JP2005325377A - 加工性に優れた耐熱フェライト系ステンレス鋼板の製造方法 - Google Patents

加工性に優れた耐熱フェライト系ステンレス鋼板の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】加工性に優れた耐熱フェライト系ステンレス鋼板の製造方法を提供する。
【解決手段】質量%で、C≦0.030%、Si:0.02〜1.0%、Mn:0.05〜1.0%、P≦0.04%、S≦0.020%、N≦0.030%、Cr:10〜20%、Ti:3×(C+N)〜0.25%、Nb:0.2〜1.0%、C+N≦0.030%、必要に応じMo:0.2〜2.5%を含有し、残部Fe及び不可避不純物からなる鋼片を、常法により熱間圧延、熱延板焼鈍、酸洗し、更に冷間圧延、焼鈍、酸洗を1回以上繰り返してフェライト系ステンレス鋼板を製造するに際し、熱間圧延の仕上圧延前の粗バーの再結晶率が30%以上となるように、前記熱間圧延の加熱温度及び粗圧延率を制御する。更に熱延加熱温度1200〜1300℃、粗圧延率≧80%、熱間圧延率≧95%、加熱炉抽出から仕上圧延開始迄の鋼材温度1000℃以上を5〜20分とするのが好ましい。
【選択図】 なし

Description

本発明は、マフラー、エキゾーストマニホールド等の自動車排気系部材に用いられる加工性に優れた耐熱フェライト系ステンレス鋼板の製造方法に関するものである。
環境問題の高まりから、自動車の燃費向上、ひいては軽量化が強く望まれている。また、排気ガスの浄化も切望されている。これらのことを背景として、自動車用排気系部材にはステンレス鋼が用いられている。最も高温にさらされる部材の1つであるエキゾーストマニホールドは、最高1000℃程度までの昇温、降温の繰り返しを受けるため、優れた耐熱性が必要とされている。
近年、エキゾーストマニホールドの使用温度の高温化が進展し、対応温度が950℃となる鋼種の開発が行われている。例えば特許文献1では、Cr:18〜22%、Mo:1.0〜2.0%、Nb:0.1〜1.0%を含有するステンレス鋼に関する発明が開示されている。現在では、950℃対応のエキゾーストマニホールド材としては、SUS444(19%Cr−2%Mo)系などのフェライト系ステンレス鋼が用いられている。
エキゾーストマニホールドなどの自動車排気管部材は、車体内の限られたスペースを有効に利用するために複雑な形状となることもあり、過酷な加工を受ける場合も多く、優れた加工性を求められる。特に最近では軽量化志向のため、ますます複雑な形状となり、使用する鋼板への加工性に対する要求は厳しくなっている。
しかしながら、耐熱性が高い鋼板はNb,Mo等の合金元素量が多くなるため、加工性は低いのが普通である。特にエキゾーストマニホールドなどに使われる板厚1.5mm以上の厚い鋼板は、冷間圧延での圧延率を大きく取れないため加工性は低い。したがって、耐熱性の高い高合金鋼板の加工性を改善することは大きな課題となっていた。
この課題を解決するために、これまでにもいくつかの方法が開示されている。例えば特許文献2において、熱延終了温度、熱延板焼鈍温度、最終焼鈍温度を規定することにより、成形性に優れたCr含有耐熱耐食鋼板を得る製造方法に関する発明が開示されている。しかしこの方法は、熱延を行う温度が実施例によると690〜1020℃とかなり低く、熱延設備に多大な負荷を掛ける方法である。
また特許文献3において、Nbを多く含むフェライト系ステンレス鋼を最終焼鈍前に700〜850℃で25時間以下の析出処理を行うことによって、析出物と集合組織を制御した加工性に優れたフェライト系ステンレス鋼板およびその製造方法に関する発明が開示されている。この方法では析出処理工程が必要であり、工程増加によるコスト増加が問題である。
以上述べてきたように、できるだけ安価なコストで製造できる、優れた加工性を持つ耐熱フェライト系ステンレス鋼板はなかったのである。
特開平06−100990号公報 特開2002−030346号公報 特開2002−194508号公報
本発明の目的は、自動車排気系部材、特にエキゾーストマニホールド用として有用な、加工性に優れた耐熱フェライト系ステンレス鋼板の製造方法を提供することである。
本発明の要旨は以下の通りである。
(1) 質量%で、
C :0.030%以下、 Si:0.02〜1.0%、
Mn:0.05〜1.0%、 P :0.04%以下、
S :0.020%以下、 N :0.030%以下、
Cr:10〜20%、 Ti:3×(C+N)〜0.25%、
Nb:0.2〜1.0%、 C+N:0.030%以下
を満足する成分を含有し、残部Feおよび不可避的不純物からなる鋼片を、常法により熱間圧延(加熱、粗圧延、仕上圧延、巻取の工程を含む)した後、熱延板焼鈍し、または、熱延板焼鈍することなく酸洗し、さらに冷間圧延、焼鈍、酸洗の工程を1回または2回以上繰り返して、フェライト系ステンレス鋼板を製造するに際し、前記熱間圧延の仕上圧延前の粗バーの再結晶率が30%以上となるように、前記熱間圧延の加熱温度および粗圧延での圧延率(粗圧延率)を制御することを特徴とする、加工性に優れた耐熱フェライト系ステンレス鋼板の製造方法。
(2) 前記鋼片が、さらに質量%で、Mo:0.2〜2.5%を含有することを特徴とする、上記(1)に記載の加工性に優れた耐熱フェライト系ステンレス鋼板の製造方法。(3) 前記熱間圧延の加熱温度を1200〜1300℃とすることを特徴とする、上記(1)または(2)に記載の加工性に優れた耐熱フェライト系ステンレス鋼板の製造方法。
(4) 前記粗圧延の圧延率が、{(鋼片厚−粗圧延後の板厚)/(鋼片厚)}×100(%)で規定される粗圧延率で80%以上であり、かつ、前記熱間圧延全体の圧延率が、{(鋼片厚−熱間圧延後の板厚)/(鋼片厚)}×100(%)で規定される熱間圧延率で95%以上であることを特徴とする、上記(1)ないし(3)のいずれか1項に記載の加工性に優れた耐熱フェライト系ステンレス鋼板の製造方法。
(5) 前記熱間圧延の加熱炉抽出から仕上圧延開始までの、鋼材温度が1000℃以上である時間を5〜20分に制御することを特徴とする、上記(1)ないし(4)のいずれか1項に記載の加工性に優れた耐熱フェライト系ステンレス鋼板の製造方法。
本発明の製造方法により、自動車排気系部材、特にエキゾーストマニホールド用として有用な耐熱性と加工性に優れたフェライト系ステンレス鋼板を提供することができ、製造者のみならず本鋼板を利用する者にとっても多大な利益を得ることができ、工業的価値は極めて高い。
本発明を実施するための最良の形態と限定条件について詳細に説明する。
自動車排気系部材、特にエキゾーストマニホールド用部材としての求められる加工性は近年非常に厳しくなってきている。しかし、エキゾーストマニホールド材は耐熱性のためにMo,Nbを多量に含有する上、使用板厚が1.5mmから2mm程度と厚く、これまでの材料では十分な加工性を得られていなかった。
本発明者らは、加工性の目標値として、常温の平均伸び値が30%以上、平均r値(平均ランクフォード値)が1.2以上を設定し、この目標達成のために成分元素の最適化と製造プロセスの構築を行ってきた。その結果、熱間圧延工程での組織の作りこみを制御することにより、加工性を向上させ得ることを見出した。
具体的には、熱間圧延工程は通常、粗圧延と仕上圧延に分けられるが、粗圧延後の粗バーと呼ばれる中間材の金属組織において、その仕上圧延前の再結晶率を高めることにより、最終製品の加工性が向上できることを見出したのである。
発明者らは、以上の知見を基に詳細な検討を進め、本発明を完成した。
初めに各成分に関する限定条件を述べる。
Cは、鋼中に含まれる不可避的不純物であるが、加工性、耐食性を劣化させるため、できるだけ少ないほうが好ましく、0.030%以下とする。炭窒化物として固定して有害作用を除去するが、そのための固定元素であるTiの添加量をできるだけ少なくするため、、その含有量は0.015%以下が好ましい。ただし、0.002%未満にすることは精錬上コストアップが大きくなるため、0.002%以上が好ましい。
Siは、耐酸化性を向上させる元素であり、耐熱ステンレス鋼にとり有用な元素である。特にCr量が14%未満の場合、健全なCr2 3 皮膜を形成するためには必須である。その効果は、0.02%未満では効果がなく、1.0%超添加すると加工性の劣化が著しくしくなるため好ましくない。よってSiは0.02〜1.0%とする。
Mnは、鋼中に不可避的に含まれる成分であるが、耐酸化性を向上する元素であると考えられていて、特にSiと共存する場合、Siによるスケール剥離を抑制する効果をもつ。その含有量が、0.05%未満ではその効果が発現しないため、0.05%を下限とする。1.0%を超えると加工性の劣化が激しいので、1.0%を上限とする。
Pは、鋼中に不可避的に含まれる成分であるが、0.04%を超えて含有すると溶接性が低下するため、0.04%を上限とした。
Sは、鋼中に不可避的に含まれる成分であるが、0.020%を超えて含有すると、MnSの形成量の増大によりで耐食性を低下させるので、0.020%を上限とした。
Nは、鋼中に含まれる不可避的不純物であるが、Cと同様に加工性の劣化、および溶接性が低下するため、できるだけ少ないことが好ましく、0.030%以下とする。炭窒化物として固定して有害作用を除去するが、そのための固定元素であるTiの添加量をできるだけ少なくするため、その含有量は0.015%以下が好ましい。0.005%未満にすることは精錬上コストアップが大きくなるため、0.005%以上が好ましい。
Crは、保護性のあるCr2 3 皮膜を形成し耐酸化性を向上させる元素である。また、耐食性に有用な元素である。その効果を発揮させるためには10%以上必要である。また、20%を超えてCrを含有すると、加工性が低下するため好ましくないので、上限を20%とする。耐食性と加工性の両方のバランスの最も好ましいCrの含有量の範囲は、14〜18%である。
Nbは、Moとともに高温強度を確保するために必要な元素である。加えて、TiとともにC,Nを炭窒化物として固定する機能がある。0.2%未満では必要な高温強度が確保できない。さらに1.0%を超えて添加すると、本発明の製造方法をもってしても加工性が劣化する。そのためNbの含有量は0.2〜1.0%とする。
本発明におけるTiの役割は、C,Nを炭窒化物として固定する能力がNbより高いために、高温強度に有効である高価なNbの消費を抑制できることと、Ti添加により再結晶温度が低下するため、熱間圧延工程において、仕上圧延前の粗バーの再結晶率を向上させるために添加する。添加量は、3×(C+N)%未満ではその効果が乏しく、0.25%を超えると、固溶Tiが増えて再結晶温度が上昇するために好ましくないため、3× (C+N)〜0.25%とする。r値を向上させるためには、Tiの含有範囲を4×(C+N)〜0.15%の範囲とするのがより好ましい。
また、C+N量が0.030%を超えると加工性が低下するため、C+N量は0.030%を上限とした。本発明では、C,Nを炭窒化物として固定するために主にTiが消費されるが、高温強度を高めるために固溶Nbとして温存させるべきNbもC,Nと炭窒化物を形成して消費されてしまう。そこで、高価なNbの歩留向上のためには、C+N量は、0.015%以下が好ましい。
さらに、高温強度を向上させるためにMoを添加しても良い。Moは耐酸化性、耐食性を向上させる効果もある。その添加範囲は0.2〜2.5%の範囲が好ましい。0.2%未満では充分な高温強度向上効果が得られず、2.5%超添加すると、加工性の劣化、および酸洗時のデスケール性の劣化が生じるからである。
次に製造方法について詳細に説明する。
以上述べてきた成分と残部Feおよび不可避的不純物を含むスラブ、インゴット等の鋼片(以下、単にスラブともいう。)を溶製し、熱間圧延、熱延板焼鈍・酸洗、冷間圧延、最終焼鈍・酸洗を経て製品となる。熱延板焼鈍を省略したり、冷間圧延と焼鈍を繰り返しても良い。
本発明の製造方法の特徴は熱間圧延(熱延)工程にある。熱延工程は主として粗圧延と仕上圧延からなっており、粗圧延では、スラブから板厚15〜40mm程度の粗バーと呼ばれる中間材を得る。このときの粗バーの金属組織が重要である。耐熱フェライト系ステンレスはNbやMoを含む場合が多く、これらの場合は再結晶が遅延し、粗バーではほとんど再結晶していないことが判明した。粗バーの再結晶を促進させて、その再結晶率を30%以上とすることにより、製品での伸び、r値の向上が図られる。特にr値の向上が顕著である。ここでは、粗バーの板幅中心部の圧延長手方向の断面組織において、下記(1)式で求められるものを再結晶率とした。
再結晶率(%)=100×(観察している断面で再結晶している結晶粒の断面積の
合計)/(観察している断面の全体面積) …………(1)
再結晶率は高いほど好ましく、完全再結晶組織である再結晶率100%が最も好ましい。
この熱間圧延工程での仕上圧延前の粗バーの再結晶率を増加させる手段はいくつかあり、組み合わせて適用できる。1つは、Ti添加を行うことにより、Ti無添加の場合より再結晶率を増加させることができる。Ti量は上述したとおり、3×(C+N)〜0.25%が良い。Ti添加により再結晶温度が低下するため、粗バーでの再結晶率が増加すると考えている。
また、スラブの熱間圧延での加熱温度も重要であり、できるだけ高い方が粗バーでの再結晶率を増加させ、製品の加工性を向上させることができる。好ましい加熱温度は1200〜1300℃である。1200℃未満であると再結晶が進みにくいので好ましくなく、1300℃超であるとスケールが強固になり酸洗性を損なうため好ましくない。
加熱時間は特に定めないが、30分以下では、鋼片が均一に加熱されないため好ましくなく、3時間超の加熱はスケールが強固になり酸洗性を損なうため好ましくない。
さらに、熱間圧延工程での圧延率も加工性向上のために重要な要素である。粗圧延率 (%)=(スラブ厚−粗圧延後の板厚)/(スラブ厚)×100で規定される粗圧延での圧延率が80%以上、かつ、熱間圧延率(%)=(スラブ厚−熱間圧延後の板厚)/(スラブ厚)×100で規定される熱間圧延全体の圧延率が95%以上であることが好ましい。 粗圧延率が80%未満であると、粗圧延での歪の蓄積が十分でなく、粗バーでの再結晶率が低くなるため好ましくない。また熱間圧延率が95%未満であると、粗バーで再結晶率を高くできても、仕上圧延の圧延率が低くなるため、十分な歪みの蓄積が行われないので、結果として加工性が劣化するので好ましくない。
粗圧延、熱間圧延全体の圧延率の上限は特に定めないが、99%超の圧延を行うことは、圧延機の負荷が大きくなりすぎるので好ましくない。
熱間圧延工程において、加熱炉抽出から仕上圧延開始までで、鋼材の温度が1000℃以上である時間が5〜20分であることが好ましい。5分未満であると粗バーでの再結晶率が低下するため好ましくなく、20分超であると生産性を阻害するため好ましくない。 1000℃以上に保つ方法は特に定めないが、鋼片の加熱温度を高くして粗圧延をゆっくり行う方法や、粗圧延後に、粗バーに保温カバーを掛けて冷えることを防ぐ方法や、粗バーをコイル状に巻き取り温度低下を防ぐ方法、ならびにこれらを組み合わせた方法が適用できる。もちろん必要ならば、粗バーを炉内に入れるか、またはバーナー等で加熱して温度低下を防いでもよい。
その他の熱間圧延条件は、通常行われている条件でよく特に定めないが、以下の条件が好ましい。
仕上圧延の開始温度は、1050〜1300℃とするのが好ましい。1050℃未満では線状疵が多発して好ましくなく、1300℃超ではスケールが強固になり酸洗性を損なうため好ましくない。
仕上圧延の終了温度は、700〜950℃とするのが好ましい。700℃未満では、線状疵が増えるとともに鋼板の変形抵抗が大きくなるため、熱延ロールへの負荷が増大してロール寿命を低減させるため好ましくない。また950℃超とするためには、仕上圧延中に鋼板の温度低下を防ぐ設備が必要であり製造コストが高くなるため好ましくない。
その他の製造条件は特に定めないが、以下の条件が好ましい。
熱延板焼鈍は、750〜1050℃で行うのが好ましい。750℃未満であると再結晶が起こらないため、製品状態でのr値が低下し、加工性が劣化するため好ましくない。1050℃超であると、熱延焼鈍板の結晶粒が大きくなりすぎるため、製品状態でのr値が低下して加工性が劣化するため好ましくない。
焼鈍時間は10秒〜10時間が好ましい。10秒未満では焼鈍効果のばらつきが大きくなり好ましくなく、10時間超では、粒成長が進みすぎてr値向上に不利な組織になりやすくなるため好ましくない。コストの面からは1時間未満とするのがより好ましい。
さらに、冷間圧延に関して、冷間圧延率(%)=(冷間圧延前の板厚−冷間圧延後の板厚)/(冷間圧延前の板厚)×100で規定される冷間圧延率は、50〜80%が好ましい。50%未満であると、本発明をもってしても加工性に優れた鋼板を得ることは困難であり、冷延後の板厚が1〜3mmの場合、冷間圧延率を80%超とするには、冷延前の板厚を厚くして冷間圧延を行う必要があり、冷間圧延機にかかる負荷が過大となるため好ましくない。
最終焼鈍温度は、900〜1100℃が好ましい。900℃未満では、粒成長が不十分となり加工性が劣化するため好ましくなく、1100℃超では、粒成長が進みすぎて結晶粒径が大きくなりすぎ、加工時に肌荒れを起こすため好ましくない。
本発明の製造方法は、エキゾーストマニホールド等の自動車排気系部材用として使用される板厚1〜3mmの鋼板の製造に特に有用である。板厚1mm未満では本発明によらずとも優れた加工性が得られやすく、3mm超では、本発明の製造方法をもってしても優れた加工性を得られにくいからである。
以下、実施例に従ってさらに詳細に本発明を説明する。
表1に示す6種の化学成分を有する厚み200mmの鋼片を溶製し、1250℃、1時間の加熱を行った。粗圧延開始温度は1200〜1250℃で、粗圧延後の粗バー厚は26mmとした。加熱炉抽出から粗圧延終了までは3分経過し、粗圧延後は、粗バーに保熱カバーを掛けて5分間保持した。仕上圧延前の粗バー温度は1000℃以上あった。仕上圧延直前に粗バーの一部を再結晶率測定用に切断して水冷した。
仕上圧延終了温度は800〜900℃であり、その後、水を掛けて550℃まで水冷し、板厚5mmの熱延板を得た。その後、熱延板を900℃に加熱して60秒保持する熱延板焼鈍を行い、ふっ酸にて酸洗を行った。さらに、冷延を行って2mm厚の冷延板にした後、1050℃に加熱して、60秒保持する最終焼鈍を行い、ふっ酸にて酸洗を行って得た鋼板を供試鋼とした。
再結晶率測定用の粗バー水冷材は、板幅中心部を圧延方向に切断して、王水でエッチングして組織を現出させ、50倍で光顕写真を撮影した。その写真を基に再結晶粒と未再結晶粒を分別して断面積を測定し、下記(1)式で表される再結晶率を計算した。なお、測定領域は板幅2mm×板厚全厚である。
再結晶率(%)=100×(観察している断面で再結晶している結晶粒の断面積の
合計)/(観察している断面の全体面積) ………(1)
供試鋼から、常温の引張試験片と高温引張試験片を採取し、測定を行った。その結果を表2に示す。
なお、常温の引張試験は、JIS Z 2241に準拠して行った。測定した試験片の方向は、圧延方向(L方向)、圧延方向と45°方向(D方向)、圧延方向と90°方向(C方向)の3方向であり、その全伸び値を、El(L)、El(D)、El(C)とし、平均伸び値=(El(L)+2×El(D)+El(C))/4を求めた。
r値測定は、JIS Z 2254に準拠して行った。
測定した試験片の方向は、引張試験と同じ3方向であり、その結果を、rL、rD,rCとし、平均r値=(rL+2×rD+rC)/4を求めた。使用した試験片はすべてJIS Z 2201に定められた13B号試験片である。
また高温引張試験は、JIS G 0567に準拠して行い、900℃での0.2%耐力(0.2%PS)を高温強度の指標とした。測定した試験片の方向は圧延方向(L方向)である。
表1,表2において、A鋼、B鋼がMo無添加鋼で、C鋼、D鋼はMo添加鋼である。 本発明であるA鋼、C鋼は、Tiを添加しているため、本発明の製造方法で、粗バーでの再結晶率が30%を大きく超えているので、伸び、r値ともに非常に優れている。
比較鋼であるB鋼、D鋼はTiを添加していないため、本発明の製造方法をもってしても、粗バーでの再結晶率が30%以下と小さく、その結果、伸びまたr値の値が劣っている。Nb量が多いE鋼は、本発明の製造方法をもってしても粗バーで再結晶させることができず、その結果、伸び、r値が劣っている。Nb量の少ないF鋼は、十分な加工性を示すが、Nbが少ないため、高温強度が低く耐熱性が劣り、好ましくない。
以上から、本発明の製造法が、加工性に優れた耐熱フェライト系ステンレス鋼板を製造するために極めて優れていることが分かる。
Figure 2005325377
Figure 2005325377
表1のA鋼、C鋼と同じ成分の鋼塊を溶製し、表3に示す製造条件で鋼板を作製し供試鋼とした。その後、実施例1と同じ評価試験を行った。その結果を表4に示す。
再結晶率を30%以上にするための方法として、加熱温度、圧延率(粗圧延率と熱間圧延全体の圧延率)、仕上圧延までで1000℃以上に保持している時間の制御が必要である。
加熱温度が低く、圧延率が低く、仕上圧延までの1000℃の保持時間が短いA1鋼およびC1鋼は、粗バーでの再結晶率が30%未満であるため、伸び、r値ともに低いため、好ましくない。
加熱温度を本発明の範囲にしたA2鋼およびC2鋼は、粗バーの再結晶率が30%以上になり、A1鋼、C1鋼に比べて伸び、r値が向上している。粗圧延率および熱延圧延率を本発明の範囲にしたA3鋼、C3鋼、仕上圧延までで1000℃以上の保持時間を本発明の範囲にしたA4鋼、C4鋼も、粗バーで再結晶率が30%以上になり、A1鋼、C1鋼に比べて伸び、r値が向上している。
さらに、圧延率、1000℃以上の保持温度を組み合わせたA5鋼、C5鋼、加熱温度と1000℃以上の保持温度を組み合わせたA6鋼、A7鋼、加熱温度と圧延率を組み合わせたA7鋼、C7鋼は、さらに伸び、r値の向上が見られている。
実施例1のA鋼、C鋼は、加熱温度、圧延率、1000℃以上の保持時間のすべてを適正範囲の制御したため、極めて優れた伸び、r値を示している。
以上から、本発明の製造方法で製造したフェライト系ステンレス鋼板は、優れた加工性を持っていることは明らかである。
Figure 2005325377
Figure 2005325377

Claims (5)

  1. 質量%で、
    C :0.030%以下、
    Si:0.02〜1.0%、
    Mn:0.05〜1.0%、
    P :0.04%以下、
    S :0.020%以下、
    N :0.030%以下、
    Cr:10〜20%、
    Ti:3×(C+N)〜0.25%、
    Nb:0.2〜1.0%、
    C+N:0.030%以下
    を満足する成分を含有し、残部Feおよび不可避的不純物からなる鋼片を、常法により熱間圧延(加熱、粗圧延、仕上圧延、巻取)した後、熱延板焼鈍し、さらに酸洗して冷間圧延し、最終焼鈍、酸洗を行って、フェライト系ステンレス鋼板を製造するに際し、前記熱間圧延の仕上圧延前の粗バーの再結晶率が30%以上となるように、前記熱間圧延の加熱温度および粗圧延での圧延率(粗圧延率)を制御することを特徴とする、加工性に優れた耐熱フェライト系ステンレス鋼板の製造方法。
  2. 前記鋼片が、さらに質量%で、
    Mo:0.2〜2.5%
    を含有することを特徴とする、請求項1に記載の加工性に優れた耐熱フェライト系ステンレス鋼板の製造方法。
  3. 前記熱間圧延の加熱温度を1200〜1300℃とすることを特徴とする、請求項1または2に記載の加工性に優れた耐熱フェライト系ステンレス鋼板の製造方法。
  4. 前記粗圧延の圧延率が、{(スラブ厚−粗圧延後の板厚)/(スラブ厚)}×100(%)で規定される粗圧延率で80%以上であり、かつ、前記熱間圧延全体の圧延率が、{(スラブ厚−熱間圧延後の板厚)/(スラブ厚)}×100(%)で規定される熱間圧延率で95%以上であることを特徴とする、請求項1ないし3のいずれか1項に記載の加工性に優れた耐熱フェライト系ステンレス鋼板の製造方法。
  5. 前記熱間圧延の加熱炉抽出から仕上圧延開始までの、鋼材温度が1000℃以上である時間を5〜20分に制御することを特徴とする、請求項1ないし4のいずれか1項に記載の加工性に優れた耐熱フェライト系ステンレス鋼板の製造方法。
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