JP2005330612A - 不織布およびその製造方法 - Google Patents

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JP2005330612A JP2004148862A JP2004148862A JP2005330612A JP 2005330612 A JP2005330612 A JP 2005330612A JP 2004148862 A JP2004148862 A JP 2004148862A JP 2004148862 A JP2004148862 A JP 2004148862A JP 2005330612 A JP2005330612 A JP 2005330612A
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満 藤橋
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Abstract

【課題】 高密度で柔軟性に優れ、風合いがソフトであり、且つ高強度な不織布およびその製造方法を提供する。また抄紙時の分散性と濾水性に優れ、エネルギー消費効率に優れ、生産性に優れ、および設備費用が少なくて済むなど、生産性に優れ、生産コストの低い不織布およびその製造方法を提供する。
【解決手段】 構成繊維が湿式抄紙法によりシート化され、水流で3次元的に交絡された不織布であって、前記不織布は極細繊維を50〜99質量%と、潜在捲縮性繊維が捲縮を発現してなる捲縮繊維を50〜1質量%含み、前記極細繊維の繊維径が7μm以下であり、前記捲縮繊維の繊維径が7μmを超える不織布およびその製造方法。
【選択図】 図1

Description

本発明は、高密度で柔軟性に優れ、風合いがソフトであり、且つ高強度な不織布およびその製造方法に関し、また抄紙時の分散性と濾水性に優れ、エネルギー消費効率と生産性に優れ、生産コストも低い不織布およびその製造方法に関する。
繊維長の異なる繊維径7μm以下の繊維を1種類または2種類以上用い、高圧柱状水流で3次元的に交絡することにより、特定の空隙径を有し、シートの地合が良好で、ドレープ性、風合い、通気性、及び強度に優れた不織布が得られることが、特開平4−316653号公報(特許文献1)に記載されている。
この公報によると、ドレープ性及び風合いに優れる不織布とするため、繊維径7μm以下の不織布とすることを必須とすること、および繊維長が短い場合は、不織布強度が低くなるので、繊維径7μm以下で且つ繊維長の長い繊維(繊維長/繊維径の比が2000を超え6000以下)を10〜90重量%含有させることが記載されている。しかし全ての繊維が極細であるので抄紙時の濾水性が悪く生産速度を速くできず、乾燥時間も長くなるなど生産性に劣り、生産コストの高い製品になるという問題があった。
また、繊維径10〜20μmで繊維長7〜15mm、捲縮数6〜20個/インチの顕在捲縮繊維を50〜99重量%、アスペクト比が1000〜1500で、該顕在捲縮繊維より繊維径が小さい極細繊維を1〜50重量%含有し、これらが均一に混繊され、かつ互いに3次元交絡しており、繊維間が融着されておらず、少なくとも一方向の10%モジュラスが1.0N/cm以下である低モジュラス湿式不織布が、特開平11−131346号公報(特許文献2)に記載されている。
しかし、この公報の不織布は極細繊維の含有比率が1〜50重量%と少ないため、高密度の不織布とすることができないという問題があった。また顕在捲縮繊維を50〜99重量%含むため、この不織布を製造する工程で顕在捲縮繊維を水中に分散させると、繊維形状が直線状でないため繊維のもつれが発生し易いという問題があり、良品質の製品を得ることが困難であった。
このように、従来の技術では、高密度で柔軟性に優れ、風合いがソフトであり、且つ高強度な不織布を得ることが困難であり、また抄紙時の分散性、濾水性、エネルギー消費効率などの点で生産性に劣り、生産コストの高い製品になるという問題があった。
特開平4−316653号公報 特開平11−131346号公報
本発明は、上記の問題を解決し、高密度で柔軟性に優れ、風合いがソフトであり、且つ高強度な不織布およびその製造方法を提供することを課題とする。また抄紙時の分散性と濾水性に優れ、エネルギー消費効率に優れ、生産性に優れ、および設備費用が少なくて済むなど、生産性に優れ、生産コストの低い不織布およびその製造方法を提供することを課題とする。
本発明の不織布にかかる解決手段は、構成繊維が湿式抄紙法によりシート化され、水流で3次元的に交絡された不織布であって、前記不織布は極細繊維を50〜99質量%と、潜在捲縮性繊維が捲縮を発現してなる捲縮繊維を50〜1質量%含み、前記極細繊維の繊維径が7μm以下であり、前記捲縮繊維の繊維径が7μmを超えることを特徴とする不織布である。
また本発明の不織布の製造方法にかかる解決手段は、繊維径が7μm以下の極細繊維と繊維径が7μmを超える潜在捲縮性繊維とを含む原料繊維を、前記極細繊維が50〜99質量%、前記潜在捲縮性繊維が50〜1質量%の割合で水中に分散させてスラリーを形成し、次いでスラリーを抄紙して繊維シートを形成し、次いで繊維シートに水流を噴射して繊維を3次元的に交絡した交絡シートを形成し、次いで交絡シートを加熱処理して潜在捲縮性繊維の捲縮を発現させることを特徴とする不織布の製造方法である。
本発明によって、高密度で柔軟性に優れ、風合いがソフトであり、且つ高強度な不織布を提供することが可能となった。また、抄紙時の分散性と濾水性に優れ、且つエネルギー消費の少ない生産が可能となった。また、生産性に優れるので生産コストの低い不織布を提供することが可能となった。
以下、本発明にかかる不織布およびその製造方法の好ましい実施の形態について製造方法をもとに詳細に説明する。
本発明に使用する極細繊維としては、直接紡糸法により得られる極細繊維、海島型の複合繊維の海部分を溶解除去して得られる極細繊維、図1に断面を例示するように2成分以上の樹脂成分が隣り合わせに配列した複合繊維を水中に分散することにより各樹脂成分に離解させて得られる極細繊維、あるいはフィブリル化して得られる極細繊維などがある。
前記極細繊維の材質としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどのポリエステル系繊維、ナイロン6、ナイロン66などのポリアミド系繊維、ポリプロピレン、ポリエチレンなどのポリオレフィン系繊維、ポリアクリロニトリルなどのアクリル系繊維、ビニロン繊維および合成パルプなどの合成繊維に限らず、レーヨンなどの半合成繊維、あるいは綿およびパルプ繊維などの天然繊維をあげることができる。本発明では、特に湿熱収縮するポリアミド系繊維などを含むことにより、後述するように潜在捲縮性繊維の捲縮発現時に生じる熱収縮と相乗させて、風合いがソフトな不織布とすることができるので好ましい。
極細繊維の断面形状は、円形、楕円形、偏平形状に限らず、三角、Y型、T型、U型、星型、ドッグボーン型等いわゆる異型断面形状をとるものであってもよい。本発明では、図1の(a)、(b)、(c)、(d)に断面を例示するように樹脂成分1と樹脂成分2とからなる複合繊維を、水中に分散することにより樹脂成分1と樹脂成分2とに離解して得られる極細繊維も可能である。特に、図1(b)のように、樹脂成分1と樹脂成分2とが層状に積層されており、離解後に繊維断面が偏平形状となるような極細繊維を含むことにより、水流による交絡が高度に生じソフトな風合いと強度に優れた不織布とすることができる。この場合、長軸の長さをaとし短軸の長さをbとすると、偏平度a/bの値が4以上であることが好ましい。偏平度a/bの値は例えば走査型電子顕微鏡で確認できる100個以上の繊維断面の映像から平均して求めることができる。
なお、水中に分散することにより離解して得られる極細繊維の場合は、未離解繊維が5%未満であることが好ましく、3%以内であることがより好ましく、1%以内であることが更に好ましい。未離解繊維が5%以上であると抄紙までの工程途中で繊維が絡み付きフロックとなり易く、得られる不織布に繊維塊が発生する場合がある。
極細繊維の繊維径は、7μm以下であることが必要であり、7μmを超えると目的とする繊維密度が得られず、柔軟性や、風合いに劣った不織布となり、水流による交絡がし難くなり、その結果不織布の強度が低下する。また、繊維径は0.5〜7μmが好ましく、2〜7μmがより好ましい。0.5μm未満では、抄紙時の濾水性が悪く生産速度を速くできず、乾燥時間も長くなるなど生産性が劣る場合がある。
本発明では、極細繊維の繊維径は走査型電子顕微鏡の平面、又は断面の映像で確認できる直径で表すことができる。直径にバラツキがある場合は前記映像のうち例えば任意の100個の数平均値で表すことができる。繊維の断面形状が円形でない場合は、繊維断面と同じ面積を有する円の直径で表すことができる。なお、使用される原料の繊度(デシテックス)が分かっている場合は、次式で得られる繊維径で表すことができる。
D=(4d/π・10・ρ)0.5・10
(ここで、D:繊維径(μm),ρ:繊維を構成する高分子重合体の密度(g/cm),d:繊維の繊度(デシテックス),π:円周率)
極細繊維の繊維長は、1〜10mmであることが好ましく、1mm未満では不織布の強度が低下し、10mmを超えると抄紙時の水分散性が低下して、繊維のもつれが発生したり、原料繊維の製造工程時の切断不良などによる繊維塊が発生し易く良品質の製品を得ることができない場合がある。また極細繊維の繊維長は、2〜7mmがより好ましい。
また極細繊維の繊維長(L)と繊維径(D)の比(L/D)は、500〜2000が好ましく、500〜1500がより好ましい。500未満であると不織布の強度が低下する場合があり、2000を超えると繊維の分散性が低下する場合がある。
本発明に使用する潜在捲縮性繊維とは、抄紙する前の工程では捲縮を有しておらず、抄紙後または水流による交絡後の加熱処理によってコイル状あるいはスパイラル状などに捲縮を発現する繊維である。また潜在捲縮性繊維は捲縮発現により、5〜200個/インチの捲縮数を有することが好ましく、20〜100個/インチの捲縮数を有することがより好ましい。
前記潜在捲縮性繊維としては、融点の異なる2種類以上の樹脂が複合された複合繊維などが使用される。2種類の樹脂からなる複合繊維には、例えば偏芯型の芯鞘構造の複合繊維や、サイドバイサイド(貼り合わせ)型の複合繊維が好適に用いられる。融点の異なる樹脂の組合わせとしては、ポリエステル/共重合ポリエステル、ポリアミド/共重合ポリアミド、ポリエステル/共重合ポリアミド、ポリエステル/ポリプロピレン、ポリプロピレン/共重合ポリプロピレン、ポリプロピレン/ポリエチレンなど種々の合成樹脂を組合わせたものをあげることができる。
潜在捲縮性繊維の繊維径は7μmを超えることが必要であり、7μm以下であると抄紙時の濾水性が悪く生産速度を速くできず、乾燥時間も長くなるなど生産性が低下するという問題が生じる。また、潜在捲縮性繊維の繊維径は35μm以下であることが好ましく、25μm以下であることがより好ましい。35μmを超えると水流による交絡が不十分となり不織布の強度が低下したり、不織布の組織が粗くなり、風合いや柔軟性が低下する場合がある。
本発明では、潜在捲縮性繊維の繊維径は、前述の極細繊維の繊維径の場合と同様、走査型電子顕微鏡の平面、又は断面の映像で確認できる直径で表すことができる。直径にバラツキがある場合は前記映像のうち例えば任意の100個の数平均値で表すことができる。繊維の断面形状が円形でない場合は、繊維断面と同じ面積を有する円の直径で表すことができる。なお、使用される原料の繊度(デシテックス)が分かっている場合は、前述の式で得られる繊維径で表すことができる。
潜在捲縮性繊維の繊維長は、1〜20mmであることが好ましく、1mm未満では不織布の強度が低下し、20mmを超えると抄紙時の水分散性が低下して、繊維のもつれが発生したり、原料繊維の製造工程時の切断不良などによる繊維塊が発生し易く良品質の製品を得ることができない場合がある。また不織布の柔軟性や風合いのソフト性が低下する場合がある。また潜在捲縮性繊維の繊維長が10〜20mmであることが好ましく、得られる不織布の強度がより優れるという効果を有する。
本発明では、50〜99質量%の前記極細繊維と、50〜1質量%の前記潜在捲縮性繊維を原料繊維中に含むことが必要である。また70〜95質量%の極細繊維と、30〜5質量%の潜在捲縮性繊維を含むことが好ましい。本発明では、50〜99質量%の極細繊維を含むので高密度で柔軟性に優れ、風合いがソフトであり且つ高強度な不織布とすることができる。さらに50〜1質量%の潜在捲縮性繊維を含むので抄紙後または水流による交絡後の加熱処理によってコイル状あるいはスパイラル状などに捲縮を発現し(本発明では、潜在捲縮性繊維が捲縮を発現してなる繊維を捲縮繊維という場合がある)、捲縮発現によって不織布全体が収縮し繊維交点間の自由度が新たに生じる。ゆえに潜在捲縮性繊維を含むことにより極細繊維に起因する高密度で柔軟性に優れ、風合いがソフトであり且つ高強度な特性を阻害することなく、逆に極細繊維に起因するこれらの優れた特性、例えば強度特性を助長する効果がある。なお特開平11−131346号公報(特許文献2)のように、潜在捲縮性繊維ではない顕在捲縮繊維を抄紙して繊維間を交絡させた場合は、交絡によって繊維交点間の自由度が失われるので前述の極細繊維に起因する優れた特性を阻害してしまい本発明の不織布を得ることができない。
したがって、本発明では潜在捲縮性繊維の割合が1質量%未満であると、極細繊維に起因する優れた特性を助長する効果がなくなり、潜在捲縮性繊維の割合が50質量%を超えると、柔軟性や風合いのソフト性が低下するのみならず、不織布の均質性や緻密性が失われる。このように、本発明では潜在捲縮性繊維の割合が特定の範囲にある場合に、得られる不織布が高密度で柔軟性に優れ、風合いがソフトであり、且つ高強度に優れるという特徴を顕著に有する。
なお、前記極細繊維は前述の特定された範囲である限り、複数の極細繊維を選択することが可能であり、また前記潜在捲縮性繊維も前述の特定された範囲である限り、複数の潜在捲縮性繊維を選択することが可能である。
また本発明の主旨に反しない限り、不織布の強度などの特性を向上させる目的で、原料繊維は極細繊維と潜在捲縮性繊維以外にも、他の繊維を25〜1質量%含むことが可能である。例えば乾燥などの加熱処理によって他の繊維と接着する接着性繊維を15〜1質量%含むことにより、抄紙後の繊維シートを乾燥させて繊維同士を接着または仮に接着して繊維シートの形態を安定して保持させる効果がある。また繊維同士が接着した繊維シートに水流を噴射して不織布とした後、乾燥と同時に繊維同士を再接着させて、すなわち水流の噴射によって繊維の接着部分が剥離した繊維同士を再接着させて不織布の強度を向上させたり表面耐性を向上させる効果がある。接着性繊維の含有量はより好ましくは10〜1質量%であり、さらに好ましくは5〜1質量%であるが、接着性繊維の割合を少なくすることにより風合いを余り損なわずに不織布の強度を向上させたり表面耐性を向上させるという効果がある。なお前記接着性繊維としては例えば2成分以上の樹脂成分からなる芯鞘型の複合繊維やサイドバイサイド型複合繊維を用いることができる。
また例えば、繊維径が7μmを超え繊維長が10〜20mmの繊維であって、乾燥などの加熱処理によって他の繊維と接着することのない単一成分からなる繊維を1〜20質量%含むことも可能である。このような単一成分としては、例えばポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどのポリエステル系繊維、ナイロン6、ナイロン66などのポリアミド系繊維、ポリプロピレン、ポリエチレンなどのポリオレフィン系繊維、ポリアクリロニトリルなどのアクリル系繊維、ビニロン繊維および合成パルプなどの合成繊維に限らず、レーヨンなどの半合成繊維、あるいは綿またはパルプ繊維などの天然繊維をあげることができる。このように比較的繊維長の長い繊維を含むことによって、得られる不織布の風合いを柔軟に保ちながら、強度を向上させることも可能である。
本発明では、前記原料繊維を水中に分散させてスラリーを形成する。好ましくは分散剤などを添加した水中で前記原料繊維をパルパーなどによって分散させてスラリーを形成する。次いでスラリーを抄紙して繊維シートを形成する。繊維シートの形成は、従来より公知の湿式抄紙法を適用することができる。
前記湿式抄紙法には、例えば、傾斜式、長網式、丸網式の抄紙機などを用いて、スラリーから繊維シートを漉き上げる方法があり、前記繊維シートの面密度は10〜200g/m2が好ましく、20〜100g/m2がより好ましく、20〜80g/m2がさらに好ましい。10g/m2未満では、繊維シートが薄く又強度も低下するので、抄紙網から繊維シートが剥離し難く破損する場合がある。また、200g/m2を超えると、濾水性が低下して抄紙速度が著しく低下する場合がある。
本発明では、前記原料繊維は、7μm以下の繊維径を有する50〜99質量%の極細繊維に対して、7μmを超える繊維径を有する50〜1質量%の潜在捲縮性繊維を含むので、スラリーを抄紙する際に原料繊維の分散性と濾水性に非常に優れるという効果がある。すなわち潜在捲縮性繊維の割合が1質量%未満であると、原料繊維の分散性や濾水性が悪くなるという問題が生ずる。
本発明では、前記繊維シートを一旦乾燥してから、或いは乾燥させずにそのままの状態で、1枚または複数枚を重ねた状態で、繊維シートに水流を噴射して繊維シートに含まれる繊維を相互に3次元的に交絡して交絡シートを形成する。
前記水流による交絡は、公知の方法で行うことが可能であり、例えば金属性ネットやプラスチックネットなどの多孔性支持体上に前記繊維シートを載置して、その上方から繊維シートに向けて、高圧のノズルから水流を噴射する方法を適用することができる。また多孔性支持体として抄紙網を兼用することも可能である。また例えば、繊維シートに接着性の繊維が含まれていない場合、一旦乾燥してから水流による交絡を行おうとすると、繊維シートを巻き取ることが困難になることがある。この場合、抄紙網から繊維シートを剥離した後乾燥せずに直ちに水流交絡工程へ移送することも好ましい。また抄紙網に、低い面密度を有する織編物や不織布などの布帛を予め載置しておき、その上に抄紙して繊維シートを形成し、乾燥後繊維シートを布帛より剥離してから、剥離した繊維シートに水流による交絡を行うことも可能である。
前記水流の発生に用いる好ましいノズルとしては、例えばノズル孔が一列又は複数列に配置されたノズルがあり、ノズル孔の列は生産方向と交差する方向に配置される。ノズル孔の孔径は直径0.05〜0.5mmが好ましく、0.1〜0.3mmがより好ましく、
0.1〜0.18mmがさらに好ましい。また隣り合うノズル孔の間隔は0.2〜4mmが好ましく、0.3〜3mmが好ましく、0.4〜2mmがさらに好ましい。ノズルから噴射される水流の形状は柱状が好ましいが、ノズル孔から離れるほど水流の太さが広がるような円錐形状も可能である。円錐形状である場合は、円錐の垂線と円錐の斜面とがなす角度が10度以内が好ましく、5度以内がさらに好ましい。またノズル内の圧力は好ましくは0.1〜15MPaである。また前記ノズルを複数配置しておくことも可能であるが、エネルギー消費効率から考慮すると全て合わせて10台以内のノズル台数で噴射処理することが好ましい。
本発明では、前記交絡シートを加熱処理して潜在捲縮性繊維の捲縮を発現させて不織布とする。加熱方法としては、例えば交絡シートをコンベアーに載置して熱風吹き出し型の乾燥機に入れて潜在捲縮性繊維の捲縮発現温度以上の温度で連続的に乾燥と同時に捲縮を発現させる方法がある。また例えば交絡シートをエアースルー型の乾燥機に入れて捲縮発現温度以上の温度で連続的に乾燥と同時に捲縮を発現させる方法がある。またより確実に捲縮を発現させようとするならば、例えば交絡シートを捲縮発現温度未満の温度で任意の乾燥機で一旦乾燥させて乾燥交絡シートとしてから、乾燥交絡シートを空中に浮かせるようにして工程テンションがあまり掛からないようにして、加熱処理する方法も可能である。また例えばピンテンター装置を用いてオーバーフィードと巾収縮をかけながら連続的に加熱処理する方法も可能である。
なお潜在捲縮性繊維の捲縮発現に関しては、抄紙後の繊維シートを乾燥させる際に捲縮を発現させてしまうことも可能ではあるが、捲縮発現によって生じた繊維間の自由度がその後の水流による交絡工程で失われてしまうことがあるので、この場合注意が必要である。また前記交絡シートに接着性繊維が含まれる場合、接着性繊維による繊維の接着を潜在捲縮性繊維の捲縮発現よりも優先させるならば、接着性繊維の融点温度を捲縮発現温度以下とする方法があり、逆に潜在捲縮性繊維の捲縮発現を接着性繊維による繊維の接着よりも優先させるならば、捲縮発現温度を接着性繊維の融点以下とする方法がある。
本発明では交絡シートを加熱処理して潜在捲縮性繊維の捲縮を発現させることによって、不織布全体が収縮し繊維交点間の自由度が新たに生じる。そして潜在捲縮性繊維の捲縮発現により、極細繊維に起因する高密度で柔軟性に優れ、風合いがソフトであり且つ高強度であるという特性を維持ないし助長して、例えばさらに高強度な不織布とすることができる。
また前記繊維シート形成後の乾燥処理において、あるいは前記交絡シートの加熱処理において、例えば繊維シートまたは交絡シートに含まれる繊維全てが他の繊維と接着しないような加熱処理温度で行なうことも好ましく、すなわち原料繊維の繊維表面に存在する樹脂成分の融点のうち最も低い融点未満で加熱処理することも好ましく、柔軟性や風合い特性が極めて優れた不織布とすることができる。
そのためには、加熱処理工程において160℃未満の熱処理でも溶融することのない160℃以上の融点を有する繊維を使用することが好ましい。例えば極細繊維が融点215℃のナイロン繊維であり、潜在捲縮性繊維が融点260℃のポリエステル/融点165℃のポリプロピレンからなる繊維であれば、加熱蒸気を熱源としたドライヤーにより160℃未満で加熱処理させて柔軟性や風合い特性に優れた不織布を得ることができる。また加熱処理工程において180℃未満の熱処理でも溶融することのない180℃以上の融点を有する繊維を使用することがさらに好ましい。例えば極細繊維が融点215℃のナイロン繊維であり、潜在捲縮性繊維が融点260℃のポリエステル/融点215℃のナイロンからなる繊維であれば、燃焼ガスを熱源としたピンテンター装置により180℃未満で加熱処理させて柔軟性や風合い特性に優れた不織布を得ることができる。
以上のようにして、構成繊維が湿式抄紙法によりシート化され、水流で3次元的に交絡された不織布であって、前記不織布は極細繊維を50〜99質量%と、潜在捲縮性繊維が捲縮を発現してなる捲縮繊維を50〜1質量%含み、前記極細繊維の繊維径が7μm以下であり、前記捲縮繊維の繊維径が7μmを超えることを特徴とする本発明の不織布を得ることができる。
本発明の不織布においては、前述の製造方法で説明したように、潜在捲縮性繊維の繊維長は、1〜20mmであることが好ましく、1mm未満では不織布の強度が低下し、20mmを超えると抄紙時の水分散性が低下して、繊維のもつれが発生したり、原料繊維の切断不良などによる繊維塊が発生し易く高品質の製品を得ることができない場合がある。また不織布の柔軟性や風合いのソフト性が低下する場合がある。また、潜在捲縮性繊維の繊維長が10〜20mmである場合は強度がより優れるという効果を有する。
したがって潜在捲縮性繊維が捲縮を発現してなる捲縮繊維の繊維長もまた1〜20mmであることが好ましい。また、捲縮繊維の繊維長が10〜20mmである場合は強度がより優れるという効果を有する。
また特に柔軟性や風合い特性の優れた不織布が要求される場合は、本発明の不織布を構成する繊維は全てが乾燥などの加熱処理によって他の繊維と接着していない繊維であるか、または乾燥などの加熱処理によって溶融履歴を有していない繊維であることが好ましい。例えば、乾燥などの加熱処理によって一旦他の繊維と接着して、その後水流による交絡工程で接着が剥離した場合に生ずるような溶融履歴を有していない繊維であることが好ましい。このような溶融履歴は、例えば実態顕微鏡、走査型電子顕微鏡などの映像により確認することができる。このように、不織布を構成する繊維の全てが他の繊維と接着していない繊維であるか、または乾燥などの加熱処理によって溶融履歴を有していない繊維であれば、柔軟性や風合い特性が極めて優れた不織布となる。なお本発明では構成繊維が2成分以上の高分子重合体からなる複合繊維である芯鞘型繊維、サイドバイサイド型繊維などを含んでいたとしても、繊維表面に存在する全ての成分が乾燥などの加熱処理によって接着または溶融履歴を有していなければ適用可能である。
このような不織布を得るには、例えば前述の製造方法で説明したように、前記繊維シート形成後の乾燥処理において、或いは前記不織布形成時の乾燥処理において、例えば繊維シートに含まれる繊維全てが他の繊維と接着しないような加熱処理温度で行なうことにより、すなわち原料繊維の繊維表面に存在する樹脂成分の融点のうち最も低い融点未満で加熱処理することにより得ることができる。
本発明の不織布においては、前述の製造方法で説明したように、前記繊維シートの面密度は10〜200g/m2が好ましく、20〜100g/m2がより好ましく、20〜80g/m2がさらに好ましい。10g/m2未満では、繊維シートが薄く又強度も低下するので、抄紙網から繊維シートが剥離し難く破損する場合がある。また、200g/m2を超えると、濾水性が低下して抄紙速度が著しく低下する場合がある。
したがって、前記繊維シートに含まれる潜在捲縮性繊維が捲縮を発現してなる捲縮繊維を含む本発明の不織布の面密度もまた、10〜200g/m2が好ましく、20〜100g/m2がより好ましく、20〜80g/m2がさらに好ましい。
また本発明の不織布の柔軟性の指標となる剛軟度の値は好ましくは50mm未満であり、より好ましくは45mm未満であり、さらに好ましくは40mm未満である。なお剛軟度はJIS L1096に記載される、剛軟性8.19.1A法(45度カンチレバー法)に準じて測定した値を用い、タテ方向とヨコ方向の平均値を用いるものとする。また本発明の不織布の引張強度の値は好ましくは20N以上であり、より好ましくは30N以上であり、さらに好ましくは40N以上である。なお引張強度の値はJIS L1096−1999(一般織物試験方法)に記載される、8.12.1A法(ストリップ法)に準じて測定した値を用いるものとする。また試験片の巾は5cm、長さ20cm、つかみ間隔10cm、引張速度20cm/分として、タテ方向とヨコ方向の平均値を用いるものとする。
本発明の不織布は、高密度で柔軟性に優れ、風合いがソフトであり、且つ高強度であるという特徴を有している。また、抄紙時の分散性と濾水性に優れ、エネルギー消費効率と生産性に優れ、生産コストの低い製品として提供が可能になるという優れた特徴を有している。
本発明の不織布の用途としては、前記特徴を生かした例えば、肌当て用基材、マスク、貼付剤用基材、化粧落とし用基材、衣料用芯地、ワイパー、または合皮用基材などがあげられる。
以下、本発明の実施例につき説明するが、これは発明の理解を容易とするための好適例に過ぎず、本発明はこれら実施例の内容に限定されるものではない。
(試験方法)
水流交絡時の繊維シートの進行方向をタテ方向として、直交する方向をヨコ方向とすると、実施例および比較例では引張強度、引張伸度、および剛軟度の値は、タテ方向とヨコ方向の平均値を用いている。
引張強度および引張伸度はJIS L1096−1999(一般織物試験方法)に記載される、8.12.1A法(ストリップ法)に準じて測定した。ただし、試験片の巾は5cm、長さ20cm、つかみ間隔10cm、引張速度20cm/分とした。
厚さはJIS L1085−1998(不織布しん地試験方法)に記載される、6.1.2A法に準じて測定した。ただし、荷重は2.0kPaとした。
剛軟度はJIS L1096に記載される、剛軟性8.19.1A法(45度カンチレバー法)に準じて測定した。
濾水性は、手漉き装置の抄紙ボックスで繊維濃度が0.025%のスラリーが抄紙ボックス内を低下する速度を濾水速度とし、濾水速度が速い場合に(濾水速度の値が高い場合に)濾水性が優れるものとした。
(実施例1)
極細繊維として、図1の(b)に示す断面形態を有する3.3デシテックスの複合繊維(繊維径18μm、繊維長5mm、樹脂成分1はポリエチレンテレフタレート樹脂、樹脂成分2は6ナイロン樹脂)と、潜在捲縮性繊維として2.2デシテックスの複合繊維(繊維径14μm、繊維長10mm、サイドバイサイド型で第1樹脂成分はポリエチレンテレフタレート樹脂、第2樹脂成分は変性ポリエステル樹脂)とを、極細繊維が95質量%で潜在捲縮性繊維が5質量%になるように、分散剤を含む水中に分散させてスラリーを形成した。このとき前記3.3デシテックスの複合繊維は最大11個の部分に離解し、離解した各繊維(平均繊維径5.5μm)は断面が扁平形状の極細繊維となった。次いで、このスラリーを手漉き装置で抄紙して繊維シートとした後110℃で乾燥させた。
次いで、乾燥した繊維シートを80メッシュの金網の上に載置した。次いで、孔径が0.13mm、孔間隔が0.6mmで直線状にノズル孔が配列されたノズルを用いて、繊維シートの上方から繊維シートに向けて、ノズル内圧力3MPaにて柱状水流を噴射した。次いで、繊維シートを反転して繊維シートの反対面にも同様にして、ノズル内圧力4MPaにて2回目の柱状水流を噴射して交絡シートを形成した。次いで、交絡シートをピンテンターにタテ方向とヨコ方向に捲縮が十分に発現できる程度のゆるみを持たせて保持し、150℃のドライヤーで乾燥させると共に潜在捲縮性繊維の捲縮を発現させて、構成繊維が水流で3次元的に交絡された不織布を得た。この不織布の断面を走査型電子顕微鏡の映像で観察すると、不織布に含まれる極細繊維の偏平度a/bは12であり、不織布を構成する各繊維は、加熱乾燥処理によって他の繊維と接着しておらず、溶融履歴を有していないことが確かめられた。
(実施例2〜4)
実施例1において、極細繊維の質量%:潜在捲縮性繊維の質量%の比率をそれぞれ、80:20、70:30、60:40、50:50としたこと以外は、実施例1と同様にして、実施例2〜5の不織布を得た。
(実施例6〜8)
実施例1において、極細繊維の質量%:潜在捲縮性繊維の質量%の比率を70:30としたこと、および潜在捲縮性繊維の繊維長をそれぞれ、5mm、15mm、20mmとしたこと以外は、実施例1と同様にして、実施例6〜8の不織布を得た。
(実施例9〜10)
実施例1において、極細繊維と潜在捲縮性繊維に加えて接着性繊維として0.8デシテックスのポリオレフィン系芯鞘型複合繊維(繊維径11μm、繊維長5mm、芯部が融点165℃のポリプロピレン、鞘部が融点130℃のポリエチレン)を用いたこと、および極細繊維の質量%:潜在捲縮性繊維の質量%:接着性繊維の質量%の比率をそれぞれ、70:25:5、70:20:10としたこと以外は、実施例1と同様にして、実施例9〜10の不織布を得た。得られた不織布は接着性繊維が溶融して他の繊維と接着していた。
(比較例1)
実施例1において、潜在捲縮性繊維を用いなかったこと、すなわち極細繊維の質量%:潜在捲縮性繊維の質量%の比率を、100:0としたこと以外は、実施例1と同様にして、比較例1の不織布を得た。
(比較例2)
実施例1において、極細繊維を用いなかったこと、すなわち極細繊維の質量%:潜在捲縮性繊維の質量%の比率を0:100としたこと以外は実施例1と同様にして抄紙を行い、乾燥した繊維シートを得た。次いで、この繊維シートに実施例1と同様にして柱状水流を噴射したところ、柱状水流によって繊維が80メッシュの金網に絡み付いてしまい繊維シートを金網から剥離することができなかった。このように潜在捲縮性繊維のみでは繊維同士の交絡が不充分であり不織布を作製することができなかった。
(比較例3)
実施例1において、極細繊維の質量%:潜在捲縮性繊維の質量%の比率を40:60としたこと以外は、実施例1と同様にして不織布を得ようとした。しかし、潜在捲縮性繊維の比率が大きかったので、繊維組織が粗くなり、本発明の目的とする緻密な繊維構造の不織布を得ることができなかった。
(比較例4)
実施例1において、極細繊維と潜在捲縮性繊維を用いずに、繊維径が7μmを超える接着性を有しない繊維(非接着性太径繊維)として、0.6デシテックスのポリエチレンテレフタレート繊維(繊維径7.5μm、繊維長10mm)のみを用いたこと以外は、実施例1と同様にして、比較例4の不織布を得た。この不織布は用いた繊維の繊維径が大きく接着もしていなかったので剛軟度が高く(風合いが硬く)、引張強度も低い値を示した。
実施例1〜8の結果を表1に示す。また実施例9〜10の結果と比較例1〜4の結果を表2に示す。
表1
Figure 2005330612
表2
Figure 2005330612
実施例1〜8を潜在捲縮性繊維を用いない比較例1と対比すると、濾水性が良く(濾水速度が速く)生産コストの低い不織布を生産できることが分かる。また、実施例1〜10の不織布を極細繊維も潜在捲縮性繊維も用いない比較例4の不織布と対比すると、引張強度が高く且つ剛軟度の値が低い(風合いがソフトである)ことが分かる。また潜在捲縮性繊維の繊維長が長い実施例1〜5、および実施例7〜8では引張強度の値が高くなる効果が得られた。また、接着性繊維を用いた実施例9〜10では、剛軟度の値がやや高くなる(風合いがやや硬くなる)ものの引張強度が高くなる効果が得られた。
(a)は本発明で用いる極細繊維の断面の例、(b)は本発明で用いる極細繊維の断面の別の例、(c)は本発明で用いる極細繊維の断面の別の例、(d)は本発明で用いる極細繊維の断面の別の例を示す図である。
符号の説明
1.樹脂成分
2.他の樹脂成分

Claims (5)

  1. 構成繊維が湿式抄紙法によりシート化され、水流で3次元的に交絡された不織布であって、前記不織布は極細繊維を50〜99質量%と、潜在捲縮性繊維が捲縮を発現してなる捲縮繊維を50〜1質量%含み、前記極細繊維の繊維径が7μm以下であり、前記捲縮繊維の繊維径が7μmを超えることを特徴とする不織布。
  2. 前記極細繊維の繊維長が1〜10mmであることを特徴とする請求項1に記載の不織布。
  3. 前記捲縮繊維の繊維長が1〜20mmであることを特徴とする請求項1または2に記載の不織布。
  4. 前記極細繊維の断面が偏平形状であり、長軸の長さをaとし短軸の長さをbとすると、a/bの値が4以上であることを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の不織布。
  5. 繊維径が7μm以下の極細繊維と繊維径が7μmを超える潜在捲縮性繊維とを含む原料繊維を、前記極細繊維が50〜99質量%、前記潜在捲縮性繊維が50〜1質量%の割合で水中に分散させてスラリーを形成し、次いでスラリーを抄紙して繊維シートを形成し、次いで繊維シートに水流を噴射して繊維を3次元的に交絡した交絡シートを形成し、次いで交絡シートを加熱処理して潜在捲縮性繊維の捲縮を発現させることを特徴とする不織布の製造方法。
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