JP2005330941A - ピストンおよびその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】 シリンダとの間の摩擦を十分に低減するとともに、信頼性の高い内燃機関を実現するピストンおよびその製造方法を提供する。
【解決手段】 ピストン1は、螺旋状に延びる条痕16が形成された外周面4aを有し、アルミニウムおよび鉄の少なくともいずれか一方を含むスカート部4と、シリンダとの摺動面をなす表面12aを有し、外周面4a上に設けられたコーティング部12とを備える。コーティング部12は、等しい接触条件のもと、シリンダに対する摩擦係数が、スカート部4とシリンダとの間の摩擦係数よりも小さくなる材料、たとえば樹脂や二硫化モリブデンから形成されており、かつ、表面12aが略鏡面状に形成されている。
【選択図】 図3

Description

この発明は、一般的には、ピストンおよびその製造方法に関し、より特定的には、シリンダとの摺動面が適当な材料によってコーティングされたピストンおよびその製造方法に関する。
シリンダとの摺動面がコーティングされた従来のピストンに関して、たとえば、特開2003−13797号公報には、シリンダボアおよびピストンの双方の摩耗とスカッフィングとを抑制することを目的したエンジンが開示されている(特許文献1)。特許文献1に開示されたピストンでは、ピストンのスカート部が、熱可塑性樹脂であるポリアミドイミドによって被覆されている。
また、特開2001−182612号公報には、衝撃音の低減を図った内燃機関用ピストンが開示されている(特許文献2)。特許文献2に開示されたピストンでは、スカート部の外周面に、樹脂コートが設けられるとともに、外周面の下端に位置して、オイルを流入させるための溝部が形成されている。
さらに、特開平7−189804号公報には、なじみ性と耐久性とを両立できるコーティングが施された内燃機関のピストンおよびその製造方法が開示されている(特許文献3)。特許文献3に開示されたピストンでは、ピストンスカートの外周面を覆うように、異なる硬度を有する第1コーティング層と第2コーティング層とが設けられている。ピストンスカートの外周面には、螺旋状に加工された条痕が存在する。第1コーティング層および第2コーティング層の表面には、その条痕の模様が転写されて凹凸形状に形成されている。
さらに、特開平11−324793号公報には、長期間に渡る耐磨耗性および耐スカッフィング性の向上を図ったアルミニウム製ピストンが開示されている(特許文献4)。特許文献4に開示されたピストンでは、ピストンのスカート部に、硬質陽極処理コーティングと複合ポリマーコーティングとが、順に積層されて形成されている。
特開2003−13797号公報 特開2001−182612号公報 特開平7−189804号公報 特開平11−324793号公報
ピストンに設けられるこのようなコーティング層は、シリンダに対して実際に摺接するため、そのピストンが用いられる内燃機関の低フリクション化を図る上で重要な因子となる。しかし、上述の従来のピストンでは、コーティング層の表面の形態が適正に制御されていないため、シリンダとの間の摩擦を十分に低減させることができない。また、コーティング層が剥がれた場合には、焼き付きが発生するおそれがあり、内燃機関の信頼性が著しく損なわれる。
そこでこの発明の目的は、上記の課題を解決することであり、シリンダとの間の摩擦を十分に低減するとともに、信頼性の高い内燃機関を実現するピストンおよびその製造方法を提供することである。
この発明に従ったピストンは、内燃機関の燃焼圧を受圧して、シリンダ内を摺動するピストンである。ピストンは、螺旋状に延びる条痕が形成された外周面を有し、アルミニウムおよび鉄の少なくともいずれか一方を含むスカート部と、シリンダとの摺動面をなす表面を有し、スカート部の外周面上に設けられたコーティング部とを備える。コーティング部は、等しい接触条件のもと、シリンダに対する摩擦係数が、スカート部とシリンダとの間の摩擦係数よりも小さくなる材料から形成されており、かつ、表面が略鏡面状に形成されている。
このように構成されたピストンによれば、スカート部の外周面に、シリンダとの間の摩擦係数が小さくなる所定の材料から形成したコーティング部を設け、さらに、そのコーティング部の表面を略鏡面状に形成することによって、ピストンとシリンダとの間のフリクションを低減させることができる。また、アルミニウムや鉄を含むスカート部の外周面には、条痕が形成されている。このため、コーティング部が外周面から剥がれた場合であっても、外周面とシリンダの表面とが面接触するということがなく、ピストンとシリンダとの間で焼き付きが発生することを防止できる。これにより、ピストンの耐スカッフィング性を向上させ、延いては、本発明によるピストンを用いた内燃機関の信頼性を向上させることができる。
また好ましくは、コーティング部は、樹脂、二硫化モリブデンおよびタングステンからなる群より選ばれた少なくとも一種を含む材料から形成されている。このような材料から形成されたコーティング部の表面を略鏡面状に仕上げることによって、ピストンとシリンダとの間のフリクションを飛躍的に低減させることができる。
また、表面の最大高さRzは、外周面の最大高さRzよりも小さい。ここで言う最大高さRzとは、JIS B 0601−2001で規定されている最大高さのことである。本発明によるピストンでは、略鏡面状に形成されたコーティング部の表面の最大高さが、条痕が形成されたスカート部の外周面の最大高さよりも小さくなる。
また好ましくは、表面の最大高さRzは、5μm以下である。このように構成されたピストンによれば、コーティング部の表面を、最大高さRzが5μm以下となる水準まで略鏡面状に仕上げることによって、ピストンとシリンダとの間のフリクションを十分に低減させることができる。
また、コーティング部は、表面の反対側に位置し、外周面に接触する裏面をさらに有する。好ましくは、その裏面は、凹凸面に形成されている。このように構成されたピストンによれば、コーティング部の裏面とスカート部の外周面との接触面積を増大させ、両者の接合強度を向上させることができる。これにより、コーティング部が剥離しにくくなり、コーティング部を設けたことによる上述の効果を継続して得ることができる。
また好ましくは、裏面には、外周面に形成された条痕を転写した模様が形成されている。このように構成されたピストンによれば、上述と同様に、コーティング部の裏面とスカート部の外周面との接合強度を向上させることができる。
また好ましくは、コーティング部は、裏面に形成された模様と外周面に形成された条痕とが一致するように、外周面に接合されている。このように構成されたピストンによれば、スカート部の外周面に形成された条痕の形状が、コーティング部の表面に現れることを防止できる。
また、コーティング部は、表面の反対側に位置し、外周面に向い合う裏面をさらに有する。好ましくは、その裏面は、略鏡面状に形成されている。ピストンは、裏面と外周面との間に介在する接着部材をさらに備える。このように構成されたピストンによれば、スカート部の外周面に形成された条痕を埋めるように接着部材を設けることができる。これにより、条痕の形状がコーティング部の表面に現れることを防止し、コーティング部の表面を略鏡面状に容易に仕上げることができる。加えて、コーティング部の表面および裏面の両方が、略鏡面状に形成されているため、コーティング部の生産性を向上させることができる。
また好ましくは、コーティング部と接着部材とは、同一材料から形成されている。このように構成されたピストンによれば、コーティング部とスカート部とを直接、接合した場合と同等の接合強度を得ることができる。これにより、コーティング部がスカート部から剥離するおそれを低減できる。
また好ましくは、コーティング部は、外周面上に積層された複数の層から構成されている。このように構成されたピストンによれば、スカート部の外周面に形成された条痕の形状が、コーティング部の表面に現れにくくなる。また、コーティング部の最外層が剥がれた場合であっても、その内側にさらに別の層が存在するため、コーティング部を設けたことによる効果を継続して得ることができる。
また好ましくは、コーティング部は、表面を有する第1の層と、外周面と第1の層との間に位置し、第1の層に接触する中間面を有する第2の層とを含む。中間面の最大高さRzは、外周面の最大高さRzよりも小さい。表面の最大高さRzは、中間面の最大高さRzよりも小さい。このように構成されたピストンによれば、上述と同様の効果を得ることができる。加えて、第2の層に対する第1の層の接合力と、スカート部に対する第2の層の接合力とを比較した場合に、第2の層に対する第1の層の接合力の方が小さくなる。このため、コーティング部がスカート部から剥がれる場合があっても、まず、最外層に位置する第1の層が剥がれ、第2の層をスカート部の外周面上に残すことができる。これにより、コーティング部を設けたことによる効果をより長い期間に渡って得ることができる。
この発明に従ったピストンの製造方法は、内燃機関の燃焼圧を受圧して、シリンダ内を摺動するピストンの製造方法である。ピストンの製造方法は、スカート部が有する外周面に、螺旋状に延びる条痕を形成する工程と、両面が略鏡面状に形成された樹脂フィルムを、接着部材を介して外周面に貼り付ける工程とを備える。樹脂フィルムを貼り付ける工程は、接着部材の厚みが条痕の深さよりも大きくなるように、接着部材を介在させる工程を含む。
このように構成されたピストンの製造方法によれば、外周面に形成された条痕を埋めるように接着部材を設けることができる。これにより、コーティング部の表面を、シリンダとの間のフリクションを低減させる上で好ましい略鏡面状に仕上げることができる。また、両面が略鏡面状に形成された樹脂フィルムを用いることで、樹脂フィルムの生産性を向上させることができる。
また好ましくは、樹脂フィルムを貼り付ける工程は、予め接着部材が塗布されたシール形態の樹脂フィルムを外周面に貼り付ける工程を含む。このように構成されたピストンの製造方法によれば、樹脂フィルムをスカート部の外周面に貼り付ける工程を、容易かつ迅速に行なうことができる。
以上説明したように、この発明に従えば、シリンダとの間の摩擦を十分に低減するとともに、信頼性の高い内燃機関を実現するピストンおよびその製造方法を提供することができる。
この発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。
(実施の形態1)
図1は、この発明の実施の形態1におけるピストンを示す側面図である。図1中では、ピストンをスラスト側または反スラスト側から見た側面図が示されている。図2は、図1中のII−II線上に沿ったピストンを示す断面図である。図中には、内燃機関としての車両用エンジンを構成するピストンおよびシリンダが示されている。
図1および図2を参照して、エンジンは、円筒状に延在するシリンダ壁2aを有するシリンダ2と、そのシリンダ壁2aに囲まれた空間に封入されたピストン1とを備える。ピストン1は、たとえば、アルミニウム合金から形成されており、シリンダ2は、たとえば、鋳鉄またはアルミニウム合金から形成されている。また、ピストン1は、鋼鉄(スチール)から形成されていても良い。ピストン1に隣り合った位置には、ピストン1、シリンダ壁2aおよび図示しないシリンダヘッド等によって構成された燃焼室6が形成されている。燃焼室6で発生した燃焼圧を受けることによって、ピストン1は、シリンダ2内を矢印5に示す方向に往復運動する。
ピストン1は、燃焼室6の一部を構成するヘッド部3と、ヘッド部3に連なり、図示しないコネクティングロッドに接続されるスカート部4とから構成されている。シリンダ壁2aに向い合うヘッド部3の表面には、環状に延びるリング溝61および62ならびにオイルリング溝63が、所定の間隔を隔てて形成されている。リング溝61および62には、上部ピストンリング64および下部ピストンリング65がそれぞれ嵌め合わされている。オイルリング溝63には、オイルリング66が嵌め合わされている。なお、本実施の形態では、ピストンに3本のリングが設けられているが、1本のリングが設けられていても良いし、2本のリングが設けられていても良い。
スカート部4は、シリンダ壁2aに対して摺動面をなす外周面4aを、スラスト側および反スラスト側にそれぞれ有する。外周面4aは、シリンダ壁2aと摺接するコーティング部12によって覆われている。コーティング部12は、スカート部4を構成するアルミニウム合金と比較して、シリンダ2との間の摩擦係数が小さくなる材料から形成されている。ここで比較する摩擦係数は、接触条件を等しくした状態で得られる摩擦係数である。より具体的には、潤滑剤の有無、接触面の表面粗さや清浄度、温度や湿度を等しくし、その場合に得られる摩擦係数を比較する。なお、比較する摩擦係数は、動摩擦係数であっても良いし、静摩擦係数であっても良い。
このようなコーティング部12に用いる材料としては、たとえば、ポリアミドイミド、ポリイミド、エポキシ、ポリエステルまたはポリテトラフルオロエチレン(PTFE)などの樹脂や、二硫化モリブデン(MoS)を挙げることができる。コーティング部12は、これらに挙げた材料を複数含んで形成されていても良く、たとえば、ポリアミドイミドに二硫化モリブデンが添加されて形成されていても良い。また、酸化アルミニウム(アルミナ)を含有する樹脂やタングステン(W)などの金属を用いても良い。
図3は、図2中の2点鎖線IIIで囲まれた範囲を拡大して示す断面図である。図中では、シリンダの断面が省略されている。図3を参照して、スカート部4の外周面4aには、螺旋状に延びる条痕16が形成されている。条痕16の深さtは、たとえば、8μmから15μmほどであり、そのピッチPは、たとえば、100μmから数百μmほどである。このような形状を有する条痕16は、スカート部4の外周面4aを旋盤仕上げする際に、バイトの刃先形状や旋盤の送り速度を適当に選択することによって形成することができる。
コーティング部12は、シリンダ壁2aと摺接する表面12aと、表面12aの反対側に位置し、スカート部4の外周面4aに接触する裏面12bとを有する。コーティング部12の厚みTは、たとえば、30μmほどである。
表面12aは、略鏡面状に形成されており、好ましくは、表面12aの最大高さRzは、5μm以下である。表面12aの最大高さRzは、たとえば、ピストン1の運動方向に沿った方向の粗さ曲線を測定し、その測定結果から既述のJIS規格に準じて求める。略鏡面状に形成された表面12aの最大高さRzは、条痕16が形成された外周面4aの最大高さRzよりも小さくなる。
一方、コーティング部12の裏面12bは、外周面4aに形成された条痕16を転写した条痕模様に形成されている。コーティング部12は、裏面12bに形成されたその条痕模様と、外周面4aに形成された条痕16とが一致するように、外周面4aに接合されている。このような構成により、外周面4aに形成された条痕16の形状が表面12aに現れ、略鏡面状に形成された表面12aの形状が損なわれることを防止できる。また加えて、外周面4aと裏面12bとは、接触面積を大きくして互いに接合されているため、コーティング部12がスカート部4から容易に剥がれるということがない。
この発明の実施の形態1におけるピストン1は、内燃機関の燃焼圧を受圧して、シリンダ2内を摺動するピストンである。ピストン1は、螺旋状に延びる条痕16が形成された外周面4aを有し、アルミニウムおよび鉄の少なくともいずれか一方を含むスカート部4と、シリンダ2との摺動面をなす表面12aを有し、外周面4a上に設けられたコーティング部12とを備える。コーティング部12は、等しい接触条件のもと、シリンダ2に対する摩擦係数が、スカート部4とシリンダ2との間の摩擦係数よりも小さくなる材料から形成されており、かつ、表面12aが略鏡面状に形成されている。
図4は、図1中のピストンの製造に用いられるダイスを示す斜視図である。図4を参照して、ピストン1のスカート部4にコーティング部12を設ける場合、まず、表面に条痕模様32が形成されたダイス31を準備し、そのダイス31に、加熱し、液状とした樹脂材料を注入する。樹脂材料が固まった後、ダイス31から樹脂材料を取り外し、裏面12bに条痕模様が転写され、表面12aが略鏡面状に形成されたコーティング部12を得る。
次に、裏面12bと外周面4aとが向い合うように、スカート部4にコーティング部12を接合する。この際、裏面12bと外周面4aとの間に薄く接着剤を介在させて、両者を接合しても良いし、裏面12bと外周面4aとを接触させた状態で、コーティング部12を加熱、冷却することで、両者を直接、接合しても良い。このように、予めコーティング部12の裏面12bに条痕模様を形成しておくことで、コーティング部12を接合した後、その表面12aに条痕模様が現れることを防止できる。
この発明の実施の形態1におけるピストンの製造方法は、スカート部4が有する外周面4aに、螺旋状に延びる条痕16を形成する工程と、略鏡面状に形成された表面12aと、表面12aの反対側に位置し、条痕16を転写した模様が形成された裏面12bとを有するコーティング部12を成形する工程と、外周面4aと裏面12bとが向い合うように、コーティング部12をスカート部4に接合する工程とを備える。
以上のように構成された、この発明の実施の形態1におけるピストンおよびその製造方法によれば、スカート部4の外周面4aに、シリンダ2に対する摩擦係数が小さくなるコーティング部12を設け、その表面12aを略鏡面状に形成することによって、ピストン1がシリンダ2内を摺動する際のフリクションを大きく低減させることができる。また、万が一、コーティング部12がスカート部4から剥がれるような事態が生じても、スカート部4の外周面4aには条痕16が形成されているため、ピストン1がシリンダ2内で焼き付くということがない。このため、ピストン1を用いたエンジンの信頼性を向上させることができる。
なお、本実施の形態では、外周面4a上に一層のコーティング部12を設けたが、コーティング部12を複数層として設けても良い。この場合、最外層に配置されたコーティング部の表面を略鏡面状に形成する。複数層のコーティング部12を設けることによって、外周面4aに形成された条痕16の形状が、最外層のコーティング部の表面に現れにくくなる。また、最外層のコーティング部が剥がれたとしても、別の層を外周面4a上に残存させることができる。さらに、コーティング部12の各層を同じ材料から形成すると、複数層間の接合が同材系接合となるため、互いの剥離強度を向上させることができる。また、コーティング部12の各層を樹脂材料から形成した場合、複数層間の接合が樹脂系接合となるため、同様に、互いの剥離強度を向上させることができる。
(実施の形態2)
図5は、この発明の実施の形態2におけるピストンを示す断面図である。図5は、実施の形態1の図3に対応する図であり、図中には、図2中の2点鎖線IIIで囲む範囲が示されている。本実施の形態におけるピストンは、基本的には、実施の形態1におけるピストンと同様の構造を備える。以下、重複する構造については説明を繰り返さない。
図5を参照して、本実施の形態におけるピストンでは、スカート部4の外周面4a上にコーティング部12qが設けられ、さらにコーティング部12qの上からコーティング部12pが設けられている。コーティング部12pは、シリンダ壁2aと摺接する、略鏡面状に仕上げられた表面12aを有する。コーティング部12qは、コーティング部12pと接触し、螺旋状に延びる条痕41が形成された表面12cを有する。このような構成を有するピストンは、実施の形態1に記載の製造方法を利用することにより、同様に作製することができる。
条痕41は、スカート部4の外周面4aに形成された条痕16と比較して、深さおよびピッチとも小さくなるように形成されている。結果、外周面4aの最大高さRzは、表面12cの最大高さRzよりも大きく、表面12cの最大高さRzは、表面12aの最大高さRzよりも大きい。好ましくは、表面12aの最大高さRzを5μm以下とし、表面12cの最大高さRzを、5μmを超え20μm以下とし、外周面4aの最大高さRzを、20μmを超え30μm以下とすれば良い。このような構成により、スカート部4とコーティング部12qとの接合力は、コーティング部12pとコーティング部12qとの接合力よりも大きくなる。
このように構成された、この発明の実施の形態2におけるピストンによれば、実施の形態1に記載の効果と同様の効果を得ることができる。加えて、コーティング部が剥がれることがあっても、まず、最外層のコーティング部12pがコーティング部12qから剥がれ、コーティング部12pおよび12qがスカート部4からいきなり剥がれるということがない。このため、コーティング部12pが剥がれた後においても、残存するコーティング部12qの働きにより、ピストンとシリンダとの間のフリクションを低減させることができる。また、コーティング部12qが剥がれた後においても、外周面4aに形成された条痕16の働きによって、焼き付きの発生を抑えることができる。
(実施の形態3)
図6は、この発明の実施の形態3におけるピストンを示す断面図である。図6は、実施の形態1の図3に対応する図であり、図中には、図2中の2点鎖線IIIで囲む範囲が示されている。本実施の形態におけるピストンは、基本的には、実施の形態1におけるピストンと同様の構造を備える。以下、重複する構造については説明を繰り返さない。
図6を参照して、本実施の形態におけるピストンでは、スカート部4の外周面4a上に、実施の形態1におけるコーティング部12に対応する樹脂フィルム51が設けられている。樹脂フィルム51は、たとえばエポキシ樹脂からなる接着剤53を介して、外周面4a上に設けられている。樹脂フィルム51は、表面51aおよび裏面51bのいずれとも、略鏡面状に形成されている。接着剤53は、接着剤53の厚みTaが条痕16の深さtよりも大きくなるように設けられている。結果、接着剤53は、条痕16によって規定された外周面4a上の凹部を充填するように設けられている。
図7は、図6中のピストンの製造工程を示す断面図である。図7を参照して、図6中のピストンを製造する場合、旋盤加工により、スカート部4の外周面4aに条痕16を形成する。次に、表面51aおよび裏面51bの両面が略鏡面状に形成された樹脂フィルム51を準備し、接着剤53を用いて外周面4aに貼り付ける。この際、接着剤53を設ける厚みTaを適正な範囲に制御することによって、条痕16の形状が樹脂フィルム51の表面51aに現れることを防止する。なお、接着剤53と樹脂フィルム51とを同一の材料から形成すると、樹脂フィルム51を外周面4aに直接、プリントする場合と同等の接合強度を得ることができる。
図8は、図7中に示す製造工程の変形例を示す断面図である。図8を参照して、樹脂フィルム51の裏面51bに予め接着剤53を塗布しておくことで、樹脂フィルム51をシール形態とし、その樹脂フィルム51を直接、外周面4aに貼り付けることができる。この場合、樹脂フィルム51の貼り付け作業が非常に容易となる。
このように構成された、この発明の実施の形態3におけるピストンによれば、実施の形態1に記載の効果と同様の効果を得ることができる。加えて、両面が略鏡面状に形成された樹脂フィルム51を用いることができるため、ダイスを用いた樹脂の成形工程を必要とせず、ピストンの生産性を向上させることができる。
以上、この発明の実施の形態におけるピストンおよびその製造方法について説明したが、本発明は、ガソリンエンジン用のピストンおよびディーゼルエンジン用のピストンのいずれにも適用することができる。
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
この発明の実施の形態1におけるピストンを示す側面図である。 図1中のII−II線上に沿ったピストンを示す断面図である。 図2中の2点鎖線IIIで囲まれた範囲を拡大して示す断面図である。 図1中のピストンの製造に用いられるダイスを示す斜視図である。 この発明の実施の形態2におけるピストンを示す断面図である。 この発明の実施の形態3におけるピストンを示す断面図である。 図6中のピストンの製造工程を示す断面図である。 図7中に示す製造工程の変形例を示す断面図である。
符号の説明
1 ピストン、2 シリンダ、4 スカート部、4a 外周面、12,12p,12q コーティング部、12a,12c,51a 表面、12b,51b 裏面、16,41 条痕、51 樹脂フィルム、53 接着剤。

Claims (13)

  1. 内燃機関の燃焼圧を受圧して、シリンダ内を摺動するピストンであって、
    螺旋状に延びる条痕が形成された外周面を有し、アルミニウムおよび鉄の少なくともいずれか一方を含むスカート部と、
    前記シリンダとの摺動面をなす表面を有し、前記外周面上に設けられたコーティング部とを備え、
    前記コーティング部は、等しい接触条件のもと、前記シリンダに対する摩擦係数が、前記スカート部と前記シリンダとの間の摩擦係数よりも小さくなる材料から形成されており、かつ、前記表面が略鏡面状に形成されている、ピストン。
  2. 前記コーティング部は、樹脂、二硫化モリブデンおよびタングステンからなる群より選ばれた少なくとも一種を含む材料から形成されている、請求項1に記載のピストン。
  3. 前記表面の最大高さRzは、前記外周面の最大高さRzよりも小さい、請求項1または2に記載のピストン。
  4. 前記表面の最大高さRzは、5μm以下である、請求項1から3のいずれか1項に記載のピストン。
  5. 前記コーティング部は、前記表面の反対側に位置し、前記外周面に接触する裏面をさらに有し、前記裏面は、凹凸面に形成されている、請求項1から4のいずれか1項に記載のピストン。
  6. 前記裏面には、前記外周面に形成された条痕を転写した模様が形成されている、請求項5に記載のピストン。
  7. 前記コーティング部は、前記裏面に形成された模様と前記外周面に形成された条痕とが一致するように、前記外周面に接合されている、請求項6に記載のピストン。
  8. 前記コーティング部は、前記表面の反対側に位置し、前記外周面に向い合う裏面をさらに有し、前記裏面は、略鏡面状に形成されており、
    前記裏面と前記外周面との間に介在する接着部材をさらに備える、請求項1から4のいずれか1項に記載のピストン。
  9. 前記コーティング部と前記接着部材とは、同一材料から形成されている、請求項8に記載のピストン。
  10. 前記コーティング部は、前記外周面上に積層された複数の層から構成されている、請求項1から9のいずれか1項に記載のピストン。
  11. 前記コーティング部は、前記表面を有する第1の層と、前記外周面と前記第1の層との間に位置し、前記第1の層に接触する中間面を有する第2の層とを含み、
    前記中間面の最大高さRzは、前記外周面の最大高さRzよりも小さく、前記表面の最大高さRzは、前記中間面の最大高さRzよりも小さい、請求項1から10のいずれか1項に記載のピストン。
  12. 内燃機関の燃焼圧を受圧して、シリンダ内を摺動するピストンの製造方法であって、
    スカート部が有する外周面に、螺旋状に延びる条痕を形成する工程と、
    両面が略鏡面状に形成された樹脂フィルムを、接着部材を介して前記外周面に貼り付ける工程とを備え、
    前記樹脂フィルムを貼り付ける工程は、前記接着部材の厚みが前記条痕の深さよりも大きくなるように、前記接着部材を介在させる工程を含む、ピストンの製造方法。
  13. 前記樹脂フィルムを貼り付ける工程は、予め接着部材が塗布されたシール形態の樹脂フィルムを前記外周面に貼り付ける工程を含む、請求項12に記載のピストンの製造方法。
JP2004152296A 2004-05-21 2004-05-21 ピストンおよびその製造方法 Withdrawn JP2005330941A (ja)

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