JP2005350339A - カーボンナノチューブ複合材料及びその製造方法、並びに、磁性材料及びその製造方法 - Google Patents

カーボンナノチューブ複合材料及びその製造方法、並びに、磁性材料及びその製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】 サイズを微小長に容易に制御でき、物性に優れかつ均一であり、内包される金属が経時により酸化等せず化学的安定性に優れ、耐久性に富み繰返し使用が可能で、塗布適性等のハンドリング性、他の材料との濡れ性・分散性等に優れ、化学修飾等が容易で取扱性に優れ、各種分野に好適なカーボンナノチューブ複合材料等の提供。
【解決手段】 カーボンナノチューブの内表面が、金属の連続層で被覆されてなるカーボンナノチューブ複合材料。金属層を形成した後、該金属層に対しナノホール形成処理を行うことにより、該金属層面に対し略直交する方向にナノホールを複数形成してナノホール構造体を形成するナノホール構造体形成工程、該ナノホールの内部にカーボンナノチューブを形成するカーボンナノチューブ形成工程、及び、該カーボンナノチューブの管内表面を金属の連続層で被覆する連続層被覆工程、を含むカーボンナノチューブ複合材料の製造方法。
【選択図】 図1

Description

本発明は、金属を内包したカーボンナノチューブであるカーボンナノチューブ複合材料及びその製造方法、並びに、磁性金属を内包したカーボンナノチューブである磁性材料及びその製造方法に関する。
カーボンナノチューブ(以下「CNT」と称することがある)は、従来より、電子・電気分野をはじめとして各種分野における新規材料等として使用されてきており、アーク放電法、レーザー蒸発法、熱CVD法、プラズマCVD法などの方法により製造されてきた。これらの方法により製造されるカーボンナノチューブとしては、グラフェンシートが一層のみの単層カーボンナノチューブ(SWNT:Single Wall Nanotube)、複数のグラフェンシートからなる多層カーボンナノチューブ(MWNT:Maluti Wall Nanotube)などが知られている。
前記カーボンナノチューブの優れた物性に着目して、該カーボンナノチューブの複合材料化などの研究がなされてきており、例えば、フラーレン発見のノーベル賞受賞者Krotoの研究グループは、フェロセンとフラーレンとを加熱処理する方法により、Fe金属を内包したカーボンナノチューブ複合材料を得たことを報告している(非特許文献1参照)。しかし、この方法の場合、得られるカーボンナノチューブ複合材料における鉄(Fe)の内包率(充填率)が数10%程度と低く、また、該カーボンナノチューブの長さや太さなどのサイズ制御も十分に行っておらず、複合材料としての物性や実用性が十分ではないという問題があった。
こうした状況の下、陽極酸化アルミナナノホールを鋳型とし、この中にカーボンチューブを気相炭化法にて成長させ、該気相炭化法にて成長させたカーボンチューブ中に、金属塩溶液浸漬/加熱還元処理により、金属を内包させた後、前記陽極酸化アルミナナノホールを溶解除去することにより、金属を内包したカーボンチューブ複合材料を製造する方法が開発された(非特許文献2及び特許文献1参照)。
しかし、この方法の場合、得られるカーボンナノチューブ複合材料における鉄(Fe)の内包率(充填率)が50%程度以下であり、依然として金属の高含有率は達成しておらず、また、該カーボンナノチューブの長さも1μm以上と比較的長いカーボンナノチューブに関し、金属を均一にかつ連続層の状態で内包した高品質なカーボンナノチューブ複合材料は得られていない。
一方、有機金属(Nickeloceneなど)の化学気相成長により、カーボンチューブ中に金属層を形成する方法も提案されている(特許文献2参照)。
しかし、この方法の場合、得られるカーボンナノチューブ複合材料における鉄(Fe)の内包率(充填率)が50%程度以下であり、依然として金属の高含有率は達成しておらず、また、カーボンチューブの両端が開放しているため、内包させた金属が酸化等し易く、安定性等に劣るという問題がある。
したがって、サイズを1μm以下の微小長に容易に制御でき、物性に優れかつ均一であり、内容される金属が経時により酸化等せず化学的安定性に優れ、耐久性に富み繰返し使用が可能であり、塗布適性等のハンドリング性や、他の材料(ポリマーバインダー等)との濡れ性・分散性等に優れ、化学修飾等が容易で取扱性に優れ、電気・電子材料、磁性材料、ドラッグデリバリーシステムにおける担体、など各種分野において好適に使用することができるカーボンナノチューブ複合材料及びその効率的な製造方法は、提供されていないのが現状である。
ところで、磁気テープや磁気ディスクに用いられる磁性粉としては、初期には針状酸化鉄磁性粉が使用され、その後は高密度化の観点から金属粉、Baフェライト粉などが使用されるに至っているが、より高密度化を達成する観点からは、より小さく、より異方性・配向性が良く、より残留磁化が大きく、より化学的に安定なものが望まれている。近時では、例えば、鉄含有蛋白質であるFerritinの鉄をなくしたもの(Apoferritin)をDNA操作で合成し、この中に所望の磁気特性を有する磁性金属を内包させた蛋白質被覆のナノスケール磁性体(材料)を製造し、蛋白質の自己組織化能を利用して該ナノスケール磁性体を所望に配列等させて磁気記録媒体等に応用する試みも検討されている(非特許文献3参照)。しかし、このナノスケール磁性体の場合、粒子が微細すぎるため、熱揺らぎが生じ、それを解決しようとしても、サイズが蛋白質構造で制限されており、所望の程度に変更・制御することができず、結果として不可能であるという問題がある。
したがって、サイズを所望の程度に制御でき、特に所望の微小長に制御でき、高密度記録が可能なナノスケールサイズに設計可能であり、磁気異方性の大きく高密度記録での熱揺らぎ等の問題がなく、磁気特性に優れかつ均一であり、経時による酸化等が生じず化学的安定性に優れ、塗布適性、他の材料(ポリマーバインダー等)との濡れ性・分散性等に優れ、化学修飾等が容易で取扱性に優れた新規な磁性材料及びその効率的な製造方法は、提供されていないのが現状である。
特許第3402032号公報 特開2000−204471号公報 Perspectives of Fullerene Nanotechnology, p.11-19, 2002 Kluwer Academic Publishers T.Kyotani et al.,Bull.Chem.Soc.Jpn., 72, 1957(1999) J. Hoinville, A. Bewick, D. Gleeson, R. Jones, O. Kasyutich, E. Mayes, A. Nartowski, B. Warne, J. Wiggins, K. Wong, High density magnetic recording on protein-derived nanoparticles, J. App. Phys., 93 (10), 7187-7189 (2003)
本発明は、前記現状に鑑みてなされたものであり、従来における諸問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、
本発明は、サイズを1μm以下の微小長に容易に制御でき、物性に優れかつ均一であり、内容される金属が経時により酸化等せず化学的安定性に優れ、耐久性に富み繰返し使用が可能であり、塗布適性等のハンドリング性や、他の材料(ポリマーバインダー等)との濡れ性・分散性等に優れ、化学修飾等が容易で取扱性に優れ、電気・電子材料、磁性材料、ドラッグデリバリーシステムにおける担体、など各種分野において好適に使用することができるカーボンナノチューブ複合材料及びその効率的な製造方法を提供することを目的とする。
また、本発明は、サイズを所望の程度に制御でき、特に所望の微小長に制御でき、高密度記録が可能なナノスケールサイズに設計可能であり、磁気異方性の大きく高密度記録での熱揺らぎ等の問題がなく、磁気特性に優れかつ均一であり、経時による酸化等が生じず化学的安定性に優れ、塗布適性、他の材料(ポリマーバインダー等)との濡れ性・分散性等に優れ、化学修飾等が容易で取扱性に優れた新規な磁性材料及びその効率的な製造方法を提供することを目的とする。
前記課題を解決するための手段は、以下の通りである。即ち、
本発明のカーボンナノチューブ複合材料は、カーボンナノチューブの内表面が、金属の連続層で被覆されてなることを特徴とする。該カーボンナノチューブ複合材料においては、該カーボンナノチューブの管内表面が前記金属の連続層で被覆されているので、該金属に起因する特性が前記カーボンナノチューブ複合材料において均一である。また、前記カーボンナノチューブ複合材料における前記金属の充填率が高く、該金属に起因する諸物性の発現レベルが高く、高品質である。
本発明の他のカーボンナノチューブ複合材料は、本発明の前記カーボンナノチューブ複合材料を複数有してなり、各カーボンナノチューブ複合材料が、シート状物にその一端が結合し、該シート状物のシート面に対し略直交方向に配向していることを特徴とする。該カーボンナノチューブ複合材料においては、本発明の前記カーボンナノチューブ複合材料が前記シート状物状に多数配向した状態で配置されているため、例えば、電界放出ディスプレイにおける電極などをはじめとして各種分野において好適に使用可能である。
本発明の磁性材料は、カーボンナノチューブの管内表面が、磁性金属の連続層で被覆されてなることを特徴とする。該磁性材料においては、該カーボンナノチューブの管内表面が前記磁性金属の連続層で被覆されているので、該磁性金属に起因する磁気特性が前記カーボンナノチューブ複合材料において均一である。また、前記カーボンナノチューブ複合材料における前記磁性金属の充填率が高く、該磁性金属に起因する磁気特性の発現レベルが高く、高品質である。また、該磁性材料の表面は、カーボンナノチューブであるので、化学修飾が容易であり、無機材料である磁性粉に比し、他の材料(ポリマーバインダー等)との濡れ性・分散性等に優れ、塗布適性、取扱性等に優れ、高品質な磁気ディスク、磁気テープなどに好適に使用可能である。
本発明のカーボンナノチューブ複合材料の製造方法は、本発明の前記カーボンナノチューブ複合材料の製造方法であって、金属層を形成した後、該金属層に対しナノホール形成処理を行うことにより、該金属層面に対し略直交する方向にナノホールを複数形成してナノホール構造体を形成するナノホール構造体形成工程、該ナノホールの内部にカーボンナノチューブを形成するカーボンナノチューブ形成工程、及び、該カーボンナノチューブの管内表面を金属の連続層で被覆する連続層被覆工程、を含むことを特徴とする。該カーボンナノチューブ複合材料の製造方法では、前記ナノホール構造体形成工程において、前記金属層が形成され、該金属層に対しナノホール形成処理が行われる。その結果、前記金属層において、その層面に対し略直交する方向にナノホールが複数形成されたナノホール構造体が形成される。前記カーボンナノチューブ形成工程において、前記ナノホールの内部にカーボンナノチューブが形成される。前記連続層被覆工程において、前記カーボンナノチューブの管内表面が金属の連続層で被覆される。以上により、本発明の前記カーボンナノチューブ複合材料が効率よく製造される。
本発明の磁性材料の製造方法は、本発明の前記磁性材料の製造方法であって、金属層を形成した後、該金属層に対しナノホール形成処理を行うことにより、該金属層面に対し略直交する方向にナノホールを複数形成してナノホール構造体を形成するナノホール構造体形成工程、該ナノホールの内部にカーボンナノチューブを形成するカーボンナノチューブ形成工程、及び、該カーボンナノチューブの管内表面を磁性金属の連続層で被覆する連続層被覆工程、を含むことを特徴とする。該磁性材料の製造方法では、前記ナノホール構造体形成工程において、前記金属層が形成され、該金属層に対しナノホール形成処理が行われる。その結果、前記金属層において、その層面に対し略直交する方向にナノホールが複数形成されたナノホール構造体が形成される。前記カーボンナノチューブ形成工程において、前記ナノホールの内部にカーボンナノチューブが形成される。前記連続層被覆工程において、前記カーボンナノチューブの管内表面が磁性金属の連続層で被覆される。以上により、本発明の前記磁性材料が効率よく製造される。
本発明によると、従来における問題を解決し、サイズを1μm以下の微小長に容易に制御でき、物性に優れかつ均一であり、内容される金属が経時により酸化等せず化学的安定性に優れ、耐久性に富み繰返し使用が可能であり、塗布適性等のハンドリング性や、他の材料(ポリマーバインダー等)との濡れ性・分散性等に優れ、化学修飾等が容易で取扱性に優れ、電気・電子材料、磁性材料、ドラッグデリバリーシステムにおける担体、など各種分野において好適に使用することができるカーボンナノチューブ複合材料及びその効率的な製造方法を提供することができる。
また、本発明によると、従来における問題を解決し、サイズを所望の程度に制御でき、特に所望の微小長に制御でき、高密度記録が可能なナノスケールサイズに設計可能であり、磁気異方性の大きく高密度記録での熱揺らぎ等の問題がなく、磁気特性に優れかつ均一であり、経時による酸化等が生じず化学的安定性に優れ、塗布適性、他の材料(ポリマーバインダー等)との濡れ性・分散性等に優れ、化学修飾等が容易で取扱性に優れた新規な磁性材料及びその効率的な製造方法を提供することができる。
(カーボンナノチューブ及びその製造方法、並びに、磁性材料及びその製造方法)
本発明のカーボンナノチューブ複合材料の製造方法及び磁性材料の製造方法は、ナノホール構造体形成工程と、カーボンナノチューブ形成工程と、連続層被覆工程とを含み、好ましくは金属層溶解工程、プラズマ処理工程などを含み、更に必要に応じて適宜選択したのその他の工程を含む。
本発明の磁性材料の製造方法は、連続層被覆工程においてカーボンナノチューブに内包させる金属が磁性金属である点で、本発明のカーボンナノチューブ複合材料の製造方法とは異なる。したがって、本発明の磁性材料の製造方法は、以下に、本発明のカーボンナノチューブ複合材料の製造方法と共にその詳細を説明する。
本発明のカーボンナノチューブ複合材料は、本発明の前記カーボンナノチューブ複合材料の製造方法により好適に製造される。また、本発明の磁性材料は、本発明の前記磁性材料の製造方法により好適に製造される。このため、本発明のカーボンナノチューブ複合材料及び磁性材料は、以下に、本発明のカーボンナノチューブ複合材料の製造方法及び磁性材料の製造方法と共にその詳細を説明する。
−ナノホール構造体形成工程−
前記ナノホール構造体形成工程は、金属層を形成した後、該金属層に対しナノホール形成処理を行うことにより、該金属層面に対し略直交する方向にナノホールを複数形成してナノホール構造体を形成する工程である。
前記金属層の材料、形状、大きさ等については、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記材料としては、前記ナノホール形成処理によりナノホールを形成可能な材料であればよく、例えば、金属単体、その酸化物、窒化物等、合金などのいずれであってもよく、その中でも、例えば、アルミナ(酸化アルミニウム)、アルミニウム、などが特に好ましい。
前記金属層は、基板上に形成してもよく、この場合、該基板としては、その形状、構造、大きさ、材質等について特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記材質としては、例えば、金属、ガラス、シリコン、石英、シリコン表面に熱酸化膜を形成してなるSiO/Si、等が挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、前記ナノホール形成処理を陽極酸化処理にて行う場合、その際の電極としても使用することができる点で、金属が好ましい。なお、前記基板は、適宜製造したものであってもよいし、市販品を使用してもよい。
また、前記ナノホール形成処理を陽極酸化処理にて行う場合、その際の電極として機能する電極層を前記基板とは別に、該基板と前記金属層との間に配置させることができる。
前記電極層の材料としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、Nb、Ta、Ti、W、Cr、Co、Pt、Cu、Ir、Rh、これらの合金、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。該電極層を形成する方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、蒸着法、スパッタリング法、などが挙げられる。
前記金属層の厚みとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、該厚みがそのままカーボンナノチューブ複合材料の長さとなり、1μm以下の微小長のカーボンナノチューブ複合材料を得る観点からは、1μm以下であるのが好ましく、得たい本発明のカーボンナノチューブ複合材料の長さに一致させることができる。本発明のカーボンナノチューブ複合材料の長さは、該金属層の厚みにより容易に制御可能であり、その平均長さ分布をシャープにすることができ、均一な品質、物性等が達成可能な点で有利である。
なお、前記金属層の形成方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、公知の方法、例えば、蒸着法、スパッタリング法、などが好適に挙げられる。これらの中でも、前記スパッタリング法は、前記金属層の厚みの制御が正確かつ容易に行うことができる点で有利である。
前記スパッタリング法の場合、前記金属層の材料である金属で形成されたスパッタリングターゲットを用いてスパッタリングを行うことにより、好適に実施することができる。前記スパッタリングターゲットの純度としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、高純度であるのが好ましく、前記金属層がアルミニウムである場合には、該金属層を形成するのに用いるスパッタリングターゲットとしてのアルミニウムの純度は99.990%以上であるのが好ましい。
前記ナノホール形成処理としては、前記金属層に前記ナノホールを形成することができる限り特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、陽極酸化処理、エッチング処理、などが好適に挙げられる。
これらの中でも、前記金属層に前記基板面に略直交する方向に多数のナノホールを略等間隔にかつ均等に配列形成することができる等の点で、陽極酸化処理が特に好ましい。
前記陽極酸化処理の条件(電解液の種類・濃度、温度、時間など)としては、特に制限はなく、形成するナノホールの数、大きさ、アスペクト比等に応じて適宜選択することができるが、電流の流れる方向は前記金属層の厚み方向に一致される。前記陽極酸化処理に用いる電解液の種類としては、例えば、希釈リン酸溶液、希釈蓚酸溶液、希釈硫酸溶液、などが好適に挙げられる。前記ナノホールのアスペクト比の調整は、例えば、前記陽極酸化処理の後に、リン酸溶液に浸漬させて前記ナノホール(アルミナポア)の直径を増加させることにより行うことができる。
前記陽極酸化処理により前記ナノホール構造体形成工程を行った場合、前記金属層に多数形成した前記ナノホールの下部にバリア層が形成されてしまうことがあるが、該バリア層は、リン酸等の公知のエッチング液を用いて公知のエッチング処理を行うことにより、容易に除去することができる。
前記陽極酸化処理により前記金属層に形成される前記ナノホールの位置、配向(配列)等は、ランダムであるが、例えば、以下の手法により、これを制御することができる。即ち、前記陽極酸化処理の前に、前記金属層上に凹状ラインを予め形成しておき、その後に前記陽極酸化処理を行うと、該凹状ライン上にのみ、効率的に前記ナノホールを形成することができる。
前記ナノホール構造体形成工程により、前記金属層に該金属層の厚み方向に配向したナノホールが複数形成されたナノホール構造体が形成される。
前記ナノホール構造体における前記ナノホールとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、貫通孔として形成されていてもよいし、穴(窪み)として形成されていてもよいが、貫通孔として形成されているのが好ましい。
前記ナノホールの深さとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、通常は10μm以下であるが、該深さと、本発明のカーボンナノチューブ複合材料又は本発明の磁性材料の長さとが対応することを考慮すると、例えば、1μm以下である好ましい。
前記ナノホールの開口径としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、特に本発明の前記磁性材料を製造する場合には、200nm以下が好ましく、100nm以下がより好ましい。
前記ナノホールにおける開口径が、200nmを超えると、得られる本発明のカーボンナノチューブ複合材料又は本発明の磁性材料の直径が大きくなり、磁性粉等として多磁区構造になりやすくなるなど、使用し難くなることがある。
前記ナノホールにおける深さと開口径とのアスペクト比(深さ/開口径)としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、高アスペクト比であると、形状異方性が大きくなり、得られる本発明のカーボンナノチューブ複合材料の形状効果又は本発明の磁性材料における保持力等を向上させることができる点で好ましく、例えば、2以上であるのが好ましく、5以上であるのがより好ましい。
前記アスペクト比が、2未満であると、本発明のカーボンナノチューブ複合材料の形状効果または本発明の磁性材料の保持力を十分に向上させることができないことがある。
−カーボンナノチューブ形成工程−
前記カーボンナノチューブ形成工程は、前記ナノホールの内部にカーボンナノチューブを形成する工程である。
前記カーボンナノチューブの形成の方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、CVD法(化学的気相成長法)が好適に挙げられる。
前記CVD法(化学的気相成長法)としては、例えば、熱CVD(単にCVDとも呼ばれる)、ホットフィラメントCVD、プラズマエンハンストCVD(プラズマアシステッドCVD、プラズマCVDとも呼ばれる)、プラズマエンハンストホットフィラメントCVD、レーザーエンハンストCVD(レーザーCVDとも呼ばれる)、などが挙げられる。これらの中でも、熱CVD、プラズマCVDが好ましい。
前記熱CVDにおいては、400〜2000℃程度に加熱したフィラメントにより原料ガスを分解して炭素を蒸着させる。
前記プラズマCVDにおいては、0.1〜1000W/cm程度の高周波(RF)で励起したプラズマにより原料ガスを分解して炭素を蒸着させる。なお、前記高周波(RF)で励起したプラズマ以外に、低周波、マイクロ波(MW)、直流(DC)等で励起したプラズマを使用することもできる。
前記CVD法によるカーボンナノチューブの形成条件としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、原料ガスの流量を制御し、該原料ガスとして、炭素供給ガスと導入ガスとの混合ガスを用いるのが好ましい。
前記炭素供給ガスとしては、例えば、メタン、エチレン、プロピレン、アセチレン、ベンゼン、ブタン、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、C1016、CS、C60、などが挙げられる。また、前記導入ガスとしては、窒素、アルゴン、水素、NH、などが挙げられる。
この場合、前記混合ガスにおける混合割合としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記炭素供給ガスとしてプロピレンガスを用い、前記導入ガスとして窒素ガスを用いた場合には、常圧にて、流量比でプロピレンガス:水素ガス=1〜5:99〜95程度、全流量としては100〜300cm/minであるのが好ましく、また、温度は、700〜900℃であるのが好ましく、800℃付近であるのが特に好ましい。
前記カーボンナノチューブ形成工程においては、前記CVD法等により前記カーボンナノチューブを形成する際に、前記金属層の材料が該カーボンナノチューブの形成触媒として作用するため、前記カーボンナノチューブの形成のための触媒を別途使用しなくてもよい。例えば、前記金属層がアルミニウムで形成されている場合には、該金属層の露出表面に存在するアルミニウムがそのまま前記カーボンナノチューブの形成のための触媒として作用する。
なお、前記金属層の露出表面又は該金属層に形成した前記ナノホールの内表面に、前記カーボンナノチューブを形成するための触媒を、塗布、蒸着等の手法により存在させておいてもよい。
前記触媒としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、遷移金属が好適に挙げられる。該遷移金属としては、例えば、Fe、Ni、Co、Ru、Rh、Pd、Pt、La、Ce、Pr、Nd、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Lu、これら金属元素を含む合金、などが挙げられる。
なお、前記カーボンナノチューブ形成工程を行う前に、前記金属層の露出表面を清浄化してもよく、該清浄化の方法としては、溶剤洗浄、コロナ処理、プラズマ処理、プラズマ灰化などの放電処理、などが挙げられる。
前記カーボンナノチューブ形成工程により形成されるカーボンナノチューブは、直径、長さ、層数等が略均一であり、前記金属層の厚みを1μm以下にした場合には、平均長さが1μm以下であり、その一端が閉鎖された構造を有している。
−連続層被覆工程−
前記連続層被覆工程は、前記カーボンナノチューブ形成工程において形成した前記カーボンナノチューブの管内表面を、本発明のカーボンナノチューブ複合材料の製造方法の場合には金属の連続層で、本発明の磁性材料の製造方法の場合には前記磁性金属の連続層で、それぞれ被覆する工程である。
前記連続層形成工程は、電着法、無電解メッキ法、蒸着法、スパッタリング法、電着法、などにより行うことができ、電着法、無電解メッキ法により好適に行うことができ、電着法により特に好適に行うことができる。
前記電着法の条件等については、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。前記電着法は、具体的には、例えば、前記カーボンナノチューブが前記ナノホール内に形成された前記ナノホール構造体を、本発明の前記カーボンナノチューブ複合材料の場合には金属を含む溶液、本発明の前記磁性材料の場合には磁性金属を含む溶液、のそれぞれ単独液又は混合液中に浸漬させた後、上述した電極層を電極として電圧を印加させることにより、前記カーボンナノチューブの管内表面に、前記金属又は前記磁性金属を析出乃至堆積させることにより、行うことができる。
なお、前記電着法においては、前記ナノホール構造体を前記金属又は前記磁性金属を含む液中に浸漬させる際に、真空脱泡処理を行うのが好ましい。該真空脱泡処理を行うと、前記カーボンナノチューブの内表面の全体に前記液を接触(浸漬)させることができる点で、有利である。該真空脱泡処理の条件等については、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
以上により、前記カーボンナノチューブの管内表面を前記金属又は前記磁性金属の連続層で被覆することができるが、前記金属としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、金属単体、合金、などが挙げられる。これらの中でも、前記カーボンナノチューブ複合材料を、電子・電気材料等として使用する場合には、前記金属が高い導電性を有していることが好ましく、磁性材料として使用する場合には、前記金属が磁性金属であることが好ましい。
前記磁性金属としては、特に制限はなく、目的に応じて各種元素を少なくとも含むものの中から適宜選択することができるが、強磁性材料であってもよいし、軟磁性材料であってもよい。
前記強磁性材料としては、例えば、Fe、Co、Ni、FeCo、FeNi、CoNi、CoNiP、FePt、CoPt、NiPt、その他の元素を含むもの、などが好適に挙げられる。
前記軟磁性材料としては、特に制限はなく、目的に応じて公知のものの中から適宜選択することができるが、例えば、FeCo、NiFe、FeSiAl、FeC、FeCoB、FeCoNiB、CoZrNb、その他の元素を含むもの、などが挙げられる。
前記磁性金属は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、パーマロイ(NiFe,Fe:Ni=20:80)などが好適に挙げられる。
前記連続層被覆工程により、前記カーボンナノチューブの管内表面が前記金属又は前記磁性金属の連続層で被覆されるが、該カーボンナノチューブの管内表面が前記連続層で被覆されたか否かは、例えば、電子線回折等を行うことにより判別することができる。なお、前記電子線回折により判別を行う場合、前記カーボンナノチューブの管内表面に前記連続層が被覆されていれば、結晶性が良好な回折写真が得られ、前記カーボンナノチューブの管内表面に前記連続層が被覆されてなく、不連続層が被覆された状態であれば、結晶性が良好ではない回折写真が得られる。
−プラズマ処理工程−
前記プラズマ処理工程は、プラズマを用いてエッチング処理を行う工程である。該プラズマ処理工程を行うと、前記ナノホール構造体(前記金属層)の表面に堆積したカーボン層を除去することができ、また、前記カーボンナノチューブの表面の親水性を向上させることができる、等の点で有利である。
前記プラズマ処理工程は、前記連続層被覆工程を行う前及び後のいずれかにおいて行うのが好ましく、前記連続層被覆工程を行う前に行うのがより好ましい。
この場合、前記プラズマ処理工程により、前記ナノホール構造体(前記金属層)における前記ナノホール(例えば、アルミナナノホール)の内表面が、親水化され、その後に行う前記連続層被覆工程において用いる前記金属又は前記磁性金属を含む液(例えば、メッキ液)との濡れ性(親水性)が向上し、表面抵抗値が変化し、前記液が前記ナノホール内に染み込み易くなり、その結果、前記金属又は前記磁性金属による連続膜を効率よくかつ十分に(高い充填率で)被覆することができる点で有利である。また、前記カーボンナノチューブ形成工程において、前記金属層(前記ナノホール構造体上)に堆積したカーボン層が除去されるため、前記金属層溶解工程を行うと、前記カーボンナノチューブ複合材料又は前記磁性材料を独立した状態で(バラバラの状態で)得ることができる点で有利である。
なお、前記プラズマ処理工程におけるプラズマ処理の条件等については、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
−金属層溶解工程−
前記金属層溶解工程は、前記金属層(前記ナノホール構造体)を溶解させる工程である。該金属層溶解工程を行うことにより、本発明のカーボンナノチューブ複合材料又は本発明の磁性材料が得られるが、前記プラズマ処理を行わない場合には、これらは、前記金属層(前記ナノホール構造体)上に堆積したカーボン層に、多数の本発明の前記カーボンナノチューブ複合材料又は本発明の前記磁性材料が一体化された状態のまま(束状、剣山状)のものが得られる。これらにおいては、本発明の前記カーボンナノチューブ複合材料又は本発明の前記磁性材料が前記カーボンナノチューブの層面に対し略直交方向に配向している。
前記金属層溶解工程の条件等については、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、該金属層溶解工程の具体的な方法としては、例えば、フッ化水素(HF)浸漬処理、NaOH水熱処理、などが好適に挙げられる。
−その他の工程−
前記その他の工程としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、洗浄工程、乾燥工程などが挙げられる。
上述した本発明の前記カーボンナノチューブ複合材料、本発明の前記磁性材料により、本発明の前記カーボンナノチューブ、本発明の磁性材料がそれぞれ効率よく製造される。
本発明のカーボンナノチューブ複合材料又は本発明の磁性材料は、前記カーボンナノチューブの内表面が、前記金属又は前記磁性金属の連続層で被覆されてなる。
前記カーボンナノチューブ複合材料においては、該カーボンナノチューブの管内表面が前記金属の連続層で被覆されているので、該金属に起因する特性が前記カーボンナノチューブ複合材料において均一である。また、前記カーボンナノチューブ複合材料における前記金属の充填率が高く、該金属に起因する諸物性の発現レベルが高く、高品質である。
前記磁性材料においては、該カーボンナノチューブの管内表面が前記磁性金属の連続層で被覆されているので、該磁性金属に起因する磁気特性が前記カーボンナノチューブ複合材料において均一である。また、前記カーボンナノチューブ複合材料における前記磁性金属の充填率が高く、該磁性金属に起因する磁気特性の発現レベルが高く、高品質である。また、該磁性材料の表面は、カーボンナノチューブであるので、化学修飾が容易であり、無機材料である磁性粉に比し、他の材料(ポリマーバインダー、溶剤等)との濡れ性・分散性等に優れ、塗布適性、取扱性等に優れ、高品質な磁気ディスク、磁気テープなどに好適に使用可能である。
本発明のカーボンナノチューブ複合材料又は本発明の磁性材料においては、前記連続層が前記カーボンナノチューブの表面を被覆しているので、前記金属又は前記磁性金属の充填率は、実質的に100%である。
前記前記金属又は前記磁性金属の充填率は、例えば、電子線回折等を行うことにより判別することができる。なお、前記電子線回折により判別を行う場合、前記充填率が高くなるほど、結晶性が良好な回折写真が得られる。
前記カーボンナノチューブ複合材料又は前記磁性材料の長さは、前記金属層の厚みに一致させることができ、1μm以下の微小長のカーボンナノチューブ複合材料又は磁性材料が容易に得られる。なお、該カーボンチューブの長さは、前記金属層(例えば、アルミニウム層、アルミナ層など)の厚みと一致するので、該金属層の厚みを制御することにより、所望の程度に正確にかつ均一に、しかも容易に制御することができる。
前記カーボンナノチューブ複合材料又は前記磁性材料における前記カーボンナノチューブは、一端が閉鎖されているため、前記カーボンナノチューブ複合材料又は前記磁性材料は、化学的安定性に優れ、経時による酸化等の問題がない。このため、前記カーボンナノチューブ複合材料又は前記磁性材料は、各種用途に好適に使用することができる。
前記カーボンナノチューブ複合材料又は前記磁性材料は、前記プラズマ処理を行わなかった場合には、前記金属層(前記ナノホール構造体)上に堆積したカーボン層に、多数の前記カーボンナノチューブ複合材料又は前記磁性材料が該カーボン層の層面に略直交した方向に配向して一体化された状態(束状、剣山状)のものとなる。
前記カーボンナノチューブ複合材料又は前記磁性材料は、前記カーボンナノチューブに起因する特性と、前記金属又は前記磁性金属に起因する特性とを併せ持ち、更に外側にカーボンナノチューブが存在することにより、内部に位置する前記金属又は前記磁性金属の化学的安定性を向上させることができる一方、外部に化学修飾を容易に行うことができるため、目的に応じた設計が容易であり、取扱性に富む。前記化学修飾としては、例えば、抗体等の生体分子などを前記カーボンナノチューブの表面に結合させること、などが挙げられる。この場合、得られたカーボンナノチューブ複合材料を分離・精製技術、ドラッグデリバリーシステム等に好適に応用可能となる。
本発明のカーボンナノチューブ複合材料は、電気・電子材料、磁性材料、ドラッグデリバリーシステムにおける担体、導電材料、帯電防止材料、など各種分野において好適に使用することができ、具体的には、例えば、電解放出型ディスプレイ、蛍光表示ランプ等の電子材料、燃料電池、リチウムイオン電池等のエネルギー材料、強化プラスチック、帯電防止材、強化プラスチック等の複合材料、ナノデバイス、走査型プローブ顕微鏡の探針、DNAチップ等のナノテクノロジー材料、などとして幅広い分野に好適に使用することができる。
本発明の磁性材料は、磁気ディスク、磁気テープ等の各種磁気記録媒体、特に、コンピュータの外部記憶装置、民生用ビデオ記録装置等として広く使用されている磁気ディスク、ビデオテープ、カセットテープ等の磁気テープ、などに好適に使用することができ、また、磁気を利用した分離・精製技術、ドラッグデリバリーシステム、などにも好適に使用することができる。
以下、本発明の実施例について説明するが、本発明はこの実施例に何ら限定されるものではない。以下の実施例では、本発明のカーボンナノチューブ複合材料の製造方法により本発明のカーボンナノチューブ複合材料を製造した。なお、この実施例においては、該カーボンナノチューブ複合材料に内包させる前記金属が前記磁性金属であるので、該カーボンナノチューブ複合材料の製造方法は、本発明の磁性材料の製造方法に相当し、該カーボンナノチューブ複合材料は、本発明の磁性材料に相当する。
(実施例1)
図1に示すように、まず、シリコン基板上に、前記電極層としてのNbをスパッタリング法により真空蒸着(厚み:250nm)し、その上に、アルミニウムスパッタリングターゲットを用いて、前記金属層としてアルミニウム(Al)をスパッタリング法により真空蒸着した。こうして得た前記金属層を陽極酸化処理(条件:20wt%硫酸溶液中、20℃、電圧10V)を行って該金属層の層面と略直交方向に貫通孔としてのナノホール(アルミナナノホール、アルミナポア)が多数形成された前記ナノホール構造体を形成した。以上が、前記ナノホール構造体形成工程である。
なお、前記金属層の厚み(前記ナノホールの深さ(長さ))は、300nmであり、前記ナノホールの開口径は、15nmであった。
次に、カーボンナノチューブを形成するための前記炭素供給ガスとしてプロピレンガスを用い、前記導入ガスとして窒素ガスを用い、CVD法により、前記ナノホール構造体(アルミナナノホール)における外表面とナノホール内にカーボンを成長させた。具体的には、ナノホールを形成した基板を石英反応管に入れ、窒素気流下で800℃まで2時間で昇温した後、1.2%濃度のプロピレンを、窒素をキャリアーガスとして反応管内に流入し、800℃にて2時間CVDを行い、その後、プロピレンを止め、窒素気流下で室温まで冷却した。
その結果、前記ナノホール構造体の表面にはカーボン層が堆積形成され、該ナノホール構造体におけるナノホール内には、前記カーボンナノチューブが形成された。以上が、前記カーボンナノチューブ形成工程である。
次に、表面にカーボン層が堆積形成され、該ナノホール構造体におけるナノホール内にカーボンナノチューブが形成された前記ナノホール構造体を、パーマロイ(Fe:Ni=20:80)用のめっき液(組成:硫酸鉄、硫酸ニッケル、ホウ酸、添加剤を含有)中に浸漬させた。このとき、真空脱泡処理(条件:圧力5mTorr(0.67Pa)以下)を行って、前記カーボンナノチューブの管内に前記メッキ液を十分に浸透させた。そして、めっき条件(30〜37℃)にて、電着法にてめっき処理を行い、前記カーボンナノチューブの管内表面に前記パーマロイによる連続膜を被覆させた。以上が、前記連続層被覆工程である。
次に、前記連続層被覆工程を行った前記ナノホール構造体に対し、プラズマ処理(条件:圧力10Pa,酸素流量30ml/min,出力100W)を行い、表面に堆積形成された前記カーボン層を除去した。以上が、前記プラズマ処理工程である。
更に、前記プラズマ処理工程を行った前記ナノホール構造体に対し、NaOH水熱処理を行って前記金属層(アルミニウム層)を溶解除去(条件:10M NaOH,オートクレーブ中150℃)した。以上が、前記金属層溶解工程である。
その結果、図4、図5、図6及び図7のTEM写真に示すように、平均長さが300nmであり、平均外径が15nmであり、前記パーマロイが内包(パーマロイによる連続層が被覆)された本発明のカーボンナノチューブ複合材料(磁性材料)が多数得られた。なお、図5は、図4の一部を拡大したものであり、図6、図7は、図5の一部を拡大したものである。図4、図5、図6及び図7において、カーボンナノチューブ内がやや黒色に見えるのは、前記パーマロイによる連続層が被覆されていることによるものである。なお、前記パーマロイによる連続層が結晶性の良い金属層として前記カーボンナノチューブの管内表面に被覆されていることは、図8に示す電子線回折写真からも明らかである。
得られたカーボンナノチューブ複合材料(磁性材料)の磁気特性を検証するために、得られたカーボンナノチューブ複合材料(磁性材料)を試験管内の、水とエタノールの混合溶媒中に分散させた後、永久磁石を該試験管に近づけると、図9に示すように、前記パーマロイ内包カーボンナノチューブ(磁性材料)が該永久磁石に引きつけられ、図10に示すように、該永久磁石に隣接する管壁付近に塊状(黒色粉体状)になる。そして、前記永久磁石を前記試験管から離すと、前記パーマロイが軟磁性材料であり、残留磁化を殆ど有していないことにより、図11に示すように、塊状であった前記カーボンナノチューブ複合材料(磁性材料)がバラバラの状態となり、前記試験管の管底に沈殿した。なお、図11は、前記永久磁石を前記試験管から離した直後の写真である。
なお、得られたカーボンナノチューブ複合材(磁性材料)の飽和磁化を振動試料型磁力計(VSM)にて測定したところ、65emu/g(81.7×10−7ウェーバー/g)の値であった。
以上の結果より、得られたカーボンナノチューブ複合材(磁性材料)が磁気特性を有することを検証することができ、該カーボンナノチューブ複合材料(磁性材料)は、磁性材料として使用可能であり、更に、磁気を利用したドラッグデリバリーシステムにおける担体、磁気を利用した分離・精製技術にも応用可能であることが判った。
(実施例2)
図2に示すように、実施例1において、前記金属層の厚みを、1000nm、500nm、300nm、50nmにそれぞれ変更し、かつ前記プラズマ処理を行わなかった以外は、実施例1と同様にしてカーボンナノチューブ複合材料(磁性材料)を製造した。その結果、図12(1000nmの場合)、図13(500nmの場合)、図14(300nmの場合)、図15(50nmの場合)にそれぞれ示すように、カーボン層に対し、その層面に略直交方向に多数配向した状態で一体化された剣山状のカーボンナノチューブ複合材料(磁性材料)が得られた。
(実施例3)
図3に示すように、実施例1において、前記プラズマ処理を前記連続層被覆工程の前に行った以外は、実施例1と同様にしてカーボンナノチューブ複合材料(磁性材料)を製造した。その結果、実施例1と同様に、図4〜図7のTEM写真に示す、平均長さが300nmであり、平均外径が15nmであり、前記パーマロイが内包(パーマロイによる連続層が被覆)された本発明のカーボンナノチューブ複合材料(磁性材料)が多数得られた。
なお、実施例3では、前記プラズマ処理を前記連続層被覆工程の前に行ったため、前記カーボンナノチューブの管内表面が、親水化し、表面張力が低下し、前記メッキ液と前記管内表面との濡れ性が向上した結果、短時間で効率よく、略100%の充填率で前記パーマロイによる連続層を前記カーボンナノチューブの管内表面に被覆することができた。
ここで、前記プラズマ処理を行う前後における前記カーボンナノチューブの管内表面の親水性がどのように変化するかを調べるために、以下のような実験を行った。即ち、カーボン層を形成し、その表面に実施例1と同様の条件にて前記プラズマ処理を行った後、水滴を該カーボン層上に滴下した。すると、前記プラズマ処理を行わなかった場合(前記プラズマ処理前)は、図16に示すように、カーボン層が親水性の程度が低いため、滴下した水滴は、該カーボン層上で液滴形状を維持し、拡がることはなかった。一方、前記プラズマ処理を行った場合(前記プラズマ処理後)は、図17に示すように、カーボン層が親水性の程度が高いため、滴下した水滴は、該カーボン層上で液滴形状を維持できず、拡がった。
(比較例1)
特許第3402032号公報に記載の方法と同様にして、パーマロイ内包カーボンチューブを製造した。即ち、ホワットマンペーパー社製の陽極酸化被膜(Anodisc)に、ポリプロピレンを用いたCVD法により、カーボンチューブを陽極酸化被膜におけるポア内に成長させた。これを、実施例1における前記連続層被覆工程に用いためっき液中に真空脱泡処理しながら3時間浸漬し、その後、該めっき液から取り出し、乾燥機にて80℃、窒素気流下で1日乾燥後、石英反応管に入れ、500℃、水素気流下で還元処理を行い、NaOHによる水熱処理にて前記陽極酸化被膜(アルミナ)を溶解して、パーマロイ内包カーボンチューブを得た。
比較例1のパーマロイ内包カーボンチューブについても、実施例1と同様にして飽和磁化を測定したところ、25emu/g(31.4×10−7ウェーバー/g)であり、実施例1よりも低い値となった。これは、比較例1のパーマロイ内包カーボンチューブでは、特許第3402032号公報における図2に示されているように、カーボンナノチューブ内には金属が詰まってない部分が多く存在し、該パーマロイによる不連続層が管内表面に形成されており、該パーマロイの充填率が低いために、前記飽和磁化の値が、前記パーマロイの充填率が高く、該パーマロイによる連続層が管内表面に被覆された実施例1の本発明のカーボンナノチューブ複合材料(磁性材料)よりも低くなったものと考えられた。
この結果より、本発明のカーボンナノチューブ複合材料(磁性材料)は、比較例1のパーマロイ内包カーボンチューブよりも、飽和磁化が大きく、磁気特性に優れ、その結果、磁気記録材料への応用、磁気を応用した各種技術に対し、極めて有用であることが判った。
本発明の好ましい態様を付記すると、以下の通りである。
(付記1) カーボンナノチューブの内表面が、金属の連続層で被覆されてなることを特徴とするカーボンナノチューブ複合材料。
(付記2) 連続層が電着により形成された付記1に記載のカーボンナノチューブ複合材料。
(付記3) 金属が、磁性金属から選択される付記1から2のいずれかに記載のカーボンナノチューブ複合材料。
(付記4) 磁性金属が、Fe、Co、Ni、FeCo、FeNi、CoNi、CoNiP、FePt、CoPt、NiPt、及びその他の元素から選択される少なくとも1種を含む付記3に記載のカーボンナノチューブ複合材料。
(付記5) 平均長さが1μm以下である付記1から4のいずれかに記載のカーボンナノチューブ複合材料。
(付記6) 一端が閉鎖されている付記1から5のいずれかに記載のカーボンナノチューブ複合材料。
(付記7) 付記1から6のいずれかに記載のカーボンナノチューブ複合材料を複数有してなり、各カーボンナノチューブ複合材料が、シート状物にその一端が結合し、該シート状物のシート面に対し略直交方向に配向していることを特徴とするカーボンナノチューブ複合材料。
(付記8) 磁性材料、導電材料、及びドラッグデリバリー用担体の少なくともいずれかとして用いられる付記1から7のいずれかに記載のカーボンナノチューブ複合材料。
(付記9) カーボンナノチューブの管内表面が、磁性金属の連続層で被覆されてなることを特徴とする磁性材料。
(付記10) 磁性金属が、Fe、Co、Ni、FeCo、FeNi、CoNi、CoNiP、FePt、CoPt、NiPt及びその他の元素から選択される少なくとも1種を含む付記9に記載の磁性材料。
(付記11) 付記1から8のいずれかに記載のカーボンナノチューブ複合材料の製造方法であって、
金属層を形成した後、該金属層に対しナノホール形成処理を行うことにより、該金属層面に対し略直交する方向にナノホールを複数形成してナノホール構造体を形成するナノホール構造体形成工程、該ナノホールの内部にカーボンナノチューブを形成するカーボンナノチューブ形成工程、及び、該カーボンナノチューブの管内表面を金属の連続層で被覆する連続層被覆工程、を含むことを特徴とするカーボンナノチューブ複合材料の製造方法。
(付記12) 金属層を溶解させる金属層溶解工程を更に含む付記11に記載のカーボンナノチューブ複合材料の製造方法。
(付記13) 連続層被覆工程を行う前及び後のいずれかにおいて、プラズマを用いてエッチング処理を行うプラズマ処理工程を更に含む付記11から12のいずれかに記載のカーボンナノチューブ複合材料の製造方法。
(付記14) 連続層被覆工程を行う前に、プラズマを用いてエッチング処理を行うプラズマ処理工程を更に含む付記11から13のいずれかに記載のカーボンナノチューブ複合材料の製造方法。
(付記15) 金属層がアルミニウムで形成された付記11から14のいずれかに記載のカーボンナノチューブ複合材料の製造方法。
(付記16) 金属層がスパッタリングにより形成された付記11から15のいずれかに記載のカーボンナノチューブ複合材料の製造方法。
(付記17) ナノホールの深さが1μm以下である付記11から16のいずれかに記載のカーボンナノチューブ複合材料の製造方法。
(付記18) ナノホール形成処理が陽極酸化処理である付記11から17のいずれかに記載のカーボンナノチューブ複合材料の製造方法。
(付記19) カーボンナノチューブ形成工程が、CVD法(化学的気相成長法)により行われる付記11から18のいずれかに記載のカーボンナノチューブ複合材料の製造方法。
(付記20) CVD法(化学的気相成長法)が、プラズマCVD法及び熱CVD法のいずれかである付記19に記載のカーボンナノチューブの製造方法。
(付記21) 連続層形成工程が電着により行われる付記13から20のいずれかに記載のカーボンナノチューブ複合材料の製造方法。
(付記22) 電着が、真空脱泡処理しながら金属層をメッキ液に浸漬させることにより行われる付記21に記載のカーボンナノチューブ複合材料の製造方法。
(付記23) 金属層溶解工程が、HF浸漬処理及びNaOH水熱処理の少なくともいずれかにより行われる付記12から22のいずれかに記載のカーボンナノチューブ複合材料の製造方法。
(付記24) 付記9から10のいずれかに記載の磁性材料の製造方法であって、
金属層を形成した後、該金属層に対しナノホール形成処理を行うことにより、該金属層面に対し略直交する方向にナノホールを複数形成してナノホール構造体を形成するナノホール構造体形成工程、該ナノホールの内部にカーボンナノチューブを形成するカーボンナノチューブ形成工程、及び、該カーボンナノチューブの管内表面を磁性金属の連続層で被覆する連続層被覆工程、を含むことを特徴とする磁性材料の製造方法。
本発明のカーボンナノチューブ複合材料は、電気・電子材料、磁性材料、ドラッグデリバリーシステムにおける担体、帯電防止材料、など各種分野において好適に使用することができ、具体的には、例えば、電解放出型ディスプレイ、蛍光表示ランプ等の電子材料、燃料電池、リチウムイオン電池等のエネルギー材料、強化プラスチック、帯電防止材、強化プラスチック等の複合材料、ナノデバイス、走査型プローブ顕微鏡の探針、DNAチップ等のナノテクノロジー材料、などとして幅広い分野に用いることができる。
本発明のカーボンナノチューブ複合材料の製造方法は、本発明の前記カーボンナノチューブ複合材料の製造に好適に使用することができる。
本発明の磁性材料は、磁気ディスク、磁気テープ等の各種磁気記録媒体、特に、コンピュータの外部記憶装置、民生用ビデオ記録装置等として広く使用されている磁気ディスク、ビデオテープ、カセットテープ等の磁気テープ、などに好適に使用することができ、また、磁気を利用した分離・精製技術、ドラッグデリバリーシステム、などにも好適に使用することができる。
本発明の磁性材料の製造方法は、本発明の前記磁性材料の製造に好適に使用することができる。
図1は、本発明のカーボンナノチューブ複合材料(磁性材料)の製造方法の第一の例を示す工程図である。 図2は、本発明のカーボンナノチューブ複合材料(磁性材料)の製造方法の第二の例を示す工程図である。 図3は、本発明のカーボンナノチューブ複合材料(磁性材料)の製造方法の第三の例を示す工程図である。 図4は、本発明のカーボンナノチューブ複合材料(磁性材料)の製造方法により製造した本発明のカーボンナノチューブ複合材料(磁性材料)のTEM写真である。 図5は、本発明のカーボンナノチューブ複合材料(磁性材料)の製造方法により製造した本発明のカーボンナノチューブ複合材料(磁性材料)のTEM写真である。 図6は、本発明のカーボンナノチューブ複合材料(磁性材料)の製造方法により製造した本発明のカーボンナノチューブ複合材料(磁性材料)のTEM写真である。 図7は、本発明のカーボンナノチューブ複合材料(磁性材料)の製造方法により製造した本発明のカーボンナノチューブ複合材料(磁性材料)のTEM写真である。 図8は、本発明のカーボンナノチューブ複合材料(磁性材料)の製造方法により製造した本発明のカーボンナノチューブ複合材料(磁性材料)の電子線回折写真である。 図9は、本発明のカーボンナノチューブ複合材料(磁性材料)の磁気特性を検証するための実験写真である。 図10本発明のカーボンナノチューブ複合材料(磁性材料)の磁気特性を検証するための実験写真である。 図11は、本発明のカーボンナノチューブ複合材料(磁性材料)の磁気特性を検証するための実験写真である。 図12は、本発明のカーボンナノチューブ複合材料(磁性材料)の製造方法により製造した剣山状の本発明のカーボンナノチューブ複合材料(磁性材料)のTEM写真である。 図13は、本発明のカーボンナノチューブ複合材料(磁性材料)の製造方法により製造した剣山状の本発明のカーボンナノチューブ複合材料(磁性材料)のTEM写真である。 図14は、本発明のカーボンナノチューブ複合材料(磁性材料)の製造方法により製造した剣山状の本発明のカーボンナノチューブ複合材料(磁性材料)のTEM写真である。 図15は、本発明のカーボンナノチューブ複合材料(磁性材料)の製造方法により製造した剣山状の本発明のカーボンナノチューブ複合材料(磁性材料)のTEM写真である。 図16は、前記プラズマ処理工程前におけるカーボン層表面の濡れ性を評価した写真である。 図17は、前記プラズマ処理工程後におけるカーボン層表面の濡れ性を評価した写真である。

Claims (10)

  1. カーボンナノチューブの内表面が、金属の連続層で被覆されてなることを特徴とするカーボンナノチューブ複合材料。
  2. 連続層が電着により形成された請求項1に記載のカーボンナノチューブ複合材料。
  3. 金属が、磁性金属から選択される請求項1から2のいずれかに記載のカーボンナノチューブ複合材料。
  4. 平均長さが1μm以下である請求項1から3のいずれかに記載のカーボンナノチューブ複合材料。
  5. 請求項1から4のいずれかに記載のカーボンナノチューブ複合材料を複数有してなり、各カーボンナノチューブ複合材料が、シート状物にその一端が結合し、該シート状物のシート面に対し略直交方向に配向していることを特徴とするカーボンナノチューブ複合材料。
  6. カーボンナノチューブの管内表面が、磁性金属の連続層で被覆されてなることを特徴とする磁性材料。
  7. 請求項1から5のいずれかに記載のカーボンナノチューブ複合材料の製造方法であって、
    金属層を形成した後、該金属層に対しナノホール形成処理を行うことにより、該金属層面に対し略直交する方向にナノホールを複数形成してナノホール構造体を形成するナノホール構造体形成工程、該ナノホールの内部にカーボンナノチューブを形成するカーボンナノチューブ形成工程、及び、該カーボンナノチューブの管内表面を金属の連続層で被覆する連続層被覆工程、を含むことを特徴とするカーボンナノチューブ複合材料の製造方法。
  8. 金属層を溶解させる金属層溶解工程を更に含む請求項7に記載のカーボンナノチューブ複合材料の製造方法。
  9. 連続層被覆工程を行う前及び後のいずれかにおいて、プラズマを用いてエッチング処理を行うプラズマ処理工程を更に含む請求項7から8のいずれかに記載のカーボンナノチューブ複合材料の製造方法。
  10. 請求項6に記載の磁性材料の製造方法であって、
    金属層を形成した後、該金属層に対しナノホール形成処理を行うことにより、該金属層面に対し略直交する方向にナノホールを複数形成してナノホール構造体を形成するナノホール構造体形成工程、該ナノホールの内部にカーボンナノチューブを形成するカーボンナノチューブ形成工程、及び、該カーボンナノチューブの管内表面を磁性金属の連続層で被覆する連続層被覆工程、を含むことを特徴とする磁性材料の製造方法。
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