JP2005338552A - 加熱装置および画像形成装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】被加熱材の可撓性移動部材からの分離性および可撓性移動部材の耐久性を向上、被加熱材のニップでのシワの発生の低減化。
【解決手段】可撓性の移動部材10と、移動部材と摺動する摺動面Sを有し移動部材を支持する支持部材16と、移動部材を間に挟み支持部材とニップNを形成する加圧部材30と、を有し、移動部材と加圧部材の間で被加熱材Pを挟持搬送しつつ加熱する加熱装置において、前記支持部材の前記摺動面近傍には、前記摺動面よりも前記加圧部材側へ突出している段差部50a・50bが前記支持部材の長手方向に沿って設けられており、前記段差部の突出量は、前記支持部材の長手方向において複数の段階を持つ。
【選択図】図1
【解決手段】可撓性の移動部材10と、移動部材と摺動する摺動面Sを有し移動部材を支持する支持部材16と、移動部材を間に挟み支持部材とニップNを形成する加圧部材30と、を有し、移動部材と加圧部材の間で被加熱材Pを挟持搬送しつつ加熱する加熱装置において、前記支持部材の前記摺動面近傍には、前記摺動面よりも前記加圧部材側へ突出している段差部50a・50bが前記支持部材の長手方向に沿って設けられており、前記段差部の突出量は、前記支持部材の長手方向において複数の段階を持つ。
【選択図】図1
Description
本発明は、被加熱材を加圧・加熱する加熱装置、及び前記加熱装置を被記録材に形成担持させた未定着像を加熱定着処理する像加熱装置として具備した電子写真装置・静電記録装置等の画像形成装置に関する。
便宜上、従来の加熱装置を、複写機・プリンタ等の画像形成装置に具備させ、トナー画像を被記録材に加熱定着させる像加熱装置(定着装置)を例にして説明する。
画像形成装置において、電子写真プロセス・静電記録プロセス・磁気記録プロセス等の適宜の画像形成プロセス手段部で被記録材(転写材シート・エレクトロファックスーシート・静電記録紙・OHPシート・印刷用紙・フォーマット紙など)に転写方式あるいは直接方式にて形成担持させた目的の画像情報の未定着画像(トナー画像)を被記録材面に永久固着画像として加熱定着させる定着装置として、近年では、クイックスタートや省エネルギーの観点からフィルム加熱方式の装置が実用化されている。また電磁誘導加熱方式の装置も提案されている。
a)フィルム加熱方式
フィルム加熱方式の定着装置(定着器)は、特許文献1〜4等に提案されている。
フィルム加熱方式の定着装置(定着器)は、特許文献1〜4等に提案されている。
即ち、加熱体としてのセラミックヒータと、加圧部材としての加圧ローラとの間に可撓性の移動部材としての耐熱性フィルム(定着フィルム、定着ベルト)を挟ませてニップ部(定着ニップ部、加熱ニップ部)を形成させ、前記ニップ部の定着フィルムと加圧ローラとの間に未定着トナー画像を形成担持させた被記録材(被加熱材)を導入して定着フィルムと一緒に挟持搬送させることで、ニップ部においてセラミックヒータの熱を定着フィルムを介して被記録材に与え、さらにニップ部の加圧力にて未定着トナー画像を被記録材面に定着させるものである。
このフィルム加熱方式の定着装置は、セラミックヒータ及び定着フィルムとして低熱容量の部材を用いてオンデマンドタイプの装置を構成することができる。すなわち、画像形成装置の画像形成実行時のみ熱源としてのセラミックヒータに通電して所定の定着温度に発熱させた状態にすれば良く、画像形成装置の電源オンから画像形成実行可能状態までの待ち時間が短く(クイックスタート性)・スタンバイ時の消費電力も大幅に小さい(省電力)等の利点がある。
b)電磁誘導を用いたフィルム加熱方式
特許文献5には、定着フィルム自身の、あるいは定着フィルムに近接させた導電性部材に渦電流を発生させ、その時のジュール熱によって発熱させる加熱装置が提案されている。この電磁誘導式のフィルム加熱方式は、発熱域を被記録材に近接させることができるため、セラミックヒータを用いたフィルム加熱方式に比べ、さらなる消費エネルギーの効率アップが達成できる。
特許文献5には、定着フィルム自身の、あるいは定着フィルムに近接させた導電性部材に渦電流を発生させ、その時のジュール熱によって発熱させる加熱装置が提案されている。この電磁誘導式のフィルム加熱方式は、発熱域を被記録材に近接させることができるため、セラミックヒータを用いたフィルム加熱方式に比べ、さらなる消費エネルギーの効率アップが達成できる。
フィルム加熱方式の装置においては、特許文献6に提案されているように、定着フィルムとフィルムガイド部材との間に耐熱性の潤滑剤(グリース)を介在させることにより定着フィルムとフィルムガイド部材との間の摺動性を確保している。
特開昭63−313182号公報
特開平2−157878号公報
特開平4−44075号公報
特開平4−204980号公報
特開平7−114276号公報
特開平5−27619号公報
一般に、フィルム加熱方式の定着装置では、被記録材の巻き付きジャムが発生しやすい問題があった。特に、トナー載り量が比較的多いフルカラー画像定着時や、比較的コシの弱い薄紙や吸湿紙の定着時は、定着フィルムへの巻き付きジャムが発生しやすい。
被記録材の巻き付きジャムを防止するためには、定着ニップ通過後における被記録材の定着フィルムとの分離性を高めると良く、フィルムガイド部材の定着フィルム摺動部よりも下流側に、該摺動部の面よりも加圧ローラ側へ突出させた突出部を設ける方法がある。この突出部で被記録材を定着フィルムから離れる方向に矯正させて曲率分離を行い、被記録材の分離性を確保するものである。
また、前記したフィルムガイド部材に突出部を設けることで、被記録材への加熱パスが長くなり、また突出部において局所的に被記録材に圧力がかかるために、トナーの被記録材への定着性を上げることが可能となる。上記したような理由により、突出部をフィルムガイド部材の摺動部の上流、下流のいずれに設けた場合でも定着性能の向上に効果がある。
しかしながら、上述のような突出部の突出量が大きければ大きいほど定着フィルムへの機械的ストレスを増幅させ、定着フィルムの耐久劣化を早めてしまう問題があった。また、フィルムガイド部材の摺動部上流の突出部は、定着ニップ突入前に被加熱材にしごきを与えるため、被記録材の種類によってはシワが発生しやすい問題もあった。
そこで本発明は、被加熱材の可撓性移動部材からの分離性および可撓性移動部材の耐久性を向上でき、被加熱材のニップでのシワの発生を低減できる加熱装置およびこれを具備した画像形成装置を提供することを目的とする。
本発明に係る加熱装置および画像形成装置の代表的な構成は下記のとおりである。
(1)可撓性の移動部材と、移動部材と摺動する摺動面を有し移動部材を支持する支持部材と、移動部材を間に挟み支持部材とニップを形成する加圧部材と、を有し、移動部材と加圧部材の間で被加熱材を挟持搬送しつつ加熱する加熱装置において、
前記支持部材の前記摺動面近傍には、前記摺動面よりも前記加圧部材側へ突出している段差部が前記支持部材の長手方向に沿って設けられており、前記段差部の突出量は、前記支持部材の長手方向において複数の段階を持つことを特徴とする加熱装置。
前記支持部材の前記摺動面近傍には、前記摺動面よりも前記加圧部材側へ突出している段差部が前記支持部材の長手方向に沿って設けられており、前記段差部の突出量は、前記支持部材の長手方向において複数の段階を持つことを特徴とする加熱装置。
(2)被記録材に未定着画像を形成担持させる作像手段と、被記録材に形成担持させた未定着画像を定着させる定着手段を有し、前記定着手段が(1)に記載の加熱装置であることを特徴とする画像形成装置。
本発明に係る加熱装置によれば、支持部材の摺動面近傍において摺動面よりも加圧部材側へ突出している段差部の突出量が前記支持部材の長手方向において複数の段階を持つことから、被加熱材の可撓性移動部材からの分離性および可撓性移動部材の耐久性を向上でき、被加熱材のニップでのシワの発生を低減できる。
本発明に係る画像形成装置によれば、上記の加熱装置を定着装置として具備させることで、上述の効果に加え、未定着画像の定着性能の向上を図れる。
以下、本発明に係る加熱装置および該加熱装置を具備させた画像形成装置を図面に基づいて詳しく説明する。
(1)画像形成装置例
図15は本発明の加熱装置を像加熱装置(定着装置)として適用した画像形成装置の一例の概略構成図である。
図15は本発明の加熱装置を像加熱装置(定着装置)として適用した画像形成装置の一例の概略構成図である。
本実施例の画像形成装置は、異なる色の画像形成部であるプロセスステーション1a・1b・1c・1dを4個並べて配置し、4色(シアン、イエロー、マゼンタ、ブラック)でのフルカラーの電子写真方式を用いた装置である。
プロセスステーション1a〜1dは、像担持体として感光ドラム2a〜2dを有しており、感光ドラム2a〜2dの表面は、一次帯電器3a〜3dによって一様に帯電された後、例えばLED、レーザなどの露光装置4a〜4dによる画像情報に基づく露光を受けて静電潜像が形成される。この静電潜像は現像装置5a〜5dによって各色のトナーが付着され、トナー像として現像される。各プロセスステーション1a〜1dは、プロセスカートリッジとして、図15に示す画像形成装置本体に対して着脱可能になっている。各プロセスカートリッジは、感光ドラム2a〜2d、1次帯電器3a〜3d、現像器5a〜5d、クリーニング手段6a〜6dが一体にまとめられた構成になっている。
被記録材(転写材)Pは、給紙カセット75から給紙ローラ76によってレジストローラ77に送り出され、次いで、吸着帯電電源52より正極性の吸着バイアスが印加される吸着ローラ72によって被記録材担持体としての転写搬送ベルト78と静電的に吸着されて担持搬送される。
転写搬送ベルト78は、駆動ローラ80、吸着対向ローラ84、テンションローラ70、71の4本のローラに巻架されている。この転写搬送ベルト78の移動方向(矢印方向)に沿って上流から順に、シアン、イエロー、マゼンタ、ブラックの各色のプロセスステ−ション1a・1b・1c・1dが略垂直に配置されている。
転写搬送ベルト78に吸着された被記録材Pには、各色のプロセスステーション1a〜1dを順次通過する過程において各転写バイアス電源54a〜54dから各帯電ローラ74a〜74dに帯電バイアスが印加されることで感光ドラム2a〜2d上の各色のトナー像が静電的に順次転写される。従って、本実施例では、各色のプロセスステーション1a〜1d、各帯電ローラ74a〜74dおよび転写搬送ベルト78によって作像手段を構成している。
各色のトナー像の転写を受けた被記録材Pは転写搬送ベルト78の搬送面から分離されて加熱装置としての画像加熱定着装置100へ導入され、未定着トナー画像の加熱定着処理を受けてカラー画像形成物として機外の不図示の排紙トレーに排出される。
両面プリントモードの場合は、被記録材Pは一度定着装置100を通過した後、再給送パス20を通ってレジストローラ77に搬送され、その後上記説明と同様の過程を経て転写材P裏面に永久画像が形成される。
転写搬送ベルト78からの剥離時に転写後帯電手段としてコロナ帯電気82による停電方式で被記録材Pの除電を行い、剥離放電を防止することで画像不良を解消する方法を取っても良い。
両面画像プリントモードの場合は、定着装置100を出た1面目画像プリント済みの被記録材Pは不図示の再循環搬送機構により再給送パス20を介して表裏反転され再び吸着ローラ72を通り転写搬送ベルト78へ送り込まれて2面に対するトナー画像転写を受け、再度、定着装置100に導入されて2面に対するトナー画像の定着処理を受けることで、両面画像プリントが出力される。
(2)定着装置100
本実施例に示す加熱装置は、可撓性の移動部材として電磁誘導発熱性の円筒状の定着フィルム(定着ベルト)を用いた、加圧ローラ駆動方式、電磁誘導加熱方式の画像加熱定着装置である。
本実施例に示す加熱装置は、可撓性の移動部材として電磁誘導発熱性の円筒状の定着フィルム(定着ベルト)を用いた、加圧ローラ駆動方式、電磁誘導加熱方式の画像加熱定着装置である。
図1は本実施例における加熱装置としての画像加熱定着装置100の要部の横断面側面模型図、図2は要部の正面模型図、図3は要部の縦断面正面模型図である。
この装置100は、大きく分けて円筒状の支持部材としてのフィルムガイド部材16と、このフィルムガイド部材16にルーズに外嵌させた、加熱部材としての円筒状の電磁誘導発熱性の定着フィルム10と、フィルムガイド部材16との間に定着フィルム10を挟んでニップ部Nを形成させた、加圧部材としての加圧ローラ30とからなる。
円筒状のフィルムガイド部材(フィルム支持部材)16は、耐熱性樹脂成形部品からなる左右一対の横断面略半円弧状桶型半体16aと16bとを互いに開口部を向かい合わせて組み合わせることで円筒体を構成させてある。図1中で右側のフィルムガイド部材半体16aの内側には、磁場発生手段としての磁性コア17a・17b・17cと励磁コイル18を配設して保持させてある。
本実施例におけるフィルムガイド部材16の材質としては、耐熱性に優れるものが好ましい。例えば、フェノール樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリエーテルケトン樹脂、ポリエーテルスルフォン樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、LCP樹脂等といった耐熱性樹脂を選択するとよい。さらに好ましくは、滑り性に優れるものが良く、PFA樹脂、PTFE樹脂、FEP樹脂といったフッ素樹脂や、フッ素樹脂等滑り性の良い材料を混入させた耐熱性樹脂で構成すると良い。
加圧ローラ30は、芯金30aと、前記芯金周りに同心一体にローラ状に成型被覆させた、シリコーンゴム・フッ素ゴム・フッ素樹脂などの耐熱性弾性材層30bとで構成されており、芯金30aの両端部を装置の不図示のシャーシ側板金間に回転自由に軸受け保持させて配設してある。
定着フィルム10を外嵌させたフィルムガイド部材16は加圧ローラ30の上側に配置され、フィルムガイド部材16内に挿通して配設した加圧用剛性ステイ22の両端部と装置シャーシ側のバネ受け部材29a・29bとの間にそれぞれ加圧バネ25a・25bを縮設することで加圧用剛性ステイ22に押し下げ力を作用させている。これにより、フィルムガイド部材16の下面と加圧ローラ30の上面とが定着フィルム10を挟んで圧接して、所定幅の定着ニップ部Nが形成される。
加圧ローラ30は駆動手段M(図1)により矢示の反時計方向に回転駆動される。この加圧ローラ30の回転駆動により、定着ニップ部Nにおいて加圧ローラ30と定着フィルム10の外面との摩擦力で定着フィルム10に回転力が作用し、定着フィルム10の内周面が定着ニップ部Nにおいてフィルムガイド部材16の下面に密着して摺動しながら矢示の時計方向に加圧ローラ30の周速度にほぼ対応した周速度をもってフィルムガイド部材16の外周を回転する(加圧ローラ駆動方式)。
定着ニップ部Nにおけるフィルムガイド部材16の下面と定着フィルム10の内面との相互摺動摩擦力を低減させるために、フィルムガイド部材16の下面の定着ニップ部Nに対応する面部分には、耐熱性・低摩擦性の摺動部材40を配設してある。摺動部材40は、例えばフッ素系樹脂、ポリイミド樹脂、ガラス、アルミナ、アルミナにガラスをコートしたものなどで構成するのが好ましい。本例では、アルミナ基板をPTFEシートで覆ったものを配設している。
この摺動部材40は、少なくとも定着ニップ部Nの長さと幅に対応する長さと幅を有する帯板状あるいはテープ状の部材であり、本例ではフィルムガイド部材16の下面に長手に沿って具備させた嵌め込み用の溝部に位置決め保持させてある。さらには、耐熱性接着剤で固定すると良い。
さらに、摺動部材40と定着フィルム10内周面との間に潤滑剤を介在させ、定着フィルム10の摺動抵抗低減を図っている。本実施形態例においては、潤滑剤としてフッ素グリースを用いている。
定着ニップ部Nにおける定着フィルム10摺動部近傍のフィルムガイド16部材および摺動部材40の構成については、後記(4)項にて詳述する。
図1中右側のフィルムガイド部材半体16aの周面には、図4に示すように、その長手方向に所定の間隔を置いて凸リブ部16cを形成具備させ、フィルムガイド部材半体16aの周面と定着フィルム10の内面との接触摺動抵抗を低減させて定着フィルム10の回転負荷を少なくしている。このような凸リブ部16cは図中左側のフィルムガイド部材半体16bにも同様に形成具備することができる。なお、凸リブ形状は定着フィルムの接触摺動抵抗を低減できればよく、形状、向きは任意に選択できる。
図1中右側のフィルムガイド部材半体16aの周面には、図4に示すように、その長手方向に所定の間隔を置いて凸リブ部16cを形成具備させ、フィルムガイド部材半体16aの周面と定着フィルム10の内面との接触摺動抵抗を低減させて定着フィルム10の回転負荷を少なくしている。このような凸リブ部16cは図中左側のフィルムガイド部材半体16bにも同様に形成具備することができる。なお、凸リブ形状は定着フィルムの接触摺動抵抗を低減できればよく、形状、向きは任意に選択できる。
23a・23bは円筒状のフィルムガイド部材16の手前側と奥側の端部に嵌着して配設したフランジ部材であり、定着フィルム10の回転時に定着フィルムの端部を受けて、定着フィルム10のフィルムガイド部材16の長手に沿う寄り移動を規制する役目をする。フランジ部材23a・23bは定着フィルム10の回転に従動で回転する構成にしてもよい。
而して、加圧ローラ30が回転駆動され、それに伴って定着フィルム10が回転し、励磁回路27(図4)から励磁コイル18への給電により発生する磁場の作用で加熱部材としての定着フィルム10が電磁誘導発熱して定着ニップ部Nが所定の温度に立ち上がって温調される。この状態において、画像形成手段部から搬送された未定着トナー画像tが形成された被記録材Pが定着ニップ部Nの定着フィルム10と加圧ローラ30との間に導入され、定着ニップ部Nにおいて画像面が定着フィルムの外面に密着して定着フィルム10と一緒に挟持搬送されていく。
被記録材Pは定着ニップ部Nを通過すると、定着フィルム10の外面から分離して排出搬送されていく。被記録材P上の加熱定着トナー画像tは定着ニップNを通過後、冷却して永久固着画像となる。
本実施例における画像加熱定着装置100では、トナーtに低軟化物質を含有させたトナーを使用したため、定着装置にオフセット防止のためのオイル塗布機構を設けていないが、低軟化物質を含有させていないトナーを使用した場合には、オイル塗布機構を設けても良い。また、低軟化物質を含有させたトナーを使用した場合にもオイル塗布や冷却分離を行っても良い。
(3)磁場発生手段
磁性コア17a・17b・17cは高透磁率の部材であり、フェライトやパーマロイ等といったトランスのコアに用いられる材料が良く、より好ましくは100kHz以上でも損失の少ないフェライトを用いるのが良い。
磁性コア17a・17b・17cは高透磁率の部材であり、フェライトやパーマロイ等といったトランスのコアに用いられる材料が良く、より好ましくは100kHz以上でも損失の少ないフェライトを用いるのが良い。
磁場発生手段を構成する励磁コイル18は、コイル(線輪)を構成させる導線(電線)として、一本ずつがそれぞれ絶縁被覆された銅製の細線を複数本束ねたもの(束線)を用い、これを複数回巻いて励磁コイルを形成している。本例では12回巻きで励磁コイルを形成している。
絶縁被覆を行う被覆部材は、定着フィルム10の発熱による熱伝導を考慮して耐熱性を有する被覆を用いることが好ましい。例えば、アミドイミドやポリイミド等の被覆を用いるとよい。本実施形態例においては、ポリイミドによる被覆を用いており耐熱温度は220℃である。
励磁コイル18は外部から圧力を加えて密集度を向上させてもよい。
磁場発生手段17a・17b・17c・18と加圧用剛性ステイ22の間には、絶縁部材19を配設してある。絶縁部材19の材質としては、絶縁性に優れ、耐熱性がよいものが好ましい。例えば、フェノール樹脂、フッ素樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリエーテルケトン樹脂、ポリエーテルスルフォン樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、PFA樹脂、PTFE樹脂、FEP樹脂、LCP樹脂等を選択するとよい。
図5は、磁場発生手段によって発生される交番磁束の発生の様子を模式的に表したものである。磁束Cは発生した交番磁束の一部を表す。磁性コア17a,17b,17cに導かれた交番磁束Cは、磁性コア17aと磁性コア17bとの間、そして磁性コア17aと磁性コア17cとの間において定着フィルム10の発熱層10A(図6)に渦電流を発生させる。この渦電流は、発熱層10Aの固有抵抗によって、発熱層10Aにジュール熱(渦電流損)を発生させる。
発熱量Qは発熱層10Aを通る磁束Cの密度によって決まり、図5のグラフような分布を示す。図5に示すグラフは、縦軸が磁性コア17aの中心を0とした角度θで表した定着フィルム10における円周方向の位置を示し、横軸が定着フィルム10の発熱層10Aでの発熱量Qを示す。ここで、発熱域Hは最大発熱量をQとし、発熱量がQ/e以上の領域と定義する(eは自然対数の底)。これは、定着プロセスに必要な発熱量が得られる領域である。
この定着ニップ部Nの温度は、温度検知手段26(図1)を含む不図示の温調系により励磁コイル18に対する電流供給が制御されることで所定の温度が維持されるように温調される。温度検知手段26は定着フィルム10の温度を検知するサーミスタなどの温度センサであり、本例においてはサーミスタで測定した定着フィルム10の温度情報を基に定着ニップ部Nの温度を制御するようにしている。
(4)定着フィルム10
図6は、本実施例における定着フィルム10の層構成模型図である。
図6は、本実施例における定着フィルム10の層構成模型図である。
本実施形態例の定着フィルム10は、基層となる電磁誘導発熱性の金属フィルム等でできた発熱層10Aと、その外面に積層した弾性層10Bと、その外面に積層した離型層10Cの複合構造のものである。
発熱層10Aと弾性層10Bとの間の接着、弾性層10Bと離型層10Cとの間の接着のために、各層間にプライマー層(図示せず)を設けてもよい。
略円筒形状である定着フィルム10において、発熱層10Aが摺動部材40と接触する内面側であり、離型層10Cが加圧ローラ若しくは被記録材(被加熱材)と接触する外面側である。
上述したように、発熱層10Aに交番磁束が作用することにより、発熱層10Aに渦電流が発生して発熱層10Aが発熱する。この熱が弾性層10B、離型層10Cに伝達されて、定着フィルム10全体が加熱され、定着ニップ部Nに通紙される被記録材Pを加熱してトナーt画像の加熱定着がなされる。
a.発熱層10A
発熱層10Aとしては、磁性及び非磁性の金属を用いることができるが、磁性金属が好ましく用いられる。このような磁性金属としては、ニッケル、鉄、強磁性ステンレス、ニッケル−コバルト合金、パーマロイといった強磁性体の金属が好ましく用いられる。又、定着フィルム10回転時に受ける繰り返しの屈曲応力による金属疲労を防ぐために、ニッケル中にマンガンを添加した部材を用いるのも良い。
発熱層10Aとしては、磁性及び非磁性の金属を用いることができるが、磁性金属が好ましく用いられる。このような磁性金属としては、ニッケル、鉄、強磁性ステンレス、ニッケル−コバルト合金、パーマロイといった強磁性体の金属が好ましく用いられる。又、定着フィルム10回転時に受ける繰り返しの屈曲応力による金属疲労を防ぐために、ニッケル中にマンガンを添加した部材を用いるのも良い。
発熱層10Aの厚さは、次の式で表される表皮深さσ[m]より厚く、且つ200μm以下にすることが好ましい。発熱層10Aの厚さをこの範囲とすれば、発熱層10Aが電磁波を効率よく吸収することができるため、効率良く発熱させることができる。
σ=503×(ρ/fμ)1/2 …(1)
ここで、fは励磁回路の周波数[Hz]、μは発熱層10Aの透磁率、ρは発熱層10Aの固有抵抗[Ωm]である。
ここで、fは励磁回路の周波数[Hz]、μは発熱層10Aの透磁率、ρは発熱層10Aの固有抵抗[Ωm]である。
この表皮深さσは、電磁誘導で使われる電磁波の吸収の深さを示しており、これより深いところでは電磁波の強度は1/e以下になっている。逆にいうと殆どのエネルギーはこの深さまでで吸収されている(図8に示した発熱層深さと電磁波強度の関係を参照)。
発熱層10Aの厚さは、より好ましくは1〜100μmがよい。発熱層10Aの厚みが上記範囲よりも薄い場合には、ほとんどの電磁エネルギーが吸収しきれないため効率が悪くなる。又、発熱層10Aが上記範囲よりも厚い場合には、発熱層10Aの剛性が高くなりすぎ、又、屈曲性が悪くなり回転体として使用するには現実的でなくなる。
b.弾性層10B
弾性層10Bは、シリコーンゴム、フッ素ゴム、フルオロシリコーンゴム等の、耐熱性、熱伝導率が良い材質が好ましく用いられる。
弾性層10Bは、シリコーンゴム、フッ素ゴム、フルオロシリコーンゴム等の、耐熱性、熱伝導率が良い材質が好ましく用いられる。
弾性層10Bの厚さは、定着画像品質を保証するために10〜500μmであることが好ましい。カラー画像を印刷する場合、特に写真画像等では、被記録材P上で大きな面積に渡ってベタ画像が形成される。この場合、被記録材Pの凹凸或いはトナー層tの凹凸に加熱面(離型層10C)が追従できないと加熱ムラが発生し、伝熱量が多い部分と少ない部分で画像に光沢ムラが発生する。即ち、伝熱量が多い部分は光沢度が高く、伝熱量が少ない部分では光沢度が低くなる。弾性層10Bの厚さが上記範囲よりも小さい場合には、上記離型層10Cが被記録材P或いはトナー層tの凹凸に追従しきれず、画像光沢ムラが発生してしまう。又、弾性層10Bが上記範囲よりも大きすぎる場合には、弾性層10Bの熱抵抗が大きくなりすぎ、クイックスタートを実現するのが難しくなる。この弾性層10Bの厚さは、より好ましくは50〜500μmが良い。
弾性層10Bは、硬度が高すぎると被記録材P或いはトナー層tの凹凸に追従しきれず画像光沢ムラが発生してしまう。そこで、弾性層10Bの硬度としては60゜(JIS−A)以下、より好ましくは45゜(JIS−A)以下がよい。
弾性層10Bの熱伝導率λは、0.25〜1.5 W/m・℃であることが好ましい。熱伝導率λが上記範囲よりも小さい場合には、熱抵抗が大きすぎて、定着フィルム10の表層(離型層10C)における温度上昇が遅くなる。熱伝導率λが上記範囲よりも大きい場合には、弾性層10Bの硬度が高くなりすぎたり、圧縮永久歪みが発生しやすくなる。
c.離型層10C
離型層10Cは、フッ素樹脂、シリコーン樹脂、フルオロシリコーンゴム、フッ素ゴム、シリコーンゴム、PFA、PTFE、FEP等の離型性且つ耐熱性のよい材料を用いることが好ましい。
離型層10Cは、フッ素樹脂、シリコーン樹脂、フルオロシリコーンゴム、フッ素ゴム、シリコーンゴム、PFA、PTFE、FEP等の離型性且つ耐熱性のよい材料を用いることが好ましい。
離型層10Cの厚さは1〜100μmが好ましい。離型層10Cの厚さが上記範囲よりも薄い場合には、塗膜の塗ムラが生じ、離型性の悪い部分が発生したり、耐久性が不足するといった問題が発生する。又、離型層10Cの厚さが上記範囲よりも厚い場合には、熱伝導が悪化する。特に、離型層10Cに樹脂系の材質を用いた場合は、離型層10Cの硬度が高くなりすぎて、弾性層10Bの効果がなくなってしまう。
d.摺動層10D
図7に示すように、定着フィルム10の構成において、発熱層10Aの摺動部材40との接触面側に摺動層10Dを設けてもよい。摺動層10Dとしては、フッ素樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、PEEK樹脂、PES樹脂、PPS樹脂、PFA樹脂、PTFE樹脂、FEP樹脂等の耐熱樹脂がよい。
図7に示すように、定着フィルム10の構成において、発熱層10Aの摺動部材40との接触面側に摺動層10Dを設けてもよい。摺動層10Dとしては、フッ素樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、PEEK樹脂、PES樹脂、PPS樹脂、PFA樹脂、PTFE樹脂、FEP樹脂等の耐熱樹脂がよい。
摺動層10Dを滑り性の良い材料で構成することにより、摺動部材40と定着フィルム10との摺動抵抗を軽減することができる、また発熱層である金属層の削れを起こさせないため、定着フィルムの耐久性向上に効果がある。
また、摺動層10Dは、発熱層10Aに発生した熱が定着フィルム10の内側に向かわないように断熱できるので、摺動層10Dがない場合と比較して被記録材Pへの熱供給効率が良くなり、消費電力を抑制できる。
摺動層10Dの厚さとしては10〜1000μmが好ましい。摺動層10Dの厚さが10μmよりも薄い場合には耐久性が不足するうえ、断熱効果も小さい。一方、1000μmを超えると磁性コア17a,17b,17c及び励磁コイル18から発熱層10Aまでの距離が大きくなり、磁束が十分に発熱層10Aに吸収されなくなる。
(5)定着フィルム摺動部の構成
図9は、定着ニップ部Nにおける定着フィルム10の摺動部近傍の横断面側面模型図である。
図9は、定着ニップ部Nにおける定着フィルム10の摺動部近傍の横断面側面模型図である。
本実施例では、定着フィルム10からの紙分離性や定着性の向上を目的として、フィルムガイド部材16の摺動面側に対し、摺動部材40を凹状に配置することにより、定着フィルム10と摺動する摺動部(摺動面)Sを該摺動部材の下面に形成させていると共に、当該摺動部材の幅方向(短手方向)両側に段差部である段差状の突出部50a・50bを形成させている。段差状の突出部50aは、フィルムガイド部材16に設けられた摺動部材40と定着フィルム10との摺動部Sよりも定着フィルム10移動方向上流側に位置する突出部である。段差状の突出部50bは、摺動部Sよりも定着フィルム10移動方向下流側に位置する突出部である。ここで、フィルムガイド部材16の長手方向とは、摺動部Sに対して平行で、かつ定着フィルム10の移動方向と直交する方向をいう。
上記の突出部50bの突出量hは、1.0mmより大きい場合には、定着された被記録材のカールが悪化する問題がある。また、本実施例のように、定着フィルム10が発熱層10Aとして金属層を用いている場合、突出量が大きいほど定着フィルム10への屈曲応力が増大するため、金属層の疲労破壊が発生しやすい。よって、突出量hはフィルムガイド部材16の長手方向において最大でも1.0mm、好ましくは0.5mm以下にすると良い。
また、突出部50bは、紙分離性に寄与している。突出量hがフィルムガイド部材16の長手方向全域にわたって0.1mm未満であると、紙分離性が不十分となり、定着装置における巻き付きジャムが発生してしまう問題がある。
また、突出量hの大きさは定着性能にも大きく寄与している。定着性向上に効果的な理由は、一つは突出部50a・50bによって定着フィルム10の移動パスが変化し、被記録材Pへの加熱距離(時間)を長く取れること、もう一つは定着ニップ部Nにおいて記録材搬送方向下流側の紙分離部において突出部50bにより被記録材Pが加圧されることにある。
定着フィルム10の長手方向(フィルムガイド部材16の長手方向と同じ方向(以下、定着フィルム長手方向と記す))の表面温度分布は、おおよそ定着フィルム10の発熱分布と放熱によって決まる。定着フィルム長手方向で発熱量が均一な定着装置では、フィルムガイド部材16の長手方向端部側で放熱によって定着フィルム10及び加圧ローラ30の表面温度が低くなる傾向がある。
誘導加熱方式の定着装置においては、励磁コイルを複数設けたり、フェライトコアの配置を不均一にすることで長手方向の発熱量に分布を持たせることが可能である。しかしながら、励磁コイルを複数設けるためのコスト、あるいはフェライトコアの配置に関しては、安定して定着フィルム長手方向で定着フィルム表面温度をある分布に保つためには、量産性を考慮するとフェライトコアのサイズ、配置に高い精度が求められることから、本実施例の定着装置は長手方向の発熱分布はほぼ均一としている。その結果として、フィルムガイド部材16の長手方向端部側の定着フィルム10の表面温度は長手方向中央部よりも低くなる傾向が生じ、長手方向端部側の定着性能が中央部と比較してやや劣る傾向にある。
逆に、フィルムガイド部材16の長手方向中央部は常に温度が高めに保たれるため、繰り返し屈曲された場合には金属層10Aを有する定着フィルム10では中央部の劣化が早く、定着フィルム金属層の破断が長手方向中央部で発生することが多い。その傾向は、特に高温で脆化が起こりやすいニッケルを金属層に用いた時に顕著である。従って、耐久性及び定着性の観点からフィルムガイド部材16の長手方向に複数の段階を有する突出部50bを設けて、定着フィルム10の耐久性とトナーtの被記録材Pへの定着性を両立させることが可能であり、定着フィルム長手方向の表面温度が端部より中央部が高い一般的な系では、フィルムガイド部材16の長手方向端部と比較して中央部の段差を低くするほうが望ましい。
上記から、定着フィルム10移動方向の下流側に位置する突出部50bはフィルムガイド部材16の長手方向で複数段階の段差を設け、中央部は段差を小さくすることで定着フィルム10の耐久性を向上させ、端部側では段差を大きくすることで定着性能を確保することが可能である。
本実施例では、フィルムガイド部材16の長手方向において長手中央部の突出部52bの突出量hをh(c)とした場合、h(c)=0.1mmとしたため、小サイズ紙の分離性能に関しても問題ないが、長手中央部の突出量を0.1mm未満にする場合でも、通紙可能なサイズの端部位置の段差を0.1mm以上に確保することで、小サイズメディアの分離性能と普通サイズメディアの長手方向端部定着性の両方を満足することができる。
前述のように突出部50bの突出量(段差量)がフィルムガイド部材16の長手方向で均一に設定された場合の、当該突出量と定着装置100で発生するトラブル(巻きつき(紙分離性)/端部定着性/定着フィルム耐久性)の関係を表1に示す。巻きつき/端部定着性/定着フィルム耐久性の各トラブルレベルと記号の関係については、表1下段のレベル表に示す。
本実施例では、上記表1に示す巻きつき(紙分離性)/端部定着性/定着フィルム耐久性を基に、フィルムガイド部材16の長手中央部突出量0.1mm、長手端部突出量0.2mmという構成にすることで、上記したようにいずれの項目でも上記トラブルの発生を低減できる定着装置を得ることができた。このとき、摺動部Sよりも定着フィルム10移動方向上流側に位置する突出部50aの突出量はフィルムガイド部材16の長手方向で0.1mmに均一にしている。
図10は、摺動部Sよりも定着フィルム10移動方向下流側に位置する突出部50bを、定着フィルム10移動方向上流側からみた縦断正面模型図(摺動部材40が完全なストレート形状の例)である。
フィルムガイド部材16は耐熱性樹脂成型部品であるため、強度の点から突出部50bはなめらかな形状としたほうが望ましく、また摺動部材40の基板はほぼストレート形状のセラミックからなるため、突出量の異なる段差としての長手中央部と長手端部の段差部はフィルムガイド部材16の長手方向で連続的に変化する形状とすることが望ましい。局所的に突出部50bの段差の高さが異なる部分があると、定着フィルム10へのストレスが局所に集中するため、定着フィルム10の耐久性の観点からも長手方向の段差形状は連続的に変化させたほうがよい。
本実施例の定着装置では、図10(a)のように定着フィルム10移動方向下流側の突出部50bは、長手中央部の突出量h(c)=0.1mm、長手端部の突出量h(e)=0.2mmとし、中央から端部にかけては滑らかな曲線状に段差量を変化させている。また図10(b)のようにほぼ中央からの距離に比例して段差量を大きくする構成としても良い。
図10では摺動部材40が完全にストレート形状の場合を示したが、摺動部材がクラウン形状、あるいは逆クラウン形状等の場合においても、突出部50bの突出量hを同様に管理することにより、上記説明した効果を得ることができる。
段差状の突出部50a・50bのエッジによる定着フィルム10の内周面への機械的ダメージを低減するために、図11に示すように、突出部50a・50bのエッジをR状に面取りしても良い。
また、本実施例のように摺動部材40の少なくとも定着フィルム10と摺動する表面には耐熱性の樹脂層を設けると良い。この場合に樹脂層として、フッ素樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、PEEK樹脂、PES樹脂、PPS樹脂、PFA樹脂、PTFE樹脂、FEP樹脂等の摺動性に優れた耐熱樹脂の中から任意のものを選択して用いるとよい。摺動性に優れた耐熱樹脂を設けることで、定着フィルム10の内面削れを最小限に抑えられ、定着フィルム10の耐久性が向上する。
さらには、発熱層10Aとして金属層を有する定着フィルム10には前述のように耐熱樹脂からなる摺動層を設けると良い。定着フィルム10の発熱層10Aである金属層が剥き出しの場合、フィルムガイド部材16の材質によっては使用とともにフィルムガイド部材16が削れ、突出部50a・50bの必要な突出量hを保つことができない。また、定着フィルム10の最内層を樹脂層からなる摺動層10Dとすることで、フィルムガイド部材16と定着フィルム10の金属層10Aが直接摩擦するのを防止できるため、定着フィルム10及びフィルムガイド部材16それぞれの耐久性向上が可能である。
本実施例に示す定着装置は、上記の第1の実施例の定着装置において、摺動部Sよりも定着フィルム10移動方向上流側に位置する突出部50aの突出量h′に長手方向の分布を持たせた構成である。
定着フィルム10移動方向上流側の突出部50aは、定着ニップ突入前に被記録材Pにしごきを与えるため、封筒のような袋状の被記録材を通紙した場合に紙しわが発生しやすい。特に細口の封筒を横送りした場合には、袋が小さくしわが寄りやすい上にフラップが通紙方向を向かないため、封筒のフラップ側とその反対側で搬送力やしごきが異なり、封筒にしわが発生しやすい。一方、大サイズの封筒ではフラップが通紙方向を向くため搬送が安定し、しわが発生しにくい。
したがって、封筒のしわに対しては定着フィルム10移動方向上流側の突出部50aは低くするほうがよいが、第1の実施例で述べたように定着性を確保する観点からは、突出部50aの突出量h′は大きいほうがよい。
第1の実施例同様、定着フィルム10移動方向上流に関しても、フィルムガイド部材16の長手中央部の突出量(段差)h(c)′は小さく、長手端部側の突出量(段差)h(e)′は大きくすることで、細口タイプで顕著な封筒しわと長手方向端部定着性を両立させることが可能である。
図12(a)は、摺動部Sよりも下流側に位置する突出部50aを、定着フィルム10移動方向下流側からみた縦断正面模型図(摺動部材が完全なストレート形状の例)である。
本実施例における定着フィルム10移動方向上流側の突出部50aの突出量h′は、中央部h(c)′=0.05mm、端部h(e)′=0.15mmとし、長手方向中央から端部に向けて滑らかな曲線状に突出量h′を大きくすることで封筒のしわをほぼ発生なしにすることができた。実施例1同様中央から端部に向け距離に比例して突出量h′を大きくしても良い。上記方法によって長手方向端部に関しても十分な定着性を確保できた。
前述の突出部50aの突出量(段差量)がフィルムガイド部材16の長手方向で均一に設定された場合の、当該突出量と定着装置100で発生するトラブル(巻きつき(紙分離性)/端部定着性/定着フィルム耐久性)の関係を表2に示す。巻きつき/端部定着性/定着フィルム耐久性の各トラブルレベルと記号の関係については、表2下段のレベル表に示す。
本実施例では、上記表2に示す巻きつき(紙分離性)/端部定着性/定着フィルム耐久性を基に、フィルムガイド部材16の長手中央部突出量0.05mm、長手端部突出量0.15mmという構成にすることで、上記したようにいずれの項目でも上記トラブルの発生を低減できる定着装置を得ることができた。このとき、摺動部Sよりも定着フィルム10移動方向下流側に位置する突出部50bの突出量はフィルムガイド部材16の長手方向で0.2mmに均一にしている。
さらに封筒しわに余裕がない場合には、例えば長手方向中心部B5幅(182mm)の突出量h′は均一に小さく抑え、B5幅端部から長手方向端部に向けて突出量h′を大きくすると良い(図12(b))。その他の装置構成等は、第1の実施形態例の定着装置100と同様であるので、再度の説明は省略する。
本実施例に示す定着装置は、上記の第1または第2の実施例に示す定着装置おいて、摺動部材40を用いずに、フィルムガイド部材16を構成している。
図13は、定着ニップ部Nにおける定着フィルム10摺動部近傍の横断面側面模型図である。フィルムガイド部材16の下面が、摺動部Sにて、直接定着フィルム10の内面と摺動する構成となっている。
本実施例の定着装置においては、前述したトラブルの発生を低減できる上、摺動部材40を用いないため、低コスト化を図ることが可能である。
本実施例におけるフィルムガイド部材16の材質としては、耐熱性に優れるものが好ましい。例えば、フェノール樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリエーテルケトン樹脂、ポリエーテルスルフォン樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、LCP樹脂等といった耐熱性樹脂を選択するとよい。さらに好ましくは、滑り性に優れるものが良く、PFA樹脂、PTFE樹脂、FEP樹脂といったフッ素樹脂や、フッ素樹脂等滑り性の良い材料を混入させた耐熱性樹脂で構成すると良い。
また、フィルムガイド部材16自体の形状で突出部50a・50bを形成できるので、摺動部材40とフィルムガイド部材16との組み合わせによって突出部50a・50bを形成する第1の実施例の構成に比べ、突出部の突出量h、h′の製造バラツキなどを大幅に抑えることができる。
その他の装置構成等は、第1の実施例の定着装置100と同様であるので、再度の説明は省略する。
図14は本実施例の定着装置の要部の横断面側面模型図である。
10′は円筒状もしくはエンドレス状の耐熱性の定着フィルムである。定着フィルム10′はフィルムガイド部材16cにルーズに外嵌させてある。41はセラミックヒータ等の加熱体であり、フィルムガイド部材16cの下面の略中央部に該フィルムガイド部材の長手に沿って形成具備させた溝部に嵌入して固定支持させてある。加熱体41としては、耐熱性、摺動性等の観点からセラミック基板上に抵抗発熱体を形成したセラミックヒータを用いるとよく、セラミックとしてはアルミナ、窒化アルミなどが用いられる。セラミックヒータ41は不図示の電源から交番電流が通電されることで所定温度に発熱される。加圧ローラ30は定着フィルム10′を間に挟みフィルムガイド部材16cに設けられたセラミックヒータ41と定着ニップ部Nを形成する。定着フィルム10′は定着ニップ部Nにおいて加圧ローラ30から回転力を受けることでフィルムガイド部材16cのセラミックヒータ41と摺動しながら反時計方向に回転移動される。
本実施例の定着装置においては、定着ニップ部Nの定着フィルム10′と加圧ローラ30との間に未定着トナー画像を形成担持させた被記録材Pを導入して定着フィルム10′と一緒に挟持搬送させることで定着ニップ部Nにおいてセラミックヒータ41の熱を定着フィルム10′を介して被記録材に与え、さらに定着ニップ部Nの加圧力にて未定着トナー画像を被記録材面に定着させるフィルム加熱方式の装置である。
本実施例では、フィルムガイド部材16の下面において定着フィルム10′と摺動するセラミックヒータ41の幅方向(短手方向)の両側の摺動部に、実施例1および実施例2に示される突出部50a・50bと同様な形態の突出部51a・51bを設ける構成とすることによって、前述したトラブルの発生を低減できるようにしている。
本例に示すフィルム加熱方式の定着装置は、定着装置に励磁コイルやフェライトコア等を必要としないため、比較的安価である。また誘導加熱方式よりも広い範囲から定着フィルム10′の摺動層(金属層)10Dの材料を選択できる。実際には強度、コストの観点からステンレス、ニッケル合金などを選択するとよい。熱容量が大きい定着ローラを用いる熱ローラ方式の装置に比べて格段に省電力化、ウエイトタイム短縮化が可能であり、クイックスタート性があり、機内昇温も抑えられる等の利点がある。
その他の装置構成等は、第1〜第3の実施形態例と同様であるので、再度の説明は省略する。
[その他]
1)電磁誘導発熱性の定着フィルム10は、モノクロあるいは1パスマルチカラー画像などの加熱定着用の場合は、弾性層10Bを省略した形態のものとすることもできる。発熱層10Aは樹脂に金属フィラーを混入して構成したものとすることもできる。発熱層単層の部材とすることもできる。
[その他]
1)電磁誘導発熱性の定着フィルム10は、モノクロあるいは1パスマルチカラー画像などの加熱定着用の場合は、弾性層10Bを省略した形態のものとすることもできる。発熱層10Aは樹脂に金属フィラーを混入して構成したものとすることもできる。発熱層単層の部材とすることもできる。
2)定着フィルム10はエンドレスの回転部材(回転体)ではなく、例えば、ロール巻きにした長尺の有端のウエブ部材にし、これを繰り出して走行移動させる形態の装置構成にすることもできる。
3)加圧部材30は回転駆動される回転体としてのローラ体に限らず、回動ベルト型など他の形態の部材にすることもできる。また、加圧部材30側からも被記録材に熱エネルギーを供給するために、加圧部材30側にも電磁誘導加熱などの発熱手段を設けて所定の温度に加熱温調する装置構成にすることもできる。
4)加熱装置としての定着装置100の装置構成は、第1乃至第4の各実施例の加圧ローラ駆動方式に限られるものではない。例えば、フィルムガイドと、駆動ローラと、テンションローラとの間に、電磁誘導発熱性のエンドレスフィルム状の定着フィルムを懸回張設し、フィルムガイド部材の下面部と加圧部材としての加圧ローラとを定着フィルムを挟ませて圧接させて定着ニップ部を形成させ、定着フィルムを駆動ローラによって回転駆動させる装置構成にすることもできる。この場合、加圧ローラは従動回転ローラである。またフィルムガイド部材の定着フィルム摺動部の構成は、第1および第2の実施例と同様に、フィルムガイド部材に突出部を設け、突出部の突出量はフィルムガイド部材の長手方向で複数の段階を有している。
5)本発明の加熱装置は、実施形態例の画像加熱定着装置としてに限らず、画像を担持した被記録材を加熱して、つや等の表面性を改質する像加熱装置、仮定着する像加熱装置、その他、被加熱部材の加熱乾燥装置、加熱ラミネート装置、加熱加圧しわ取り装置など、広く被加熱材を加熱処理する手段・装置として利用できる。
N…定着ニップ部
10…定着フィルム(加熱部材,円筒状フィルム)
10´…定着フィルム(加熱部材,円筒状フィルム)
10A…発熱層、10B…弾性層、10C…離型層、10D…摺動層
16…フィルムガイド部材(支持部材)
17,18,27…磁性コア、励磁コイル、励磁回路(磁場発生手段)
26…温度検知素子
30…加圧ローラ(加圧部材)
40…摺動部材
41…定着フィルム加熱体
50…突出部
100…定着装置(加熱装置)
N…定着ニップ部(ニップ領域)
P…被記録材
S…摺動部
10…定着フィルム(加熱部材,円筒状フィルム)
10´…定着フィルム(加熱部材,円筒状フィルム)
10A…発熱層、10B…弾性層、10C…離型層、10D…摺動層
16…フィルムガイド部材(支持部材)
17,18,27…磁性コア、励磁コイル、励磁回路(磁場発生手段)
26…温度検知素子
30…加圧ローラ(加圧部材)
40…摺動部材
41…定着フィルム加熱体
50…突出部
100…定着装置(加熱装置)
N…定着ニップ部(ニップ領域)
P…被記録材
S…摺動部
Claims (16)
- 可撓性の移動部材と、移動部材と摺動する摺動面を有し移動部材を支持する支持部材と、移動部材を間に挟み支持部材とニップを形成する加圧部材と、を有し、移動部材と加圧部材の間で被加熱材を挟持搬送しつつ加熱する加熱装置において、
前記支持部材の前記摺動面近傍には、前記摺動面よりも前記加圧部材側へ突出している段差部が前記支持部材の長手方向に沿って設けられており、前記段差部の突出量は、前記支持部材の長手方向において複数の段階を持つことを特徴とする加熱装置。 - 前記支持部材の長手方向端部領域に、前記支持部材の長手方向中央の段差よりも突出量の大きな段差を有することを特徴とする請求項1に記載の加熱装置。
- 前記段差部の突出量が、前記支持部材の長手方向で連続的に変化する領域を有することを特徴とする請求項1または2に記載の加熱装置。
- 前記段差部は前記摺動面よりも前記移動部材の移動方向下流側に設けられており、前記段差部の突出量は前記摺動面を基準に1.0mm以下であることを特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載の加熱装置。
- 前記段差部は前記摺動面よりも前記移動部材の移動方向上流側に設けられており、前記段差部の突出量は前記摺動面を基準に0.3mm以下であることを特徴とする請求項1乃至4の何れかに記載の加熱装置。
- 前記支持部材は、前記ニップを形成する位置に前記移動部材に対し滑り性の良い摺動部材を有し、前記移動部材はこの摺動部材と摺動することを特徴とする請求項1乃至5の何れかに記載の加熱装置。
- 前記摺動部材、または、前記移動部材の摺動部材との摺動面の少なくとも一方は、耐熱性樹脂を有することを特徴とする請求項6に記載の加熱装置。
- 前記耐熱性樹脂は、PTFEであることを特徴とする請求項7に記載の加熱装置。
- 前記耐熱性樹脂は、ポリイミドであることを特徴とする請求項7に記載の加熱装置。
- 前記移動部材は回転体であることを特徴とする請求項1乃至9の何れかに記載の加熱装置。
- 前記移動部材は電磁誘導発熱性金属層を有することを特徴とする請求項1乃至10の何れかに記載の加熱装置。
- 前記装置はさらに磁場発生手段を有し、前記回転体は磁場発生手段によって発生する磁場の作用により前記金属層に渦電流が発生し、この渦電流の作用で発熱する前記移動部材からの熱により被加熱材が加熱されることを特徴とする請求項1乃至11の何れかに記載の加熱装置。
- 前記装置はさらに通電により発熱する発熱体を有し、被加熱材は前記移動部材を介した前記発熱体からの熱により加熱されることを特徴とする請求項1乃至11の何れかに記載の加熱装置。
- 前記加圧部材は、回転駆動される回転体であり、前記移動部材はこの回転体からの駆動を受けて移動することを特徴とする請求項1乃至13の何れかに記載の加熱装置。
- 前記装置は被加熱材に形成された未定着画像を定着する定着装置であることを特徴とする請求項1乃至14の何れかに記載の加熱装置。
- 被記録材に未定着画像を形成担持させる作像手段と、被記録材に形成担持させた未定着画像を定着させる定着手段を有し、前記定着手段が請求項1乃至14の何れかに記載の加熱装置であることを特徴とする画像形成装置。
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