JP2006003148A - リザーバ部に連通するチャネル部を備える検出部及びバイオアッセイ用基板 - Google Patents
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Abstract
【課題】 物質間の相互作用の場となるチャネル部において、相互作用の高速化を達成する。
【解決手段】 媒質Mを貯留又は保持するリザーバ部Rと、該リザーバ部Rに連通し、前記リザーバ部Rから送られてくる前記媒質中で進行する物質間の相互作用の場となるチャネル部Cと、該チャネル部Cに連通する外気連通部Aと、前記チャネル部Cに臨むように対向配置され、該チャネル部C内の媒質Mに電界印加可能な対向電極E1−E2と、を備える検出部、並びに該検出部を備えるバイオアッセイ用基板を提供する。
【選択図】 図4
【解決手段】 媒質Mを貯留又は保持するリザーバ部Rと、該リザーバ部Rに連通し、前記リザーバ部Rから送られてくる前記媒質中で進行する物質間の相互作用の場となるチャネル部Cと、該チャネル部Cに連通する外気連通部Aと、前記チャネル部Cに臨むように対向配置され、該チャネル部C内の媒質Mに電界印加可能な対向電極E1−E2と、を備える検出部、並びに該検出部を備えるバイオアッセイ用基板を提供する。
【選択図】 図4
Description
本発明は、ハイブリダイゼーションその他の物質間の相互作用を検出する技術に関する。より詳しくは、リザーバ部に連通するチャネル部において、物質間の相互作用を、電気力学的効果を利用して検出する技術に関する。
近年において提案されている様々なセンサーチップ技術の典型的なものは、端的に言えば、物質間の相互作用を提供する反応領域を基板上に予め設定しておき、この反応領域中に、予めプローブとなる検出用物質を遊離状態、あるいは固定状態としておくことによって、この検出用物質と標的物質との間の特異的な相互作用を、蛍光強度検出などの方法に基づいて解析する技術であると言えるだろう。
一例を挙げると、マイクロアレイ技術によって所定のDNAが微細配列された、いわゆるDNAチップ又はDNAマイクロアレイ(以下、本願では「DNAチップ」と総称。)と呼ばれるバイオアッセイ用の集積基板が、遺伝子の変異解析、SNPs(一塩基多型)分析、遺伝子発現頻度解析等に利用されるようになり、創薬、臨床診断、薬理ジェノミクス、進化の研究、法医学その他の分野において広範囲に活用され始めている。
この「DNAチップ」は、ガラス基板やシリコン基板上に多種・多数のDNAオリゴ鎖やcDNA(complementary DNA)等が集積されていることから、ハイブリダイゼーションの網羅的解析が可能となる点が特徴とされているが、現在、ハイブリダイゼーション検出精度向上などを目的として、様々な改良が加えられている。
例えば、特許文献1では、リザーバに連通するチャネル内に、Tm(融解温度)が高いDNAプローブを含むスポットから順に配列させておいて、リザーバに注入された所定量のサンプルを電気泳動等によりチャネルに移動させ、温度制御下でハイブリダイゼーションを進行させるという構成のDNAマイクロアレイが開示されている。
また、特許文献2には、リザーバにDNAプローブが固定されたビーズを注入した後に、電気浸透流により該ビーズをチャネル内に充填し、別のリザーバに注入された検体を前記チャネルに導入し、ハイブリダイゼーションを該チャネル内で進行させる技術が開示されている。
特開2002−303626号公報(特に、図1参照)。
特開2002−303627号公報。
上記した先行技術は、サンプルを注入するリザーバ部とこのリザーバ部に連通するチャネル部などを基板に形成しておいて、該チャネル部へサンプルを送り込んでハイブリダイゼーションを進行させる構成、より詳しくは、電気浸透流や電気泳動の効果を利用してサンプルをチャネル部へ導入する構成を有しているが、該チャネル部におけるハイブリダイゼーションそれ自体は、自然のブラウン運動の支配下で終始進行させる構成である。
このような構成では、反応領域においてサンプル物質(標的核酸)が拡散していたり、核酸分子のランダムコイル状をなす高次構造に起因する立体障害が発生したりするので、ハイブリダイゼーションの高速化を充分に達成することが難しいという技術的課題がある。
そこで、本発明は、反応領域として機能するチャネル部における物質間の相互作用の高速化を達成できる検出部及びバイオアッセイ用基板を提供することを主な目的とする。
本発明では、まず、媒質を貯留又は保持する「リザーバ部」と、該リザーバ部に連通し、前記リザーバ部から送られてくる前記媒質中で進行するハイブリダイゼーションなどの物質間の相互作用の場となる「チャネル部」と、該チャネル部に連通する「外気連通部」と、前記チャネル部に臨むように対向配置され、該チャネル部内の媒質に電界印加可能な「対向電極」と、を備える検出部、並びに該検出部が設けられたバイオアッセイ用基板を提供する。
本発明に係る前記バイオアッセイ用基板の好適な例は、所定波長の励起光を透過する基材層と、該基材層に積層された前記励起光を透過する導体層と、該導体層に積層されたウエル形成層と、該ウエル形成層に積層された導体層と、を備え、前記ウエル形成層に、媒質を貯留又は保持するリザーバ部と、該リザーバ部に連通するチャネル部と、該チャネル部に連通する外気連通部と、が設けられたものである。この基板構成においては、両導体層をチャネル部に臨むように対向配置される対向電極として機能させることができ、また、基板裏面側からの光ピックアップを採用できる。
「リザーバ部」は、媒質を一旦貯留又は保持し、所定量の媒質をチャネル部へ供給するための部位として機能する。例えば、別の場所に設けられた媒質滴下部(スポット部)から送り込まれる媒質を一旦貯留又は保持する部位、あるいはそれ自体が媒質滴下部として機能する部位であってもよい。リザーバ部と媒質滴下部とを兼用できれば、基板構造を簡略化できる。
対向電極は、各電極面がチャネル部に臨むように、相対向するように配置された電極対であればよく、数や配置構成などは特に限定されない。好適な一例を挙げると、チャネル部の底面側に設けられ、所定波長の励起光を透過可能な導体等によって形成された下部電極と、前記底面に対向する上方側の基板に設けられた上部電極と、からなる対向電極である。本発明では、特に、この対向電極の電極エッジ付近へ電気力線を集中させて、不均一な電場をチャネル部内に形成する。
対向電極によって形成される電界は、物質間の相互作用の場として機能するチャネル部に存在している物質内の分極ベクトル(双極子)に作用し、該物質に対して「誘電泳動」という電気力学的効果を与える。
液相中に存在する核酸分子を例とすると、核酸分子の骨格をなすリン酸イオン(陰電荷)とその周辺にある水がイオン化した水素原子(陽電荷)とによってイオン曇を作っていると考えられ、これらの陰電荷及び陽電荷により生じる分極ベクトル(双極子)が、高周波高電圧の印加により全体として一方向を向き、その結果として伸長し、加えて、電気力線が一部に集中する不均一電界が印加された場合は、電気力線が集中する部位に向かって移動する(Seiichi Suzuki,Takeshi Yamanashi,Shin-ichiTazawa,Osamu Kurosawa and Masao Washizu:“Quantitative analysis on electrostatic orientation of DNA in stationary AC electric field using fluorescence anisotropy”,IEEE Transaction on Industrial Applications,Vol.34,No.1,P75-83(1998))。
これによって、電極表面へ核酸分子を移動させてその濃度を高めたり、核酸分子の高次構造を直鎖状に調整することによってハイブリダイゼーションの際の立体障害を解消したりすることができる。このように、本発明における電界印加は、ハイブリダイゼーションなどの物質間の相互作用の高速化を達成するための手段として利用できる。とりわけ、交流電界を採用した場合では、電気分解による気泡発生がなく、反応系に影響がないので、好適である。
また、本発明では、チャネル部に臨む対向電極の電極表面を、検出用物質を固定するための表面として利用することができる。例えば、DNAプローブなどの核酸分子を例に挙げれば、上記「誘電泳動」と呼ばれる電気力学的効果によって、電極エッジに固定できる。
例えば、数十から数百μmのギャップを持つ微細電極中にDNA溶液をおき、ここに1MV/m、1MHz程度の高周波電界を印加すると、ランダムコイル状で存在するDNAに誘電分極が生じ、その結果、DNA分子は電界と平行に直線状に引き伸ばされる。そして、この「誘電泳動」と呼ばれる電気力学的効果によって、分極したDNAは自発的に電極端へと引き寄せられ、電極エッジにその一端を接した形で固定される(鷲津正夫、「見ながら行うDNAハンドリング」、可視化情報 Vol.20 No.76(2000年1月))。
ここで、本発明で使用する主たる技術用語の定義付けを行う。
「リザーバ部」は、液状の媒質を貯留したり、ゲルを含む媒質を保持したりすることが可能な部位であって、チャネル部に対して前記媒質を供給する部位である。「チャネル部」は、前記リザーバ部に開口し、連通するように形成された細長の領域であって、ハイブリダイゼーションなどの物質間の相互作用の場となる部位ある。「外気連通部」は、前記チャネル部に開口し、かつ外気に連通する部位であって、空気抜きの役割を果たす。「ウエル形成層」は、リザーバ部などの凹状形状部分が加工形成される層である。
「対向電極」は、電極面が向かい合った状態で配置される少なくとも一対の電極を意味する。
「相互作用」は、物質間の非共有結合、共有結合、水素結合を含む化学的結合あるいは解離を広く意味し、例えば、核酸(ヌクレオチド鎖)間の相補結合であるハイブリダイゼーション、高分子−高分子、高分子−低分子、低分子−低分子の特異的な結合又は会合を広く含む。
「ハイブリダイゼーション」は、相補的な塩基配列構造を備える間の相補鎖(二本鎖)形成反応を意味する。「ミスハイブリダイゼーション」は、正規ではない前記相補鎖形成反応を意味する。
「検出部」は、物質間の相互作用を進行させて、この相互作用を検出可能なように構成された部分であり、相互作用の検出原理自体は、狭く限定されない。
「核酸」とは、プリンまたはピリミジン塩基と糖がグリコシド結合したヌクレオシドのリン酸エステルの重合体(ヌクレオチド鎖)を意味し、プローブDNAを含むオリゴヌクレオチド、ポリヌクレオチド、プリンヌクレオチドとピリミジンヌクレオチオドが重合したDNA(全長あるいはその断片)、逆転写により得られるcDNA(cプローブDNA)、RNA、ポリアミドヌクレオチド誘導体(PNA)等を広く含む。
「検出用核酸」とは、反応領域に貯留又は保持された媒質中に固定又は遊離の状態で存在し、当該核酸分子と特異的に相互作用する相補的塩基配列を有する核酸分子を検出するための探り針(検出子)として機能する核酸分子である。代表例は、DNAプローブなどのオリゴヌクレオチド又はポリヌクレオチドである。「標的核酸」とは、前記検出用核酸と相補的な塩基配列を有する核酸分子である。
「誘電泳動」は、電界が一様でない電場において、分子が電界の強い方へ駆動する現象であり、交流電圧をかけた場合も、かけた電圧の極性の反転につれて分極の極性も反転するので、直流の場合と同様に駆動効果が得られる(監修・林 輝、「マイクロマシンと材料技術(シーエムシー発行)」、P37〜P46・第5章・細胞およびDNAのマニピュレーション参照)。
「バイオアッセイ用基板」は、物質間の相互作用の場を提供する反応領域が少なくとも形成された基板を意味する。
「DNAチップ」は、DNAプローブなどの検出用核酸が遊離状態又は固定化されて微細配列された状態とされたハイブリダイゼーション検出用基板を意味し、DNAマイクロアレイの概念も含む。
本発明によれば、リザーバ部に連通するチャネル部内に電界を形成することによって、該チャネル部内で進行するハイブリダイゼーションなどの物質間の相互作用の高速化を確実に達成できる。
以下、本発明を実施するための好適な形態について、添付図面を参照しながら説明する。なお、添付図面に示された各実施形態は、本発明の代表的な実施形態の一例を示したものであり、これにより本発明の範囲が狭く解釈されることはない。
まず、図1は、本発明に係る検出部、並びにこの検出部を備えるバイオアッセイ用基板の要部構成を説明するための上方視平面図である。
この図1に示されている基板1には、媒質Mを貯留又は保持することが可能な上方視円形状のリザーバRと、該リザーバRに開口して連通する細管状のチャネル部Cと、該チャネル部Cに開口し、かつ外気に連通可能な部位として機能する外気連通部Aと、からなる検出部が設けられている。
媒質Mは、外気連通部Aの空気抜き作用により、例えば、毛細管現象などを利用して、リザーバRからチャネル部Cへ導入する。この導入過程では、相互作用や相互作用の検出に不要な物質をチャネル部Cから外気連通部Aへ除去することも可能である。なお、リザーバRは、例えば、口径φ300μm、深さ5μmであり、チャネル部Cは、幅100μm、長さ400μm、深さ5μmであり、外気連通部Aは、口径φ150μm、深さ5μmに形成する。
実際は、図2に示すように、上記基板1を下方側に配置し、これに上側基板2を正確に位置決めして積層した状態で用いる。この上側基板2には、前記リザーバRに正確に対応する位置に形成された円形の孔r1と、外気連通部Aに正確に対応する位置に形成された孔r2と、が形成されている。
チャネル部Cは、上側基板2によって覆われ、蓋がされた状態となる。これにより、チャネル部Cに導入された媒質Mの乾燥を有効に防止できる。なお、リザーバRと孔r1、外気連通孔Aと孔r2のサイズ関係は、図示された形態に特に限定されない。
図3は、図2に示されたX−X方向矢視断面図、図4は、図2に示されたY−Y方向矢視断面図である。
下側の基板1は、まず、所定波長の励起光(例えば、蛍光励起光)を透過可能な基材層1aを備える。この基材層1aは、例えば、石英等のガラス、ポリカーボネート、ポリスチレン等の材料で形成する。射出成形可能な合成樹脂材料を採用すると、ランニングコストの低減を達成できる。
この基材層1aの上側には、外部電源G(図4参照)に接続された導体層1bが積層されている。この導体層1bは、ITO(インジウム−スズ−オキサイド)やアルミニウムなどの光透過性があり、かつ導電性を有する材料を採用する。例えば、ITOやアルミニウムをスパッタリングや電子ビーム蒸着等によって、150nm程度の厚さに生膜する。この導体層1bに光透過性があると、基板裏面側からの光ピックアップを採用することができる(後述)。
この導体層1bの上には、SiO2、SiC、SiN、SiOC、SiOF、TiO2などから形成された絶縁層1cが薄膜状に形成されている。この絶縁層1cは、プローブDNAなどの検出用物質の一端を固定するための固定相としても機能し、また、チャネル部Cへ導入される場合があるイオン溶液による電気化学的な反応を防止する役割も果たす。なお、この絶縁層1cは、例えば、スパッタリングや電子ビーム蒸着等によって、50nm程度の厚さに生膜することができる。
絶縁層1cの上には、ウエル形成層1dが積層されている。このウエル形成層1dを、例えば、ポリイミド樹脂によって形成すると、SiO2などの無機酸化膜などで形成する場合よりも、原材料コスト面で有利であり、また、厚膜形成も前記無機酸化膜などに比較して容易であるので、生膜コストも安いという利点がある。
このウエル形成層1dを感光性ポリイミド樹脂で形成すれば、フォトレジストを用いた表面処理を行うことによって、所定形状及びサイズのリザーバR、チャネル部C、外気連通部Aなどを簡易に形成することができる。例えば、絶縁層1cの上に感光性ポリイミド樹脂をスピンコート等で5μm程度の厚さに塗布し、レーザービーム露光装置等を用いて、パターン露光及び現像することによって、所定形状及びサイズのリザーバR、チャネル部C、外気連通部Aなどを形成できる。
続いて、上側基板2は、図3に示すように、上層側から順番に、合成樹脂層2a、外部電源G(図4参照)に接続された導体層2b、さらにその下層の絶縁層2cから構成されている。
合成樹脂層2aは、例えば、ポリカーボネート、ポリスチレン等の材料で形成し、導体層2bは、金属などで形成し、光反射層としての機能も発揮させる。絶縁層2cは、SiO2、SiC、SiN、SiOC、SiOF、TiO2などから形成する。この絶縁層2cは、上記絶縁層1cと同様に、チャネル部Cへ導入される場合があるイオン溶液による電気化学的な反応を防止する役割を果たす。
図3、図4には、リザーバ部Rへ正確に位置決めされたノズル(例えば、インクジェットノズル)Nの一部が示されている。このノズルNからリザーバ部Rへ所定容量の緩衝液などの媒質Mを滴下又は注入等する。この媒質Mは、例えば、毛細管現象などの作用によって、リザーバRからチャネル部Cへ導入される(図4の太線矢印参照)。
ここで、図5は、図1に示された矢印Z−Z方向で矢視したチャネル部C部分の断面図である。この図5に示された構成からも明らかなように、チャネル部Cでは、導体層1bと導体層2bが、チャネル部Cに臨むように対向する配置関係であり、対向電極E1−E2として機能している(図4も参照)。
この対向電極E1−E2は、図6、図7に示す変形形態のように、チャネル部Cを挟んで、媒質Mの進行方向の左右に少なくとも一対配置するようにしてもよい。なお、図6は、図2に示す矢印Z−Z方向で矢視した縦断面に対応する図であり、図7は、同変形形態を構成する基板1を上方から見た図である。図6の符号2dは、上側基板の反射層を示している。
図4、図5あるいは図6、図7に示す対向電極E1とE2は、それぞれ外部電源Gに接続されており、スイッチSのオン/オフ操作によって、チャネル部C内に導入された媒質Mに対する電界印加手段として機能する。
次に、図8は、上記した下側基板1の他の実施形態を示す図である。
この図8に符号1で示された下側基板は、上方視円形のリザーバRを備え、該リザーバRから四方に延設されたチャネル部C1〜C4と、該チャネル部C1〜C4の末端部にそれぞれ設けられた外気連通部A1〜A4を備えている。なお、チャネル部の数は、四本に限定されず、適宜決定可能である。
即ち、この基板1のリザーバRは、チャネル部C1〜C4の共有のリザーバとして機能し、リザーバRに滴下又は注入等された媒質Mは、四方に延びるチャネル部C1〜C4へ毛細管現象等によって導入される。なお、チャネル部C1〜C4には、それぞれ少なくとも一対の上下又は左右の対向電極E1−E2が設けられている(図示せず)。
続いて、図9、図10は、本発明に係る検出部及びバイオアッセイ用基板の他の実施形態を示す図であり、図9は、該バイオアッセイ用基板の上方視平面図、図10は、図9に示す矢印B−B方向の矢視縦断面図である。
この実施形態の特徴は、基板1と同様の層構造を備える下側基板10に、上方視リング状を呈する共有のリザーバRが設けられ、該リザーバRから内側中央部に形成された外気連通部Aに連通する4本のチャネル部C5〜C8が形成されている点である。また、この上記した上側基板2と同様の層構造を備える上側基板20には、リザーバRに対応する位置に開口部r1、r2が形成さるとともに、外気連通部Aに対応する位置に小孔aが設けられている。
図10の断面図では、ノズルNからリザーバRに媒質Mが滴下又は注入等され、この媒質Mがチャネル部C5、C7に導入される様子が示されている。なお、図10には特に示さないが、図9に示すチャネル部C6、C8にも同様に媒質Mが導入される。
ここで、対向電極E1−E2によって、チャネル部Cに導入された媒質Mに印加される電界(図4、図5、図6中に示す電気力線e参照)は、直流、交流あるいは高周波、低周波などの電界をアッセイの目的に応じて適宜選択して印加し、波形(矩形波、三角派、サイン波など)も自由に選択できるようにする。なお、交流電界の場合は、直流のような電気分解による気泡発生の心配がないので、物質間の相互作用を検出するアッセイには好適である。
高周波交流電界を核酸分子に作用させて、該核酸分子の誘電泳動を行う場合は、1MV/m以上及び1MHz以上が望ましい。例えば、約1×106V/m、約1MHzを好適に選択できる(Masao Washizu and Osamu Kurosawa:”Electrostatic Manipulation of DNA in Microfabricated Structures”,IEEE Transaction on Industrial Application Vol.26,No.26,p.1165-1172(1990)参照)。
物質間の相互作用がハイブリダイゼーションである場合では、誘電泳動という電気力学的効果を核酸分子に与えると、核酸分子を伸長(伸張)させることができ、また、DNAプローブなどの検出用核酸を電極表面に対して固定化する作業を効率良く実施することができる。
核酸分子を伸長(伸張)させて、直鎖状にすることによって、ハイブリダイゼーションの際の立体障害を解消することができる。この結果、ハイブリダイゼーションの高速化を達成することができ、また、ミスハイブリダイゼーションを低減することができる。
なお、「立体障害(steric hindrance)」は、分子内の反応中心等の近傍に嵩高い置換基の存在や反応分子の姿勢や立体構造(高次構造)によって、反応相手の分子の接近が困難になることによって、所望の反応(ここでは、ハイブリダイゼーション)が起こり難くなる現象を意味する。
ここで、図11は、図4中の符号W部分(チャネル部Cの一部分)の拡大図であり、チャネル部Cで進行する相互作用の一例であるハイブリダイゼーション及び蛍光物質の一例を示す図である。
DNAプローブなどの検出用核酸Dの一端は、予め固定用に表面処理された電極E1(又はE2)の表面に固定され、この検出用核酸Dに標的核酸Tがハイブリダイゼーションして二本鎖核酸を形成している。この場合、蛍光物質fは、標的核酸Tに標識されている。この蛍光物資fの発光により、二本鎖核酸の存在、即ち、ハイブリダイゼーションを確認できる。
図12は、他の蛍光物質の例(蛍光インターカレーター)を示す図である。具体的には、蛍光発光性を備えるインターカレーターIが、二本鎖核酸を形成した検出用核酸Dと標的核酸Tの塩基対部分に挿入結合されている様子が模式的に示されている。インターカレーターIの蛍光により、二本鎖核酸の存在、即ち、ハイブリダイゼーションを確認できる。
図11、図12に示す符号Uは、電極表面を処理することによって得られた固定相であって、絶縁層(1c)としても機能する。この固定相Uは、プローブDNA等の所望の検出用核酸Dを固定するために表面処理が施された相である。
例えば、アミノ基含有のシランカップリング剤溶液やポリリシン溶液で予め表面処理しておくことができる。合成樹脂製基板に対して表面処理加工を施す場合は、その表面をプラズマ処理及びDUV(DeepUV、遠赤外)照射処理後、アミノ基含有シランカップリング剤溶液で処理することもできる。
また、銅、銀、アルミニウム又は金をスパッタして成膜して、その表層にアミノ基、チオール基、カルボキシル基等の官能基(活性基)を有する物質やシステアミン、アビジン等をコートしてもよい。
例えば、ストレプトアビジンなどのアビジンによって表面処理された検出表面の場合では、ビオチン化されたDNAプローブ末端の固定に適している。あるいは、チオール(SH)基によって表面処理された検出表面の場合には、チオール基が末端に修飾されたプローブDNA等の検出用物質Dをジスルフィド結合(−S−S−結合)により固定する場合に適している。
以上では、リザーバR、チャネル部C、外気連通部Aを少なくとも備える検出部を一単位だけ備えるバイオアッセイ用基板形態を代表例として説明してきたが、実用的には、このような検出部を必要数だけ、より広面積の基板上に配設する。一例を挙げると、円盤状の基板に、放射状、周状、螺旋状などの形態をなすように検出部を多数配列することができる。
図13は、リザーバR、チャネル部C、外気連通部Aを備える検出部が多数配列された構成の円盤状基板を簡略に示す図である。図13に示された円盤状基板3には、四角囲いで示された領域31のそれぞれに、リザーバR、チャネル部C、外気連通部Aを備える検出部が設けられている。
以下、この円盤状基板3を用いたハイブリダイゼーション検出に係わる工程について、図14、図15を参照しながら説明する。図14は、回転可能に水平に保持した円盤状基板3に対する給電手段の概念を示す図、図15は、円盤状基板3に対する媒質滴下手段、光ピックアップ手段、サーボ手段を簡略に示す図である。なお、この場合の円盤状基板3は、ハイブリダイゼーションを検出するためのDNAチップである。
円盤状基板3の保持及び回転は、公知の光ディスクドライブと同様のチャッキング機構を用いて行うことができる。具体的には、回転手段を備えるディスク支持台4の上方に突設された通電治具でもあるスピンドル5を、基板3中央部に設けられた孔32(図14参照)に挿着し、かつ固定部材6によって基板3を押さえて固定する。
通電治具でもあるスピンドル5は、基板3の孔32に露出する(下側基板1の)導体層1bに接触し、他方の通電部は(上側基板2の)導体層2bに接触する構成を採用することによって、導体層1b―2b(例えば、図4参照)を、対向電極E1−E2として機能させることができる(図14参照)。
基板3の各検出部のリザーバRには、DNAチップ10の製造工程においては、検出用核酸Dを含む媒質M1を滴下又は注入し、ハイブリダイゼーション工程では、少なくとも標的核酸Tを含む媒質M2が滴下又は注入する。
これらの媒質M1,M2は、溶液状や粘度調製されたゲル状を成すのが一般的である。特に、溶液状の媒質の場合は、液ダレ等の種々の問題を避けるために、基板3は、水平に保持するのが望ましい。
図15に示すシステム構成では、複数のノズルヘッドNが基板3の上面3a側(上方側)に集約されて配置されている。このノズルヘッドNは、所定の媒質M(例えば、M1〜M3)を、所定位置に配列された検出部3のリザーバRに正確に追従しながら、所定のタイミングで滴下、あるいは注入できる構成とされている。
図15中の符号100は、「制御部」をブロック図的に簡略に示している。この制御部100は、基板3に対する「フォーカス情報」と基板3から得られる「トラッキング情報」に基づいて、ノズルヘッドNの滴下又は注入の動作全体を制御している。
ここで、図15に符号Pで示した励起光は、ハイブリダイゼーションの検出工程で使用する情報読み取り用の光である。この励起光Pは、レーザーダイオード101から出射され、コリメータレンズL1にて平行光とされた後、ダイクロイックミラー102で90°屈折される。
その後、励起光Pは、光の進行方向前方に配置されたミラー103で90°屈折された後、アクチュエータ104で支持された集光レンズL2に入射し、基板3の裏面3b側から検出部(のチャネル部C)に向けて絞り込まれて照射される。なお、符号105は、制御部100から送信される、レーザーダイオードドライバ106を制御するための信号である。
励起光Pは、前記集光レンズL2によって基板3の裏面3bで数μm程度の大きさまで絞り込まれる。この微小な励起光スポット径を活かすために、基板3上に検出用核酸Dを含む媒質M1、標的核酸を含む媒質M2などを滴下又は注入するノズルヘッドNは、ピコリットルオーダーの微少量溶液を滴下可能なインクジェットプリンティングノズルが好適である。
ノズルヘッドNの一例であるインクジェットプリンティングノズルの数は、使用する媒質の数や種類だけ用意してもよいし、1種類の媒質を滴下後、一旦ノズルを洗浄し、別種類の溶液を滴下することにより、少ないノズル数で多種の媒質を扱うようにしてもよい。
なお、このインクジェットプリンティングノズルを用いて、インターカレーターI(図12参照)を含む媒質M3を、標的核酸Tを含む媒質M2と同時に滴下又は注入できるし、ハイブリダイゼーション後の所定タイミングで、反応領域Rに滴下又は注入することもできる。インターカレーターIは、標的核酸Tを含む媒質M2に含ませて滴下又は注入してもよい。
例えば、基板3のチャネル部Cの電極表面に固定された検出用核酸Dと後から滴下又は注入されてくる標的核酸Tとがハイブリダイゼーションを示し、相補的な二本鎖核酸を形成した後、あるいは、標的核酸Tの滴下又は注入と同時に、所定のノズルヘッドNを介して、前記二本鎖核酸に対して挿入結合可能なインターカレーターIを含む媒質M3を、反応領域Rへ滴下又は注入することができる。
なお、必要な場合は、所定の洗浄溶液を固定化工程後の所定タイミングで、リザーバRに滴下又は注入することも可能である。
基板3上に媒質Mを滴下又は注入する際には、サーボ用レーザー光V(後述)を用いて、基板3上に予め記録されているアドレスマーク情報を読み取りながら、所望のアドレス(番地)に、媒質Mを滴下又は注入する。
励起光Pが照射されると、符号Fで示される蛍光がインターカレーターIから発せられ、基板3の裏面3a側に該蛍光Fが戻ってくる。この蛍光Fは、基板3の下方に配置された前記ミラー103で90°屈折された後、光進行方向に配置された前記ダイクロイックミラー102を透過して直進し、更に前方に配置されたダイクロイックミラー107で90°屈折される。
続いて、この蛍光Fは、上方のレンズL3に入射して集光され、ディテクタ108に導かれる。なお、ダイクロイックミラー107は、蛍光Fを反射する性質を有するとともに、後述するサーボ用レーザー光Vに対して透光性を有する性質を備える。
ここで、蛍光強度は、一般の光ディスクRF信号等と比較して、非常に弱いことが予想される。従って、蛍光検出用のディテクタ108には、一般のフォトダイオードと比較して非常に感度の高いフォトマルチプライヤー(光電管)やアバランシェフォトダイオード(APD)を採用するのが好適である。
前記ディテクタ108で検出された蛍光Fは、AD変換機109によって所定ビット数のデジタル信号110に変換される。このデジタル信号110は、例えば、基板3上のアドレスと発せられた蛍光強度とを対応させたマップの作成等の解析に利用される。
次に、「サーボ機構」について具体的に説明する。
まず、基板3の下方に配置される上記集光レンズL2は、上記アクチュエータ104によって、フォーカス方向(上下方向)及びトラッキング方向(周方向)に駆動される構成とされている。このアクチュエータ104しては、光ディスクのピックアップに使用されるものと同じタイプの、2軸ボイスコイル型のものが好適である。
上記したように、基板3は水平に保持され、かつ前記集光レンズL2は、基板3から見て鉛直方向下方位置に設置されているので、励起光P、並びにフォーカスサーボ及びトラッキングサーボに利用されるサーボ用レーザー光Vは、基板3の裏面側3bから照射される。
基板3の裏面3b側からサーボ用レーザー光Vを照射する構成を採用したことによって、サーボ用レーザー光Vは、基板3に配設された検出部の媒質M中に存在している検出用核酸Dや標的核酸Tなどの影響を全く受けずに、基板3の裏面3bから反射されて戻ってくる。
このため、基板3が回転しても、基板3中の媒質Mにより反射光の方向及び強度が乱されることはないので、大変好適である。即ち、フォーカスエラー及びトラッキングエラーも外乱を受けることなく、サーボが安定して動作できるようになる。
より具体的に説明すると、まず、図15中の符号111は、サーボ用レーザーダイオードを示しており、その後方には前記ダイオード111を制御するためのドライバ112が配置されている。サーボ用レーザーダイオード111の光出射方向には、コリメータレンズL4が配置されている。
このコリメータレンズL4によって、サーボ用レーザー光Vは、平行光に変換されて直進する(図15参照)。なお、コリメータレンズL4の前方に配置されたダイクロイックミラー113は、サーボ用レーザー光Vに対して透光性を有する性質を備える。
ここで、フォーカスエラーの発生には、非点収差法、ナイフエッジ法、スキュー法等、幾つかの方法が考えられるが、図15の構成の場合、非点収発生レンズL5を用いた非点収差法を採用している。
また、トラッキングエラーの発生には、ディファレンシャルプシュプル法と3スポット法が好適であると考えられる。両方法ともディスク上で3つの光スポットを得る必要がある。
従って、光ディスクピックアップで一般的であるように、図15中に示された回折格子114を、サーボ用レーザー光学系のコリメータレンズL4とダイクロイックミラー113の間に挿設して、回折された0次及び±1次光を、集光レンズL2を介して基板3に照射する。
図15における符号115は、サーボ用レーザー反射光のディテクタを示している。なお、ドライバ112及び115は、上記した制御部100によって制御されている。
上記した励起光Pの波長、蛍光Fの波長、レーザー光Vの波長は、それぞれ異なっていてもよい。これらの光P、F、Vの波長が異なるようにした構成を採用する場合には、基板3に設けられた反射層が、蛍光Fの波長に対して所定程度の透光性(透過率)を有し、かつサーボ動作が可能なレーザー光反射率を備える物性が要求される。
つまり、反射率・透過率に波長依存性があってもかまわず、好ましくはローパスフィルタ的な周波数特性があればよい。単一の波長の場合では、蛍光Fの透過率とレーザー光Zの反射率の両方を向上させることは困難であるが、波長依存性を持たせることによって、蛍光Fの透過率及びレーザー光Vの反射率を向上させることができる。
本発明は、物質間の相互作用検出技術、特に、DNAチップなどのハイブリダイゼーション検出技術に特に有用である。
1 下側基板
1a 基材層
1b 導体層
1c ウエル形成層
1d 絶縁層
2 上側基板
3 バイオアッセイ用基板
A (空気抜き用)外気連通部
C チャネル部
E1−E2 対向電極
M(M1〜M3) 媒質
P 励起光
R リザーバ部
1a 基材層
1b 導体層
1c ウエル形成層
1d 絶縁層
2 上側基板
3 バイオアッセイ用基板
A (空気抜き用)外気連通部
C チャネル部
E1−E2 対向電極
M(M1〜M3) 媒質
P 励起光
R リザーバ部
Claims (8)
- 媒質を貯留又は保持するリザーバ部と、
該リザーバ部に連通し、前記リザーバ部から送られてくる前記媒質中で進行する物質間の相互作用の場となるチャネル部と、
該チャネル部に連通する外気連通部と、
前記チャネル部に臨むように対向配置され、該チャネル部内の媒質に電界印加可能な対向電極と、を備える検出部。 - 前記リザーバ部は、前記媒質の滴下部であることを特徴とする請求項1記載の検出部。
- 前記相互作用は、ハイブリダイゼーションであることを特徴とする請求項1記載の検出部。
- 前記対向電極は、前記チャネル部の底面側に設けられた下部電極と、前記底面に対向する上方側の基板に設けられた上部電極と、から構成されたことを特徴とする請求項1記載の検出部。
- 前記下部電極は、所定波長の励起光を透過する導体によって形成されたことを特徴とする請求項4記載の検出部。
- 前記電界は、高周波交流電界であることを特徴とする請求項1記載の検出部。
- 請求項1記載の検出部が設けられたことを特徴とするバイオアッセイ用基板。
- 所定波長の励起光を透過する基材層と、該基材層に積層された前記励起光を透過する導体層と、該導体層に積層されたウエル形成層と、該ウエル形成層に積層された導体層と、を備え、
前記ウエル形成層には、媒質を貯留又は保持するリザーバ部と、該リザーバ部に連通するチャネル部と、該チャネル部に連通する外気連通部と、が加工形成されたことを特徴とするバイオアッセイ用基板。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2004178104A JP2006003148A (ja) | 2004-06-16 | 2004-06-16 | リザーバ部に連通するチャネル部を備える検出部及びバイオアッセイ用基板 |
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JP2004178104A Pending JP2006003148A (ja) | 2004-06-16 | 2004-06-16 | リザーバ部に連通するチャネル部を備える検出部及びバイオアッセイ用基板 |
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- 2004-06-16 JP JP2004178104A patent/JP2006003148A/ja active Pending
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