JP2005501525A - リン酸化の蛍光比測定インディケーター - Google Patents
リン酸化の蛍光比測定インディケーター Download PDFInfo
- Publication number
- JP2005501525A JP2005501525A JP2002592517A JP2002592517A JP2005501525A JP 2005501525 A JP2005501525 A JP 2005501525A JP 2002592517 A JP2002592517 A JP 2002592517A JP 2002592517 A JP2002592517 A JP 2002592517A JP 2005501525 A JP2005501525 A JP 2005501525A
- Authority
- JP
- Japan
- Prior art keywords
- fluorescent protein
- chimeric
- kinase
- domain
- chimeric phosphorylation
- Prior art date
- Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
- Pending
Links
Images
Classifications
-
- C—CHEMISTRY; METALLURGY
- C07—ORGANIC CHEMISTRY
- C07K—PEPTIDES
- C07K14/00—Peptides having more than 20 amino acids; Gastrins; Somatostatins; Melanotropins; Derivatives thereof
- C07K14/435—Peptides having more than 20 amino acids; Gastrins; Somatostatins; Melanotropins; Derivatives thereof from animals; from humans
- C07K14/43504—Peptides having more than 20 amino acids; Gastrins; Somatostatins; Melanotropins; Derivatives thereof from animals; from humans from invertebrates
- C07K14/43595—Peptides having more than 20 amino acids; Gastrins; Somatostatins; Melanotropins; Derivatives thereof from animals; from humans from invertebrates from coelenteratae, e.g. medusae
-
- C—CHEMISTRY; METALLURGY
- C12—BIOCHEMISTRY; BEER; SPIRITS; WINE; VINEGAR; MICROBIOLOGY; ENZYMOLOGY; MUTATION OR GENETIC ENGINEERING
- C12Q—MEASURING OR TESTING PROCESSES INVOLVING ENZYMES, NUCLEIC ACIDS OR MICROORGANISMS; COMPOSITIONS OR TEST PAPERS THEREFOR; PROCESSES OF PREPARING SUCH COMPOSITIONS; CONDITION-RESPONSIVE CONTROL IN MICROBIOLOGICAL OR ENZYMOLOGICAL PROCESSES
- C12Q1/00—Measuring or testing processes involving enzymes, nucleic acids or microorganisms; Compositions therefor; Processes of preparing such compositions
- C12Q1/34—Measuring or testing processes involving enzymes, nucleic acids or microorganisms; Compositions therefor; Processes of preparing such compositions involving hydrolase
- C12Q1/37—Measuring or testing processes involving enzymes, nucleic acids or microorganisms; Compositions therefor; Processes of preparing such compositions involving hydrolase involving peptidase or proteinase
-
- C—CHEMISTRY; METALLURGY
- C12—BIOCHEMISTRY; BEER; SPIRITS; WINE; VINEGAR; MICROBIOLOGY; ENZYMOLOGY; MUTATION OR GENETIC ENGINEERING
- C12Q—MEASURING OR TESTING PROCESSES INVOLVING ENZYMES, NUCLEIC ACIDS OR MICROORGANISMS; COMPOSITIONS OR TEST PAPERS THEREFOR; PROCESSES OF PREPARING SUCH COMPOSITIONS; CONDITION-RESPONSIVE CONTROL IN MICROBIOLOGICAL OR ENZYMOLOGICAL PROCESSES
- C12Q1/00—Measuring or testing processes involving enzymes, nucleic acids or microorganisms; Compositions therefor; Processes of preparing such compositions
- C12Q1/34—Measuring or testing processes involving enzymes, nucleic acids or microorganisms; Compositions therefor; Processes of preparing such compositions involving hydrolase
- C12Q1/42—Measuring or testing processes involving enzymes, nucleic acids or microorganisms; Compositions therefor; Processes of preparing such compositions involving hydrolase involving phosphatase
-
- C—CHEMISTRY; METALLURGY
- C12—BIOCHEMISTRY; BEER; SPIRITS; WINE; VINEGAR; MICROBIOLOGY; ENZYMOLOGY; MUTATION OR GENETIC ENGINEERING
- C12Q—MEASURING OR TESTING PROCESSES INVOLVING ENZYMES, NUCLEIC ACIDS OR MICROORGANISMS; COMPOSITIONS OR TEST PAPERS THEREFOR; PROCESSES OF PREPARING SUCH COMPOSITIONS; CONDITION-RESPONSIVE CONTROL IN MICROBIOLOGICAL OR ENZYMOLOGICAL PROCESSES
- C12Q1/00—Measuring or testing processes involving enzymes, nucleic acids or microorganisms; Compositions therefor; Processes of preparing such compositions
- C12Q1/48—Measuring or testing processes involving enzymes, nucleic acids or microorganisms; Compositions therefor; Processes of preparing such compositions involving transferase
- C12Q1/485—Measuring or testing processes involving enzymes, nucleic acids or microorganisms; Compositions therefor; Processes of preparing such compositions involving transferase involving kinase
-
- G—PHYSICS
- G01—MEASURING; TESTING
- G01N—INVESTIGATING OR ANALYSING MATERIALS BY DETERMINING THEIR CHEMICAL OR PHYSICAL PROPERTIES
- G01N33/00—Investigating or analysing materials by specific methods not covered by groups G01N1/00 - G01N31/00
- G01N33/48—Biological material, e.g. blood, urine; Haemocytometers
- G01N33/50—Chemical analysis of biological material, e.g. blood, urine; Testing involving biospecific ligand binding methods; Immunological testing
- G01N33/53—Immunoassay; Biospecific binding assay; Materials therefor
- G01N33/536—Immunoassay; Biospecific binding assay; Materials therefor with immune complex formed in liquid phase
- G01N33/542—Immunoassay; Biospecific binding assay; Materials therefor with immune complex formed in liquid phase with steric inhibition or signal modification, e.g. fluorescent quenching
-
- C—CHEMISTRY; METALLURGY
- C07—ORGANIC CHEMISTRY
- C07K—PEPTIDES
- C07K2319/00—Fusion polypeptide
-
- G—PHYSICS
- G01—MEASURING; TESTING
- G01N—INVESTIGATING OR ANALYSING MATERIALS BY DETERMINING THEIR CHEMICAL OR PHYSICAL PROPERTIES
- G01N2333/00—Assays involving biological materials from specific organisms or of a specific nature
- G01N2333/435—Assays involving biological materials from specific organisms or of a specific nature from animals; from humans
- G01N2333/43504—Assays involving biological materials from specific organisms or of a specific nature from animals; from humans from invertebrates
- G01N2333/43595—Assays involving biological materials from specific organisms or of a specific nature from animals; from humans from invertebrates from coelenteratae, e.g. medusae
Abstract
Description
【0001】
本発明は概ね、キナーゼおよびホスファターゼ活性を測定するための試薬、より具体的には2つの蛍光タンパク質とリン酸化可能(phosphorylatable)ドメインとを含有するキメラタンパク質、およびかかるキメラタンパク質を用いてキナーゼ活性またはホスファターゼ活性を検出する方法、に関する。
【背景技術】
【0002】
リン酸化とは、個々のタンパク質を翻訳後に修飾してその機能をモジュレートする最も重要な方法であり、一方事実上全てのシグナル伝達はタンパク質-タンパク質相互作用の動力学を必要とする。主なリン酸化/脱リン酸化事象、および例えば心筋細胞やBリンパ球の機能を含む細胞機能に関わる相互作用するタンパク質パートナーを列挙するために、様々な技術が使用されている。しかし、現在最も一般的に使用されている技術、例えば2次元ゲル電気泳動、質量分析、免疫共沈降アッセイ、およびツーハイブリッドスクリーニング手段では、多数の細胞を破壊するかまたは遺伝子を異種生物に導入する必要がある。そのため、これらの方法はその時間的および空間的分解能が低く、ミリ秒〜分のタイムスケールで生じる拘縮や走化性などの生理学的機能を直接精査するには不十分である。
【0003】
単一細胞内の特定のタンパク質のリン酸化を検出する際に最も広く用いられている方法では、リン酸化形態の抗原と脱リン酸化形態の抗原とを識別する抗体を利用する。かかる抗体は、原則として、細胞を試験のために固定する直前の内因性タンパク質のリン酸化状態を、外因性基質を導入すること無しに明らかにすることができる。しかし、リン酸化形態のタンパク質と非リン酸化形態のタンパク質とを識別できる抗体の同定は時間がかかる上に高価である。さらに、必要とされる免疫細胞化学は単調で、これを組み直して定量的なタイムコースとするのは難しい。
【0004】
単一細胞においてリン酸化の動力学的記録を行うため、ペプチドを、アクリロダン、すなわち該ペプチドのリン酸化に対して感受性を示す蛍光を有するプローブで、標識する。例えば、アクリロダンをミオシン軽鎖由来のペプチドに結合させた場合、in vitroリン酸化時の発光ピークの振幅におよそ40%の減少が観察された。繊維芽細胞中にマイクロインジェクションした場合、該ペプチドはストレスファイバー内に取り込まれたが、何の動的変化も観察されなかった。またCaMKIIおよびPKAの基質をアクリロダンを用いて標識し、キナーゼに曝露した後の蛍光は、それぞれ初期値の約200%および97%であった。これらのペプチドは生細胞を染めるのに十分なほど疎水的であり、初期蛍光の10〜20%に及ぶ局所的な強度変化が幾つかの領域でみられた。前記PKA基質の蛍光は、in vitroでみられる感受性からは説明し得ないほど大幅な量にて細胞質基質で減少し、また同時に核内で増大した。この結果は、転位などのより複雑な要素が優勢に立っていることを意味している。
【0005】
これらのアクリロダン標識ペプチドの使用に関するその後の研究は報告されていないが、リン酸化感受性蛍光基質を開発するというアプローチに取り組む価値があるだろう。しかし、アクリロダン標識ペプチドを使用しても、リン酸化感受性に対する合理的機構は明らかにはならない。従って、細胞内のリン酸化または脱リン酸化事象を検出するために使用しうるリン酸化感受性インディケーターが必要とされる。本発明はこの需要を満たし、かつさらなる利点を提供するものである。
【発明の開示】
【0006】
発明の概要
本発明は、機能しうる形での連結によりドナー分子、リン酸化可能ドメイン、ホスホアミノ酸結合ドメイン、およびアクセプター分子を含有するキメラリン酸化インディケーター(indicator)であって、該ホスホアミノ酸結合ドメインは該リン酸化可能ドメイン中に存在するホスホアミノ酸と特異的に結合し、該ドナー分子および該アクセプター分子は該ドナー分子が励起された場合に検出可能な共鳴エネルギー移動を呈し、また該リン酸化可能ドメインおよびホスホアミノ酸結合ドメインは該アクセプター分子を励起する光を実質的に発しない、前記キメラリン酸化インディケーターに関する。該ドナー分子または該アクセプター分子またはこれらの両方は、蛍光タンパク質、または発光分子、またはその組み合わせであってよい。ある実施形態では、該ドナー分子と該アクセプター分子のいずれもが蛍光タンパク質である。別の実施形態では、該ドナー分子または該アクセプター分子のいずれか一方が発光分子であり、他方が蛍光タンパク質である。3番目の実施形態では、該ドナー分子および該アクセプター分子のいずれもが発光分子である。
【0007】
本発明のキメラリン酸化インディケーターが蛍光タンパク質であるドナー分子を含有している場合には、共鳴エネルギー移動を蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)として検出することができる。該ドナー分子が発光分子である場合には、共鳴エネルギー移動を発光共鳴エネルギー移動として検出する。本明細書中に開示したキメラリン酸化インディケーターの特定の構造に応じて、キナーゼにより該インディケーターをリン酸化することでFRETもしくはLRETを増大または減少させることが可能であり、また同様にホスファターゼにより該インディケーターをリン酸化することでFRETもしくはLRETを増大または減少させることが可能である。FRETまたはLRETにおける変化は、前記アクセプター分子の発光スペクトルをモニターすることによって測定できる。
【0008】
キメラリン酸化インディケーター中の蛍光タンパク質は、緑色蛍光タンパク質(GFP)、赤色蛍光タンパク質(RFP)、または非オリゴマー化蛍光タンパク質を含むGFPもしくはRFP関連蛍光タンパク質であってよい。RFPは、例えばディスコソマ(Discosoma)RFPまたはディスコソマ(Discosoma)RFP関連蛍光タンパク質、例えばディスコソマ(Discosoma)DsRed(配列番号12)やその変異体(I125R変異を含む配列番号12)、もしくは例えばペプチドリンカーにより機能しうる形で連結された2つのRFP単量体を含有する非オリゴマー化直列型DsRedなどであってよい。例えば、非オリゴマー化直列型RFPには、配列番号13に記載のアミノ酸配列を有するペプチドに機能しうる形で連結された2つのDsRed(配列番号12)単量体または2つの変異型DsRed-l125R単量体を含有していてもよい。
【0009】
キメラリン酸化インディケーターにおいて有用なGFPは、エクオレア(Aequorea)GFP、レニラ(Renilla)GFP、フィアリジウム(Phialidium)GFP、または、エクオレア(Aequorea)GFP、レニラ(Renilla)GFP、もしくはフィアリジウム(Phialidium)GFP関連蛍光タンパク質であってよい。エクオレア(Aequorea)GFP関連蛍光タンパク質は、例えばシアン色蛍光タンパク質(CFP)、または黄色蛍光タンパク質(YFP)、または、増強型GFP(EGFP;配列番号4)、増強型CFP(ECFP;配列番号6)、ECFP(1〜227)(配列番号6のアミノ酸1〜227)、EYFP・V68L/Q69K(配列番号10)、もしくは増強型YFP(EYFP;配列番号8)を含む該CFPまたはYFPのスペクトル変種であってよい。さらに、該蛍光タンパク質は、配列番号2のA206、L221、F223、またはその組み合わせに相当するアミノ酸残基の変異、例えば配列番号2のA206K変異、L221K変異、F223R変異、もしくはL221KおよびF223R変異、または配列番号6もしくは配列番号10のA206K変異、L221K変異、F223R変異、もしくはL221KおよびF223R変異を含んでいてもよい。
【0010】
キメラリン酸化インディケーターにおいて有用な発光分子は、例えばキレート形態をとり得るランタニドであってよく、これには該キレートを含有するランタニド複合体が含まれる。従って、該発光分子はテルビウムイオン(Tb3+)キレート、例えばTb3+とトリエチレンテトラミン六酢酸(TTHA)とのキレートであってよく、また該Tb3+キレートに機能しうる形で連結されたカルボスチリル124をさらに含んでいてもよい。例えば前記キメラリン酸化インディケーターを細胞と接触させて該細胞内のキナーゼまたはホスファターゼの存在を検出しようとする場合、該発光分子は配列番号18に示すような膜転位ドメインをさらに含んでいてもよい。該発光分子に連結しようとするこのような膜転位ドメインまたは他の分子は、例えば配列番号17に示すようなテトラシステインモチーフを用いて機能しうる形で連結することができる。
【0011】
本発明のキメラリン酸化インディケーター中のリン酸化可能ドメインは、特定のキナーゼ、例えばセリン/トレオニンキナーゼもしくはチロシンキナーゼによりリン酸化され得る任意の分子、またはリン酸基を含有しかつ特定のホスファターゼにより脱リン酸化され得る任意の分子であればよい。従って、該リン酸化可能ドメインは合成ペプチド、天然のキナーゼまたはホスファターゼ基質のペプチド部分、ペプチドミメティック、ポリヌクレオチドなどであってよい。例として、セリン/トレオニンキナーゼドメインは配列番号20または配列番号32に示すようなアミノ酸配列を含んでいてもよく、またチロシンキナーゼリン酸化可能ドメインは配列番号23または配列番号25に示すようなアミノ酸配列を含んでいてもよい。
【0012】
本発明のキメラリン酸化インディケーター中のホスホアミノ酸結合ドメイン(PAABD)は、該インディケーター中に存在するかまたはキナーゼによる該インディケーターのリン酸化の結果形成され得る特定のホスホアミノ酸に特異的に結合するPAABDであってよい。例えば、前記リン酸化可能ドメインがセリン/トレオニンキナーゼドメインである場合、ホスホセリンまたはホスホセリンまたはこれら両方に結合するようにホスホアミノ酸結合ドメイン、例えば14-3-3τ(1〜232)ペプチドを選択する。前記リン酸化可能ドメインがチロシンキナーゼドメインである場合、ホスホチロシンに結合するようにホスホアミノ酸結合ドメイン、例えばSrcホモロジードメイン2(SH2)を選択する。
【0013】
セリン/トレオニンキナーゼの存在を検出するのに特異的なキメラリン酸化インディケーターを、アミノ末端からカルボキシ末端の方向に、ECFP(1〜227)(配列番号6のアミノ酸1〜227)、MHリンカー、14-3-3τ(1〜232)ホスホアミノ酸結合ドメイン、AGGTGGS((配列番号19)リンカー、LRRASLP (配列番号20)リン酸化可能ドメイン、GGTGGSEL(配列番号21)リンカー、およびシトリンを含有する融合タンパク質として本明細書中に例示する。チロシンキナーゼの存在を検出するのに特異的なキメラリン酸化インディケーターを、アミノ末端からカルボキシ末端の方向にECFP(1〜227)(配列番号6のアミノ酸1〜227 )分子、Shcから得たSH2ホスホアミノ酸結合ドメイン、GSHSGSGKP (配列番号22)リンカー、EEEAEYMNMAPQS(配列番号23)を含むリン酸化可能ドメイン、およびシトリンを含有するEGFRインディケーターとして、あるいは、アミノ末端からカルボキシ末端の方向にECFP(1〜227)(配列番号6のアミノ酸1〜227)、c-srcから得たSH2ホスホアミノ酸結合ドメイン、GSTSGSGKPGSGEGS(配列番号24)、EIYGEF(配列番号25)を含むリン酸化可能ドメイン、およびシトリンを含有するSrcインディケーターとして、本明細書中に例示する。
【0014】
ある実施形態では、キメラリン酸化インディケーター中のリン酸化可能ドメインにおいてキナーゼによりリン酸化され得る特定のアミノ酸がリン酸化されておらず、そのため該インディケーターを使用して試料中のキナーゼの存在を検出することができる。別の実施形態では、 該キメラリン酸化インディケーター中の該リン酸化可能ドメインにおいてキナーゼによりリン酸化され得る特定のアミノ酸がリン酸化されており、そのため該インディケーターを使用して試料中のホスファターゼの存在を検出することができる。ここでいう特定のアミノ酸は、キナーゼによりリン酸化され得るかまたはホスファターゼにより脱リン酸化され得るアミノ酸、例えばセリン、トレオニン、チロシン、またはその組み合わせでありうる。
【0015】
本発明はまた、リン酸化可能ポリペプチドと蛍光タンパク質とを含有するキメラリン酸化インディケーターに関する。該リン酸化可能ポリペプチドにおいてキナーゼによりリン酸化され得る特定のアミノ酸はリン酸化されていなくてもよく、この場合は該インディケーターを使用してキナーゼ活性を検出することができる。あるいは該アミノ酸はリン酸化されていてもよく、この場合は該インディケーターを使用してホスファターゼ活性を検出することができる。
【0016】
リン酸化可能ポリペプチドと蛍光タンパク質とを含有するキメラリン酸化インディケーターの1実施形態では、該リン酸化可能ポリペプチドはN末端部分とC末端部分とを含み、かつ該蛍光タンパク質は該リン酸化可能ポリペプチドのN末端部分とC末端部分との間に機能しうる形で挿入されている。該蛍光タンパク質は、例えばGFP、RFP、またはGFPもしくはRFP関連蛍光タンパク質などの任意の蛍光タンパク質であってよく、また環状に並び替えられた形態であってもよい。該リン酸化可能ポリペプチドは、キナーゼ、例えばチロシンキナーゼもしくはセリン/トレオニンキナーゼ、またはホスファターゼの基質でありうる。該蛍光タンパク質は、基質として機能する該リン酸化可能ポリペプチドの能力が破壊されない限りは、該ポリペプチドの任意の領域、例えば、ヒンジ領域またはターン領域内に機能しうる形で挿入することができる。
【0017】
別の実施形態では、リン酸化可能ポリペプチドと蛍光タンパク質とを含有するキメラリン酸化インディケーターは、該リン酸化可能ポリペプチドに機能しうる形で連結されたホスホアミノ酸結合ドメインをさらに含有していてもよく、ここで該蛍光タンパク質はN末端部分とC末端部分とを含み、かつ該リン酸化可能ポリペプチドとそれに機能しうる形で連結されたホスホアミノ酸結合ドメインは該蛍光タンパク質のN末端部分とC末端部分との間に機能しうる形で挿入されている。該蛍光タンパク質はGFP、RFP、またはGFPもしくはRFP関連蛍光タンパク質を含む任意の蛍光タンパク質であってよい。例えば、該蛍光タンパク質はEYFPであってよく、また該リン酸化可能ポリペプチドとそれに機能しうる形で連結されたホスホアミノ酸結合ドメインは該EYFPのアミノ酸位置145と146に相当するアミノ酸配列の間に機能しうる形で挿入されていても、あるいはアミノ酸145と置換されていてもよい。
【0018】
また本発明は、機能しうる形での連結によりドナー分子、リン酸化可能ドメイン、ホスホアミノ酸結合ドメイン、およびアクセプター分子を含有するキメラリン酸化インディケーターをコードするポリヌクレオチドであって、該ホスホアミノ酸結合ドメインは該リン酸化可能ドメイン中に存在するホスホアミノ酸と特異的に結合し、該ドナー分子および該アクセプター分子は該ドナー分子が励起された場合に検出可能な共鳴エネルギー移動を呈し、また該リン酸化可能ドメインおよびホスホアミノ酸結合ドメインは該アクセプター分子を励起する光を実質的に発しない、前記ポリヌクレオチドに関する。さらに本発明は、リン酸化可能ポリペプチドと蛍光タンパク質とを含有するキメラリン酸化インディケーターをコードするポリヌクレオチドに関し、ここで該リン酸化可能ポリペプチドはN末端部分とC末端部分とを含み、また該蛍光タンパク質は該リン酸化可能ポリペプチドのN末端部分とC末端部分との間に機能しうる形で挿入されている。本発明はさらに、リン酸化可能ポリペプチドに機能しうる形で連結されたホスホアミノ酸結合ドメインと蛍光タンパク質を含有するキメラリン酸化インディケーターをコードするポリヌクレオチドに関し、ここで該蛍光タンパク質はN末端部分とC末端部分とを含み、また該リン酸化可能ポリペプチドとそれに機能しうる形で連結されたホスホアミノ酸結合ドメインは該蛍光タンパク質のN末端部分とC末端部分との間に機能しうる形で挿入されている。
【0019】
さらに本発明のポリヌクレオチドを含有するベクターが提供され、これには発現ベクター、ならびに本発明のポリヌクレオチドまたは該ポリヌクレオチドを含有するベクターを含有する宿主細胞が含まれる。ある実施形態では、本発明のポリヌクレオチドは、発現制御配列、例えば転写調節エレメント、翻訳調節エレメント、またはそれらの組み合わせに機能しうる形で連結されている。別の実施形態では、該ポリヌクレオチドは膜転位ドメインまたは細胞区画化ドメインをコードするヌクレオチド配列に機能しうる形で連結されている。
【0020】
また本発明は、本発明のキメラリン酸化インディケーター、またはかかるインディケーターをコードするポリヌクレオチドを少なくとも1つ含有するキットに関する。本発明のキットは、複数の異なるキメラリン酸化インディケーター、該インディケーターをコードするポリヌクレオチド、ならびにそれらの組み合わせをさらに含有していてもよい。キットが複数の異なるキメラリン酸化インディケーターを含有している場合、これらの異なるインディケーターは、該キメラリン酸化可能インディケーターにとって適切な、異なるリン酸化可能ドメイン、または異なるドナー分子もしくはアクセプター分子もしくはその両方、または異なる蛍光タンパク質を含有していてもよい。キットがキメラリン酸化可能インディケーターをコードするポリヌクレオチドを含有している場合、該ポリヌクレオチドはベクター中もしくは宿主細胞中に存在していてもよく、また1つ以上の発現制御配列に機能しうる形で連結されていてもよい。キットが複数の異なるポリヌクレオチドを含有している場合、該ポリヌクレオチドは異なるキメラリン酸化インディケーターをコードしていてもよく、または各々が異なる発現制御配列を含有していてもよく、または異なるベクター中、特に異なる発現ベクター中に含まれていてもよい。
【0021】
さらに本発明は、試料中のキナーゼまたはホスファターゼを検出する方法に関する。ある実施形態では、例えば該試料を、機能しうる形での連結によりドナー分子、リン酸化可能ドメイン、ホスホアミノ酸結合ドメイン、およびアクセプター分子を含有するキメラリン酸化可能インディケーターと接触させ(ここで該ホスホアミノ酸結合ドメインは該リン酸化可能ドメイン中に存在するホスホアミノ酸と特異的に結合し、該ドナー分子および該アクセプター分子は該ドナー分子が励起された場合に検出可能な共鳴エネルギー移動を呈し、また該リン酸化可能ドメインおよびホスホアミノ酸結合ドメインは該アクセプター分子を励起する光を実質的に発しない)、該ドナー分子を励起させ、および該試料中の蛍光または発光特性を測定する(ここで該試料中にキナーゼまたはホスファターゼが存在するとFRETまたはLRETの程度に変化が生じ、それによって該試料中のキナーゼまたはホスファターゼが検出される)ことによって、本発明の方法を実施する。ここでいうFRETもしくはLRETの程度における変化とは、FRETもしくはLRETの量の増大、またはFRETもしくはLRETの量の減少でありうる。さらに該変化は、該試料中のキナーゼの存在を示すことができるし、また該試料をキメラリン酸化可能インディケーターと接触させる前に前記リン酸化ドメインがリン酸化されている場合には、該変化が該試料中のホスファターゼを示すことができる。
【0022】
別の実施形態では、リン酸化可能ポリペプチドと蛍光タンパク質とを含有するキメラリン酸化可能インディケーターと試料を接触させて、該試料における蛍光特性を測定することにより、該試料中のキナーゼまたはホスファターゼを検出する方法を実施するが、ここで該試料中にキナーゼまたはホスファターゼ活性が存在すると、キナーゼまたはホスファターゼ活性の非存在下での蛍光特性と比較してその蛍光特性が変化し、それによって該試料中のキナーゼまたはホスファターゼを検出する。前記キメラリン酸化インディケーターは、前記蛍光タンパク質がリン酸化可能ポリペプチドのN末端部分とC末端部分との間に機能しうる形で挿入されるように該N末端部分と該C末端部分とを含む該リン酸化可能ポリペプチドを含有していてもよく、また該キメラリン酸化インディケーターは、該蛍光タンパク質のN末端部分とC末端部分との間に機能しうる形で挿入されているリン酸化可能ポリペプチドに機能しうる形で連結されたホスホアミノ酸結合ドメインを含有していてもよい。
【0023】
キナーゼ活性について試験すべき前記試料は、例えばキナーゼまたはホスファターゼ活性について試験する合成産物を含有する試料を含む、任意の試料とすることができる。ある実施形態では、該試料は生物学的試料であり、かかる生物学的試料としては細胞、組織もしくは器官サンプル、またはかかる試料の抽出物を挙げることができる。別の実施形態では、細胞培養物中または組織サンプル中に存在しうるインタクト細胞で前記方法を実施する。このような方法の場合は、前記キメラリン酸化可能インディケーターは、該キメラリン酸化可能インディケーターを細胞質基質、小胞体、ミトコンドリア基質、葉緑体ルーメン、中間トランスゴルジ扁平嚢、リソソームのルーメン、またはエンドソームのルーメンに標的化しうる細胞区画化ドメインなどの標的化配列を含有していてもよい。とりわけ有用な細胞区画化ドメインとなり得る膜転位ドメインは、インタクト細胞中への該キメラリン酸化インディケーターの移動を促進し得る膜転位ドメインである。
【0024】
蛍光タンパク質とリン酸化可能ポリペプチドとを含むキメラリン酸化インディケーター中のリン酸化可能ポリペプチドは、前記方法がキナーゼまたはホスファターゼのどちらを検出するためのものであるかによって、キナーゼまたはホスファターゼに特異的なアミノ酸位置でリン酸化されていてもいなくてもよい。また本発明の方法を使用することにより、例えばキナーゼ阻害剤またはホスファターゼ阻害剤が存在するために該試料中にキナーゼまたはホスファターゼが存在しないことを、検出することもできる。
【0025】
また本発明は、キナーゼ阻害剤またはホスファターゼ阻害剤を検出する方法に関する。かかる方法は、例えば、キナーゼまたはホスファターゼ存在下でキメラリン酸化可能インディケーターの第1の蛍光特性を測定すること、該キメラリン酸化インディケーターをキナーゼ阻害剤またはホスファターゼ阻害剤であると疑われる組成物と接触させること、および該組成物存在下でキメラリン酸化可能インディケーターの第2の蛍光特性を測定すること、によって実施することが可能であり、ここで第1の蛍光特性と第2の蛍光特性との間の差異によって該組成物はキナーゼ阻害剤またはホスファターゼ阻害剤であると同定される。かかる方法はハイスループットスクリーニング法に適用するのに特に適しているため、化合物ライブラリーをスクリーニングしてキナーゼ阻害剤またはホスファターゼ阻害剤として機能する化合物を同定するための手段を提供する。従って、本発明はまた、かかる方法によって同定されるキナーゼ阻害剤またはホスファターゼ阻害剤を提供する。
【0026】
発明の詳細な説明
本発明は、哺乳動物細胞を含む個々の真核生細胞におけるプロテインキナーゼ活性およびホスファターゼ活性ならびにタンパク質-タンパク質相互作用を非破壊的に検出しかつ観察するのに広く有用である組成物および方法を提供し、また数マイクロメートルおよび数秒もしくはそれ以上の程度の空間的もしくは時間的分解能を得る手段を提供する。本明細書中に開示したように、プロテインキナーゼ活性およびホスファターゼ活性は、蛍光タンパク質や発光複合体などのリポーター分子を内包するキメラ基質(キメラリン酸化インディケーター)を用いて画像化することが可能であり、その場合の該リポーター分子の特性は該基質のリン酸化状態に応じて有意に変化する。タンパク質相互作用は、蛍光タンパク質またはランタニド複合体を用いて想定されるパートナーを標識する共鳴エネルギー移動により検出される。本発明の組成物は、ハイスループットコンビナトリアル生成およびスクリーニング技術などの方法を用いる改変に使用することが可能であり、そのため所望のキナーゼ、ホスファターゼ、またはタンパク質相互作用を観察できるよう変更することが容易である。従って、本発明は、本明細書中に記載した様々な構造を持つキメラリン酸化インディケーターを提供する。
【0027】
第1の実施形態では、キメラリン酸化インディケーターは、機能しうる形での連結によりドナー分子、リン酸化可能ドメイン、ホスホアミノ酸結合ドメイン、およびアクセプター分子を含有しており、ここで該ホスホアミノ酸結合ドメインは該リン酸化可能ドメイン中に存在するホスホアミノ酸と特異的に結合し、該ドナー分子および該アクセプター分子は該ドナー分子が励起された場合に検出可能な共鳴エネルギー移動を呈し、また該リン酸化可能ドメインおよびホスホアミノ酸結合ドメインは該アクセプター分子を励起する光を実質的に発しない。第2の実施形態では、キメラリン酸化インディケーターはリン酸化可能ポリペプチドと蛍光タンパク質とを含有する。第2の実施形態の1態様では、このリン酸化可能ポリペプチドはN末端部分とC末端部分とを含み、また該蛍光タンパク質は該リン酸化可能ポリペプチドのN末端部分とC末端部分との間に機能しうる形で挿入されている。第2の実施形態の2つ目の態様では、ホスホアミノ酸結合ドメインは該リン酸化可能ポリペプチドに機能しうる形で連結されており、該蛍光タンパク質はN末端部分とC末端部分とを含み、また該リン酸化可能ポリペプチドとそれに機能しうる形で連結されたホスホアミノ酸結合ドメインは該蛍光タンパク質のN末端部分とC末端部分との間に機能しうる形で挿入されている。本明細書中に開示したように、本発明のキメラリン酸化可能インディケーターは、細胞におけるキナーゼまたはホスファターゼ活性などのそれらの活性を検出する際に有用である。
【0028】
単一細胞におけるタンパク質のヘテロ2量体化を画像化するための従来技術では、該ヘテロ2量体のうちの一方のメンバーに対する抗体に結合させたランタニドドナーから、他方のパートナーに対する抗体に結合させた赤色色素への、発光共鳴エネルギー移動(LRET)を観察していた(Root, Proc. Natl. Acad. Sci., USA 94:5685-5690, 1997)。このアプローチにはリン酸化特異的抗体と同じ利点および欠点があり、かかる利点および欠点として、該アプローチはインタクトな非トランスフェクト組織における内因性タンパク質を調べる際には適用しうるが、その時間的分解能が低いために連続した時間的経過を作成するのが難しいという事が挙げられる。他の様式のエネルギー移動としては生物発光共鳴エネルギー移動があり、この場合のドナーはルシフェラーゼ、またアクセプターはGFPである(Xuら、Proc. Natl. Acad. Sci., USA 96:151-156, 1999)。しかし、この方法はこれまで細菌でしか実証されておらず、また生物発光は弱いため、高度な空間的または時間的分解能が必要とされる場合には特に、単一の哺乳動物細胞を用いて該方法を実施するのは困難であるかまたは不可能であろう。
【0029】
各々の潜在的なパートナーがリポータータンパク質の断片に融合されるタンパク質相補アッセイ(protein complementation assay)は、十分に相互作用している状態と相互作用していない状態との間でかなり大きなダイナミック・レンジを有するが、これは再構築する前の該リポーター酵素断片の機能が完全に失われているからである。加えて、エネルギー移動法では、ドナーとアクセプターは互いに接触する必要が無く、その反応は瞬間的で完全に可逆性であるために、そのパートナーの結合の反応速度論や親和性に及ぼす影響が最小になる。またかかるアッセイは、以下に記載する分光技術を補足しうるものでもある。
【0030】
FRETベース(cameleon型)の方法は、天然またはキメラタンパク質における特定の立体構造変化を観察するために確立された方法である。FRETベースの方法では、対象とするタンパク質はFRETを生じうるGFP変異体間に挟まれる(Tsien, Ann. Rev. Biochem., 67:509-544, 1998;Heim, Meth. Enzymol., 302:408-423, 1999。これらの文献は各々引用により本明細書中に含まれるものとする)。中心のタンパク質の立体構造変化は隣接するGFP間の距離または相対的な向きに影響を及ぼしてFRET効率を変化させるが、該変化は単一細胞内で容易に画像化することができる。この方法を利用して、(1)プロテアーゼ仲介型のペプチドリンカー切断、(2)ミオシン軽鎖キナーゼ由来のペプチドへのカルモジュリンのCa2+誘導性結合、(3)転写因子zif268由来のZn2+フィンガーへのZn2+の結合、(4)PKA(Zaccoloら、Nat. Cell Biol., 2:25-29, 2000)の調節サブユニットおよび触媒サブユニットのcAMP誘導性解離、(5)cGMP依存性プロテインキナーゼの立体構造におけるcGMP仲介型変化、ならびに(6)核ホルモン受容体へのアゴニストおよびアンタゴニストの結合、がこれまでに成功裡に観察されている。
【0031】
本明細書中に開示したように、前記FRET方法は、キナーゼ(Pearsonおよび Kemp, Meth. Enzymol., 200:62-81, 1991;KempおよびPearson, Trends Biochem. Sci., 15:342-346, 1990。これらの文献は各々引用により本明細書中に含まれるものとする)またはホスファターゼ(Blumenthal, in "Peptides and Protein Phosphorylation" (Kemp編;CRC Press 1990), pages135-143。当該文献は引用により本明細書中に含まれるものとする)の共通基質のリン酸化を観察することにも拡張されている。こうしたキメラ(図1A)は(N末端からC末端方向へ順に)ECFPなどのGFP変異体、リン酸化可能ドメイン、前記ペプチド中のホスホアミノ酸に結合しうるドメイン、およびpH非感受性EYFP(図1Aを参照されたい。また、Miyawakiら、Proc. Natl. Acad. Sci., USA 96:2135-2140, 1999を参照されたい。当該文献は引用により本明細書中に含まれるものとする)などの第2のGFP変異体を含んでいてもよい。この基質ドメインのリン酸化により、機能しうる形で連結されたホスホアミノ酸結合ドメイン(PAABD)との分子内複合体形成が可能となるため、前記2つの蛍光タンパク質間でのFRETを増大させることができる。
【0032】
前記キメラリン酸化インディケーターのモジュラー式性質により、所望の様々な構成要素の挿入または置換が容易となる。例えば、図1A中に例示した構造においてディスコソマ(Discosoma) RFPすなわちDsRedをEYFPと置き換えたり、またECFPをEGFPで置換したりすることができる。さらに、ドナー分子とアクセプター分子の順番を入れ替えたり、同様にリン酸化可能ドメインとPAABDの順序を入れ替えたりすることができる。さらに、これらの構成要素同士の連結を本明細書中に例示したものなどのペプチドリンカーを用いて変更し、前記インディケーターの反応性を最適化することができる。
【0033】
本発明のキメラリン酸化インディケーターを構築する際に有用な蛍光タンパク質は、例えばエクオレア・ビクトリア(Aequorea victoria)GFP、レニラ・レニフォルミス(Renilla reniformis)GFP、フィアリジウム・グレガリウム(Phialidium gregarium)GFPなどの緑色蛍光タンパク質(GFP)、ディスコソマ(Discosoma) RFPなどの赤色蛍光タンパク質(RFP)、あるいは、シアン色蛍光タンパク質(CFP)、黄色蛍光タンパク質(YFP)、増強型GFP(EGFP;配列番号4)、増強型CFP(ECFP;配列番号6)、増強型YFP(EYFP;配列番号8)、DsRed蛍光タンパク質(配列番号12)、配列番号10に記載のアミノ酸配列中にQ69M変異を含むシトリンなどの、GFPまたはRFP関連蛍光タンパク質、あるいはかかる蛍光タンパク質の変異体や変種、を含む任意の蛍光タンパク質であってよい。
【0034】
また、本発明のキメラリン酸化インディケーターを構築する際に有用な蛍光タンパク質は、該蛍光タンパク質のオリゴマー化性向(propensity)が低下しているかまたは消滅している非オリゴマー化蛍光タンパク質であってもよい。蛍光タンパク質のオリゴマー化性向は、蛍光タンパク質の第1の単量体を少なくとも該蛍光タンパク質の第2の単量体に機能しうる形で連結し、それにより分子内で「2量体」または「3量体」などを形成させることによって、低下させるかまたは消滅させることができる。分子間オリゴマー形成能が実質的に低下している、このように機能しうる形で連結したホモ重合体としては、ペプチドリンカー(配列番号13)によって機能しうる形で連結された2つのDsRed(配列番号12)単量体、および配列番号13のペプチドリンカーによって機能しうる形で連結された、配列番号12のアミノ酸配列中にI125R変異を含む2つの変異型DsRed単量体が、例示される。また、蛍光タンパク質のオリゴマー化性向は、該蛍光タンパク質中に1つ以上の変異を導入することによっても低下または消滅させることができる。かかる変異としては、エクオレア(Aequorea)GFP(配列番号2)のアミノ酸残基A206、L221もしくはF223のうちの1つまたは組み合わせからなる変異によって、あるいは配列番号2のA206、L221もしくはF223からなる変異に対応する別の蛍光タンパク質の変異、例えばGFP(配列番号2)の変異A206K、L221K、F223R、またはエクオレア(Aequorea)GFPのスペクトル変種であるECFP(配列番号6)の変異L221KおよびF223RならびにEYFP-V68L/Q69K(配列番号10)が、例示される。
【0035】
エクオレア(Aequorea)GFPは、宿主タンパク質に融合してこれを蛍光性としうるタンパク質モジュールとして細胞生物学分野で広く使用されている(Tsien, Ann. Rev. Biochem., 67:509-544, 1998。当該文献は引用により本明細書中に含まれるものとする)。 例えば、GFPは一般に、該GFPを融合させたタンパク質の細胞内における局在および輸送特性を特徴付けるために使用される。さらに、CFPやYFPおよびその変種を含むGFPのスペクトル変種を使用して、宿主タンパク質の会合特性をFRETによって測定する。またCFPとYFPとの間のFRETを利用して、カルシウムイオンに対するバイオセンサーが作製されたり、成長因子受容体およびGタンパク質共役型受容体の会合特性を決定されたりしている。
【0036】
GFPの、様々な色を持つ広範な「スペクトル変異体」が利用可能になることで、タンパク質の会合特性をFRETにより観察するための潜在的な手段が提供された。FRETは2つの蛍光団間での無放射エネルギー移動という量子力学的現象であり、これは、ドナーとアクセプターの適切なスペクトル重複、それらの互いの距離、およびそれら該発色団の遷移双極子の相対的な向きに依存している。標準的な分子生物学技術を用いることで、対象のタンパク質と蛍光タンパク質のスペクトル変異体との融合体を作製し、その後これらの融合体をドナーおよびアクセプターFRETパートナーとして有効に利用することができる。上記したように、前記GFPスペクトル変異体は、有用なFRETパートナーとして機能するのに必要とされる特性を、ホモ親和性および2量体化性向以外の殆どについて備えている。従って、GFPおよびその変種を用いるFRETベースアッセイの数は増え続けている(例えば、Mitraら、Gene 173:13-17, 1996; HartmanおよびVale, Science 286:782-785, 1999;Zachariasら、Curr. Opin. Neurobiol., 10:416-421, 2000を参照されたい)ものの、GFP関連蛍光タンパク質が互いに会合するその性向のために、FRETにより報告される、該タンパク質同士の相互作用のみに起因し、これらのタンパク質が連結されている蛍光団は関与すべきではないタンパク質会合の特性決定が、困難となる可能性がある。
【0037】
発光分子もまた、キメラリン酸化インディケーターにおいて使用する際に有用でありうる。例えば、ランタニドはキレート形態とすることが可能であり、これには該キレートを含有するランタニド複合体が含まれる。従って、この発光分子はテルビウムイオン(Tb3+)キレート、例えばTb3+とトリエチレンテトラミン六酢酸(TTHA)とのキレートであってよく、さらに該Tb3+キレートに機能しうる形で連結されたカルボスチリル124を含みうる。例えば細胞内のキナーゼまたはホスファターゼの存在を検出するために前記キメラリン酸化インディケーターを該細胞と接触させようとする場合、前記発光分子はさらに配列番号18に示すような膜転位ドメインを含んでいてもよい。該発光分子に連結するこうした膜転位ドメインまたは他の分子は、例えば配列番号17に示すようなテトラシステインモチーフを用いて機能しうる形で連結することができる。
【0038】
ランタニドキレートはDsRedなどのRFPへの発光共鳴エネルギー移動(LRET)のための理想的なドナーであり、従来のFRETと比べて4つの主な利点を提供する(Selvin, IEEE J. Sel. Top. Quant. Electron. 2:1077-1087, 1996;LiおよびSelvin, J. Am. Chem. Soc. 117:8132-8138, 1995。これらの文献は各々、引用により本明細書中に含まれるものとする)。何故なら、(1)ランタニドキレートの発光スペクトルは幅広なピークではなく鋭角のラインで構成されるため、ドナーであるランタニドの発光を他の従来のアクセプターのものと区別することが容易であり、また(2)該アクセプターからのLRET感作発光はミリ妙単位の動態を示すため、これとナノ秒単位の動態を示す直接励起発光とを容易に識別できるからである。これら2つの利点は、非常に低い程度のLRET(すなわちForster距離よりもかなり長い距離での相互作用Ro)でさえ検出できることを意味する。また、(3)バックグラウンドである自己蛍光の存続期間はナノ秒単位であり、これも同様にパルス励起およびゲート検出により容易に排除することができる。従って、従来に比べてかなり低い濃度のプローブおよび標識タンパク質があれば十分である。(4)ランタニド発光は本質的に無偏光であり、このためドナーとアクセプターの向きに対するLRETの依存性はそれぞれ排除されるかまたはかなり低減される。
【0039】
細胞内LRETの問題点は、極端に高い極性を有するランタニドキレートをインタクト(intact)細胞に導入してそこにあるタンパク質を部位特異的に標識するための方法が殆ど確立されていないということである。Tris(3-β-ジケトネート〔diketonates〕)などの無極性ランタニドキレートが利用可能であるが、それらはインタクトなタンパク質および細胞の存在下で使用するのに十分な動態学的安定性を欠いている。十分安定な公知キレートは極端な親水性を示すポリアミノカルボン酸塩類であり、これらが人の手を借りずに細胞膜を通過することは実証されていない。こうしたことから、本発明のキメラリン酸化インディケーターで使用するランタニド複合体は、アンテナペディア疎水性シグナルペプチド(Rojasら、Nat. Biotechnol., 16:370-375, 1998。当該文献は引用により本明細書中に含まれるものとする)などの膜転位ペプチド、ヘルペスウイルスのVP22(Elliot および O'Hare, Cell 88:223-233, 1997。当該文献は引用により本明細書中に含まれるものとする)、またはタンパク質多量体や少なくとも55塩基からなるアンチセンス核酸などの大ポリアニオンの輸送を仲介しうるTATタンパク質(Derossiら、Trends Cell Biol., 8:84-87, 1998。当該文献は引用により本明細書中に含まれるものとする)、と結合させればよい。
【0040】
インタクト細胞内の組換えタンパク質への前記ランタニドキレートの部位特異的結合は、このランタニド複合体を、宿主タンパク質内に人為的に導入した特定のテトラシステインモチーフ(Griffinら、Science 281:269-272。当該文献は引用により本明細書中に含まれるものとする)を選択的に見つけ出してこれに結合しうる重ヒ素(biarsenical)試薬に連結することによって、達成することができる。かかる構造は図5Aに例示されており、図中Tb3+キレートの一端は増感剤またはアンテナ発色団、例えばカルボスチリル色素(LiおよびSelvin、上掲、1995)に結合しており、もう一端は最も単純なヘテロ3官能基性リンカーであるL-システインを介して前記重ヒ素試薬および膜転位ペプチドに結合している。この重ヒ素試薬は、先に記載した通り、その蛍光部分を強制的に2度メチル化して無色のスピロ形態としてあるように蛍光色素ではなく、そのため該試薬が前記増感剤やTb3+を消光したりこれらに干渉したりすることは無い。前記膜転位ペプチドへの連結(この場合はアンテナペディアから得たペネトラチン-1。Derossiら、上掲、1998)は、細胞質基質の還元環境下で切断されるジスルフィド結合を介している。従って、該膜転位ペプチドは、前記重ヒ素ユニットが前記Tb3+複合体を前記テトラシステイン含有宿主タンパク質に結合する前に切り捨てられる。
【0041】
DsRedまたはその変異体は、Tb3+発光スペクトルとRFP励起スペクトルが非常に良く重なっているため、前記Tb3+キレートからLRETを得るためのアクセプター分子とすることができる(図5Bを参照されたい)。該Tb3+キレートは、パルス窒素レーザーを用いて337nmにて、または水銀-キセノン閃光灯を用いて365nmにて、前記カルボスチリルアンテナを用いて励起される。このTb3+ドナーおよび前記RFPアクセプター両方からの発光を時間分解法にて回収するが、これは該当する時間的尺度がミリ秒単位であるため簡単である。有意な量のTb3+ドナーが前記RFPアクセプターからかなり離れた場所にある場合、該ドナーがその標的タンパク質を発見できないかまたは後者が該RFPを担持しているそのパートナーに結合されていないので、結果として得られる発光は遊離Tb3+複合体の特徴である非常に長い存続期間を示すだろう。このTb3+複合体と該RFPとが会合すると、該Tb3+複合体の存続期間は幾分短くなり、一方該RFPは同程度の存続期間をもつ成分を生み出す。これら両成分は、Tb3+の幅の狭い発光波形によって容易に区別されるので、定量することができる。
【0042】
本発明のキメラリン酸化インディケーター中のリン酸化可能ドメインは、特定のキナーゼ、例えばセリン/トレオニンキナーゼもしくはチロシンキナーゼによってリン酸化されうる任意の分子、またはリン酸基を含有しかつ特定のホスファターゼによって脱リン酸化されうる任意の分子であってもよい。従って、該リン酸化可能ドメインは、合成ペプチド、天然のキナーゼまたはホスファターゼ基質のペプチド部分、ペプチドミメティック、ポリヌクレオチドなどであってよい。例として、セリン/トレオニンキナーゼドメインは配列番号20または配列番号32に示すようなアミノ酸配列を含んでいてもよく、またチロシンキナーゼリン酸化可能ドメインは配列番号23または25に示すようなアミノ酸配列を含んでいてもよい。
【0043】
本発明のキメラリン酸化インディケーター中のホスホアミノ酸結合ドメイン(PAABD)は、該インディケーター中に存在する特定のホスホアミノ酸に特異的に結合するPAABD、またはキナーゼによる該インディケーターのリン酸化の結果形成されうるPAABDであってよい。例えば、該リン酸化可能ドメインがセリン/トレオニンキナーゼドメインである場合、ホスホセリンまたはホスホセリンまたはその両方と結合できるようなホスホアミノ酸結合ドメイン、例えば14-3-3τ(1〜232)ぺプチドを選択する。該リン酸化可能ドメインがチロシンキナーゼドメインである場合、ホスホチロシンと結合するようなホスホアミノ酸結合ドメイン、例えばSrcホモロジードメイン-2(SH2)を選択する。
【0044】
特定の状況下でホスホチロシンと結合する前記SH2またはPTBドメインは、最も良く知られており、かつ最も良く理解されているPAABDである。例えば、PDGF受容体(PascalおよびSinger、上掲、1994)由来のホスホペプチドと複合体化したホスホリパーゼC由来のSH2ドメインのNMR構造からは、これらの2つのモジュールを融合してそれをさらにCFPやYFPなどのドナー分子とアクセプター分子との間に挟みうることが示唆される(図2Aを参照されたい)。同様に、TrkA(Zhouら、上掲、1995)由来のパートナーペプチドと結合するShe由来のPTBドメインの構造から、これらの構成要素もまたキメラリン酸化インディケーターに使用しうることが示される(図2Bを参照されたい)。
【0045】
ホスホセリン/ホスホトレオニン結合ドメインについても以前に記載されており、これには前記14-3-3タンパク質の前記ドメインも含まれる。例えば、14-3-3はPKA、PKG、およびPKC(PearsonおよびKemp、上掲、1991; KempおよびPearson、上掲、1990)などの幾つかの重要なタンパク質キナーゼの共通部位を包含するコンセンサス配列R(R/K)(F/R/S/N)(R/H/K) pSer (W/Y/F/L)P(配列番号42;Yaffeら、上掲、1997)を認識する。図2Cは、Ser残基でリン酸化可能なドメインに融合した14-3-3タンパク質を含むキメラリン酸化可能インディケーターを用いてキナーゼ活性がどのように示されるかを例示したものである。
【0046】
本明細書中に開示したように、PAABDはまた、親和性選択のために固定化したホスホアミノ酸への結合を利用してファージディスプレイライブラリーをスクリーニングすることによって同定することが可能であり、あるいは公知の正リン酸結合もしくは硫酸結合タンパク質から生じさせることができ、またはホスファターゼからそれらの触媒活性を低下させることによって生じさせることもできる。後者のアプローチの簡単な例としては、チロシンホスファターゼPTP1B中の触媒性アスパラギン酸残基を置き換えることによってこれを「基質トラップ(substrate-trap)」、すなわち加水分解速度が非常に遅いペプチドを含有するホスホチロシンからなる高親和性バインダー(Flintら、Proc. Natl. Acad. Sci., USA 94:1680-1685, 1997。当該文献は引用により本明細書中に含まれるものとする)に変換する手法が挙げられる。前記キメラリン酸化インディケーターが内因性ホスファターゼの基質ではない場合には、少し残っているホスファターゼ活性が該インディケーターを徐々に非リン酸化状態へと戻すためのバックアップ機構を提供することから、該活性が非常に有益でありうることを認識すべきである。
【0047】
本明細書中に開示したように、FRETはキメラリン酸化インディケーターのリン酸化または脱リン酸化の際に増えたり減ったりする。例えば、GFP-CaM結合ペプチド-BFP-置換CaMからなるキメラを用いた場合、BFPからGFPへのFRETはCa2+の非存在下では非常に強力であったが、これは恐らく該CaM結合ペプチドがそれら2つの蛍光タンパク質を2量体化させるのに十分なほど柔軟であったためである。一方、Ca2+濃度が上昇すると2量体化およびFRETが中断されたが、これは恐らく(Ca2+)4・CaM結合により該ペプチドが伸ばされた立体構造へと変化させられたからである(Perschiniら、Cell Calcium 22:209-216, 1997。当該文献は引用により本明細書中に含まれるものとする)。そのため、前記CaM結合ペプチドおよびCaMのリン酸化可能ドメインおよびPAABDによる置換を利用して、上記cameleon型インディケーターとは逆の反応を示すキナーゼ(またはホスファターゼ)活性がFRETを減少させるセンサーを作り出すことが可能である(図1Bを参照されたい)。同様に、図2に示す構造中のスペーサーの結合性を改変して、Perschini型キメラリン酸化可能インディケーターなどを作製することができる。
【0048】
本発明はまた、リン酸化可能ポリペプチドと蛍光タンパク質とを含有するキメラリン酸化インディケーターを提供する。これらのインディケーターは、CaMまたはZnフィンガーモチーフがEYFPのY145の代わりに挿入されているキメラとして形成され、Ca2+またはZn2+が結合すると直ちにその蛍光がそれぞれ7倍または1.7倍増強された(Bairdら、Proc. Natl. Acad. Sci., USA 96:11241-11246, 1999。当該文献は引用により本明細書中に含まれるものとする)。残基172と173の間に挿入されたβ-ラクタマーゼを有するGFPでは、β-ラクタマーゼ阻害タンパク質を加えるとその蛍光が1.5倍増大した(Selvin、上掲、1996)。この方法をリン酸化検出に適用したものが図1Cに例示されており、図中、リン酸化可能ペプチドとPAABDはEYFPの145位に挿入されている。この挿入物の立体構造変化によって該EYFPレポーターの蛍光効率をモジュレートすることができる。この方法では蛍光タンパク質を1つだけ利用して非常に大きな反応を得ることが可能であり、これには2つの波長での発光比における変化ではなく1つの波長でのpH感受性蛍光における変化が含まれる。
【0049】
従って、リン酸化可能ポリペプチドと蛍光タンパク質とを含有するキメラリン酸化インディケーターの1実施形態では、ホスホアミノ酸結合ドメインは該リン酸化可能ポリペプチドに機能しうる形で連結されており、該蛍光タンパク質はN末端部分とC末端部分とを含み、また該リン酸化可能ポリペプチドとそれに機能しうる形で連結されたホスホアミノ酸結合ドメインは該蛍光タンパク質のN末端部分とC末端部分との間に機能しうる形で挿入されている。該蛍光タンパク質は、GFP、RFP、またはGFPもしくはRFP関連蛍光タンパク質を含む任意の蛍光タンパク質であってもよく、該リン酸化可能ポリペプチドとそれに機能しうる形で連結されたホスホアミノ酸結合ドメインがEYFPのアミノ酸位置145と146の間に機能しうる形で挿入されているかまたはアミノ酸145と置き換えられている該EYFPを例として挙げることができる。
【0050】
多くのキナーゼおよびホスファターゼにとっては、PAABDおよび蛍光タンパク質に機能しうる形で連結しうる人工基質は、通常の内因性基質の優れた代用物とはなり得ないかもしれない。このためGFP、特に環状に並び替えたGFP(cpGFP)などの蛍光タンパク質を内因性基質に機能しうる形で挿入することによってキメラリン酸化インディケーターを作製することができる(図3を参照されたい)。好ましくは、リン酸化により局所的な立体構造が有意に変化しうるように該蛍光タンパク質をヒンジ領域またはターン領域に挿入し、この変化が該蛍光タンパク質に伝達されることによって上記したようにその蛍光が変化する。従って、リン酸化可能ポリペプチドと蛍光タンパク質とを含有するキメラリン酸化インディケーターの別の実施形態では、該リン酸化可能ポリペプチドはN末端部分とC末端部分とを含み、また該蛍光タンパク質は該リン酸化可能ポリペプチドのN末端部分とC末端部分との間に機能しうる形で挿入されている。
【0051】
特に明記しない限り、本明細書中で使用する全ての技術的および科学的用語は本発明が属する分野において通常の技術を有する者によって一般に理解されるものと同じ意味を有する。さらに、本明細書中に記載の方法もしくは物質と類似しているかまたは同一の方法もしくは物質はいずれも、本発明を実施する際に利用できる。本発明を説明するために、下記の用語を定義する。
【0052】
前記用語「核酸分子」または「ポリヌクレオチド」とは、1本鎖または2本鎖形態のデオキシリボヌクレオチドまたはリボヌクレオチド重合体を指し、特に明記しない限り、天然のヌクレオチドと同じ様式で機能しうる天然のヌクレオチドの公知の類似体を含むポリヌクレオチドを包含するものとする。核酸分子をDNA配列で表す場合、これには「U」が「T」に取って代わっている対応するRNA配列を有するRNA分子も含まれることが理解されよう。
【0053】
前記用語「組換え核酸分子」とは、2つ以上の連結されたポリヌクレオチド配列を含有する非天然核酸分子を指す。組換え核酸分子は組換え法、特に遺伝子操作法を用いて作製することができるし、また化学合成法によっても作製することができる。組換え核酸分子は、融合タンパク質を、例えば細胞区画化ドメインなどの対象ポリペプチドに連結させた本発明のキメラリン酸化インディケーターを、コードしていてもよい。前記用語「組換え宿主細胞」とは、組換え核酸分子を含有する細胞を指す。このため、組換え宿主細胞は本来の(非組換え)形態の細胞内では見出されない「遺伝子」からポリペプチドを発現することができる。
【0054】
ポリペプチドを「コードする」ポリヌクレオチドへの言及は、該ポリヌクレオチドが転写されてそこから産生されたmRNAが翻訳されると、ポリペプチドが産生されることを意味する。この「コードする」ポリヌクレオチドは、そのヌクレオチド配列がmRNAと同一であるコード鎖とその相補鎖との両方を含むとみなされる。このような「コードする」ポリヌクレオチドが同じアミノ酸残基をコードする縮重ヌクレオチド配列を含むと考えられることは理解されよう。ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列は、イントロンならびにコードするエキソンを含有するポリヌクレオチドを含んでいてもよい。
【0055】
前記用語「発現制御配列」とは、ポリヌクレオチドの転写もしくは翻訳、またはポリペプチドが機能しうる形で連結されるその位置を調節するヌクレオチド配列を指す。発現制御配列が、該ヌクレオチド配列の転写、および必要に応じてその翻訳を制御または調節する場合(すなわち、それぞれ転写もしくは翻訳調節エレメント)、あるいはコードされるポリペプチドの細胞の特定区画への局在を制御または調節する場合、該発現制御配列は「機能しうる形で連結されている」。従って、発現制御配列は、プロモーター、エンハンサー、転写終結因子、開始コドン(ATG)、イントロン切除および正確なリーディングフレーム維持のためのスプライシングシグナル、STOPコドン、リボゾーム結合部位、あるいはポリペプチドを特定の位置に標的化する配列、例えばポリペプチドを細胞質基質、核、形質膜、小胞体、ミトコンドリア膜もしくはマトリックス、葉緑体膜もしくはルーメン、中間トランスゴルジ扁平嚢、またはリソソームもしくはエンドソームに標的化しうる細胞区画化シグナルであってよく、または機能しうる形で連結された分子が細胞膜を通過してインタクト細胞内へ侵入できるようにする膜転位ペプチドであってもよい。細胞区画化ドメインは当分野で周知であり、これには例えばヒトII型膜結合型タンパク質ガラクトシルトランスフェラーゼのアミノ酸残基1〜81、またはシトクロムCオキシダーゼサブユニットIVの前配列のアミノ酸残基1〜12(Hancockら、EMBO J., 10:4033-4039, 1991;Bussら、Mol. Cell. Biol., 8:3960-3963, 1988;米国特許第5,776,689号も参照されたい。これらの文献はそれぞれ、引用により本明細書中に含まれるものとする)を含有するペプチドが含まれる。
【0056】
前記用語「機能しうる形で連結された(operably linked)」または「機能しうる形での連結により(in operative linkage)」を本明細書中で使用する場合、キメラリン酸化インディケーターの構成要素を互いに結合して、各構成要素がリン酸化検出に関連するその機能を維持するようにするかまたは該構成要素を誘導してその機能が発現されるようにすることを意味する。例えば、前記リン酸化可能ドメインは、該リン酸化可能ドメインのアミノ酸残基がリン酸化されている場合に前記PAABDが前記ホスホアミノ酸に結合できるように、該PAABDに機能しうる形で連結されている。同様に、前記ドナー分子と前記アクセプター分子は、該リン酸化可能ドメインおよびPAABDならびに任意のリンカー分子を介して機能しうる形で連結されており、そのため該ドナー分子が励起されるとFRETが生じて該アクセプターを励起し、これを受けて該アクセプターが蛍光を発する。リンカーおよびスペーサーペプチド等の使用を含む、キメラリン酸化インディケーターの構成要素を機能しうる形で連結するための方法は、例えば結晶学的情報に基づいて合理的に決定することができるし、また本明細書中に記載した方法および組成物から推定したり、経験的に決定したりすることもできる。
【0057】
前記用語「機能しうる形で挿入されている(operably inserted)」とは、本明細書中で同様に使用する場合、第1ポリペプチドを第2ポリペプチド内に、該第2ポリペプチドのN末端とC末端との間の位置にて導入して、各ポリペプチドがその本来の機能を維持するかまたはその本来の機能を発現するようにすることを指す。例えば、リン酸化可能ポリペプチドが蛍光タンパク質中に機能しうる形で挿入されている場合、該リン酸化可能ポリペプチドはホスファターゼまたはキナーゼの基質として働くその能力を維持しており、また該蛍光タンパク質は、例えば、該リン酸化可能ポリペプチドがリン酸化状態にあるためにその蛍光特性は示されないが、その特徴的な該蛍光特性を維持している。
【0058】
前記用語「オリゴマー」とは、2つ以上のポリペプチド間の特異的相互作用によって形成される複合体を指す。「特異的相互作用」または「特異的会合」とは、所定の条件下、例えば生理学的条件下で比較的安定なものをいう。タンパク質のオリゴマー化「性向(propensity)」とは、該タンパク質が2量体、3量体、4量体などを所定の条件下で形成しうることを意味する。一般に、GFPやDsRedなどの蛍光タンパク質は生理学的条件下でオリゴマー化性向を示すが、本明細書中に記載したように、蛍光タンパク質は例えば生理学的条件以外のpH条件下でもオリゴマー化できる。
【0059】
前記用語「プローブ」とは、別の物質(「標的」)に特異的に結合する物質を指す。プローブには、例えば、抗体、ポリヌクレオチド、受容体およびそのリガンドが含まれ、また一般に該プローブを標識することで該プローブが特異的に結合している分子を同定または単離するための手段を提供することができる。前記用語「標識」とは、器具を使用するかまたは使用せずに、例えば目視検査、分光法、または光化学反応、生化学反応、免疫化学反応もしくは化学反応によって検出可能な組成物を指す。有用な標識としては、例えば、リン32、蛍光色素、蛍光タンパク質、電子密度試薬、酵素(ELISAで通常使用されるものなど)、ビオチン、ジゴキシゲニン、もしくは他のハプテンなどの小分子、または対応する抗血清もしくは抗体(モノクローナル抗体でも可)が入手可能なペプチドが挙げられる。本発明の非オリゴマー化蛍光タンパク質は、それ自体が検出可能なタンパク質であるにもかかわらず、その独自の蛍光以外の手段により、例えば放射線核種標識またはペプチドタグを該タンパク質に組み込むことにより、検出が可能となるように標識することができ、それにより該タンパク質発現の際の該タンパク質の同定および発現された該タンパク質の単離をそれぞれ容易にすることができる。本発明の目的にとって有用な標識は一般に放射性シグナル、蛍光、酵素活性などの測定可能なシグナルを発し、これらのシグナルはいずれも、例えば試料中の非オリゴマー化蛍光タンパク質量を定量するために使用することができる。
【0060】
前記用語「核酸プローブ」とは、第2(標的)核酸分子の特定のヌクレオチド配列または部分配列に結合するポリヌクレオチドを指す。核酸プローブは一般に相補塩基対形成により標的核酸分子に結合するポリヌクレオチドである。核酸プローブは、該プローブ配列と完全には相補的でない標的配列に特異的に結合することが可能であり、またその結合特異性は部分的にはハイブリダイゼーション条件のストリンジェンシーに依存することが理解されよう。核酸プローブは、放射性核種、発色団、発光団(lumiphore)、色素原、蛍光タンパク質、または、該プローブが特異的に結合する標的核酸分子を含め、それ自体が例えばストレプトアビジン複合体と結合することにより該プローブを単離する手段を提供するビオチンなどの小分子で、標識してもよい。該プローブの存在または非存在について分析することにより、前記標的配列または部分配列の存在または非存在を検出することができる。前記用語「標識核酸プローブ」とは、直接またはリンカー分子を介して、また共有結合またはイオン性のファンデルワールス結合または水素結合などの安定な非共有結合により標識に結合された核酸プローブを指し、このため該プローブの存在は該プローブに結合させた該標識の存在を検出することによって同定することができる。
【0061】
前記用語「ポリペプチド」または「タンパク質」とは、2つ以上のアミノ酸残基からなる重合体を指す。前記用語は、天然アミノ酸重合体だけでなく、その1つ以上のアミノ酸残基が対応する天然アミノ酸の人工的化学類似体であるアミノ酸重合体にも適用される。前記用語「組換えタンパク質」とは、当該タンパク質のアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列を組換えDNA分子から発現させることによって産生されるタンパク質を指す。
【0062】
前記用語「単離された」または「精製された」とは、通常、自然界における天然状態で物質が本来伴っている成分を実質的にまたは本質的に含まない該物質を指す。一般に純度および均質性は、ポリアクリルアミドゲル電気泳動、高速液体クロマトグラフィーなどの分析化学法を用いて決定する。ポリヌクレオチドまたはポリペプチドは、それが調製物中に最も多い種として存在する場合に単離されているものとみなされる。一般に、単離されたタンパク質または核酸分子は調製物中に存在する高分子種のうちの80%以上を占めており、存在する全高分子種のうちの90%以上を占めることも多く、通常は該高分子種のうちの95%以上を占め、さらに、特に、その分子の純度を決定する従来の方法を用いて調べた場合に検出される唯一の種となるように本質的に均質になるまで精製されたポリヌクレオチドまたはポリペプチドである。
【0063】
前記用語「天然の(naturally-occurring)」は自然界に存在するタンパク質、核酸分子、細胞、または他の物質を指すために使用する。例えば、ウイルスを含む生物内に存在するポリペプチドやポリヌクレオチド配列である。天然の物質はそれが自然界で存在している際と同じ形態であってもよく、また例えば単離形態のように人の手で改変されていてもよい。
【0064】
前記用語「抗体」とは、単数もしくは複数の免疫グロブリン遺伝子によって実質的にコードされているポリペプチド、または分析物(抗原)に特異的に結合し認識するその抗原結合性断片を指す。認識される免疫グロブリン遺伝子には、κ、λ、α、γ、δ、εおよびμ定常領域遺伝子、ならびに種々の免疫グロブリン可変領域遺伝子が含まれる。抗体はインタクトな免疫グロブリンとして、またペプチダーゼを用いる消化や組換えDNA法を用いて作製可能な、十分に特性決定された抗体の抗原結合性断片として存在する。このような抗体の抗原結合性断片としては、例えば、Fv、Fab’、F(ab)’2断片が挙げられる。該用語「抗体」には、本明細書中で使用する場合、全抗体の改変により作製した抗体断片または組換えDNA技法を用いて新規合成した抗体断片が含まれる。そのため、本発明はまた、本発明のキメラリン酸化インディケーターに特異的に結合する抗体またはその抗原結合性断片も提供する。好ましくは、本発明の抗体は、該キメラインディケーターを含む個々の成分とは該成分が該キメラリン酸化インディケーターの一部である場合を除いては特異的に結合しない。前記用語「イムノアッセイ」とは、分析物に特異的に結合する抗体を利用するアッセイを指す。イムノアッセイは該分析物を単離、標的化、および/または定量するために特定の抗体の特異的結合特性を用いることを特徴とする。
【0065】
2つ以上のポリヌクレオチド配列または2つ以上のポリペプチド配列に関して使用する場合、前記用語「同一である」とは、最大一致が得られるようにこれらの配列をアラインした場合に該配列間で全く同じ残基を指す。配列同一性の割合をポリペプチドに関して使用する場合、その他の点では同一ではない1つ以上の残基の位置を保存的アミノ酸置換によって変化させうることが理解されよう。該置換においては第1のアミノ酸残基を同じ電荷、疎水特性または親水特性などの同じ化学特性を有する他のアミノ酸残基と置き換えるため、前記ポリペプチドの機能特性を変化させない。ポリペプチド配列が保存的置換により変化する場合、配列同一性の割合を上方修正して該置換の保存性を訂正することができる。周知の方法、例えば保存的置換を全体的なミスマッチではなく部分的なミスマッチとして小刻みに採点することで配列同一性の割合を高めることによって、かかる修正を行うことができる。従って、例えば同一のアミノ酸には1点を、また非保存的置換は0点を与えるものとすると、保存的置換には0と1の間の点数が与えられる。保存的置換の得点は周知のアルゴリズム(例えば、MeyersおよびMiller, Comp. Appl. Biol. Sci. 4:11-17, 1988;SmithおよびWaterman, Adv. Appl. Math. 2:482, 1981;NeedlemanおよびWunsch, J. Mol. Biol. 48:443, 1970;PearsonおよびLipman, Proc. Natl. Acad. Sci., USA 85:2444 (1988); HigginsおよびSharp, Gene 73:237-244, 1988;HigginsおよびSharp, CABIOS 5:151-153; 1989;Corpet ., Nucl. Acids Res., 16:10881-10890, 1988;Huangら、Comp. Appl. Biol. Sci., 8:155-165, 1992;Pearsonら、Meth. Mol. Biol., 24:307-331, 1994を参照されたい)を用いて算出できる。また、配列のアラインメントについても、簡単な目視検査および人手による整列によって実施することができる。
【0066】
用語「保存的に改変された変異物(conservatively modified variation)」を特定のポリヌクレオチド配列について使用する場合、該用語は同一または本質的に同一のアミノ酸配列をコードする異なるポリヌクレオチド配列を指し、また該ポリヌクレオチドがアミノ酸配列をコードしない場合には本質的に同一の配列を指す。遺伝コードの縮重により、多数の機能的に同一のポリヌクレオチドが所与のポリペプチドをコードしている。例えば、コドンCGU、CGC、CGA、CGG、AGAおよびAGGは全てアミノ酸アルギニンをコードしている。従って、アルギニンがコドンによって特定される全ての位置において、コードされているポリペプチドを変更すること無しに該コドンを前記対応コドンのいずれか変更することができる。かかるヌクレオチド配列変異物は「サイレント変異物」であり、「保存的に改変された変異物」の1種であると考えられる。そのため、非オリゴマー化蛍光タンパク質をコードするものとして本明細書中に開示した各ポリヌクレオチド配列により全ての考えられるサイレント変異物についても記載されているものと理解されたい。また、通例メチオニンの唯一のコドンであるAUG、および通例トリプトファンの唯一のコドンであるUUGを除き、ポリヌクレオチド中の各コドンを標準的技法により改変して機能的に同一の分子を生じさせることができる。従って、コードされているポリペプチドの配列を変化させないポリヌクレオチドの各サイレント変異物については、暗に本明細書中に記載されている。さらに、コードされる配列中で1つのアミノ酸または低割合のアミノ酸(典型的には5%未満、通常は1%未満)を変更、付加または欠失させる個々の置換、欠失または付加は、その変更によってアミノ酸とそれに化学的に類似したアミノ酸との置換が生じる場合に限り、保存的に改変された変異物であると考えられる。機能的に類似したアミノ酸を提供する保存的アミノ酸置換は当分野で周知であり、これには互いに保存的置換物であると考えられるアミノ酸をそれぞれに含有する以下の6群:
(1)アラニン(Ala, A)、セリン(Ser, S)、トレオニン(Thr, T)、
(2)アスパラギン酸(Asp, D)、グルタミン酸(Glu, E)、
(3)アスパラギン(Asn,N)、グルタミン(Gln, Q)、
(4)アルギニン(Arg, R)、リシン(Lys, K)、
(5)イソロイシン(Ile, I)、ロイシン(Leu, L)、メチオニン(Met, M)、バリン(Val, V)、および
(6)フェニルアラニン(Phe, F)、チロシン(Tyr, Y)、トリプトファン(Trp, W)、
が含まれる。
【0067】
2つ以上のアミノ酸配列または2つ以上のヌクレオチド配列は、そのアミノ酸配列またはヌクレオチド配列同士が互いにまたは参照配列と所定の比較ウィンドウ内において少なくとも80%の配列同一性を有する場合に「実質的に同一である」または「実質的に類似している」とみなされる。従って、実質的に類似した配列には、例えば、少なくとも85%の配列同一性、少なくとも90%の配列同一性、少なくとも95%の配列同一性、または少なくとも99%の配列同一性を有する配列が含まれる。
【0068】
対象ヌクレオチド配列は、該対象ヌクレオチド配列の相補体が参照ヌクレオチド配列と実質的に同一である場合に、該参照ヌクレオチド配列と「実質的に相補的である」とみなされる。用語「ストリンジェントな条件」とは、核酸ハイブリダイゼーション反応に使用される温度およびイオン条件を指す。ストリンジェントな条件は配列依存性であり、また種々の環境パラメータ下で異なる。一般に、ストリンジェントな条件は規定のイオン強度およびpHにおいて特定の配列の熱融点(Tm)よりも約5℃〜20℃低くなるよう選択される。このTmは、規定のイオン強度およびpHにおいて標的配列の50%が完全に一致するプローブにハイブリダイズする温度である。
【0069】
用語「対立遺伝子変種(allelic variants)」とは、特定の遺伝子座における遺伝子の多型形態、ならびに該遺伝子のmRNA転写物から得られるcDNA、およびそれらによってコードされるポリペプチドを指す。用語「好ましい哺乳動物コドン」とは、哺乳動物細胞で発現されるタンパク質で最も頻繁に使用されるアミノ酸をコードするコドンセットのうちの一部のコドンを指し、以下のリストから選択される:Gly (GGC, GGG);Glu (GAG);Asp (GAC);Val (GUG, GUC);Ala (GCC, GCU);Ser (AGC, UCC);Lys (AAG);Asn (AAC);Met (AUG);Ile (AUC);Thr (ACC);Trp (UGG);Cys (UGC);Tyr (UAU, UAC);Leu (CUG);Phe (UUC);Arg (CGC, AGG, AGA);Gln (CAG);His (CAC);およびPro (CCC)。
【0070】
蛍光分子は、ドナー分子とアクセプター分子とを要する蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)にとって有用である。ドナー分子とアクセプター分子との間のFRET効率および検出能を最適化するためには、幾つかの要素のバランスをとる必要がある。重なり積分を最大化するためには、該ドナーの発光スペクトルは可能な限り該アクセプターの励起スペクトルと重なっているほうがよい。また、該ドナー部分の量子収率および該アクセプターの減衰係数は、エネルギー移動効率が50%となる距離を表すROの最大値を得るためには可能な限り高いほうがよい。しかし、該アクセプターの直接励起によって生じる蛍光はFRETにより生じる蛍光と区別しにくい可能性があるため、該アクセプターを直接励起すること無しに該ドナーを効率的に励起しうる波長領域を見つけ出すためには、該ドナーおよび該アクセプターの励起スペクトルは出来るだけ重なっていないほうがよい。同様に、2つの発光を明確に区別するためには、該ドナーおよび該アクセプターの発光スペクトルは出来るだけ重なっていないほうがよい。該アクセプターからの発光を唯一の読み出し情報または蛍光比の一部として測定する場合、該アクセプターの高蛍光量子効率部分が好ましい。ドナーおよびアクセプター対を選ぶ際に考慮すべき1要素は、それらの間の蛍光共鳴エネルギー移動効率である。好ましくは、該ドナーおよび該アクセプター間のFRET効率は少なくとも10%、より好ましくは少なくとも50%、またさらにより好ましくは少なくとも80%である。
【0071】
前記用語「蛍光特性」とは、適切な励起波長におけるモル吸光係数、蛍光量子効率、励起スペクトルもしくは発光スペクトルの波形、励起波長最大値および発光波長最大値、2つの異なる波長における励起振幅比、2つの異なる波長における発光振幅比、励起状態の持続期間、または蛍光異方性を指す。野生型エクオレア(Aequorea) GFPとそのスペクトル変種、またはその変異体間で見られる、これらの特性のいずれか1つにおける測定可能な差異は有用である。測定可能な差異はいずれかの定量的蛍光特性の量、例えば特定波長における蛍光量、または発光スペクトルにおける蛍光全てを測定することにより測定することができる。2つの異なる波長における励起振幅比または発光振幅比の決定(それぞれ「励起振幅比決定」および「発光振幅比決定」)は、この振幅比決定工程により内部基準が提供され、また励起原の絶対不変の明度におけるばらつき、検出器の感度、および試料による光散乱や消光が帳消しとなるため、とりわけ都合がよい。
【0072】
本明細書中で使用する場合、前記用語「蛍光タンパク質」とは適切な電磁放射線にて励起された場合に蛍光を発しうる任意のタンパク質を指すが、その蛍光が化学的タグに起因するものである場合の化学的タグ付きタンパク質は除く。また、紫外線に曝露すると蛍光を発するトリプトファンやチロシンなどの特定のアミノ酸の存在のみに起因する蛍光を発するポリペプチドは、本発明の目的に沿う蛍光タンパク質とは考えない。概して、本発明の組成物を調製するかまたは本発明の方法で使用するのに有用な蛍光タンパク質は、自己触媒により発色団を形成することでその蛍光を生じる蛍光タンパク質である。蛍光タンパク質は天然のまたは操作された(すなわち変種または変異体)アミノ酸配列を含有していてもよい。蛍光タンパク質について使用する場合、該用語「変異体」または「変種」とは、参照タンパク質と異なるタンパク質を指す。例えば、エクオレア(Aequorea)GFPのスペクトル変種は、アミノ酸置換などの変異を参照GFPタンパク質中に導入することによって天然のGFPから得ることができる。例えばECFPは、GFPについての置換を含有するGFPのスペクトル変種である(配列番号2および6を比較されたい)。
【0073】
多くの刺胞動物は、生物発光におけるエネルギー移動アクセプターとして緑色蛍光タンパク質を利用している。該用語「緑色蛍光タンパク質」は本明細書中で広く使用されており、緑色の蛍光を発するタンパク質、例えばエクオレア(Aequorea) GFP(配列番号2)を指す。GFPは北西太平洋クラゲであるエクオレア・ビクトリア(Aequorea victoria)、ウミシイタケであるレニラ・レニフォルミス(Renilla reniformis)、およびフィアリジウム・グレガリウム(Phialidium gregarium)(Wardら、Photochem. Photobiol., 35:803-808, 1982; Levineら、Comp. Biochem. Physiol., 72B:77-85, 1982を参照されたい。これらの文献は各々、引用により本明細書中に含まれるものとする)から単離されている。同様に、赤色蛍光を発する「赤色蛍光タンパク質」、シアン色蛍光を発する「シアン色蛍光タンパク質」などについても本明細書中で言及している。例えばRFPは、サンゴであるディスコソマ(Discosoma)(Matzら、上掲、1999)から単離されたものである.
有用な励起および発光スペクトルを持つ多様なエクオレア(Aequorea)GFP関連蛍光タンパク質が、A.ビクトリア(A.victoria)から得られる天然のGFPのアミノ酸配列を改変することによって作り出されている(Prasherら、Gene 111:229-233, 1992;Heimら、Proc. Natl. Acad. Sci., USA 91:12501-12504, 1994;米国特許出願第08/337,915号〔1994年11月10日出願〕;国際出願PCT/US95/14692を参照されたい。これらの文献は各々、引用により本明細書中に含まれるものとする)。本明細書中で使用する場合、「関連蛍光タンパク質」への言及は、参照蛍光タンパク質と比較した場合に実質的に同一のアミノ酸配列を有する蛍光タンパク質を指す。概して、関連蛍光タンパク質は、参照蛍光タンパク質配列と比較した場合、該参照蛍光タンパク質と少なくとも約85%の配列同一性を示す少なくとも約150個のアミノ酸からなる連続配列を有し、また特に該参照蛍光タンパク質と少なくとも約95%の配列同一性を示す少なくとも約200個のアミノ酸からなる連続配列を有する。従って、本明細書中では、A.ビクトリア(A.victoria)GFP(配列番号2)と実質的に同一のアミノ酸配列を有する様々なスペクトル変種およびGFP変異体を典型例とする「エクオレア(Aequorea)関連蛍光タンパク質」または「GFP関連蛍光タンパク質」、またDsRed(配列番号12)と実質的に同一のアミノ酸配列を有する様々な変異体を典型例とする「ディスコソマ(Discosoma)関連蛍光タンパク質」または「DsRed関連蛍光タンパク質」、またはその他同種のもの、例えばレニラ(Renilla)関連蛍光タンパク質やフィアリジウム(Phialidium)関連蛍光タンパク質について言及している。
【0074】
また、前記用語「変異体」または「変種」は、本明細書中では蛍光タンパク質について使用されており、対応する野生型蛍光タンパク質に関する変異を含む蛍光タンパク質を指す。加えて、本明細書中では、蛍光タンパク質の「スペクトル変種」または「スペクトル変異体」について言及しており、これらの用語は対応する野生型蛍光タンパク質とは異なる蛍光特性を有する変異型蛍光タンパク質を意味している。例えば、CFP、YFP、ECFP(配列番号6)、EYFP・V68L/Q69K(配列番号10)などはGFPのスペクトル変種である。
【0075】
エクオレア(Aequorea) GFP関連蛍光タンパク質には、例えば、野生型(天然)エクオレア(Aequorea)GFP(Prasherら、上掲、1992;配列番号2も参照されたい)、配列番号2の対立遺伝子変種、例えばQ80R置換を有する変種(Chalfieら、Science 263:802-805, 1994。当該文献は引用により本明細書中に含まれるものとする)、ならびに1つ以上の折り畳み(folding)変異をもつGFP関連蛍光タンパク質、および該タンパク質の蛍光性断片、例えば2つのN末端アミノ酸残基が除去されたA.ビクトリア(A.victoria) GFPを含むCFP、YFP、およびその増強型や特に改変型(米国特許第6,150,176号、第6,124,128号、第6,077,707号、6,066,476号、第5,998,204号および第5,777,079号を参照されたい。これらの文献は各々、引用により本明細書中に含まれるものとする)などのGFPのスペクトル変種が含まれる。これらの蛍光タンパク質の幾つかは、中心の発色団内に異なる芳香族アミノ酸を含有しており、野生型GFP種よりも明らかに短い波長で蛍光を発する。例えば、P4およびP4-3と名付けられた操作型GFPタンパク質は、他の変異に加えて置換Y66Hを含み、またW2およびW7と名付けられた操作型GFPタンパク質は、他の変異に加えてY66Wを含む。
【0076】
エクオレア(Aequorea) GFP関連蛍光タンパク質における折り畳み変異により、該蛍光タンパク質がより高い温度にて折り畳まれ、かつ哺乳動物細胞内で発現された場合により強い蛍光を発するその能力が改善されるが、励起および発光ピーク波長には殆どまたは全く影響を及ぼさない。所望であれば、これらの変異をGFPのスペクトル特性に影響を与える別の変異、特に該蛍光タンパク質のオリゴマー化性向を低減または消去する変異と組み合わせて、変更されたスペクトル特性と折り畳み特性を有するタンパク質を作製することができる。折り畳み変異には、配列番号2に関して言えば、置換F64L、 V68L、S72A、T44A、F99S、Y145F、N146I、M153T、M153A、V163A、I167T、S175G、S205T、およびN212Kが含まれる。
【0077】
用語「ループドメイン」とは、11本のストランドからなるβバレルまたは中央のαへリックス(残基56〜72)の2次構造に関与するアミノ酸を連結している、エクオレア(Aequorea)関連蛍光タンパク質のアミノ酸配列を指す。前記用語「蛍光タンパク質部分」とは、蛍光タンパク質について使用する場合、該蛍光タンパク質基質のアミノ酸配列を天然の蛍光タンパク質のアミノ酸配列と最も一致するように並べた際にはこの天然の蛍光タンパク質のアミノ酸配列中のアミノ末端アミノ酸とカルボキシ末端アミノ酸とを含めたこれら末端の間に存在し、かつ適切な波長の光に曝露すると蛍光を発する発色団を含む、該蛍光タンパク質のアミノ酸配列の1部分を指す。
【0078】
標的タンパク質に融合された蛍光タンパク質は、組換えDNA法を用いて調製することが可能であり、またマーカーとして使用することにより産生された標的タンパク質の位置および量を同定することができる。従って、本発明は非オリゴマー化蛍光タンパク質部分と対象ポリペプチドとを含む融合タンパク質を提供する。この対象ポリペプチドは、該融合タンパク質の該蛍光タンパク質成分が蛍光を発するかもしくは適切な波長の電磁放射線に曝露した際に蛍光を発するよう誘導できるものである限りは、任意の長さ、例えば約15アミノ酸残基、約50残基、約150残基、または1000アミノ酸残基またはそれ以上の長さであってもよい。該対象ポリペプチドは、例えば、ポリヒスチジン配列、c-mycエピトープ、FLAGエピトープなどのペプチドタグであっても、酵素を含む融合タンパク質を発現する細胞内の機能に影響を及ぼすかもしくは該融合タンパク質を含有する細胞を同定するために使用しうる該酵素であっても、または細胞内で1つ以上の他のタンパク質と相互作用する能力について調べようとするタンパク質もしくは本明細書中に開示した他のいずれかのタンパク質や特に好ましいタンパク質であってもよい。
【0079】
エクオレア(Aequorea)GFP関連蛍光タンパク質の蛍光特性は、発色団の電子環境に依存しているところがある。概して、該発色団から約0.5nm以内にあるアミノ酸は該発色団の電子環境に影響を及ぼす。そのため、かかるアミノ酸の置換により、変更された蛍光特性を有する蛍光タンパク質を作製することができる。励起状態では、電子密度は該発色団のフェノラートからカルボニル末端方向へとシフトする傾向にある。そのため、該発色団のカルボニル末端近辺に正電荷が増え続けると、励起状態のエネルギーが減少して該タンパク質の最大吸光発光波長に赤方偏移が生じやすい。該発色団のカルボニル末端近辺の正電荷が減少すると、逆の効果が生じて該タンパク質の波長に青方偏移が生じやすい。同様に、DsRedに変異を導入して、変更された蛍光特性を有する変異体を作製した(実施例2を参照されたい)。
【0080】
荷電アミノ酸(イオン化したD、E、K、およびR)、双極性アミノ酸(H、N、Q、S、T、および非荷電アミノ酸D、E、およびK)、ならびに分極性側鎖を有するアミノ酸(例えばC、F、H、M、WおよびY)は、特にそれらが非荷電アミノ酸、無極性アミノ酸または非分極性側鎖を有するアミノ酸と置き換わる場合、蛍光タンパク質のオリゴマー化能力を変更するのに有用である(実施例1および3を参照されたい)。本明細書中に開示したように、GFPの自己会合に関与すると予測された疎水性残基を正電荷を帯びた残基と置換すると、2量体化が減少または消滅した。しかし、他の非保存的アミノ酸置換を、同様にまたは該タンパク質の相互作用領域内の隣接する位置に導入することによっても、該タンパク質の局所的な構造を破壊することができる。ただし、これは該置換が該タンパク質の蛍光特性に望ましくない影響を与えない場合に限る。
【0081】
本発明はまた、本発明のキメラリン酸化インディケーターをコードするポリヌクレオチドに関する。ある実施形態では、該ポリヌクレオチドは、機能しうる形での連結によりドナー分子、リン酸化可能ドメイン、ホスホアミノ酸結合ドメイン、およびアクセプター分子を含有するキメラリン酸化インディケーターをコードしており、ここで該ホスホアミノ酸結合ドメインは該リン酸化可能ドメイン中に存在するホスホアミノ酸と特異的に結合し、該ドナー分子および該アクセプター分子は該ドナーが励起された場合に検出可能な共鳴エネルギー移動を呈し、また該リン酸化可能ドメインおよびホスホアミノ酸結合ドメインは該アクセプターを励起する光を実質的に発しない。別の実施形態では、該ポリヌクレオチドはリン酸化可能ポリペプチドと蛍光タンパク質とを含有するキメラリン酸化インディケーターをコードしており、ここで該リン酸化可能ポリペプチドはN末端部分とC末端部分とを含み、該蛍光タンパク質は該リン酸化可能ポリペプチドのN末端部分とC末端部分との間に機能しうる形で挿入されている。さらに別の実施形態では、該ポリヌクレオチドはリン酸化可能ポリペプチドに機能しうる形で連結されたホスホアミノ酸結合ドメインと蛍光タンパク質とを含有するキメラリン酸化インディケーターをコードしており、ここで該蛍光タンパク質はN末端部分とC末端部分とを含み、該リン酸化可能ポリペプチドおよびそれに機能しうる形で連結されたホスホアミノ酸結合ドメインは該蛍光タンパク質のN末端部分とC末端部分との間に機能しうる形で挿入されている。
【0082】
発現ベクターを含む本発明のポリヌクレオチドを含有するベクター、ならびに本発明のポリヌクレオチドまたはかかるポリヌクレオチドを含有する宿主細胞も提供される。ある実施形態では、本発明のポリヌクレオチドは、発現制御配列、例えば転写調節エレメント、翻訳調節エレメント、またはそれらの組み合わせに機能しうる形で連結されている。別の実施形態では、該ポリヌクレオチドは膜転位ドメインまたは細胞区画化ドメインをコードするヌクレオチド配列に機能しうる形で連結されている。
【0083】
ベクターは通常、原核生物もしくは真核生物の宿主系または所望であればその両方における複製に必要な成分を含有している。かかるベクターにはバクテリオファージ、バキュロウイルス、レトロウイルス、レンチウイルス、アデノウイルス、ワクシニアウイルス、セムリキ森林熱ウイルスおよびアデノ随伴ウイルスベクターなどのプラスミドベクターおよびウイルスベクターが含まれ、これらは周知であって販売元(Promega, Madison WI; Stratagene, La Jolla CA;GIBCO/BRL, Gaithersburg MD)から購入することができるし、また当業者であれば自ら構築することもできる(例えば、Meth. Enzymol., Vol. 185, Goeddel編、 (Academic Press, Inc., 1990);Jolly, Canc. Gene Ther. 1:51-64, 1994;Flotte, J. Bioenerg. Biomemb. 25:37-42, 1993;Kirshenbaumら、J. Clin. Invest., 92:381-387, 1993を参照されたい。これらの文献は各々、引用により本明細書中に含まれるものとする)。
【0084】
キメラリン酸化インディケーターをコードするポリヌクレオチドを含有させるためのベクターは、クローニングベクターや発現ベクターであってもよく、またプラスミドベクター、ウイルスベクターなどであってもよい。一般に、該ベクターは本発明のポリヌクレオチドによってコードされるものとは無関係の選択マーカーを含有しており、これにさらに機能しうる形で連結された、該キメラリン酸化インディケーターをコードするポリヌクレオチドでもありうる(ただし、そうである必要は無い)ポリヌクレオチドの組織特異的発現を提供しうるプロモーター配列を含む転写または翻訳調節エレメントを含有させることによって、導入したベクターとそこに含まれる組換え核酸分子とを含有する細胞の混合集団から特定の細胞型を選択する手段を提供することができる。
【0085】
前記ベクターがウイルスベクターである場合、1つまたは2、3種の特定の細胞型に比較的高い効率にて感染するその能力に基づいてベクターを選択することができる。例えば、該ウイルスベクターは、対象とする生物の特定の細胞、例えば哺乳動物宿主細胞などの脊椎動物宿主細胞に感染するウイルスから得ることもできる。ウイルスベクターは特定の宿主系、特に哺乳動物系で使用するために開発され、これには例えばレトロウイルスベクター、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)をベースとするベクターなどの他のレンチウイルスベクター、アデノウイルスベクター、アデノ随伴ウイルスベクター、ヘルペスウイルスベクター、ワクシニアウイルスベクターなどが含まれる(例えば、MillerおよびRosman, BioTechniques 7:980-990, 1992;Andersonら、Nature 392:25-30 Suppl., 1998;VermaおよびSomia, Nature 389:239-242, 1997;Wilson, New Engl. J.Med. 334:1185-1187 (1996)を参照されたい。これらの文献は各々、引用により本明細書中に含まれるものとする)。
【0086】
キメラリン酸化インディケーターを組換えによって生産するには、ポリヌクレオチドによってコードされるポリペプチドを発現させる必要がある。該ポリヌクレオチドの配列は、例えばPCR法(例えば、米国特許第4,683,195号;Mullisら、Cold Spring Harbor Symp. Quant. Biol. 51:263, 1987;Erlich編、"PCR Technology" (Stockton Press, NY, 1989)を参照されたい)を含む慣例的な方法によって確認することができる。発現ベクターの構築およびトランスフェクト細胞におけるポリヌクレオチドの発現には、これも当分野で周知の分子クローニング法を用いる必要がある(Sambrook ら、In "Molecular Cloning: A Laboratory Manual" (Cold Spring Harbor Laboratory Press 1989); "Current Protocols in Molecular Biology" (編、Ausubelら; Greene Publishing Associates, Inc., およびJohn Wiley & Sons, Inc. 1990およびその補足を参照されたい)。発現ベクターは、対象とするポリヌクレオチド配列、例えば前述の非オリゴマー化蛍光タンパク質をコードする配列に機能しうる形で連結された発現制御配列を含有する。該発現ベクターは、適切なプロモーター、複製配列、マーカーなどを組み入れることにより、原核生物または真核生物で機能するよう改変することができる。発現ベクターでキメラリン酸化インディケーター発現のために組換え宿主細胞をトランスフェクトし、さらに宿主細胞を例えば高濃度の発現について選択することで大量の単離タンパク質を得ることができる。宿主細胞は細胞培養にて維持するか、またはin vivoで生物内の細胞として維持することができる。
【0087】
発現されたキメラリン酸化インディケーターを対象とするポリペプチド、例えば該インディケーターの単離を容易にするために使用しうるペプチドタグに機能しうる形で連結することができる。例えば、例えば6個のヒスチジン残基を含有するポリヒスチジンタグを該キメラリン酸化インディケーターのN末端またはC末端に組み込み、その後ニッケルキレートクロマトグラフィー(実施例1を参照されたい)を用いて1工程で単離することができる。c-mycペプチド、FLAGエピトープ、または該エピトープに特異的に結合する任意のペプチドエピトープ(もしくは抗体、もしくはその抗原結合性断片)を含む任意のリガンド(もしくは同族受容体)を含むその他のペプチドタグが当分野で周知であり、同様に使用することができる(例えば、Hoppら、Biotechnology 6:1204, 1988;米国特許第5,011912号を参照されたい。これらの文献は各々、引用により本明細書中に含まれるものとする)。
【0088】
本発明の組成物を促進し、また所望であれば標準化するキット、およびその用途についても提供する。キットは本発明の組成物を1つ以上、例えばキメラリン酸化インディケーターを1つもしくは複数、または該インディケーターをコードするポリヌクレオチドを1つまたは複数含有していてもよい。さらに、該キットは該キットの構成部品、特に該キットに内包される本発明の組成物を使用するための使用説明書を含んでいてもよい。
【0089】
前記キットはそれらが複数の異なるキメラリン酸化インディケーターを提供する場合にとりわけ有用である。何故なら、当業者が特定用途のために望ましい特性を有する1つ以上のインディケーターを選択する際に都合が良いからである。同様に、異なるキメラリン酸化インディケーターをコードする複数のポリヌクレオチドを含有するキットによって数多くの利点が得られる。例えば、該ポリヌクレオチドを操作して都合の良い制限エンドヌクレアーゼまたはリコンビナーゼ認識部位を含有させることにより、該ポリヌクレオチドの調節エレメントまたは対象とするリン酸化可能ドメインもしくはPAABDをコードするポリヌクレオチドへの機能しうる形での連結を容易にすることができる。
【0090】
本発明はさらに、試料中のキナーゼまたはホスファターゼを検出する方法に関する。ある実施形態では、例えば該サンプルを、機能しうる形での連結によりドナー分子、リン酸化可能ドメイン、ホスホアミノ酸結合ドメイン、およびアクセプター分子を含有するキメラリン酸化インディケーターと接触させ(ここで該ホスホアミノ酸結合ドメインは該リン酸化可能ドメイン中に存在するホスホアミノ酸と特異的に結合し、該ドナー分子および該アクセプター分子は該ドナーが励起された場合に検出可能な共鳴エネルギー移動を呈し、該リン酸化可能ドメインおよびホスホアミノ酸結合ドメインは該アクセプターを励起する光を実質的に発しない)、該ドナー分子を励起させ、および前記試料における蛍光または発光特性を測定する(ここで該試料中にキナーゼまたはホスファターゼが存在するとFRETまたはLRETの程度に変化が生じ、それによって該試料中のキナーゼまたはホスファターゼを検出する)、ことによって本発明の方法を実施することができる。FRETまたはLRETの程度の変化とは、FRETもしくはLRET量の増大であっても、またはFRETまたはLRET量の減少であってもよく、さらに該変化は該試料中のキナーゼの存在を示すことができるし、あるいは該リン酸化可能ドメインが該試料とキメラリン酸化インディケーターとを接触させる前にリン酸化されている場合には該試料中のホスファターゼを示すことができる。
【0091】
試料中の蛍光は、通常は蛍光光度計を用いて測定するが、この場合、励起原からの第1波長を有する励起放射線が励起光分光器を通過し、これにより該励起放射線が生じて該試料を励起する。それに応じて、該試料中の非オリゴマー化蛍光タンパク質が該励起波長とは異なる波長をもつ放射線を発する。次いで回収分光器にて該試料からの発光を回収する。この装置は、該試料を走査している間該試料を特定の温度で維持するための温度調節器を含んでいてもよく、また複数の試料を保持するマイクロタイタープレートを動かして異なるウェルを曝露位置へと合わせる多軸並進ステージを備えていてもよい。該多軸並進ステージ、温度調節器、オートフォーカス機能、および画像化とデータ収集に関する電子機器は適切にプログラムされたデジタル・コンピュータによって管理することが可能であり、該コンピュータはアッセイ中に回収したデータを表示に適した別のフォーマットに変換することもできる。この過程を小型化し、かつ自動化することによって、何千もの化合物をハイスループットフォーマットにてスクリーニングすることが可能となる。これらの方法および蛍光物質上でアッセイを行うための他の方法は当分野で周知である(例えば、Lakowicz, "Principles of Fluorescence Spectroscopy" (Plenum Press 1983);Herman, "Resonance energy transfer microscopy" In "Fluorescence Microscopy of Living Cells in Culture" Part B, Meth. Cell Biol. 30:219-243 (TaylorおよびWang編; Academic Press 1989);Turro, "Modern Molecular Photochemistry" (Benjamin/ Cummings Publ. Co., Inc. 1978), pp.296-361を参照されたい。これらの文献は各々、引用により本明細書中に含まれるものとする)。
【0092】
別の実施形態では、試料中のキナーゼまたはホスファターゼを検出する方法を、該試料をリン酸化可能ポリペプチドと蛍光タンパク質とを含有するキメラリン酸化インディケーターに接触させて、該試料中の蛍光特性を決定することによって実施するが、ここで該試料中にキナーゼまたはホスファターゼ活性が存在すると、キナーゼまたはホスファターゼ活性が存在しない場合の蛍光特性と比較してその蛍光特性に変化が生じ、それによって該試料中の該キナーゼまたはホスファターゼが検出される。該キメラリン酸化インディケーターは、前記蛍光タンパク質が該リン酸化可能ポリペプチドのN末端部分とC末端部分との間に機能しうる形で挿入されるように該N末端部分と該C末端部分とを含む該リン酸化可能ポリペプチドを含有していてもよく、または該キメラリン酸化インディケーターは、該蛍光タンパク質のN末端部分とC末端部分との間に機能しうる形で挿入された、リン酸化可能ポリペプチドに機能しうる形で連結されたホスホアミノ酸結合ドメインを含有していてもよい。
【0093】
キナーゼ活性について調べようとする試料は、例えばキナーゼまたはホスファターゼ活性について調べようとする合成産物を含有する試料を含む、任意の試料でありうる。ある実施形態では、該試料は細胞、組織もしくは器官試料、またはかかる試料の抽出物でありうる生物学的試料である。別の実施形態では、前記方法を細胞培養物または組織試料中のインタクト細胞で行う。かかる方法では、前記キメラリン酸化インディケーターは、該キメラリン酸化インディケーターを細胞質基質、小胞体、ミトコンドリア基質、葉緑体ルーメン、中間トランスゴルジ扁平嚢、リソソームのルーメン、またはエンドソームのルーメンに標的化しうる細胞区画化ドメインなどの標的化配列を含有していてもよい。膜転位ドメインは、細胞区画化ドメインが該キメラリン酸化インディケーターのインタクト細胞への転位を容易にしうる膜転位ドメインである場合、とりわけ有用である。
【0094】
蛍光タンパク質とリン酸化可能ポリペプチドとを含むキメラリン酸化インディケーター中の該リン酸化可能ポリペプチドは、前記方法がキナーゼとホスファターゼのいずれを検出するためのものであるかによって、キナーゼまたはホスファターゼに特異的なアミノ酸位置でリン酸化されていてもリン酸化されていなくてもよい。また本発明の方法を使用して、キナーゼ阻害剤またはホスファターゼ阻害剤が存在するために試料中のキナーゼまたはホスファターゼ活性が存在しないことを、検出することができる。このため、本法はキナーゼ阻害剤またはホスファターゼ阻害剤を同定する際に有用である。
【0095】
以下の実施例は本発明を例示するためのものであって、限定するものではない。
【実施例1】
【0096】
セリン/トレオニンプロテインキナーゼに対するキメラリポータータンパク質の調製および特性決定
本実施例により、キメラプロテインキナーゼA(PKA;cAMP依存性プロテインキナーゼ)リポータータンパク質を調製する方法を提供し、さらにかかるキメラリポーター分子がセリン/トレオニンキナーゼ活性を検出できることを実証する。
【0097】
プラスミドの構築
前記PKAキメラリポータータンパク質を、増強型シアン色蛍光タンパク質(1〜227;ECFP;配列番号6;K26R/F64L/S65T/Y66W/N146I/M153T/V163A/N164H)、14-3-3τの末端切断型(truncated version)、改変ケムプチド(kemptide)および配列番号10に示す配列中にQ69M変異を有する増強型黄色蛍光タンパク質であるシトリンを融合することによって構築した。14-3-3τ(1〜232)は、pcDNA3ベクター中の14-3-3τのcDNA(GenBankアクセッション番号D87662を参照されたい。該配列は引用により本明細書中に含まれるものとする)を鋳型として用いて増幅した。
【0098】
PCRのための順方向プライマーは以下の配列:5'-GGGCATGCATATGGAGAAGACTGAGCTGATCCAG-3'(配列番号26)を有しており、これはSphI部位を組み込む。逆方向プライマーは以下の配列:5'-CGCGGAGCTCGCTGCCGCCGGTGCCGCCCAGGCTGGCGCGACGGAGGCTGCCGCCGGTGCCGCCTGCAGAGTCTGATGTCCAAAGTGTTAGG-3'(配列番号27)を有しており、これは短いリンカーペプチド(AGGTGGS;配列番号19)、ケムプチド配列(LRRASLG;配列番号32)、第2の短いリンカーペプチド(GTGGSEL;配列番号21)およびSacI部位を導入する。
【0099】
PCRは、鋳型50ng、各プライマー300nM、各dNTP500nM、Taqポリメラーゼ(Gibco)2.5単位を含む、超純水(nanopure water)を加えた1×PCR反応バッファー(Boehringer Mannheim)(総量50μL)を用いて実施した。PCRは以下の通りに行った:95℃で5分;(95℃で1分、40℃で1分、72℃で2.5分)を1サイクルとして2サイクル;(95℃で1分、43℃で1分、72℃で2.5分)を1サイクルとして5サイクル;(95℃で1分、45℃で1分、72℃で2.5分)を1サイクルとして5サイクル;(95℃で1分、52℃で1分、72℃で2.5分、72℃で7分)を1サイクルとして15サイクル行い、その後25℃で維持した。
【0100】
得られた増幅産物をQiagenゲル精製キットを用いて精製し、次いでSphIおよびSacIで一晩消化した。消化混合物をQiagen PCR精製キットを用いて精製し、その後この精製断片を、ECFPおよびシトリン(黄色cameleon3.3由来)のcDNA配列を含有するSphI/SacI消化pRSETB(Invitrogen)中に連結した。この構築物はpRSETBのBamHI/EcoRI部位内に存在し、かつ細菌における発現用のポリヒスチジンタグよりも後方に位置していた。得られたプラスミドを増幅し、配列決定してさらにQuickChange(商標)部位特異的突然変異誘発キット(Stratagene)を用いて突然変異を誘発することによって、前記ケムプチド配列中に1個のアミノ酸変化を導入し、プラスミドC4kY2.1-pRSETBを作製した。
【0101】
突然変異誘発用プライマーは以下の配列:5'-CGTCGCGCCAGCCTGCCAGGCACCGGCGGCAGC-3'(配列番号28)、および5'-GCTGCCGCCGGTGGCTGGCAGGCTGGCGCGACG-3'(配列番号29)を有していた。S475A変異体は、以下のプライマー:GCCTCCGTCGCGCCGCACTGCCAGGCACCGGC(配列番号30)、およびGCCGGTGCCTGGCAGTGCGGCGCGACGGAGGC(配列番号31)を用いて同様に作製した。
【0102】
哺乳動物での発現のために、C4kY2.1およびC4kY2.1(S475A)の両方を前記ベクターpcDNA3中、哺乳動物での発現用のKozak配列の後方にクローニングした。
【0103】
タンパク質の発現、リン酸化および in vitro 分光法
C4kY2.1-pRSETBおよびC4kY2.1(S475A)-pRSETB各々を用いて大腸菌(E.coli)BL21(DE3)株を形質転換した。単一コロニーを拾い上げ、0.1mg/mLのアンピシリンを含有する100〜500mLのLB培地中で37℃にて、600nmにおける光学密度が0.4〜0.8となるまで増殖させて、次いで0.1mg/mLのイソプロピルチオガラクトシド(IPTG)を用いて25℃で12〜24時間誘導した。細胞を遠心分離によって回収し、その後この細菌ペレットを4〜10mLのB-PERTM II Bacterial Extraction Reagent(Pierce)中に懸濁し、プロテアーゼ阻害剤(Complete(商標)EDTA-free Protease Inhibitor錠剤〔Roche〕、1mMのフェニルメチルスルホニルフッ化物)存在下で穏やかに振とうしながら25℃で15分間かけて溶解した。得られた溶解物を12,000gにて4℃で30分間遠心分離することによって清澄化した。
【0104】
His6タグのNi-NTAアガロース(Qiagen)への結合をバッチ様式で実施した。上清を0.22μMのシリンジフィルターに通してろ過し、次いで新しいチューブに移し、これに0.3〜1mLの50%(v/v)Ni-NTAスラリーを加えた。この懸濁物を回転振とう機上で4℃で1時間かけて穏やかに混合した。得られた溶解物-Ni-NTA混合物をカラムに負荷し、これを10倍量のTNS300バッファー(Tris-HCl、pH 7.4、300mM NaCl)および10倍量の10mMイミダゾール含有TNS300で洗浄した。1〜3mLの溶出バッファー(100mMイミダゾール含有TNS300)でキメラタンパク質を溶出させて、これをTNS300バッファー中4℃で12〜24時間透析した。必要に応じて、該タンパク質をYM-30 MicroconまたはCentricon濃縮器(Fisher)を用いて濃縮した。
【0105】
キメラタンパク質を、任意の量のアデノシン三リン酸、すなわちATP(200μM〜1mM)の存在下で25℃にてPKAキナーゼ反応バッファー(50mM Tris-HCl、pH7.5、10mM MgCl2 、1mg/mL BSA)中でPKAの触媒サブユニット(New England Biolabs;2.5U/μL)を用いてリン酸化した。ATPを前記成分のうちの残りのものに添加する前後における蛍光を、励起波長434nmを使用して観察した。Perkin-Elmer Spectrofluorometer LS50Bにて実験を行った。発光スペクトル(励起光380nm、発光430〜650nm)を回収し、536/476蛍光比を各時点において算出した。
【0106】
in vitroキナーゼアッセイのため、種々の構築物を、PKAキナーゼ反応バッファー中7.5単位のPKAの触媒サブユニットおよび6.5nM(1.2μCi)(γ-32P)-ATP(6000Ci/mmol, New England Nuclear)と共に総容量30μLにて25℃で30分〜12時間インキュベートした。10μLの反応混合物をホスホセルロースディスク上にスポットし、0.5%H3PO4に浸してからPKAキナーゼ反応バッファーで3回、各10分間洗浄した。32Pの移動を標準的なシンチレーション計数法によって測定した。
【0107】
前記リポーターの特異性を試験するため、CaMKII(New England Biolabs)およびPKC IIと共にインキュベートした時の蛍光変化および32P移動を同様に測定した。CaMKIIの場合の反応条件は、CaMKIIバッファー(20mM Tris-HCl、pH 7.5、10mM MgCl2 、0.5mM ジチオトレイトールおよび0.1mM Na2EDTA)中で5U/μL CaMKII、1mM ATPまたは6.5nM (1.2μCi) (γ-32P)ATP (6000Ci/mmol、NEN)、2mM CaCl2 、2.4μMカルモジュリンを含み、25℃で30分〜12時間とした。PKC IIの場合の反応条件は、バッファー(20mM Tris-HCl、pH 7.5、10mM MgCl2)中に3U/μL PKC II、1mM ATPまたは6.5nM (1.2μCi) (γ-32P)-ATP (6000Ci/mmol)、5mMCaCl2、140μM ホスファチジルセリンおよび3.8μM ジアシルグリセロールを含み、25℃で30分〜12時間とした。
【0108】
ホスファターゼについて試験するため、前記PKA-リン酸化キメラリポータータンパク質をYM-30 Microcon濃縮器を用いて濃縮し、さらに等量のTNS300バッファーを加えた。次いで、このタンパク質を上記した通りにNi-NTAで精製した。精製したタンパク質を、PP1バッファー(50mM Tris-HCl、pH7.0、0.1mM Na2EDTA、5mM DTT、0.01% Brij35)中1mM MnCl2存在下で25℃にて30分〜3時間、2.5Uのプロテインホスファターゼ1(PP1;New England Biolabs)を用いて脱リン酸化した。
【0109】
細胞培養
HeLa細胞またはCOS-7細胞を2cm皿または10cmプレート中の滅菌カバーガラス上にプレーティングし、低グルコースDMEM培地中37℃にて50〜90%コンフルエントになるまで増殖させた。細胞をFuGENE-6トランスフェクション試薬(Roche)を用いてトランスフェクトした。簡単に述べると、2cm皿中の24mmカバーガラス上の細胞を、0.5μgのDNA(Qiagen社から入手したMidiprep Kitを用いて精製)、100μLのOptiMEM1培地および3μLのFuGENE-6を用いてトランスフェクトした。室温で30分間インキュベートした後、該混合物を該細胞に加えた。
【0110】
画像解析のため、細胞をウシ胎仔血清含有低グルコースDMEM中で37℃にて24〜72時間インキュベートし、その後HBSSバッファー(20 mM Hepes、pH 7.4、2g/L D-グルコース)で2回洗浄し、フォルスコリン(FsK;Calibiochem)およびN6,2’-O-ジブチリルサイクリックアデノシン3’,5’-一リン酸(dbcAMP;Calibiochem)を加えて、バッファー中暗所で室温にて維持した。FsKをDMSO中に溶解して、50mMのストック溶液として使用した。DMSO溶液を加えるために、500μLのHBSSバッファーを画像化用皿から取り出して該DMSO溶液と混合し、その後これを該画像化用皿に戻した。PKA活性の阻害研究のため、細胞を10μMのH-89を含有するDMEM培地中で約2時間予備インキュベートした。
【0111】
画像化研究
細胞を、Metafluor 2.75ソフトウェア(Universal Imaging;West Chester PA)により制御される冷却CCDカメラ(Photometrics;Tucson AZ)を備えたZeiss Axiovert顕微鏡にて画像化した。2重蛍光比イメージングには、440DF30励起フィルター、455DRLPダイクロイックミラーおよびフィルターチェンジャー(Lambda 10-2, Sutter Instruments, San Rafael, CA)によって切り替えられる2つの蛍光フィルター(ECFPには480DF30、シトリンには535DF25)を使用した。蛍光画像をバックグラウンドについて補正した。露光時間は1000msとし、画像を15秒毎に取得した。
【0112】
結果
細胞シグナル伝達に関与するプロテインキナーゼであるPKAを使用して、セリン/トレオニンリン酸化に対する蛍光比測定インディケーターの1例を示した。cAMPは主な2次メッセンジャーのうちの1つであって、多くの細胞活動においてシグナル伝達物質として重要な役割を果たしており、そのシグナルはPKA活性化により伝達される。PKAは、コンセンサス配列中のセリン/トレオニン残基において特定の核タンパク質をリン酸化することによって特定の遺伝子発現を調節する。前記14-3-3ファミリーのタンパク質は、ホスホセリン含有タンパク質に結合することによってシグナル伝達を仲介するため、PKAのコンセンサス部位を包含しうるコンセンサス配列を含有している可能性がある。そこで、GFP FRET対が14-3-3タンパク質と基質ペプチドによって連結されている融合タンパク質を構築した。リン酸化が生じると、14-3-3と該基質との結合によって2つのGFP同士が接近し、その結果リン酸化の読み出し情報としてFRETが高められる。このGFP FRET対として、ECFP、および酸条件に対してより安定な改良型黄色蛍光タンパク質であるシトリンを選択した。14-3-3のC末端尾部を削除し、フレキシブルリンカーAGGTGGS(配列番号19)で置き換えた。別のフレキシブルリンカーGGTGGSEL(配列番号21)を前記基質ペプチドとシトリンとの間に挿入した。
【0113】
ケムプチド(LRRASLG;配列番号32)、改変ケムプチド(LRRASLP;配列番号20)およびRaf259由来のペプチド配列(AQRSTSTPN;配列番号33)を含む様々な基質配列を含有する多くのキメラを作製した。C4kY2.1リポーター(図6B)は、PKA活性化に対して最も強く反応した。前記ケムプチド配列を含有するC4kY1.1もまた、PKA活性化に対して反応を示した。さらに前記14-3-3はコンセンサス配列RSXSXP(配列番号34)を認識したが、それにより、セリン、プロリンから+2の位置にあるグリシンに突然変異を誘発させると結合親和性が高まる可能性があることが説明された。このようにして、改変ケムプチド配列を含有するC4kY2.1キメラリポータータンパク質を構築した。
【0114】
キメラリポータータンパク質の in vitro 特性決定
前記キメラリポータータンパク質C4kY2.1はPKAの触媒サブユニットによって効率良くリン酸化されたが、変異型C4kY2.1(S475A)タンパク質は同in vitroリン酸化アッセイではリン酸化されなかった。この結果は、コンセンサスPKAリン酸化部位(RRXS;配列番号35)を含有する前記改変ケムプチド配列(LRRAS475LP;配列番号20)中の所定のセリンにてリン酸化が生じることを意味している。
【0115】
リン酸化による構造変化がFRETの効率に及ぼす影響についても調べた。前記ECFP中の蛍光団を434nmで励起すると、シトリンからこれら2つの蛍光団間のFRETによって526nmでの蛍光発光が観察された。前記C4kY2.1キメラリポータータンパク質がリン酸化されると、FRETが増大し、また526nmおよび476nmにおける蛍光比の値が時間依存的に1.09から1.42へと増大した。PKAまたはATPのいずれかが省かれている陰性対照では、FRET変化がPKAリン酸化に依存していることが実証された。所定のセリンを変異させてアラニンとした変異型C4kY2.1(S475A)では、PKA触媒サブユニットおよび1mMのATPと共にインキュベートしてもFRET変化は見られなかった。この結果は、該FRET変化が立体構造変化、例えばセリン475におけるPKAリン酸化によって生じるリン酸化ペプチドと14-3-3との結合、に起因していることを意味する。
【0116】
前記C4kY2.1キメラを10μgのトリプシンで40分間処理(MiyawakiおよびTsien, Meth. Enzymol. 37:472-500, 2000。当該文献は引用により本明細書中に含まれるものとする)した後、リン酸化および非リン酸化C4kY2.1のFRET効率を算出したところ、それぞれ20%および30%であった。さらに、このPKA/ATP依存性FRET変化は、リン酸化セリン/トレオニン特異的であるプロテインホスファターゼ1(PP1)で処理すると元に戻すことが可能であった。精製PKAリン酸化キメラをPP1と共にインキュベートした場合、FRETは減少し、また526nmおよび476nmにおける蛍光比の値は時間依存的に1.39から1.14へと減少した。
【0117】
前記キメラPKAリポータータンパク質C4kY2.1の特異性を、CaMKIIおよびPKC IIを該キメラにin vitroで適用することによって調べた。これら2つのキナーゼは、それぞれが前記ケムプチド配列と重複するコンセンサス配列RXXS/T(配列番号36)およびK/RXXS/T(配列番号37)を有する。該キメラはこれらのキナーゼでは殆どリン酸化されず、該キメラをいずれかのキナーゼと共にインキュベートしても有意なFRET変化は見られなかった。これらの結果は、前記C4kY2.1キメラがin vitroでのPKAリン酸化に対して特異的であることを意味する。
【0118】
PKA リポーターの哺乳動物細胞における発現および挙動
前記キメラPKAリポーターC4kY2.1をHela細胞中にトランスフェクトした場合、その蛍光は細胞質基質区画内には均一に分布していたものの、核からは排除されていなかった。これは標的化シグナルを持たないかかる蛍光タンパク質について予想された通りの結果であった。同様の発現パターンがCOS-7細胞でも観察された。PKAの活性を高めるため、トランスフェクト細胞をcAMP上昇試薬で処理した。該細胞を50μMのFsKおよび1mMのジブチリルcAMPに曝露すると、時間依存的に535nm/480nm比が増大した。典型的には、該比は刺激の5分後にプラトーに達した。C4kY2.1(S475A)でトランスフェクトした細胞を同様の条件にて処理した場合には、535nm/480nm比に変化は見られなかった。この結果は、14-3-3と、PKAによりセリン475でリン酸化されている前記ペプチドとの分子内結合が、観察されたFRET変化を招いたということと一致する。
【0119】
FsKまたはdbcAMPのいずれか一方が、単独でFRET変化を生じた。概ね、蛍光比535nm/480nmにおける変化は25%〜34%であった。さらに、該変化およびその反応速度論は前記トランスフェクト細胞の蛍光強度に依存していた。すなわち、該細胞が明るい光を放つほど、FRET変化は大きくなり、またよりゆっくりとプラトーに到達した。1mMのdbcAMPを単独で投与すると535nm/480nm比が緩やかに上昇し、一方10μMのH-89(PKA阻害剤)で2時間にわたり前処理すると、この過程はさらに遅くなったものの完全には阻害しなかった。H-89で前処理した細胞における蛍光比535nm/480nmの変化は46%であり、これは、該PKA阻害剤を用いた前処理によって刺激前の細胞内部におけるPKAリン酸化の基底レベルが低下し、より大きなFRET変化が生じたということを示唆している。同様の535nm/480nm比上昇がFsKおよびdbcAMPで処理したCOS-7細胞において観察されたが、この際の変化はより小さく(約5%)、また開始時の比はより高いことが観察された。
【実施例2】
【0120】
チロシンキナーゼ活性検出用キメラリポータータンパク質の調製および特性決定
本実施例により、キメラsrcリポータータンパク質およびキメラEGFRリポータータンパク質を調製する方法を提供し、またかかるキメラリポータータンパク質がチロシンキナーゼ活性を検出できることを実証する。
【0121】
キメラ EGFR リポータータンパク質をコードするキメラ遺伝子の調製
マウスp52 Shcから得たSH2ドメイン(LanningおよびLafuse, Immunogenetics 49:498-504, 1999;GeneBankアクセッション番号AF054823を参照されたい。これらの文献は各々、引用により本明細書中に含まれるものとする)を以下のプライマー:EGFR.Fwd-(5'-GCCGCCCGCATGCATTGGTTCCACGGGAAGCTGAGCCGG-3;配列番号38)およびEGFRoptsub.Rev-(5'-TACCATGAGCTCTGATTGCGGAGCCATGTTCATGTACTCAGCTTCCTCTTCAGGCTTCCCAGATCCAGAGTGAGACCCCACGGGTTGCTCTAGGCACAG-3';配列番号39)を用いるPCRによって増幅した。
【0122】
PCR反応は次のように構築した:67μLの水、10μLの10×Taqバッファー(Promega)、16μLの25mM MgCl2、2μLの25mM dNTPsストック、1.5μLの100μM EGFR.Fwdプライマー、1.5μLの100μM EGFRoptsub.Revプライマー、1μLの0.1μg/μL p52 Shc鋳型、および1μLのTaqポリメラーゼ(Promega)。以下のサイクルを使用した:94℃で2分;(95℃で2分、40℃で2分、72℃で2分30秒)を1サイクルとして2サイクル;(95℃で1分、52℃で1分、72℃で2分30秒)を1サイクルとして28サイクル;72℃で10分;25℃にて維持。
【0123】
得られたPCR産物をSacIおよびSphIで消化し、同様に消化したYC3.3プラスミド中に連結した。尚、該プラスミドはEYFPおよびECFPの遺伝子をN末端His6タグの後方に含有しており、前記ベクターpRSETBから得たものである。「Eopt-pRSETB」と名付けたこの構築物を、EGFRリポーターの細菌における発現のために使用した。このキメラEGFRリポータータンパク質の構造を図7Aに例示する。
【0124】
哺乳動物での発現のために、BamHIおよびEcoRI制限部位を用いて前記Eopt-pRSETBプラスミドをベクターpCDNA3中にクローニングした。この方法で調製した構築物は、そのN末端にHis6タグを保有していた。この哺乳動物での発現用プラスミドを「Eopt-pCDNA3」と名付けた。
【0125】
キメラ Src リポータータンパク質をコードするキメラ遺伝子の調製
v-Srcから得たSH2ドメインを、以下のプライマー:SrcSH2.Fwd-(5'-GCCGCTCGCATGCATTGGTATTTTGGGAAGATCAC-3';配列番号40)およびSrcSH2.Rev-(5'-CACCATGAGCTCAAATTCACCGTAGATCTCAGAACCCTCACCAGAACCCGGCTTCCCAGATCCAGATGTAGACCCACAGACGTTAGTCAGGCG-3';配列番号41)を用いるPCRによって増幅した。
【0126】
PCR反応は次のように構築した:67μLの水、10μLの10×Taqバッファー(Promega)、16μLの25mM MgCl2、2μLの25mM dNTPsストック、1.5μLの100μM SrcSH2.Fwdプライマー、1.5μLの100μM SrcSH2.Revプライマー、1μLの0.1μg/μL v-Src鋳型、および1μLのTaqポリメラーゼ(Promega)。以下のサイクルを使用した:94℃で2分;(95℃で2分、40℃で2分、72℃で2分30秒)を1サイクルとして2サイクル;(95℃で1分、52℃で1分、72℃で2分30秒)を1サイクルとして28サイクル;72℃で10分;25℃にて維持。
【0127】
得られたPCR産物をSacIおよびSphIで消化し、同酵素で消化したYC3.3プラスミド中に連結した。「SC-pRSETB」と名付けたこの構築物を、Srcリポーターの細菌における発現のために使用した。このキメラSrcリポータータンパク質の構造を図7Bに例示する。
【0128】
哺乳動物での発現のために、BamHIおよびEcoRI制限部位を用いて前記SC-pRSETBプラスミドをベクターpCDNA3中にクローニングした。この方法で調製した構築物は、そのN末端にHis6タグを保持していた。この哺乳動物での発現用プラスミドを「SC-pCDNA3」と名付けた。
【0129】
細菌細胞からのキメラ EGFR リポータータンパク質およびキメラ Src リポータータンパク質の調製
細菌における発現のため、化学的にコンピテントである細菌株DH5αを前記Eopt-pRSETBプラスミドで形質転換した。この細胞を、アンピシリン(50μg/mL)を補足したLB寒天上にプレーティングした。単一細菌コロニーを使用してアンピシリン(50μg/mL)補足LBの培養物1mLに一晩接種し、次いでこの1mLの培養物を使用してアンピシリン(50μg/mL)補足LBの培養物500mLに接種した。これらの細胞をOD600が約0.4になるまで37℃で増殖させて、その後500μLの1M IPTGを加えることによってタンパク質発現を誘導した。細胞を振とうしながら30℃で6〜12時間以上インキュベートし、その後GS-3チューブに入れて4000rpmにて4℃で10分間遠心分離することにより回収した。
【0130】
得られた細胞ペレットを10mLのB-PERII試薬(Pierce)中に再懸濁し、この混合物を穏やかに揺らしながら25℃で10分間インキュベートし、次いで細胞デブリをSS-34チューブに入れて15,000rpmにて4℃で15分間遠心分離することによりペレット化した。上清を分離し、1mLのNi-NTAアガロース(Qiagen)と混合して、この懸濁物を穏やかに回旋させながら4℃で30分間インキュベートした。次にこの懸濁物をスクリーニングカラムに移し、ビーズを2×8mLの50mM Tris pH7.4/300mM NaCl/10mMイミダゾールで洗浄した。キメラタンパク質を5mLの50mM Tris pH7.4/300mM NaCl/10mMイミダゾールで溶出させて、その後これを50mM Tris pH7.4/50mM NaCl/10mM MgCl2中で一晩透析し、少量のアリコートとして−20℃で保存した。標準的な収率は1〜5μMの純粋なEGFRリポータータンパク質を5mLであった。
【0131】
同様の手順を用いてキメラSrcリポータータンパク質を細菌細胞から調製した。
【0132】
キメラ EGFR リポータータンパク質およびキメラ Src リポータータンパク質の哺乳動物細胞における発現
Eopt-pCDNA3プラスミドを増幅し、これをQiagen社の内毒素非含有midiprep kitを用いて精製した。生細胞における蛍光を測定するために、2cm皿で50〜90%コンフルエントとなったマウスB82細胞、HeLa細胞、またはNIH3T3細胞を、Fugene(Roche)を使用しかつ標準的なプロトコルに従って1μgの前記Eopt-pCDNA3プラスミドでトランスフェクトした。この細胞を、前記DNAと共に5%CO2および10%仔ウシ血清(B82細胞およびNIH3T3細胞)またはウシ胎仔血清(HeLa細胞)含有高グルコースDMEM中、37℃で10〜24時間インキュベートした。次いで該細胞を0.5%仔ウシ血清中(高グルコースDMEM中)に6〜24時間置いて血清飢餓状態とした。
【0133】
哺乳動物細胞で発現された前記リポーターの生化学的分析のために、10cm皿中で50〜90%コンフルエントとなったマウス82細胞、HeLa細胞、またはNIH3T3細胞を、Effectene(Qiagen)を使用しかつ標準的なプロトコルに従って1μgの前記Eopt-pCDNA3プラスミドでトランスフェクトした。この細胞を、前記DNAと共に5%CO2および10%仔ウシ血清(B82細胞およびNIH3T3細胞)またはウシ胎仔血清(HeLa細胞)含有高グルコースDMEM中37℃で10〜24時間インキュベートした。次いで該細胞を0.5%仔ウシ血清中(高グルコースDMEM中)に6〜24時間置いて血清飢餓状態とした。
【0134】
前記キメラEGFRリポータータンパク質の発現をin vitroでの蛍光によって評価した。アッセイは50mM Tris、pH7.4、50mM NaCl、10mM MgCl2、100μM ATPおよびEGFR酵素(Sigma)中で室温にて実施した。CFPを400nmで励起し、CFPとYFPの発光をそれぞれ75nmおよび525nmにて測定した。420nmにてカットオフ・フィルターを使用した。YFP:CFP比はEGFRおよびATPが反応混合物中に含まれている場合のみ上昇した。
【0135】
in vitroでの反応を50mM Tris、pH7.4、50mM NaCl、10mM MgCl2、100μM ATPおよびc-Src酵素(Upstate Biotechnology)を用いて実施した以外は上記と同一の手順を使用して、哺乳動物細胞にて前記キメラSrcリポータータンパク質を発現させた。CFPを432nmで励起し、CFPおよびYFPの発光をそれぞれ475nmおよび525nmにて測定した。
【0136】
キメラ EGFR リポータータンパク質およびキメラ Src リポータータンパク質の哺乳動物細胞における蛍光測定
生細胞の画像化を、cameleon Ca+2インディケーター(Miyawakiら、Nature 388:882-887, 1997。当該文献は引用により本明細書中に含まれるものとする)について記載された通りに実施した。EGFRを、50ng/mLのEGF(Sigma)を加えることによりHeLa細胞およびマウスL細胞中で刺激した。阻害剤が該EGFRリポーターに及ぼす影響を測定するために、EGFを加える前に100nMのAG1478(Calbiochem)を、それらの細胞と共にHBSS(20mM Hepes、pH 7.4、2 g/L D-グルコース)中にて室温で30分間インキュベートした。
【0137】
EGFを前記トランスフェクトマウスL細胞に添加すると、蛍光比が即座に上昇し、約2分で約27%蛍光比が変化してプラトーに到達した。該EGFをこの培養物から洗い流した後は、蛍光比は時間依存的に減少し、この減少は前記AG1478 EGFR阻害剤を加えることで加速した。細胞をEGF添加前に該EGFR阻害剤と共にインキュベートしても反応は見られず、前記Srcキナーゼ阻害剤であるPP1はEGFに起因する蛍光比上昇には何ら影響を及ぼさなかった。
【0138】
Src活性を、HeLa細胞およびNIH3T3細胞にてそれぞれEGF(50ng/mL)およびPDGF(50ng/mL)を用いて刺激した。Src活性を阻害するため、PP1(A.G.Scientific)をこれらの細胞と共に100nMにて30分、室温でインキュベートした。FRETをHeLa細胞で測定したところ、25%のFRET減少がSrc活性化に応じて測定された。該HeLa細胞はEGF刺激細胞の特徴である細胞膜の波打ち現象を呈した。同様のFRET減少がPDGF投与後のNIH3T3細胞においても生じた。HeLa細胞とNIH3T3細胞の両方において、Src阻害剤PP1はFRET反応を阻害したが、EGFR阻害剤AG1478は有意な効果を示さなかった。
【0139】
哺乳動物細胞で発現されたキメラ EGFR または Src リポータータンパク質の生化学分析
哺乳動物細胞で発現されたリポーターを、免疫沈降法(IP)、ウェスタンブロット解析、または精製タンパク質の蛍光によって分析した。IPおよびウェスタンブロット解析のために、以下の手順を使用した。適切な刺激物質または化学物質(EGF、PDGF、もしくは阻害剤)に曝露した後、10cm培養皿中のトランスフェクト細胞を氷冷HBSS(20 mM Hepes、pH 7.4、2 g/L D-グルコース)で2回洗浄し、1.5mLの溶解バッファー(50mM Tris、pH 7.4、100 mM NaCl、1 mM EDTA、0.1% Triton X-100、10 mM NaF、2mMオルトバナジウム酸ナトリウム、1mMフェニルメチルスルホニルフッ化物、10μg/mLペプスタチン、10μg/mLロイペプチン、および10μg/mLアプロチニン)で溶解した。この懸濁物を遠心分離によって清澄化し、プロテインG-セファロース樹脂(Amersham)上に固定したウサギポリクローナル抗GFP抗体を用いてその上清から前記リポーターを免疫沈降させた。ウェスタンブロット解析は、12%PAGE-SDSゲルで泳動した試料について、マウスモノクローナル抗ホスホチロシン抗体(Upstate Biotechnology)、ウサギモノクローナル抗EGFR抗体(Calbiochem)、またはマウスモノクローナル抗GFP抗体(Clontech)を用い、さらに抗ウサギHRPまたは抗マウスHRPにより2次検出を行うことによって、実施した。
【0140】
精製したリポーターの蛍光分析のために、前記粗細胞溶解物をNi-NTAアガロースカラム(Qiagen)に通して精製した。His6タグが付いたリポーターを50mM Tris pH7.4/300mM NaCl/100mMイミダゾールで溶出させて、さらにこれを50mM Tris pH7.4/50mM NaCl/10mM MgCl2中へ透析した。
【実施例3】
【0141】
ハイスループットスクリーニングを用いたキメラリン酸化インディケーターの同定
実施例1および2に記載した結果に基づき、種々の蛍光タンパク質、発光分子、キナーゼまたはホスファターゼ基質、PAABD、およびテトラシステインモチーフを用いてさらなるキメラリン酸化インディケーターを開発し、最適化することができる。ハイスループット方法は、かかる構築物の多種多様なライブラリーを体系的に作製してこれを試験する際に特に有用である(ZhaoおよびArnold, Curr. Opin. Chem. Biol. 3:284-290, 1997。当該文献は引用により本明細書中に含まれるものとする)。
【0142】
最初のハイスループット多様性生成およびスクリーニングを、哺乳動物細胞内で活性である、先に例示したキメラリン酸化インディケーター(実施例1および2)を用いて実施する。例えば、多様化の反復サイクル(米国特許第5,873,500号を参照されたい。当該文献は引用により本明細書中に含まれるものとする)により、これらのキメラリポーターにさらに有用な特性を付与することができる。また多様性は、例えばエラープローン(error prone)PCR、野生型コドンに関して様々な程度の偏りを呈するオリゴヌクレオチド特異的突然変異誘発法(Cormack ら、Gene 173:33-38, 1996。当該文献は引用により本明細書中に含まれるものとする)、DNAシャッフリング(Crameriら、Nat. Biotechnol., 14:315-319, 1996;MinshullおよびStemmer, Curr. Opin. Chem. Biol., 3:284-290, 1999。これらの文献は各々、引用により本明細書中に含まれるものとする)、ランダムスペーサーの組み込み、または「ハイブリッド酵素作製のための段階的末端切断」(Ostermeierら、Nat. Biotechnol., 17:1205-1209, 1999を参照されたい。当該文献は引用により本明細書中に含まれるものとする)を含む他の様々な方法によっても作り出すことができる。
【0143】
ハイスループットスクリーニングでは、特定の増殖条件下で最も明るい光、最も高い発現レベルを有するか、または独特の発光スペクトルを示す変異体またはクローンの同定を可能にする蛍光活性化セルソーティング(FACS)を利用することができる。前記ドナーと前記アクセプターは同一キメラの一部であり、そのためにこれら2つの蛍光比が可変の発現レベルではなくFRETのみを反映するので、FACSは、FRET構築物をスクリーニングする際にとりわけ有用である。その後最も望ましい特性を有するキメラをさらに詳しく調べて、キナーゼ活性の誘導などの刺激を与える前後で関連する様式にて反応を示すキメラを同定することができる。
【0144】
前記キメラリン酸化可能インディケーターは細菌、酵母、または哺乳動物細胞にてスクリーニングすることができるが、最終的には該インディケーターは哺乳動物細胞を研究する際に最も役立つため、哺乳動物細胞が好ましい。心筋細胞、B細胞などを含む他の細胞を確認試験に使用することができるが、HeLa、CHO、HEK-293、3T3、またはJurkatなどの標準的な培養株が最初のスクリーニング研究の際に最適な細胞である。哺乳動物細胞株について研究するためには、任意の個々の細胞が単一のキメラ配列のみを採取することが好ましい。何故なら、蛍光を発するが反応しないタンパク質が存在すると、それが優れた構築物の反応を致命的なほど弱め、覆い隠してしまうからである。電気穿孔法やリポフェクションなどのトランスフェクション方法によって、多くの異なるDNA分子を透過性を高めた各々の細胞内に入れることが可能となり、またそれ故、これらの方法は非機能性配列が干渉することの無いスクリーニング手段にのみ適している。これと比較して、レトロウイルス感染などの方法によれば、単一キメラ構築物をウイルスパッケージ内に挿入することが可能となる。1未満の感染多重度にて作用させると、殆ど全てのトランスフェクタントは単一の導入配列のみを含有することになる。非感染状態の細胞は蛍光を発することはなく、また干渉することも無い。
【0145】
FACSを使用することにより、非蛍光細胞を排除し、単一の蛍光個体をマイクロタイタープレートの別々のウェルに入れることができる。次いでこれらの細胞を、恐らくは継続的な抗生物質による選択を行いながら、増殖させて、各ウェル中に十分な数の細胞を得る。その後、例えば内因性のまたは同時発現されたキナーゼまたはホスファターゼを薬理学的に活性化することによってこれらの細胞を適切に刺激する前後において、マイクロプレート蛍光光度計を用いてクローンを読み取ることができる。あるいは、該細胞を溶解し、個別に発現され精製された酵素を加える前後にその蛍光を読み取ってもよい。次いで、最も良好な反応を示すウェルから回収したDNAの配列を決定し、再度発現させることができる。
【0146】
顕微鏡検査をベースとする方法を使用することもできる。例えば、比較的多量の細胞を幾つかのマイクロタイタープレートの各ウェルに入れて、該細胞が培地に接着して生理学的に平衡に達したら試薬を加えて該細胞を刺激し、次いでこれを再び画像化して刺激前のものと比較することができる。適切なソフトウェアにより、前記刺激に対して最も高い反応を示すそれらの細胞を強調表示することができるし、またマイクロピペットを用いて該細胞からDNA試料を得ることができる。この方法の利点は、単一の単離細胞からクローンを増殖させることに伴う低い生存率および長い所要時間を回避できること、またウェルあたり何百から何千という細胞を用いてより多様なライブラリーを調べることができるということである。
【0147】
少なくとも2種類の二次元微小流セルソーティング(planar microfluidic cell sorting)がこれまでに提案されており、そのうちの一方はシリコンエラストマーとして成型したTジャンクションを通して電子浸透により駆動される流れに乗って一列になって供給される細胞を使用するものであり(Fuら、Nat. Biotechnol., 17:1109-1111, 1999。当該文献は引用により本明細書中に含まれるものとする)、他方は超微粒気泡形成によって個別に放出可能な細胞の列を使用するものである。これらの方法は非接着細胞を用いて実施するものであり、原理的には、DNA試料だけでなく生細胞を回収するために使用することもできる。
【0148】
上記実施例に関して本発明をこれまで説明してきたが、本発明の改変および変更が本発明の趣旨および範囲内に包含されることは理解されよう。従って、本発明は別紙記載の「特許請求の範囲」によってのみ限定されるものである。
【図面の簡単な説明】
【0149】
【図1】図1A〜1Cは、リン酸化されるとその蛍光が変化するリン酸化特異的キメラリポータータンパク質の一般的なデザイン3種を例示したものである。蛍光性GFPである「CFP」および「YFP」をホスホアミノ酸結合ドメイン(PAABD)と併せて示す。該PAABD中の大きい方の円はArgとLys残基に富むリン酸結合部位を意味し、またこの大きい方の円の中のより小さな円はホスホアミノ酸を意味している(図6Bを参照されたい)。またキナーゼ/ホスファターゼ基質ペプチド(「基質ペプチド」)も示すが、該ペプチドにはこの構築物中に存在する任意のスペーサーも含まれている。内方向へ向けられた矢印および外方向へ向けられた矢印はそれぞれ前記GFPの最大励起光最大発光とを意味しているが、実際のスペクトルは図中に記した特定の数値よりもブロードである。 図1AはCFP-PAABD-基質-YFPキメラリポータータンパク質を例示したものであり、該タンパク質では該基質のリン酸化によりFRETを増大させることができる。 図1BはCFP-基質-YFP-PAABDキメラリポータータンパク質を例示したものであり、該タンパク質ではリン酸化によりFRETを減少させることができる。 図1CはYFP(1〜144)-ペプチド-PAABD-YFP(146〜238)キメラリポータータンパク質を例示したものであり、該タンパク質ではリン酸化により該YFPのプロトン付加状態および蛍光強度(図中では増大している)をモジュレートすることができる。
【図2】図2A〜2Cには、図1Aに例示したキメラインディケーターを作製するために、様々なホスホアミノ酸結合ドメインをリン酸化ペプチドと複合体化させてこれを互いに融合し、さらにCFPおよびYFPで取り囲んだものの構造を示す。ダークグレーの線は当該タンパク質を表し、このタンパク質は、棒線で示すペプチドと、球と棒線とで示すリンペプチドとの結合に関与する数個の主要残基を有する。太い矢印は該タンパク質を該ペプチドに連結するかまたはそれらのうちの一方をCFPもしくはYFPに連結することができるリンカーを示している(この矢印の向きはアミノ末端からカルボキシ末端への方向を意味している)。実空間においてタンパク質とペプチドとの間を結ぶ該リンカーに必要とされる長さが示されている。これらのリンカーを並べ替えることにより(図には示さず)、図1Bおよび1Cに例示した一般的構造を持つインディケーターを同じようにして構築することができる。 図2Aには、PDGF受容体(Pascalら、Cell 77:461-472, 1994。当該文献は引用により本明細書中に含まれるものとする)から得たリンペプチド(D(pY)-IIPLPD;配列番号14)と複合体化した、ホスホリパーゼCから得たSH2ドメインを示す。このミトン型SH2ドメインを図1に示すPAABDのモデルとした。 図2Bには、TrkA(Zhouら、Nature 378:584-592, 1995。当該文献は引用により本明細書中に含まれるものとする)から得たリンペプチドHIIENPQ-(pY)-F(配列番号15)と複合体化した、Shcから得たPTBドメインを示す。 図2Cは、リンペプチドARSH-(pS)-YPA(配列番号16;Yaffeら、Cell 91:961-971, 1997。当該文献は引用により本明細書中に含まれるものとする)と複合体化した14-3-3ドメインを示す。
【図3】図3には、リン酸化の際に立体構造が変化するタンパク質(二つ折り型)内に挿入された、環状に並び替えられたGFP(cpGFP;シリンダー)の構造概略図を示す。該cpGFPシリンダー上部のチューブ(円弧状)は、GFPの元々のN末端とC末端とを連結するスペーサーを意味している。該cpGFPの新たなN末端とC末端とを前記のリン酸化可能タンパク質内の挿入部位に連結するリンカーをチューブにて示す。このキメラのN末端およびC末端は該リン酸化可能タンパク質単独時のものと同じであり、これらについてもチューブにて示す。該タンパク質中の円はリン酸化されたアミノ酸を意味する。この例では、リン酸化は閉じた立体構造に有利に作用し、その結果cpGFPにおける割れ目をこじあけて該cpGFPの蛍光を減少させる。
【図4】図4Aおよび4Bは、タンパク質XとYとの間のヘテロ2量体形成の共鳴エネルギー移動による検出を例示したものである。 図4Aには、Xに融合させたGFPと、Yに融合させたサンゴRFPとを示す。XとYとが接近すると、GFPからRFPへの蛍光共鳴エネルギー転移(FRET)が促進される。 図4Bには、カルボスチリルアンテナ(「カルボスチリル」)を持ち、Xに融合されているかまたはX内に挿入された「テトラシステインモチーフ」に結合している重ヒ素(biarsenical)リガンド(「重ヒ素」)を介してXに結合したテルビウムキレート(「Tb3+キレート」)を示す。XとYとが接近すると、Tb3+からRFPへの発光共鳴エネルギー移動(LRET)が促進される。このキレート、アンテナ、およびリガンドの詳しい構造を図5Aに示す(これらはGFP(27kDa)よりもかなり小さい(全体で1.4kDa)ことに注目されたい)。内方向へ向けられた矢印および外方向へと向けられた矢印は、図1のものと同様のものである。
【図5】図5Aおよび5Bは、設計された構築物を用いる生細胞の標識を例示したものである。 図5Aには、テトラシステインモチーフ(-Cys-Cys-X-X-Cys-Cys-;配列番号17;Griffinら、Science 281:269-272, 1998。当該文献は引用により本明細書中に含まれるものとする)を含有するよう操作されたタンパク質を生細胞において細胞内標識するための、カルボスチリル124-Tb3+トリエチレンテトラミン六酢酸重ヒ素リガンド(TTHA)-アンテナペディアペプチドコンジュゲートの詳細な構造を提供する。それらに対応する構成単位は図4Bに示してある。膜転位ペプチド(配列番号18)によって仲介される受動的内部移行の後、細胞質基質の還元環境下におけるS-S結合の切断によって該ペプチドが放出される(Derossiら、Trends Cell Biol., 8:84-87, 1998。当該文献は引用により本明細書中に含まれるものとする)。前記テトラシステインモチーフは、膜浸透性である1,2-エタンジチオール2分子を置き換える。 図5Bは、カルボスチリル124-Tb3+-TTHA発光(点で示す曲線。LiおよびSelvin, J. Am. Chem. Soc., 117:8132-8138, 1995より。当該文献は引用により本明細書中に含まれるものとする)とサンゴRFPの励起および発光(それぞれ実線で示す曲線およびダッシュと点で示す曲線)との間のスペクトルの重なりを示す。実線で示す曲線およびダッシュと点で示す曲線における560nmおよび580nm付近のスパイクは散乱により人為的に生じるものである。LRETでは、点で示す軌跡が実線で示す軌跡と上手く重なるが、ダッシュと点で示す軌跡とは殆ど重ならないことが望ましい。
【図6】図6Aおよび6Bは、セリン/トレオニンリン酸化を可視化するための蛍光比測定インディケーターを例示したものである。 図6Aは、GFP間のFRETがどのようにリン酸化および脱リン酸化を示すかを例示したものである。図中のECFP(1〜227)(「CFP」;配列番号6のアミノ酸1〜227)およびシトリン(「YFP」;配列番号10にQ69M変異が生じたもの)は円柱で示してあるが、これはそれらの結晶構造を反映している。ホスホアミノ酸結合タンパク質は、ArgとLys残基に富むリン酸結合部位を表す円内部を有する形で示される(図6Bを参照)。リンカーを含むキナーゼ/ホスファターゼ基質ペプチドドメインについても示す。前記リン酸結合部位(大きな円)内のより小さな円は、図中に示すように、ホスホアミノ酸を表している。図中GFPの内方向へ向けられた矢印および外方向へ向けられた矢印は、それぞれ最大励起(433nm)と最大発光(476nm)を意味する。プロテインキナーゼによりリン酸化が生じると、隣接するホスホアミノ酸結合タンパク質がリン酸化された前記基質ペプチドに結合し、その結果GFP変異体間のFRET効率が変化する。 図6Bは、N末端からC末端にかけて順にECFP(1〜227)(配列番号6のアミノ酸1〜227)、リンカー1(MH)、14-3-3τ(1〜232)、リンカー2(配列番号19)、ケムプチド基質(配列番号20)、リンカー3(配列番号21)、およびシトリンを含むPKAリポーターのドメイン構造を例示したものである。
【図7】図7Aおよび7Bは、キメラEGFR(図7A)およびSrc(図7B)リポータータンパク質の構造を例示したものである。 図7Aには、N末端からC末端方向へ、増強型シアン色蛍光タンパク質(CFP)ドメイン、Shc由来のSH2ドメイン、リンカーペプチド(配列番号22)、リン酸化部位を表すペプチド部分(配列番号23)を含む基質ドメイン、および増強型黄色蛍光タンパク質ドメイン(YFP)を示す。 図7Bには、N末端からC末端方向へ、増強型シアン色蛍光タンパク質(CFP)ドメイン、c-src由来のSH2ドメイン、リンカーペプチド(配列番号24)、リン酸化部位を表すペプチド部分(配列番号25)を含む基質ドメイン、および増強型黄色蛍光タンパク質(YFP)を示す。
Claims (37)
- 機能しうる形での連結によりドナー分子、リン酸化可能ドメイン、ホスホアミノ酸結合ドメイン、およびアクセプター分子を含むキメラリン酸化インディケーターであって、ここで該ホスホアミノ酸結合ドメインは該リン酸化可能ドメイン中に存在するホスホアミノ酸と特異的に結合し、該ドナー分子および該アクセプター分子は該ドナー分子が励起された場合に検出可能な共鳴エネルギー移動を呈し、また該リン酸化可能ドメインおよびホスホアミノ酸結合ドメインは該アクセプターを励起する光を実質的に発しない、前記キメラリン酸化インディケーター。
- 前記ドナー分子または前記アクセプター分子のうちの少なくとも1つが蛍光タンパク質である、請求項1記載のキメラリン酸化インディケーター。
- 前記蛍光タンパク質が緑色蛍光タンパク質(GFP)、赤色蛍光タンパク質(RFP)、またはGFPもしくはRFP関連蛍光タンパク質である、請求項2記載のキメラリン酸化インディケーター。
- 前記赤色蛍光タンパク質がディスコソマ(Discosoma)RFPまたはディスコソマ(Discosoma)RFP関連蛍光タンパク質である、請求項3記載のキメラリン酸化インディケーター。
- 前記ディスコソマ(Discosoma)RFPがDsRedまたはその変異体である、請求項4記載のキメラリン酸化インディケーター。
- 前記蛍光タンパク質がエクオレア(Aequorea)GFP、レニラ(Renilla)GFP、フィアリジウム(Phialidium)GFP、または、エクオレア(Aequorea)GFP、レニラ(Renilla)GFP、およびフィアリジウム(Phialidium)GFP関連蛍光タンパク質である、請求項3記載のキメラリン酸化インディケーター。
- 前記エクオレア(Aequorea)GFP関連蛍光タンパク質がシアン色蛍光タンパク質(CFP)、黄色蛍光タンパク質(YFP)、または該CFPもしくはYFPのスペクトル変種である、請求項6記載のキメラリン酸化インディケーター。
- 前記ドナー分子が蛍光タンパク質であって、かつ前記の検出可能な共鳴エネルギー移動が蛍光共鳴エネルギー移動である、請求項1記載のキメラリン酸化インディケーター。
- 前記ドナー分子または前記アクセプター分子のうちの少なくとも1つが発光分子である、請求項1記載のキメラリン酸化インディケーター。
- 前記発光分子が細胞区画化ドメインをさらに含む、請求項9記載のキメラリン酸化インディケーター。
- 前記細胞区画化ドメインが膜転位ドメインである、請求項10記載のキメラリン酸化インディケーター。
- 前記ドナー分子が発光分子であって、かつ前記の検出可能な共鳴エネルギー移動が発光共鳴エネルギー移動である、請求項1記載のキメラリン酸化インディケーター。
- 前記アクセプター分子が蛍光タンパク質である、請求項12記載のキメラリン酸化インディケーター。
- 前記リン酸化可能ドメインがセリン/トレオニンキナーゼリン酸化可能ドメインまたはチロシンキナーゼリン酸化可能ドメインを含む、請求項1〜13のいずれか1項に記載のキメラリン酸化インディケーター。
- 前記リン酸化可能ドメイン中の少なくとも1つのアミノ酸がリン酸化されている、請求項1記載のキメラリン酸化インディケーター。
- 前記アミノ酸がセリン、トレオニン、チロシン、またはそれらの組み合わせである、請求項15記載のキメラリン酸化インディケーター。
- リン酸化可能ポリペプチドと蛍光タンパク質とを含むキメラリン酸化インディケーター。
- 前記リン酸化可能ポリペプチドがN末端部分とC末端部分とを含み、かつ前記蛍光タンパク質が該リン酸化可能ポリペプチドのN末端部分とC末端部分との間に機能しうる形で挿入されている、請求項17記載のキメラリン酸化インディケーター。
- 前記蛍光タンパク質が環状に並び替えられた蛍光タンパク質である、請求項18記載のキメラリン酸化インディケーター。
- 前記リン酸化可能ポリペプチドに機能しうる形で連結されたホスホアミノ酸結合ドメインをさらに含む請求項17記載のキメラリン酸化インディケーターであって、ここで前記蛍光タンパク質がN末端部分とC末端部分とを含み、かつ該リン酸化可能ポリペプチドとそれに機能しうる形で連結されたホスホアミノ酸結合ドメインが該蛍光タンパク質のN末端部分とC末端部分との間に機能しうる形で挿入されている、前記キメラリン酸化インディケーター。
- 前記リン酸化可能ポリペプチド中の少なくとも1つのアミノ酸がリン酸化されている、請求項17〜20のいずれか1項に記載のキメラリン酸化インディケーター。
- 請求項1記載のキメラリン酸化インディケーター、請求項17記載のキメラリン酸化インディケーター、請求項1記載のキメラリン酸化インディケーターをコードするポリヌクレオチド、または請求項17記載のキメラリン酸化インディケーターをコードするポリヌクレオチド、のうちの少なくとも1つを含むキット。
- 請求項1または請求項17記載のキメラリン酸化インディケーターをコードするポリヌクレオチド。
- 請求項23記載のポリヌクレオチドを含むベクター。
- 発現ベクターである、請求項24記載のベクター。
- 請求項23記載のポリヌクレオチドを含有する宿主細胞。
- 試料中のキナーゼまたはホスファターゼを検出する方法であって、該試料と請求項1記載のキメラリン酸化インディケーターとを接触させてドナー分子を励起すること、および該試料における蛍光または発光特性を測定することを含み、ここで該試料中にキナーゼまたはホスファターゼが存在すると蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)または発光共鳴エネルギー移動(LRET)の程度に変化が生じ、それによって該試料中のキナーゼまたはホスファターゼを検出する、前記方法。
- 前記のFRETもしくはLRETの程度における変化がFRETもしくはLRETの量の増大または減少である、請求項27記載の方法。
- 前記のFRETまたはLRETの程度における変化が前記試料中のキナーゼまたはホスファターゼを示す、請求項27記載の方法。
- 前記リン酸化可能ドメインが、前記試料をキメラリン酸化インディケーターと接触させる前にリン酸化される、請求項27記載の方法。
- 前記試料が生物学的試料である、請求項27〜30のいずれか1項に記載の方法。
- 前記キメラリン酸化インディケーターが標的化配列をさらに含み、かつ該標的化配列が細胞質基質、小胞体、ミトコンドリア基質、葉緑体ルーメン、中間トランスゴルジ扁平嚢、リソソームのルーメン、またはエンドソームのルーメンを標的とする、請求項27記載の方法。
- 前記キメラリン酸化インディケーターが膜転位ドメインである細胞区画化ドメインをさらに含む、請求項27記載の方法。
- 試料中のキナーゼまたはホスファターゼを検出する方法であって、該試料と請求項17記載のキメラリン酸化インディケーターとを接触させること、該試料における蛍光特性を測定することを含み、ここで該試料中にキナーゼまたはホスファターゼ活性が存在すると、キナーゼまたはホスファターゼ活性の非存在下での蛍光特性と比較してその蛍光特性が変化し、それによって該試料中のキナーゼまたはホスファターゼを検出する、前記方法。
- 前記の試料中のキナーゼまたはホスファターゼ活性の非存在がキナーゼ阻害剤またはホスファターゼ阻害剤の存在によるものである、請求項34記載の方法。
- キナーゼ阻害剤またはホスファターゼ阻害剤を検出する方法であって、キナーゼまたはホスファターゼの存在下で請求項1記載のキメラリン酸化インディケーターの第1の蛍光特性を測定すること、該キメラリン酸化インディケーターとキナーゼ阻害剤またはホスファターゼ阻害剤であると疑われる組成物とを接触させること、該組成物の存在下でキメラリン酸化インディケーターの第2の蛍光特性を測定することを含み、ここで第1の蛍光特性と第2の蛍光特性との差異によって該組成物がキナーゼ阻害剤またはホスファターゼ阻害剤であると同定だれる、前記方法。
- ハイスループット分析に適合させた、請求項36記載の方法。
Applications Claiming Priority (2)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
US09/865,291 US6900304B2 (en) | 1996-01-31 | 2001-05-24 | Emission ratiometric indicators of phosphorylation |
PCT/US2002/016955 WO2002095058A2 (en) | 2001-05-24 | 2002-05-24 | Emission ratiometric indicators of phosphorylation |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2005501525A true JP2005501525A (ja) | 2005-01-20 |
Family
ID=25345148
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2002592517A Pending JP2005501525A (ja) | 2001-05-24 | 2002-05-24 | リン酸化の蛍光比測定インディケーター |
Country Status (6)
Country | Link |
---|---|
US (1) | US6900304B2 (ja) |
EP (1) | EP1456372A4 (ja) |
JP (1) | JP2005501525A (ja) |
AU (1) | AU2002312149B2 (ja) |
CA (1) | CA2447799A1 (ja) |
WO (1) | WO2002095058A2 (ja) |
Cited By (3)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
WO2007102507A1 (ja) * | 2006-03-06 | 2007-09-13 | The University Of Tokyo | タンパク質リン酸化インディケーター |
JP2009278942A (ja) * | 2008-05-23 | 2009-12-03 | Hokkaido Univ | Bcr−ablチロシンキナーゼ活性測定用試薬 |
JP2011188821A (ja) * | 2010-03-15 | 2011-09-29 | Japan Science & Technology Agency | 改変蛍光蛋白質 |
Families Citing this family (29)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
US7338784B2 (en) * | 1998-12-11 | 2008-03-04 | Clontech Laboratories, Inc | Nucleic acids encoding chromophores/fluorophores and methods for using the same |
US9834584B2 (en) * | 1998-12-11 | 2017-12-05 | Takara Bio Usa, Inc. | Nucleic acids encoding chromophores/fluorophores and methods for using the same |
JP3643520B2 (ja) * | 2000-07-04 | 2005-04-27 | 独立行政法人科学技術振興機構 | cGMP可視化プローブ及びそれを利用したcGMPの検出・定量方法 |
US20030157643A1 (en) * | 2000-08-24 | 2003-08-21 | Almond Brian D | Synthetic nucleic acids from aquatic species |
US6969597B2 (en) * | 2001-02-21 | 2005-11-29 | Clontech Laboratories, Inc. | Nucleic acids encoding non aggregating fluorescent proteins and methods for using the same |
EP1264897A3 (en) * | 2001-06-06 | 2003-11-12 | Europäisches Laboratorium Für Molekularbiologie (Embl) | Synthetic sensor peptide for kinase or phosphatase assays |
US20030232383A1 (en) * | 2001-11-02 | 2003-12-18 | Sylvia Daunert | Novel reagentless sensing system for measuring carbohydrates based on the galactose/glucose binding protein |
US7056683B2 (en) * | 2002-11-12 | 2006-06-06 | Massachusetts Institute Of Technology | Genetically encoded fluorescent reporters of kinase, methyltransferase, and acetyl-transferase activities |
CA2505603A1 (en) * | 2002-11-18 | 2004-06-03 | Genospectra, Inc. | Caged sensors, regulators and compounds and uses thereof |
US7413874B2 (en) * | 2002-12-09 | 2008-08-19 | University Of Miami | Nucleic acid encoding fluorescent proteins from aquatic species |
KR100523212B1 (ko) * | 2003-01-04 | 2005-10-24 | 한국과학기술원 | 반응 단백질과 그의 기질 펩타이드간의 반응분석을 위한단백질 칩 |
WO2004062475A2 (en) * | 2003-01-10 | 2004-07-29 | Albert Einstein College Of Medicine Of Yeshiva University | Fluorescent assays for protein kinases |
US20060216779A1 (en) * | 2003-04-02 | 2006-09-28 | Larissa Vasilets | Method for the detection of post-translational modification activities and device system for carrying out said method |
WO2005019447A1 (ja) * | 2003-08-26 | 2005-03-03 | Japan Science And Technology Agency | 単色蛍光プローブ |
US8236523B2 (en) * | 2004-08-23 | 2012-08-07 | The Johns Hopkins University | Camp reporters and high throughput assays |
US20080178309A1 (en) * | 2005-03-25 | 2008-07-24 | Belousov Vsevolod V | Fluorescent Indicators of Hydrogen Peroxide and Methods for Using Same |
AU2006283211B2 (en) | 2005-08-22 | 2012-06-21 | Melior Pharmaceuticals I, Inc. | Methods and formulations for modulating Lyn kinase activity and treating related disorders |
WO2007035553A2 (en) * | 2005-09-15 | 2007-03-29 | The Regents Of The University Of California | Methods and compositions for detecting neoplastic cells |
US7982021B2 (en) * | 2006-07-14 | 2011-07-19 | The Johns Hopkins University | Nucleic acid molecules encoding emission ratiometric indicators of phosphoinositides |
WO2008112008A2 (en) * | 2006-08-11 | 2008-09-18 | Invitrogen Corporation | Sensor proteins and assay methods |
US7985783B2 (en) | 2006-09-21 | 2011-07-26 | The Regents Of The University Of California | Aldehyde tags, uses thereof in site-specific protein modification |
WO2008065540A2 (en) | 2006-11-27 | 2008-06-05 | Cis Bio International | Method for the detection of post-translational modifications |
US20100152215A1 (en) * | 2007-02-20 | 2010-06-17 | Melior Pharmaceuticals I, Inc. | Methods of identifying activators of lyn kinase |
US8729232B2 (en) * | 2008-03-27 | 2014-05-20 | The Regents Of The University Of California | Aldehyde tags, uses thereof in site-specific protein modification |
US8552184B2 (en) | 2008-07-03 | 2013-10-08 | Melior Pharmaceuticals I, Inc. | Compounds and methods for treating disorders related to glucose metabolism |
WO2010096394A2 (en) | 2009-02-17 | 2010-08-26 | Redwood Biosciences, Inc. | Aldehyde-tagged protein-based drug carriers and methods of use |
WO2017087912A2 (en) * | 2015-11-20 | 2017-05-26 | Duke University | Ratiometric biosensors and non-geometrically modulated fret |
AU2017257504A1 (en) | 2016-04-26 | 2018-10-25 | R.P. Scherer Technologies, Llc | Antibody conjugates and methods of making and using the same |
JP7182605B2 (ja) | 2017-04-10 | 2022-12-02 | メリオール・ファーマスーティカルズ・ワン・インコーポレイテッド | lynキナーゼ活性化因子及びTRPM8アゴニストを含む組成物及び医薬の製造におけるそれらの使用 |
Family Cites Families (27)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
IL60888A (en) | 1978-06-16 | 1984-07-31 | Yeda Res & Dev | Substrates and process for the quantitative assay of enzymes |
GB8916806D0 (en) | 1989-07-22 | 1989-09-06 | Univ Wales Medicine | Modified proteins |
EP0428000A1 (en) | 1989-11-03 | 1991-05-22 | Abbott Laboratories | Fluorogenic substrates for the detection of proteolytic enzyme activity |
US5599906A (en) | 1990-04-13 | 1997-02-04 | Schering Corporation | Protease assays |
US5264563A (en) | 1990-08-24 | 1993-11-23 | Ixsys Inc. | Process for synthesizing oligonucleotides with random codons |
US5491074A (en) | 1993-04-01 | 1996-02-13 | Affymax Technologies Nv | Association peptides |
GB9310978D0 (en) | 1993-05-27 | 1993-07-14 | Zeneca Ltd | Compounds |
CA2169298A1 (en) | 1993-09-10 | 1995-03-16 | Martin Chalfie | Uses of green fluorescent protein |
US5491084A (en) | 1993-09-10 | 1996-02-13 | The Trustees Of Columbia University In The City Of New York | Uses of green-fluorescent protein |
WO1995021191A1 (en) | 1994-02-04 | 1995-08-10 | William Ward | Bioluminescent indicator based upon the expression of a gene for a modified green-fluorescent protein |
US5605809A (en) | 1994-10-28 | 1997-02-25 | Oncoimmunin, Inc. | Compositions for the detection of proteases in biological samples and methods of use thereof |
US5625048A (en) | 1994-11-10 | 1997-04-29 | The Regents Of The University Of California | Modified green fluorescent proteins |
US5602021A (en) | 1994-12-29 | 1997-02-11 | Catalytic Antibodies, Inc. | Method for generating proteolytic enzymes specific against a selected peptide sequence |
DK0815257T3 (da) | 1995-01-31 | 2002-04-22 | Bioimage As | Fremgangsmåde til karakterisering af biologisk aktive stoffer |
WO1996027027A1 (en) | 1995-03-02 | 1996-09-06 | Rutgers The State University Of New Jersey | Improved method for purifying green fluorescent protein |
GB9504446D0 (en) | 1995-03-06 | 1995-04-26 | Medical Res Council | Improvements in or relating to gene expression |
US5614191A (en) | 1995-03-15 | 1997-03-25 | The United States Of America As Represented By The Department Of Health And Human Services | IL-13 receptor specific chimeric proteins and uses thereof |
JP3535177B2 (ja) | 1995-09-22 | 2004-06-07 | バイオイメージ・アクティーゼルスカブ | 緑色蛍光性タンパクであるgfpの新規な変種 |
US6803188B1 (en) | 1996-01-31 | 2004-10-12 | The Regents Of The University Of California | Tandem fluorescent protein constructs |
EP0915989B1 (en) * | 1996-07-16 | 2010-06-02 | The Regents Of The University Of California | Assays for protein kinases using fluorescent protein substrates |
US5912137A (en) | 1996-07-16 | 1999-06-15 | The Regents Of The University Of California | Assays for protein kinases using fluorescent |
WO1998040477A1 (en) | 1997-03-14 | 1998-09-17 | The Regents Of The University Of California | Fluorescent protein sensors for detection of analytes |
US5998204A (en) | 1997-03-14 | 1999-12-07 | The Regents Of The University Of California | Fluorescent protein sensors for detection of analytes |
US6197928B1 (en) | 1997-03-14 | 2001-03-06 | The Regents Of The University Of California | Fluorescent protein sensors for detection of analytes |
US6656696B2 (en) * | 1999-02-26 | 2003-12-02 | Cyclacel | Compositions and methods for monitoring the phosphorylation of natural binding partners |
WO2000071565A2 (en) * | 1999-05-21 | 2000-11-30 | The Regents Of The University Of California | Fluorescent protein indicators |
US20040214227A1 (en) * | 1999-12-22 | 2004-10-28 | Erik Joly | Bioluminescence resonance energy transfer (bret) fusion molecule and method of use |
-
2001
- 2001-05-24 US US09/865,291 patent/US6900304B2/en not_active Expired - Fee Related
-
2002
- 2002-05-24 CA CA002447799A patent/CA2447799A1/en not_active Abandoned
- 2002-05-24 JP JP2002592517A patent/JP2005501525A/ja active Pending
- 2002-05-24 WO PCT/US2002/016955 patent/WO2002095058A2/en active IP Right Grant
- 2002-05-24 EP EP02739505A patent/EP1456372A4/en not_active Withdrawn
- 2002-05-24 AU AU2002312149A patent/AU2002312149B2/en not_active Ceased
Cited By (3)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
WO2007102507A1 (ja) * | 2006-03-06 | 2007-09-13 | The University Of Tokyo | タンパク質リン酸化インディケーター |
JP2009278942A (ja) * | 2008-05-23 | 2009-12-03 | Hokkaido Univ | Bcr−ablチロシンキナーゼ活性測定用試薬 |
JP2011188821A (ja) * | 2010-03-15 | 2011-09-29 | Japan Science & Technology Agency | 改変蛍光蛋白質 |
Also Published As
Publication number | Publication date |
---|---|
CA2447799A1 (en) | 2002-11-28 |
AU2002312149B2 (en) | 2007-07-19 |
WO2002095058A9 (en) | 2003-11-13 |
WO2002095058A2 (en) | 2002-11-28 |
EP1456372A4 (en) | 2006-06-28 |
US20030186229A1 (en) | 2003-10-02 |
US6900304B2 (en) | 2005-05-31 |
EP1456372A2 (en) | 2004-09-15 |
WO2002095058A3 (en) | 2004-07-08 |
Similar Documents
Publication | Publication Date | Title |
---|---|---|
US6900304B2 (en) | Emission ratiometric indicators of phosphorylation | |
AU2002312149A1 (en) | Emission ratiometric indicators of phosphorylation | |
US8669074B2 (en) | Chimeric phosphorylation indicator | |
JP4215512B2 (ja) | 非オリゴマー化タンデム蛍光性タンパク質 | |
US7906636B2 (en) | Monomeric and dimeric fluorescent protein variants and methods for making same | |
US8101364B2 (en) | Fragments of fluorescent proteins for protein fragment complementation assays | |
EP1088233B1 (en) | A bioluminescence resonance energy transfer (bret) system and its use | |
US20080166749A1 (en) | Fluorescent Protein Sensors of Post-Translational Modifications | |
US20060194282A1 (en) | Fluorescent protein variants and methods for making same | |
US6852849B2 (en) | Non-oligomerizing tandem fluorescent proteins | |
CA2384170C (en) | Cgmp-visualizing probe and method of detecting and quantifying cgmp by using the same | |
WO2006024041A2 (en) | Monomeric and dimeric fluorescent protein variants and methods for making same | |
JP5265491B2 (ja) | モノマーおよびダイマー蛍光タンパク質変異体および上記変異体を作製する方法 |
Legal Events
Date | Code | Title | Description |
---|---|---|---|
A621 | Written request for application examination |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621 Effective date: 20050315 |
|
A131 | Notification of reasons for refusal |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131 Effective date: 20080415 |
|
A601 | Written request for extension of time |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A601 Effective date: 20080709 |
|
A602 | Written permission of extension of time |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A602 Effective date: 20080716 |
|
A02 | Decision of refusal |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A02 Effective date: 20081021 |