JP2005341913A - インピーダンスマッチングを利用するハイブリダイゼーション検出装置及び検出方法。 - Google Patents
インピーダンスマッチングを利用するハイブリダイゼーション検出装置及び検出方法。 Download PDFInfo
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Abstract
【課題】 核酸分子に対する電気力学的作用を加える技術の実用化を推進すること。
【解決手段】 検出用核酸Dと標的核酸Tとの間のハイブリダイゼーションの場を提供する反応領域Rと、該反応領域Rに貯留又保持される媒質Mに対して電界印加可能に配置される対向電極E1−E2と、を備え、この対向電極E1−E2と前記電界印加を行うための電源Vとの間に、インピーダンスマッチング手段21を設けたハイブリダイゼーション検出装置Uなどを提供する。インピーダンスマッチング手段により、(1)省電力、(2)反応領域に対する供給電力の一定化(安定化)、(3)高周波交流電界を利用する場合に特に想定される反射波の消去、(4)位相遅れの解消、などを確実に達成できる。
【選択図】 図1
【解決手段】 検出用核酸Dと標的核酸Tとの間のハイブリダイゼーションの場を提供する反応領域Rと、該反応領域Rに貯留又保持される媒質Mに対して電界印加可能に配置される対向電極E1−E2と、を備え、この対向電極E1−E2と前記電界印加を行うための電源Vとの間に、インピーダンスマッチング手段21を設けたハイブリダイゼーション検出装置Uなどを提供する。インピーダンスマッチング手段により、(1)省電力、(2)反応領域に対する供給電力の一定化(安定化)、(3)高周波交流電界を利用する場合に特に想定される反射波の消去、(4)位相遅れの解消、などを確実に達成できる。
【選択図】 図1
Description
本発明は、ハイブリダイゼーション検出技術に関する。より詳しくは、インピーダンスマッチングを利用するハイブリダイゼーション検出装置及び検出方法に関する。
近年、マイクロアレイ技術によって所定のDNAが微細配列された、いわゆるDNAチップ又はDNAマイクロアレイ(以下、本願では「DNAチップ」と総称。)と呼ばれるバイオアッセイ用の集積基板が、遺伝子の変異解析、SNPs(一塩基多型)分析、遺伝子発現頻度解析等に利用されるようになり、創薬、臨床診断、薬理ジェノミクス、進化の研究、法医学その他の分野において広範囲に活用され始めている。
この「DNAチップ」は、ガラス基板やシリコン基板上に多種・多数のDNAオリゴ鎖やcDNA(complementary DNA)等が集積されていることから、ハイブリダイゼーションの網羅的解析が可能となる点が特徴とされている。
このDNAチップによる解析手法の一例を簡潔に説明すれば、ガラス基板やシリコン基板上に保持されたDNAプローブに対して、細胞、組織等から抽出したmRNAを逆転写PCR反応等によって蛍光プローブdNTPを組み込みながらPCR増幅し、前記基板上においてハイブリダイゼーションを行った後に、所定の検出器で蛍光測定を行うという手法である。
次に、液相中において荷電して存在する物質に対する電界の作用に係わる技術が知られている。具体的には、(核酸分子)は、液相中において電界の作用を受けると伸長又は移動することが知られている。その原理は、核酸分子の骨格をなすリン酸イオン(陰電荷)とその周辺にある水がイオン化した水素原子(陽電荷)とによってイオン曇を作っていると考えられ、これらの陰電荷及び陽電荷により生じる分極ベクトル(双極子)が、高周波高電圧の印加により全体として一方向を向き、その結果として伸長し、加えて、電気力線が一部に集中する不均一電界が印加された場合は、電気力線が集中する部位に向かって移動する(非特許文献1参照)。
また、数十から数百μmのギャップを持つ微細電極中にDNA溶液をおき、ここに1MV/m、1MHz程度の高周波電界を印加すると、ランダムコイル状で存在するDNAに誘電分極が生じ、その結果、DNA分子は電界と平行に直線状に引き伸ばされる。そして、この「誘電泳動」と呼ばれる電気力学的効果によって、分極したDNAは自発的に電極端へと引き寄せられ、電極エッジにその一端を接した形で固定される(非特許文献2参照)。
ここで、反応領域に電極を設けて、該電極によって電場を形成し、核酸分子に対して電気力学的な作用を加える装置や方法が提案されている。
例えば、特許文献1には、電場によって核酸内部に生成した双極子と電場形成電極との間に発生する静電吸引力などを利用して、一部が基板に固定された状態の核酸複合体(二本鎖)を平面状に展開する技術が開示されている。
特許文献2には、対向電極の一方にDNAプローブを固定し、電極間に直流電圧を印加したり、ゲルによる電気泳動を併用したりすることにより、相補鎖サンプルDNAと非相補鎖サンプルDNAを分離する技術が開示されている。
特許文献3では、電極ピンにオリゴヌクレオチドが固定された構成を備えるDNAチップが提案されている。
Seiichi Suzuki,Takeshi Yamanashi,Shin-ichiTazawa,Osamu Kurosawa and Masao Washizu:"Quantitative analysis on electrostatic orientation of DNA in stationary AC electric field using fluorescence anisotropy",IEEE Transaction on Industrial Applications,Vol.34,No.1,P75-83(1998)。 鷲津正夫、「見ながら行うDNAハンドリング」、可視化情報 Vol.20 No.76(2000年1月)。 特開平7−224086号公報。
特開2002−168864号公報。
特開2001−241315号公報。
Seiichi Suzuki,Takeshi Yamanashi,Shin-ichiTazawa,Osamu Kurosawa and Masao Washizu:"Quantitative analysis on electrostatic orientation of DNA in stationary AC electric field using fluorescence anisotropy",IEEE Transaction on Industrial Applications,Vol.34,No.1,P75-83(1998)。 鷲津正夫、「見ながら行うDNAハンドリング」、可視化情報 Vol.20 No.76(2000年1月)。
現在提案されている様々なDNAチップ技術は、端的に言えば、物質間の相互作用の場、即ちハイブリダイゼーションの場を提供する反応領域を基板上に予め設定しておき、この反応領域中にプローブDNA等の検出用核酸を固定しておくことによって、この検出用核酸と相補的な標的核酸との間の相互作用であるハイブリダイゼーションを解析する技術であると言える。
この種のDNAチップを用いたハイブリダイゼーション検出技術においては、DNAプローブなどの検出用核酸の固定化作業やハイブリダイゼーションに時間が長くかかるという基本的な技術的課題がある。
この課題を解決するため、核酸分子に何らかの電気力学的作用(例えば、直流電界による電気泳動、静電誘導、誘電泳動など)を利用する技術が今後も進展すると考えられるが、前記技術の実用化には、さらに解決すべき課題がある。例えば、交流電界を利用する場合、投入される電力は反応領域内の媒質に100%供給されず、反射波よび位相遅れが生じる。そのため、伝達されなかった電力分は、電力供給側のシステムに熱的な負荷となりうる。その結果、電力供給源の故障を引き起こすと共に、非常に電力使用効率の悪いシステムとなってしまうという問題がある。
そこで、本発明は、核酸分子に対する電気力学的作用を加える技術の実用化を踏まえ、(1)省電力、(2)反応領域に対する供給電力の一定化(安定化)、(3)高周波交流電界を利用する場合に特に想定される反射波の消去、(4)位相遅れの解消、などを確実に達成できるハイブリダイゼーション検出装置及び検出方法を提供することを主な目的とする。
本発明では、第一に、検出用核酸と標的核酸との間のハイブリダイゼーションの場を提供する反応領域と、該反応領域に貯留又保持される媒質に対して電界印加可能に配置される対向電極と、を備え、前記対向電極と前記電界印加を行うための電源との間にインピーダンスマッチング手段を設けたハイブリダイゼーション検出装置を提供する。
第二に、ハイブリダイゼーションの場となる反応領域に貯留又保持される媒質に対して、所定のタイミングで電界印加を行うことにより、検出用核酸と標的核酸との間のハイブリダイゼーション検出を行う方法であって、前記電界印加を担う電源の内部インピーダンスと負荷インピーダンスをマッチング(整合)することを特徴とするハイブリダイゼーション検出方法を提供する。
これらの発明によれば、核酸分子に対して電気力学的作用を与えた条件を所定の段階で行うハイブリダイゼーション検出技術において、電源、即ち信号発生源から出力される内部インピーダンスと電極の負荷インピーダンスとをマッチング(整合)することによって、例えば、投入電力の損失低減、即ち省電力や反応領域に対する供給電力の一定化(安定化)などを達成することができる。
次に、ハイブリダイゼーション検出に係わるアッセイにおいて、反応領域中の媒質に対して直流電界を印加すると、前記媒質が電気分解して気泡を発生するという問題などがあるので、望ましくないことから、交流電界、特に高周波交流電界を採用する。この高周波交流電界を反応領域内の媒質に印加することにより、核酸分子の双極子に働きかけて誘電泳動し、該核酸分子を伸長(伸張)させたり、目的の領域や部位へ移動させたりすることが可能となる。
このような高周波交流電界を用いた電界印加手段又は手順を採用した場合では、電極からの反射波が発生し、パルス信号の波形に乱れが発生する問題や投入電力の位相遅れの問題などが生じ、前記誘電泳動の作用効果に悪影響を及ぼすと考えられる。
そこで、本発明では、前記インピーダンスマッチング手段を、電極側からの反射波を無くすための手段又は手順として利用して、適正な交流電界をハイブリダイゼーション検出システムに印加することによって、核酸分子に対する電気力学的効果を安定させ、ひいては、ハイブリダイゼーション反応を安定化させるようにする。
ここで、インピーダンスの大きさは、インダクタンス値(L値)や静電容量値(C値)などで決定される。「インダクタンス値(L値)」は、電流変化に対して発生する電圧の割合を表す量(単位:H(ヘンリー))である。従って、ハイブリダイゼーション検出に係わるアッセイに利用される上記電界印加の際の投入電力(電流)が変化すると、このインダクタンス値も変動する。
また、「静電容量値(C値)は、一般に、次の「式1」で表されるから、上記反応領域に対する電界印加用の対向電極の面積や距離が一定である場合では、電極間に存在する物質の比誘電率の変化によって変動する。
電界印加を用いるハイブリダイゼーション検出に係わるアッセイにおいては、目的に応じて電界強度を至適な範囲に調整することが必要となる。電界強度の調整を行う作業は、反応領域内へ実投入される電流を変化させる作業であるから、この作業の過程ではインダクタンス値が変化する。従って、電源から出力される内部インピーダンスの大きさが変化する。
一方、該ハイブリダイゼーションの場となる反応領域に設けられた対向電極間に存在する物質は、検出用核酸のみが存在する段階、検出用核酸とともに標的核酸が存在する段階、検出用核酸や標的核酸とともにインターカレーターが存在する段階などのように、アッセイ段階によって変化するので、上記静電容量値が変化する。従って、電極の負荷インピーダンスが変化する。
このため、本発明では、電源の内部インピーダンスと電極の負荷インピーダンスのマッチングを図る手段又は方法において、各インピーダンスの大きさを決定するインダクタンス値(L値)と静電容量値(C値)を改変するための信号を、所定の制御手段からインピーダンスマッチング回路へ送信するように工夫し、前記両インピーダンスのマッチングを自動的に行うようにする。
ここで、本発明で使用する主たる技術用語の定義付けを行う。
「検出用核酸」とは、反応領域に貯留又は保持された媒質中に固定又は遊離の状態で存在し、当該核酸分子と特異的に相互作用する相補的塩基配列を有する核酸分子を検出するための検出子として機能する核酸分子である。代表例は、DNAプローブなどのオリゴヌクレオチド又はポリヌクレオチドである。
「標的核酸」とは、前記検出用核酸と相補的な塩基配列を有する核酸分子である。
「核酸」とは、プリンまたはピリミジン塩基と糖がグリコシド結合したヌクレオシドのリン酸エステルの重合体(ヌクレオチド鎖)を意味し、プローブDNAを含むオリゴヌクレオチド、ポリヌクレオチド、プリンヌクレオチドとピリミジンヌクレオチオドが重合したDNA(全長あるいはその断片)、逆転写により得られるcDNA(cプローブDNA)、RNA、ポリアミドヌクレオチド誘導体(PNA)等を広く含む。
「ハイブリダイゼーション」は、相補的な塩基配列構造を備える間の相補鎖(二本鎖)形成反応を意味する。「ミスハイブリダイゼーション」は、正規ではない前記相補鎖形成反応を意味する。
「反応領域」は、ハイブリダイゼーションその他の相互作用の反応場を提供できる領域であり、例えば、液相やゲルなどを貯留できるウエル形状を有する反応場を挙げることができる。この反応領域で行われる相互作用は、本発明の目的や効果に沿う限りにおいて、狭く限定されない。例えば、一本鎖核酸間の相互反応、即ちハイブリダイゼーションに加え、検出用核酸から所望の二本鎖核酸を形成し、該二本鎖核酸とペプチド(又はタンパク質)の相互反応、酵素応答反応その他の分子間相互反応も行わせることも可能である。例えば、前記二本鎖核酸を用いる場合は、転写因子であるホルモンレセプター等のレセプター分子と応答配列DNA部分の結合等を分析することができる。
「対向電極」は、電極面が向かい合った状態で配置される少なくとも一対の電極を意味する。
「誘電泳動」は、電界が一様でない電場において、分子が電界の強い方へ駆動する現象であり、交流電圧をかけた場合も、かけた電圧の極性の反転につれて分極の極性も反転するので、直流の場合と同様に駆動効果が得られる(監修・林 輝、「マイクロマシンと材料技術(シーエムシー発行)」、P37〜P46・第5章・細胞およびDNAのマニピュレーション参照)。
本発明によれば、反応領域内に存在する物質、例えば、核酸分子に対する電気力学的作用を加える技術において、投入電力の損失低減、即ち電力使用効率の向上(省電力)、反応領域に対する供給電力の一定化(安定化)、高周波交流電界を利用する場合に発生するパルス信号の波形乱れや投入電力の位相遅れなどの問題の原因となる反射波消去などを、確実に行うことができる。
供給されなかった電力分が原因となって発生し得る、電力供給側のシステムや装置に対する熱的な負荷による電力供給源の故障を、有効に防止できる。入電力効率が良くなることで低消費電力化が可能となって、電源供給システムにも必要以上の負荷が掛からなくなる。さらに、例えば、100MHz以上の高周波帯域においても、パワーアンプ等を必要とせず、安価な装置構成により、電力が投入できるようになる。
以下、本発明を実施するための好適な形態について、添付図面を参照しながら説明する。なお、添付図面に示された各実施形態は、本発明の代表的な実施形態の一例を示したものであり、これにより本発明の範囲が狭く解釈されることはない。
まず、図1は、本発明に係るハイブリダイゼーション検出装置の好適な実施形態の要部構成を表す一部断面図である。
図1中の符号Uは、本発明に係るハイブリダイゼーション検出装置(以下「検出装置」)を示している。この検出装置Uは、大別すると、ハイブリダイゼーションを進行させ、これを検出するための検出部1と、該検出部1に形成された対向電極E1−E2へ電界を印加するための電界印加手段2と、を備える。
図1中の符号1aは、前記検出部1の一実施形態を示している。この検出部1aは、下側基板Aと、この下側基板Aに重ね合わされる上側基板Bと、から構成されている。下側基板Aは、基材層11と、該基材層11に積層された導体層12と、この導体層12に積層された絶縁層13と、該絶縁層13に積層され、反応領域R(例えば、ウエル形状)が所定の表面加工により形成された表層14と、を備える。上側基板Bは、下側の絶縁層15と、該絶縁層15に積層された導体層16と、該導体層16に積層された上層17と、を備える。
下側基板Aの基材層11は、CD(Compact Disc)、DVD(Degital Versatile Disc)、MD(Mini Disc)等の光情報記録媒体と同様の基材から形成することができる。また、本発明に係る基板の形状は、特に限定されない。例えば、矩形状、あるいは円盤状をなすように、自由に形成することができる。
基材層11は、石英ガラスやシリコン、ポリカーボネート、ポリスチレン等の合成樹脂、好ましくは射出成形可能な合成樹脂によって、所望の形状に成形する。基板1を安価な合成樹脂を用いて基板を成形することで、従来使用されていたガラスチップに比して、低ランニングコストを実現できる。
基材層11は、ハイブリダイゼーション検出用に用いられる所定波長の励起光P(図2参照)を透過可能な光透過性の合成樹脂で形成するのが望ましい。絶縁層12は、SiO2、SiC、SiN、SiOC、SiOF、TiO2などの無機物で形成し、加えて、電極E1も、光透過能を有する導体であるITO(インジウム−スズ−オキサイド)などで形成するのが望ましい。なお、絶縁層12(及び絶縁層14)は、反応領域R中に貯留される場合があるイオン性の媒質による電気化学的な反応を防止するなどの役割を果たす。
このような基材層11の材料構成によれば、図2に示すように、基板(基材層11)の下方側(裏面側)からの励起光Pの照射によって、反応領域R内でのハイブリダイゼーションを検出することができる。
具体的には、基板裏面側からの励起光Pによって、反応領域R内にハイブリダイゼーションした状態で存在する蛍光標識された標的核酸から発せられた蛍光F、あるいは相補鎖を形成する塩基対に挿入結合された蛍光インターカレーターから発せられた蛍光Fを、基板の下方側(裏面側)に配置した光学系装置群Xにより検出することができる(図2参照)。
なお、情報読み取り光である励起光Pは、例えば、図示しないレーザーダイオードから出射され、図示しないコリメータレンズにて平行光とされて進行し、基板下方に配置された集光レンズL1に入射し、絞り込まれる。図2中の符号L2は、蛍光Fを絞り込むための集光レンズ、符号Qは、該蛍光Fを検出するためのディテクタをブロック図的に簡略に示している。
検出部1a、あるいは該検出部1aが設けられたDNAチップの周辺に、アッセイや検出に必要な装置群の配置設計を行う場合を想定すると、検出部1aの上方側の領域には、試料溶液などの滴下又は注入に係わるノズルNを含む装置群Yをまとめて配置しておき、検出部1aの下方側には、検出(読み取り)用の光学的装置群Xをまとめて配置することができる。この結果、装置群全体のコンパクト化を達成できる。
次に、下側基板Aを構成する上記表層13について、その一例を挙げると、感光性のポリイミド樹脂によって形成することができる。この感光性のポリイミド樹脂を、フォトレジストを用いた表面処理することにより、微細な反応領域Rを形成することができる。
この反応領域Rの形状やサイズは、特に限定されないが、その長さ、幅、深さは、それぞれ数μmから数百μmであって、このサイズ値は、励起光のスポット径やサンプル溶液(検出用核酸含有溶液、標的核酸含有溶液)などの媒質Mの最小滴下可能量に基づいて決定することができる。
なお、媒質Mは、上側基板Bに形成され孔であり、反応領域Rに連通する孔21(又は22)の上方からノズルN(例えば、インクジェットノズル)を介して所定量滴下等して供給するようにし(図2参照)、さらに、毛細管現象や媒質Mに対する親媒性を利用した原理によって、反応領域R内に導かれるようにする構成を採用できる。
ここで、検出部1aにおける(下側基板Aの)導体層12と(上側基板Bの)導体層16は、反応領域Rを挟むように上下に配置されており(図1、図2参照)、スイッチSのオン/オフ操作によって、電源Gを介し、反応領域R内に貯留又は保持される媒質Mに所望の電界を印加するための対向電極E1−E2として機能する。
なお、対向電極E1−E2は、電界強度の選択、交流と直流の選択、あるいは高周波電界や低周波電界の選択を自在に行うことができるように制御可能とするのが望ましい(以下に説明する他の対向電極でも同様)。また、対向電極E1−E2は、反応領域Rの上下に配置する形態(図1など参照)に限定されず、左右に振り分けて配置する形態(図示せず)、さらには、複数の対向電極を備える形態などを適宜採用できる。
この対向電極E1−E2は、例えば、高周波交流電界、より具体例としては、電界条件が、約1×106V/m、約100kHz〜100MHz、サイン波である高周波交流電界によって得られる誘電泳動の電気力学的効果によって、前記媒質M中に存在する核酸分子(検出用核酸、標的核酸)を、直鎖状に伸長(伸張)させたり、電気力線が集中する(不均一電界が形成される)電極表面部位に向けて移動させたり、あるいは、伸長(伸張)させながら移動又は引き寄せたりするための手段として機能する。なお、交流電界の場合は、電気分解による気泡の発生がなく、反応系に影響が少ないことから、直流電界より望ましい。
ここで、ハイブリダイゼーションは、通常、ランダムコイル状に丸まったり、絡まったりしている状態の一本鎖核酸分子同士間で進行するので、立体障害の影響などを受けて、相補結合の効率が低下し、ミスハイブリダイゼーションも起き易くなる。
しかし、対向電極E1−E2を介して電界印加を行うことよって、自然のブラウン運動条件下でランダムコイル状を呈する核酸分子の高次構造を、伸長(伸張)状態に調整したり、あるいは、核酸分子の会合の確率(即ち、濃度)が高まるように、所定領域へ移動させておいたりすることができる。
電界印加がなされた状態でハイブリダイゼーションを行うと、高次構造が直鎖状となり立体障害の影響を受けなくなるので、該ハイブリダイゼーションの効率と精度を飛躍的に高めることができる。この結果、高速のハイブリダイゼーション検出を実現できるともに、ミスハイブリダイゼーションを低減することが可能となる。
なお、「立体障害(steric hindrance)」は、分子内の反応中心等の近傍に嵩高い置換基の存在や反応分子の姿勢や立体構造(高次構造)によって、反応相手の分子の接近が困難になることによって、所望の反応(ここでは、ハイブリダイゼーション)が起こり難くなる現象を意味する。
次に、本発明に係る検出装置Uを構成する「電界印加手段2」について説明する。
この電界印加手段2は、少なくとも、電源(信号発生源)Gと、電界印加のオン/オフを操作するためのスイッチSと、インピーダンスマッチング手段21と、を備える。この電界印加手段2は、検出部1が設けられたような基板を用いたハイブリダイゼーション検出方法に好適に利用できる。
図3には、この電界印加手段2の基本構成の一例、並びにインピーダンスマッチング手段21の回路構成の一例が簡略に示されている。まず、この図3に基づいて説明すると、インピーダンスマッチング手段21は、接地された電源Gと接地された検出部1との間に設けられている。そして、インピーダンスマッチング手段21は、各々接地されている二つの可変コンデンサ(Capacitor)C1,C2と、これらの可変コンデンサC1,C2の間に介在している中和素子であるインダクタンス中和回路(中和コイル)Lnと、を備える。
可変コンデンサC1,C2は、電界印加手段2において、静電容量を調整する役割を果たし、インダクタンス中和回路Lnは、電界印加手段2において、インダクタンスを調整する役割を果たす。このような構成を用いて、電源(信号発生源)Gから出力される内部インピーダンスZvと電源の負荷インピーダンスZeをマッチング(整合)する。即ち、Zv=Zeとする。
さらに、図4には、電界印加手段2の好適な実施形態のより詳細な構成がブロック図的に示されている。
接地された電源(即ち、信号発生源)Gから出力された信号は、該電源Gに接続されている増幅器(アンプ)22によって増大されて出力信号として取り出される。そして、この出力信号に係わる伝送波Wtは、符号23で示す方向性結合器(Directional Coupler)を介して、信号検出器(センサー)24tに入って検出され、測定器25tで出力電力が測定される。制御部26は、この測定値を監視する。
また、末端の対向電極E1,E2からの反射波Wrは、方向性結合器23を介して、信号検出器(センサー)24tで検出され、測定器25tで反射電力が測定される。制御部26は、この測定値を監視する。
インピーダンスマッチング手段21は、前記測定値に基づいて制御部26から発せられた制御信号Cに基づいて、電源の内部インピーダンスZvの大きさと対向電極E1,E2の負荷インピーダンスZeの大きさをそれぞれ調整し(図4参照)、これにより、両インピーダンスZv,Zeを整合してZv=Zeとする。具体的には、制御部26で測定された反射電力が最も小さくなるように、マッチング回路21内の容量成分あるいはインダクタンス成分を、例えばモータ駆動により変化させることでインピーダンス自動調整が行われる。
以上のインピーダンスマッチング手段21によって、検出部1の反応領域R内に存在する物質、例えば、核酸分子に対する電気力学的作用を加える技術において、電源Gから対向電極E1,E2へ投入される電力の損失低減が図られ、その投入電力が最大となる。
また、反応領域Rに対する投入電力(供給電力)の一定化(安定化)、さらには、高周波電界、交流電界、特に高周波交流電界を利用する場合に発生するパルス信号の波形乱れの抑制、投入電力の位相遅れなどの問題の原因となる対向電極E1,E2からの反射波Wrの消去などを、確実に行うことができる。
なお、図5に示すように、反応領域Rに複数の対向電極(ここでは、E1−E2がとE3−E4の二対)が設けられている検出部1bの場合では、それぞれの対向電極E1−E2,E3−E4に対して電力を供給する電界印加手段2a,2bの線路中に、それぞれインピーダンスマッチング手段21を設けるようにすればよい。
ここで、本発明では、例えば、誘電泳動の電気力学的効果を、ハイブリダイゼーション検出に係わる必要なアッセイを、より効率的に行うために、検出部1の電極表面E1,E2の一方又は両方を粗面状に加工して微細な凹凸形状を形成し、電極表面に不均一電界(不均一な電場)を形成するのが望ましい。
なお、電極表面(あるいはこれを被覆する絶縁層)を粗面状に加工する方法は、例えば、公知のスパッタリング蒸着技術、エピキタシー蒸着技術やエッチング技術を用いて実施することができるが、その方法自体は特に限定されない。
電極の粗面(凹凸形状部位)には、電界強度の傾きがあるところ(電界の集中するところ)が発生するので、誘電泳動により核酸分子を電気的に吸引することができる。より具体的には、不均一な電界(電場)では、双極子を持つ核酸分子などを誘電泳動によって伸長(伸張)させたり、駆動させて電極表面に引き寄せたりすることが効果的に実施できる。
この電気力学的な現象を利用して、検出用核酸Dを電極表面に整列固定させたり、固定された検出用核酸Dと標的核酸Tとの間の会合確率を高めて、ハイブリダイゼーションを効率よく、短時間で進行させたりすることができる。
次に、図6は、本発明に係る検出部の変形形態の要部構成を表す断面図である。
この変形形態である検出部1cは、対向電極の一方の電極(ここでは、E1)の表面積を、他方側の電極(ここでは、E2)の表面積よりも狭小の表面に形成されている点が特徴である。
この構成によって、表面積がより狭小に形成されている電極E1には、電界(電気力線)がより集中して不均一電界が形成されるため(図13中の符号Z参照)、誘電泳動によって、核酸分子が該電極E1に向けて移動する。なお、参照図面である図6では、遊離状態の検出用核酸Dが、電極E1に向けて移動する様子が、代表例として模式的に示されている。
これによって、反応領域R内に広く拡散し、遊離状態で存在する核酸分子を、電極E1周辺の領域に集めて、その濃度を高く維持した状態を得ることができる。さらに、それに続いて、電極E1表面を粗面処理加工した場合では、さらにその粗面部位へより電界が局部的に集中するので、前記核酸分子を移動させたり、固定したりすることができる。
なお、図7に図示された変形形態である検出部1dのように、反応領域Rを挟んで上下に配置された対向電極E1−E2と左右に配置された対向電極E3−E4を設けるようにしてもよい。
この場合、一方の対向電極E1−E2を、検出用核酸Dの高次構造調整、固定化アッセイの効率向上、ハイブリダイゼーション効率向上などを目的とする高周波電界印加手段として使用し、他方の対向電極E3−E4は、ハイブリダイゼーション検出の際の障害となる余剰物質B(例えば、余剰の検出用核酸D、余剰の標的核酸T、余剰のインターカレーターなど)やミスハイブリダイゼーションした核酸分子を、検出表面である電極(例えば、E1)部位から他の領域へ強制的に除去するための電界印加手段として使用することができる。
このような電界による誘電泳動を用いた除去作業は、現在一般に実施されている水溶液(緩衝液)を用いた洗浄除去作業に変わり得る技術となる。なお、図7では、電界印加手段2bによって対向電極E3−E4に対して高周波交流電界が印加され、誘電泳動の作用により、前記余剰物質Bが電極E3、E4側に引き寄せられ、ハイブリダイゼーションが進行した電極E1領域から除去されている様子が模式的に示されている。
以上説明してきた(反応領域Rを臨む対向電極を構成する)電極E1,E2、(あるいはE3,E4)表面は、DNAプローブなどの検出用核酸Dを固定するための検出表面として用いることができる。
DNAプローブ等の所望の検出用核酸Dを固定するため、検出表面として利用する電極表面を、例えば、アミノ基含有のシランカップリング剤溶液やポリリシン溶液で予め表面処理しておく方法を採用できる。また、合成樹脂製基板に対する表面処理加工を行う場合は、その表面をプラズマ処理及びDUV(DeepUV、遠赤外)照射処理後、アミノ基含有シランカップリング剤溶液で処理することもできる。
また、電極表面に銅、銀、アルミニウム又は金をスパッタして成膜して、その表層にアミノ基、チオール基、カルボキシル基等の官能基(活性基)を有する物質やシステアミン、アビジン(例えば、ストレプトアビジン)等をコートしてもよい。
アビジンによって表面処理された検出表面の場合には、ビオチン化されたDNAプローブ末端の固定に適している。あるいは、チオール(SH)基によって表面処理された検出表面の場合には、チオール基が末端に修飾されたプローブDNA等の検出用物質Dをジスルフィド結合(−S−S−結合)により固定することに適している。
次に、図8に基づいて、上記検出部1(1a〜1dなど)が設けられたDNAチップの好適な実施形態の一例について説明する。なお、「DNAチップ」は、DNAプローブなどの検出用核酸が遊離状態又は固定化されて微細配列された状態とされたハイブリダイゼーション検出用基板を意味し、DNAマイクロアレイの概念も含む。
図8に示されたDNAチップ10の場合は、CD様の円盤状をなす基板上に、上述した検出部1(1a〜1dなど)が、例えば、周方向、螺旋状、あるいは放射状に配列されている。各検出部1に設けられた対向電極(例えば、電極E1−E2や電極E3−E4)に対しては、中央の穴(孔)10aに対して、図示しない通電治具を挿着し、基板に配設した給電用配線を介して、導体層(電極)に電界を印加することができる。
円盤状のDNAチップ10では、これを回転させて、サーボ用レーザー光を基板に照射してサーボ機構を働かせながら位置を検出し、所定の反応領域Rに向けて、媒質Mを滴下等の手段によって基板上方側から供給することができる。
あるいは、所定の反応領域Rに対して、励起光Pを基板下方(裏面)側から照射して、得られる蛍光を光ピックアップ手段によって検出することによって、ハイブリダイゼーションを検出することができる。
検出用の蛍光は、標的核酸にラベルされた蛍光色素や二本鎖の塩基対に挿入結合して蛍光を発するインターカレーターなどを用いることができる。なお、インターカレーターの反応領域Rへの投入時期は、ハイブリダイゼーション後が一般的であるが、標的核酸Tと同時に反応領域Rに添加することにより、アッセイ工程を簡略化できる。
まず、対照区として、実際に、図1及び図2に示されたと同様の構成の検出部を用いて、インピーダンスマッチングを行わない状態での対向電極間に投入された実電力の各周波数を測定する実験を行った。その投入電力(設定値)に対する実投入電力割合を示したグラフを図9に示す。なお、図9の横軸は周波数、縦軸は、実投入電力割合(%)を示している。
周波数に依存するが、最大でも実投入電力は10MHzのとき23%程度である。残りの77%は反応領域内に投入されず電源側の負荷として熱となり消費されていることになる。これは、電源に必要以上の負荷が与えられることになる。その場合、電源の許容能力にもよるが、高周波で高電圧になると位相遅れも生じ、投入電力自体も不安定となり、ハイブリダイゼーション反応も不安定となる。
そこで、装置のインピーダンスを50Ω基準で測定し、その結果からインピーダンスのマッチング回路を装置に組み込み、実投入電力を測定した。まず、検出部にハイブリダイゼーション溶液を含んだ装置のインピーダンスを測定した。その結果を図10に示す。なお、図10の横軸は周波数(Hz)、縦軸は、複素インピーダンス(Ω)を示している。
この結果を基にして、図3に示したような代表的なマッチング回路において、例えば、投入信号の周波数1MHz、30MHz、100MHzに対して、以下の表1のように回路定数を求めた。
この結果を基にして、図3に示したような代表的なマッチング回路において、例えば、投入信号の周波数1MHz、30MHz、100MHzに対して、以下の表1のように回路定数を求めた。
そして、前記各周波数に対して、図3のようなマッチング回路を作製し、ハイブリダイゼーション測定システムに組み込んだところ、設定投入電力に対して99%以上の電力が検出部の反応領域に投入されている状態を作り出すことができた。
これにより、例えば、従来20%しか実電力が投入されていなかった対照区においては、電力供給部からは従来の20%の設定値で電力を供給すればよいことになる。つまり、電界値換算で、従来1V/μmを印加していた場合では、0.2V/μm相当の電界印加により、核酸分子の誘電泳動効果が十分に得られることになる。
そして、約80%を熱として電源供給部で放出していたエネルギーを無駄にすることはなくなり、電力投入の効率の良いハイブリダイゼーション検出装置を提供することができる。また、投入電力不安定化もなくなり、ハイブリダイゼーション反応自体の安定化を達成できる。
本発明は、DNAチップなどのハイブリダイゼーション検出技術に特に有用である。
1(1a,1b,1c,1d) ハイブリダイゼーション検出部(検出部)
2(2a,2b) 電界印加手段
10 DNAチップ(特に、検出用核酸が固定化された基板)
21 インピーダンスマッチング手段(回路)
D 検出用核酸(例、DNAプローブ)
E1−E2,E3−E4 対向電極
F 蛍光
M (溶液やゲルなどの)媒質
P 励起光
R 反応領域
T 標的核酸
U ハイブリダイゼーション検出装置
2(2a,2b) 電界印加手段
10 DNAチップ(特に、検出用核酸が固定化された基板)
21 インピーダンスマッチング手段(回路)
D 検出用核酸(例、DNAプローブ)
E1−E2,E3−E4 対向電極
F 蛍光
M (溶液やゲルなどの)媒質
P 励起光
R 反応領域
T 標的核酸
U ハイブリダイゼーション検出装置
Claims (6)
- 検出用核酸と標的核酸との間のハイブリダイゼーションの場を提供する反応領域と、該反応領域に貯留又保持される媒質に対して電界印加可能に配置される対向電極と、を備え、前記対向電極と前記電界印加を行うための電源との間にインピーダンスマッチング手段を設けたハイブリダイゼーション検出装置。
- 前記電界印加によって、前記媒質中に存在する核酸分子を誘電泳動することを特徴とする請求項1記載のハイブリダイゼーション検出装置。
- 前記電界は、高周波交流電界であることを特徴とする請求項1記載のハイブリダイゼーション検出装置。
- 前記インピーダンスマッチング手段は、前記対向電極側からの反射波を無くす手段であることを特徴とする請求項3記載のハイブリダイゼーション検出装置。
- インダクタンス値(L値)と静電容量値(C値)を調整する信号を前記インピーダンスマッチング手段へ送信する制御手段を備えることを特徴とする請求項1記載のハイブリダイゼーション検出装置。
- ハイブリダイゼーションの場となる反応領域に貯留又保持される媒質に対して、所定のタイミングで電界印加を行うことにより、検出用核酸と標的核酸との間のハイブリダイゼーション検出を行う方法であって、
前記電界印加を担う電源の内部インピーダンスと負荷インピーダンスをマッチングすることを特徴とするハイブリダイゼーション検出方法。
Priority Applications (1)
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---|---|---|---|
JP2004167649A JP2005341913A (ja) | 2004-06-04 | 2004-06-04 | インピーダンスマッチングを利用するハイブリダイゼーション検出装置及び検出方法。 |
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JP2006337065A (ja) * | 2005-05-31 | 2006-12-14 | Sony Corp | 物質間の相互作用するバイオアッセイ用基板と相互作用検出装置 |
JP2011500025A (ja) * | 2007-10-09 | 2011-01-06 | ユニヴァーシティー オブ ノートル ダム デュ ラック | 多種類の標的を検出するためのマイクロ流体プラットフォーム |
-
2004
- 2004-06-04 JP JP2004167649A patent/JP2005341913A/ja active Pending
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JP4618007B2 (ja) * | 2005-05-31 | 2011-01-26 | ソニー株式会社 | 物質間の相互作用するバイオアッセイ用基板と相互作用検出装置 |
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