JP2005334895A - クリームはんだおよびそれを使用したはんだ付け実装方法 - Google Patents

クリームはんだおよびそれを使用したはんだ付け実装方法 Download PDF

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Abstract

【課題】 平面状部品と基板とのはんだ付けにおいて、特に濡れ性が良くない部品や、接合面積が比較的大きい部品に対して、ボイドの発生率を抑制することができる鉛フリーのクリームはんだを提供する。
【解決手段】 粉末状のPbフリーSn系合金はんだとAr−COOH、Ar−R−COOHまたはAr−O−R−COOHで表される特定のフェニル基含有カルボン酸を含む液状またはペースト状のフラックスとを含むクリームはんだ、およびそのクリームはんだを使用するはんだ付け実装方法を提供する。
【選択図】 図1

Description

本発明は、電子機器の表面実装に用いられる鉛フリークリームはんだ、およびそれを使用したはんだ付け実装方法に関する。
これまで使用されてきているプリント基板には、銅張り積層板をエッチングしてCuめっきを施した回路パターンや、セラッミク板にAg、Cuなどの金属、Ag-Pd、Ag-Ptなどの合金を焼き付けて回路を形成したものがある。また、これまでのところ、はんだ粉末とペースト状のフラックスを混和したクリームはんだが、これらの回路上に印刷され加熱溶解されることにより、抵抗、コンデンサー、ICなどの電子部品を表面実装するために用いられてきている。
従来は、Sn-Pb系のはんだ、たとえばSn63Pb37、Sn62Ag2Pb36、Sn60Bi3Pb37などの組成物を用いて接合が行われていた。近年、地球環境問題の観点から、電子部品の接合に用いるはんだ材料が、鉛入りはんだから、鉛フリーはんだ材料への変更が進んできている。電子部品のPbフリー化に伴い、Pbを含有しないはんだ、たとえばSn96.5Ag3.5、Sn96.5Ag3.0Cu0.5、Sn95.8Ag3.5Cu0.7、Sn93.3Ag3.0Bi3.0Cu0.7、Sn93Ag3.5Bi0.5In3、Sn88Ag3.5Bi0.5In8、Sn91Zn9、Sn89Zn8Bi3、Sn95Sb5などの組成物が使用されるようになってきている。なお、クリームはんだは、通常25〜45μm程度のはんだ粉末とペースト状のフラックスを混和したものである。
しかしながら、産業上使用されているPbフリーはんだは、Snの含有量が多くまたPbを含有していないことから、はんだ溶融時の表面張力が従来のSn-Pb系はんだより高いため、加熱溶融する過程において、はんだ内部にフラックス揮発成分および加熱分解により発生するガスが残留したまま凝固し、ボイドが発生しやすいという問題がある。
このように、従来使用しているはんだペースト中の金属組成を変更する場合、はんだ付時のボイドが多く発生する問題がある。特に、接合面積の比較的大きい部品(ヒートシンクやシリコンチップ等)については、かかるボイド発生問題が致命的な欠陥となる。
この改善策として、特許文献1には、クリームはんだのリフローはんだ方式において、パッド外周縁部を外側に向けて広げることによって、はんだの濡れ面積を大きくしてボイドの発生を抑制しようとすることが提案されている。また、特許文献2には、フラックス入りのクリームはんだをノンフラックスはんだと共に使用して、フラックス入りはんだの使用量を少なくすることによって、ボイドの発生を抑制しようとすることが提案されている。特許文献3には、Nと5%H還元ガス雰囲気中ではんだ箔を溶融することによって、ボイドの発生を抑制しようとすることが提案されている。特許文献4には、ペースト状はんだ層を最初に部分的に溶融させてフラックス中等のガスを外部に排出しやすくすることによって、ボイドの発生を抑制しようとすることが提案されている。さらに、特許文献5には、NやHのような高熱伝導率の気体雰囲気中で、減圧下ではんだを溶融させた後常圧に戻すことによって、ボイドの発生を抑制しようとすることが提案されている。しかしながら、これらはいずれも製造する工程変更や製品の設計変更を伴うものであり、また、Pbフリーはんだ特有の多量にボイドが発生する問題を十分に解決し得るものとは言い難い。
特開2002−184791号公報 特開2001−332686号公報 特開平8−46332号公報 特開平8−281421号公報 特開平11−154785号公報
本発明は、ヒートシンクやシリコンチップなどの平面状部品と基板とのはんだ付けにおいて、特に濡れ性が良くない部品や、接合面積が比較的大きい部品に対して、リフロー条件・印刷形状・電極形状及び材料を殊更に変更することなく、ボイドの発生率を抑制することができる鉛フリーのクリームはんだを提供しようとするものである。
本発明者らは、上記課題を解決するために、PbフリーのSn系合金はんだのクリームはんだにおいて、そのフラックス組成物中に特定のフェニル基含有カルボン酸化合物を含有させることが、ボイドの発生率を抑制するのに非常に有効であることを見出し、本発明に到達した。
本発明は、粉末状のPbフリーSn系合金はんだと液状またはペースト状のフラックスを含むクリームはんだであって、該フラックスが、下記式(I)、(II)および(III)で表される化合物の群から選ばれる少なくとも1種のフェニル基含有カルボン酸を含むものである、クリームはんだを提供する。
Ar−COOH (I)
Ar−R−COOH (II)
Ar−O−R−COOH (III)
(但しここで、Arは1個のヒドロキシル基で置換されていても良いフェニル基を表し、Rは1個のヒドロキシル基で置換されていても良い低級アルキル基を表し、ArとRは同一化合物内で共にヒドロキシル基で置換されることがない。)
かかる本発明の好ましい態様として、該PbフリーSn系合金はんだが、Sn-Ag、Sn-Ag-Cu、Sn-Ag-Bi-Cu、Sn-Ag-Bi-In、Sn-Sb、Sn-Cu、Sn-Cu-Ni、Sn-Ag-Cu-In、Sn-Ag-In、Sn-InおよびSn-Bi-Inの群から選ばれる少なくとも1種を含むものであるようなクリームはんだが挙げられる。
また、本発明の他の好ましい態様として、該フェニル基含有カルボン酸が、安息香酸、2-ヒドロキシ安息香酸、3-ヒドロキシ安息香酸、4-ヒドロキシ安息香酸、2−ヒドロキシフェニル酢酸、3−ヒドロキシフェニル酢酸、4−ヒドロキシフェニル酢酸、(4−ヒドロキシフェノキシ)酢酸、D-(-)-マンデル酸および3-(4-ヒドロキシフェニル)プロピオン酸の群から選ばれる少なくとも1種であるであるようなクリームはんだが挙げられる。
さらに本発明の他の好ましい態様として、該フェニル基含有カルボン酸が、前記の式(II)で表される化合物の群から選ばれる少なくとも1種であるようなクリームはんだが挙げられる。また、本発明の他の好ましい態様として、前記の式(I)、(II)および(III)で表される化合物における該Rが、炭素数1−3のアルキル基であるようなクリームはんだが挙げられる。さらに本発明の他の好ましい態様として、該フェニル基含有カルボン酸の含有量が、該フラックス100重量部に対して0.5−10重量部の範囲にあるようなクリームはんだが挙げられる。
また、本発明は、粉末状のPbフリーSn系合金はんだと液状またはペースト状のフラックスを含むクリームはんだを使用して基板に電子部品をはんだ付けにより実装する方法であって、該フラックスが、下記式(I)、(II)および(III)で表される化合物の群から選ばれる少なくとも1種のフェニル基含有カルボン酸を含むものである、はんだ付け実装方法を提供する。
Ar−COOH (I)
Ar−R−COOH (II)
Ar−O−R−COOH (III)
(但しここで、Arは1個のヒドロキシル基で置換されていても良いフェニル基を表し、Rは1個のヒドロキシル基で置換されていても良い低級アルキル基を表し、ArとRは同一化合物内で共にヒドロキシル基で置換されることがない。)
かかる本発明の好ましい態様として、該はんだ付けの接合面積が1mm以上であるようなはんだ付け実装方法が挙げられる。また、本発明の他の好ましい態様として、該はんだ付けのリフローピーク温度が220−250℃の範囲にあるようなはんだ付け実装方法が挙げられる。さらに本発明の他の好ましい態様として、該はんだ付けによってSnと接合層を形成する該電子部品の表面材料が、Mo、Fe、Ni、Ag、Cuの金属およびCu-Zn、Fe-Niの合金の群から選ばれる1種であるようなはんだ付け実装方法が挙げられる。
本発明のPbフリーのSn系合金はんだのクリームはんだは、フラックス中に活性剤である有機酸としてカルボキシル基1つを含有した、以下に特定するフェニル基含有カルボン酸化合物を1種以上含有させたものである。使用するフェニル基含有カルボン酸化合物は、必要に応じて同時に2種類以上でもよいが、通常は1種で使用される。かかる特定のフェニル基含有カルボン酸化合物を選択した理由は、フェニル基含有化合物がベンゼン環骨格をもっており耐熱性が高く分解ガスが発生しにくく、また、カルボキシル基は金属を活性化するための反応基であるが、2つ以上では反応が激しく分解ガスが多く発生し、ヒドロキシル基は、還元性の反応基であり2つ以上では活性反応を阻害するためである。
そのフェニル基含有カルボン酸化合物として使用可能な化合物群の一つは、下記式(I)で表される化合物である。
Ar−COOH (I)
(但しここで、Arは1個のヒドロキシル基で置換されていても良いフェニル基を表わす。)
かかる化合物の好ましいものとしては、安息香酸、2-ヒドロキシ安息香酸、3-ヒドロキシ安息香酸、4-ヒドロキシ安息香酸などが挙げられる。
また、フェニル基含有カルボン酸化合物として使用可能な化合物群のもう一つは、下記式(II)で表される化合物である。そのRとしては、炭素数1−3のアルキル基が好ましく、炭素数1−2のアルキル基、すなわちメチル基およびエチル基が特に好ましい。
Ar−R−COOH (II)
(但しここで、Arは1個のヒドロキシル基で置換されていても良いフェニル基を表し、Rは1個のヒドロキシル基で置換されていても良い低級アルキル基を表し、ArとRは同一化合物内で共にヒドロキシル基で置換されることがない。)
かかる化合物の好ましいものとしては、2−ヒドロキシフェニル酢酸、3−ヒドロキシフェニル酢酸、4−ヒドロキシフェニル酢酸、3-(4-ヒドロキシフェニル)プロピオン酸、D-(-)-マンデル酸などが挙げられる。
さらに、フェニル基含有カルボン酸化合物として使用可能な化合物群のもう一つは、下記式(III)で表される化合物である。そのRとしては、炭素数1−3のアルキル基が好ましく、炭素数1−2のアルキル基、すなわちメチル基およびエチル基が特に好ましい。
Ar−O−R−COOH (III)
(但しここで、Arは1個のヒドロキシル基で置換されていても良いフェニル基を表し、Rは1個のヒドロキシル基で置換されていても良い低級アルキル基を表し、ArとRは同一化合物内で共にヒドロキシル基で置換されることがない。)
かかる化合物の好ましいものとしては、(4−ヒドロキシフェノキシ)酢酸、2−(4−ヒドロキシフェノキシ)プロピオン酸などが挙げられる。
本発明のクリームはんだのフラックス中に含有されるフェニル基含有カルボン酸化合物としては、前記の式(II)および式(III)で表される化合物が好ましく、特に式(II)で表される化合物が好ましい。中でも、4−ヒドロキシフェニル酢酸は、ボイド低減効果が大きく、特に好ましい。
また、そのフェニル基含有カルボン酸化合物の含有量は、フラックッス全量に対して0.5重量%以上、10重量%以下が好ましい。この含有量が0.5重量%より少ないと活性力が不足するため濡れ性が悪く、また、10重量%より多いと熱による分解ガスが多量に発生し、いずれの場合もボイド低減効果が得られにくくなり好ましくない。フェニル基含有カルボン酸化合物の好ましい含有量は1−5重量%であり、特に好ましい含有量は2−4重量%である。
また、本発明のクリームはんだは、通常のクリームはんだで使用されるようなロジン成分をフラックス中に主成分として含む。そのロジン成分としては、ガムロジン、重合ロジン、水添ロジン、不均化ロジン、変性ロジンなどが使用される。
さらに本発明のクリームはんだは、必要に応じてアミン−ハロゲン化水素酸塩のような活性剤をフラックス中に含む。アミン−ハロゲン化水素酸塩の具体例としては、シクロヘキシルアミン臭化水素酸塩、シクロヘキシルアミン塩酸塩、エチルアミン塩酸塩、ジエチルアミン臭化水素酸塩などが挙げられる。なお、その好ましい含有量は、フラックス全重量に対して0.5−5重量%である。なお、その他の通常使用される有機酸のような活性剤を、ボイド発生の抑制に影響しない範囲内で含んでも良い。
さらに本発明のクリームはんだは、例えばペースト状にするために、必要に応じて溶剤をフラックス中に含む。溶剤の具体例としては、沸点200〜300℃程度のグリコールエーテル系、テルペン系などが挙げられる。その好ましい含有量は、フラックス全重量に対して30−70重量%である。なお、本発明に使用されるフラックスは、液状であっても良い。ペースト状のフラックスが取り扱い上より好ましい。
さらに本発明のクリームはんだは、印刷ニジミや加熱によるダレを防止するために、必要に応じてチクソ剤をフラックス中に含む。チクソ剤の具体例としては、硬化ヒマシ油や脂肪酸アミドなどが挙げられる。その好ましい含有量は、フラックス全重量に対して1−10重量%である。その他、必要に応じて、ボイド発生の抑制に影響しない範囲内で、他の成分を含んでも良い。
本発明のPbフリーのSn系合金はんだのクリームはんだは、Sn-Ag、Sn-Ag-Cu、Sn-Ag-Bi-Cu、Sn-Ag-Bi-In、Sn-Sb、Sn-Cu、Sn-Cu-Ni、Sn-Ag-Cu-In、Sn-Ag-In、Sn-InおよびSn-Bi-Inの群から選ばれる少なくとも1種を、Sn系合金はんだ中に含むものである。こられは、前記したように本発明のフラックスとのクリームはんだにおいて、Pbを含まないSn系合金はんだとしての標準的組成で気泡発生防止を可能にすることが可能であり、実用上有利なものである。
かかるSn系合金はんだの具体的な組成の例として、Sn96.5Ag3.5、Sn96.5Ag3.0Cu0.5、Sn95.8Ag3.5Cu0.7、Sn93.3Ag3.0Bi3.0Cu0.7、Sn93Ag3.5Bi0.5In3、Sn88Ag3.5Bi0.5In8、Sn95Sb5、Sn99.3Cu0.7、Sn99.27Cu0.7Ni0.03、Sn93Ag3.5Cu0.5In3、Sn88.5Ag3.5In8、Sn95In5、Sn92.5Bi0.5In7などが挙げられる。なお、ここでの各組成は、Sn系合金はんだ全重量に対する重量%を意味する。また、0.1重量%のPb、その他の例えばJISA級に準ずるFeなどの不可避的不純物を含んでも良い。
本発明の好ましいSn系合金はんだは、Sn-AgおよびSn-Ag-Cuであり、特に好ましい例としてSn96.5Ag3.5、Sn96.5Ag3.0Cu0.5、Sn95.8Ag3.5Cu0.7が挙げられる。
また、本発明のSn系合金はんだは、好ましくは190−250℃の範囲の融点を持つものである。その範囲内で融点を有することによって、Pbを含まないSn系合金はんだにおける接合の信頼性が確保しやすくできる。例えば、Sn42Bi58では融点が138℃、Sn48In52では融点が118℃であって、これらのはんだによっては接合信頼性が得られない。
さらに本発明のSn系合金はんだは、粉末の形状を有し、好ましくはアスペクト比1:1.2程度の球形であって、異形粉を少し含有しても良い。その粉末の大きさとしては、汎用品であり商業的に入手しやすいことからも、粒子径25〜45μmのものが好ましい。
本発明のPbフリーのSn系合金はんだのクリームはんだは、はんだの一般的な製造方法によって製造され得る。その具体的な方法としては、例えば、まず無酸素雰囲気中で回転ディスク法によって、あらかじめ準備されたPbフリーのSn系合金はんだを粉末化し、所望のサイズに分級することによって、粉末状のPbフリーSn系合金はんだを得る。一方、所定の組成になるようにそれぞれ所定量計量されたフェニル基含有カルボン酸、および必要に応じてロジン、溶剤、活性剤、チクソ剤等を、攪拌容器に投入し、加熱攪拌して、溶解させることによって、ペースト状のフラックスを得る。それぞれ得られた合金はんだ粉末とフラックスをそれぞれ所定量計量して、攪拌容器に投入し、攪拌して練り合わせることによって、クリームはんだが得られる。クリームはんだ中のフラックスは、9−15重量%が好ましい。
本発明のはんだ付け実装方法は、前記のような粉末状のPbフリーSn系合金はんだと液状またはペースト状のフラックスを含むクリームはんだを使用して基板に電子部品をはんだ付けするものである。特にそのクリームはんだ中のフラックスが、前記の如く下記式(I)、(II)および(III)で表される化合物の群から選ばれる少なくとも1種のフェニル基含有カルボン酸を含むものである。
Ar−COOH (I)
Ar−R−COOH (II)
Ar−O−R−COOH (III)
(但しここで、Arは1個のヒドロキシル基で置換されていても良いフェニル基を表し、Rは1個のヒドロキシル基で置換されていても良い低級アルキル基を表し、ArとRは同一化合物内で共にヒドロキシル基で置換されることがない。)
かかる本発明のはんだ付け実装方法では、はんだ付けの接合面積は1mm以上が好ましい。さらに、これまでボイドの発生が多くなりやすかった4mm以上の接合面積への本発明のはんだ付け実装方法の適用は、ボイドの低減効果が大きく、特に望ましい。尚、接合面積が1mm未満の小さいものではボイドの有無の差が薄まって効果が見えにくくなる。
さらに本発明のはんだ付け実装方法では、はんだ付けのリフローピーク温度が220−250℃に範囲にあることが好ましい。220℃未満では濡れ性に劣り、250℃を超えると部品の耐熱限界を超えることになりやすい。さらに230−245℃が好ましく、特に約240℃が好ましい。これまでの実装方法では、260−290℃の高い温度でリフローを行うとボイドが減少する傾向が見られたものの、はんだ付けすべき電子部品への高温による悪影響から、そのような高温でのリフローが実施されなかった。本発明のはんだ付け実装方法は、これまでボイドの減少が困難とされていた温度でリフローを行って、ボイドの多発がなくかつ電子部品への悪影響もない状態で、電子部品のはんだ付けを行うものである。
本発明の実装方法における基板として、通常セラミック、Cu、Al等が使用される。また、電子部品の具体例としては、放熱材として使用されるヒートシンク、デバイス素子などが挙げられる。ヒートシンクの例として、Mo、Fe、Ni、Ag、Cuなどの金属またはCu-Zn、Fe-Niなどの合金を含む母材にNiめっき、Auめっき、Cuめっきなどの表面処理が施されたものが挙げられる。ここで、はんだ中のSnと接合層を形成する材料としては、Niが好ましい。例えば、Niは、Snとの濡れ性に劣るため本来気泡が発生しやすい系ではあるが、実用上重要なものであり、本発明による気泡発生防止効果が有効に生かすことができる。デバイス素子の例として、SiチップにTi層およびNi層を積層しそのNi層上にめっき等で、酸化防止用に薄いフラッシュAu処理されたものが挙げられる。
本発明の実装方法において、好ましくは、はんだ付けによってSnと接合層を形成する該電子部品の表面材料が、Mo、Fe、Ni、Ag、Cuの金属およびCu-Zn、Fe-Niの合金の群から選ばれる1種である。なかでも、本発明の効果を奏し得てかつ実用上重要であることから、特にNi、Cu、Agが好ましい。これらの材料に、酸化防止用の薄いフラッシュAuめっきが処理されたものであっても良い。
なお、特に詳述しないが、本発明の実装方法において、通常はんだ付けの実装方法で行われる操作が、必要に応じて行われても良い。
本発明の実装方法の具体的な1例を、便宜上実装終了後の状態として、図1(a)および図1(b)に模式的に示す。すなわち図1(a)に示されるように、本発明の実装方法では、例えばセラミック、Cu、Al等の基板上に本発明のクリームはんだが印刷され、その上にヒートシンクが設置された後、通常の条件下でリフロー処理されることによってはんだ付けが行われ、さらにその上に通常の高温はんだを使用してパワーデバイス素子がはんだ付けされる。
他の具体的な例を、実装終了後の状態として、図1(b)に模式的に示す。すなわち図1(b)に示されるように、本発明の実装方法では、例えば基板上に本発明のクリームはんだが印刷され、その上にパワーデバイス素子が直接設置された後通常の条件下でリフロー処理されることによってはんだ付けされる。
また、図2(a)において、図1(a)に示されるヒートシンク部品の横方向の断面図を模式的に示す。すなわち、図2(a)には、Moの母材にNiめっきの表面処理がなされたものが示される。さらに図2(b)に、図1(b)に示されるパワーデバイス素子の横方向の断面図を模式的に示す。すなわち、図2(b)には、SiチップにTi層とNi層が積層され、その上に保護層としてさらにAuめっきされたものものが示される。
本発明によれば、はんだ付けの際に、電子部品および導体である基板への濡れ性を確保でき、なおかつ電子部品および基板における金属表面の酸化物除去反応によるガスおよび熱による分解ガスの発生を抑制できるため、ヒートシンクやシリコンチップなどの平面状部品のはんだ付けにおいて、ボイドの発生率を抑制することができる。
次に本発明の実施例および比較例を説明するが、それらによって本発明が限定されるものではない。
実施例1
(1)フラックスの調整
変性ロジン15g、水素添加ロジン30g、テルペン系溶剤50g、シクロヘキシルアミンHBr塩1g、安息香酸3g、水素添加ヒマシ油1gを容器に仕込み、150℃で約5分間加熱溶解させて、ペースト状のフラックスを得た。
(2)クリームはんだの調整
あらかじめ用意しておいた粒子径25〜45μmのSn/Ag/Cu(96.5重量%/3.0重量%/0.5重量%)のはんだ粉末89gおよび上記(1)項で調整したペースト状フラックス11gを容器にとり、ヘラを用いて室温で約5分間混和してクリームはんだを得た。
(3)クリームはんだの評価
図3(a)に示されるように、上記の(2)項で得たクリームはんだを50mm×50mm×0.3mmの銅基板に100μmの厚さで印刷し、図2(a)に示されるようなMoにNiめっきを施した6mm×6mm×0.5mmのヒートシンク部品を搭載して、予備加熱(150℃で約1分間)の後、ピーク温度230〜240℃で少なくとも数秒間、酸素濃度が約500ppmの窒素ガス雰囲気中でリフロー処理を行った。
このようにはんだ付けされたものについて、銅基板とヒートシンク部品を引き剥がして、ヒートシンク部品のはんだ付け面を観察したところボイドは少なく良好であった。さらに詳細に評価するために、図3(b)に(2)として示されるように、引き剥がされたヒートシンク部品のはんだ付け面を撮影してそのデジタル画像を得て、面積測定ソフトを用いてボイド部分の面積総和を多角形近似で2値化し、次式によりボイド面積率を算出した。得られたボイド面積率を、後記の表1に示す。なお、引き剥がし後のヒートシンク部品のはんだ付け面の拡大光学写真を図4に示すが、ボイドが少なく良好であることが分かる。
実施例2
実施例1の安息香酸を2−ヒドロキシ安息香酸(サリチル酸)に代えること以外は実施例1と同様にして、クリームはんだを調整し、評価を行った。ボイドは少なく良好であった。ボイド面積率を、後記の表1に合せて示す。また、引き剥がし後のヒートシンク部品のはんだ付け面の拡大光学写真を図4に示すが、ボイドが少なく良好であることが分かる。
実施例3
実施例1の安息香酸を4−ヒドロキシフェニル酢酸に代えること以外は実施例1と同様にして、クリームはんだを調整し、評価を行った。ボイドは非常に少なく良好であった。ボイド面積率を、後記の表1に合せて示す。また、引き剥がし後のヒートシンク部品のはんだ付け面の拡大光学写真を図4に示すが、ボイドが非常に少なく良好であることが分かる。
実施例4
実施例1の安息香酸を(4−ヒドロキシフェノキシ)酢酸に代えること以外は実施例1と同様にして、クリームはんだを調整し、評価を行った。ボイドは非常に少なく良好であった。ボイド面積率を、後記の表1に合せて示す。また、引き剥がし後のヒートシンク部品のはんだ付け面の拡大光学写真を図4に示すが、ボイドが非常に少なく良好であることが分かる。
比較例1
実施例1の安息香酸を3,4−ジヒドロキシフェニル酢酸に代えて、実施例1と同様にクリームはんだを調整し、評価を行ったところ、ボイドが多量に発生した。そのボイド面積率は、後記の表1に合せて示す。また、引き剥がし後のヒートシンク部品のはんだ付け面の拡大光学写真を図4に示すが、ボイドが多発していることが分かる。
比較例2
実施例1の安息香酸をコハク酸に代えて、実施例1と同様にクリームはんだを調整し、評価を行ったところ、ボイドが多量に発生した。そのボイド面積率は、後記の表1に合せて示す。また、引き剥がし後のヒートシンク部品のはんだ付け面の拡大光学写真を図4に示すが、ボイドが多発していることが分かる。
比較例3
実施例1の安息香酸をオキシコハク酸(リンゴ酸)に代えて、実施例1と同様にクリームはんだを調整し、評価を行ったところ、ボイドが多量に発生した。そのボイド面積率は、後記の表1に合せて示す。また、引き剥がし後のヒートシンク部品のはんだ付け面の拡大光学写真を図4に示すが、ボイドが多発していることが分かる。
比較例4
実施例1の安息香酸をラウリン酸に代えて、実施例1と同様にクリームはんだを調整し、評価を行ったところ、ボイドが多量に発生した。そのボイド面積率は、他のボイド面積率と共に以下の表1に合せて示す。また、引き剥がし後のヒートシンク部品のはんだ付け面の拡大光学写真を図4に示すが、ボイドが多発していることが分かる。
実施例5
実施例1〜4で用いたクリームはんだを使った、具体的な部品実装方法を示す。アルミナセラミック基板上に配線(Cu、Ag、Ni)が形成された電極上に、実施例1〜4のクリームはんだを印刷法にて供給する。そのクリームはんだ上に、MoにNiめっきを施した6×6mm□サイズのヒートシンク付きパワーデバイス素子及び裏面電極がTi/Ni/Auめっきである5×5mm□サイズのパワー素子デバイスを搭載する。その後、リフローピーク温度が240℃にて溶融しはんだ付けする。このようにしてはんだ付けで搭載された素子について、図3(b)に(1)として示されるように、実際の実装工程と同様な非破壊の軟X線透過法によるボイド検査を行い、はんだ付けを引き剥がすことなくそのままでボイドの有無を区別して2値化処理することによって、ボイドの占める面積率を測定する。このようにして搭載された各々の素子のボイド面積率は、後記の表1に示した値と同程度であることが分かった。
また、酸素濃度が数千ppm以上の窒素ガス中、および大気雰囲気中において行った同じ様な評価でも、同様なボイド発生の抑制状態を示した。また、Niめっき以外の電子部品電極として、その表面がFe、Cu、Agなどの金属およびCu-Zn、Fe-Niなどの合金の群から選ばれる1種であれば、同様な効果があることを確認している。 更に加えて、はんだ付け面の形状としては、約1mm2以上において、同様な効果があることも併せて確認している。さらにボイドの発生が多くなる傾向にある約4mm2以上においても、同様な効果があることも確認している。
本発明の実装方法による、はんだ付け後の状態を模式的に示す。 本発明の実装方法で使用されるはんだ付け搭載電子部品の横方向の断面図を模式的に示す。 ボイドの測定法を模式的に示す。 ボイド面積の拡大光学写真による評価例を示す。

Claims (10)

  1. 粉末状のPbフリーSn系合金はんだと液状またはペースト状のフラックスを含むクリームはんだであって、該フラックスが、下記式(I)、(II)および(III)で表される化合物の群から選ばれる少なくとも1種のフェニル基含有カルボン酸を含むものである、クリームはんだ。
    Ar−COOH (I)
    Ar−R−COOH (II)
    Ar−O−R−COOH (III)
    (但しここで、Arは1個のヒドロキシル基で置換されていても良いフェニル基を表し、Rは1個のヒドロキシル基で置換されていても良い低級アルキル基を表し、ArとRは同一化合物内で共にヒドロキシル基で置換されることがない。)
  2. 該PbフリーSn系合金はんだが、Sn-Ag、Sn-Ag-Cu、Sn-Ag-Bi-Cu、Sn-Ag-Bi-In、Sn-Sb、Sn-Cu、Sn-Cu-Ni、Sn-Ag-Cu-In、Sn-Ag-In、Sn-InおよびSn-Bi-Inの群から選ばれる少なくとも1種を含むものである、請求項1に記載のクリームはんだ。
  3. 該フェニル基含有カルボン酸が、安息香酸、2-ヒドロキシ安息香酸、3-ヒドロキシ安息香酸、4-ヒドロキシ安息香酸、2−ヒドロキシフェニル酢酸、3−ヒドロキシフェニル酢酸、4−ヒドロキシフェニル酢酸、(4−ヒドロキシフェノキシ)酢酸、D-(-)-マンデル酸および3-(4-ヒドロキシフェニル)プロピオン酸の群から選ばれる少なくとも1種である、請求項1または請求項2に記載のクリームはんだ。
  4. 該フェニル基含有カルボン酸が、下記式(II)で表される化合物の群から選ばれる少なくとも1種である、請求項1または請求項2に記載のクリームはんだ。
    Ar−R−COOH (II)
    (但しここで、Arは1個のヒドロキシル基で置換されていても良いフェニル基を表し、Rは1個のヒドロキシル基で置換されていても良い低級アルキル基を表し、ArとRは同一化合物内で共にヒドロキシル基で置換されることがない。)
  5. 該Rが炭素数1−3のアルキル基である、請求項1または請求項4に記載のクリームはんだ。
  6. 該フェニル基含有カルボン酸の含有量が、該フラックス100重量部に対して0.5−10重量部の範囲にある、請求項1−5のいずれかに記載のクリームはんだ。
  7. 粉末状のPbフリーSn系合金はんだと液状またはペースト状のフラックスを含むクリームはんだを使用して基板に電子部品をはんだ付けにより実装する方法であって、該フラックスが、下記式(I)、(II)および(III)で表される化合物の群から選ばれる少なくとも1種のフェニル基含有カルボン酸を含むものである、はんだ付け実装方法。
    Ar−COOH (I)
    Ar−R−COOH (II)
    Ar−O−R−COOH (III)
    (但しここで、Arは1個のヒドロキシル基で置換されていても良いフェニル基を表し、Rは1個のヒドロキシル基で置換されていても良い低級アルキル基を表し、ArとRは同一化合物内で共にヒドロキシル基で置換されることがない。)
  8. 該はんだ付けの接合面積が1mm以上である、請求項7に記載のはんだ付け実装方法。
  9. 該はんだ付けのリフローピーク温度が220−250℃の範囲にある、請求項7または請求項8に記載のはんだ付け実装方法。
  10. 該はんだ付けによってSnと接合層を形成する該電子部品の表面材料が、Mo、Fe、Ni、Ag、Cuの金属およびCu-Zn、Fe-Niの合金の群から選ばれる1種である、請求項7−9のいずれかに記載のはんだ付け実装方法。
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