JP2005336613A - 超合金物品からの金属酸化物皮膜の化学的除去 - Google Patents

Abstract

【課題】 本発明は、超合金ガスタービンエンジン構成部品の表面から未使用の金属酸化物皮膜を除去する方法を提供する。
【解決手段】 施工した金属酸化物皮膜を有する構成部品は、穏やかな機械的手段によって超合金ブレードから金属酸化物皮膜を除去するのに十分になる時間にわたって、典型的には重量で約１０〜２５％のアルカリ性水酸化物、約１〜８％のアルカノールアミン及び約０．５〜５％のグルコン酸塩を含む約１７０°Ｆ（７６°Ｃ）〜約２１０°Ｆ（９９°Ｃ）の温度の水性皮膜除去溶液と接触させられる。金属酸化物皮膜は、酸化クロム層及び酸化アルミニウム層のような、１つ又はそれ以上の金属酸化物層を含むことができる。

Description

本発明は、超合金物品から金属酸化物皮膜を除去することに関する。

航空機ガスタービン（ジェット）エンジンにおいては、空気はエンジンの前面に吸い込まれ、軸流圧縮機によって加圧される。軸流圧縮機は、多数の圧縮機段を含む。各圧縮機段は、圧縮機ディスクに取付けられた複数の圧縮機ブレードを有し、次に圧縮機ディスクは回転軸に取付けられる。

多くの初期型のガスタービンエンジンにおいては、圧縮機ブレードは皮膜のない金属で作られていた。ガスタービンエンジンの技術が進歩し、また運転温度が増大するにつれて、長期実使用の間における金属の酸化を抑制するために圧縮機ブレードに皮膜を施すことが必要になってきた。皮膜は、タービンブレード上に用いる環境皮膜及び断熱皮膜のように高温燃焼ガスの作用に対する保護及び耐性を有する必要はないが、中間温度において酸化保護を与えなければならない。無機結合剤の存在下で硬化させた酸化クロム皮膜及び酸化アルミニウム皮膜が、幾つかのエンジンの高圧圧縮機段の圧縮機ブレード皮膜に使用するのに選択されてきた。
特開２００３−１９３２７６号公報

ガスタービンエンジンの圧縮機ブレード、高圧タービンディスク及びシール並びに他の構成部品上への金属酸化物皮膜の施工は、構成部品上の金属酸化物皮膜が長期実用寿命にわたって適当な性能であることを保証するために、仕様基準に適合しなくてはならない。施工が仕様に従って適切に行われていない場合或は施工工程において欠陥が発生した場合、通常、酸化物皮膜を再施工する前に、金属酸化物皮膜をベース金属に至るまで物品から完全に除去する。

ガスタービンエンジンの超合金圧縮機ブレード、高圧タービンディスク及びシール並びに他の構成部品から最初に施工した酸化物皮膜を除去するためには、化学的方法が好ましい。本発明は、ガスタービンエンジン構成部品から酸化物皮膜を除去するための改良した方法を提供する。

本発明は、超合金物品から金属酸化物皮膜を除去する方法に関し、本方法は、１）ガスタービンエンジンにおける運転条件で使用されたことがない、表面と該表面上の少なくとも１つの酸化物皮膜とを有する超合金物品を準備する段階と、２）穏やかな機械的手段によって超合金物品から酸化物皮膜を除去するのに十分になる時間にわたって、物品を約１７０°Ｆ（７６°Ｃ）〜約２１０°Ｆ（９９°Ｃ）の温度の水性皮膜除去溶液に接触させる段階とを含み、皮膜除去溶液が、重量で、ａ）約１０〜２５％のアルカリ性水酸化物と、ｂ）約１〜８％のアルカノールアミンと、ｃ）約０．５〜５％のグルコン酸塩とを含む。

本発明は、超合金物品から酸化物皮膜を除去する方法を提供する。本方法は、その上に金属酸化物皮膜を施工するのが有利である、超合金圧縮機ブレード並びに高圧タービンディスク及びシールを含む広範囲の超合金物品に適用することがきる。本発明は、仕様に従って適切に施工されなかったか、或いは施工工程の後に層内に欠陥を有している金属酸化物層を除去するのに有用である。本発明は、酸化物皮膜を再施工する前に、金属酸化物皮膜をベース金属に至るまで物品から完全に除去することができる単一の化学的処理段階で使用するための組成物を提供する。

本発明の第１の実施形態では、物品を高温に曝すことになる運転環境において物品を使用する前に、ガスタービンエンジンで用いる超合金物品から未使用の酸化物皮膜を除去する方法を提供する。本方法は、グリット又はビーズブラストを使用せずに、主として化学洗浄に基づく。本方法は、グリット又はビーズブラストを使用せずにかつ下にある物品のベース金属に対して比較的穏やかに、１つ又はそれ以上の未使用の金属酸化物皮膜を化学的に除去する。この実施形態は、金属酸化物層が実質的に「施工されたまま」すなわち未使用であることを意図しているものであり、「施工されたまま」すなわち未使用（ｖｉｒｇｉｎ）というのは、それら酸化物層及び皮膜が、通常のエンジン運転中に受ける、酸化物皮膜層を硬化させかつ固定することになる高い温度のような高温に曝されたことがないことを意味する。本発明は、物品がエンジン運転温度に曝された後に金属酸化物皮膜を除去することを意図するものではない。

本発明を使用できる典型的な用途では、その製造又は改修の間に、超合金基体の表面上に１つ又はそれ以上の金属酸化物又はシーラ層を被着させることができる。層の何れか１つ又はそれ以上を施工し終わりかつそれらを基体から除去しなければならない場合に、金属酸化物皮膜は、物品を使用する前に、第１の段階において、穏やかな機械的手段によって１つ又はそれ以上の酸化物皮膜を超合金物品から除去するのに十分になる時間にわたり、物品を皮膜除去溶液に接触させることによって物品から除去することができる。皮膜除去溶液は、典型的には約１７０°Ｆ（７６°Ｃ）〜約２１０°Ｆ（９９°Ｃ）の温度に保たれる。典型的には、物品を溶液と接触させる段階は、少なくとも約１時間であり、より典型的には約１時間〜約２時間である。

皮膜除去溶液は、重量で、ａ）約１０〜２５％のアルカリ性水酸化物、ｂ）約１〜８％のアルカノールアミン及びｃ）約０．５〜５％のアルカリ性グルコン酸塩を含む。アルカノールアミンは、ジアルカノールアミン、トリアルカノールアミン及びそれらの混合物からなる群から選択することができる。ジアルカノールアミンは、ジエタノールアミン、ジプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン、エタノールプロパノールアミン、ビス（アミノエチル）アミン及びビス（アミノプロピル）アミンを含むことができ、典型的にはジエタノールアミンである。トリアルカノールアミンは、トリエタノールアミン、トリプロパノールアミン、トリメタノールアミン、ジエタノールプロパノールアミン、ジメチルエタノールアミン、ジメチルプロパノールアミン及びトリブタノールアミンを含むことができ、典型的にはトリエタノールアミンである。典型的なアルカノールアミンは、ジエタノールアミン及びトリエタノールアミンの混合物を含む。

グルコン酸塩は、アルカリ性グルコン酸塩及びアルカリ金属グルコン酸塩から選択することができ、典型的にはアルカリ性グルコン酸塩である。アルカリ塩は、ナトリウム、カリウム及びリチウムとすることができ、典型的にはナトリウムである。アルカリ金属塩は、カルシウム及びマグネシウムとすることができる。

皮膜除去溶液は、より典型的には約１２〜２０％のアルカリ性水酸化物、約１．５〜５％のアルカノールアミン及び約１〜３％のグルコン酸塩を含む。皮膜除去溶液は、個々の化合物を水中で混合することによって、或は濃縮生成物質を約１部〜１０部の水で、より典型的には約３部〜５部の水で希釈することによって作ることができる。１つの好ましい濃縮生成物質は、６５〜７５％の水酸化ナトリウム、５〜１５％のトリエタノールアミン、２〜５％のジエタノールアミン及び約５〜１０％のグルコン酸ナトリウムを含み、ミシガン州マジソンハイツ所在のＨｅｎｋｅｌ Ｓｕｒｆａｃｅ Ｔｅｃｈｎｏｌｏｇｉｅｓの一部門であるＴｕｒｃｏ Ｐｒｏｄｕｃｔｓ，Ｉｎｃ．からＴｕｒｃｏ（登録商標）Ｔ−４１８１として乾燥生成物質の形態で、或はＴｕｒｃｏ（登録商標）Ｔ−４１８１Ｌとして一層希釈した液体生成物質の形態で入手可能である。

その後、物品の表面は目視検査される。金属酸化物層の何らかの痕跡が残留している場合には、金属酸化物皮膜が全く見られなくなるまで第１段階を反復することができる。

物品は、皮膜除去溶液から取出し、第２の段階ｂ）において、典型的には室温にある、ウォータジェットで噴霧することによって又は水中に浸漬することによって水洗される。物品の表面上に遊離した金属酸化物皮膜残留物が見られる場合には、水洗処理は、代わりに或は付加的に１６０°Ｆ（７１°Ｃ）の最低温度にある脱イオン水中で達成することができる。表面上の遊離残留物はまた、非金属の柔毛ブラシ又はＳｃｏｔｃｈ Ｂｒｉｔｅ（登録商標）パッドのような非金属パッドで物品の表面をブラッシングすることによって除去することもできる。

その後、物品の表面は、１つ又はそれ以上の金属酸化物皮膜の再施工のために前処理することができる。

未使用の３層皮膜を有する高圧タービンディスク及びシールに対して、本発明を実施した。基体のベース金属は、Ｒｅｎｅ（登録商標）８８ＤＴ合金であった。第１の層は、Ｓｅｒｍｅｔｅｃｈから入手可能なＳｅｒｍｅｔｅｌ１７１８の商品番号の、クロム酸塩−リン酸塩無機結合剤中の酸化アルミニウムであった。第２の層は、Ｓｅｒｍｅｔｅｃｈから入手可能なＳｅｒｍａｓｅａｌ１０７６ＨＳの商品番号の、無機結合剤中の酸化クロムであった。第３の層は、同様にＳｅｒｍｅｔｅｃｈから入手可能なＳｅｒｍａｓｅａｌ５６５の商品番号のクロム酸塩−リン酸塩シーラであった。本発明の方法は、未使用の３層皮膜を効果的に除去した。

如何なる理論にも拘束されるものではないが、皮膜除去溶液は金属酸化物皮膜における結合剤系統を侵食して、皮膜の層を合金基体の表面から剥離させるものと思われる。一旦基体から剥離すると、酸化アルミニウム皮膜は、水及び／又はナイロンブラッシングで穏やかに除去することができる。

本発明の皮膜除去方法は、物品の表面を機械的に変更するものではなく、その結果、その後の物品の検査が妨げられることはない。表面の唯一の機械的処理は、任意選択的な穏やかなブラッシングだけである。

例示目的で本発明の特定実施形態を詳細に説明してきたが、本発明の技術思想及び技術的範囲から逸脱することなく様々な変更及び改良を加えることができる。

Claims (10)

1. 超合金物品から金属酸化物皮膜を除去する方法であって、
   １）ガスタービンエンジンにおける運転条件で使用されたことがない、表面と前記表面上の少なくとも１つの酸化物皮膜とを有する超合金物品を準備する段階と、
   ２）穏やかな機械的手段によって前記超合金物品から前記酸化物皮膜を除去するのに十分になる時間にわたって、前記物品を約１７０°Ｆ（７６°Ｃ）〜約２１０°Ｆ（９９°Ｃ）の温度の水性皮膜除去溶液に接触させる段階と、
   を含み、前記皮膜除去溶液が、重量で、
   ａ）約１０〜２５％のアルカリ性水酸化物と、
   ｂ）約１〜８％のアルカノールアミンと、
   ｃ）約０．５〜５％のグルコン酸塩と、を含む、
   方法。
2. 前記酸化物皮膜が、酸化アルミニウム皮膜、酸化クロム皮膜及びそれらの混合物からなる群から選択される、請求項１記載の方法。
3. 前記酸化物皮膜が、酸化アルミニウム皮膜及び酸化クロム皮膜から選択された複数の酸化物皮膜層を含む、請求項１に記載の方法。
4. 前記物品を前記溶液に接触させる段階が、少なくとも約１時間にわたる、請求項１記載の方法。
5. 前記アルカノールアミンが、ジアルカノールアミン、トリアルカノールアミン及びそれらの混合物からなる群から選択される、請求項１記載の方法。
6. 前記ジアルカノールアミンがジエタノールアミンを含み、前記トリアルカノールアミンがトリエタノールアミンを含み、また前記アルカノールアミンが、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン及びそれらの混合物からなる群から選択される、請求項５記載の方法。
7. 前記物品を水洗する段階をさらに含む、請求項１記載の方法。
8. 前記穏やかな機械的手段が、前記水洗した物品をナイロンブラシでブラッシングする段階を含む、請求項７記載の方法。
9. 前記皮膜除去溶液が、約１２〜２０％のアルカリ性水酸化物、約１．５〜５％のアルカノールアミン及び約１〜３％のグルコン酸塩を含み、前記アルカノールアミンが、ジエタノールアミン及びトリアルカノールアミンの混合物を含み、また前記グルコン酸塩がグルコン酸ナトリウムを含む、請求項１記載の方法。
10. 前記物品が、圧縮機ブレード、高圧タービンディスク及び高圧タービンシールから選択される、請求項１記載の方法。