込められた組換え大腸菌を含む経口ワクチンは有効であることが分かる。さらに、ワクチン投与魚は食欲を失ってもいたが、ワクチン非投与群のPE負荷から生き延びた魚に比べて2〜3日早く回復した。
【0021】
(富化アルテミアノープリウス幼生の至適調製時間)
富化アルテミアの至適調製時間を見積もるために、PEタンパク質を発現する大腸菌(BL21,DE3)を、アルテミアノープリウス幼生に給餌した。給餌後、0,15,30,45,60,90および120分の時点でアルテミアノープリウス幼生を屠殺し、PBSで5回洗浄して表面に付着した大腸菌を除去した。アルテミアノープリウス幼生試料を6M尿素中に懸濁し、超音波破砕した。該試料から抽出されたPEタンパク質をSDS−PAGEによって分析し、ウサギ抗PE抗体を用いたウェスタンブロッティング分析によって検出した(上記参照)。この結果、アルテミアノープリウス幼生中のPEタンパク質の量は給餌後に増加し、30分〜60分後に安定期に達し、その後降下することが分かる。したがって、上記の実験例におけるアルテミアノープリウス幼生の至適給餌時間は45分間である。
【0022】
(組換え型および細菌由来の天然型抗原の比較)
PE毒素を産生するPsudomonas aeruginosaの6つの菌株(ATCC15693,ATCC29260,ATCC33449,ATCC33354,ATCC33355およびATCC33359)と、PE富化組換え大腸菌とを別個にアルテミアノープリウス幼生に給餌した。上記7種のアルテミアノープリウス幼生試料より抽出したPEタンパク質をSDS−PAGEで分析し、ウサギ抗PE抗体を用いたウェスタンブロッティング分析(上記参照)によって検出した。PE富化組換え大腸菌で飼育したアルテミアは、PAGEゲル分析によって容易に観察可能な量のPEタンパク質を含んでいたが、Pseudomonas aeruginosaの6菌株で飼育したアルテミアは、PAGEゲル分析において検出可能な量のPEタンパク質を全く示さなかった。この結果から、特異的抗原を有する組換え大腸菌を給餌すると、アルテミアを未処理の細菌病原体で飼育する従来技術と比べて、抗原の量が増加することが示された。ゴメス‐ギル(Gomez−Gil)ら(1998年)Appl Environ Microbiol 第64巻、第2318〜2322頁を参照のこと。このように、アルテミアノープリウス幼生の体内に閉じ込められた組換えPE富化大腸菌を含む経口ワクチンを摂取した魚は、免疫応答を誘発するのに十分な量のPEタンパク質を得ることができる。
【0023】
(魚の腸内におけるPEタンパク質の摂取)
抗PE抗体を用いたイムノアッセイによる組織学的観察から、アルテミアノープリウス幼生の給餌後1〜3時間の間に魚の腸管内腔にPEタンパク質が観察され、取込みは給餌から2時間で最大量に達することが分かった。データから、PEタンパク質の粒子が粘膜を通過して上皮細胞に進入することが判明した。粒子は6時間後から消失し始め、12時間後には完全に消失していた。
【0024】
(本発明の経口ワクチンの安全性評価)
経口ワクチンを給餌した全ての魚において、形態、食欲、遊泳挙動または死に関する異常は何も見られなかった。
【0025】
(他の実施形態)
本明細書中に開示した全ての特徴は、任意の組み合わせで組み合わせることができる。本明細書中に開示の各特徴は、同一、同等または類似の目的を果たす代替の特徴と置き換え可能である。このように、特に説明しない限り、開示された各特徴は、同等または類似の特徴を包括したものの一例にすぎない。
【0026】
上記の記載から、当業者であれば、本発明の本質的特徴を容易に突き止めることができ、かつ本発明の思想と範囲から逸脱することなく本発明の様々な変更形態および修正形態を作製して、様々な用途や条件に適応させることができる。例えば、上述の経口ワクチンを、他の家畜(例えば、ブタやニワトリ)またはヒトを免疫するため用いることも可能である。このように、他の実施形態も特許請求の範囲に含まれる。
【0001】
本発明は、水生動物(例えば、魚やエビ)を、伝染病(例えば、細菌性、ウィルス性または寄生虫性疾患)に対して免疫するのに有用な新規な経口ワクチンに関する。
【背景技術】
【0002】
水生動物を効率的に免疫化することが望まれている。たとえば、養魚場では伝染病がよく発生するが、これは水生環境における集約養殖が病原体の伝播を容易にするためである。(非特許文献1)。経口ワクチン投与によって水生動物の疾病を予防する場合、他の方法に比べて、ストレスが無く、労力を殆ど要せず、大規模な投与が可能であるといったいくつかの利点が得られる。しかしながら、多くの経口ワクチンでは、十分な用量の抗原を摂取できないこと、抗原の送達不良および消化管内での抗原の分解により、十分な効果が得られないことが分かっている。
【非特許文献1】
ダン(Dunn)ら(1990年)Aquaculture Engineering、第9巻、第23−3頁。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の目的は、水生動物(例えば、魚やエビ)を、伝染病(例えば、細菌性、ウィルス性または寄生虫性疾患)に対して免疫するのに有用な新規な経口ワクチンを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
1つの態様において、本発明は、ワクチン投与すべき水生動物の飼料として用いる多細胞生物と、多細胞生物に給餌され、その結果該多細胞生物の体内に閉じ込められる(bioencapsulated)単細胞生物とを含む経口ワクチンを特徴とする。該単細胞生物は、水生動物内で免疫応答を誘導することにより該水生動物にワクチン投与することが可能な組換え抗原を発現するように予め形質転換されている。本明細書中で用いる「飼料」という用語には、飼料そのもの(例えば、餌)と飼料添加物とが含まれる。より詳細には、単細胞生物は目的とする抗原のアミノ酸配列をコードする異種核酸を含んでいる。核酸は組換えベクターの中にあり、このベクターは、発現すべき核酸に機能的に連結された1つ以上の調節配列(例えば、プロモーターまたはエンハンサー)も含んでいる。抗原は、免疫応答を誘導できさえすれば、天然に存在する遺伝子内に見られる野生型のアミノ酸配列でなくてもよい。例えば、魚の経口ワクチンとしては、細菌抗原を発現するように形質転換された大腸菌(Escherichia coli)(単細胞生物)を餌とし、これを内部に閉じ込める(encapsulate)アルテミア(artemia)(多細胞生物)が挙げられる。
【0005】
別の態様において、本発明は、経口ワクチンの調製方法を特徴とする。本方法は、(1)水生動物内で免疫応答を誘導することにより該水生動物にワクチン投与することが可能な組換え抗原を発現するように形質転換された単細胞生物を提供することと、(2)前記単細胞生物を多細胞生物に給餌することとを含む。給餌の結果、多細胞生物(例えば、アルテミア、クルマムシ、藻類、ゾウリムシ、またはカキ胚)は、単細胞生物(例えば、細菌または酵母)を体内に閉じ込める。このような多細胞生物を、経口ワクチンとして水生動物に給餌することができる。
【0006】
また、ワクチン投与すべき水生動物に上述の経口ワクチンを給餌することにより、該動物にワクチンを経口送達する方法も本発明の範囲内である。
本発明の他の特徴、目的および利点は、明細書および特許請求の範囲から明らかであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明は、水生動物を伝染病に対して免疫するための、予防的ワクチン投与もしくは治療的ワクチン投与用の経口ワクチンに関する。経口ワクチンは、単細胞生物を餌とすることで該単細胞生物を含有する多細胞生物を含む。多細胞生物に給餌される単細胞生物は、水生動物内で免疫応答を誘導することのできる組換え抗原を発現するように形質転換されている。水生動物に給餌される上記多細胞生物は、動物に対する経口ワクチンとして機能する。言い換えれば、単細胞、多細胞生物または水生動物内で発現される抗原は、上記単細胞生物が多細胞生物へ給餌され、該多細胞生物が水生動物へ給餌されるという2段階の給餌を経て水生動物へ送達される。この送達の結果、抗原は動物内で免疫応答を誘導することができる。
【0008】
勿論、どのような抗原を発現させるかは、誘導される免疫応答が標的病原体に対するものかどうかによって異なる。免疫応答の引き金となる抗原が同定されている場合には、その抗原をクローニングして同抗原をコードする核酸とこの核酸に機能的に連結された1つ以上の調節配列とを含む組換えベクターとすることができる。調節配列としては、抗原を恒常的に発現させる調節配列、ならびに誘導可能な配列を用いることができる。組換えベクターは、単細胞生物が形質転換されるような要素に基づいて設計することができる。組換えベクターは異なる抗原をコードする2つ以上の核酸を含んでいてもよい。例えば、組換えベクターが2つの抗原をコードする核酸を含み、同一または異なる病原体に対する免疫応答を誘導できるようにしてもよい。あるいは、組換えベクターは、抗原性はないが、それ自体またはコードされるペプチドが標的病原体に対する免疫応答を高める役目をするポリペプチド(例えば、ヘルパーエピトープ)をコードする核酸を含んでいてもよい。
【0009】
上記組換えベクターは、外来の核酸(例えばDNA)を適当な宿主単細胞生物に導入するための様々な当該技術分野で認識されている技術、例えばリン酸カルシウムまたは塩化カルシウム共沈、DEAE−デキストラン媒介性トランスフェクション、リポフェクチン、またはエレクトロポーレーションを含む、従来の形質転換またはトランスフェクション技術によって、適当な単細胞生物中に導入される。適当な単細胞生物の例は、例えば、ゲッデル(Goeddel)(1990年)Gene Expression Technology: Methods in Enzymology、第185巻、Academic Press(カリフォルニア州サンディエゴ)の中に記載されている。1つ以上の上記単細胞生物を、ワクチン投与すべき水生動物への飼料または飼料添加物である適切な多細胞生物に給餌する。したがって、ここで得られる多細胞生物は経口ワクチンとして機能するが、この経口ワクチンにおいて、抗原は、多細胞生物の体内に閉じ込められた単細胞生物中にある。水生動物の消化管では様々な抗原分解が起こるため、意外にもこのような経口ワクチンが効果的であることがわかってきた。
【0010】
以下の具体例は、説明のみを意図しており、開示の残りの部分を多少なりとも限定するものではないと解釈すべきである。当業者であれば、これ以上詳述しなくても、本明細書中の記載に基づいて本発明をその最大限可能な範囲で利用できるに違いない。本願に列挙する全ての出版物は、その全体が参照により本願に組み込まれる。
【実施例】
【0011】
(材料と方法)
(動物)
ゼブラフィッシュ(Danio rerio)を用いた。ゼブラフィッシュは28.5℃などの適当な温度に維持し、再循環濾過水中で飼育した。各実験の開始時には、魚は50日齢であった。ワクチン投与までのあいだ、魚には通常のブライン・シュリンプ(アルテミアノープリウス幼生)を給餌した。ワクチン投与後、1日あたり魚の体重の5%の量のペレット状の乾燥餌による給餌を開始した。
【0012】
(プラスミドの構築と抗原の調製)
Pseudomonas aeruginosa(PE毒素)は、院内感染の原因となる細菌であり、マウスに対するLD50値(半致死量)は1μgである。組換え型のシュードモナス細菌外毒素A(PE)もまた、動物モデルにおける天然型PE毒素の負荷に対し効果的に防御することができる。
【0013】
シグナルペプチドとC末端とを有しないPE遺伝子をコードするプラスミドpJH4は、ホァン(Hwang)博士からの寄贈品である(Hwangら(1987年)、Cell、第48巻、129〜136頁)。PE遺伝子をEcoRIとHindIIIによる消化によりpJH4から単離し、単離したPE遺伝子を同じ制限酵素(EcoRIおよびHindIII)の接着末端を有する別のプラスミドpET24aに挿入することにより、プラスミドpET24a−PEを作成した。得られたプラスミドで大腸菌BL21株(DE3)を形質転換した。プラスミドを含む細菌を、カナマイシンを50μg/mLの濃度で含むLBブロス中、37℃で培養した。600nmにおける吸光度が0.6に達した時点で、イソプロピル−1−チオ−β−D−ガラクトシドを終濃度1mMとなるように添加した。150分後、細菌をハーベストし、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)で2回洗浄し、PE富化大腸菌を得た。細菌をアルテミアに給餌するまで−20℃で保存し、発現PEタンパク質をSDS−PAGEを用いて分析した。
【0014】
(PE富化アルテミアノープリウス幼生の調製)
連続光と十分な空気を与えた状態で、29±1℃の新鮮な海水中でアルテミアノープリウス幼生を孵化させた。孵化後40時間目にアルテミア幼生を回収し、PE富化大腸菌(または対照大腸菌)を給餌した。給餌後、アルテミアノープリウス幼生を回収し、PBSで5回洗浄した。アルテミアノープリウス幼生は直ちにゼブラフィッシュに給餌するか、または後で使用または分析するために−20℃で保存した。
【0015】
(SDS−PAGE電気泳動およびウェスタンブロッティング)
アルテミア試料中のPEタンパク質を、Protein Assay Kit(米国94547カリフォルニア州ハーキュリーズ、アルフレッドノーベルドライブ2000に所在のバイオラッド(BIO−RAD))を用いて分析した。試料をLaemmliバッファ(ラムリ、ユー.ケイ.(Laemmli,U.K.)(1970年)、Nature(ロンドン)、第227巻、650〜685頁)中にホモジナイズし、5分間煮沸した。SDSを含む8%ポリアクリルアミドゲル(SDS−PAGE)によってPEタンパク質を分析し、電気泳動後にクーマシーブルーで染色した。PEタンパク質は大腸菌が発現した全タンパク質の40%を超えていた。イムノブロッティングアッセイにおいては、試料中のPEタンパク質をゲル上で電気泳動し、ニトロセルロース紙に転写し、ウサギ抗PE抗体および二次抗体(アルカリホスファターゼとコンジュゲートしたヤギ抗ウサギ抗体)とともにインキュベートした後、アルカリホスファターゼ基質(バイオラッド)で染色した。実験は業者(バイオラッド)の推奨する条件下で実施した。抗PE抗体は、免疫化によりウサギにおいて産生させた。フロイント完全アジュバント中に乳化させた250μgのPEタンパク質をウサギに投与した。プールしたウサギ抗PE抗体画分をウェスタンブロット分析用に調製した。
【0016】
(ワクチン投与計画)
PE富化アルテミアノープリウス幼生を、ワクチン投与前24時間絶食させたゼブラフィッシュに給餌した。給餌の間、水流は停止させた。給餌は1日に4回行った。対照の魚(ワクチン非投与魚)には、対照のアルテミアノープリウス幼生を給餌した。6週間後、ワクチン投与魚とワクチン非投与魚のいずれにも、ペレット状の乾燥餌を給餌した。3週間後、PE毒素(シグマ(Sigma))を用いて魚に負荷をかけた。
【0017】
(PE毒素による負荷試験)
ゼブラフィッシュにおけるPEのLD50値を求めるために、5つの実験群(各群につき6匹のワクチン非投与魚)について試験した。5群を24時間絶食させ、200ppmの2−フェノキシエタノールを用いて麻酔し、それぞれ、0,0.5,1,1.5および2μgのPE毒素を腹腔内注射した。このようにして、ゼブラフィッシュに対するPEのLD50値は、50日齢のゼブラフィッシュにおいて1〜1.2μgの範囲であると決定された。続く実験において、1.2μgのPE毒素を用いてワクチン投与魚に負荷をかけた。
【0018】
(魚におけるPE摂取の免疫組織化学的研究)
富化アルテミアノープリウス幼生を給餌した後、6群(各群3匹)をそれぞれ、0,1,2,3,6および12時間目に屠殺し、氷上に1分間おいた。魚を解剖して、4%ホルマリン中で一晩固定し、PBSでリンスして脱水した後、パラフィンワックス中に包埋した。連続切片に裁断し、ポリ−L−リジン処理したスライドグラス上に置き、3%H2O2含有PBS溶液とともにインキュベートして内在性ペルオキシダーゼを不活性化した。次にスライドグラスをPBS−E(1mM EDTA含有PBS)でリンスし、50%エタノール(エタノール50%と水50%(体積比))および90%エタノール(エタノール90%と水10%(体積比))で脱水した。ウサギ抗PE血清(1:1000)と、ヤギ抗ウサギ抗体の西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)コンジュゲート(1:200)とを用いたイムノペルオキシダーゼ反応により、PEタンパク質を検出した。コンジュゲートをHRP基質(0.012%(体積比)過酸化水素水)および色素体(0.4mg/mL)によって可視化した。切片にアミノエチルカルバゾールを15分間作用させた後、スライドグラスをPBS−Eで2回洗浄した。切片を酸ヘマトキシリンで5分間対比染色し、アンモニア水で1分間処理して青色にしてから、PBSでリンスした。検出は、封入剤として水を用い、スライドグラスを顕微鏡下、40〜400倍率で観察することによって行った。組換えPEを含む組織は赤褐色に染まった。
【0019】
(結果)
(LD50の決定)
ゼブラフィッシュの体重は同じ日齢であっても異なるため、50日齢のゼブラフィッシュに対するPE毒素のLD50値は、1〜1.2μgであると決定され、1匹あたり1.2μgを負荷用量として用いた。LD50を確認するために、21匹のワクチン非投与魚に対して腹腔内注射による負荷をかけた。この群においては、10匹(50%)が1週間以内に死亡し、7匹(33%)が2〜3日で死亡した。さらに、80%を超える魚についてその皮膚および脂肪組織に出血症状が観察された。全ての魚が注射後7〜10日までの間に食欲を失った。これに対し、PBSを腹腔内注射した対照の魚は、出血の症状もみせず、食欲を失ったのはわずか1日の間であった。
【0020】
(経口ワクチンの効力)
経口ワクチンを給餌することによってワクチン投与を受けた16匹の魚に対して、1.2μgのPE毒素の腹腔内注射による負荷をかけた。4匹のワクチン投与魚が5日以内に死亡した(死亡率25%)。比較対照としては、ワクチン非投与群(通常の大腸菌で飼育したアルテミアによる模擬ワクチン投与群)の6匹の魚のうち、4匹の魚が5日以内に死亡した(死亡率75%)。この結果から、アルテミアの体内に閉じ込められた組換え大腸菌を含む経口ワクチンは有効であることが分かる。さらに、ワクチン投与魚は食欲を失ってもいたが、ワクチン非投与群のPE負荷から生き延びた魚に比べて2〜3日早く回復した。
【0021】
(富化アルテミアノープリウス幼生の至適調製時間)
富化アルテミアの至適調製時間を見積もるために、PEタンパク質を発現する大腸菌(BL21,DE3)を、アルテミアノープリウス幼生に給餌した。給餌後、0,15,30,45,60,90および120分の時点でアルテミアノープリウス幼生を屠殺し、PBSで5回洗浄して表面に付着した大腸菌を除去した。アルテミアノープリウス幼生試料を6M尿素中に懸濁し、超音波破砕した。該試料から抽出されたPEタンパク質をSDS−PAGEによって分析し、ウサギ抗PE抗体を用いたウェスタンブロッティング分析によって検出した(上記参照)。この結果、アルテミアノープリウス幼生中のPEタンパク質の量は給餌後に増加し、30分〜60分後に安定期に達し、その後降下することが分かる。したがって、上記の実験例におけるアルテミアノープリウス幼生の至適給餌時間は45分間である。
【0022】
(組換え型および細菌由来の天然型抗原の比較)
PE毒素を産生するPsudomonas aeruginosaの6つの菌株(ATCC15693,ATCC29260,ATCC33449,ATCC33354,ATCC33355およびATCC33359)と、PE富化組換え大腸菌とを別個にアルテミアノープリウス幼生に給餌した。上記7種のアルテミアノープリウス幼生試料より抽出したPEタンパク質をSDS−PAGEで分析し、ウサギ抗PE抗体を用いたウェスタンブロッティング分析(上記参照)によって検出した。PE富化組換え大腸菌で飼育したアルテミアは、PAGEゲル分析によって容易に観察可能な量のPEタンパク質を含んでいたが、Pseudomonas aeruginosaの6菌株で飼育したアルテミアは、PAGEゲル分析において検出可能な量のPEタンパク質を全く示さなかった。この結果から、特異的抗原を有する組換え大腸菌を給餌すると、アルテミアを未処理の細菌病原体で飼育する従来技術と比べて、抗原の量が増加することが示された。ゴメス‐ギル(Gomez−Gil)ら(1998年)Appl Environ Microbiol 第64巻、第2318〜2322頁を参照のこと。このように、アルテミアノープリウス幼生の体内に閉じ込められた組換えPE富化大腸菌を含む経口ワクチンを摂取した魚は、免疫応答を誘発するのに十分な量のPEタンパク質を得ることができる。
【0023】
(魚の腸内におけるPEタンパク質の摂取)
抗PE抗体を用いたイムノアッセイによる組織学的観察から、アルテミアノープリウス幼生の給餌後1〜3時間の間に魚の腸管内腔にPEタンパク質が観察され、取込みは給餌から2時間で最大量に達することが分かった。データから、PEタンパク質の粒子が粘膜を通過して上皮細胞に進入することが判明した。粒子は6時間後から消失し始め、12時間後には完全に消失していた。
【0024】
(本発明の経口ワクチンの安全性評価)
経口ワクチンを給餌した全ての魚において、形態、食欲、遊泳挙動または死に関する異常は何も見られなかった。
【0025】
(他の実施形態)
本明細書中に開示した全ての特徴は、任意の組み合わせで組み合わせることができる。本明細書中に開示の各特徴は、同一、同等または類似の目的を果たす代替の特徴と置き換え可能である。このように、特に説明しない限り、開示された各特徴は、同等または類似の特徴を包括したものの一例にすぎない。
【0026】
上記の記載から、当業者であれば、本発明の本質的特徴を容易に突き止めることができ、かつ本発明の思想と範囲から逸脱することなく本発明の様々な変更形態および修正形態を作製して、様々な用途や条件に適応させることができる。例えば、上述の経口ワクチンを、他の家畜(例えば、ブタやニワトリ)またはヒトを免疫するため用いることも可能である。このように、他の実施形態も特許請求の範囲に含まれる。
Claims (27)
- ワクチン投与すべき水生動物の飼料として用いられる多細胞生物と、
該多細胞生物に給餌されて該多細胞生物の体内に閉じ込められる単細胞生物とを含む経口ワクチンであって、
単細胞生物は、水生動物内で免疫応答を誘導することにより該水生動物へのワクチン投与を行う組換え抗原を発現するように形質転換されることを特徴とする経口ワクチン。 - 単細胞生物は細菌または酵母であることを特徴とする請求項1に記載の経口ワクチン。
- 多細胞生物は、アルテミア、クルマムシ、藻類、ゾウリムシ、またはカキ胚であることを特徴とする請求項1に記載の経口ワクチン。
- 単細胞生物は細菌または酵母であることを特徴とする請求項3に記載の経口ワクチン。
- 水生動物は魚またはエビであることを特徴とする請求項1に記載の経口ワクチン。
- 水生動物は魚であることを特徴とする請求項5に記載の経口ワクチン。
- 多細胞生物はアルテミアであることを特徴とする請求項6に記載の経口ワクチン。
- 単細胞生物は細菌であることを特徴とする請求項7に記載の経口ワクチン。
- 単細胞生物は大腸菌であることを特徴とする請求項8に記載の経口ワクチン。
- 組換え抗原は細菌性抗原であることを特徴とする請求項9に記載の経口ワクチン。
- 水生動物内で免疫応答を誘導することにより該水生動物にワクチン投与を行う組換え抗原を発現するように形質転換された単細胞生物を提供する工程と、該単細胞生物を多細胞生物に給餌して、該単細胞生物を体内に閉じ込めている多細胞生物を含む経口ワクチンを得る工程とを含む経口ワクチンの調製方法。
- 単細胞生物は細菌または酵母であることを特徴とする請求項11に記載の方法。
- 多細胞生物は、アルテミア、クルマムシ、藻類、ゾウリムシ、またはカキ胚であることを特徴とする請求項11に記載の方法。
- 単細胞生物は細菌または酵母であることを特徴とする請求項13に記載の方法。
- 水生動物は魚またはエビであることを特徴とする請求項11に記載の方法。
- 水生動物は魚であることを特徴とする請求項15に記載の方法。
- 多細胞生物はアルテミアであることを特徴とする請求項16に記載の方法。
- 単細胞生物は細菌であることを特徴とする請求項17に記載の方法。
- 単細胞生物は大腸菌であることを特徴とする請求項18に記載の方法。
- 組換え抗原は細菌性抗原であることを特徴とする請求項19に記載の方法。
- ワクチン投与すべき水生動物に多細胞生物を給餌する工程を含むワクチンの経口送達方法であって、該多細胞生物が、水生動物内で免疫応答を誘導することにより該水生動物へのワクチン投与を行う組換え抗原を発現するように形質転換された単細胞生物を体内に閉じ込めていることを特徴とする方法。
- 単細胞生物は細菌または酵母であることを特徴とする請求項21に記載の方法。
- 多細胞生物は、アルテミア、クルマムシ、藻類、ゾウリムシ、またはカキ胚であることを特徴とする請求項21に記載の方法。
- 水生動物は魚またはエビであることを特徴とする請求項21に記載の方法。
- 水生動物は魚であることを特徴とする請求項24に記載の方法。
- 単細胞生物は大腸菌であり、多細胞生物はアルテミアであることを特徴とする請求項25に記載の方法。
- 組換え抗原は細菌性抗原であることを特徴とする請求項26に記載の方法。
Applications Claiming Priority (2)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
US09/946,273 US6872386B2 (en) | 2001-09-05 | 2001-09-05 | Oral vaccines |
PCT/US2002/028188 WO2003020040A1 (en) | 2001-09-05 | 2002-09-04 | Oral vaccines |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2005501878A true JP2005501878A (ja) | 2005-01-20 |
Family
ID=25484239
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2003524363A Pending JP2005501878A (ja) | 2001-09-05 | 2002-09-04 | 経口ワクチン |
Country Status (6)
Country | Link |
---|---|
US (1) | US6872386B2 (ja) |
EP (1) | EP1429615A4 (ja) |
JP (1) | JP2005501878A (ja) |
NO (1) | NO20040966L (ja) |
TW (1) | TWI227114B (ja) |
WO (1) | WO2003020040A1 (ja) |
Cited By (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2012505193A (ja) * | 2008-10-10 | 2012-03-01 | プロベルテ ファーマ,エス.エー. | 水産養殖用経口投与免疫賦活剤 |
JP2014198722A (ja) * | 2014-07-01 | 2014-10-23 | プロベルテ ファーマ,エス.エー. | 水産養殖用経口投与免疫賦活剤 |
Families Citing this family (5)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
US20050118194A1 (en) * | 2003-12-01 | 2005-06-02 | Sin Yoke M. | Oral vaccine, method for its preparation and use thereof |
US20070292521A1 (en) * | 2006-06-20 | 2007-12-20 | Schwitzer Co., Ltd | Oral Encapsulated Preparation for Aquatic Animals |
US8758774B2 (en) | 2012-07-20 | 2014-06-24 | Kuwait Institute For Scientific Research | Bivalent vaccine for marine fish and method for making the same |
CA2885333C (en) | 2012-09-26 | 2021-02-09 | Fvg Limited | Subunit immersion vaccines for fish |
CN111394381A (zh) * | 2020-03-26 | 2020-07-10 | 上海海洋大学 | mOrange和vp28穿梭载体富集至卤虫无节幼体的方法 |
Family Cites Families (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
US6248329B1 (en) * | 1998-06-01 | 2001-06-19 | Ramaswamy Chandrashekar | Parasitic helminth cuticlin nucleic acid molecules and uses thereof |
WO2001098335A2 (en) * | 2000-06-20 | 2001-12-27 | Phycotransgenics, Llc | Transgenic algae for delivering antigens to an animal |
-
2001
- 2001-09-05 US US09/946,273 patent/US6872386B2/en not_active Expired - Lifetime
-
2002
- 2002-09-04 EP EP02797855A patent/EP1429615A4/en not_active Ceased
- 2002-09-04 WO PCT/US2002/028188 patent/WO2003020040A1/en active Application Filing
- 2002-09-04 JP JP2003524363A patent/JP2005501878A/ja active Pending
- 2002-09-05 TW TW091120281A patent/TWI227114B/zh not_active IP Right Cessation
-
2004
- 2004-03-05 NO NO20040966A patent/NO20040966L/no not_active Application Discontinuation
Cited By (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2012505193A (ja) * | 2008-10-10 | 2012-03-01 | プロベルテ ファーマ,エス.エー. | 水産養殖用経口投与免疫賦活剤 |
JP2014198722A (ja) * | 2014-07-01 | 2014-10-23 | プロベルテ ファーマ,エス.エー. | 水産養殖用経口投与免疫賦活剤 |
Also Published As
Publication number | Publication date |
---|---|
EP1429615A1 (en) | 2004-06-23 |
WO2003020040A1 (en) | 2003-03-13 |
TWI227114B (en) | 2005-02-01 |
NO20040966D0 (no) | 2004-03-05 |
EP1429615A4 (en) | 2005-05-11 |
US20030044450A1 (en) | 2003-03-06 |
US6872386B2 (en) | 2005-03-29 |
NO20040966L (no) | 2004-04-22 |
Similar Documents
Publication | Publication Date | Title |
---|---|---|
Kumar et al. | Protective efficiency of DNA vaccination in Asian seabass (Lates calcarifer) against Vibrio anguillarum | |
KR102007132B1 (ko) | 캄필로박터 감염을 감소시키기 위한 백신 및 방법 | |
Plant et al. | Vaccination of rainbow trout, Oncorhynchus mykiss (Walbaum), with recombinant and DNA vaccines produced to Flavobacterium psychrophilum heat shock proteins 60 and 70 | |
JPH10500958A (ja) | Helicobacterの感染症の治療および予防 | |
JP2008517595A (ja) | ワクチンと核酸 | |
BR112015019283B1 (pt) | Composições e métodos de aprimoramento de respostas imunes à eiméria ou infecção por eiméria limitadora | |
Kahieshesfandiari et al. | Streptococcosis in Oreochromis sp.: is feed-based biofilm vaccine of Streptococcus agalactiae effective? | |
Yao et al. | Live recombinant Lactococcus lactis vaccine expressing immobilization antigen (i-Ag) for protection against Ichthyophthirius multifiliis in goldfish | |
JP5745731B2 (ja) | サルモネラワクチン | |
Zhao et al. | Surface display of hirame novirhabdovirus (HIRRV) G protein in Lactococcus lactis and its immune protection in flounder (Paralichthys olivaceus) | |
JP2024023648A (ja) | 免疫刺激性ポリペプチドおよび抗原性ポリペプチドを含む酵母ワクチンベクター並びにそれを使用する方法 | |
Cai et al. | Oral immunization with surface immunogenic protein from Streptococcus agalactiae expressed in Lactococcus lactis induces protective immune responses of tilapia (Oreochromis niloticus) | |
JP2005501878A (ja) | 経口ワクチン | |
JP5362167B2 (ja) | アルスロバクター由来のHsp70 | |
Roland et al. | Expression of Escherichia coli antigens in Salmonella typhimurium as a vaccine to prevent airsacculitis in chickens | |
Ling et al. | A recombinant adenovirus targeting typical Aeromonas salmonicida induces an antibody-mediated adaptive immune response after immunization of rainbow trout | |
US7807144B2 (en) | Oral vaccines | |
Hoan et al. | Identification and immunogenicity of microneme protein 2 (EbMIC2) of Eimeria brunetti | |
US8431138B2 (en) | In ovo vaccination of Campylobacter in avian species | |
HU203673B (en) | Process for producing vaccine for prophilacting escherichia coli toxaemia of domestical birds | |
AU2002332840A1 (en) | Oral vaccines | |
BR112020004003A2 (pt) | vacina recombinante contra enteropatia proliferativa em animais | |
US20130216589A1 (en) | Oral vaccine for aquatic animals | |
Kwon | Comparison of the immunogenicity between bacterial ghost and formalin-killed bacteria for Vibrio vulnificus | |
BRPI0314258B1 (pt) | Sequência de ácido nucleico, fragmento de dna, molécula de dna recombinante, vetor, célula hospedeira microbiana, uso dos mesmos, vacina para combater infecção por ostertagia ostertagi, método para a preparação de uma vacina, e, kit diagnóstico |
Legal Events
Date | Code | Title | Description |
---|---|---|---|
A621 | Written request for application examination |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621 Effective date: 20050831 |
|
A131 | Notification of reasons for refusal |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131 Effective date: 20081111 |
|
A02 | Decision of refusal |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A02 Effective date: 20090602 |