JP2005336632A - 藍植物からの藍染め法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】藍植物を冷凍保存処理し、これまでの常温での処理である藍植物中のインジカンが同植物中の酵素によりインドキシルになり、インドキシルが酸化的に2分子結合して生成されるインジゴ化の作用機構を抑制すると同時に赤紫染料であるインジルビンを生成させる。すなわち、藍植物の冷凍保存処理後の溶媒抽出による赤紫染色液の、赤紫染色液中の溶媒の除去により得られる染料の還元建てによる藍の染色法である。
【選択図】 図1
Description
非特許文献1、2には、高温での染色のため斑になりやすく、色が薄く、繊維の劣化をもたらすなどの問題がある。非特許文献1、2には、絹や毛等の動物繊維には染まりやすいが麻や綿等の植物繊維には染まりにくいなどの問題がある。非特許文献1、2には、藍植物からの高温での染料抽出に長時間(2〜6時間)を要するなどの問題がある。
また、非特許文献3には、被染物をアルカリ液に浸し、そのまま乾燥するため被染物の劣化をもたらすなどの問題点がある。
本願発明は、藍植物の冷凍保存処理、溶媒抽出による赤紫色染料液の、この染料液の溶媒を除去して得られる染料の還元建てによる藍の染色法を提供するものである。赤紫色を含む組成物は、液体組成物であっても、固体組成物であってもよい。
本発明にいう藍植物とは、藍(配糖体のインジカン)を含む植物であり、キツネノマゴ科のリュウキュウアイ、タデ科のタデアイ、マメ科のナンバンコマツナギ、キアイ(インドアイ)、アブラナ科のタイセイである。
本発明で使用する還元剤は、インジルビンを還元できる物質であり、たとえば、ハイドロサルファイトナトリウム、亜鉛末が挙げられる。
本発明で使用するPH調整剤は、アルカリ性、酸性を示す天然物質及び合成物質である。たとえば、天然物質として木灰、珊瑚灰、貝灰、天然酢、木酢液、芋焼酎、柑橘類の搾汁液、合成物質として水酸化カルシウム、酸化カルシウム、炭酸水素ナトリウム、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、酢酸、クエン酸、塩酸、硫酸が挙げられる。
本発明で使用する抽出濃縮法は、デカンテーション、濾別法、凍結乾燥法、遠心分離法が挙げられる。
本発明の藍染め法には、冷凍保存処理工程が、冷凍温度−7〜−37℃、好ましくは−15〜−25℃、保存期間7〜60日、好ましくは8〜28日である方法が含まれる。
本発明の藍染め法は、藍植物を冷凍保存処理工程、溶媒抽出工程を含む方法である。
本発明の藍染め法には、溶媒抽出工程が、抽出温度50〜130℃、好ましくは80〜100℃の溶媒であり、抽出時間3〜60分、好ましくは5〜15分である方法が含まれる。
本発明の赤紫色または青紫色の染料は、藍植物を冷凍保存処理工程、溶媒抽出工程により得られる。
本発明には、藍植物を冷凍保存処理工程、溶媒抽出工程、溶媒濃縮工程、溶媒除去のための乾燥工程により得られる赤紫色または青紫色の粉末の染料も含まれる。
これらの染料は、冷凍保存処理工程が、冷凍温度−7〜−37℃、好ましくは−15〜−25℃、保存期間7〜60日、好ましくは8〜28日であり、溶媒抽出工程が、抽出温度50〜130℃、好ましくは80〜100℃の溶媒であり、抽出時間3〜60分、好ましくは5〜15分であるものを含む。
本発明の藍染め法には、これらの染料を用いる還元建てによる藍染めの方法が含まれる。
本発明の藍染め法には、還元建てにおいて、PH=10〜13、好ましくはPH=11.5〜12.5のアルカリ性還元建てである方法が含まれる。
藍植物の生葉と茎を採取する。藍植物の地上部を刈り取り、水洗し、茎の下部を10cm程度水に浸す。葉からの水分の蒸散を少なくするために、ビニールなどで葉全体を軽く覆って、直射日光を避けながら、保存する。萎れない状態の、採取後5日以内の新鮮な生葉と茎を含む地上部を原料とする。好ましくは生育期の、採取直後の生葉が原料に適している。
採取した生葉と茎を冷凍機器に入れる。冷凍温度−7〜−37℃、好ましくは−15〜−25℃、保存期間7〜60日、好ましくは8〜28日間冷凍する。採取した生葉と茎を収集袋に入れても、入れなくてもよい。作業上の効率を考慮することで選択する。
例えば、冷凍に当たって、収集袋を用意する。収集袋は、プラスチック製、布製、金網製であって、藍植物の生葉を急冷できるものが好ましい。生葉を収集袋に入れ、家庭用冷蔵庫の冷凍庫を用いて、−20±2℃の条件下で2週間程度保存する。
冷凍保存処理した生葉と茎から染料を抽出する溶媒を容器に入れ、昇温する。溶液に冷凍保存処理した生葉と茎を投入する。抽出温度50〜130℃、好ましくは80〜100℃の溶媒であり、抽出時間3〜60分、好ましくは5〜15分である。溶媒抽出した染料を枝付きザルや晒の袋などで漉し、生葉と茎を分離し、常温まで放冷する。この抽出染料液を染色用に供する。
常温になった抽出染料液をそのまま、好ましくは酸性物質を添加し、PHを3〜5、好ましくは、3.5〜4.5に調整する。染料の凝集を促進できる。デカンテーションを数回繰り返して溶媒を濃縮する。溶媒を濃縮した染料液を乾燥機に入れ、乾燥温度40〜120℃、好ましくは50〜80℃で熱風乾燥する。このようにして赤紫色の粉末染料を得ることができる。この粉末染料を染色用に供する。
抽出染料液の染色法は、常温で、水酸化カルシウムとハイドロサルファイトナトリウムを添加し、還元を十分にするために2時間放置する。
次に被染物を5〜10分間浸漬し、時々ガラス棒で撹拌して染色する。斑染めを防止できる。染色終了後は、直ちに水洗による緩慢な酸化を5〜10分間行い、脱水して風乾する。この工程も斑染めを防止できる。また、染色終了後、空気による酸化を行っても良い。この染色工程を繰り返しても良い。目的の色目を得る。
粉末染料の染色法は、常温で粉末染料を水に入れ、これに水酸化カルシウムとハイドロサルファイトナトリウムを添加し、還元を十分にするために、50℃〜70℃で、5〜20分間保温し、1〜3時間放置する。
次に被染物を5〜10分間浸漬し、時々ガラス棒で撹拌して染色する。斑染めを防止できる。染色終了後は、直ちに水洗による緩慢な酸化を5〜10分間行い、脱水して風乾する。この工程も染色斑を防止できる。また、染色終了後、空気による酸化を行っても良い。この染色工程を繰り返しても良い。目的の色目を得る。
また、還元された溶液を均一に髪に塗布して染毛後、毛髪を水で濯ぎ、乾燥することで毛髪の染色ができる。
染色布の表面色の測色方法は、染色布を二重折りにし、ミノルタ製のCM−3600dを用い、L*a*b*表色系の数値を求める。測定条件として、10度視野で、第1光源(D65)を使用する。また、島津製作所製のUV−2500を使用して染料の吸光度を測定する。
次に2Lビーカーに水1Lを入れ、95〜100℃に昇温後、冷凍保存処理した生葉を入れ、10分間染料を抽出した。この抽出した染料を枝付きザル(ストレーナー)で漉し、生葉を分離し、2時間放置して常温(25〜27℃)まで放冷した。この溶液をアイボーイ広口ビン(1L)に移し、常温で水酸化カルシウム(和光純薬工業(株))5g、ハイドロサルファイトナトリウム(ナカライテスク(株))3gを添加し、2時間放置した。
次に常温で、JIS染色堅ろう度用(JIS L 0803)の絹2−2、14目付を1/8サイズ(約37cm×25cm、約5g)に裁断した被染布を10分間染色し、5分間水洗後脱水して風乾した。
表1、図2から冷凍保存処理4日ではb*(−:青方向、+:黄方向)の値から青みをおびている。冷凍保存処理8日ではa*(−:緑方向、+:赤方向)の値が大きくなり赤みが増大し、14日で染色した染色布のa*の値が大きくなり更に赤みが増大し、b*の値が小さくなり青みが少なくなった。その後青みが減り、21日に赤みが最大になり、徐々に赤みが減り、黄色が増え、赤紫色が薄くなっていくことが分かった。また、図3から4日の青色に、次いで14日が赤紫色のL*(明度)が最小になり、C*(彩度)が最大になった。このようなことから冷凍保存処理14日が最も赤紫色が濃いことが分かった。
次に2Lビーカーに水1Lを入れ、95〜100℃に昇温後、冷凍保存処理した生葉を入れ、染料を抽出した。染料の抽出時間を5分、10分、20分、30分とした。この後は、実施例1と同様に行い、冷凍保存処理した染料の抽出時間が染色に及ぼす影響を検討した。その結果を図4に示した。抽出時間10分以上で、L*、a*、b*の値に大きな差異が見られないことから抽出時間は、10分程度で良いことが分かった。
その後、デカンテーションを数回繰り返して濃縮し、70℃で熱風乾燥した。このようにして7.8gの粉末染料を得た。この粉末染料0.1gを水50mL(ビーカー)に入れ、水酸化カルシウム:0.25g、ハイドロサルファイトナトリウム:0.25gを添加し、60℃で10分間保温して2時間放置した。次に実施例1の絹布(約5cm×5cm、約0.21g)を10分間染色し、5分間水洗後脱水して風乾した。この染色布の色は、赤紫色であった。
また、この粉末染料のアセトニトリルでの吸収極大波長は536nmであり、インジルビン(文献値の吸収極大波長:538nm)の値とほぼ一致している。
〔比較例1〕
次に水酸化カルシウム:5g、ハイドロサルファイトナトリウム:3gを添加し、2時間放置した。次に実施例1と同様に染色した。
この結果の測色値を表2、色度図を図6、分光反射率曲線を図7に示した。表2及び図6から分かるように実施例1に比べて青色であった。
また、図7から分かるように染色した染色布は、冷凍保存処理(14日)に比べて、青系統の光の反射率が大きく、赤系統の反射率が小さくなった。
すなわち、これまでの染色法に比較して冷凍保存処理による染色法は、染色布が赤紫色に染色されることが分かった。
Claims (7)
- 藍植物の冷凍保存処理工程を含む藍染め法。
- 冷凍保存処理工程が、冷凍温度−7〜−37℃、好ましくは−15〜−25℃、保存期間7〜60日、好ましくは8〜28日である請求項1に記載の藍染め法。
- 藍植物を冷凍保存処理工程、溶媒抽出工程を含む藍染め法。
- 溶媒抽出工程が、抽出温度50〜130℃、好ましくは80〜100℃の溶媒であり、抽出時間3〜60分、好ましくは5〜15分である請求項1から請求項3のいずれかに記載の藍染め法。
- 藍植物を冷凍保存処理工程、溶媒抽出工程により得られる赤紫色または青紫色の染料。
- 藍植物を冷凍保存処理工程、溶媒抽出工程、溶媒濃縮工程、溶媒除去のための乾燥工程により得られる赤紫色または青紫色の粉末染料。
- 請求項5または請求項6に記載の染料の還元建てによる藍染め法。
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