JP4471066B2 - 部品からの酸化クロムコーティング層の化学的除去 - Google Patents

部品からの酸化クロムコーティング層の化学的除去 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、部品の表面から酸化クロムコーティング層を除去することに関し、より具体的には、ガスタービンエンジン中で既に使用されたことがあるニッケル基超合金部品から酸化クロムコーティング層を除去することに関する。
【0002】
【従来の技術】
航空機ガスタービン(ジェット)エンジンでは、空気は、エンジンの前部に吸い込まれ、軸流圧縮機で加圧される。軸流圧縮機は、多くの圧縮機段を含む。各圧縮機段は、圧縮機ディスクへ取り付けられた複数の圧縮機ブレードを有し、該圧縮機ディスクは次に回転シャフトに取り付けられている。
【0003】
初期型のガスタービンエンジンの多くでは、圧縮機ブレードは、コーティング層のない金属で作られていた。ガスタービンエンジンの技術が進歩し、運転温度が上昇してきたので、長期にわたる実働使用の間に金属が酸化するのを防止する目的で圧縮機ブレードにコーティング層を施すことが必要になってきた。このコーティング層は、タービンブレード上に使用される環境コーティング層及び熱障壁コーティング層のように、高温の燃焼ガスの作用に対して保護性及び耐性を有するものである必要はないが、それらは中間温度において酸化に対する保護をもたらすものでなければならない。一部エンジンの高圧圧縮機段の圧縮機ブレードにコーティング層を施すために、無機バインダの存下で硬化させた酸化クロムコーティング層が使用されてきた。
【0004】
ガスタービンエンジンは、一般的に、長期間にわたって実用運転された後に、定期検査のために分解される。検査はまた、問題が見出された時に行われる場合がある。検査において、圧縮機ブレードは圧縮機ディスクから取り外される。圧縮機ブレードの一部の表面領域は通常、酸化クロムコーティング層に加えて、ごみ、酸化物スケール、及び炭化水素残留物のような汚染物質で覆われている。圧縮機ブレードを正確に検査するためには、それらの表面を覆っているこの汚染物質を除去することが必要である。1つの手法として、汚染物質は、グリットブラスト又はガラスビーズブラストのような機械的な方法を使用して除去できるが、これら機械的な方法は、後に続く検査に支障をきたすか、或いは圧縮機ブレードの母材金属を傷つける可能性がある。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
現在のところ、最初に酸化クロムコーティング層で被覆され、実働で使用されたニッケル基超合金圧縮機ブレード上に見られる表面物質を除去するための化学的方法は存在せず、そのような方法に対する必要性が存在する。本発明は、この必要性を満たし、更にそれに伴う利点を提供するものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明は、部品から酸化クロムコーティング層を除去するための方法を提供する。ガスタービン環境に曝されたことに起因する、ごみ、酸化物スケール、及び炭化水素残留物のような被覆汚染物質もまた、除去される。この方法は、グリット又はビーズブラストを使用しないで、主として化学的清浄化に基づいている。従って、この方法は、清浄化される部品の下層母材金属に対しては、比較的穏やかであり、また、目視法では接近できない領域に達する。この方法は、量産工程に適している。
【0007】
圧縮機ブレード表面のような表面からコーティング層を除去する方法は、酸化クロムを含むコーティング層を有する部品を準備する段階と、好ましくは約82°C(180°F)から約93°C(200°F)の脱脂/錆取り温度のアルカリ性脱脂/錆取り溶液中で、部品を清浄化する段階と、好ましくは約71°C(160°F)から約93°C(200°F)のスケール処理温度のアルカリ性過マンガン酸塩処理溶液中で、部品をスケール処理する段階と、好ましくは約54°C(130°F)から約60°C(140°F)までの剥離温度の、塩酸及びエッチング抑制剤を含む酸性剥離溶液に、部品を接触させる段階とを含む。部品は、これら各段階の後に、水中で洗浄され、また任意的に、表面から遊離物質を除去するために穏やかにブラッシングされることが好ましい。
【0008】
この方法は、接触させる段階の後に、部品を洗浄する段階と、該部品上のあらゆる遊離物質を除去するために部品をブラッシングする段階との追加の段階を含むことができる。説明した手順では、全ての酸化クロムコーティング層を除去するのに充分でない場合には、この方法は、洗浄する段階の後に、剥離温度の酸性剥離溶液に部品を再度接触させる段階と、部品を再度洗浄する段階と部品を再度ブラッシングする段階との追加の段階を含むことができる。
【0009】
この方法は、広範囲の種々の部品に適用できる。部品は、コーティング層を有する超合金部品であることが望ましく、ガスタービンエンジン中で既に使用されたことがある圧縮機ブレードのような超合金部品であることが最も好ましい。
【0010】
アルカリ性脱脂/錆取り溶液は、水酸化ナトリウムを含み、pHが約14より大きいことが好ましい。アルカリ性過マンガン酸塩処理溶液は、過マンガン酸塩を少なくとも約25重量パーセントの濃度で含み、pHが約14より大きいことが好ましい。酸性剥離溶液は、塩酸を約85から約135グラム/リットルの濃度で含むのが好ましい。抑制剤は、酢酸、イソプロピルアルコール、ヘキサメチレンテトラミン、及びプロパルギルアルコールを、酸性剥離溶液の体積に対して約0.3体積パーセントの濃度で含むのが好ましい。
【0011】
この方法は、もしあれば汚染物質と、酸化クロムとを部品の表面から除去する。この方法は、部品の表面を機械的に変化させるものではないので、その後に続く部品の検査は妨げられない。表面の唯一の機械的処理は、任意的に行う穏やかなブラッシングである。
【0012】
本発明の他の特徴及び利点は、本発明の原理を一例によって示す添付図面に関連してなされる、好ましい実施形態についての以下のより詳細な説明から明らかになるであろう。しかしながら、本発明の技術的範囲は、この好ましい実施形態に限定されるものではない。
【0013】
【発明の実施の形態】
図1は、ガスタービン構成部品20のような部品18を表し、この場合は圧縮機ブレード22である。圧縮機ブレード22は、任意の実施可能な材料で形成されるが、ニッケル基超合金のような超合金であることが好ましい。ニッケル基合金は、あらゆる他の成分よりニッケルが多い合金である。ニッケル基超合金は、ガンマプライム又は関連相の析出によって強化されているニッケル基合金である。ニッケル基超合金は、この処理により部品の母材金属が侵食される傾向を最小限にするために、約14重量パーセントより多いクロムを有するのが最も好ましい。
【0014】
圧縮機ブレード22は、翼形部24を含み、該翼形部24に対して高温の排出ガスが向けられる。圧縮機ブレード22は、翼形部24から下向きに延び、圧縮機ディスク上のスロットに係合する根元部26によって、圧縮機ディスク(図示せず)に対して取り付けられる。プラットフォーム28は、翼形部24が根元部26に結合される領域から横方向外向きに延びる。任意的に、多くの内部通路が翼形部24の内部を通って延び、該翼形部24の表面における開口30で終る。実働の間、冷却空気の流れがこの内部通路を通して導かれ、開口30から流出して、翼形部24の温度を低下させる。回転シュラウド32は、根元部26から遠く離れている、翼形部24の先端に位置する。
【0015】
図2は、圧縮機ブレード22の断面図である。圧縮機ブレード22の母材金属は基体34を形成し、該基体34の表面には、圧縮機ブレード22の製造時又は過去の修理時に、酸化クロムコーティング層36が堆積されている。圧縮機ブレード22が、ガスタービンエンジン中で実働に使用された後には、一般的にごみ、酸化物スケール(つまり、酸化クロム以外の)、及び炭化水素残留物のような物質からなる汚染物質層38が発生している。この汚染物質層38は、圧縮機ブレード22が実働の間に曝される高い温度によって、基体34及びその酸化クロムコーティング層36の表面上に焼付いている。
【0016】
ガスタービンエンジン中での実働使用の後に、圧縮機ブレード22が検査されることになる場合には、酸化クロムコーティング層36及び汚染物質層38が最初に除去されなければならない。図3は、この除去手順を示す。図1及び2に図示される部品のような部品18が準備され、この段階を符号50で示す。
【0017】
符号52で示すように、部品18は、脱脂/錆取り温度、好ましくは約82°C(180°F)から約93°C(200°F)のアルカリ性脱脂/錆取り溶液中に浸漬することによって清浄化される。このアルカリ性脱脂/錆取り溶液は、水酸化ナトリウムを含み、pHが約14より大きいことが好ましい。任意的に、この脱脂/錆取り溶液に対してグルコン酸ナトリウム及び湿潤剤を加えることができる。部品18とアルカリ性脱脂/錆取り溶液との接触時間は、好ましくは約15から約45分間であり、最も好ましくは約30分間である。部品18は、アルカリ性脱脂/錆取り溶液から取り出され、室温のウォータジェットで噴霧するか又は室温の水中へ浸漬することによって洗浄される。
【0018】
その後、符号54で示すように、部品18は、スケール処理温度、好ましくは約71°C(160°F)から約93°C(200°F)のアルカリ性過マンガン酸塩処理溶液中に浸漬することによってスケール処理される。このアルカリ性過マンガン酸塩処理溶液は、過マンガン酸カリウム又は過マンガン酸ナトリウムのような過マンガン酸塩を少なくとも約25重量パーセントの濃度で含み、かつ水酸化カリウム又は水酸化ナトリウムのような水酸化物を添加することによって作りだされる約14より大きいpHを有する。部品18とアルカリ性過マンガン酸塩処理溶液との接触時間は、好ましくは約45から約75分間であり、最も好ましくは約60分間である。部品18は、アルカリ性過マンガン酸塩処理溶液から取り出され、室温のウォータジェットで噴霧するか又は室温の水中へ浸漬することによって洗浄される。スケール処理の後、酸化クロムコーティング層36は灰緑色をしている。
【0019】
この先行段階により、汚染物質層38を除去し、酸化クロムコーティング層36を露出させる。
【0020】
その後、符号56で示すように、部品は、剥離温度、好ましくは約54°C(130°F)から約60°C(140°F)までの、塩酸及びエッチング抑制剤を含む酸性剥離溶液に接触させられる。部品18と酸性剥離溶液との接触時間は、好ましくは約15から約45分間であり、最も好ましくは約30分間である。この酸性剥離溶液は、塩酸を、好ましくは約85から135グラム/リットル、最も好ましくは約110グラム/リットルの濃度で含む。この酸性剥離溶液は更に、段階56においては母材金属が露出されているので、基体母材金属に対する剥離溶液のエッチング侵食作用を抑制する抑制剤を含む。好ましい抑制剤は、有機抑制剤を含有する。最も好ましい抑制剤は、酢酸、イソプロピルアルコール、ヘキサメチレンテトラミン、及びプロパルギルアルコールの、濃度が約0.2から0.4体積パーセント、最も好ましくは約0.3体積パーセントの溶液である。抑制剤は、ミシガン州マジソンハイツにあるHenkel corporationからRodine(登録商標)XL−1090として入手可能である。抑制剤の好ましい組成は、約1〜10重量部の酢酸、約1〜10重量部のイソプロピルアルコール、約10〜30重量部のヘキサメチレンテトラミン、及び約1〜10重量部のプロパルギルアルコールである。この酸による処理の後では、酸化クロムコーティング層36は灰色をしている。
【0021】
部品18は、酸性剥離溶液から取り出され、符号58で示すように、ウォータジェットによる噴霧又は水中への浸漬によって洗浄される。この水による洗浄段階58は、室温のウォータジェットを使用するか又は室温の水中に浸漬することによって行うことができる。遊離残留物が部品の表面上に見られる場合には、この洗浄は、それに代えて又は追加して、最低温度71°C(160°F)の脱イオン水中で行うことができる。表面上の遊離残留物は、非金属の柔軟な刷毛のブラシ又はScotch Briteパッドのような非金属パッドを用いて、部品18の表面をブラッシングすることによって除去することができる。この表面を軽くブラッシングすることは、本方法において使用される唯一の機械的清浄化である。
【0022】
その後、部品18の表面は目視検査される。酸化クロムコーティング層36の痕跡が残留している場合には、符号60で示すように、酸化クロムコーティング層36が何も見られなくなるまで段階56及び段階58を繰り返すことになる。
【0023】
本発明は、実働使用の後にガスタービンエンジンから取り外された圧縮機ブレード22に関して実施された。この基体34の母材金属は、Udimet720であった。上述の好ましい3段階法が使用されて、汚染物質層38及び酸化クロムコーティング層36は完全に除去された。
【0024】
例示する目的で本発明の特定の実施形態を詳細に説明してきたが、本発明の技術思想及び技術的範囲を逸脱することなく様々な変更及び機能追加をなすことができる。なお、特許請求の範囲に記載された符号は、理解容易のためであってなんら発明の技術的範囲を実施例に限縮するものではない。
【図面の簡単な説明】
【図1】 圧縮機ブレードの正面図。
【図2】 線2−2に沿った図1の圧縮機ブレードの拡大概略断面図。
【図3】 酸化クロムコーティング層を除去するために圧縮機ブレードを処理する方法のブロック図。
【符号の説明】
22 圧縮機ブレード
34 基体
36 酸化クロムコーティング層
38 汚染物質層

Claims (9)

  1. ニッケル基超合金部品の表面から酸化クロムコーティング層(36)を除去する方法であって、
    前記酸化クロムコーティング層(36)を有する部品(18)であって、ガスタービンエンジン中で実働に使用された部品(18)を準備する段階と、
    2℃(180°F)から3℃(200°F)の脱脂/錆取り温度のアルカリ性脱脂/錆取り溶液中で、前記部品(18)を清浄化する段階と、
    1℃(160°F)から3℃(200°F)のスケール処理温度の、過マンガン酸塩を少なくとも25重量パーセントの濃度で含んでいるとともにpHが14より大きいアルカリ性過マンガン酸塩処理溶液中で、前記部品(18)をスケール処理する段階と、
    4℃(130°F)から0℃(140°F)までの剥離温度の塩酸及びエッチング抑制剤を含む酸性剥離溶液に、前記部品(18)を接触させる段階と、
    を含むことを特徴とする方法。
  2. 前記アルカリ性脱脂/錆取り溶液は、水酸化ナトリウムを含み、pHが14より大きいことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
  3. 前記酸性剥離溶液は、塩酸を5から35グラム/リットルの濃度で含むことを特徴とする、請求項1又は請求項2に記載の方法。
  4. 請求項1に記載の方法であって、
    該酸化クロムコーティング層(36)を有し、ガスタービンエンジン中で実働に使用されたニッケル基超合金部品(18)を準備する段階と、
    水酸化ナトリウムを含みpHが4より大きい、2℃(180°F)から3℃(200°F)の脱脂/錆取り温度のアルカリ性脱脂/錆取り水溶液中で、前記部品(18)を清浄化する段階と、
    過マンガン酸塩を少なくとも5重量パーセントの濃度で含みpHが4より大きい、1℃(160°F)から3℃(200°F)のスケール処理温度のアルカリ性過マンガン酸塩処理溶液中で、前記部品(18)をスケール処理する段階と、
    5から35グラム/リットルの濃度で塩酸を含みかつ有機エッチング抑制剤を含む、4℃(130°F)から0℃(140°F)の剥離温度の酸性剥離溶液に、前記部品(18)を接触させる段階と、
    を含むことを特徴とする方法。
  5. 前記接触させる段階の後に、
    前記部品(18)を洗浄する段階と、該部品上のあらゆる遊離物質を除去するために前記部品(18)をブラッシングする段階と、
    の追加の段階を含むことを特徴とする、請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の方法。
  6. 前記ブラッシングする段階の後に、
    前記剥離温度の酸性剥離溶液に前記部品(18)を再度接触させる段階と、
    前記部品(18)を再度洗浄する段階と、前記部品(18)を再度ブラッシングする段階と、
    の追加の段階を含むことを特徴とする、請求項に記載の方法。
  7. 前記酸性剥離溶液は、酢酸、イソプロピルアルコール、ヘキサメチレンテトラミンびプロパルギルアルコールを含む前記エッチング抑制剤を0.2から0.4体積パーセントの濃度で含むことを特徴とする、請求項1乃至請求項6のいずれか1項に記載の方法。
  8. 前記エッチング抑制剤が、1〜10重量部の酢酸、1〜10重量部のイソプロピルアルコール、10〜30重量部のヘキサメチレンテトラミン及び1〜10重量部のプロパルギルアルコールを含む、請求項7に記載の方法
  9. 部品(18)を準備する前記段階は、
    前記コーティング層(36)を有する圧縮機ブレード(22)を準備する段階、
    を含むことを特徴とする、請求項1乃至請求項8のいずれか1項に記載の方法。
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