JP2005209298A - 光ピックアップ装置及び回折光学素子 - Google Patents

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涼 齊藤
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Abstract

【課題】第1,第2光記録媒体の基板厚さの異なりによって生じる球面収差を補正する。【解決手段】回折光学素子20は、光軸が通る中心点を中心とした所定径の内周領域内に非球面と回折面とを合成して階段状に突出させた内周側階段状回折パターン部20a1が輪帯状に形成され、且つ、内周側階段状回折パターン部20a1より外周側の外周領域に回折パターン部のない外周側平坦部20a2が内周側階段状回折パターン部20a1の高さよりも低い高さで輪帯状に形成されることで、内周側階段状回折パターン部20a2で第1,第2光記録媒体1,2の基板厚さの異なりによって生じる球面収差を補正すると共に、外周側平坦部20a2で第1レーザー光L1に対して色収差を補正することを特徴とする。
【選択図】図2

Description

本発明は、基板厚さが薄い第1光記録媒体に対応して波長が短い第1レーザー光と、第1光記録媒体よりも基板厚さが厚い第2光記録媒体に対応して第1レーザー光よりも波長が長い第2レーザー光とを用いて、第1光記録媒体と第2光記録媒体とを選択的に記録又は再生する際に、第1レーザー光に対して色収差を補正するための色収差補正素子と、第1レーザー光と第2レーザー光とを分離する第1,第2レーザー光分離手段と、第1,第2光記録媒体の基板厚さの異なりによって生じる球面収差を補正するための回折光学素子と、開口数(NA)が0.75以上である一つの対物レンズとを少なくとも備えた光ピックアップ装置及び回折光学素子に関するものである。
一般的に、円盤状の光ディスクやカード状の光カードなどの光記録媒体は、映像情報とか音声情報やコンピュータデータなどの情報信号を透明基板上で螺旋状又は同心円状に形成したトラックに高密度に記録し、且つ、記録済みのトラックを再生する際に所望のトラックを高速にアクセスできることから多用されている。
この種の光記録媒体となる光ディスクとして例えばDVD(Digital Versatile Disc)などは既に市販されているが、最近になって光ディスクに対してより一層高密度化を図るために、DVDよりも情報信号を超高密度に記録又は再生できるBlu−ray Discの開発が盛んに行われている。
上記したDVDは、波長が650nm前後のレーザー光を開口数(NA)が0.6程度の対物レンズで絞って得たレーザービームを照射して、レーザービーム入射面から略0.6mm隔てた位置にある信号面上に情報信号を記録又は再生している。この際、DVDの記録容量はディスク基板の直径が12cmの時に片面で4.7GB(ギガバイト)程度である。
一方、上記したBlu−ray Discは、波長が450nm以下のレーザー光を開口数(NA)が0.75以上の対物レンズで絞って得たレーザービームを照射して、レーザービーム入射面から略0.1mm隔てた位置にある信号面上に情報信号を記録又は再生できるように開発が進められている。この際、Blu−ray Discの記録容量はディスク基板の直径が12cmの時に片面で25GB(ギガバイト)前後である。
ところで、Blu−ray Discの開発が進むにつれて、一つの対物レンズを用いて記録密度が超高密度であるBlu−ray Discと、このBlu−ray Discよりも記録密度が低いDVDとを下位互換性を確保して記録又は再生できる光ピックアップ装置が開発されている(例えば、特許文献1及び非特許文献1)。
また、Blu−ray Discに対して色収差を補正できる光ピックアップ装置も開発されている(例えば、特許文献2及び特許文献3)。
更に、一般的な光ディスクに対して色収差を補正できる光ピックアップ装置も開発されている(例えば、特許文献4)。
特開2002−236253号公報(第57−58頁、第31図) 特開2003−272213号公報(第5−6頁、第2図) 特開2003−270525号公報(第6頁、第3図) 特開平6−250081号公報(第4頁、第3図) 特開平6−82725号公報(第2頁、第1図) Phase Shift Element for Blu-ray Disc / DVD Compatibility, Katsuhiro Koike et. al., Technical digest for ODS 2003, WA6
図12は従来例1の光ピックアップ装置の光学系を模式的に示した図、
図13は従来例2の光ピックアップ装置の光学系を模式的に示した図、
図14は従来例3の光ピックアップ装置の光学系を模式的に示した図、
図15は従来例4の光ピックアップ装置の光学系を模式的に示した図、
図16は従来例5の光ピックアップ装置の光学系を模式的に示した図、
図17は従来例6の光ピックアップ装置の光学系を模式的に示した図である。
まず、図12に示した従来例1の光ピックアップ装置110は、上記した特許文献1に開示されているものであり、特許文献1を参照して簡略に説明すると、従来例1の光ピックアップ装置110では、透明基板の厚さが0.1mmである第1光ディスク(例えば青色レーザー使用の次世代高密度光ディスク)101と、透明基板の厚さが0.6mmである第2光ディスク(例えばDVD)102とが選択的に適用可能に構成されている。
上記した従来例1の光ピックアップ装置110内には、第1光ディスク(例えば次世代高密度光ディスク)101に対応して波長が400nm程度の第1レーザー光(青色レーザー光)を出射する第1半導体レーザー111と、第2光ディスク(例えばDVD)102に対応して波長が650nm程度の第2レーザー光(赤色レーザー光)を出射する第2半導体レーザー112と、第1,第2ビームスプリッタ113,114と、1次元アクチュエータ115によって光軸方向に移動可能なコリメータ116と、1/4波長板117と、絞り118と、2次元アクチュエータ119によって第1,第2レーザー光を第1,第2光ディスク上に結像するために開口数NAが0.7以上で少なくとも1面上に回折輪帯レンズが形成された対物レンズ120と、第1,第2光ディスク101,102からの戻り光を検出するためのシリンドリカルレンズ121及び光検出器122とを備えている。
そして、第1,第2半導体レーザー111,112から出射した各発散光束は、2個の第1,第2ビームスプリッタ113,114,コリメータ116,1/4波長板117,絞り118を介して、第1,第2光ディスク101,102の情報記録面101a,102a上にそれぞれ選択的に集光され、各スポットを形成する。この際、第1,第2光ディスク101,102の基板厚さに誤差がある場合とか、第1,第2半導体レーザー111,112の製造誤差により各発振波長に誤差がある場合とか、集光光学系を構成するレンズに厚さの誤差がある場合に発生する球面収差をコリメータ116の移動により補正している。
更に、対物レンズ120は、第1半導体レーザー111からの光束に対して像側開口数NA1内で回折限界内となるように集光させるので、高密度な第1光ディスク101を再生でき、一方、第2半導体レーザー112からの光束に対して像側開口数NA2内で回折限界内となるように集光させるので、第2光ディスク102を再生できる。また、第2半導体レーザー112からの光束を第2光ディスク102の情報記録面102a上に集光させる際、対物レンズ120の少なくとも1面上に形成された回折輪帯レンズの作用により、像側開口数NA1からNA2の領域を通過する光束をフレア成分とするので、第2半導体レーザー112からの光束を、NA1で決定される絞り118をすべて通過させても、像側開口数NA1からNA2の領域を通過する光束は第2光ディスク102の情報記録面102a上にスポットを結ばないため、NA1とNA2との開口切り替え手段を設ける必要がないように構成されている。
次に、図13に示した従来例2の光ピックアップ装置130は、上記した非特許文献1に開示されているものであり、非特許文献1を参照して簡略に説明すると、従来例2の光ピックアップ装置130では、レンズホルダ131内に、位相光学素子(PSE:Phase Shift Element)132と、開口数(NA)が0.85である対物レンズ133とが取り付けられており、405nmの波長に対応したBlu−ray Discと、650nmの波長に対応したDVDとを選択的に適用可能に構成されており、位相光学素子132でBlu−ray DiscとDVDとの基板厚さの異なりによって生じる球面収差を補正できるようになっている。
ここで、上記した位相光学素子(PSE:Phase Shift Element)132は、内周に階段状回折パターン部132aが形成され、この階段状回折パターン部132aの外周に平坦部132bが形成されている。
そして、Blu−ray Discに対して波長が405nmの第1レーザー光を位相光学素子132の階段状回折パターン部132aと平坦部132bとをそのまま透過させて対物レンズ133によりBlu−ray Disc上に集光させる一方、DVDに対して波長が650nmの第2レーザー光を位相光学素子132の階段状回折パターン部132aのみを透過させてこの階段状回折パターン部132aで球面収差を補正しながら対物レンズ133によりDVD上に集光させている。
次に、図14に示した従来例3の光ピックアップ装置140は、上記した特許文献2に開示されているものであり、特許文献2を参照して簡略に説明すると、従来例3の光ピックアップ装置140では、凹レンズ141Aと凸レンズ141Bとからなるビームエキスパンダー141と、凹レンズ142Aと凸レンズ142Bと凹レンズ142Cとを貼り合わせて形成されて色収差補正手段となるトリプレット142と、開口数が0.7以上である対物レンズ143とで構成されており、波長が403nm前後のレーザー光Lに対応したBlu−ray Disc101に対して球面収差と色収差とを補正できるようになっている。
ここで、上記したビームエキスパンダー141は、2枚のレンズ141A,141Bの間隔を調整することで光の平行度を変化させて、対物レンズ143の球面収差を補正している。また、上記したトリプレット142は、対物レンズ143の色収差により生じる焦点方向の誤差成分を補正している。
次に、図15に示した従来例4の光ピックアップ装置150は、上記した特許文献3に開示されているものであり、特許文献3を参照して簡略に説明すると、従来例4の光ピックアップ装置150では、凹レンズ151Aとフレネルレンズ151Bとからなるビームエキスパンダー151と、開口数が0.7以上である対物レンズ152とで構成されており、波長が405nm前後のレーザー光Lに対応したBlu−ray Disc101に対して球面収差と色収差とを補正できるようになっている。
ここで、上記したビームエキスパンダー151は、2枚のレンズ151A,151Bの間隔を調整することで光の平行度を変化させて、対物レンズ152の球面収差を補正している。また、ビームエキスパンダー151中のフレネルレンズ151Bは、アナログ的なブレーズ151Ba(又は階段状のブレーズ)が形成されており、凹レンズ151Aに対して凸レンズとしての機能を有するものであって、その焦点距離は対物レンズ152の色収差により生じる焦点方向の誤差成分を補正できるようになっている。
次に、図16に示した従来例5の光ピックアップ装置160は、上記した特許文献4に開示されているものであり、特許文献4を参照して簡略に説明すると、従来例5の光ピックアップ装置160では、正レンズ161Aと負レンズ161Bとからなる色収差補正素子161と、対物レンズ162とで構成されており、色収差補正素子161中の正レンズ161Aと負レンズ161Bとの貼り合わせ面を非球面に形成することで、光ディスク103に対して色収差補正素子161で波長変化による球面収差を補正することができるようになっている。
次に、図17に示した従来例6の光ピックアップ装置170は、上記した特許文献5に開示されているものであり、特許文献5を参照して簡略に説明すると、従来例6の光ピックアップ装置170では、光入射端面171a,光出射端面171bの少なくとも一方に、光軸に対して垂直な平面を同心円状の輪帯として階段状に形成した色収差補正素子171と、対物レンズ172とで構成されており、光ディスク103に対して単一の色収差補正素子171で色収差を補正できるようになっている。
ところで、上記した従来例1の光ピックアップ装置110では、開口数NAが0.7以上で少なくとも1面上に回折輪帯レンズが形成された対物レンズ120によって、透明基板の厚さが0.1mmである第1光ディスク101と、透明基板の厚さが0.6mmである第2光ディスク102とを選択的に適用可能に構成されているものの、対物レンズ120の少なくとも1面上に形成した回折輪帯レンズはピッチが狭くなり、対物レンズ120の加工が困難であり、レンズ性能に悪影響を及ぼす危険性がある。
また、上記した従来例2の光ピックアップ装置130では、位相光学素子132と、開口数NAが0.85である対物レンズ133とで405nmの波長に対応したBlu−ray Discと、650nmの波長に対応したDVDとを選択的に適用可能に構成されているものの、位相光学素子132の内周に形成した階段状回折パターン部132aで第2レーザー光に対して球面収差が補正されるものの、内周に形成した階段状回折パターン部132aと外周に形成した平坦部132bとをそのまま透過する第1レーザー光では、波長誤差が生じた時に外周が平坦であるためにBlu−ray Discへの球面収差補正が不十分である。
また、上記した従来例3の光ピックアップ装置140では、ビームエキスパンダー141と、トリプレット142と、開口数が0.7以上である対物レンズ143とで、Blu−ray Disc101に対して球面収差及び色収差の補正が可能なものの、Blu−ray Disc101とDVD(図示せず)とを下位互換性を確保して記録又は再生することに対して考慮されていない。また、色収差補正手段となるトリプレット142は、光学全体で軸上色収差を過剰に補正出来るように設計する必要があるため、貼り合わせ面の曲率半径が小さくなり、加工が難しい。更に、ビームエキスパンダー141により球面収差を補正する場合に、ビームエキスパンダー141の間隔を変化させれば良いものの、球面収差の補正に要する時間がかなりかかってしまう。
また、上記した従来例4の光ピックアップ装置150では、ブレーズを有するビームエキスパンダー151だけで球面収差及び色収差の補正が可能であるので、従来例3よりも部品点数を削減してもBlu−ray Disc101に対して同等の性能が得られるものの、Blu−ray Disc101とDVD(図示せず)とを下位互換性を確保して記録又は再生することに対して考慮されていない。また、ビームエキスパンダー151中のフレネルレンズ151Bにアナログ的なブレーズ151Ba(又は階段状のブレーズ)を形成する時にピッチが狭くなり加工が難しい。
また、上記した従来例5の光ピックアップ装置160では、色収差補正素子161に波長変化による球面収差を補正する機能を持たせているものの、この色収差補正素子161は正レンズ161Aと負レンズ161Bの貼り合わせ面が非球面であるために、色収差補正素子161を製造することが困難である。
また、上記した従来例6の光ピックアップ装置170では、階段状に形成した色収差補正素子171により光ディスク103に対して色収差を補正できるので、超高密度なBlu−ray Discにも適用可能であるものの、Blu−ray DiscとDVDとを下位互換性を確保して記録又は再生することに対して考慮されていない。
そこで、一つの対物レンズを用いて記録密度が超高密度である第1光記録媒体(例えば、Blu−ray Disc)と、この第1光記録媒体よりも記録密度が低い第2光記録媒体(例えば、DVD)とを下位互換性を確保して記録又は再生でき、波長変化が生じた場合の球面収差の変動が少なく、且つ、Blu−ray Discに対して同時に用いられる色収差補正素子の設計を製造しやすい方向へ導き、更に、素子数の増加を伴わない光ピックアップ装置及び回折光学素子が望まれている。
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、第1の発明は、第1光記録媒体と、前記第1光記録媒体よりも記録密度が低く且つ前記第1光記録媒体よりも基板厚さが厚い第2光記録媒体と、前記第1,第2光記録媒体の各信号面を組み合わせて一体的に積層した組み合わせ型光記録媒体とを選択的に記録又は再生する光ピックアップ装置において、
前記第1光記録媒体に対応して波長が450nm以下の第1レーザー光を出射させる第1レーザー光源と、
前記第2光記録媒体に対応して前記第1レーザー光よりも波長が長い第2レーザー光を出射させる第2レーザー光源と、
前記第1レーザー光に対して色収差を補正するための色収差補正素子と、
前記第1レーザー光と前記第2レーザー光とを分離する第1,第2レーザー光分離手段と、
前記第1,第2光記録媒体の基板厚さの異なりによって生じる球面収差を補正するための回折光学素子と、
第1光記録媒体用として開口数(NA)が0.75以上に設定され、且つ、互いに対向する第1,第2面のうち少なくとも一方の面が非球面に形成されて、前記第1,第2レーザー光を前記第1,第2光記録媒体の各信号面に集光させる対物レンズとを少なくとも備え、
前記回折光学素子は、光軸が通る中心点を中心とした所定径の内周領域内に非球面と回折面とを合成して階段状に突出させた内周側階段状回折パターン部が輪帯状に形成され、且つ、前記内周側階段状回折パターン部より外周側の外周領域に回折パターン部のない外周側平坦部が前記内周側階段状回折パターン部の高さよりも低い高さで輪帯状に形成されることで、前記内周側階段状回折パターン部で前記第1,第2光記録媒体の基板厚さの異なりによって生じる球面収差を補正すると共に、前記外周側平坦部で前記第1レーザー光に対して色収差を補正することを特徴とする光ピックアップ装置である。
また、第2の発明は、上記した第1の発明の光ピックアップ装置において、
前記回折光学素子は、前記第1レーザー光の基準波長λ1と同じ値の波長を設計波長λに設定した際、前記内周側階段状回折パターン部の階段の段差高さが前記設計波長λの略m(但し、mは自然数)倍分の位相差に設定され、且つ、前記外周側平坦部の高さが前記内周側階段状回折パターン部を出射する際の前記第1レーザー光の平均波面値に近い値で前記設計波長λの略整数倍分の位相差に設定されていることを特徴とする光ピックアップ装置である。
また、第3の発明は、基板厚さが薄い第1光記録媒体に対応して波長が450nm以下の第1レーザー光と、前記第1光記録媒体よりも基板厚さが厚い第2光記録媒体に対応して第1レーザー光よりも波長が長い第2レーザー光とを用いて、前記第1光記録媒体と前記第2光記録媒体とを選択的に記録又は再生する際に、前記第1,第2光記録媒体の基板厚さの異なりによって生じる球面収差を補正するための回折光学素子であって、
光軸が通る中心点を中心とした所定径の内周領域内に非球面と回折面とを合成して階段状に突出させた内周側階段状回折パターン部が輪帯状に形成され、且つ、前記内周側階段状回折パターン部より外周側の外周領域に回折パターン部のない外周側平坦部が前記内周側階段状回折パターン部の高さよりも低い高さで輪帯状に形成されることで、前記内周側階段状回折パターン部で前記第1,第2光記録媒体の基板厚さの異なりによって生じる球面収差を補正すると共に、前記外周側平坦部で前記第1レーザー光に対して色収差を補正することを特徴とする回折光学素子である。
更に、第4の発明は、上記した第3の発明の回折光学素子において、
前記第1レーザー光の基準波長λ1と同じ値の波長を設計波長λに設定した際、前記内周側階段状回折パターン部の階段の段差高さが前記設計波長λの略m(但し、mは自然数)倍分の位相差に設定され、且つ、前記外周側平坦部の高さが前記内周側階段状回折パターン部を出射する際の前記第1レーザー光の平均波面値に近い値で前記設計波長λの略整数倍分の位相差に設定されていることを特徴とする回折光学素子である。
請求項1記載の光ピックアップ装置及び請求項3記載の回折光学素子によると、とくに、回折光学素子は、光軸が通る中心点を中心とした所定径の内周領域内に非球面と回折面とを合成して階段状に突出させた内周側階段状回折パターン部が輪帯状に形成され、且つ、内周側階段状回折パターン部より外周側の外周領域に回折パターン部のない外周側平坦部が内周側階段状回折パターン部の高さよりも低い高さで輪帯状に形成されることで、内周側階段状回折パターン部で第1,第2光記録媒体の基板厚さの異なりによって生じる球面収差を補正すると共に、外周側平坦部で第1レーザー光に対して色収差を補正しているので、第1光記録媒体と、第2光記録媒体と、第1,第2光記録媒体を組み合わせた組み合わせ型光記録媒体とを良好に記録又は再生できると共に、色収差補正素子の設計を製造しやすい方向へ導くことができる。
また、請求項2記載の光ピックアップ装置及び請求項4記載の回折光学素子によると、とくに、回折光学素子は、第1レーザー光の基準波長λ1と同じ値の波長を設計波長λに設定した際、内周側階段状回折パターン部の階段の段差高さが設計波長λの略m(但し、mは自然数)倍分の位相差に設定され、且つ、外周側平坦部の高さが内周側階段状回折パターン部を出射する際の第1レーザー光の平均波面値に近い値で設計波長λの整数倍分の位相差に設定されているので、性能の良い回折光学素子が得られる。
以下に本発明に係る光ピックアップ装置及び回折光学素子の一実施例を図1乃至図11を参照して詳細に説明する。
本発明に係る光ピックアップ装置は、一つの対物レンズを用いて記録密度が超高密度である第1光記録媒体(例えば、Blu−ray Disc)と、この第1光記録媒体よりも記録密度が低い第2光記録媒体(例えば、DVD)とを下位互換性を確保して記録又は再生する際に、第1レーザー光に対して色収差を補正するための色収差補正素子と、第1レーザー光と第2レーザー光とを分離する第1,第2レーザー光分離手段と、第1,第2光記録媒体の基板厚さの異なりによって生じる球面収差を補正するための回折光学素子と、次世代光ディスク規格の第1光記録媒体に対応して設計し且つ開口数(NA)が0.75以上である対物レンズとを少なくとも備え、とくに、回折光学素子は対物レンズと対向する上面の内周領域に非球面と回折面とを合成して階段状に突出させた内周側階段状回折パターン部を輪帯状に形成し、且つ、内周側階段状回折パターン部より外周側の外周領域に回折パターン部のない外周側平坦部を内周側階段状回折パターン部の高さよりも低い高さで輪帯状に形成することで、内周側階段状回折パターン部で第2レーザー光に対して球面収差を補正する一方、外周側平坦部で第1レーザー光に対して色収差を補正することを特徴とするものである。
図1は本発明に係る光ピックアップ装置の全体構成を示した図である。
図1に示した如く、本発明に係る実施例の光ピックアップ装置10は、基準波長λ1が450nm以下の第1レーザー光L1により情報信号を基板厚さが薄い信号面1bに超高密度に記録又は再生する第1光記録媒体1と、基準波長λ2が第1レーザー光L1の基準波長λ1より長く650nm前後の第2レーザー光L2により情報信号を前記した第1光記録媒体1の信号面1bよりも基板厚さが厚い信号面2bに高密度に記録又は再生する第2光記録媒体2と、第1,第2レーザー光L1,L2のいずれかが入射するレーザービーム入射面を共通化し且つ第1,第2光記録媒体1,2の各信号面1b,2bを組み合わせて一体的に積層した組み合わせ型光記録媒体とを選択的に適用可能に開発したものである。
尚、ここでの図示を省略するものの、第1,第2光記録媒体1,2の各信号面1b,2bを組み合わせた組み合わせ型光記録媒体は合計のディスク基板厚さが略1.2mmに形成されるものであるが、以下の説明では第1,第2光記録媒体1,2の個々について詳述し、組み合わせ型光記録媒体の場合はその応用であるので説明を省略する。
また、以下の説明では、第1,第2光記録媒体1,2として、円盤状の光ディスクに適用した場合について説明するが、これに限ることなく、カード状の光記録媒体であっても良い。
そして、上記した第1,第2光記録媒体1,2は、光ディスク駆動装置5内に回転自在に設けたスピンドルモータ6の軸に固着したターンテーブル7上に選択的に装着されるようになっている。
ここで、上記した第1光記録媒体となるBlu−ray Disc1は、次世代光ディスク規格に基づいてレーザービーム入射面1aと信号面1bとの間のディスク基板厚さd1が略0.05mm〜0.15mmに薄く設定されて、この上に補強板(図示せず)を貼り合せて合計厚さが厚く形成されており、この合計厚さは例えば略1.2mmである。尚、以下の説明では、第1光記録媒体をBlu−ray Disc1と記す。
また、上記した第2光記録媒体となるDVD(Digital Versatile Disc)2は、DVD規格に基づいてレーザービーム入射面2aと信号面2bとの間のディスク基板厚さd2がBlu−ray Disc1よりも厚く0.6mmに設定されて、この上に補強板(図示せず)を貼り合せて合計厚さが略1.2mmに形成されている。尚、以下の説明では、第2光記録媒体をDVD2と記す。
尚、この実施例では、Blu−ray Disc1,DVD2の各ディスク基板厚さd1,d2が、例えば0.1mm,0.6mmにそれぞれ設定されているものとする。
また、Blu−ray Disc1のレーザービーム入射面1a又はDVD2のレーザービーム入射面2aの下方には、本発明に係る光ピックアップ装置10がBlu−ray Disc1又はDVD2の径方向に移動自在に設けられている。
上記した本発明に係る光ピックアップ装置10内には、Blu−ray Disc1に対応して基準波長λ1が450nm以下の第1レーザー光L1を出射するための第1レーザー光源(以下、青色半導体レーザーと記す)11と、DVD2に対応して基準波長λ2が650nm前後の第2レーザー光L2を出射するためにDVD用集積デバイス30内の第2レーザー光源(以下、赤色半導体レーザーと記す)31とが設けられている。
尚、この実施例では、青色半導体レーザー11から出射される第1レーザー光L1の基準波長λ1は例えば408nmに設定され、また、赤色半導体レーザー31から出射される第2レーザー光L2の基準波長λ2は例えば655nmに設定されているものとする。
まず、Blu−ray Disc1に対応する青色半導体レーザー11側について説明すると、青色半導体レーザー11から出射した第1レーザー光L1は直線偏光の発散光であり、この発散光が回折格子(グレーティング)12に入射され、この回折格子12内に形成された凹凸状格子(図示せず)のピッチと傾斜の角度に応じて0次回折光と±1次回折光とからなる3本のビーム(以下、3ビームと記す)に分離された後に、3ビームが偏光ビームスプリッタ13に入射される。
尚、この実施例では、回折格子12により3ビームを生成しているが、回折格子12を設けない構成もあり、この場合には青色半導体レーザー11から出射した第1レーザー光L1を1ビームのままで偏光ビームスプリッタ13に直接入射させれば良い。
上記した偏光ビームスプリッタ13は、回折格子12からの3ビームを透過させ、且つ、後述するBlu−ray Disc1からの反射光を反射させて略90°方向を転じさせるために偏光性を有する半透過反射誘電体多層膜13aが膜付けされている。
この後、偏光ビームスプリッタ13内の半透過反射誘電体多層膜13aを透過した第1レーザー光L1による3ビームは、コリメータレンズ14で平行光に変換されて、球面収差補正手段15に入射される。
上記した球面収差補正手段15は、Blu−ray Disc1のディスク基板厚さd1のバラツキとか、青色半導体レーザー11から出射した第1レーザー光L1の波長誤差などに伴って青色半導体レーザー11とBlu−ray Disc1の信号面1bとの間に配置された光学系によって発生する球面収差を補正するものであり、青色半導体レーザー11側に設けた凹レンズ(負レンズ)15Aと、後述の対物レンズ21側に設けた凸レンズ(正レンズ)15Bと、凸レンズ15Bを光軸方向に沿って変位させるアクチュエータ15Cとから構成されている。そして、凸レンズ15Bをアクチュエータ15Cによって凹レンズ15Aに対して光軸方向に変位させ、凹レンズ15Aと凸レンズ15Bとの間隔を制御して、対物レンズ21に入射する3ビームの平行度を調整して、対物レンズ21の倍率誤差による球面収差を発生させて他の球面収差と相殺することで球面収差が零になるように補正するものである。尚、凹レンズ(負レンズ)15Aを凸レンズ15Bに対して光軸方向に変位させる方法でも良い。
尚、球面収差補正手段として、この実施例では凹レンズ15Aと凸レンズ15Bとアクチュエータ15Cとの組み合わせを用いたが、これに代えて液晶素子などを用いた波面変調素子を適用することも可能である。
この後、球面収差補正手段15を通った第1レーザー光L1による3ビームは、波長板16を透過する際に、第1レーザー光L1による3ビームに対して、波長板の進相軸と遅相軸に対応する偏光成分に、略1/4波長(90°)の位相差を与えて円偏光に変換した後に、色収差補正素子17に入射する。
上記した色収差補正素子17は、一方の面が平坦面で他方の面が凹球面に形成された凹レンズ17Aと、両面共に凸球面に形成された凸レンズ17Bと、一方の面が凹球面で他方の面が平坦面に形成された凹レンズ17Cとを貼り合わせて形成されており、第1レーザー光L1に対して色収差を補正する機能を有している。
尚、この実施例では、上記したような色収差補正素子17を用いているが、これに代えて先に図17を用いて従来例6で述べたような光入射端面,光出射端面の少なくとも一方に、光軸に対して垂直な平面を同心円状の輪帯として階段状に形成した回折型の色収差補正素子を適用しても良い。また、この同心円上の輪帯は屈折面(曲面)の上に形成しても良い。
尚更に、基準波長λ1が408nmである第1レーザー光L1に対して、数nmの波長誤差がある時に、色収差を最小にすることが重要である。そこで、Blu−ray Disc1に対して色収差を測定する場合には、第1レーザー光L1の波長が例えば411nmである青色半導体レーザー11を用いて測定すれば良い。
そして、色収差補正素子17を通過した第1レーザー光L1による3ビームは、第1,第2レーザー光分離手段となるダイクロイックプリズム18を通過する。このダイクロイックプリズム18は、青色半導体レーザー11から出射した第1レーザー光L1を透過させる一方、赤色半導体レーザー31から出射した第2レーザー光L2に対して反射させて略90°方向を転じさせるために波長選択性を有する半透過反射ダイクロイック膜18aが膜付けされている。
この後、ダイクロイックプリズム18内の半透過反射ダイクロイック膜18aを透過した第1レーザー光L1による3ビームは、レンズホルダ19内の下方部位に取り付けた本発明に係る回折光学素子20を平行光のままで直進してレンズホルダ19内の上方部位に取り付けた対物レンズ21に入射し、この対物レンズ21で絞り込んだ第1レーザービーム(3ビーム)がBlu−ray Disc1のレーザー入射面1aから入射して信号面1bに集光される。
この際、上記した本発明に係る回折光学素子20は、後述するように対物レンズ21と対向する上面20aの内周領域に後述する非球面多項式による非球面と、後述する位相関数によって求めた位相関数曲線に基づいた回折面とを合成して階段状に突出させた内周側階段状回折パターン部20a1を輪帯状に形成し、且つ、内周側階段状回折パターン部20a1より外周側の外周領域に回折パターン部のない外周側平坦部20a2を輪帯状に形成した状態で、レンズホルダ19内の下方部位に対物レンズ21と光軸を一致させて取り付けられている。そして、青色半導体レーザー11から出射した第1レーザー光L1に対して回折光学素子20の内周側階段状回折パターン部20a1と、外周側平坦部20a2とを平行光のまま透過させた後に、第1レーザー光L1を対物レンズ21に入射させている。
尚、上記した回折光学素子20は、実施例の要部を構成するものであり、この回折光学素子20の形状と、回折光学素子20による第1レーザー光L1に対する動作については後で詳述する。
また、上記した対物レンズ21は、Blu−ray Disc用として開口数が0.75以上に設定され、且つ、互いに対向する第1面21a,第2面21bのうち少なくとも一方の面が非球面に形成されているものであるが、この実施例では開口数(NA)が0.85でアプラナートな特性、又は、アプラナートに近い特性を持った単玉レンズを用いている。尚、ここで言うアプラナートとは、軸上の球面収差を完全に補正しつつ正弦条件(軸外でコマ収差を発生しない条件)を満足したものである。
また、レンズホルダ19の外周にはフォーカスコイル22とトラッキングコイル23とが一体的に取り付けられ、且つ、レンズホルダ19の外周に固着させた不図示の複数本のサスペンションワイヤを介してレンズホルダ19と一体に回折光学素子20と対物レンズ21とがBlu−ray Disc1のフォーカス方向とトラッキング方向とに制御されている。
尚、後述するDVD2の場合にも、回折光学素子20と対物レンズ21とがレンズホルダ19と一体となってDVD2のフォーカス方向とトラッキング方向とに制御されるものである。
この後、対物レンズ21で絞り込んだ第1レーザービーム(3ビーム)をBlu−ray Disc1のレーザービーム入射面1aから入射させて信号面1b上に集光し、第1レーザービームによって信号面1bへの再生、記録、または消去が行われる。
更にこの後、Blu−ray Disc1の信号面1bで反射された第1レーザービームによる戻りの第1反射光は、上記とは逆に対物レンズ21に再入射して、回折光学素子20,ダイクロイックプリズム18,色収差補正素子17,波長板16,球面収差補正手段15,コリメータレンズ14を順に通過して、偏光ビームスプリッタ13内の偏光性を有する半透過反射誘電体多層膜13aで反射されて略90°方向を転じた後にシリンドリカルレンズ24を介して第1光検出器25に集光する。そして、第1光検出器25でBlu−ray Disc1の信号面1bを再生した時のトラッキングエラー信号,フォーカスエラー信号,メインデータ信号を検出している。
次に、DVD2に対応する赤色半導体レーザー31側について説明すると、DVD2を記録又は再生する場合には、Blu−ray Disc1を記録又は再生する際に用いた球面収差補正手段15及び色収差補正素子17を用いない光学系になっている。
尚、球面収差補正手段15と色収差補正素子17は、上記ではBlu−ray Disc1を記録又は再生する光学系のみに配置されているが、これに限らず、DVD2を記録又は再生する場合でも、その両者15,17を含んだ光学系として構成することも可能である。この場合には第2レーザー光L2に対して収差が小さくなるように球面収差補正手段15を制御するか、又は、球面収差補正手段15及び色収差補正素子17に入射する第2レーザー光L2の平行度を適切に設定して収差を小さくすれば良い。
ここで、DVD用集積デバイス30は、赤色半導体レーザー31と、赤色半導体レーザー31の右方に設置した第2光検出器32とが不図示の半導体基板上に一体化されており、且つ、赤色半導体レーザー31の上方にホログラム素子33が設置されている。
尚、この実施例ではDVD用集積デバイス30を用いているが、これに限ることなく、図示を省略するが赤色半導体レーザーからの第2レーザー光をビームスプリッタで分離させる構成でも良い。
ここで、赤色半導体レーザー31から出射した第2レーザー光L2は直線偏光の発散光であり、この発散光がホログラム素子33を通過する。この後、ホログラム素子33を通過した第2レーザー光L2は、コリメータレンズ34で平行光となり、この平行光が第2レーザー光用の位相板35を透過して円偏光となる。この際、第2レーザー光用の位相板35は第2レーザー光L2が透過する時に、その進相軸と遅相軸の間に略(λ2)/4の位相差を与えて円偏光に変換するものである。
更に、位相板35を通った第2レーザー光L2の平行光は、ダイクロイックプリズム18内の波長選択性を有する半透過反射ダイクロイック膜18aで反射されて略90°光線方向を転じた後、第2レーザー光L2に対して回折光学素子20により対物レンズ21への開口数(NA)が0.6相当になるように開口を制限させると共に、第2レーザー光L2の平行光を回折光学素子20の内周側階段状回折パターン部20a1で回折させて球面収差を補正しながら第2レーザー光L2の回折光を対物レンズ21に入射させている。
尚、回折光学素子20による第2レーザー光L2に対する動作については後で詳述する。
この後、対物レンズ21で絞り込んだ第2レーザービームをDVD2のレーザービーム入射面2aから入射させて信号面2b上に集光し、第2レーザービームによってDVD2の信号面2bへの再生、記録、または消去が行われる。
更にこの後、DVD2の信号面2bで反射された第2レーザービームによる戻りの第2反射光は、上記とは逆に対物レンズ21に再入射し、回折光学素子20を経てダイクロイックプリズム18内の半透過反射ダイクロイック膜18aで反射されて略90°光線方向を転じた後、第2レーザー光用の位相板35,コリメータレンズ34を順に通過して、ホログラム素子33によって回折されて、第2光検出器32に集光する。そして、第2光検出器32でDVD2の信号面2bを再生した時のトラッキングエラー信号,フォーカスエラー信号,メインデータ信号を検出している。
ここで、実施例における主要な光学系の仕様を順に説明する。
まず、対物レンズ21の仕様を下記の表1に示す。
Figure 2005209298
次に、Blu−ray Disc1を記録又は再生する際の光学面形成部材の一覧について下記の表2に示す。
Figure 2005209298
次に、DVD2を記録又は再生する際の光学面形成部材の一覧について下記の表3に示す。
Figure 2005209298
また、表2又は表3中に示した色収差補正素子17,回折光学素子20,対物レンズ21,Blu−ray Disc1,DVD2に用いた各材料の各波長に対する屈折率を下記の表4に示す。
Figure 2005209298
次に、表2又は表3中に示した回折光学素子20の第2面を非球面に形成する際、下記する数1の非球面多項式を用いて非球面を表すものとする。尚、回折光学素子20の第2面は、後述するように内周側階段状回折パターン部20a1として形成されている。
Figure 2005209298
上記した数1の非球面多項式を用いた時に、回折光学素子の第2面を非球面に形成するための非球面係数A〜Aの一例を下記の表5に示す。
Figure 2005209298
また、表2又は表3中に示した回折光学素子20の第2面を回折面に形成する際に用いる位相関数Φ(h)を下記の数2に示す。尚、回折光学素子20の第2面は、後述するように内周側階段状回折パターン部20a1として形成されている。
Figure 2005209298
また、上記した位相関数Φ(h)中の位相関数係数B〜Bの一例を下記の表6に示す。
Figure 2005209298
次に、対物レンズ21中で回折光学素子20と対向する第1面21aと、Blu−ray Disc1又はDVD2と対向する第2面21bとを非球面に形成する際、下記する数3の非球面多項式を用いて非球面を表すものとする。
Figure 2005209298
上記した数3の非球面多項式を用いた時に、対物レンズ21の第1面21aを非球面に形成するための非球面係数A’〜A’12の一例を下記の表7に示す。
Figure 2005209298
また、上記した数3の非球面多項式を用いた時に、対物レンズ21の第2面21bを非球面に形成するための非球面係数B〜B10の一例を下記の表8に示す。
Figure 2005209298
以下、先に表2で示した各光学面形成部材について順を追って、先に説明した図1と、新たな図2〜図5とを用いて説明する。
図2は本発明に係る回折光学素子を説明するための縦断面図、
図3は本発明に係る回折光学素子を一部変形させた変形例を示した縦断面図、
図4は本発明に係る回折光学素子の内周側階段状回折パターン部を作製する際に用いられる位相関数Φ(h)により求めた位相関数曲線を説明するための図、
図5は図4で得られた位相関数曲線と表5の非球面係数とに基づいて回折光学素子の内周側階段状回折パターン部の階段を設計波長λの略1倍分の位相差で階段状に区分けした時の段差高さを示した図である。
まず、色収差補正素子17は、Blu−ray Disc1を記録又は再生する光学系中にのみに配置され、Blu−ray Disc用の第1レーザー光L1に対して色収差を補正する機能を備えており、凹レンズ17Aと凸レンズ17Bと凹レンズ17Cとを貼り合わせて形成する際に、先の表2に示したように凹レンズ17Aと凸レンズ17Bの貼り合わせ面が球面で半径4.5mmに設定され、且つ、凸レンズ17Bと凹レンズ17Cの貼り合わせ面が球面で半径−4.5mmに設定されている。この際、凹レンズ17A及び凹レンズ17CはS−TIH11(OHARA製光学ガラス)を用い、凸レンズ17BはS−LAH53(OHARA製光学ガラス)を用いている。
次に、図2に示した如く、実施例の要部となる回折光学素子20は、Blu−ray Disc1と、DVD2との基板厚さの異なりにより発生する球面収差を補正する機能を備えている。
上記した回折光学素子20は、光透過性を有する透明なBK7(ホウケイ酸クラウンガラス…HOYA製光学ガラス)とか、石英基板とか、透明樹脂などを用いて一体的に形成されており、この実施例では先の表2に示したようにBK7を用いている。
また、回折光学素子20は、対物レンズ21(図1)と対向する上面20a側で光軸が通る中心点“0”を中心にした所定の内周領域径φD1内に非球面と回折面とを合成して階段状に突出させた内周側階段状回折パターン部20a1が輪帯状(リング状)に形成され、且つ、この内周側階段状回折パターン部20a1より外側で少なくとも所定の外周領域径φD2内に回折パターン部のない外周側平坦部20a2が内周側階段状回折パターン部20a1の高さよりも低い高さで輪帯状(リング状)に形成されており、内周側階段状回折パターン20a1でDVD用の第2レーザー光L2に対して球面収差が補正でき、且つ、外周側平坦部20a2でBlu−ray Disc用の第1レーザー光L1に対して色収差に関する補正ができるようになっている。この際、内周側階段状回折パターン部20a1が形成される所定の内周領域径φD1はφ2.2mmに設定され、且つ、外周側平坦部20a2が形成される所定の外周領域径φD2はφ3.0mmに設定され、先に表1で示したように対物レンズ21(図1)の瞳径がφ3.0mmであるので、この瞳径の全面をカバーできるようになっている。更に、回折光学素子20の下面20bから内周側階段状回折パターン部20a1の階段の最上段までの合計厚みTが先に示した表2から1mmに設定されている。
より具体的に説明すると、まず、回折光学素子20の内周領域に形成した内周側階段状回折パターン部20a1は、先に数1で示した非球面多項式に先の表5で示した非球面係数A〜Aを代入して非球面を求めると共に、第1レーザー光L1の基準波長λ1と同じ値(408nm)の波長を設計波長λとして、先に数2で示した位相関数Φ(h)に先の表4で示した2次から8次の位相関数係数B〜Bを代入して図4に示した位相関数曲線を求めて、この内周側位相関数曲線中で半径が1.2mmの範囲以内の曲線に基づいて階段の段差高さを設計波長λの略m(但し、mは自然数)倍分の位相差に設定して回折面を求め、最終的に非球面と回折面とを合成して光軸が通る中心点“0”を中心にした複数段の階段を対物レンズ21側に向けて突出形成している。
この際、回折光学素子20の内周側階段状回折パターン部20a1は、非球面と回折面でBlu−ray Disc用の第1レーザー光L1に対して球面収差が最小となり、且つ、第1レーザー光L1の基準波長λ1に対しては何等の作用もしないように階段の段差高さが設定されている一方、DVD用の第2レーザー光L2に対して球面収差が補正できるように階段の半径方向のピッチが設定されている。
即ち、回折光学素子20の内周側階段状回折パターン部20a1の実際の形状は、mを自然数として、設計波長λの略整数倍となる位相幅で、離散値(量子化)した階段形態となり、これにより階段の段差高さは光路長の差が設計波長λ(408nm)の、略m倍分の位相差となる高さとする。こうすると、実質的に回折光学素子20の内周側階段状回折パターン部20a1を透過した基準波長λ1が408nmの第1レーザー光L1に対して波面は変化が生じず、第1レーザー光L1の波長が変化した場合は、位相構造に応じた波面変化が生じる。
例えば、図4に示した位相関数曲線において、横軸を回折光学素子20の半径と等価な光軸からの高さh(mm)で示し、且つ、縦軸を2πラジアンを1波長(1λ)とした位相(λ)で示した際に、連続的なスムーズな位相関数曲線の値を、離散的な値に近似させる場合に、両者の誤差(量子化誤差と言える)は、波面の誤差となり、主として回折損失になる。具体的には光透過率が多少下がるのであるが、Blu−ray Disc1に対応した第1レーザー光L1の基準波長λ1の近傍では、波長の変化範囲が小さいことから、この低下は小さく実用上問題はない。また、波面誤差によって対物レンズ21の作るスポットへの影響は、輪帯構造がかなり細かいため、高次成分の収差と見なすことができるため、ほとんど生じず、無視することができる。
この際、上記したmの値を例えば1に設定すると、回折光学素子20の内周側階段状回折パターン部20a1中で階段の段差高さが設計波長λの略1倍分の位相差に設定され、且つ、位相関数曲線と1λ,2λ,3λ,……の横線とが交差する点の間の距離で階段の半径方向のピッチが設定されて、1次構造の内周側階段状回折パターン部20a1が得られる。
そして、回折光学素子20にBK7を用いた時に、このBK7に対して基準波長λ1が408nmである第1レーザー光L1への屈折率は先に示した表4から1.52981667であるので、内周側階段状回折パターン部20a1中で階段の段差高さが設計波長λの略1倍分の位相差に設定された時に、階段の段差高さは、
0.408/(1.52981667−1)=0.77μmとなり、図5に拡大した形状で階段の高さと半径方向のピッチとが決定される。
この実施例では内周側階段状回折パターン部20a1の全体高さが例えば設計波長λに対して略7倍分の位相差の階段として形成されている。そして、内周側階段状回折パターン部20a1の階段の段差高さは、第1レーザー光L1が入射した時に略100%の回折効率が得られるようになっている。
次に、回折光学素子20の外周領域に形成した外周側平坦部20a2は、内周側階段状回折パターン部20a1の高さより低い高さで、且つ、内周側階段状回折パターン部20a1の階段の最下部よりも例えば略2λ分の位相差だけ高さを高く設定して平坦面に形成されており、これによりBlu−ray Disc用の第1レーザー光L1に対して色収差に関する補正ができるようになっているが、この理由については後で述べる。
また、回折光学素子20の外周側平坦部20a2と対向する下面20bの外周領域内には、必要に応じて第2レーザー光L2に対して対物レンズ21への開口数(NA)が0.6相当になるように制限するための第2レーザー光用開口制限部20b1がダイクロイック膜を用いてリング状に成膜されており、この第2レーザー光用開口制限部20b1は、波長選択性を有するダイクロイック膜により青色半導体レーザー11(図1)から出射した基準波長λ1=408nm±8nmの第1レーザー光L1を透過し、且つ、赤色半導体レーザー31(図1)から出射した基準波長λ2=655nm±10nmの第2レーザー光L2を遮光する特性を有している。従って、回折光学素子20の外周側平坦部20a2は、Blu−ray Disc専用領域になっており、DVD用の第2レーザー光L2に対して何等の作用も働かないようになっている。
尚、回折光学素子20の下面20bに第2レーザー光用開口制限部20b1を成膜しない場合には、DVD用の第2レーザー光L2が外周側平坦部20a2をそのまま透過するものの、この第2レーザー光L2はDVD2の信号面2b上でスポットを形成できないので何等の支障も生じない。
更に、図3に示した如く、本発明に係る回折光学素子20を一部変形させた変形例の回折光学素子20’では、回折光学素子20に対して外周側平坦部20a2上に、例えば、可視光で屈折率が2.2程度と高いZnS膜20a21を厚めに成膜し、且つ、ZnS膜20a21は吸湿性があるので、その上に可視光で屈折率が1.38程度のMgF2膜20a22を薄めに積層してコーティングしている。そして、ZnS膜20a21とMgF2膜20a22とを合わせて設計波長λの略2倍分の位相差となる厚さに設定することで、図2の回折光学素子20と等価の回折光学素子20’となり、Blu−ray Disc用の第1レーザー光L1に対して色収差に関する補正ができるようになっている。この際、ZnS膜20a21とMgF2膜20a22とを、回折光学素子20’の下面20bの外周領域に成膜しても構わない。
更に、回折光学素子20の上面20a及び/又は下面20bに反射率が0.5%以下の反射防止膜(図示せず)を成膜することで光透過率が98%以上になっている。
ここで、再び図1に戻り、実施例の要部となる対物レンズ21は、Blu−ray Disc用として設計されたものであり、硝材として例えば先の表2に示したようにNBF1(HOYA製光学ガラス)を用いて、回折光学素子20と対向する第1面21aを先に数3で示した非球面多項式に先の表7で示した非球面係数A’〜A’12を代入して非球面に形成すると共に、Blu−ray Disc1又はDVD2と対向する第2面21bも先に数3で示した非球面多項式に先の表8で示した非球面係数A’〜A’10を代入して非球面に形成している。
また、基準波長λ1が408nmの第1レーザー光L1によりBlu−ray Disc1を記録又は再生するように無限共役で最適に設計した対物レンズ21は、先の表1に示したように、青色半導体レーザー11(図1)から出射した第1レーザー光L1の基準波長λ1を例えば408nmに設定し、且つ、開口数(NA)が0.85であり、焦点距離が1.7647mmであり、入射瞳直径(瞳径)が3.0mmのものを使用している。 この際、先の表2に示したように、対物レンズ21の第1面21aの頂点における曲率半径は1.456112mmであり、第2面21bの頂点における曲率半径は−5.152968mmであり、対物レンズ21のレンズ厚さが2.472908mmである。また、対物レンズ21のBlu−ray Disc1への作動距離は先の表2に示したように0.400952mmであり、一方、対物レンズ21のDVD2への作動距離は先の表3に示したように0.156689mmである。
ここで、実施例における光学系を用いた時の動作について説明する。
図6はBlu−ray Discでの光路図、
図7はBlu−ray Discでの縦収差図、
図8は回折光学素子の外周側平坦部に入射した第1レーザー光の基準波長が変化した場合の回折光学素子全体の波面収差値を示した図、
図9は回折光学素子の波面収差を示した図、
図10はDVDでの光路図、
図11はDVDでの縦収差図である。
まず、実施例において、Blu−ray Disc1を記録又は再生する場合に、Blu−ray Discでの光路図を図6に示すと共に、Blu−ray Discでの縦収差図を図7にそれぞれ示す。
即ち、図6に示した光学系によりBlu−ray Disc1を記録又は再生する場合には、青色半導体レーザー11(図1)側に凹レンズ17Aと凸レンズ17Bと凹レンズ17Cとを貼り合わせて形成した色収差補正素子17が配置されている。
そして、青色半導体レーザー11(図1)から出射した第1レーザー光L1をコリメータレンズ14(図1)で平行光にし、この第1レーザー光L1の平行光を色収差補正素子17を介して回折光学素子20の下面20bの内周領域及び外周領域に入射させている。ここで、回折光学素子20の下面20bには、外周領域にダイクロイック膜を用いて第2レーザー光用開口制限部20b1がリング状に成膜されているものの、第1レーザー光L1を下面20bの内周領域と第2レーザー光用開口制限部20b1とをそのまま透過させた後、更に、上面20aに形成した内周側階段状回折パターン部20a1と外周側平坦部20a2とをそのまま透過させ、平行光のままで対物レンズ21の第1面21aに入射させている。
この際、回折光学素子20の内周側階段状回折パターン部20a1は、先に図2を用いて説明したように、内周側階段状回折パターン部20a1の階段の段差高さが設計波長λの略1倍分の位相差(又は略m倍分の位相差…図示せず)に設定されているので、第1レーザー光L1に対して何等も作用せずに0次回折光を対物レンズ21に入射させ、一方、外周側平坦部20a2は基準波長λ1が408nmの第1レーザー光L1に対して波面変化が生じないものの、基準波長λ1に対して僅かに変化した波長に対して色収差を補正している。
尚、図3に示した変形例の回折光学素子20’の場合も、第1レーザー光L1に対して回折光学素子20と同様に作用する。
そして、対物レンズ21で絞った第1レーザービームをBlu−ray Disc1のレーザービーム入射面1aから入射させてディスク基板厚さが0.1mmの信号面1b上に集光している。
この場合、Blu−ray Disc1での縦収差図を物レンズ21への開口数(NA)=0.85に相当する光線高さである1.5mmの光線高さまでに亘って図7に示す。この図7において、第1レーザー光L1の基準波長λ1が408nmである場合に加えて、基準波長λ1から僅かに変化して411nmである場合の縦収差も描いてある。軸上光線の結像位置の差が軸上色収差であり、411nmでの縦収差の曲がりが波長誤差による球面収差を表している。
とくに、回折光学素子20は外周領域に外周側平坦部20a2を設けているので、第1レーザー光L1の波長が408nmである時には何ら影響が無く、一方、411nmにおいては色収差が補正されている。
ここで、実施例におけるBlu−ray Discでの光路図の効果を説明するにあたって、比較例として回折光学素子を設けない時に色収差補正素子の貼り合わせ面を設定すると、凹レンズと凸レンズと凹レンズとを貼り合わせて形成した際に貼り合わせ面の半径が±3.8mmとなり、この±3.8mmの半径はかなり深い形状をしていて、かなり製作しにくい色収差補正素子であると言える。
これに対して、実施例では、回折光学素子20を設けているので、色収差補正素子17の貼り合わせ面の半径は先の表2に示したように±4.5mmであり、上記した比較例と比較すると、色収差補正素子17の貼り合わせ面の半径を約20%程度緩和することができる。従って、ここで示した色収差補正素子17の貼り合わせ面の半径の緩和は、色収差補正素子17の製作がし易くなり非常に有効である。
ここで、上記した回折光学素子20の内周側階段状回折パターン部20a1は、階段状となっているため、基準波長以外の波長のレーザー光の場合は、波面の誤差となり、主として回折損失になる。具体的には透過率が多少下がるが、Blu−ray Disc用の第1レーザー光L1の基準波長λ1の近傍では、波長の変化範囲が小さいことから、この低下は小さく実用上問題はない。DVD2においては、より大きな光量的に数10%のオーダーの回折損失が生じるが、これは考慮した設計で充分補える範囲である。
そして、先に図2(又は図3)を用いて説明した回折光学素子20(又は20’)の内周側階段状回折パターン部20a1で階段の深さが最も深いところと浅いところでは7λ分の位相差であるため、第1レーザー光L1の基準波長λ1=408nmが、1%(±4nm)変化した場合、内周側階段状回折パターン部20a1を通った第1レーザー光L1は7%の位相差を生じ、これは波長変化による色収差の影響が大きいことを意味する。
ところで、DVD2での球面収差を考えなくてよい回折光学素子20の外周側平坦部20a2は、位相構造に制約はない。回折光学素子20の作製の容易性から外周側平坦部20a2は平坦にするのが望ましい。
そして、回折光学素子20の外周側平坦部20a2で与える位相差は、第1レーザー光L1の基準波長λ1の略整数倍分の位相差であれば波面に影響を与えない。一方、第1レーザー光L1の基準波長λ1の略整数倍分の位相差でない場合に、外周側平坦部20a2を通った第1レーザー光L1は内周側階段状回折パターン部20a1を通った第1レーザー光L1との間に波面変化が生じる。そこで、波長変化による影響を最小化するように外周側平坦部20a2の構造を定める必要がある。
図8は、第1レーザー光L1の波長が基準波長λ1=408nmから1%(4nm)、2%(8nm)変化した場合に、外周側平坦部20a2の位相差を変化させ、内周側階段状回折パターン部20a1と外周側平坦部20a2とを合わせた回折光学素子20全体の波面収差を示している。
この図8から本実施例の場合、回折光学素子20の外周側平坦部20a2の位相構造を設計波長λの略2倍分の位相差とするのが最も望ましく、内周側階段状回折パターン部20a1と合わせて波面収差を最小にでき、波長が1%ずれたときに生じる波面収差は0.014λrmsである。外周側平坦部20a2の位相構造はこれに限定されることなく、波面収差にそれほど差のない設計波長λの略1倍分の位相差や略3倍分の位相差であっても良い。また、最適な位相構造は波長変化に依存しない。
また、回折光学素子20の内周側階段状回折パターン部20a1の位相構造によって、回折光学素子20全体の波面収差を低減する外周側平坦部20a2の位相構造が変化する。最も全体の波面収差を小さくするためには、回折光学素子20の内周側階段状回折パターン部20a1に任意の波長のレーザー光が入射したとき、発生する球面収差をW40、デフォーカスによる軸上色収差をW20とすると、下記の数4を満たす波面収差となるように外周側平坦部20a2の位相構造を決めることである。
Figure 2005209298
ここで、図9は上記した数4で表される波面収差を簡易的に示したものであり、数4中で、aをディスク基板厚さで決まる一定値、bを任意の値とした時に、bの値のみを変化させときの波面変化を示している。そして、図9に示したように、回折光学素子20の内周側階段状回折パターン部20a1で生じる平均波面値で外周側平坦部20a2の位相構造を決めることで、任意の波長のレーザー光が入射した場合に、回折光学素子20全体の波面収差を最小にできる。
より具体的には、図9において、任意の波長のレーザー光としてBlu−ray Disc用の第1レーザー光L1を回折光学素子20に入射させた時に、a>bの場合には、回折光学素子20の外周側平坦部20a2の高さが内周側階段状回折パターン部20a1を出射する際の第1レーザー光L1の平均波面値W1に近い値で設計波長λの略整数倍分の位相差に設定されており、a=bの場合には、内周側階段状回折パターン部20a1を出射する際の第1レーザー光L1の平均波面値W2に近い値で設計波長λの略整数倍分の位相差に設定されており、更に、a<bの場合には、内周側階段状回折パターン部20a1を出射する際の第1レーザー光L1の平均波面値W3に近い値で設計波長λの略整数倍分の位相差に設定されている。
このような位相構造の回折光学素子20により、第1レーザー光Lの基準波長λ1では波面収差が生じず、波長がずれた場合であっても色収差を最小に低減することができる。この位相差を与える方法(位相構造)としては、外周領域の深さで制御するのが簡便である。
尚、本発明の趣旨を逸脱しないものであれば、本実施例に限定されることなく、回折次数は他の次数であっても良い。
次に、実施例において、DVD2を記録又は再生する場合に、DVDでの光路図を図10に示すと共に、DVDでの縦収差図を図11に示す。
即ち、図10に示した光学系によりDVD2を記録又は再生する場合に、赤色半導体レーザー31(図1)側には色収差補正素子が配置されてなく、赤色半導体レーザー31(図1)から出射した第2レーザー光L2をコリメータレンズ34(図1)で平行光にし、この第2レーザー光L2の平行光を回折光学素子20の下面20bの外周領域に形成した第2レーザー光用開口制限部20b1により遮光して対物レンズ21への開口数(NA)が0.6相当になるように制限させると共に、第2レーザー光L2の平行光を回折光学素子20の下面20bの内周領域のみに入射させている。この後、回折光学素子20の内周側階段状回折パターン部20a1で回折させた1次回折光により球面収差を補正しながら対物レンズ21の第1面21aに入射させている。
そして、対物レンズ21で絞った第2レーザービームをDVD2のレーザービーム入射面2aから入射させてディスク基板厚さが0.6mmの信号面2b上に集光している。
この場合、対物レンズ21はBlu−ray Disc用として設計されているので、赤色半導体レーザー31(図1)から出射した波長λ2が655nmの第2レーザー光L2に対して球面収差が大きくなるものの、回折光学素子20の内周側階段状回折パターン部20a1により球面収差を補正しているので、DVD2への記録又は再生に支障をきたさない。
更に、図11で示したDVDでの縦収差図では対物レンズ21の瞳径である光線高さ1.5mmまで示している。この図11より明らかなように、DVD2の場合には光線高さの高い点においては、球面収差が残留している。しかし、この高さの光線はφ2.2mmより外側(NA0.6以上)の領域なので、DVD2においては、不要であるから問題ない。
本発明に係る光ピックアップ装置の全体構成を示した図である。 本発明に係る回折光学素子を説明するための縦断面図である。 本発明に係る回折光学素子を一部変形させた変形例を示した縦断面図である。 本発明に係る回折光学素子の内周側階段状回折パターン部を作製する際に用いられる位相関数Φ(h)により求めた位相関数曲線を説明するための図である。 図4で得られた位相関数曲線と表5の非球面係数とに基づいて回折光学素子の内周側階段状回折パターン部の階段を設計波長λの略1倍分の位相差で階段状に区分けした時の段差高さを示した図である。 Blu−ray Discでの光路図である。 Blu−ray Discでの縦収差図である。 回折光学素子の外周側平坦部に入射した第1レーザー光の基準波長が変化した場合の回折光学素子全体の波面収差値を示した図である。 回折光学素子の波面収差を示した図である。 DVDでの光路図である。 DVDでの縦収差図である。 従来例1の光ピックアップ装置の光学系を模式的に示した図である。 従来例2の光ピックアップ装置の光学系を模式的に示した図である。 従来例3の光ピックアップ装置の光学系を模式的に示した図である。 従来例4の光ピックアップ装置の光学系を模式的に示した図である。 従来例5の光ピックアップ装置の光学系を模式的に示した図である。 従来例6の光ピックアップ装置の光学系を模式的に示した図である。
符号の説明
1…第1光記録媒体(Blu−ray Disc)
1a…レーザービーム入射面、1b…信号面、
2…第2光記録媒体(DVD)、2a…レーザービーム入射面、2b…信号面、
5…光ディスク駆動装置、6…スピンドルモータ、7…ターンテーブル、
10…本発明に係る光ピックアップ装置、
11…第1レーザー光源(青色半導体レーザー)、
12…回折格子(グレーティング)、13…偏光ビームスプリッタ、
14…コリメータレンズ、
15…球面収差補正手段、
15A…凹レンズ、15B…凸レンズ、15C…アクチュエータ、
16…波長板、
17…色収差補正素子、
17A…凹レンズ、17B…凸レンズ、17C…凹レンズ、
18…第1,第2レーザー光分離手段(ダイクロイックプリズム)、
19…レンズホルダ、
20…本発明に係る回折光学素子、20a…上面、
20a1…内周側階段状回折パターン部、
20a2…外周側平坦部、
20b…下面,20b1…第2レーザー光用開口制限部、
20’…本発明に係る変形例の回折光学素子、
20a21…ZnS膜、20a22…MgF2膜、
21…対物レンズ、
22…フォーカスコイル、23…トラッキングコイル、
24…シリンドリカルレンズ、25…第1光検出器、
30…DVD用集積デバイス、31…第2レーザー光源(赤色半導体レーザー)、
32…第2光検出器、33…ホログラム素子、
L1,L2…第1,第2レーザー光、
λ1,λ2…第1,第2レーザー光の各基準波長、
λ…回折光学素子の設計波長、
d1,d2…第1,第2光記録媒体の基板厚さ。

Claims (4)

  1. 第1光記録媒体と、前記第1光記録媒体よりも記録密度が低く且つ前記第1光記録媒体よりも基板厚さが厚い第2光記録媒体と、前記第1,第2光記録媒体の各信号面を組み合わせて一体的に積層した組み合わせ型光記録媒体とを選択的に記録又は再生する光ピックアップ装置において、
    前記第1光記録媒体に対応して波長が450nm以下の第1レーザー光を出射させる第1レーザー光源と、
    前記第2光記録媒体に対応して前記第1レーザー光よりも波長が長い第2レーザー光を出射させる第2レーザー光源と、
    前記第1レーザー光に対して色収差を補正するための色収差補正素子と、
    前記第1レーザー光と前記第2レーザー光とを分離する第1,第2レーザー光分離手段と、
    前記第1,第2光記録媒体の基板厚さの異なりによって生じる球面収差を補正するための回折光学素子と、
    第1光記録媒体用として開口数(NA)が0.75以上に設定され、且つ、互いに対向する第1,第2面のうち少なくとも一方の面が非球面に形成されて、前記第1,第2レーザー光を前記第1,第2光記録媒体の各信号面に集光させる対物レンズとを少なくとも備え、
    前記回折光学素子は、光軸が通る中心点を中心とした所定径の内周領域内に非球面と回折面とを合成して階段状に突出させた内周側階段状回折パターン部が輪帯状に形成され、且つ、前記内周側階段状回折パターン部より外周側の外周領域に回折パターン部のない外周側平坦部が前記内周側階段状回折パターン部の高さよりも低い高さで輪帯状に形成されることで、前記内周側階段状回折パターン部で前記第1,第2光記録媒体の基板厚さの異なりによって生じる球面収差を補正すると共に、前記外周側平坦部で前記第1レーザー光に対して色収差を補正することを特徴とする光ピックアップ装置。
  2. 請求項1記載の光ピックアップ装置において、
    前記回折光学素子は、前記第1レーザー光の基準波長λ1と同じ値の波長を設計波長λに設定した際、前記内周側階段状回折パターン部の階段の段差高さが前記設計波長λの略m(但し、mは自然数)倍分の位相差に設定され、且つ、前記外周側平坦部の高さが前記内周側階段状回折パターン部を出射する際の前記第1レーザー光の平均波面値に近い値で前記設計波長λの略整数倍分の位相差に設定されていることを特徴とする光ピックアップ装置。
  3. 基板厚さが薄い第1光記録媒体に対応して波長が450nm以下の第1レーザー光と、前記第1光記録媒体よりも基板厚さが厚い第2光記録媒体に対応して第1レーザー光よりも波長が長い第2レーザー光とを用いて、前記第1光記録媒体と前記第2光記録媒体とを選択的に記録又は再生する際に、前記第1,第2光記録媒体の基板厚さの異なりによって生じる球面収差を補正するための回折光学素子であって、
    光軸が通る中心点を中心とした所定径の内周領域内に非球面と回折面とを合成して階段状に突出させた内周側階段状回折パターン部が輪帯状に形成され、且つ、前記内周側階段状回折パターン部より外周側の外周領域に回折パターン部のない外周側平坦部が前記内周側階段状回折パターン部の高さよりも低い高さで輪帯状に形成されることで、前記内周側階段状回折パターン部で前記第1,第2光記録媒体の基板厚さの異なりによって生じる球面収差を補正すると共に、前記外周側平坦部で前記第1レーザー光に対して色収差を補正することを特徴とする回折光学素子。
  4. 請求項3記載の回折光学素子において、
    前記第1レーザー光の基準波長λ1と同じ値の波長を設計波長λに設定した際、前記内周側階段状回折パターン部の階段の段差高さが前記設計波長λの略m(但し、mは自然数)倍分の位相差に設定され、且つ、前記外周側平坦部の高さが前記内周側階段状回折パターン部を出射する際の前記第1レーザー光の平均波面値に近い値で前記設計波長λの略整数倍分の位相差に設定されていることを特徴とする回折光学素子。

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* Cited by examiner, † Cited by third party
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KR20150006172A (ko) * 2013-07-08 2015-01-16 엘지이노텍 주식회사 회절광학소자 및 이를 포함하는 광학장치

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