JP2005353209A - 光ピックアップ装置 - Google Patents

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文彦 伊藤
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Abstract

【課題】第1,第2光記録媒体の基板厚さの異なりによって生じる球面収差を補正する。【解決手段】第2光記録媒体(DVD)2を記録又は再生する場合には、第2レーザー光L2の発散光束を凹レンズ18Aと凸レンズ18Bと凹レンズ18Cとを貼り合わせて形成した色収差補正素子18に入射させ、この色収差補正素子18から弱く収束した第2レーザー光L2を出射させている。この後、第2レーザー光L2の弱い収束光束を回折光学素子20の下面20bから入射させて、上面20aの内周領域に形成した内周側凹凸状回折パターン部20a1で対物レンズ21への開口数(NA)が0.6相当になるように開口制限させると共に、内周側凹凸状回折パターン部20a1で第2レーザー光L2に対して球面収差を補正した回折光を対物レンズ21の面21aに入射させている。
【選択図】図7

Description

本発明は、波長が異なる第1,第2レーザー光により基板厚さが異なる第1,第2光記録媒体を選択的に記録又は再生する際に、第1,第2光記録媒体の基板厚さの異なりによって生じる収差を補正するために色収差補正素子及び回折光学素子並びに一つの対物レンズを少なくとも備えた光ピックアップ装置に関するものである。
一般的に、円盤状の光ディスクやカード状の光カードなどの光記録媒体は、映像情報とか音声情報やコンピュータデータなどの情報信号を透明基板上で螺旋状又は同心円状に形成したトラックに高密度に記録し、且つ、記録済みのトラックを再生する際に所望のトラックを高速にアクセスできることから多用されている。
この種の光記録媒体となる光ディスクとして例えばDVD(Digital Versatile Disc)などは既に市販されているが、最近になって光ディスクに対してより一層高密度化を図るために、DVDよりも情報信号を超高密度に記録又は再生できるBlu−ray Discの開発が盛んに行われている。
上記したDVDは、波長が650nm前後のレーザー光を開口数(NA)が0.6程度の対物レンズで絞って得たレーザービームを照射して、レーザービーム入射面から略0.6mm隔てた位置にある信号面上に情報信号を記録又は再生している。この際、DVDの記録容量はディスク基板の直径が12cmの時に片面で4.7GB(ギガバイト)程度である。
一方、上記したBlu−ray Discは、波長が450nm以下のレーザー光を開口数(NA)が0.75以上の対物レンズで絞って得たレーザービームを照射して、レーザービーム入射面から略0.1mm隔てた位置にある信号面上に情報信号を記録又は再生できるように開発が進められている。この際、Blu−ray Discの記録容量はディスク基板の直径が12cmの時に片面で25GB(ギガバイト)前後である。
ところで、Blu−ray Discの開発が進むにつれて、一つの対物レンズを用いて記録密度が超高密度であるBlu−ray Discと、このBlu−ray Discよりも記録密度が低いDVDとを下位互換性を確保して記録又は再生できる光ピックアップ装置が開発されている(例えば、特許文献1)。
更に、一般的な光ディスクに対して色収差を補正できる光ピックアップ装置も開発されている(例えば、特許文献2及び特許文献3)。
特開2002−236253号公報(第57−58頁、第31図) 特開平6−250081号公報(第4頁、第3図) 特開2003−167190号公報(第8−9頁、第1図、第2図)。
図24は従来例1の光ピックアップ装置の光学系を模式的に示した図、
図25は従来例2の光ピックアップ装置の光学系を模式的に示した図、
図26は従来例3の光ピックアップ装置の光学系を模式的に示した図、
図27(a),(b)は従来例3の光ピックアップ装置において、色収差補正用光学素子を拡大して示した断面図,下面図である。
まず、図24に示した従来例1の光ピックアップ装置110は、上記した特許文献1(特開2002−236253号公報)に開示されているものであり、特許文献1を参照して簡略に説明すると、従来例1の光ピックアップ装置110では、透明基板の厚さが0.1mmである第1光ディスク(例えば青色レーザー使用の次世代高密度光ディスク)101と、透明基板の厚さが0.6mmである第2光ディスク(例えばDVD)102とが選択的に適用可能に構成されている。
上記した従来例1の光ピックアップ装置110内には、第1光ディスク(例えば次世代高密度光ディスク)101に対応して波長が400nm程度の第1レーザー光(青色レーザー光)を出射する第1半導体レーザー111と、第2光ディスク(例えばDVD)102に対応して波長が650nm程度の第2レーザー光(赤色レーザー光)を出射する第2半導体レーザー112と、第1,第2ビームスプリッタ113,114と、1次元アクチュエータ115によって光軸方向に移動可能なコリメータ116と、1/4波長板117と、絞り118と、2次元アクチュエータ119によって第1,第2レーザー光を第1,第2光ディスク101,102上に結像するために開口数NAが0.7以上で少なくとも1面上に不図示の回折輪帯レンズが形成された対物レンズ120と、第1,第2光ディスク101,102からの戻り光を検出するためのシリンドリカルレンズ121及び光検出器122とを備えている。
そして、第1,第2半導体レーザー111,112から出射した各発散光束は、2個の第1,第2ビームスプリッタ113,114,コリメータ116,1/4波長板117,絞り118を介して、第1,第2光ディスク101,102の情報記録面101a,102a上にそれぞれ選択的に集光され、各スポットを形成する。
この際、第1,第2光ディスク101,102の基板厚さに誤差がある場合とか、第1,第2半導体レーザー111,112の製造誤差により各発振波長に誤差がある場合とか、集光光学系を構成するレンズに厚さ誤差がある場合に発生する球面収差をコリメータ116の移動により補正している。
更に、対物レンズ120は、第1半導体レーザー111からの光束に対して像側開口数NA1内で回折限界内となるように集光させるので、超高密度な第1光ディスク101を再生でき、一方、第2半導体レーザー112からの光束に対して像側開口数NA2内で回折限界内となるように集光させるので、高密度な第2光ディスク102を再生できる。
また、第2半導体レーザー112からの光束を第2光ディスク102の情報記録面102a上に集光させる際、対物レンズ120の少なくとも1面上に形成された回折輪帯レンズの作用により、像側開口数NA1から像側開口数NA2の領域を通過する光束をフレア成分とするので、第2半導体レーザー112からの光束を、像側開口数NA1で決定される絞り118をすべて通過させても、像側開口数NA1から像側開口数NA2の領域を通過する光束は第2光ディスク102の情報記録面102a上にスポットを結ばないため、像側開口数NA1と像側開口数NA2との開口切り替え手段を設ける必要がないように構成されている。
次に、図25に示した従来例2の光ピックアップ装置210は、上記した特許文献2(特開平6−250081号公報)に開示されているものであり、特許文献2を参照して簡略に説明すると、従来例2の光ピックアップ装置210では、正レンズ211Aと負レンズ211Bとからなる色収差補正素子211と、対物レンズ212とで構成されており、色収差補正素子211中の正レンズ211Aと負レンズ211Bとの貼り合わせ面を非球面に形成することで、色収差補正素子211により光ディスク201に対して不図示のレーザー光の波長変化による球面収差を補正することができるようになっている。
次に、図26に示した従来例3の光ピックアップ装置310は、上記した特許文献3(特開2003−167190号公報)に開示されているものであり、特許文献3を参照して簡略に説明すると、この従来例3の光ピックアップ装置310は、超高密度記録用の光ディスク(Blu−ray Disc)301が適用可能に構成されている。
光ピックアップ装置310内には、超高密度記録用の光ディスク301に対応して波長が400nm程度のレーザー光(青色レーザー光)を出射する半導体レーザー311と、ビームスプリッタ312と、コリメータレンズ313と、1/4波長板314と、色収差補正用光学素子315と、絞り316と、2次元アクチュエータ317によってフォーカス制御及びトラッキング制御され且つ開口数NAが0.7以上で少なくとも1面が非球面に形成された対物レンズ318と、光ディスク301からの戻り光を検出するためのシリンドリカルレンズ319及び光検出器320とを備えている。
ここで、上記した色収差補正用光学素子315は、図27(a),(b)に拡大して示した如く、半導体レーザ311(図26)側の下面315aに略同心円状の回折パターン315a1が設けられており、且つ、対物レンズ318(図26)側の上面315bに負屈折力を有する凹面が形成されており、回折パターンの回折パワーと凹面の屈折パワーの絶対値を等しく設定することで色収差補正用光学素子315の全系のパワーが0とされている。
この色収差補正用光学素子315の回折パターン315a1により、半導体レーザ311の発振波長に対して、対物レンズ318とは、逆符号で、かつその絶対値が略一致した軸上色収差を発生する。そのため、半導体レーザ311から出射された光束は、色収差補正用光学素子315及び対物レンズ318を経ることによってほとんど軸上色収差なく光ディスク301の情報記録面301a上に集光することができる。
ところで、上記した従来例1の光ピックアップ装置110では、開口数NAが0.7以上で少なくとも1面上に回折輪帯レンズが形成された対物レンズ120によって、透明基板の厚さが0.1mmである第1光ディスク101と、透明基板の厚さが0.6mmである第2光ディスク102とを選択的に適用可能に構成されているものの、対物レンズ120の少なくとも1面上に形成した回折輪帯レンズはピッチが狭くなり、対物レンズ120の加工が困難であり、レンズ性能に悪影響を及ぼす危険性がある。
また、上記した従来例2の光ピックアップ装置210では、色収差補正素子211に不図示のレーザー光の波長変化による球面収差を補正する機能を持たせているものの、この色収差補正素子211は正レンズ211Aと負レンズ211Bの貼り合わせ面が非球面であるために、色収差補正素子211を製造することが極めて難しい。更に、従来例2の光ピックアップ装置210では、Blu−ray DiscとDVD(図示せず)とを下位互換性を確保して記録又は再生することに対して考慮されていない。
また、上記した従来例3の光ピックアップ装置310では、色収差補正用光学素子315の回折パターン315a1により超高密度記録用の光ディスク(Blu−ray Disc)301に対して軸上色収差なく記録又は再生できるものの、ここでも超高密度記録用の光ディスク301よりも記録密度が低いDVDを下位互換性を確保して記録又は再生することに対して考慮されていない。
即ち、上記した色収差補正用光学素子315は、基準波長と大きく異なる波長には対応していないので、色収差補正用光学素子315にDVD用として波長が650nm程度のレーザー光を入射すると、強い収束光を出射してしまい、対物レンズ318で大きな球面収差が発生するので、不図示のDVD上で良好な光スポットを結ぶことができず、DVDの記録再生ができない。従って、超高密度記録用の光ディスク(Blu−ray Disc)301とDVDの互換タイプの光ピックアップ装置に使用することはできない。
この際、仮に、超高密度記録用の光ディスク(Blu−ray Disc)301とDVDの互換タイプの光ピックアップ装置に構成した場合に、色収差補正用光学素子315を対物レンズ318から離れた位置でBlu−ray Discの光路系のみに挿入する構成が考えられるものの、色収差補正用光学素子315を対物レンズ318から離れた位置に挿入すると、トラッキングに伴う対物レンズ318のシフトにより、横方向の色収差(倍率色収差)が発生するので、この構成は好ましくない。
そこで、一つの対物レンズを用いて記録密度が超高密度である第1光記録媒体(例えば、Blu−ray Disc)と、この第1光記録媒体よりも記録密度が低い第2光記録媒体(例えば、DVD)とを下位互換性を確保して記録又は再生でき、第1光記録媒体用及び第2光記録媒体用の各レーザー光に対して波長変化が生じた場合に球面収差の変動が少なく、且つ、第1光記録媒体及び第2光記録媒体に対して色収差の増大を防ぐことができる光ピックアップ装置が望まれている。
請求項1記載の発明は、第1光記録媒体と、前記第1光記録媒体よりも記録密度が低く且つ前記第1光記録媒体よりも基板厚さが厚い第2光記録媒体と、前記第1,第2光記録媒体の各信号面を組み合わせて一体的に積層した組み合わせ型光記録媒体とを選択的に記録又は再生する光ピックアップ装置において、
前記第1光記録媒体に対応して波長が450nm以下の第1レーザー光を出射する第1レーザー光源と、
前記第1レーザー光源から出射した前記第1レーザー光を平行光束に形成する第1レンズと、
前記第2光記録媒体に対応して前記第1レーザー光よりも波長が長い第2レーザー光を出射する第2レーザー光源と、
前記第2レーザー光源から出射した前記第2レーザー光を発散光束に形成する第2レンズと、
前記第1レーザー光の平行光束と前記第2レーザー光の発散光束とを分離するレーザー光分離手段と、
凹状及び/又は凸状の屈折面を有する2枚以上のレンズが組み合わせて構成されており、前記レーザー光分離手段を通過した後に選択的に入射された前記第1レーザー光の平行光束又は前記第2レーザー光の発散光束を透過して前記第1,第2レーザー光に対して色収差を補正する色収差補正素子と、
前記色収差補正素子を透過した前記第1,第2レーザー光に対して前記第1,第2光記録媒体の基板厚さの異なりによって生じる球面収差を補正する回折光学素子と、
第1光記録媒体用として開口数(NA)が0.75以上に設定され、且つ、互いに対向する各面のうち少なくとも一方の面が非球面に形成されており、前記回折光学素子を透過した前記第1,第2レーザー光を前記第1,第2光記録媒体の各信号面に集光させる対物レンズとを少なくとも備えたことを特徴する光ピックアップ装置である。
また、請求項2記載の発明は、第1光記録媒体と、前記第1光記録媒体よりも記録密度が低く且つ前記第1光記録媒体よりも基板厚さが厚い第2光記録媒体と、前記第1,第2光記録媒体の各信号面を組み合わせて一体的に積層した組み合わせ型光記録媒体とを選択的に記録又は再生する光ピックアップ装置において、
前記第1光記録媒体に対応して波長が450nm以下の第1レーザー光を出射する第1レーザー光源と、
前記第1レーザー光源から出射した前記第1レーザー光を平行光束に形成する第1レンズと、
前記第2光記録媒体に対応して前記第1レーザー光よりも波長が長い第2レーザー光を出射する第2レーザー光源と、
前記第2レーザー光源から出射した前記第2レーザー光を発散光束に形成する第2レンズと、
前記第1レーザー光の平行光束と前記第2レーザー光の発散光束とを分離するレーザー光分離手段と、
前記第1レーザー光の基準波長λ1と同じ値の波長を設計波長λとして一方の面に回折パターン部が内周から外周に向かって同心円状に形成されて、前記回折パターン部の全体高さが前記設計波長の略3×λ倍で、且つ、前記第2レーザー光の基準波長λ2の略2×(λ2)倍に設定されていると共に、他方の面に屈折面が形成されており、前記レーザー光分離手段を通過して選択的に入射された前記第1レーザー光の平行光束又は前記第2レーザー光の発散光束を透過して前記第1,第2レーザー光に対して色収差を補正する色収差補正素子と、
前記色収差補正素子を透過した前記第1,第2レーザー光に対して前記第1,第2光記録媒体の基板厚さの異なりによって生じる球面収差を補正する回折光学素子と、
第1光記録媒体用として開口数(NA)が0.75以上に設定され、且つ、互いに対向する各面のうち少なくとも一方の面が非球面に形成されており、前記回折光学素子を透過した前記第1,第2レーザー光を前記第1,第2光記録媒体の各信号面に集光させる対物レンズとを少なくとも備えたことを特徴する光ピックアップ装置である。
また、請求項3記載の発明は、第1光記録媒体と、前記第1光記録媒体よりも記録密度が低く且つ前記第1光記録媒体よりも基板厚さが厚い第2光記録媒体と、前記第1,第2光記録媒体の各信号面を組み合わせて一体的に積層した組み合わせ型光記録媒体とを選択的に記録又は再生する光ピックアップ装置において、
前記第1光記録媒体に対応して波長が450nm以下の第1レーザー光を出射する第1レーザー光源と、
前記第1レーザー光源から出射した前記第1レーザー光を平行光束に形成する第1レンズと、
前記第2光記録媒体に対応して前記第1レーザー光よりも波長が長い第2レーザー光を出射する第2レーザー光源と、
前記第2レーザー光源から出射した前記第2レーザー光を収束光束に形成する第2レンズと、
前記第1レーザー光の平行光束と前記第2レーザー光の収束光束とを分離するレーザー光分離手段と、
前記第1レーザー光の基準波長λ1と同じ値の波長を設計波長λとして一方の面に回折パターン部が内周から外周に向かって同心円状に形成されて、前記回折パターン部の全体高さが前記設計波長の略2×λ倍で、且つ、前記第2レーザー光の基準波長λ2の略1×(λ2)倍に設定されていると共に、他方の面に屈折面が形成されており、前記レーザー光分離手段を通過して選択的に入射された前記第1レーザー光の平行光束又は前記第2レーザー光の収束光束を透過して前記第1,第2レーザー光に対して色収差を補正する色収差補正素子と、
前記色収差補正素子を透過した前記第1,第2レーザー光に対して前記第1,第2光記録媒体の基板厚さの異なりによって生じる球面収差を補正する回折光学素子と、
第1光記録媒体用として開口数(NA)が0.75以上に設定され、且つ、互いに対向する各面のうち少なくとも一方の面が非球面に形成されており、前記回折光学素子を透過した前記第1,第2レーザー光を前記第1,第2光記録媒体の各信号面に集光させる対物レンズとを少なくとも備えたことを特徴する光ピックアップ装置である。
請求項1記載の光ピックアップ装置によると、色収差補正素子は凹状及び/又は凸状の屈折面を有する2枚以上のレンズが組み合わせて構成されており、第1光記録媒体を記録又は再生する場合には第1レーザー光の平行光束を色収差補正素子に入射させ、一方、第2光記録媒体を記録又は再生する場合には第2レーザー光の発散光束を色収差補正素子に入射させ、且つ、色収差補正素子を透過した第1,第2レーザー光を回折光学素子及び対物レンズを通して第1,第2光記録媒体の各信号面上に照射しているので、第1光記録媒体の信号面上に色収差及び球面収差が補正された良好なスポットが得られると共に、とくに、第2光記録媒体に対して第2レーザー光の発散光束が色収差補正素子で弱い収束光束となって回折光学素子及び対物レンズに入射されるので、第2レーザー光の平行光束を仮に色収差補正素子に入射させた場合に生じる強い収束光束にはならず、回折光学素子によって基板厚さの異なりによる球面収差を良好に補正し、これにより第2光記録媒体の信号面上でも色収差及び球面収差が補正された良好なスポットが得られる。
また、請求項2記載の光ピックアップ装置によると、色収差補正素子は第1レーザー光の基準波長λ1と同じ値の波長を設計波長λとして一方の面に回折パターン部が内周から外周に向かって同心円状に形成されて、回折パターン部の全体高さが設計波長の略3×λ倍で、且つ、第2レーザー光の基準波長λ2の略2×(λ2)倍に設定されていると共に、他方の面に屈折面が形成されており、第1光記録媒体を記録又は再生する場合には第1レーザー光の平行光束を色収差補正素子に入射させ、一方、第2光記録媒体を記録又は再生する場合には第2レーザー光の発散光束を色収差補正素子に入射させ、且つ、色収差補正素子を透過した第1,第2レーザー光を回折光学素子及び対物レンズを通して第1,第2光記録媒体の各信号面上に照射しているので、第1光記録媒体の信号面上に色収差及び球面収差が補正された良好なスポットが得られると共に、とくに、第2光記録媒体に対して第2レーザー光の発散光束が色収差補正素子で概ね平行にされた回折光となって回折光学素子及び対物レンズに入射されるので、第2レーザー光の平行光束を仮に色収差補正素子に入射させた場合に生じる強い収束光束にはならず、回折光学素子によって基板厚さの異なりによる球面収差を良好に補正し、これにより第2光記録媒体の信号面上でも色収差及び球面収差が補正された良好なスポットが得られる。
また、請求項3記載の光ピックアップ装置によると、色収差補正素子は第1レーザー光の基準波長λ1と同じ値の波長を設計波長λとして一方の面に回折パターン部が内周から外周に向かって同心円状に形成されて、回折パターン部の全体高さが設計波長の略2×λ倍で、且つ、第2レーザー光の基準波長λ2の略1×(λ2)倍に設定されていると共に、他方の面に屈折面が形成されており、第1光記録媒体を記録又は再生する場合には第1レーザー光の平行光束を色収差補正素子に入射させ、一方、第2光記録媒体を記録又は再生する場合には第2レーザー光の収束光束を色収差補正素子に入射させ、且つ、色収差補正素子を透過した第1,第2レーザー光を回折光学素子及び対物レンズを通して第1,第2光記録媒体の各信号面上に照射しているので、第1光記録媒体の信号面上に色収差及び球面収差が補正された良好なスポットが得られると共に、とくに、第2光記録媒体に対して第2レーザー光の収束光束が色収差補正素子で概ね平行にされた回折光となって回折光学素子及び対物レンズに入射されるので、第2レーザー光の平行光束を仮に色収差補正素子に入射させた場合に生じる強い発散光束にはならず、回折光学素子によって基板厚さの異なりによる球面収差を良好に補正し、これにより第2光記録媒体の信号面上でも色収差及び球面収差が補正された良好なスポットが得られる。
以下に本発明に係る光ピックアップ装置の一実施例を図1乃至図23を参照して実施例1,実施例2,実施例3の順に詳細に説明する。
図1は本発明に係る実施例1の光ピックアップ装置の全体構成を示した図、
図2(a),(b)は本発明に係る実施例1の光ピックアップ装置において、回折光学素子を説明するための断面図,X部拡大図、
図3(a)〜(c)は本発明に係る実施例1の光ピックアップ装置において、第2レーザー光源と第2凸レンズとの位置関係により、第2凸レンズからの出射光の状態をそれぞれ説明するための図である。
図1に示した如く、本発明に係る実施例1の光ピックアップ装置10Aは、基準波長λ1が450nm以下の第1レーザー光L1により情報信号を基板厚さが薄い信号面1bに超高密度に記録又は再生する第1光記録媒体1と、基準波長λ2が第1レーザー光L1の基準波長λ1より長く650nm前後の第2レーザー光L2により情報信号を前記した第1光記録媒体1の信号面1bよりも基板厚さが厚い信号面2bに高密度に記録又は再生する第2光記録媒体2と、第1,第2レーザー光L1,L2のいずれかが入射するレーザービーム入射面を共通化し且つ第1,第2光記録媒体1,2の各信号面1b,2bを組み合わせて一体的に積層した組み合わせ型光記録媒体とを選択的に適用可能に開発したものである。
尚、ここでの図示を省略するものの、第1,第2光記録媒体1,2の各信号面1b,2bを組み合わせた組み合わせ型光記録媒体は合計のディスク基板厚さが略1.2mmに形成されるものであるが、以下の説明では第1,第2光記録媒体1,2の個々について詳述し、組み合わせ型光記録媒体の場合はその応用であるので説明を省略する。
また、以下の説明では、第1,第2光記録媒体1,2として、円盤状の光ディスクに適用した場合について説明するが、これに限ることなく、カード状の光記録媒体であっても良い。
そして、上記した第1,第2光記録媒体1,2は、光ディスク駆動装置5内に回転自在に設けたスピンドルモータ6の軸に固着したターンテーブル7上に選択的に装着されるようになっている。
ここで、上記した第1光記録媒体となる例えばBlu−ray Disc1は、次世代光ディスク規格に基づいてレーザービーム入射面1aと信号面1bとの間のディスク基板厚さt1が略0.05mm〜0.15mmに薄く設定されて、この上に補強板(図示せず)を貼り合せて合計厚さが厚く形成されており、この合計厚さは例えば略1.2mmである。尚、以下の説明では、第1光記録媒体をBlu−ray Disc1と記す。
また、上記した第2光記録媒体となるDVD(Digital Versatile Disc)2は、DVD規格に基づいてレーザービーム入射面2aと信号面2bとの間のディスク基板厚さt2がBlu−ray Disc1よりも厚く0.6mmに設定されて、この上に補強板(図示せず)を貼り合せて合計厚さが略1.2mmに形成されている。尚、以下の説明では、第2光記録媒体をDVD2と記す。
尚、この実施例では、Blu−ray Disc1,DVD2の各ディスク基板厚さt1,t2が、例えば0.1mm,0.6mmにそれぞれ設定されているものとする。
また、Blu−ray Disc1のレーザービーム入射面1a又はDVD2のレーザービーム入射面2aの下方には、本発明に係る実施例1の光ピックアップ装置10AがBlu−ray Disc1又はDVD2の径方向に移動自在に設けられている。
上記した光ピックアップ装置10A内には、Blu−ray Disc1に対応して基準波長λ1が450nm以下の第1レーザー光L1を出射するための第1レーザー光源(以下、青色半導体レーザーと記す)11と、DVD2に対応して基準波長λ2が650nm前後の第2レーザー光L2を出射するためにDVD用集積デバイス30内の第2レーザー光源(以下、赤色半導体レーザーと記す)31とが設けられている。
尚、この実施例では、青色半導体レーザー11から出射される第1レーザー光L1の基準波長λ1は例えば408nmに設定され、また、赤色半導体レーザー31から出射される第2レーザー光L2の基準波長λ2は例えば650nmに設定されているものとする。
まず、Blu−ray Disc1に対応する青色半導体レーザー11側について説明すると、青色半導体レーザー11から出射した第1レーザー光L1は直線偏光の発散光束であり、この発散光束が回折格子(グレーティング)12に入射され、この回折格子12内に形成された凹凸状格子(図示せず)のピッチと傾斜の角度に応じて0次回折光と±1次回折光とからなる3本のビーム(以下、3ビームと記す)に分離された後に、3ビームが偏光ビームスプリッタ13に入射される。
尚、この実施例では、回折格子12により3ビームを生成しているが、回折格子12を設けない構成もあり、この場合には青色半導体レーザー11から出射した第1レーザー光L1を1ビームのままで偏光ビームスプリッタ13に直接入射させれば良い。
上記した偏光ビームスプリッタ13は、回折格子12からの3ビームを透過させ、且つ、後述するBlu−ray Disc1からの反射光を反射させて略90°方向を転じさせるために偏光性を有する半透過反射誘電体多層膜13aが膜付けされている。
この後、偏光ビームスプリッタ13内の半透過反射誘電体多層膜13aを透過した第1レーザー光L1による3ビームは、互いに対向する屈折面が凸状に形成された第1レンズ(以下、第1凸レンズと記す)14で平行光束に形成されて、球面収差補正手段15に入射される。
上記した球面収差補正手段15は、Blu−ray Disc1のディスク基板厚さt1のバラツキとか、青色半導体レーザー11から出射した第1レーザー光L1の波長誤差などに伴って青色半導体レーザー11とBlu−ray Disc1の信号面1bとの間に配置された光学系によって発生する球面収差を補正するためにBlu−ray Disc1側のみに設けられているものであり、青色半導体レーザー11側に設けた凹レンズ(負レンズ)15Aと、後述の対物レンズ21側に設けた凸レンズ(正レンズ)15Bと、凸レンズ15Bを光軸方向に沿って変位させるアクチュエータ15Cとから構成されている。そして、凸レンズ15Bをアクチュエータ15Cによって凹レンズ15Aに対して光軸方向に変位させ、凹レンズ15Aと凸レンズ15Bとの間隔を制御して、後述する対物レンズ21に入射する3ビームの平行度を調整して、対物レンズ21の倍率誤差による球面収差を発生させて他の球面収差と相殺することで球面収差が零になるように補正するものである。尚、凹レンズ(負レンズ)15Aを凸レンズ15Bに対して光軸方向に変位させる方法でも良い。
尚、球面収差補正手段として、この実施例では凹レンズ15Aと凸レンズ15Bとアクチュエータ15Cとの組み合わせを用いたが、これに代えて液晶素子などを用いた波面変調素子を適用することも可能である。
この後、球面収差補正手段15を通った第1レーザー光L1による3ビームは、波長板16を透過する際に、第1レーザー光L1による3ビームに対して、波長板の進相軸と遅相軸に対応する偏光成分に、略1/4波長(90°)の位相差を与えて円偏光に変換した後に、ダイクロイックプリズム17を透過する。
上記したダイクロイックプリズム17は、青色半導体レーザー11から出射した第1レーザー光L1の平行光束を透過させる一方、後述するように赤色半導体レーザー31から出射した第2レーザー光L2の発散光束に対して反射させて略90°方向を転じさせるために波長選択性を有するダイクロイック膜17aが膜付けされている。従って、実施例1におけるダイクロイックプリズム17は、第1レーザー光L1の平行光束と、第2レーザー光L2の発散光束とを分離するレーザー光分離手段として機能している。
この後、ダイクロイックプリズム17内のダイクロイック膜17aを透過した第1レーザー光L1による3ビームは、平行光束の状態で色収差補正素子18に入射する。
上記した色収差補正素子18は、実施例1の要部を構成する部材であり、一方の面が平坦面で他方の面が凹球面に形成された凹レンズ18Aと、両面共に凸球面に形成された凸レンズ18Bと、一方の面が凹球面で他方の面が平坦面に形成された凹レンズ18Cとを貼り合わせて形成されており、第1レーザー光L1及び第2レーザー光L2に対して色収差を補正する機能を有している。この際、色収差補正素子18の凹レンズ18A及び凸レンズ18B並びに凹レンズ18Cは、各レンズ18A〜18Cの各屈折面が第1レーザー光L1の基準波長λ1と同じ値(408nm)の波長を設計波長λとして最適化され、且つ、各レンズ18A〜18Cの貼り合わせ面は球面に形成されている。
尚、実施例1では3枚のレンズ18A〜18Cを組み合わせたものを用いているが、これに限ることなく、第1レーザー光L1の基準波長λ1と同じ値の波長を設計波長λとして最適化された凹状及び/又は凸状の屈折面を有する2枚以上のレンズが組み合わせて構成されたものであれば良い。尚更に、第1レーザー光L1の基準波長λ1が408nmであれば色収差が発生しないために、Blu−ray Disc1に対して色収差を仮に測定する場合には、第1レーザー光L1の波長が例えば411nmである青色半導体レーザー11を用いて測定すれば良い。
この後、色収差補正素子18を通過した第1レーザー光L1による3ビームは、レンズホルダ19内の下方部位に取り付けた回折光学素子20を平行光束のままで直進してレンズホルダ19内の上方部位に取り付けた対物レンズ21に入射し、この対物レンズ21で絞り込んだ第1レーザービーム(3ビーム)がBlu−ray Disc1のレーザービーム入射面1aから入射して信号面1bに集光される。
上記した回折光学素子20は、図2(a),(b)に拡大して示した如く、光透過性を有する透明なBK−7(ホウケイ酸クラウンガラス)とか、石英基板とか、透明樹脂などを用いて一体的に形成されており、この実施例1の回折光学素子20ではBK−7を用いて対物レンズ21の瞳径相当の外径(φD1)に形成されている。
また、回折光学素子20は、Blu−ray Disc1とDVD2との基板厚さの異なりによって生じる球面収差の補正に対応して、対物レンズ21(図1)と対向する上面(一方の面)20a側で光軸が通る中心点“0”を中心にして所定の内周領域径φD2内に内周側凹凸状回折パターン部20a1が同心円状(リング状,輪帯状)に形成され、且つ、この内周側凹凸状回折パターン部20a1より外側で少なくとも所定の外周領域径φD1内に外周側階段状回折パターン部20a2が同心円状(リング状,輪帯状)に形成されており、内周側凹凸状回折パターン20a1でDVD用の第2レーザー光L2に対して球面収差が補正でき、且つ、外周側階段状回折パターン部20a2でBlu−ray Disc用の第1レーザー光L1の波長のバラツキに対して球面収差に関する補正ができるようになっている。
また、回折光学素子20は、色収差補正素子18(図1)と対向する下面(他方の面)20bが平坦に形成されている。
より具体的に説明すると、まず、回折光学素子20の内周領域に形成した内周側凹凸状回折パターン部20a1は、第2レーザー光L2に対して対物レンズ21への開口数(NA)が0.6相当となるように所定の内周領域径φD2に設定されており、且つ、第1レーザー光L1の基準波長λ1と同じ値(408nm)の波長を設計波長λとして、内周側凹凸状回折パターン部20a1中で凹部に対して凸部の高さが設計波長λの略1λ倍に設定され、且つ、凹凸部が複数繰り返して外周側に向かって径方向のピッチを徐々に変化させながら同心円状(リング状,輪帯状)に形成されている。
上記から、回折光学素子20の内周領域に形成した内周側凹凸状回折パターン部20a1は、凹部に対して凸部の高さを略1λに設定したことによりBlu−ray Disc用の第1レーザー光L1に対しては何等の作用もしない0次光回折光が通過する一方、DVD用の第2レーザー光L2に対して回折させた1次回折光により球面収差を補正するようになっている。
また、回折光学素子20の外周領域に形成した外周側階段状回折パターン部20a2は、第1レーザー光L1の基準波長λ1と同じ値(408nm)の波長を設計波長λとして、中心点“0”側に向かって形成された複数段の階段が段差高さを設計波長λの略m(但し、mは0を含まない自然数)λ倍に設定されていると共に、外周側階段状回折パターン部20a2は内周側凹凸状回折パターン部20a1よりも上方に向かうように階段が上昇して外周領域径φD1の外側まで形成されている。
この際、内周側凹凸状回折パターン部20a1と外周側階段状回折パターン部20a2との接続は、例えば3λだけ高さを違えて接続されており、設計波長λの略mλ倍の波長では、実質的に回折光学素子20の外周側階段状回折パターン部20a2を透過した基準波長λ1が408nmの第1レーザー光L1に対して波面は変化が生じず、第1レーザー光L1の波長が変化した場合は、位相構造に応じた波面変化が生じるが、波面誤差によって対物レンズ21の作るスポットへの影響は、輪帯構造がかなり細かいため、高次成分の収差と見なすことができるため、ほとんど生じず、無視することができる。
そして、回折光学素子20の上面20aに形成した内周側凹凸状回折パターン部20a1と外周側階段状回折パターン部20a2とは区別ができ、第2レーザー光L2に対して対物レンズ21への開口制限ができると共に、外周領域はBlu−ray Disc専用領域となっている。尚、回折光学素子20の下面20bに外周側階段状回折パターン部20a2と対応して第2レーザー光L2のみを遮光するダイクロイック膜を膜付けして第2レーザー光L2に対して対物レンズ21への開口を制限しても良い。
図1に戻り、対物レンズ21は、Blu−ray Disc用として開口数が0.75以上に設定され、且つ、互いに対向する面21a,21bのうち少なくとも一方の面が非球面に形成されているものであるが、この実施例では開口数(NA)が0.85でアプラナートな特性、又は、アプラナートに近い特性を持った単玉レンズを用いている。尚、ここで言うアプラナートとは、軸上の球面収差を完全に補正しつつ正弦条件(軸外でコマ収差を発生しない条件)を満足したものである。
また、レンズホルダ19の外周にはフォーカスコイル22とトラッキングコイル23とが一体的に取り付けられ、且つ、レンズホルダ19の外周に固着させた不図示の複数本のサスペンションワイヤを介してレンズホルダ19と一体に回折光学素子20と対物レンズ21とがBlu−ray Disc1のフォーカス方向とトラッキング方向とに制御されている。
尚、後述するDVD2の場合にも、回折光学素子20と対物レンズ21とがレンズホルダ19と一体となってDVD2のフォーカス方向とトラッキング方向とに制御されるものである。
この後、対物レンズ21で絞り込んだ第1レーザービーム(3ビーム)をBlu−ray Disc1のレーザービーム入射面1aから入射させて信号面1b上に集光し、第1レーザービームによって信号面1bへの再生、記録、または消去が行われる。
更にこの後、Blu−ray Disc1の信号面1bで反射された第1レーザービームによる戻りの第1反射光は、上記とは逆に対物レンズ21に再入射して、回折光学素子20,色収差補正素子18,ダイクロイックプリズム17,波長板16,球面収差補正手段15,第1凸レンズ14を順に通過して、偏光ビームスプリッタ13内の偏光性を有する半透過反射誘電体多層膜13aで反射されて略90°方向を転じた後にシリンドリカルレンズ24を介して第1光検出器25に集光する。そして、第1光検出器25でBlu−ray Disc1の信号面1bを再生した時のトラッキングエラー信号,フォーカスエラー信号,メインデータ信号を検出している。
次に、DVD2に対応する赤色半導体レーザー31側について説明すると、DVD2を記録又は再生する場合には、Blu−ray Disc1を記録又は再生する際に用いた球面収差補正手段15を用いない光学系になっている。
ここで、DVD用集積デバイス30は、赤色半導体レーザー31と、赤色半導体レーザー31の右方に設置した第2光検出器32とが不図示の半導体基板上に一体化されており、且つ、赤色半導体レーザー31の上方にホログラム素子33が設置されている。
尚、この実施例ではDVD用集積デバイス30を用いているが、これに限ることなく、図示を省略するが赤色半導体レーザーからの第2レーザー光をビームスプリッタで分離させる構成でも良い。
ここで、赤色半導体レーザー31から出射した第2レーザー光L2は直線偏光の発散光束であり、この発散光束がホログラム素子33を通過する。この後、ホログラム素子33を通過した第2レーザー光L2は、互いに対向する屈折面が凸状に形成された第2レンズ(以下、第2凸レンズと記す)34を通過させる際に、この実施例1では第2凸レンズ34から発散光束を出射させて、この発散光束を色収差補正素子18に入射させるようにしている。
この際、図3(a)に示したように、赤色半導体レーザー31の位置が第2凸レンズ34の焦点位置よりも前方側(第2凸レンズ34側)に位置している場合には、第2凸レンズ34から出射される第2レーザー光L2は発散光束となる。また、図3(b)に示したように、赤色半導体レーザー31の位置が第2凸レンズ34の焦点に位置している場合には、第2凸レンズ34から出射される第2レーザー光L2は平行光束となる。更に、図3(c)に示したように、赤色半導体レーザー31の位置が第2凸レンズ34の焦点よりも後方側に位置している場合には、第2凸レンズ34から出射される第2レーザー光L2は収束光束となる。
従って、この実施例1では赤色半導体レーザー31と第2凸レンズ34との位置関係を図3(a)に示した関係に設定し、第2凸レンズ34から第2レーザー光L2の発散光束を出射させている。
この後、第2凸レンズ34から出射された第2レーザー光L2の発散光束は位相板35を透過して円偏光となる。この際、第2レーザー光用の位相板35は第2レーザー光L2が透過する時に、その進相軸と遅相軸の間に(λ2)/4の位相差を与えて円偏光に変換するものである。
更に、位相板35を通った第2レーザー光L2の発散光束はダイクロイックプリズム17内の波長選択性を有する半透過反射ダイクロイック膜17aで反射されて略90°光線方向を転じた後、発散光束の状態で色収差補正素子18に入射され、更に、第2レーザー光L2に対して回折光学素子20の外周側階段状回折パターン部20a2により不要光をフレア成分とすることにより、対物レンズ21への開口数(NA)が0.6相当になるように開口を制限されると共に、第2レーザー光L2を回折光学素子20の上面20aの内周領域に形成した内周側凹凸状回折パターン部20a1によって球面収差を補正しながら対物レンズ21に入射させ、対物レンズ21で絞り込んだ第2レーザービームをDVD2のレーザービーム入射面2aから入射させて信号面2b上に集光し、第2レーザービームによってDVD2の信号面2bへの再生、記録、または消去が行われる。
更にこの後、DVD2の信号面2bで反射された第2レーザービームによる戻りの第2反射光は、上記とは逆に対物レンズ21に再入射し、回折光学素子20,色収差補正素子18を経てダイクロイックプリズム17内の半透過反射ダイクロイック膜17aで反射されて略90°光線方向を転じた後、第2レーザー光用の位相板35,第2凸レンズ34を順に通過して、ホログラム素子33によって回折されて、第2光検出器32に集光する。そして、第2光検出器32でDVD2の信号面2bを再生した時のトラッキングエラー信号,フォーカスエラー信号,メインデータ信号を検出している。
ここで、実施例1の要部となる色収差補正素子18及び回折光学素子20並びに対物レンズ21による光学系の動作について新たな図4〜図9を用いて説明する。
図4は本発明に係る実施例1の光ピックアップ装置において、Blu−ray Discを記録又は再生する場合の光路図、
図5は本発明に係る実施例1の光ピックアップ装置において、第1レーザー光を色収差補正素子に平行光束で入射させた時の縦収差図、
図6は本発明に係る実施例1の光ピックアップ装置において、第1レーザー光を色収差補正素子に入射させず、仮に回折光学素子に平行光束で入射させた時の縦収差図、
図7は本発明に係る実施例1の光ピックアップ装置において、DVDを記録又は再生する場合の光路図、
図8は本発明に係る実施例1の光ピックアップ装置において、第2レーザー光を色収差補正素子に発散光束で入射させた時の縦収差図、
図9は本発明に係る実施例1の光ピックアップ装置において、第2レーザー光を色収差補正素子に仮に平行光束で入射させた時の縦収差図である。
まず、図4に示した如く、Blu−ray Disc1を記録又は再生する場合には、青色半導体レーザー11(図1)から出射した第1レーザー光L1を第1凸レンズ14(図1)で平行光束に形成し、この第1レーザー光L1の平行光束を凹レンズ18Aと凸レンズ18Bと凹レンズ18Cとを貼り合わせて形成した色収差補正素子18に入射させ、この色収差補正素子18から出射させた第1レーザー光L1の平行光束を回折光学素子20の下面20bから入射させて、上面20aの内周領域に形成した内周側凹凸状回折パターン部20a1と外周領域に形成した外周側階段状回折パターン部20a2とをそのまま透過させ、平行光束のままで対物レンズ21の面21aに入射させている。
そして、対物レンズ21で絞った第1レーザービームをBlu−ray Disc1のレーザービーム入射面1aから入射させてディスク基板厚さが0.1mmの信号面1b上に集光している。
この際、第1レーザー光L1を色収差補正素子18に平行光束で入射させているので、図5に示したように、基準波長λ1が408nmの第1レーザー光L1に対して球面収差がなく、且つ、基準波長λ1から僅かにズレた407nm又は409nmの波長に対して色収差が良好に補正されるので、Blu−ray Disc1の信号面1b上に色収差及び球面収差が補正された良好なスポットが得られる。
上記に対して、第1レーザー光L1を色収差補正素子18に入射させず、仮に回折光学素子20に平行光束で入射させた場合には、図6に示したように、基準波長λ1が408nmの第1レーザー光L1に対して球面収差がないものの、基準波長λ1から僅かにズレた407nm又は409nmの波長に対して色収差が良好に補正されないので、Blu−ray Disc1の信号面1b上に良好なスポットが得られず、このことから第1レーザー光L1に対して色収差補正素子18を設ける必要性がある。
次に、図7に示した如く、DVD2を記録又は再生する場合には、赤色半導体レーザー31(図1)から出射した第2レーザー光L2を第2凸レンズ34(図1)で発散光束に形成し、この第2レーザー光L2の発散光束を凹レンズ18Aと凸レンズ18Bと凹レンズ18Cとを貼り合わせて形成した色収差補正素子18に入射させ、この色収差補正素子18から弱く収束した収束光束を出射させている。この後、第2レーザー光L2の弱い収束光束を回折光学素子20の下面20bから入射させて、上面20aの外周領域に形成した外周側凹凸状回折パターン部20a2で不要光をフレア成分とすることにより、対物レンズ21への開口数(NA)が0.6相当になるように開口制限させると共に、内周側凹凸状回折パターン部20a1で第2レーザー光L2に対して球面収差を補正した回折光を対物レンズ21の面21aに入射させている。
そして、対物レンズ21で絞った第2レーザービームをDVD2のレーザービーム入射面2aから入射させてディスク基板厚さが0.6mmの信号面2b上に集光している。
この場合、第2レーザー光L2を色収差補正素子18に発散光束で入射させるには、先に図3(a)で説明したように、第2凸レンズ34の焦点よりも前側(第2凸レンズ34側)に赤色半導体レーザー31を配置させれば良い。
この際、第2レーザー光L2を色収差補正素子18に発散光束で入射させているので、図8に示したように、基準波長λ2が650nmの第2レーザー光L2に対して球面収差が良好に補正され、且つ、基準波長λ2から僅かにズレた648nm又は652nmの波長に対しても色収差が良好に補正されて、DVD2の信号面2b上に色収差及び球面収差が補正された良好なスポットが得られる。
上記に対して、先に図3(b)で説明したように第2凸レンズ34の焦点に赤色半導体レーザー31を配置し、第2レーザー光L2を色収差補正素子18に仮に平行光束で入射させた場合に、色収差補正素子18は第1レーザー光L1の基準波長λ1と同じ値(408nm)を設計波長λとして最適化されているために、設計波長λよりもかなり長い650nm前後の第2レーザー光L2は色収差補正素子18により強い収束光束で出射されるので、図9に示したように、対物レンズ21において大きなオーバーの球面収差が発生してしまい、これではDVD2の信号面2b上に良好なスポットが得られない。
上記から、DVD2を記録又は再生する場合には、第2レーザー光L2の発散光束が色収差補正素子18で弱い収束光束となって回折光学素子20及び対物レンズ21に入射されるので、第2レーザー光L2の平行光束を仮に色収差補正素子18に入射させた場合に生じる強い収束光束にはならずに、回折光学素子20によってディスク基板厚さの違いによる球面収差を良好に補正し、これによりDVD2の信号面2b上に色収差及び球面収差が補正された良好なスポットが得られる。
図10は本発明に係る実施例2の光ピックアップ装置の全体構成を示した図、
図11(a),(b)は本発明に係る実施例2の光ピックアップ装置において、色収差補正素子を説明するための平面図,断面図である。
図10に示した本発明に係る実施例2の光ピックアップ装置10Bは、先に図1を用いて説明した本発明に係る実施例1の光ピックアップ装置10Aの構成と一部を除いて同様の構成であり、ここでは説明の便宜上、先に示した構成部材に対しては同一の符号を付し、且つ、先に示した構成部材は必要に応じて適宜説明し、実施例1と異なる構成部材に新たな符号を付して説明する。
図10に示した如く、本発明に係る実施例2の光ピックアップ装置10Bでは、実施例1の光ピックアップ装置10Aで用いた色収差補正素子18に代えて、別の形態の色収差補正素子40を用いている点が異なるものである。
この際、青色半導体レーザー11から出射した第1レーザー光L1は実施例1と同様に第1凸レンズ14で平行光束に形成され、且つ、赤色半導体レーザー31から出射した第2レーザー光L2は実施例1と同様に第2凸レンズ34で発散光束に形成されているので、実施例2におけるダイクロイックプリズム17も第1レーザー光L1の平行光束と第2レーザー光L2の発散光束とを分離するレーザー光分離手段として機能している。
また、実施例2の光ピックアップ装置10Bに用いられる色収差補正素子40は、図11(a),(b)に拡大して示した如く、光透過性を有する透明なBK−7(ホウケイ酸クラウンガラス)を用いて一体的に形成されており、回折光学素子20(図10)と対向する上面(一方の面)40a側で光軸が通る中心点“0”を中心にして同心円状(リング状,輪帯状)の階段状回折パターン部40a1が3段の階段を組みとし、この組みが中心点“0”を中心にして左右対称に階段の向きを外側にし、且つ、各組みの階段のピッチを中心点“0”より外側の内周領域から外周領域に向かって徐々にピッチを狭めながら複数突出形成されていると共に、ダイクロイックプリズム17(図10)と対向する下面(他方の面)40b側は凹状の屈折面として形成されている。
そして、色収差補正素子40の階段状回折パターン部40a1は、第1レーザー光L1の基準波長λ1と同じ値(408nm)の波長を設計波長λとした際に、各組みの3段の階段の全体の高さh3が前記した設計波長λの略3×λ倍で、且つ、基準波長λ2が650nmの第2レーザー光L2に対して略2×(λ2)倍程度になるように設定されている。
より具体的に説明すると、色収差補正素子40の設計波長λを408nmとしてBK−7で作製したとすると、設計波長λに対するBK−7の屈折率は1.5298となるので、階段状回折パターン部40a1中で各組みの3段の階段の全体の高さh3は、設計波長λに対して下記の式1により計算できる。
[数1]
h3={0.408/(1.5298−1)}×3=2.31μm……(式1)。
一方、基準波長λ2が650nmの第2レーザー光L2に対するBK−7の屈折率は1.5145となるので、階段状回折パターン部40a1中で各組みの3段の階段の全体の高さh3は、第2レーザー光L2の基準波長λ2に対して下記の式2により計算できる。
[数2]
h3={0.650/(1.5145−1)}×2=2.53μm……(式2)。
上記した(式1)及び(式2)の計算結果から、階段状回折パターン部40a1中で各組みの3段の階段の全体の高さh3を2.31μmから2.53μm付近に設定すると、前記設計波長λの略3×λ倍で、且つ、第2レーザー光Lの基準波長λ2の略2×(λ2)倍になるように設定できる。
ここで、実施例2の要部となる色収差補正素子40及び回折光学素子20並びに対物レンズ21による光学系の動作について新たな図12〜図16を用いて説明する。
図12は本発明に係る実施例2の光ピックアップ装置において、Blu−ray Discを記録又は再生する場合の光路図、
図13は本発明に係る実施例2の光ピックアップ装置において、第1レーザー光を色収差補正素子に平行光束で入射させた時の縦収差図、
図14は本発明に係る実施例2の光ピックアップ装置において、DVDを記録又は再生する場合の光路図、
図15は本発明に係る実施例2の光ピックアップ装置において、第2レーザー光を色収差補正素子に発散光束で入射させた時の縦収差図、
図16は本発明に係る実施例2の光ピックアップ装置において、第2レーザー光を色収差補正素子に仮に平行光束で入射させた時の縦収差図である。
まず、図12に示した如く、Blu−ray Disc1を記録又は再生する場合には、青色半導体レーザー11(図10)から出射した第1レーザー光L1を第1凸レンズ14(図10)で平行光束に形成し、この第1レーザー光L1の平行光束を色収差補正素子40の下面40bに形成した凹状の屈折面から入射させて上面40aに形成した3段の階段の組みを複数組み有する階段状回折パターン部40a1をそのまま透過させた後に、第1レーザー光L1の平行光束を回折光学素子20の下面20bから入射させて、上面20aの内周領域に形成した内周側凹凸状回折パターン部20a1と外周領域に形成した外周側階段状回折パターン部20a2とをそのまま透過させ、平行光束のままで対物レンズ21の面21aに入射させている。
そして、対物レンズ21で絞った第1レーザービームをBlu−ray Disc1のレーザービーム入射面1aから入射させてディスク基板厚さが0.1mmの信号面1b上に集光している。
この際、第1レーザー光L1を色収差補正素子40に平行光束で入射させているので、図13に示したように、基準波長λ1が408nmの第1レーザー光L1に対して球面収差がなく、且つ、基準波長λ1から僅かにズレた407nm又は409nmの波長に対して色収差が良好に補正されるので、Blu−ray Disc1の信号面1b上に色収差及び球面収差が補正された良好なスポットが得られる。
次に、図14に示した如く、DVD2を記録又は再生する場合には、赤色半導体レーザー31(図10)から出射した第2レーザー光L2を第2凸レンズ34(図10)で発散光束に形成し、この第2レーザー光L2の発散光束を色収差補正素子40の下面40bに形成した凹状の屈折面から入射させて上面40aに形成した3段の階段の組みを複数組み有する階段状回折パターン部40a1で概ね平行にされた回折光を出射させている。この後、第2レーザー光L2の概ね平行にされた回折光を回折光学素子20の下面20bから入射させて、上面20aの外周領域に形成した外周側凹凸状回折パターン部20a2で不要光をフレア成分とすることにより、対物レンズ21への開口数(NA)が0.6相当になるように開口制限させると共に、内周側凹凸状回折パターン部20a1で第2レーザー光L2に対して球面収差を補正した回折光を対物レンズ21の面21aに入射させている。
そして、対物レンズ21で絞った第2レーザービームをDVD2のレーザービーム入射面2aから入射させてディスク基板厚さが0.6mmの信号面2b上に集光している。
この場合、第2レーザー光L2を色収差補正素子40に発散光束で入射させるには、先に図3(a)で説明したように、第2凸レンズ34の焦点よりも前側(第2凸レンズ34側)に赤色半導体レーザー31を配置させれば良い。
この際、第2レーザー光L2の発散光束を色収差補正素子40に入射させているので、図15に示したように、基準波長λ2が650nmの第2レーザー光L2に対して球面収差が良好に補正され、且つ、基準波長λ2から僅かにズレた648nm又は652nmの波長に対しても色収差が良好に補正されて、DVD2の信号面2b上に色収差及び球面収差が補正された良好なスポットが得られる。
上記に対して、先に図3(b)で説明したように第2凸レンズ34の焦点に赤色半導体レーザー31を配置し、第2レーザー光L2を色収差補正素子40に仮に平行光束で入射させた場合に、第2レーザー光L2は色収差補正素子40により強い収束光束で出射されるので、図16に示したように、対物レンズ21において大きなオーバーの球面収差が発生してしまい、これではDVD2の信号面2b上に良好なスポットが得られない。
上記から、DVD2を記録又は再生する場合には、第2レーザー光L2の発散光束が色収差補正素子40で概ね平行にされた回折光となって回折光学素子20及び対物レンズ21に入射されるので、第2レーザー光L2の平行光束を仮に色収差補正素子40に入射させた場合に生じる強い収束光束にはならず、回折光学素子20によってディスク基板厚さの違いによる球面収差を良好に補正し、これによりDVD2の信号面2b上に色収差及び球面収差が補正された良好なスポットが得られる。
尚、この実施例2では、色収差補正素子40の回折面40a1を図11に示したような3段の階段形状の多段ブレーズで作製しているが、これに限らず、回折面40a1をキノフォームと呼ばれる鋸歯状の連続曲面や、単なる凹凸形状のバイナリータイプなどで作製しても良く、このような場合でも回折面40a1の全体高さh3が設計波長λの略3×λ倍で、且つ、第2レーザー光L2の基準波長λ2の略2×(λ2)倍程度になるように設定すれば良いものである。
図17は本発明に係る実施例3の光ピックアップ装置の全体構成を示した図、
図18(a),(b)は本発明に係る実施例3の光ピックアップ装置において、色収差補正素子を説明するための平面図,断面図である。
図17に示した本発明に係る実施例3の光ピックアップ装置10Cは、先に図1,図10を用いて説明した本発明に係る実施例1,2の光ピックアップ装置10A,10Bの構成と一部を除いて同様の構成であり、ここでは説明の便宜上、先に示した構成部材に対しては同一の符号を付し、且つ、先に示した構成部材は必要に応じて適宜説明し、実施例1,2と異なる構成部材に新たな符号を付して説明する。
図17に示した如く、本発明に係る実施例3の光ピックアップ装置10Cでは、実施例2の光ピックアップ装置10Bで用いた色収差補正素子40に代えて、別の形状の色収差補正素子50を用いている点が異なるものである。
この際、青色半導体レーザー11から出射した第1レーザー光L1は実施例1と同様に第1凸レンズ14で平行光束に形成されているものの、後述するように赤色半導体レーザー31から出射した第2レーザー光L2は実施例2と異なって第2凸レンズ34で収束光束に形成されているので、実施例3におけるダイクロイックプリズム17は第1レーザー光L1の平行光束と第2レーザー光L2の収束光束とを分離するレーザー光分離手段として機能している。
また、実施例3の光ピックアップ装置10Cに用いられる色収差補正素子50は、図18(a),(b)に拡大して示した如く、光透過性を有する透明なBK−7(ホウケイ酸クラウンガラス)を用いて一体的に形成されており、回折光学素子20(図10)と対向する上面(一方の面)50a側で光軸が通る中心点“0”を中心にして同心円状(リング状,輪帯状)の階段状回折パターン部50a1が3段の階段を組みとし、この組みが中心点“0”を中心にして左右対称に階段の向きを外側にし、且つ、各組みの階段のピッチを中心点“0”より外側の内周領域から外周領域に向かって徐々にピッチを狭めながら複数突出形成されていると共に、ダイクロイックプリズム17(図17)と対向する下面(他方の面)50b側は凹状の屈折面として形成されている。
そして、色収差補正素子50の階段状回折パターン部50a1は、第1レーザー光L1の基準波長λ1と同じ値(408nm)の波長を設計波長λとした際に、各組みの3段の階段の全体の高さh2が前記した設計波長λの略2×λ倍で、且つ、基準波長λ2が650nmの第2レーザー光L2に対して略1×(λ2)倍程度になるように設定されている。
より具体的に説明すると、色収差補正素子50の設計波長λを408nmとしてBK−7で作製したとすると、設計波長λに対するBK−7の屈折率は1.5298となるので、階段状回折パターン部50a1中で各組みの3段の階段の全体の高さh2は、設計波長λに対して下記の式3により計算できる。
[数3]
h2={0.408/(1.5298−1)}×2=1.54μm……(式3)。
一方、基準波長λ2が650nmの第2レーザー光L2に対するBK−7の屈折率は1.5145となるので、階段状回折パターン部50a1中で各組みの3段の階段の全体の高さh2は、第2レーザー光L2の基準波長λ2に対して下記の式4により計算できる。
[数4]
h2={0.650/(1.5145−1)}×1=1.26μm……(式4)。
上記した(式3)及び(式4)の計算結果から、階段状回折パターン部50a1中で各組みの3段の階段の全体の高さh2を1.54μmから1.26μm付近に設定すると、前記設計波長λの略2×λ倍で、且つ、第2レーザー光Lの基準波長λ2の略1×(λ2)倍になるように設定できる。
ここで、実施例3の要部となる色収差補正素子50及び回折光学素子20並びに対物レンズ21による光学系の動作について新たな図19〜図23を用いて説明する。
図19は本発明に係る実施例3の光ピックアップ装置において、Blu−ray Discを記録又は再生する場合の光路図、
図20は本発明に係る実施例3の光ピックアップ装置において、第1レーザー光を色収差補正素子に平行光束で入射させた時の縦収差図、
図21は本発明に係る実施例3の光ピックアップ装置において、DVDを記録又は再生する場合の光路図、
図22は本発明に係る実施例3の光ピックアップ装置において、第2レーザー光を色収差補正素子に収束光束で入射させた時の縦収差図、
図23は本発明に係る実施例3の光ピックアップ装置において、第2レーザー光を色収差補正素子に仮に平行光束で入射させた時の縦収差図である。
まず、図19に示した如く、Blu−ray Disc1を記録又は再生する場合には、青色半導体レーザー11(図17)から出射した第1レーザー光L1を第1凸レンズ14(図10)で平行光束に形成し、この第1レーザー光L1の平行光束を色収差補正素子50の下面50bに形成した凹状の屈折面から入射させて上面50aに形成した3段の階段の組みを複数組み有する階段状回折パターン部50a1をそのまま透過させた後に、第1レーザー光L1の平行光束を回折光学素子20の下面20bから入射させて、上面20aの内周領域に形成した内周側凹凸状回折パターン部20a1と外周領域に形成した外周側階段状回折パターン部20a2とをそのまま透過させ、平行光束のままで対物レンズ21の面21aに入射させている。
そして、対物レンズ21で絞った第1レーザービームをBlu−ray Disc1のレーザービーム入射面1aから入射させてディスク基板厚さが0.1mmの信号面1b上に集光している。
この際、第1レーザー光L1を色収差補正素子40に平行光束で入射させているので、図20に示したように、基準波長λ1が408nmの第1レーザー光L1に対して球面差がなく、且つ、基準波長λ1から僅かにズレた407nm又は409nmの波長に対して色収差が良好に補正されるので、Blu−ray Disc1の信号面1b上に色収差及び球面収差が補正された良好なスポットが得られる。
次に、図21に示した如く、DVD2を記録又は再生する場合には、赤色半導体レーザー31(図17)から出射した第2レーザー光L2を実施例2とは異なって第2凸レンズ34(図17)で収束光束に形成し、この第2レーザー光L2の収束光束を色収差補正素子50の下面50bに形成した凹状の屈折面から入射させて上面50aに形成した3段の階段の組みを複数組み有する階段状回折パターン部50a1で概ね平行にされた回折光を出射させている。この後、第2レーザー光L2の概ね平行にされた回折光を回折光学素子20の下面20bから入射させて、上面20aの外周領域に形成した外周側凹凸状回折パターン部20a2で不要光をフレア成分とすることにより、対物レンズ21への開口数(NA)が0.6相当になるように開口制限させると共に、内周側凹凸状回折パターン部20a1で第2レーザー光L2に対して球面収差を補正した回折光を対物レンズ21の面21aに入射させている。
そして、対物レンズ21で絞った第2レーザービームをDVD2のレーザービーム入射面2aから入射させてディスク基板厚さが0.6mmの信号面2b上に集光している。
この場合、第2レーザー光L2を色収差補正素子50に収束光束で入射させるには、先に図3(c)で説明したように、第2凸レンズ34の焦点よりも後側に赤色半導体レーザー31を配置させれば良い。
この際、第2レーザー光L2の収束光束を色収差補正素子50に入射させているので、図22に示したように、基準波長λ2が650nmの第2レーザー光L2に対して球面収差が良好に補正され、且つ、基準波長λ2から僅かにズレた648nm又は652nmの波長に対しても色収差が良好に補正されて、DVD2の信号面2b上に色収差及び球面収差が補正された良好なスポットが得られる。
上記に対して、先に図3(b)で説明したように第2凸レンズ34の焦点に赤色半導体レーザー31を配置し、第2レーザー光L2を色収差補正素子50に仮に平行光束で入射させた場合に、色収差補正素子50は第1レーザー光L1の基準波長λ1と同じ値(408nm)を設計波長λとして最適化されているために、設計波長λよりもかなり長い650nm前後の第2レーザー光L2は色収差補正素子50により強い発散光束で出射されるので、図23に示したように、対物レンズ21において大きなアンダーの球面収差が発生してしまい、これではDVD2の信号面2b上に良好なスポットが得られない。
上記から、DVD2を記録又は再生する場合には、第2レーザー光L2の収束光束が色収差補正素子50が概ね平行にされた回折光となって回折光学素子20及び対物レンズ21に入射されるので、第2レーザー光L2の平行光束を仮に色収差補正素子50に入射させた場合に生じる強い発散光束にはならず、回折光学素子20によってディスク基板厚さの違いによる球面収差を良好に補正し、これによりDVD2の信号面2b上に色収差及び球面収差が補正された良好なスポットが得られる。
尚、この実施例3では、色収差補正素子50の回折面50a1を図18に示したような3段の階段形状の多段ブレーズで作製しているが、これに限らず、回折面50a1をキノフォームと呼ばれる鋸歯状の連続曲面や、単なる凹凸形状のバイナリータイプなどで作製しても良く、このような場合でも回折面50a1の全体高さh2が設計波長λの略2×λ倍で、且つ、第2レーザー光L2の基準波長λ2の略1×(λ2)倍程度になるように設定すれば良いものである。
本発明に係る実施例1の光ピックアップ装置の全体構成を示した図である。 (a),(b)は本発明に係る実施例1の光ピックアップ装置において、回折光学素子を説明するための断面図,X部拡大図である。 (a)〜(c)は本発明に係る実施例1の光ピックアップ装置において、第2レーザー光源と第2凸レンズとの位置関係により、第2凸レンズからの出射光の状態をそれぞれ説明するための図である。 本発明に係る実施例1の光ピックアップ装置において、Blu−ray Discを記録又は再生する場合の光路図である。 本発明に係る実施例1の光ピックアップ装置において、第1レーザー光を色収差補正素子に平行光束で入射させた時の縦収差図である。 本発明に係る実施例1の光ピックアップ装置において、第1レーザー光を色収差補正素子に入射させず、仮に回折光学素子に平行光束で入射させた時の縦収差図である。 本発明に係る実施例1の光ピックアップ装置において、DVDを記録又は再生する場合の光路図である。 本発明に係る実施例1の光ピックアップ装置において、第2レーザー光を色収差補正素子に発散光束で入射させた時の縦収差図である。 本発明に係る実施例1の光ピックアップ装置において、第2レーザー光を色収差補正素子に仮に平行光束で入射させた時の縦収差図である。 本発明に係る実施例2の光ピックアップ装置の全体構成を示した図である。 (a),(b)は本発明に係る実施例2の光ピックアップ装置において、色収差補正素子を説明するための平面図,断面図である。 本発明に係る実施例2の光ピックアップ装置において、Blu−ray Discを記録又は再生する場合の光路図である。 本発明に係る実施例2の光ピックアップ装置において、第1レーザー光を色収差補正素子に平行光束で入射させた時の縦収差図である。 本発明に係る実施例2の光ピックアップ装置において、DVDを記録又は再生する場合の光路図である。 本発明に係る実施例2の光ピックアップ装置において、第2レーザー光を色収差補正素子に発散光束で入射させた時の縦収差図である。 本発明に係る実施例2の光ピックアップ装置において、第2レーザー光を色収差補正素子に仮に平行光束で入射させた時の縦収差図である。 本発明に係る実施例3の光ピックアップ装置の全体構成を示した図である。 (a),(b)は本発明に係る実施例3の光ピックアップ装置において、色収差補正素子を説明するための平面図,断面図である。 本発明に係る実施例3の光ピックアップ装置において、Blu−ray Discを記録又は再生する場合の光路図である。 本発明に係る実施例3の光ピックアップ装置において、第1レーザー光を色収差補正素子に平行光束で入射させた時の縦収差図である。 本発明に係る実施例3の光ピックアップ装置において、DVDを記録又は再生する場合の光路図である。 本発明に係る実施例3の光ピックアップ装置において、第2レーザー光を色収差補正素子に収束光束で入射させた時の縦収差図である。 本発明に係る実施例3の光ピックアップ装置において、第2レーザー光を色収差補正素子に仮に平行光束で入射させた時の縦収差図である。 従来例1の光ピックアップ装置の光学系を模式的に示した図である。 従来例2の光ピックアップ装置の光学系を模式的に示した図である。 従来例3の光ピックアップ装置の光学系を模式的に示した図である。 (a),(b)は従来例3の光ピックアップ装置において、色収差補正用光学素子を拡大して示した断面図,下面図である。
符号の説明
1…第1光記録媒体(Blu−ray Disc)
1a…レーザービーム入射面、1b…信号面、
2…第2光記録媒体(DVD)、2a…レーザービーム入射面、2b…信号面、
5…光ディスク駆動装置、6…スピンドルモータ、7…ターンテーブル、
10A…実施例1の光ピックアップ装置、
10B…実施例2の光ピックアップ装置、
10C…実施例3の光ピックアップ装置、
11…第1レーザー光源(青色半導体レーザー)、
12…回折格子(グレーティング)、13…偏光ビームスプリッタ、
14…第1レンズ(第1凸レンズ)、
15…球面収差補正手段、
15A…凹レンズ、15B…凸レンズ、15C…アクチュエータ、
16…波長板、17…レーザー光分離手段(ダイクロイックプリズム)、
18…実施例1の色収差補正素子、
18A…凹レンズ、18B…凸レンズ、18C…凹レンズ、
19…レンズホルダ、20…回折光学素子、20a…上面、
20a1…内周側凹凸状回折パターン部、20a2…外周側階段状回折パターン部、
20b…下面、
21…対物レンズ、21a,21b…面、
22…フォーカスコイル、23…トラッキングコイル、
24…シリンドリカルレンズ、25…第1光検出器、
30…DVD用集積デバイス、31…第2レーザー光源(赤色半導体レーザー)、
32…第2光検出器、33…ホログラム素子、
34…第2レンズ(第2凸レンズ)、
40…実施例2の色収差補正素子、
40a…上面、40a1…3段の階段状回折パターン部、40b…下面、
50…実施例3の色収差補正素子、
50a…上面、50a1…3段の階段状回折パターン部、50b…下面、
L1,L2…第1,第2レーザー光、
λ1,λ2…第1,第2レーザー光の各基準波長、
λ…設計波長、
t1,t2…第1,第2光記録媒体の基板厚さ、
h2……3段の階段状回折パターン部50a1の全体高さ、
h3……3段の階段状回折パターン部40a1の全体高さ。

Claims (3)

  1. 第1光記録媒体と、前記第1光記録媒体よりも記録密度が低く且つ前記第1光記録媒体よりも基板厚さが厚い第2光記録媒体と、前記第1,第2光記録媒体の各信号面を組み合わせて一体的に積層した組み合わせ型光記録媒体とを選択的に記録又は再生する光ピックアップ装置において、
    前記第1光記録媒体に対応して波長が450nm以下の第1レーザー光を出射する第1レーザー光源と、
    前記第1レーザー光源から出射した前記第1レーザー光を平行光束に形成する第1レンズと、
    前記第2光記録媒体に対応して前記第1レーザー光よりも波長が長い第2レーザー光を出射する第2レーザー光源と、
    前記第2レーザー光源から出射した前記第2レーザー光を発散光束に形成する第2レンズと、
    前記第1レーザー光の平行光束と前記第2レーザー光の発散光束とを分離するレーザー光分離手段と、
    凹状及び/又は凸状の屈折面を有する2枚以上のレンズが組み合わせて構成されており、前記レーザー光分離手段を通過した後に選択的に入射された前記第1レーザー光の平行光束又は前記第2レーザー光の発散光束を透過して、前記第1,第2レーザー光に対して色収差を補正する色収差補正素子と、
    前記色収差補正素子を透過した前記第1,第2レーザー光に対して前記第1,第2光記録媒体の基板厚さの異なりによって生じる球面収差を補正する回折光学素子と、
    第1光記録媒体用として開口数(NA)が0.75以上に設定され、且つ、互いに対向する各面のうち少なくとも一方の面が非球面に形成されており、前記回折光学素子を透過した前記第1,第2レーザー光を前記第1,第2光記録媒体の各信号面に集光させる対物レンズとを少なくとも備えたことを特徴する光ピックアップ装置。
  2. 第1光記録媒体と、前記第1光記録媒体よりも記録密度が低く且つ前記第1光記録媒体よりも基板厚さが厚い第2光記録媒体と、前記第1,第2光記録媒体の各信号面を組み合わせて一体的に積層した組み合わせ型光記録媒体とを選択的に記録又は再生する光ピックアップ装置において、
    前記第1光記録媒体に対応して波長が450nm以下の第1レーザー光を出射する第1レーザー光源と、
    前記第1レーザー光源から出射した前記第1レーザー光を平行光束に形成する第1レンズと、
    前記第2光記録媒体に対応して前記第1レーザー光よりも波長が長い第2レーザー光を出射する第2レーザー光源と、
    前記第2レーザー光源から出射した前記第2レーザー光を発散光束に形成する第2レンズと、
    前記第1レーザー光の平行光束と前記第2レーザー光の発散光束とを分離するレーザー光分離手段と、
    前記第1レーザー光の基準波長λ1と同じ値の波長を設計波長λとして一方の面に回折パターン部が内周から外周に向かって同心円状に形成されて、前記回折パターン部の全体高さが前記設計波長の略3×λ倍で、且つ、前記第2レーザー光の基準波長λ2の略2×(λ2)倍に設定されていると共に、他方の面に屈折面が形成されており、前記レーザー光分離手段を通過して選択的に入射された前記第1レーザー光の平行光束又は前記第2レーザー光の発散光束を透過して前記第1,第2レーザー光に対して色収差を補正する色収差補正素子と、
    前記色収差補正素子を透過した前記第1,第2レーザー光に対して前記第1,第2光記録媒体の基板厚さの異なりによって生じる球面収差を補正する回折光学素子と、
    第1光記録媒体用として開口数(NA)が0.75以上に設定され、且つ、互いに対向する各面のうち少なくとも一方の面が非球面に形成されており、前記回折光学素子を透過した前記第1,第2レーザー光を前記第1,第2光記録媒体の各信号面に集光させる対物レンズとを少なくとも備えたことを特徴する光ピックアップ装置。
  3. 第1光記録媒体と、前記第1光記録媒体よりも記録密度が低く且つ前記第1光記録媒体よりも基板厚さが厚い第2光記録媒体と、前記第1,第2光記録媒体の各信号面を組み合わせて一体的に積層した組み合わせ型光記録媒体とを選択的に記録又は再生する光ピックアップ装置において、
    前記第1光記録媒体に対応して波長が450nm以下の第1レーザー光を出射する第1レーザー光源と、
    前記第1レーザー光源から出射した前記第1レーザー光を平行光束に形成する第1レンズと、
    前記第2光記録媒体に対応して前記第1レーザー光よりも波長が長い第2レーザー光を出射する第2レーザー光源と、
    前記第2レーザー光源から出射した前記第2レーザー光を収束光束に形成する第2レンズと、
    前記第1レーザー光の平行光束と前記第2レーザー光の収束光束とを分離するレーザー光分離手段と、
    前記第1レーザー光の基準波長λ1と同じ値の波長を設計波長λとして一方の面に回折パターン部が内周から外周に向かって同心円状に形成されて、前記回折パターン部の全体高さが前記設計波長の略2×λ倍で、且つ、前記第2レーザー光の基準波長λ2の略1×(λ2)倍に設定されていると共に、他方の面に屈折面が形成されており、前記レーザー光分離手段を通過して選択的に入射された前記第1レーザー光の平行光束又は前記第2レーザー光の収束光束を透過して前記第1,第2レーザー光に対して色収差を補正する色収差補正素子と、
    前記色収差補正素子を透過した前記第1,第2レーザー光に対して前記第1,第2光記録媒体の基板厚さの異なりによって生じる球面収差を補正する回折光学素子と、
    第1光記録媒体用として開口数(NA)が0.75以上に設定され、且つ、互いに対向する各面のうち少なくとも一方の面が非球面に形成されており、前記回折光学素子を透過した前記第1,第2レーザー光を前記第1,第2光記録媒体の各信号面に集光させる対物レンズとを少なくとも備えたことを特徴する光ピックアップ装置。
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