JP2005350686A - 機構部品 - Google Patents

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崇徳 中澤
Ikuo Shoji
郁夫 荘司
Sakahito Kobayashi
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Abstract

【課題】 軽量、高硬度で耐磨耗性に優れ、組み合わされて使用されるポリマー系材料で形成された部品の磨耗の抑止を可能とする機構部品を提供する。
【解決手段】 切削加工されたアルミニウム合金、チタン又はチタン合金からなる基材表面に、無電解Ni−Pめっき及び熱処理を施して表面粗さが基材の表面粗さ以下である無電解Ni−Pめっき皮膜を被覆する。
【選択図】 なし

Description

本発明は、機構部品に係り、特に樹脂部品と組み合わされて使用されるアルミニウム合金を用いた機構部品に関する。
ラジコンカーや各種電子機器の歯車などには、軽量化、寸法安定性、成形性などの観点から、ポリマー系材料あるいはアルミニウム合金が使用され、ポリマー系材料で形成された歯車とアルミニウム合金で形成された歯車とが噛み合う構造をとることが多い。アルミニウム合金は一般に、鋼などに比べて硬さが低く、摺動部品等に適用すると耐磨耗性に劣る。このような構造の歯車等の部品の耐磨耗特性を向上させるためには、アルミニウム合金の表面硬化処理が有効な方法の一つとして知られている。
例えばラジコンカーに使用されているアルミニウム合金においては、表面処理方法としてアルマイト処理が施され、表面に多孔質アルミナ層を形成する技術が適用されてきた。ところが、このアルマイト処理済みのアルミニウム合金の表面は、アルミニウムの未処理面よりも平滑性に劣るため、例えばアルマイト処理アルミニウム合金製のピニオンをポリアセタール樹脂材などのポリマー系材料で形成されたピニオンと噛み合わせて使用した場合などには、ポリアセタール樹脂材で形成されたピニオンが磨耗による劣化を起こし易いという問題がある。
アルマイト処理以外に、これまでに開発されたアルミニウム合金の表面硬化処理方法としては、表面にニッケルめっきを施してレーザ照射により表面硬化層を形成する方法や、表面にFe・Cr合金めっきを施し、窒化性ガス雰囲気中にて500℃程度の温度で熱処理して窒化物の硬化層を形成する方法が検討されているが、いずれも歯車のような複雑な形状部品に対しては適用が困難であり、特に後者の方法では、熱処理温度が高いため、寸法安定性を保持し得ない等の問題がある。
上記以外にも、数μm程度のBNやSiC等の硬化物を分散させた無電解めっき層を形成する分散めっき法が提案されている(例えば、非特許文献1参照)が、表面硬化層を形成するうえでは有用なものの、数μm程度の粒径を有する硬化物の添加が磨耗特性を劣化させる一因となることが明らかとなっている。
上記に関連して、金型に適した硬度、表面平滑性の向上を目的として、Al−Zn−Mg系アルミニウム合金に無電解Ni−Pめっき皮膜を形成する技術が開示されている(例えば、特許文献1参照)。アルミニウム合金と噛み合わされた相手材料の磨耗は、アルミニウム合金の表面硬度が高いほど小さくなるが、従来の方法に則して単に無電解めっきを施す方法によるのみでは、摺動時の磨耗を防ぐある程度の厚み(例えば10μm以上)を持たせた場合に、粒成長が派生して表面性が低下しやすく、アルミニウム合金自体の硬度が得られてもこれと噛み合う相手材料であるポリマー系材料の磨耗については、必ずしも回避することはできない。
また、アルミニウム合金製の歯車を電気めっきする技術もある(例えば、特許文献2参照)。しかしながら、歯車やギア、送りねじ等の機構部品を電気めっきする場合には、電極を接触させる必要があるため、電界の分布にむらが生じ、めっき皮膜の厚みが不均一になってしまい、結果的に磨耗防止の点では不充分である。
一方、特にアルミニウム合金やチタン材については、自動車、OA機器、航空機等の機械部品への使用も省エネルギー対策の点で非常に有効であるとして期待されているが、かかる用途にアルミニウム合金等を使用する場合においても、優れた耐磨耗性が要求されている。
特開平5−37806号公報 特開平9−31688号公報 NPシリーズ硬い表面−作り方と評価法−、星野重夫著、槇書店(1998)
以上のように、アルミニウム合金を表面処理して硬度を高め、耐磨耗性を向上させる方法には既に提案された技術があるが、表面処理されたアルミニウム合金やチタン材を用い、これと噛み合わされて使用されるポリマー系材料製の部品の磨耗を抑止し、しかも送りねじや歯車等の複雑な構造の機構部品への適用が可能で寸法安定性をも確保できる表面処理法については、未だ確立された方法がないのが実状である。
本発明は、上記に鑑みなされたものであり、軽量、高硬度でアルミニウム合金、チタン又はチタン合金に由来の表面性を損なわない平滑さを有し、耐磨耗性に優れると共に、組み合わされて使用されるポリマー系材料で形成された部品の磨耗抑止を可能とする機構部品を提供することを目的とし、該目的を達成することを課題とする。
上記目的を達成するために、本発明の機構部品は、ポリマー系材料で形成された部品と組み合わされて使用されるものであり、切削加工されたアルミニウム合金、チタン又はチタン合金からなる基材表面に、被覆された後、硬度を高める熱処理が施され、かつ表面粗さが基材の表面粗さ以下とされた無電解Ni−Pめっき皮膜を被覆して構成したものである。
本発明においては、切削加工により所望形状とされたアルミニウム合金、チタン又はチタン合金(以下、アルミニウム合金等ともいう。)を基材とし、その表面を、表面粗さが基材の表面粗さ以下である無電解Ni−Pめっき皮膜で被覆し、被覆後これに熱処理を施すことで、基材が本来有する平滑さを保持しつつ基材の硬度をより高めることができるので、アルミニウム合金等で構成された機構部品自体の耐磨耗性が向上すると共に、組み合わされて使用されるポリマー系材料で形成された部品の耐磨耗性を飛躍的に向上させることができる。また、熱処理によって硬度を所望の程度に制御することが可能である。本発明は、ピニオンその他の歯車、ギア、プーリー、送りねじ(リードスクリューを含む)、及びカム等の伝動用機械要素部品や、ジョイント等の締結用機械要素部品、シャフト等の摺動用機械要素部品など、緻密で複雑な構造を有する機構部品への適用が可能であり、寸法安定性を損なうこともない。さらに、基材にアルミニウム合金、チタン又はチタン合金を用いるので、軽量の機構部品に構成できる。
本発明の機構部品の硬度は、ビッカース硬度で600Hv以上であるのが望ましい。送りねじ、歯車などの機構部品は、硬ければ硬いほどこれと組み合わされれて使用される相手材料の磨耗が抑えられるので、硬度は高いほどよく、特に600Hv以上とすることによって、相手材料にポリマー系材料を用いた場合の磨耗を飛躍的に低減でき、耐久性を効果的に向上させることができる。
アルミニウム合金等の基材表面を覆う無電解Ni−Pめっき皮膜の表面粗さは、平均表面粗さで1.6μm以下であるのが効果的である。基材の切削加工された表面の表面粗さは一般に1.6μm近傍であるため、その表面を覆う皮膜の平均表面粗さを1.6μm以下とすることで、基材が本来持つ表面粗さ以下に保持することができるので、表面平滑性に優れ、緻密で複雑な機構部品に皮膜形成することに起因する相手材料の磨耗による劣化を招来することもない。
無電解Ni−Pめっき皮膜の厚さは、10μm以上の範囲とすることが効果的である。上記範囲の厚さに皮膜形成されるので、基材自体の耐磨耗効果が高く磨耗による変形を派生しにくく、組み合わされるポリマー系材料の磨耗の低減に有効な高硬度を得ることができる。
無電解Ni−Pめっき皮膜には、アルミニウム合金等の基材の表面粗さ以下の大きさの硬化物を分散させることができる。一般に皮膜中にBNやSiC等の硬化物(通常は数μm)を分散状態で含有することで皮膜硬度(すなわち機構部品の硬度)をより向上させることができるが、この硬化物を基材の表面粗さ以下の大きさで用いることで、切削加工後の表面に存在する粗さ、つまり粗さを構成する窪みの中に硬化物が入り込むように皮膜形成できるので、硬化物を含有するめっき液を用いて基材が本来持つ平滑な表面を保持しながら、より高い硬度を得ることができる。したがって、従来のように硬化物の影響を受けて、相手材料の磨耗による劣化を派生することもない。
本発明の機構部品は、歯車、プーリー、送りねじ(リードスクリューを含む)、及びカム等の伝動用の機械要素部品、ジョイント等の締結用の機械要素部品、又は樹脂製スリーブと組み合わされるシャフト等の摺動用の機械要素部品として好適である。これらの機械要素部品は緻密で複雑な構造を有する機構部品であり、このような構造を有する場合において、高硬度で寸法安定性に優れると共に、組み合わされて使用されるポリマー系材料で形成された相手部品の磨耗を抑止する均一厚の皮膜で被覆された部品に構成するのに有効である。
本発明によれば、軽量、高硬度でアルミニウム合金、チタン又はチタン合金に由来の表面性を損なわない平滑さを有し、耐磨耗性に優れると共に、組み合わされて使用されるポリマー系材料で形成された部品の磨耗抑止を可能とする機構部品を提供することができる。
本発明の機構部品は、切削加工されたアルミニウム合金、チタン又はチタン合金からなる基材の表面に、表面粗さが基材の表面粗さ以下の無電解Ni−Pめっき皮膜を被覆した後、硬度を高める熱処理を施して構成されたものである。
以下、本発明の機構部品について、切削加工されたアルミニウム合金からなる基材(以下、アルミ合金基材ともいう。)の表面に、無電解Ni−Pめっき皮膜をその表面粗さがアルミ合金基材の表面粗さ以下となるように被覆して構成されたピニオンを一例に説明する。
このピニオンは、以下のようにして作製されるものである。まず、アルミ合金基材を所望形状のピニオンに切削加工し、加工成形されたピニオンに脱脂処理、水洗処理を施して洗浄する。その後、Ni−Pめっき液の浴中に浸漬させて無電解Ni−Pめっきを施して表面全体に無電解Ni−Pめっき皮膜を被覆し、被覆終了後に浴中から取り出し、さらに洗浄する。洗浄の後、熱処理を施して硬化する。このとき、無電解Ni−Pめっきを施す前に、切削加工されたアルミ合金基材との密着性を向上させるために、常法によりアルミ合金基材の表面を亜鉛で置換被覆するジンケート処理を施してもよい。
ピニオンを構成するアルミ合金基材としては、アルミニウム合金であれば特に制限はなく、アルミニウムを主成分とし、微量の異元素(ケイ素、鉄、マンガン、銅、マグネシウム、クロム、亜鉛、ビスマス、二ッケル、チタンなど)を含む合金から適宜選択して使用することができる。具体的な例として、JIS A 2011、JIS A 2017、JIS A 2024、JIS A 5056、JIS A 6061、JIS A 6063、JIS A 7075、JIS A 5052、JIS A 5083などの従来公知の合金素材が好適に挙げられる。
アルミ合金基材の表面粗さは、所望の形状に切削加工したときの加工条件によっても異なるが、ポリマー系材料で形成されたピニオンと組み合わされて使用されることを考慮すると、平均表面粗さ(Ra)で、1.6μm以下であるのが好ましく、0.5μm以下であるのがより好ましい。
平均表面粗さRaは、JIS B 0601-1994に基づく算術平均表面粗さRaであり、表面のプロファイルにおける凹凸の大きさと頻度を表す。本発明に係る平均表面粗さRaは、表面粗さ測定装置(例えば(株)小坂研究所製のサーフコーダSE−3500)を用いて容易に求めることができる。
アルミ合金基材の表面は、無電解Ni−Pめっき皮膜で被覆され、この無電解Ni−Pめっき皮膜は、P(リン)含有のニッケルめっき液(Ni−Pめっき液)を用いた無電解ニッケルめっき法によって形成される。無電解ニッケルめっき法は、ニッケル塩の水溶液に還元剤として次亜燐酸ソーダを加え、適当な緩衝剤を用いてpH調整しためっき浴中に浸漬させて表面を皮膜する方法である。具体的には、予めアルミ合金基材に対し、脱脂、水洗等の処理やアルミ合金基材の表面を亜鉛で置換被覆するジンケート処理、及び必要に応じて常法によりエッチング、デスマット、酸処理等の他の処理を施した後、所望の組成に調製されたNi−Pめっき液浴の中に浸漬して無電解Ni−Pめっきを施すことによって好適に行なうことができる。
このとき、形成される無電解Ni−Pめっき皮膜の表面粗さが、被めっき体であるアルミ合金基材の表面粗さ以下となるように無電解Ni−Pめっきを行なう。表面粗さは、上記同様に平均表面粗さRaを基準とすることができる。これにより、アルミ合金基材の表面粗さ以下の平滑な表面に構成され、組み合わされて使用されるポリマー系材料で形成されたピニオンの磨耗の低減に有効である。
中でも特に、無電解Ni−Pめっき皮膜の表面粗さは、既述のアルミ合金基材の切削加工面のRa、すなわちアルミ合金基材の加工表面の凹凸の大きさを超えない範囲とする観点から、平均表面粗さRaで1.6μm以下が好ましく、0.5μm以下がより好ましい。Raが1.6μmを超える(例えば2〜3μmである)と、組み合わされて使用されるポリマー系材料で形成されたピニオンの磨耗を回避できないことがある。
無電解Ni−Pめっき皮膜の厚さとしては、10μm以上が好ましく、15μm〜100μmが特に好ましい。厚さを上記範囲とすることで、アルミ合金基材の耐磨耗性の向上に効果的であると共に、より高い硬度が得られてこれと組み合わされるポリマー系材料で形成されたピニオンの耐磨耗性をも飛躍的に向上させることができる。
次に、Ni−Pめっき液について説明する。本発明に係るNi−Pめっき液は、ニッケル(Ni)及びリン(P)を必須成分とする以外に組成上特に制限はなく、ニッケルイオン供給材としての水可溶性ニッケル塩(例えば、硫酸ニッケル、塩化ニッケル、酢酸ニッケル、スルファミン酸ニッケル)、還元剤(例えば次亜リン酸ナトリウム)、pH調整剤(例えば、硫酸、アンモニア、リンゴ酸、クエン酸)、緩衝剤(例えば、ギ酸、酢酸、コハク酸等のナトリウム塩)、及びその他安定剤、促進剤などを適宜選択して構成することができる。
組成成分のうち、リン(P)の含有量(P含有量)は、高硬度が得られる点で多い方が好ましく、無電解Ni−Pめっき皮膜を形成したときの皮膜中におけるP含有量が、ニッケルの質量に対して1.5質量%以上となる量が好ましい。P含有量を上記範囲とすることで、高硬度に構成できると同時に、これと組み合わされるポリマー系材料で形成されたピニオンの耐磨耗性の向上効果をも飛躍的に高めることができる。
上記成分以外に、更にアルミ合金基材の表面粗さ以下の大きさの硬化物を分散して含有させた組成も好適である。数十μm程度の硬化物を含有した場合には一般に、硬化物に起因して相手材料の磨耗を招くが、上記範囲の大きさで用いることで、硬化物が切削加工された基材表面に存在する粗さ(窪み)の中に入り込むようにして皮膜形成されるために基材本来の平滑さを保持し、硬化物に起因する相手材料の摩耗の発生を回避しながら、硬度を更に向上させることができる。
前記硬化物としては、Si34、SiC、Al23、BNなどが挙げられ、特にSiC、BNが好適である。また、硬化物の大きさは、既述のアルミ合金基材の表面粗さに対応させて選択する必要があり、具体的には平均一次粒径で0.5μm以下が好ましく、0.1μm以下がより好ましい。硬化物は、本発明の効果を阻害しない範囲で、Ni−Pめっき液に含有することができ、ポリマー系材料で形成された相手側ピニオンの耐磨耗性に支障を来たすことなく、無電解めっき皮膜をより高硬度に構成することができる。
具体的なNi−Pめっき液の例として、塩化ニッケル30g/L、酢酸ナトリウム30g/L、及び次亜リン酸ソーダ20g/Lを含む水溶液が挙げられる。
また、Ni−Pめっき液の無電解Ni−Pめっき時における温度(浴温度)としては、90〜100℃が好適である。なお、無電解Ni−Pめっき時における浸漬時間については所望とする膜厚に合せて選択すればよい。
本発明においては、アルミ合金基材の表面に無電解Ni−Pめっき皮膜を被覆した後、被覆されたアルミ合金基材全体に熱処理を施す。この熱処理は、より高い硬度を得るために硬化するための処理であり、150〜350℃の範囲で1〜2時間加熱することにより好適に行なうことができる。硬度の向上には加熱温度が大きく影響し、200〜350℃の範囲(より好ましくは250〜350℃の範囲)で1〜2時間熱処理するのがより効果的である。加熱時間については、上記範囲のほか、大きさや材質等を考慮して、熱処理に要する範囲を適宜選択すればよい。
本発明においては、アルミ合金基材と無電解Ni−Pめっき皮膜との間の密着性を強固にする観点から、ジンケート処理や酸化処理による皮膜を予め形成するようにすることもできる。また、熱処理と共に、ガラスビーズや鉄球等の微粒子を無電解Ni−Pめっき皮膜の膜面に高速で吹き付けるショットピーニング処理を施してもよい。
上記のようにして被覆後に熱処理が行なわれた無電解Ni−Pめっき皮膜の硬度としては、高い程望ましいが、それ自体の磨耗を抑止すると同時に、無電解Ni−Pめっき皮膜を被覆したピニオンと組み合わされるポリマー系材料で形成されたピニオンの磨耗をも飛躍的に抑止するのに有効である点から、ビッカース硬度で600Hv以上であるのが好適である。ビッカース硬度が上記範囲にあると、ポリマー系材料で形成されたピニオンの磨耗をより効果的に低減することができる。
本発明に係るビッカース硬度は、薄材や表面処理材の硬さ測定に好適なマイクロビッカース硬度計、マイクロビッカース硬度計付高温顕微鏡などで測定される硬度であり、前記マイクロビッカース硬度計として、例えば(株)アカシ製のMVK−H1を用いて測定することが可能である。
本発明の機構部品は、ポリマー系材料で形成された部品と組み合わされて使用されるものである。ポリマー系材料で形成された部品には、本発明の機構部品と例えば噛み合わされる等して伝動する機構部品(例えば、ピニオンその他の歯車、ギア、プーリー、送りねじ、カムやその受動体など)、摺動する機構部品(例えばシャフトに組み合わされるスリーブなど)、又は締結する機構部品(例えばジョイントなど)が含まれる。
前記ポリマー系材料には、熱可塑性プラスチック、熱硬化性プラスチックが含まれ、例えば、ポリアセタール樹脂、フェノール樹脂、アセタール樹脂、ポリエチレン、ポリアミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリオキシメチレン等が一般的であり、本発明の機構部品の相手材料としてポリアセタール樹脂が用いられ、本発明がポリアセタール樹脂で形成された部品(ピニオンその他の歯車、ギア、カムなどの前記伝動、摺動又は締結する機構部品)と組み合わされて使用される機構部品である場合において、特に効果的に本発明の効果を奏することができる。
上記では、基材としてアルミニウム合金を用いた場合を中心に説明したが、アルミニウム合金以外のチタン又はチタン合金を用いた場合も同様である。また、ピニオン以外に、他の歯車、ギア、プーリー、ジョイント、送りねじ(リードスクリューを含む)、カムなどを作製する場合においても同様である。
本発明の機構部品は、ラジコンカー、自動車、プリンタ等のOA機器などの各種電子機器、航空機、釣り竿用リールなどの機械部品に使用するピニオンその他の歯車、ギア、ピストン、プーリー、ジョイント、送りねじ(リードスクリューを含む)、カム等の伝動用、締結用、又は摺動用の機械要素部品として好適に利用することができる。
以下、実施例により本発明を具体的に説明する。但し、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。本実施例においては、機構部品の一例としてピニオンを作製する場合を示す。
(実施例1)
基材として、JIS A 2011アルミニウム合金を用意し、これを切削加工してピニオン構造物を成形した。ここで、加工成形されたピニオン構造物の平均表面粗さ(Ra)を、表面粗さ測定装置(サーフコーダSE−3500、(株)小坂研究所製)を用いて測定したところ、Ra=0.5μmであった。
続いて、ピニオン構造物に対して脱脂、水洗、及び表面を亜鉛で置換被覆するジンケート処理を行なった後、下記組成のNi−Pめっき液1(組成中のP含有量は10質量%である。pH=4.8)中に浸漬させて、無電解ニッケルめっき法によりピニオン表面に厚さ15μmの無電解Ni−Pめっき皮膜を形成した。引き続き、Ni−Pめっき液1から取り出して水洗、乾燥させた後、250℃で2時間熱処理を行なった。
以上のようにして、JIS A 2011アルミニウム合金の表面が無電解Ni−Pめっき皮膜で被覆された本発明のピニオン(機構部品)を得た。得られたピニオンの平均表面粗さ(Ra)を上記と同様にして測定したところ、Ra=0.4μmであった。上記の切削加工後のピニオンとの比較において、本発明のピニオンはJIS A 2011アルミニウム合金に由来する表面粗さを維持した平滑な表面性を有していた。
また、上記より得たピニオンに対して、マイクロビッカーズ硬度計(MVK−H1、(株)アカシ製)を用いて、測定荷重10〜100gの条件にてビッカーズ硬度を測定したところ674Hvであり、高硬度が得られていた。
《Ni−Pめっき液1の組成》
・塩化ニッケル …30g/L
・次亜リン酸ナトリウム(還元剤)…36g/L
・リンゴ酸(pH調整剤) …15g/L
・クエン酸(pH調整剤) …10g/L
・コハク酸(pH調整剤) … 5g/L
・プロピオン酸 … 5g/L
・乳酸Na塩(88%;緩衝剤) …15g/L
次に、上記より得たピニオンのビッカース硬度及び該ピニオンを用いたときの耐磨耗性について、以下の方法により評価を行なった。測定及び評価の結果は下記表1に示す。
上記とは別に、φ20×5mmのJIS A 2011アルミニウム合金板を10枚用意した。このアルミニウム合金板の各々について、上記と同様にして、脱脂、水洗、及びアルミニウム合金板の表面を亜鉛で置換被覆するジンケート処理を行なった後に、Ni−Pめっき液1を用いて厚さ15μmの無電解Ni−Pめっき皮膜を各々形成し、水洗、乾燥させた後、下記表1に示す150〜350℃の熱処理条件にて各々熱処理を行なった。このようにして、無電解Ni−Pめっき皮膜を被覆した評価用の試料A〜Jを得た。試料A〜Jについて、上記と同様の方法にてビッカーズ硬度を測定した。
上記試料のうち、試料B、D、F、H及びJをディスク材とし、長さ20mm、ピン先φ2mmの半球形状に加工されたポリアセタール樹脂をピン材(上記同様に測定したビッカーズ硬度=18Hv)とし、負荷荷重100g、線速度30cm/sの条件のもと、2時間かけてピンオンディスク摩耗試験を行なった。このとき、無電解Ni−Pめっき皮膜で被覆されたアルミニウム合金の磨耗は観察されず、ポリアセタール樹脂の磨耗のみが認められた。試験後、ピン材のピン先の半球形状上部に磨耗してできた平坦部の径及び半球部の高さを測定して磨耗量[mm3]を算出し、耐磨耗性を評価する指標とした。
(比較例1)
実施例1において、無電解Ni−Pめっき皮膜を形成した後、熱処理を行なわなかったこと以外、実施例1と同様にして、比較のピニオン及び評価用の試料Kを得ると共に、ビッカーズ硬度の測定及び耐磨耗性の評価を行なった。また、比較のピニオンの平均表面粗さ(Ra)を実施例1と同様にして測定したところ、Ra=0.5μmであった。なお、ビッカーズ硬度の測定及び耐磨耗性の評価の結果は下記表1に示す。
(比較例2)
実施例1において、無電解ニッケルめっき法に代え、アルマイト処理を施して厚さ10μmのアルマイト皮膜を形成したこと以外、実施例1と同様にして、比較のピニオン及び評価用の試料Lを得ると共に、ビッカーズ硬度の測定及び耐磨耗性の評価を行なった。また、比較のピニオンの平均表面粗さ(Ra)を実施例1と同様にして測定したところ、Ra=0.3μmであった。なお、ビッカーズ硬度の測定及び耐磨耗性の評価の結果は下記表1に示す。
(比較例3〜4)
実施例1において、Ni−Pめっき液1を、該めっき液1に平均一次粒径2〜4μmのSiC粒子を更に加えたNi−Pめっき液(比較例3)、又はめっき液1に平均一次粒径2〜4μmのBN粒子を更に加えたNi−Pめっき液(比較例4)に各々代えて厚さ20μmの無電解Ni−Pめっき皮膜を形成したこと以外、実施例1と同様にして、比較のピニオン及び評価用の試料M、Nを得ると共に、ビッカーズ硬度の測定及び耐磨耗性の評価を行なった。また、比較のピニオンの平均表面粗さ(Ra)を実施例1と同様にして測定したところ、比較例3では0.3μm、比較例4では0.3μmであった。なお、ビッカーズ硬度の測定及び耐磨耗性の評価の結果は下記表1に示す。
Figure 2005350686
上記表1に示すように、無電解Ni−P皮膜で被覆した後に熱処理を行なった試料B、D、F、H及びJでは、それ自体の磨耗がなく、ポリアセタール樹脂で形成されたピン材の磨耗も大幅に低減し、アルミニウム合金と組み合わされる相手側の樹脂材料の耐磨耗性を向上させることができた。熱処理は200℃以上とするのがポリアセタール樹脂の磨耗低減の点で効果的であった。特にビッカーズ硬度が600Hv以上である試料D、F、H及びJでは、磨耗量がこれまでのアルマイト皮膜で被覆された試料Lに対して大幅に低減され、飛躍的な耐磨耗性の向上効果が認められた。
一方、アルマイト皮膜で被覆された試料Lは、硬度の点で劣っており、また、基材であるアルミニウム合金の表面粗さ(Ra=0.5μm)より大サイズの硬化物が分散された試料M及びNでは、高硬度が得られたものの、従来のアルマイト処理以上に耐磨耗性の点で劣っていた。

Claims (6)

  1. ポリマー系材料で形成された部品と組み合わされて使用される機構部品であって、
    切削加工されたアルミニウム合金、チタン又はチタン合金からなる基材表面に、被覆された後、硬度を高める熱処理が施され、かつ表面粗さが前記基材の表面粗さ以下とされた無電解Ni−Pめっき皮膜を被覆した機構部品。
  2. 前記硬度は、ビッカース硬度で600Hv以上である請求項1に記載の機構部品。
  3. 前記無電解Ni−Pめっき皮膜の表面粗さは、平均表面粗さで1.6μm以下である請求項1又は2に記載の機構部品。
  4. 前記無電解Ni−Pめっき皮膜の厚さは、10μm以上である請求項1〜3のいずれか1項に記載の機構部品。
  5. 前記無電解Ni−Pめっき皮膜に、前記基材の表面粗さ以下の大きさの硬化物を分散させた請求項1〜4のいずれか1項に記載の機構部品。
  6. 伝動用、締結用、及び摺動用の機械要素部品より選択されるいずれか一つである請求項1〜5のいずれか1項に記載の機構部品。
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