JP2005325986A - 動力伝達継手およびこれを含む電動パワーステアリング装置 - Google Patents

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周三 平櫛
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Abstract

【課題】オルダム継手の機能と自在継手の機能を兼ね備え、連結される軸間の偏心や偏角(ミスアライメント)を良好に吸収できる動力伝達継手を提供すること。
【解決手段】継手29は、電動モータの出力軸に設けられる第1の端部材42と、ウォーム軸に設けられる第2の端部材43と、第1および第2の端部材42,43間に介在する中間部材44とを備えている。第1の端部材42は、第1の滑り方向L1に延びる第1のスライド溝55および第1の凹部71を備える。第2の端部材43は、第2の滑り方向L2に延びる第2のスライド溝64および第2の凹部72を備える。中間部材44は、第1および第2の凹部71,72に受けられる球面形成部材53と、対応する第1および第2のスライド溝55,64に係合する第1および第2の突起板56,65とを備えている。
【選択図】 図4

Description

本発明は、動力伝達継手およびこれを含む電動パワーステアリング装置に関する。
自動車用の電動パワーステアリング装置には、減速機が用いられている。例えば、コラム型電動パワーステアリング装置では、ウォーム減速機が用いられている。この場合、電動モータの出力軸の回転をウォーム軸およびウォームホイールを介して減速することで、モータの出力を増幅して操舵機構に伝達し、ステアリング操作をトルクアシストするようにしている。
従来、上記出力軸とウォーム軸とを連結する筒状の継手において、ウォーム軸の端部をセレーション嵌合により連結する継手がある。しかしながら、セレーション嵌合を用いる場合、出力軸とウォーム軸との芯ずれや傾き等のミスアライメントをほとんど吸収することができない。このため、セレーション嵌合部分にガタを設ける必要があるが、そうすると、ガタによる騒音が発生するという問題があった。
一方、この対策として電動モータの出力軸とウォーム軸との間をオルダム継手を用いて連結する場合がある(例えば、特許文献1,2参照)。
特開2002−295502号公報 特開2003−83399号公報
オルダム継手であれば、電動モータの出力軸とウォーム軸との芯ずれを吸収することができる。しかしながら、この種のオルダム継手でも、上記出力軸とウォーム軸との傾きを許容することには難があり、電動モータ等に不要な負荷がかかるおそれがある。
同様の課題は、電動パワーステアリング装置の減速機に用いられる継手に限らず、他の一般の継手にも存在する。
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、連結される軸間の芯ずれや傾き等のミスアライメントを良好に吸収でき、しかも騒音の少ない動力伝達継手およびこれを含む電動パワーステアリング装置を提供することを目的とする。
上記目的を達成するため、本発明は、相対向する第1および第2の軸の端部にそれぞれ設けられる第1および第2の端部材と、第1および第2の端部材間に介在する中間部材と、第1および第2の端部材をそれぞれ中間部材に連結するための第1および第2の滑り対偶とを備え、第1および第2の滑り対偶の滑り方向は相異なり、第1の滑り対偶は、中間部材に設けられる第1のスライダと、第1の端部材に設けられ第1のスライダに係合する第1のスライド溝とを含み、第2の滑り対偶は、中間部材に設けられる第2のスライダと、第2の端部材に設けられ第2のスライダに係合する第2のスライド溝とを含み、中間部材は、第1および第2のスライダを一体に連結する球面形成部材を含むことを特徴とする動力伝達継手を提供するものである。
本発明によれば、中間部材は、第1および第2の端部材に対して二重すべり子としての機能を発揮することができる。その結果、通常のオルダム継手と同様にして、第1および第2の軸の軸芯の相対的なずれ(偏心)を良好に吸収することができる。また、第1および第2の軸の軸芯が相対的に傾いた(偏角した)場合、中間部材の球面形成部材は、対応する第1および第2の端部材と相対的に回転移動(自転)し、その結果、通常の自在継手と同様にして、第1および第2の軸の軸芯の相互の傾きを良好に吸収することができる。このとき、第1および第2のスライダは、球面形成部材と共に回転移動し、第1および第2の端部材の対応する第1および第2のスライド溝との係合状態を維持することができる。これにより、オルダム継手としての機能を維持することができる。その結果、オルダム継手としての機能と自在継手としての機能とを同時に発揮することができ、第1および第2の軸の軸芯間の偏心および偏角(ミスアライメント)を良好に吸収することができる。しかも、第1および第2の軸間に不要な負荷がかかることを防止できて騒音を低減できる。
上記第1の端部材は、第1の滑り対偶の滑り方向への球面形成部材の移動を許容しつつ受ける第1の凹部を含み、上記第2の端部材は、第2の滑り対偶の滑り方向への球面形成部材の移動を許容しつつ受ける第2の凹部を含むことが好ましい。これにより、球面形成部材の移動を許容しつつ確実に保持することができる。
上記第1および第2のスライダはそれぞれ球面形成部材の表面に沿って延びる円弧状の突起板を含むことが好ましい。この場合、第1および第2のスライダは、対応する第1および第2のスライド溝に対して回転移動しても、これら第1および第2のスライド溝の底面と接触することを防止できる。
上記中間部材は合成樹脂成形品を含むことが好ましい。この場合、騒音をより低減することができると共に、製造し易い。
また、本発明は、電動モータの動力を伝動装置を介して操舵機構に伝達して操舵補助する電動パワーステアリング装置において、上記伝動装置は、電動モータの出力軸に上記動力伝達継手を介して連結されるウォーム軸と、ウォーム軸に噛み合い操舵機構に繋がるウォームホイールとを含む場合がある。この場合、電動モータの出力軸とウォーム軸とを厳密に芯合わせする必要が無く、組立が容易で、しかも静粛性に優れた装置を実現することができる。
本発明の好ましい実施の形態を添付図面を参照しつつ説明する。
図1は、本発明の一実施の形態の電動パワーステアリング装置1の概略構成を示す模式図である。図1を参照して、電動パワーステアリング装置1は、ステアリングホイール等の操舵部材2に連結されているステアリングシャフト3と、ステアリングシャフト3に自在継手4を介して連結される中間軸5と、この中間軸5に自在継手6を介して連結されるピニオン軸7と、ピニオン軸7の先端部に設けられたピニオン8に噛み合うラック9を形成して車両の左右方向に延びるラック軸10とを有している。
ラック軸10の両端部にはそれぞれタイロッド11が連結されており、各タイロッド11は、対応するナックルアーム(図示せず)を介して対応する車輪12に連結されている。操舵部材2が操作されてステアリングシャフト3が回転されると、この回転は中間軸5等を介してピニオン8に伝達され、ピニオン8およびラック9によって、車両の左右方向に沿うラック軸10の直線運動に変換される。これにより車輪12の転舵が達成される。
ステアリングシャフト3は、操舵部材2に連なる入力軸としての第1の操舵軸13と、自在継手4に連なる出力軸としての第2の操舵軸14とを有している。これら第1および第2の操舵軸13,14は、トーションバー15を介して同軸上に互いに連結されている。
トーションバー15を介する第1の操舵軸13と第2の操舵軸14との相対回転変位量を検出するトルクセンサ16が設けられている。このトルクセンサ16の検出信号は、制御部17に与えられる。制御部17は、トルクセンサ16からの検出信号に基づいて操舵部材2に加えられた操舵トルクを算出する。そして、算出した操舵トルクや車速センサ22からの車速検出信号等に基づいて、ドライバ18を介して操舵補助用の電動モータ19を駆動制御する。これにより、電動モータ19が駆動し、電動モータ19の出力回転(動力)は、伝動装置としての減速機構であるウォームギヤ機構20を介して第2の操舵軸14へ伝達される。第2の操舵軸14に伝えられた出力回転は、さらに中間軸5等を介して、上記ラック軸10、タイロッド11およびナックルアーム等を含む操舵機構21に伝えられ、運転者の操舵が補助される。
図2は、電動パワーステアリング装置1の要部の一部断面図である。図2を参照して、本電動パワーステアリング装置1には、ハウジング23が設けられている。このハウジング23は、電動モータ19を取り付けると共に、ウォームギヤ機構20を収容している。
電動モータ19は、モータハウジング24と、モータハウジング24から突出する駆動軸としての第1の軸である出力軸25とを有している。モータハウジング24は、ハウジング23の環状フランジ部26に固定されている。なお、以下では、出力軸25の軸方向Sを、単に「軸方向S」という。
ウォームギヤ機構20は、被動軸としての第2の軸であるウォーム軸27と、ウォームホイール28とを備えている。
ウォーム軸27は、電動モータ19の出力軸25と軸方向Sに相対向している。このウォーム軸27は、動力伝達継手としての継手29を介して電動モータ19の出力軸25に動力伝達可能に連結されている。
上記の構成により、電動モータ19の出力軸25、継手29およびウォーム軸27を含む動力伝達機構30が構成されている。
ウォーム軸27は、軸方向Sに並ぶウォーム歯部31および被支持部32を含む中間部と、被支持部32に連なる第1の端部34と、ウォーム歯部31に連なる第2の端部33とを備えている。第1の端部34は、継手29に連結されている。被支持部32および第2の端部33はそれぞれ、対応する軸受35,36を介して、ハウジング23の対応する支持孔37,38に回転自在に支持されている。
ウォームホイール28は、外周に歯部39を有する合成樹脂製の環状歯体40と、環状歯体40と一体に形成された金属製の環状保持体41とを含む。環状歯体40の歯部39は、ウォーム軸27のウォーム歯部31と動力伝達可能に噛み合っている。環状保持体41は、第2の操舵軸14に一体回転可能且つ軸方向移動不能に連結されている。ウォームホイール28は、第2の操舵軸14等を介して操舵機構21(図1参照)に繋がっている。
図3は、継手29を分解した状態を示す一部断面側面図である。図4は、継手29の分解斜視図である。図3および図4を参照して、本実施の形態の特徴とするところは、継手29に、オルダム継手としての機能と自在継手としての機能とを持たせ、電動モータ19の出力軸25の軸線C1(軸芯)とウォーム軸27の軸線C2(軸芯)との間に生じる偏心および偏角(ミスアライメント)を良好に吸収できるようにしている点にある。
具体的には、継手29は、電動モータ19の出力軸25の一端部に一体回転可能に設けられる第1の端部材42と、ウォーム軸27の第1の端部34に一体回転可能に設けられる第2の端部材43と、中間部材44と、第1および第2の滑り対偶45,46とを備えている。
第1の端部材42は、例えば金属材により形成されており、電動モータ19の出力軸25と同軸上に配置されている。この第1の端部材42は、主体部47と、連結部48とを備えている。主体部47は、例えば円柱形形状に形成されている。連結部48は、主体部47よりも小径の円柱形形状に形成され、主体部47の一端面に突出して設けられている。連結部48の一端面には嵌合孔49が形成されており、電動モータ19の出力軸25の一端部が嵌め合わされている。これら嵌合孔49と出力軸25とは、互いにセレーション嵌合している。
第2の端部材43は、例えば金属材により形成されており、ウォーム軸27と同軸上に配置されている。この第2の端部材43は、主体部50と、連結部51とを備えている。主体部50は、例えば円柱形形状に形成されている。連結部51は、主体部50よりも小径の円柱形形状に形成され、主体部50の一端面に突出して設けられている。連結部51の一端面には嵌合孔52が形成されており、ウォーム軸27の第1の端部34が嵌め合わされている。これら嵌合孔52と第1の端部34とは、互いにセレーション嵌合している。
中間部材44は、例えば合成樹脂成形品により形成されており、第1および第2の端部材42,43間に介在している。この中間部材44は、中心Pを有する球面形成部材53と、球面形成部材53に一体に連結された第1および第2のスライダとしての第1および第2の突起板56,65とを備えている。なお、以下では、球面形成部材53の径方向R1を単に「径方向R1」といい、球面形成部材53の周方向R2を単に「周方向R2」という。
第1の滑り対偶45は、第1の端部材42と、中間部材44とを第1の滑り方向L1(図3において、紙面に垂直な方向)にスライド可能且つ動力伝達可能に連結するためのものである。この第1の滑り対偶45は、前述した中間部材44の第1の突起板56と、第1の端部材42に設けられ第1の突起板56と第1の滑り方向L1にスライド可能に係合する第1のスライド溝55とを含んでいる。
第1の突起板56は、球面形成部材53と単一の部材により一体に形成され、球面形成部材53と同心の円弧状をなす。第1の突起板56は、球面形成部材53の表面57の略半周に沿って形成される。第1の突起板56の厚みは、第1のスライド溝55の溝幅よりも若干薄くされている。
第1の突起板56は、その厚み方向に相対向する互いに平行な一対の平坦面からなる動力伝達面59,60を有している。
第1のスライド溝55は、第1の端部材42の主体部47の他端面に形成されており、主体部47を直径方向に貫通している。第1のスライド溝55の長手方向が、第1の滑り方向L1とされている。第1のスライド溝55の相対向する一対の内側面は、互いに平行な一対の平坦面からなる動力伝達面61,62を有している。
第1のスライド溝55には、第1の突起板56が嵌め込まれている(図5参照)。第1の突起板56の動力伝達面59,60と、第1のスライド溝55の対応する動力伝達面61,62との係合により、第1のスライド溝55と第1の突起板56との間で動力伝達が行われる。また、第1の突起板56は、第1のスライド溝55に対して、第1の滑り方向L1に移動(スライド)可能且つ、中心P回りに回転(自転)可能となっている。
再び図3および図4を参照して、第2の滑り対偶46は、第2の端部材43と、中間部材44とを第2の滑り方向L2(図3において、上下方向)にスライド可能且つ動力伝達可能に連結するためのものである。なお、第1および第2の滑り方向L1,L2は相異なっており、本実施の形態では、これら第1および第2の滑り方向L1,L2は、軸方向Sから見て互いに直交している。
この第2の滑り対偶46は、前述した中間部材44の第2の突起板65と、第2の端部材43に設けられ第2の突起板65と第2の滑り方向L2にスライド可能に係合する第2のスライド溝64とを含んでいる。
第2の突起板65は、第1の突起板56と同様の形状に形成されている。すなわち、第2の突起板65は、球面形成部材53と単一の部材により一体に形成され、球面形成部材53と同心の円弧状をなす。第2の突起板65は、球面形成部材53の表面57の略半周に沿って形成される。第2の突起板65の厚みは、第2のスライド溝64の溝幅よりも若干薄くされている。
第2の突起板65は、その厚み方向に相対向する互いに平行な一対の平坦面からなる動力伝達面67,68を有している。
第2のスライド溝64は、第2の端部材43の主体部50の他端面に形成されており、主体部50を直径方向に貫通している。第2のスライド溝64の長手方向が、第2の滑り方向L2とされている。第2のスライド溝64の相対向する一対の内側面は、互いに平行な一対の平坦面からなる動力伝達面69,70を有している。
第2のスライド溝64には、第2の突起板65が嵌め込まれている(図5参照)。第2の突起板65の動力伝達面67,68と、第2のスライド溝64の対応する動力伝達面69,70との係合により、第2のスライド溝64と第2の突起板65との間で動力伝達が行われる。また、第2の突起板65は、第2のスライド溝64に対して、第2の滑り方向L2に移動(スライド)可能、且つ中心P回りに回転(自転)可能となっている。
図3および図4を参照して、第1の端部材42の主体部47の他端面には、第1の滑り方向L1への球面形成部材53の移動を許容しつつ受ける第1の凹部71が形成されている。また、第2の端部材43の主体部50の他端面には、第2の滑り方向L2への球面形成部材53の移動を許容しつつ受ける第2の凹部72が形成されている。これら球面形成部材53ならびに第1および第2の凹部71,72を含む球面継手が形成される。これにより、球面形成部材53は、第1および第2の端部材42,43に対して、対応する第1および第2の滑り方向L1,L2に移動可能、且つ中心P回りに回転(自転)可能となっている。
第1の凹部71は、第1のスライド溝55をまたいで設けられている。具体的には、第1の凹部71は、第1の端部材42の主体部47の他端面および第1のスライド溝55の動力伝達面61,62の第1の滑り方向L1の中間部を切り欠くことで設けられており、第1のスライド溝55を中心とする対称形をなしている。
この第1の凹部71は、球面形成部材53の表面57の形状に対応する形状に形成されると共に、第1の滑り方向L1を長手にして延びている。第1の端部材42の主体部47の他端面から第1の凹部71の底面までの深さは、この他端面から第1のスライド溝55の底面までの深さよりも浅くされている。第1の凹部71は、球面形成部材53の表面57の概ね半分を受けることが可能となっている。
上記の構成により、第1の突起板56が第1のスライド溝55に係合した状態において、球面形成部材53は、第1の凹部71上を、第1の滑り方向L1に転がり摺動接触(転がり接触および滑り接触の少なくとも一方を含む接触)することができる。
第2の凹部72は、第1の凹部71と同様に形成されている。すなわち、第2の凹部72は、第2のスライド溝64をまたいで設けられている。具体的には、第2の凹部72は、第2の端部材43の主体部50の他端面および第2のスライド溝64の動力伝達面69,70の第2の滑り方向L2の中間部を切り欠くことで設けられており、第2のスライド溝64を中心とする対称形をなしている。
この第2の凹部72は、球面形成部材53の表面57の形状に対応する形状に形成されると共に、第2の滑り方向L2を長手にして延びている。第2の端部材43の主体部50の他端面から第2の凹部72の底面までの深さは、この他端面から第2のスライド溝64の底面までの深さよりも浅くされている。第2の凹部72は、球面形成部材53の表面57の概ね半分を受けることが可能となっている。
上記の構成により、第2の突起板65が第2のスライド溝64に係合した状態において、球面形成部材53は、第2の凹部72上を、第2の滑り方向L2に転がり摺動接触(転がり接触および滑り接触の少なくとも一方を含む接触)することができる。
以上が継手29の概略構成である。次に、本電動パワーステアリング装置1の主な動作について説明する。
図2に示すように、電動モータ19の出力軸25の軸線C1とウォーム軸27の軸線C2とが一致している場合には、継手29の第1の端部材42、中間部材44および第2の端部材43は、互いに一致した軸線C1,C2上を回転する。
一方、図5を参照して、電動モータ19の出力軸25の軸線C1とウォーム軸27の軸線C2とが互いに偏心(芯ずれ)している場合には、中間部材44は、第1および第2の端部材42,43に対して二重すべり子としての機能を発揮し、通常のオルダム継手と同様にして、上記の偏心を良好に吸収することができる。
具体的には、第1の突起板56の動力伝達面59,60は、第1のスライド溝55の対応する動力伝達面61,62に対して、第1の滑り方向L1にスライドしながら動力を伝達する。同様に、第2の突起板65の動力伝達面67,68(図5において、動力伝達面67のみを図示)は、第2のスライド溝64の対応する動力伝達面69,70(図5において、動力伝達面70のみを図示)に対して、第2の滑り方向L2にスライドしながら動力を伝達する。
このとき、球面形成部材53は、第1の凹部71に対して第1の滑り方向L1に移動すると共に、第2の凹部72に対して第2の滑り方向L2に移動し、第1および第2の突起板56,65の運動を妨げないようにしている。
図6に示すように、電動モータ19の出力軸25の軸線C1とウォーム軸27の軸線C2とが相対的に偏心していることに加え、相対的に傾いている(偏角している)場合には、中間部材44は、第1および第2の端部材42,43に対して中心P回りに回転(自転)する。その結果、通常の自在継手と同様にして、これら出力軸25およびウォーム軸27の軸線C1,C2の相互の傾きを良好に吸収することができる。
具体的には、中間部材44の第1の突起板56は、第1のスライド溝55に対して中心P回りに回転する。これに伴い、球面形成部材53は、第1の凹部71に対して中心Pの回りに回転し、第1の突起板56と第1のスライド溝55との相対回転を妨げないようにしている。第1の突起板56の動力伝達面59,60と、第1のスライド溝55の対応する動力伝達面61,62との係合状態は維持される。また、第1の突起板56は、円弧状に形成されているので、第1のスライド溝55の底面と接触することがない。
同様に、第2の突起板65は、第2のスライド溝64に対して中心P回りに回転する。これに伴い、球面形成部材53は、第2の凹部72に対して中心Pの回りに回転し、第2の突起板65と第2のスライド溝64との相対回転を妨げないようにしている。第2の突起板65の動力伝達面67,68と、第2のスライド溝64の対応する動力伝達面69,70との係合状態は維持される。また、第2の突起板65は、円弧状に形成されているので、第2のスライド溝64の底面と接触することがない。
このようにして、第1および第2の突起板56,65は、対応する第1および第2のスライド溝55,64に対して中心P回りに回転しても、これらの第1および第2のスライド溝55,64との係合状態を維持することができる。その結果、オルダム継手としての機能を維持することができる。したがって、継手29は、オルダム継手としての機能と自在継手としての機能とを同時に発揮することができ、電動モータ19の出力軸25およびウォーム軸27の軸線C1,C2間の偏心および偏角(ミスアライメント)を良好に吸収することができる。
なお、電動モータ19の出力軸25およびウォーム軸27の互いの軸線C1,C2間に偏角のみが生じている場合でも、継手29は、中間部材44と第1および第2の端部材42,43との相対回転運動により、自在継手としての機能を発揮することができる。
以上説明したように、本実施の形態によれば、電動モータ19の出力軸25およびウォーム軸27の軸線C1、C2間の偏心および偏角(ミスアライメント)を良好に吸収することができる。しかも、電動モータ19の出力軸25およびウォーム軸27間に不要な負荷がかかることを防止できて騒音を低減できる。
また、第1の端部材42は、第1の凹部71によって球面形成部材53の移動を許容しつつ確実に保持することができ、また、第2の端部材43は、第2の凹部72によって球面形成部材53の移動を許容しつつ確実に保持することができる。
さらに、第1および第2の突起板56,65は、それぞれ円弧状に形成されており、対応する第1および第2のスライド溝55,64に対して回転移動しても、これら第1および第2のスライド溝55,64の底面と接触することを防止できる。
また、中間部材44を合成樹脂成形品により形成することで、中間部材44と対応する第1および第2の端部材42,43との接触が金属同士の接触となることを防止でき、騒音をより低減することができる。しかも、製造し易い。
さらに、電動モータ19の出力軸25とウォーム軸27とを厳密に芯合わせする必要が無く、組立が容易で、しかも静粛性に優れた装置を実現することができる。
なお本発明は、以上の実施の形態の内容に限定されるものではなく、種々の変更が可能である。例えば、第1および第2の滑り方向L1,L2は、継手29を軸方向Sから見たときに、互いに直交していなくてもよい。また、第1および第2の端部材42,43と対応する電動モータ19の出力軸25およびウォーム軸27の第1の端部34とは、スプライン嵌合や圧入嵌合により連結されてもよい。
さらに、中間部材44全体を金属材により形成してもよい。また、球面形成部材53ならびに第1および第2の突起板56,65の少なくとも1つを別部材により形成してもよい。この場合、球面形成部材53ならびに第1および第2の突起板56,65は、全部が金属材により形成されてもよいし、合成樹脂成形品により形成されてもよいし、少なくとも1つが金属材により形成されると共に残りが合成樹脂成形品により形成されてもよい。
さらに、第1および第2の突起板56,65は、球面形成部材53の表面57の半周より長く形成されてもよいし、半周より短く形成されてもよい。また、第1および第2の突起板56,65は、外周面58,66に角部が設けられる等して、円弧状以外の形状に形成されてもよい。
その他、本発明は、電動パワーステアリング装置の伝動装置以外の他の一般の装置の継手にも適用できる。
本発明の一実施の形態の電動パワーステアリング装置の概略構成を示す模式図である。 電動パワーステアリング装置の要部の一部断面図である。 継手を分解した状態を示す一部断面側面図である。 継手の分解斜視図である。 電動モータの出力軸の軸線とウォーム軸の軸線とが偏心した状態を示す一部断面側面図である。 電動モータの出力軸の軸線とウォーム軸の軸線とが偏心に加えて偏角した状態を示す一部断面側面図である。
符号の説明
1 電動パワーステアリング装置
19 電動モータ
20 ウォームギヤ機構(伝動装置)
21 操舵機構
25 出力軸(第1の軸)
27 ウォーム軸(第2の軸)
28 ウォームホイール
29 継手(動力伝達継手)
34 第1の端部(第2の軸の端部)
42 第1の端部材
43 第2の端部材
44 中間部材
45 第1の滑り対偶
46 第2の滑り対偶
53 球面形成部材
55 第1のスライド溝
56 第1の突起板(第1のスライダ)
57 (球面形成部材の)表面
64 第2のスライド溝
65 第2の突起板(第2のスライダ)
71 第1の凹部
72 第2の凹部
L1 第1の滑り方向(第1の滑り対偶の滑り方向)
L2 第2の滑り方向(第2の滑り対偶の滑り方向)

Claims (5)

  1. 相対向する第1および第2の軸の端部にそれぞれ設けられる第1および第2の端部材と、
    第1および第2の端部材間に介在する中間部材と、
    第1および第2の端部材をそれぞれ中間部材に連結するための第1および第2の滑り対偶とを備え、
    第1および第2の滑り対偶の滑り方向は相異なり、
    第1の滑り対偶は、中間部材に設けられる第1のスライダと、第1の端部材に設けられ第1のスライダに係合する第1のスライド溝とを含み、
    第2の滑り対偶は、中間部材に設けられる第2のスライダと、第2の端部材に設けられ第2のスライダに係合する第2のスライド溝とを含み、
    中間部材は、第1および第2のスライダを一体に連結する球面形成部材を含むことを特徴とする動力伝達継手。
  2. 請求項1において、上記第1の端部材は、第1の滑り対偶の滑り方向への球面形成部材の移動を許容しつつ受ける第1の凹部を含み、
    上記第2の端部材は、第2の滑り対偶の滑り方向への球面形成部材の移動を許容しつつ受ける第2の凹部を含むことを特徴とする動力伝達継手。
  3. 請求項1または2において、上記第1および第2のスライダはそれぞれ球面形成部材の表面に沿って延びる円弧状の突起板を含むことを特徴とする動力伝達継手。
  4. 請求項1,2または3において、上記中間部材は合成樹脂成形品を含むことを特徴とする動力伝達継手。
  5. 電動モータの動力を伝動装置を介して操舵機構に伝達して操舵補助する電動パワーステアリング装置において、
    上記伝動装置は、電動モータの出力軸に請求項1,2,3または4に記載の動力伝達継手を介して連結されるウォーム軸と、ウォーム軸に噛み合い操舵機構に繋がるウォームホイールとを含むことを特徴とする電動パワーステアリング装置。
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