JP2005337806A - 物理現象または化学現象の測定方法または測定装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】 様々な物理現象または化学現象を容易に画像化できるようにするとともに、高い測定精度および優れた応答性、さらに優れた直線性を有する測定方法あるいは測定装置を提供することを目的とする。
【解決手段】 物理的または化学的な量の大きさに対応して電位が変化するセンシング部4に対して電荷供給部2から電荷を供給し、供給された電荷をセンシング部4からフローティングディフュージョン6を介して取出し、供給された電荷量を検出することによって該物理現象または化学現象を測定する方法であって、前記センシング部4の電荷容量が、フローティングディフュージョン6の電荷容量を超える大きさであることを特徴とする。
【選択図】 図1
【解決手段】 物理的または化学的な量の大きさに対応して電位が変化するセンシング部4に対して電荷供給部2から電荷を供給し、供給された電荷をセンシング部4からフローティングディフュージョン6を介して取出し、供給された電荷量を検出することによって該物理現象または化学現象を測定する方法であって、前記センシング部4の電荷容量が、フローティングディフュージョン6の電荷容量を超える大きさであることを特徴とする。
【選択図】 図1
Description
本発明は、物理現象または化学現象を定量化する測定方法および装置に関し、例えば、溶液のpH、圧力、磁界、あるいは温度の二次元分布など、様々の物理現象または化学現象を定量化する測定方法および装置に関する。
物理現象または化学現象には、濃度、温度、磁気、圧力、加速度、速度、音波、超音波、酸化還元電位、反応速度など様々な現象があるが、これらの現象は、様々な電気信号(電流、電圧、抵抗、電荷容量、電位)に変換することができる。
また、例えば、フォトダイオードのように、光を照射すると光量に応じた電子正孔対が生成し、光量を電荷量に変化してその電荷量を評価することにより光量を測定する方法などのように、物理現象または化学現象を電荷情報に変換して測定する方法があった。
しかしながら、光以外のその他の物理・化学現象においては、ほとんどの場合、電荷量ではなく、電圧値、電流値、抵抗値などの電気信号に変換し、それらの値を読み取るようにしているため、電荷特有の取扱い方法である蓄積および転送を行うことができず、また複数点の情報を同時に取り込んで高速処理したり、測定結果を画像化するといったことが非常に困難であった。
近年、環境あるいは医療の分野を含め各種の分野において、こうした物理現象または化学現象の高速処理化あるいは画像化の要請が高まり、例えば、物理的または化学的な量の大きさに対応して深さを変化するように構成されたポテンシャル井戸に電荷を供給して、前記物理的または化学的な量をこのポテンシャル井戸の大きさに応じた電荷に変換することによって、複数点の情報を同時に取り込み、蓄積、転送などを行い、様々な物理現象または化学現象を容易に画像化できるようにした方法および装置などが提案されている(例えば特許文献1参照)。
特開平10−332423号公報
しかしながら、昨今の物理現象または化学現象の測定には、従来以上に精緻な測定精度や応答の高速化が求められ、上記の方法や装置に対し、より優れた精度面あるいは応答面の改善の要請が強くなってきた。
つまり、物理現象または化学現象を電荷情報として変換するに際し、精度面あるいは応答面に対しては、電荷移動手段どのような構成あるいは構造とすることによって電荷の移動をより効率的にかつ迅速に行うことができるかが大きな課題となってきた。
また、物理現象または化学現象の測定においては、大きな変化による大量の電荷移動がある場合と物理現象または化学現象としての変化がほとんどなく小さな電荷移動しか発生しない場合がある。実際の測定においては、いずれの場合においても現象変化に対応した所定の測定精度を要求されるが、同一構成の検出器において、そのいずれの電荷移動条件においても同一精度を確保することは非常に難しい。つまり、検出器にとって広い範囲での直線性確保は大きな課題である。
そこで、この発明の目的は、物理現象または化学現象を電荷情報に変換することによって定量化を行い、複数点の電荷情報を同時に取り込み様々な物理現象または化学現象を容易に画像化できるようにするとともに、高い測定精度および優れた応答性、さらに優れた直線性を有する測定方法あるいは測定装置を提供することにある。
本発明者らは、上記課題を解決するために、鋭意研究を重ねた結果、以下に示す測定方法あるいは測定装置によって上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに到った。
上記目的を達成するため、この発明の物理現象または化学現象の測定方法は、物理的または化学的な量の大きさに対応して電位が変化するセンシング部に対して電荷供給部から電荷を供給し、供給された電荷をセンシング部からフローティングディフュージョンを介して取出し、供給された電荷量を検出することによって該物理現象または化学現象を測定する方法であって、前記センシング部の電荷容量が、フローティングディフュージョンの電荷容量を超える大きさであることを特徴とする。
そして、この発明の物理現象または化学現象の測定装置は、電荷をセンシング部に供給する電荷供給部、物理的または化学的な量の大きさに対応して電位が変化するセンシング部、該センシング部に供給された電荷を取出すフローティングディフュージョン、からなる検出部を有する測定装置であって、前記センシング部の電荷容量がフローティングディフュージョンの電荷容量を超える大きさを有することを特徴とする。
つまり、本発明者は、物理現象または化学現象を電荷に変換して測定する場合に、センシング部とフローティングディフュージョンの間における電荷容量に差を設けることによって、実質的に増幅機能を有することができることを見出したものである。「センシング部の電荷容量」/「フローティングディフュージョンの電荷容量」が大きい程、フローティングディフュージョンのポテンシャルを上昇させることができる。従って、その分増幅率を高くすることができ、正確かつ感度の高い測定が可能となる。
また、前記センシング部に供給された電荷を、電荷転送部を介してフローティングディフュージョンに移動することが好ましい。上記のように本発明は、センシング部とフローティングディフュージョンとの電荷容量比を大きくする方が好ましい反面、構造上の制限から限界がある。本発明では、その中間に電荷転送部を設けることによって、センシング部とフローティングディフュージョンを任意の形状あるいは配置に構成することが可能となり、容易に検出感度あるいは応答速度の向上を図ることができる。さらに、1つのフローティングディフュージョンに対し電荷転送部を介して複数のセンシング部からの電荷を順次移動させるCCD(電荷結合素子)機能を有することによって、物理的または化学的な現象の一次元分布または二次元分布を容易に画像化することができる。
本発明は、電荷をセンシング部に供給する電荷供給部、物理的または化学的な量の大きさに対応して電位が変化するセンシング部、該センシング部に供給された電荷を取出すフローティングディフュージョン、からなる検出部を有する測定装置であって、前記センシング部が、1のフローティングディフュージョンに対し周回状に配設されていることを特徴とする。本発明におけるセンシング部の構造は、検出部の検出感度向上の面からは蓄積量を多くできるように大電荷容量であることが好ましい一方、検出部の応答性の面からはフローティングディフュージョンへの迅速な電荷の移動が好ましい。そこで、センシング部を1のフローティングディフュージョンに対し周回状に配設し、フローティングディフュージョンからの放射線上のセンシング部の空間距離を短くすることによって、こうした両面を満足する構造を実現可能としたものである。センシング部に蓄積された電荷が、同一電荷容量のセンシング部との比較において最も素早くフローティングディフュージョンへ流出することが可能となることから、実質的に電荷がセンシング部を通過する時間を短縮することができ、電荷による検出サイクルを上げることができるために応答が速い検出が可能となる。
上記物理現象または化学現象の測定装置において、前記検出部が、複数のセンシング部から形成されることを特徴とする。つまり、上記の検出部においてセンシング部を複数配設あるいは組合せ、複数のセンシング部からの電荷を1のフローティングディフュージョンに順次転送することによって、同一増幅度の複数試料の測定、あるいは同一試料の異なる複数位置における現象を同時に測定することができる。さらに、物理的または化学的な量を電荷に変換しているので、CCDなどを用いることにより物理的または化学的な現象の一次元分布または二次元分布を容易に画像化することができる。
上記物理現象または化学現象の測定装置において、前記電荷供給部が、1のセンシング部に対し複数配設されていることを特徴とする。センシング部の電荷容量を大きくすることは好ましい反面、電荷供給部からセンシング部への電荷の供給が律速されることがある。特に、測定対象あるいは用途によって、センシング部の数量、形状あるいは配置関係が一義的に決定されることがあり、1の電荷供給部からの供給ではセンシング部全体に電荷が行き渡るのに所定の時間を必要とし迅速な対応が難しい場合がある。こうした場合に、センシング部への電荷供給の負荷を複数の電荷供給部に分散することで、センシング部への供給を容易にし、迅速なセンシング部での蓄積が可能となる。また、複数のセンシング部を、1のフローティングディフュージョンに対し周回状に配設する構成との組合せによって、上記同様、センシング部からフローティングディフュージョンへの電荷転送を迅速に行うことができ、さらに相当速度を高めることが可能となる。
以上のように、本発明の物理現象または化学現象の測定方法あるいは測定装置によれば、対象となる物理現象または化学現象に伴う電荷あるいはそれによって生じる出力の増幅を可能としつつ、複数点の情報を同時に取り込み、蓄積、転送などを行うことにより、検出精度の向上および応答の高速化を図り、様々な物理現象または化学現象を容易に画像化することができる。
特に、フローティングディフュージョンの構成を工夫することによって、さらなる高精度化および迅速化を図ることができる。また、電荷移動量を制御することによって優れた直線性を確保することができる。さらに、CCDなどを用いることにより物理的または化学的な現象の二次元分布を容易に画像化することができる。特に、微弱な信号の増幅が可能であるから、複数点の情報から物理的または化学的な現象の微小な変化をも確実に把握することができる。さらに、データ処理の方法によっては三次元分布をも得ることができる。
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
図1は、この発明に係る物理現象または化学現象の測定装置の基本的な構成を例示し、図2は、それを斜視的に例示している(第1構成例)。
図1は、この発明に係る物理現象または化学現象の測定装置の基本的な構成を例示し、図2は、それを斜視的に例示している(第1構成例)。
図1および図2において、Bは例えばp型Si(シリコン)よりなる半導体基板で、厚さ500μm程度である。半導体基板Bは例えばシリコン酸化膜の絶縁膜1を有し、それを挟むようにして、電荷供給部2、電荷供給調節部3、センシング部4、障壁部5、フローティングディフュージョン6、リセットゲート7、リセットドレイン8、出力トランジスタ9が形成される。そして、電荷供給部2、電荷供給調節部3、センシング部4および障壁部5の各部材によってセンサ部10が形成され、センサ部10、フローティングディフュージョン6、リセットゲート7およびリセットドレイン8によって検出部11が形成される。半導体基板Bは、樹脂モールドなどを施すことにより溶液試料などに対して耐性をもたせている。
測定に際しては、電荷供給部2、障壁部5およびリセットゲート7にパルス電圧を印加し、他の部位に直流電圧を印加し、p型半導体を用いたMOS構造において、正の電圧を加えることによって、半導体−絶縁膜界面近傍での電位状態を形成することができる。
センサ部10は、例えば、次のようにして形成される。
(1)p型Si基板Bを熱酸化し、酸化膜(SiO2 )を形成する。
(2)その一部分をエッチングし、その後、さらに熱酸化することによりゲート酸化膜を形成する。このゲート酸化膜の膜厚は約500Åである。
(3)その上面の電荷供給調節部3と障壁部5にそれぞれ対応する部分にリンドープされた低抵抗のポリシリコンを堆積させて電極を形成する。この電極の膜厚は約3000Åで、堆積させた後、約1000Å程度熱酸化する。
(4)その後、再びリンドープされた低抵抗のポリシリコンを堆積し、電荷転送部8の上面に電極を形成する。この電極の膜厚は前記電極のそれと同程度に堆積させた後、約1000Å程度熱酸化する。このように酸化することにより、電極同士の絶縁が保たれる。
(5)その後、Si3 N4 (Ta2 O3 またはAl2 O3 でもよい)を700Å程度堆積してセンシング部4を形成する。
(1)p型Si基板Bを熱酸化し、酸化膜(SiO2 )を形成する。
(2)その一部分をエッチングし、その後、さらに熱酸化することによりゲート酸化膜を形成する。このゲート酸化膜の膜厚は約500Åである。
(3)その上面の電荷供給調節部3と障壁部5にそれぞれ対応する部分にリンドープされた低抵抗のポリシリコンを堆積させて電極を形成する。この電極の膜厚は約3000Åで、堆積させた後、約1000Å程度熱酸化する。
(4)その後、再びリンドープされた低抵抗のポリシリコンを堆積し、電荷転送部8の上面に電極を形成する。この電極の膜厚は前記電極のそれと同程度に堆積させた後、約1000Å程度熱酸化する。このように酸化することにより、電極同士の絶縁が保たれる。
(5)その後、Si3 N4 (Ta2 O3 またはAl2 O3 でもよい)を700Å程度堆積してセンシング部4を形成する。
センシング部4は、物理的または化学的な量の大きさに対応して電位が変化する測定部位であり、例えばpH測定の場合には、水溶液や測定対象物などを導入するセルが設けられた電極部を形成し、試料中のpHに対応する電位を発生する。こうした電位あるいは電位の変化を電荷に変換し、検出部11における電荷の変化を、MOS構造の出力トランジスタ9によって出力変換される。
ここで、電荷供給部2は、1のセンシング部4に対し1つに限定されるものではなく複数配設されていることが可能である。上述のように、測定対象あるいは用途によって、センシング部4の数量、形状あるいは配置関係が一義的に決定されることがあり、センシング部4全体への電荷の供給を迅速に行う必要がある場合において、センシング部4への電荷供給の負荷を複数の電荷供給部2に分散することが好ましい。
また、フローティングディフュージョン6は、センシング部4の形状あるいはセンシング部4とフローティングディフュージョン6との電荷容量比などによって設定されるが、図1では、センシング部との接触部分を大きくするとともに、フローティングディフュージョン6の面積を小さくするために台形形状を形成している。
上記のような測定装置における測定方法について、図3(A)に示す電位図を参照しながら説明する。
(1)初期電位状態
当初は、電荷供給部2の電位は高く(矢印方向が高い)設定されており、センシング部4には電荷は供給されていない。
(2)電荷の供給
電荷供給部2の電位を下げることによって、センシング部4に電荷を供給する。
(3)電荷の蓄積
電荷供給部2の電位を上げることによって、供給された電荷の一部がオーバーフローし電荷供給調節部3によって制限された量の電荷がセンシング部4に蓄積される。
(4)電荷の転送
障壁部5の電位を上げることによって、センシング部4に蓄積された電荷をフローティングディフュージョン6に転送する。
(5)電荷の測定
センシング部4の電荷が全てフローティングディフュージョン6に転送されてから障壁部5を閉じ、電荷の流入を止める。この段階で、フローティングディフュージョン6の電位は転送されてきた電荷の量で決まるので、この電位をMOS構造の出力トランジスタ9のゲート部に入力し、この出力トランジスタ9のドレイン電流を測定する。
(6)リセット
フローティングディフュージョン6の電位を読み取った後、リセットゲート7をオンにしてリセットドレイン8から電荷を供出し、フローティングディフュージョン6の電位をリセットドレイン8の電位にリセットする。
(7)検出サイクル
上記のリセットにより、再び(1)と同じ状態に戻ることになる。つまり、検出サイクルとは、このように、(1)〜(6)の動作を繰り返すことをいい、これによって、センシング部4での電位の状態に対応した電荷量を順次出力することができる。
(1)初期電位状態
当初は、電荷供給部2の電位は高く(矢印方向が高い)設定されており、センシング部4には電荷は供給されていない。
(2)電荷の供給
電荷供給部2の電位を下げることによって、センシング部4に電荷を供給する。
(3)電荷の蓄積
電荷供給部2の電位を上げることによって、供給された電荷の一部がオーバーフローし電荷供給調節部3によって制限された量の電荷がセンシング部4に蓄積される。
(4)電荷の転送
障壁部5の電位を上げることによって、センシング部4に蓄積された電荷をフローティングディフュージョン6に転送する。
(5)電荷の測定
センシング部4の電荷が全てフローティングディフュージョン6に転送されてから障壁部5を閉じ、電荷の流入を止める。この段階で、フローティングディフュージョン6の電位は転送されてきた電荷の量で決まるので、この電位をMOS構造の出力トランジスタ9のゲート部に入力し、この出力トランジスタ9のドレイン電流を測定する。
(6)リセット
フローティングディフュージョン6の電位を読み取った後、リセットゲート7をオンにしてリセットドレイン8から電荷を供出し、フローティングディフュージョン6の電位をリセットドレイン8の電位にリセットする。
(7)検出サイクル
上記のリセットにより、再び(1)と同じ状態に戻ることになる。つまり、検出サイクルとは、このように、(1)〜(6)の動作を繰り返すことをいい、これによって、センシング部4での電位の状態に対応した電荷量を順次出力することができる。
以上のように、この測定装置においては、物理的または化学的な量の大きさに対応して電位を変化するように構成されたセンシング部4を半導体基板Bに形成し、このセンシング部4に電荷を供給して、前記物理的または化学的な量をこのセンシング部の大きさに応じた電荷に変換するようにした電荷変換機構を用いている。
なお、図3(A)では、電荷供給部2の電位を上げ下げしてセンシング部4に蓄積された電荷をすりきるようにしているが、これに代えて、図3(B)に示すように、電荷供給部2の電位を一定に保持し、電荷供給調節部3の高さを上げ下げしてセンシング部4に電荷を蓄積するようにしてもよい。つまり、以下の操作によって、安定的に前記物理的または化学的な量をこのセンシング部の大きさに応じた電荷に変換することができる。
(1)初期電位状態
当初は、電荷供給部2の電位は低く、電荷供給調節部3の電位はそれ以下に設定されており、センシング部4には電荷は供給されていない。
(2)電荷の供給
電荷供給調節部3の電位を、電荷供給部2の電位以上に上げることによって、センシング部4に電荷を供給する。
(3)電荷の蓄積
電荷供給調節部3の電位を(1)の状態にまで下げることによって、供給された電荷がセンシング部4に蓄積される。
(4)電荷の転送
障壁部5の電位を上げることによって、センシング部4に蓄積された電荷をフローティングディフュージョン6に転送する。
(5)電荷の測定
センシング部4の電荷が全てフローティングディフュージョン6に転送されてから障壁部5を閉じ、電荷の流入を止める。この段階で、フローティングディフュージョン6の電位は転送されてきた電荷の量で決まるので、この電位をMOS構造の出力トランジスタ9のゲート部に入力し、この出力トランジスタ9のドレイン電流を測定する。
(6)リセット
フローティングディフュージョン6の電位を読み取った後、リセットゲート7をオンにしてリセットドレイン8から電荷を供出し、フローティングディフュージョン6の電位をリセットドレイン8の電位にリセットする。
(7)検出サイクル
上記のリセットにより、再び(1)と同じ状態に戻ることになる。つまり、検出サイクルとは、このように、(1)〜(6)の動作を繰り返すことをいい、これによって、センシング部4での電位の状態に対応した電荷量を順次出力することができる。図3(A)の方法の利点とともに、電荷供給部2の電位を基準とすることで一定電位を保持することが可能となり、さらに安定性の向上を図ることができる。
(1)初期電位状態
当初は、電荷供給部2の電位は低く、電荷供給調節部3の電位はそれ以下に設定されており、センシング部4には電荷は供給されていない。
(2)電荷の供給
電荷供給調節部3の電位を、電荷供給部2の電位以上に上げることによって、センシング部4に電荷を供給する。
(3)電荷の蓄積
電荷供給調節部3の電位を(1)の状態にまで下げることによって、供給された電荷がセンシング部4に蓄積される。
(4)電荷の転送
障壁部5の電位を上げることによって、センシング部4に蓄積された電荷をフローティングディフュージョン6に転送する。
(5)電荷の測定
センシング部4の電荷が全てフローティングディフュージョン6に転送されてから障壁部5を閉じ、電荷の流入を止める。この段階で、フローティングディフュージョン6の電位は転送されてきた電荷の量で決まるので、この電位をMOS構造の出力トランジスタ9のゲート部に入力し、この出力トランジスタ9のドレイン電流を測定する。
(6)リセット
フローティングディフュージョン6の電位を読み取った後、リセットゲート7をオンにしてリセットドレイン8から電荷を供出し、フローティングディフュージョン6の電位をリセットドレイン8の電位にリセットする。
(7)検出サイクル
上記のリセットにより、再び(1)と同じ状態に戻ることになる。つまり、検出サイクルとは、このように、(1)〜(6)の動作を繰り返すことをいい、これによって、センシング部4での電位の状態に対応した電荷量を順次出力することができる。図3(A)の方法の利点とともに、電荷供給部2の電位を基準とすることで一定電位を保持することが可能となり、さらに安定性の向上を図ることができる。
このとき、センシング部4の電荷容量がフローティングディフュージョン6の電荷容量を超える大きさを有することが好ましい。例えば、上記の検出サイクルの(1)〜(4)を繰り返し、フローティングディフュージョン6にある程度の電荷量が蓄積されてから電荷を測定するようにすることで、検出感度を上げることが可能であるが、その蓄積時間分だけ応答時間が遅くなる。本発明では、センシング部4の電荷容量を大きくし蓄積される電荷を多くすることで、小電荷容量のフローティングディフュージョン6に転送された時のフローティングディフュージョン6での電位の変化率を上昇させることができることから、その変化率を検出することで、正確かつ感度の高い測定が可能となる。つまり、センシング部4と電荷転送手段であるフローティングディフュージョン6の間に電荷容量差を設けることによって、センシング部4のおける電位の変化の実質的に増幅機能を有することとなる。
具体的にセンシング部4の電荷容量を大きくするには、(1)平面上での面積を大きくする、(2)センシング部4を複数にする、(3)電位を高くする、(4)電荷密度を上げる、などの手段があり、物理的または化学的な現象の対象となる試料の性状や濃度などによって選択することが可能である。なお、センシング部4の形状についても、同様の選択が可能である。
図4(A)および(B)は、本発明における第2構成例を示す。センシング部4の面積を大きくするためにフローティングディフュージョン6に対し周回状に配設され、センシング部4の電荷容量を大きくしている。図4(A)の径方向の距離dを調整することによって、センシング部4の面積を任意に設定することができることから、汎用性も高い。また、電位あるいは電荷密度を上げる場合には測定対象によってはセンシング部4の絶縁性を考慮する必要があるが、こうした構成では面積を拡大することで対応できる点優位である。さらに、フローティングディフュージョン6と長い線上で接する構成によって、素早くフローティングディフュージョン6へ電荷を移動することができる点において、測定の迅速化の要請に対応することができることからも優れている。つまり、電荷がセンシング部を通過する空間距離dを短くし、実質的に電荷がセンシング部を通過する時間を短縮することができ、電荷による検出サイクルを上げることができるために応答が速い検出が可能となる。
なお、ここで、図4(B)に例示するように、1のセンシング部4に対して複数の電荷供給部2a,2b,2cを配設する構成することも好適である。センシング部4の面積拡大に伴い、1の電荷供給部2からの供給ではセンシング部4全体に電荷が行き渡るのに所定の時間を必要とし迅速な対応が難しい場合がある。こうした場合に、センシング部4への電荷供給の負荷を複数の電荷供給部2a,2b,2cに分散することで、センシング部4への供給を容易にし、センシング部4での電荷の迅速な蓄積が可能となる。また、各電荷供給部2a,2b,2cの電荷供給量を個別に調整しセンシング部4の形状などに適した電荷の供給が可能となる。さらに、電荷供給調整部3を各電荷供給部2a,2b,2cごとに別々に設け電荷供給量を個別に調整することも可能となる。なお、ここでは、複数を3つとして説明しているが、2以上いくつでも可能であることはいうまでもない。以下同様である。
図5は、本発明における第3構成例を示す。1つのフローティングディフュージョン6に対し、複数のセンシング部4a,4b,4cを周回状に設けており、全体としてセンシング部の面積を大きくし電荷容量を大きくしている。第2構成例と同様、センシング部面積の任意設定、フローティングディフュージョン6との周回接触、電荷の通過時間の短縮化の機能を有し、検出感度の向上および測定の迅速化の要請に対応し、かつ汎用性の高い検出手段とすることができる。
加えて、本発明では、各センシング部4a,4b,4cが独立性を有することで、さらに、従来とは異なる使用方法が可能となる。具体的には、例えば、各センシング部4a,4b,4cの表面を適当な応答物質で修飾することにより選択性のあるイオン電極を形成し、同一試料について複数のイオン(例えば、pH、Ca、Na、K、あるいは塩素など)の濃度測定を行うことや、温度、磁気、圧力検出機能を形成し同一試料についての各項目の検出を同時に行うこと、など異なった物理現象または化学現象の同時測定が可能となる。
また、同一機能を有するセンシング部4a,4b,4cを設け、異なる試料を同時に測定することで、複数試料の同一項目の測定を同時に行うことができる。さらに、CCDなどを用いることにより物理的または化学的な現象の一次元分布または二次元分布を容易に画像化することができるなど、多用な要請に対応することが可能となる。
本発明における第4の構成例を図6に示す。センシング部4(4a,4b,4c)とフローティングディフュージョン6の中間に電荷転送部13を設けたもので、センシング部4に供給された電荷を電荷転送部13および障壁部5を介してフローティングディフュージョン6に移動する構成をとることによって、センシング部4とフローティングディフュージョン6の大きさ・形状の相違など構造上の制限を回避して、任意の形状あるいは配置に構成することが可能となり、検出感度あるいは応答速度の向上を図ることができる。特に、図6のように複数のセンシング部4a,4b,4cを有する場合に有効であるが、これに限定されるものでないことはいうまでもない。
さらに、1つのフローティングディフュージョン6に対し電荷転送部13を介して複数のセンシング部4a,4b,4c,・・・からの電荷を順次移動させるCCD機能を有することによって、物理的または化学的な現象の一次元分布または二次元分布を容易に画像化することができる。具体的には、図7に例示するような第5構成例が可能である。つまり、複数のセンサ部10(a,a)、10(a,b)、・・・と、各センサ部において変換された電荷を矢印方向に転送する電荷転送部13と、転送されてきた電荷をさらに転送する1つのフローティングディフュージョン6と、転送されてきた電荷を出力信号に変換する出力トランジスタ9とからなる。
センサ部10(a,a)、10(a,b)、・・・を一次元的あるいは二次元的に配置してアレイ化することにより、複数点の情報を同時に取り込み、電荷転送部13および出力トランジスタ9によって、複数点の信号を秩序よく処理することができる。出力された信号は、そのままCRTなどの画像出力装置(図示せず)に入力して画像出力したり、出力信号をAD変換してコンピュータに入力することができる。
つまり、各センサ部10(a,a)、10(a,b)、・・・と電荷転送部13との接合部におけるゲートを順次開として蓄積された電荷を供出し、CCD駆動電位を順にON−OFFすることによって電荷転送部13の転送路を経由して転送される。このとき、電荷転送部13におけるCCDの駆動は、1相駆動、2相駆動あるいは4相駆動など、転送される電荷量に応じて適宜選定することができる。なお、センサ部10の数が多くなるに伴って転送効率が大きな問題となるが、その場合は、転送経路として転送効率の高いバルクチャンネルを用いるのが好ましい。転送されてきた電位は、フローティングディフュージョン6に転送され、このフローティングディフュージョン6の電位を変化させる。この電位の変化を、出力トランジスタ9のゲートに入力し、検出出力とする。
本発明における第6の構成例を図8に例示する。出力トランジスタ9の出力側にフィードバック回路12(制御部)を設け、出力トランジスタ9の出力が一定になるように電荷供給調整部3の電位を制御し、その制御量を測定値に変換する場合を表している。
つまり、物理現象または化学現象を電荷情報に変換して定量化を行う場合においては、センシング部4あるいはフローティングディフュージョン6に残留する電荷の影響が無視できないことがある。具体的には、センシング部4からフローティングディフュージョン6までの電荷移動距離が長い場合あるいは検出サイクルの時間が短い場合では、電荷の移動が追いつかず電荷の一部がセンシング部4に残留することがある。このとき微小な電荷の移動を追跡する高感度測定においては、直線性、特にゼロ付近での直線性が悪くなることがある。そこで、本発明では、こうしたセンシング部4への電荷の残留を防止する、あるいは電荷の残留があっても検出特性に影響しないような電荷移動量に設定して、電荷移動量を一定にするように電荷供給調整部3の電位を調整するものである。
すなわち、電荷供給調整部3とセンシング部4との電位差を一定すれば、センシング部4に供給される電荷供給量を一定にすることができ、電荷移動量が一定となる。このとき電荷移動量を所定値以上にすれば、上記の電荷の残留の影響は無視することができる。また、センシング部4からフローティングディフュージョン6に移動する電荷量を一定となり、その結果フローティングディフュージョン6の電位が一定となる。つまり、フローティングディフュージョン6に設けられた出力トランジスタ9の出力が一定となるように、物理現象または化学現象に伴うセンシング部4の電位の変化に対応して、電荷供給調整部3の電位を調整した場合、その調整量が物理現象または化学現象の変化に対応する測定量とすることができ、直線性を有する優れた検出特性を得ることができる。
また、センサ部10における電荷移動量を一定とすることで、センサ部10の変動要素を少なくし機能の安定化を図ることができる。
さらに、センシング部4の特性にバラツキがあっても、同一試料についてのセンシング部4と電荷供給調整部3の電位差を一定にするように調節された電荷供給調整部3の電位を基準に、上記動作を行うことができる。従って、センシング部4の特性を厳格に規制することなく、同等の出力特性を得ることができる。
上記では、各請求項に係る発明によって形成される機能を、一部組合せた構成例を挙げて説明したが、むろん、本発明はこれに限定されるものではなく、他の組合せ、あるいは本願に記載の事項との任意の組合せが可能であることはいうまでもない。
以上、この発明は、広く溶液などサンプルのイオン濃度の二次元分布測定に好適に用いることができるほか、以下のような分野にも適用することができる。
(1)化学顕微鏡としての応用分野・化学;イオン濃度計測・電気化学的分野、ガス分布計測分野・滴定の二次元的動的観察および解析
(2)環境計測・環境;バイオリメディエーションへの適用
(3)食品検査・食品、微生物
(4)ME分野・医学・生態組織;組織細胞の表面イオン濃度計測、細胞表面電位計測、DNA計測
(5)バイオ分野
(6)動植物分野・植物;カルスの表面電位分布計測・生物・正面図動物
(7)腐蝕計測分野・金属;金属腐蝕と塗装・コーティング
(8)ゼータ電位等表面解析・粉体、セラミックスのゼータ電位。
(1)化学顕微鏡としての応用分野・化学;イオン濃度計測・電気化学的分野、ガス分布計測分野・滴定の二次元的動的観察および解析
(2)環境計測・環境;バイオリメディエーションへの適用
(3)食品検査・食品、微生物
(4)ME分野・医学・生態組織;組織細胞の表面イオン濃度計測、細胞表面電位計測、DNA計測
(5)バイオ分野
(6)動植物分野・植物;カルスの表面電位分布計測・生物・正面図動物
(7)腐蝕計測分野・金属;金属腐蝕と塗装・コーティング
(8)ゼータ電位等表面解析・粉体、セラミックスのゼータ電位。
また、測定対象(サンプル)は、気体、液体、固体、粉体のいずれであってもよく、センサ部の特定感応層により選択的に反応する化学センシングと、物理的接触による界面現象に電荷変動をするあらゆる現象に適用でき、例えば液の流れや一瞬の化学反応の過渡現象の分布を高感度、高画質の化学画像として得ることができる。さらに、滴定現象のリアルタイム画像化から画像ソフトによる他の種類の解析、表示にも有用であり、携帯化カメラにも有効である。
1 絶縁膜
2 電荷供給部
3 電荷供給調整部
4 センシング部
5 障壁部
6 フローティングディフュージョン
7 リセットゲート
8 リセットドレイン
9 出力トランジスタ
10 センサ部
11 検出部
12 フィードバック回路
13 電荷転送部
B 半導体基板
2 電荷供給部
3 電荷供給調整部
4 センシング部
5 障壁部
6 フローティングディフュージョン
7 リセットゲート
8 リセットドレイン
9 出力トランジスタ
10 センサ部
11 検出部
12 フィードバック回路
13 電荷転送部
B 半導体基板
Claims (7)
- 物理的または化学的な量の大きさに対応して電位が変化するセンシング部に対して電荷供給部から電荷を供給し、供給された電荷をセンシング部からフローティングディフュージョンを介して取出し、供給された電荷量を検出することによって該物理現象または化学現象を測定する方法であって、前記センシング部の電荷容量が、フローティングディフュージョンの電荷容量を超える大きさであることを特徴とする物理現象または化学現象の測定方法。
- 前記センシング部に供給された電荷を、電荷転送部を介してフローティングディフュージョンに移動することを特徴とする請求項1記載の物理現象または化学現象の測定方法。
- 電荷をセンシング部に供給する電荷供給部、物理的または化学的な量の大きさに対応して電位が変化するセンシング部、該センシング部に供給された電荷を取出すフローティングディフュージョン、からなる検出部を有する測定装置であって、前記センシング部の電荷容量がフローティングディフュージョンの電荷容量を超える大きさを有することを特徴とする物理現象または化学現象の測定装置。
- 電荷をセンシング部に供給する電荷供給部、物理的または化学的な量の大きさに対応して電位が変化するセンシング部、該センシング部に供給された電荷を取出すフローティングディフュージョン、からなる検出部を有する測定装置であって、前記センシング部が、1のフローティングディフュージョンに対し周回状に配設されていることを特徴とする物理現象または化学現象の測定装置。
- 前記検出部が、複数のセンシング部から形成されることを特徴とする請求項3または4記載の物理現象または化学現象の測定装置。
- 前記電荷供給部が、1のセンシング部に対し複数配設されていることを特徴とする請求項3〜5のいずれかに記載の物理現象または化学現象の測定装置。
- 前記センシング部とフローティングディフュージョンの中間に電荷転送部を配することを特徴とする請求項3〜6のいずれかに記載の物理現象または化学現象の測定装置。
Priority Applications (1)
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JP2004154907A JP2005337806A (ja) | 2004-05-25 | 2004-05-25 | 物理現象または化学現象の測定方法または測定装置 |
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JP2009258039A (ja) * | 2008-04-21 | 2009-11-05 | Nippon Telegr & Teleph Corp <Ntt> | 電荷検出器および電荷検出方法 |
WO2013024791A1 (ja) * | 2011-08-12 | 2013-02-21 | 国立大学法人豊橋技術科学大学 | 化学・物理現象検出装置及び検出方法 |
JP2020067282A (ja) * | 2018-10-22 | 2020-04-30 | 国立大学法人豊橋技術科学大学 | 化学・物理現象検出素子 |
-
2004
- 2004-05-25 JP JP2004154907A patent/JP2005337806A/ja not_active Withdrawn
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JPWO2013024791A1 (ja) * | 2011-08-12 | 2015-03-05 | 国立大学法人豊橋技術科学大学 | 化学・物理現象検出装置及び検出方法 |
US9482641B2 (en) | 2011-08-12 | 2016-11-01 | National University Corporation Toyohashi University Of Technology | Device and method for detecting chemical and physical phenomena |
JP2020067282A (ja) * | 2018-10-22 | 2020-04-30 | 国立大学法人豊橋技術科学大学 | 化学・物理現象検出素子 |
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