JP2005318366A - 圧電薄膜共振子、フィルタ及び圧電薄膜共振子の製造方法 - Google Patents

圧電薄膜共振子、フィルタ及び圧電薄膜共振子の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】 良好な共振特性を得るために横モードを抑制するようにすると共に、工程数を増やすことなく、短時間でシリコン基板の穴加工が行えるようにした圧電薄膜共振子を得ることを目的とする。
【解決手段】 シリコン基板11と、シリコン基板11上に設けられた下電極膜13、下電極膜13に重なる圧電膜15及び圧電膜15に重なる上電極膜14からなる積層共振体12とを備え、シリコン基板11の積層共振体12の対応位置にシリコン基板11を開口して貫通穴18を形成し、積層共振体12の平面形状はその輪郭が自由曲線で構成されるようにしたものである。
【選択図】 図1

Description

本発明は、いわゆるFbar(Film Bulk Acoustic Resonator:薄膜バルク音響共振子)あるいはSMR (solid Mounted Resonator)と呼ばれる音響反射多層膜を設けた振動子に属する数種類の圧電薄膜共振子、これを用いて構成される主にGHz帯で用いられるフィルタ及び圧電薄膜共振子の製造方法に関するものである。
一般に、FBARと呼ばれる圧電薄膜共振子は、基板と、基板上に設けられた積層共振体とからなる。積層共振体は、圧電膜と、当該圧電膜を上下から挟む一対の薄膜電極からなる。下部電極の下方において、基板には空隙部が開設されている。またSMRと呼ばれる圧電薄膜共振子は下部に音響反射膜を設けているが、振動膜に関しては同様の考え方を行っているため、ここではFBARに限った説明とする。
圧電薄膜共振子の上下の電極に交流電圧を印加すると、逆圧電効果により、これらに挟まれた圧電膜はその厚み方向に振動し、電気的共振特性を示す。逆に、圧電効果によって、圧電膜に生ずる弾性波ないし振動は、電気信号に変換される。この弾性波は、圧電膜の厚み方向に主変位を持つ厚み縦振動波である。
このようなFbarに属する圧電薄膜共振子では、重ねられた電極間の圧電膜の一部は音響空洞を形成する。この空洞の基本振動モードにおいては、音波は電極面に対して直角方向に伝搬されるが、励起され得る他の振動モードが存在する。これらのモードは、電極面に平行に移動し、空洞の壁又は電極層の端部の断絶部で反射する音波に対応する。これらのモードの基本的周波数は基本モードのものよりもかなり低いが、これらの横モードのより高い高調波が基本モードの周波数帯域中に出現し、圧電薄膜共振子の共振特性を悪化させる。従って、横モードを抑制させる必要がある。
このような横モードを抑制する従来の圧電薄膜共振子は、第1の面およびこれと反対の第2の面を有する(111)カットのシリコン基板と、第1面に接する第1電極膜、当該第1電極膜に重なる圧電膜、および当該圧電膜に重なる第2電極膜からなる積層共振体とを備え、シリコン基板には積層共振体に対応する位置において、第1の面に開口する第1開口部および第2の面にて開口する第2開口部を有しつつ第1の面に対して略垂直な空隙部がドライエッチングにより開設されて構成されている。
また、第1開口部および第2開口部の形状は、円または楕円とし、第1電極膜及び第2電極膜の形状は、円または楕円の一部を有するようにして、横モードの経路長を長くとり、横モードの振幅と周波数を低くして横モードを抑制するようにしている(例えば、特許文献1参照。)。
特開2003−204239号公報(第1頁、第12頁、第1図)
しかしながら、従来の圧電薄膜共振子は、横モードを抑制することはできるが、(111)カットのシリコン基板に対して当該基板を貫通する空隙部を形成する場合、ドライエッチングであるDeep−RIEを施すことにより行っているため、空隙部の形成に非常に時間がかかり、さらにはRIEによる損傷を第一電極膜に与えるためエッチングマスクとして別の膜が必要となり、工程数が増えるという問題点があった。
そこで、本発明はかかる問題点を解決するために、良好な共振特性を得るために横モードを抑制するようにすると共に、工程数を増やすことなく、短時間でシリコン基板の穴加工が行えるようにした圧電薄膜共振子、フィルタ及びを圧電薄膜共振子の製造方法を得ることを目的とする。
本発明に係る圧電薄膜共振子は、基板と、前記基板上に設けられた第一電極膜、前記第一電極膜に重なる圧電膜及び前記圧電膜に重なる第二電極膜からなる積層共振体とを備え、前記基板の前記積層共振体の対応位置に該基板を開口して貫通穴を形成し、前記積層共振体の平面形状はその輪郭が自由曲線で構成されることを特徴とする。
本発明によれば、積層共振体の平面形状はその輪郭が自由曲線で構成されているので、積層共振体によって決定される音響空洞の壁の平面形状はその輪郭が自由曲線で構成されるため、壁のある点を出た横モードの音波は対向する壁で反射してその音波が出た点に戻ってくることはないため、横モードの経路長が長くなって横モードが減衰される。
本発明の圧電薄膜共振子において、前記第一電極膜又は/及び第二電極膜の平面形状はその輪郭が自由曲線で構成されていることを特徴とする。
このように積層共振体のうち、第一電極膜又は/及び第二電極膜の平面形状はその輪郭が自由曲線で構成され、これら電極膜の重なりによって決定される音響空洞の壁の平面形状はその輪郭が自由曲線で構成されこととなるため、壁のある点を出た横モードの音波は対向する壁で反射してその音波が出た点に戻ってくることはないため、横モードの経路長が長くなって横モードが減衰される。
本発明の圧電薄膜共振子において、前記基板を開口して形成された貫通穴の平面形状は方形を除く平行四辺形であることを特徴とする。
このように、基板を開口して形成された貫通穴の平面形状は方形を除く平行四辺形であるため、音響空洞からはみ出した横モードの音波も貫通穴の内周面で反射してその音波が出た点に戻ってくることはなく、横モードの経路長が長くなって横モードが減衰される。
本発明の圧電薄膜共振子において、前記基板は(110)カットのシリコン基板であることを特徴とする。
このように基板に(110)カットのシリコン基板を用いると、平面形状が方形を除く平行四辺形の貫通穴をエッチングにより容易に形成することができる。
本発明の圧電薄膜共振子において、前記基板と前記積層共振体の間であって、少なくとも前記貫通穴周辺に弾性波吸収層を設けたことを特徴とする。
こうすることにより、音響空洞からはみ出した横モードの音波を弾性波吸収層が吸収するため、より一層横モードが減衰される。
また、弾性波吸収層は横モードの音波を吸収するよう合成樹脂で形成されている。
本発明の圧電薄膜共振子において、前記基板と前記第一電極膜の間に保護膜を設けることを特徴とする。
このように基板と第一電極膜の間に保護膜があることにより、基板に貫通穴をエッチングにより形成する場合に、第一電極膜が損傷することが防止される。
本発明の圧電薄膜共振子において、前記保護膜を前記基板の開口側より所望の周波数となるように除去、又は前記保護膜に前記基板の開口側より所望の周波数となるように新たに保護膜を堆積させることを特徴とする。
このようにして保護膜を含んだ積層共振体の厚さを変えることにより、周波数調整を行うことができる。
本発明の圧電薄膜共振子において、前記圧電膜はZnO、AlO、KNbO3、LiNbO3、LiTaO3、水晶のいずれかであることを特徴とする。
これは配向性の高い圧電膜を形成する素材を限定したものである。
本発明に係るフィルタは、前記に記載の圧電薄膜共振子を複数有し、前記複数の圧電薄膜共振子がラダー型接続され、ラダー型フィルタとして構成されていることを特徴とする。
このようにすることにより、共振特性が良好なフィルタを得ることができる。
本発明の圧電薄膜共振子の製造方法は、基板と、前記基板上に設けられた第一電極膜、前記第一電極膜に重なる圧電膜及び前記圧電膜に重なる第二電極膜からなる積層共振体を形成する工程と、前記基板に対して、前記積層共振体に対応する位置において開口する貫通穴を形成する工程とを含む圧電薄膜共振子の製造方法において、前記貫通穴を形成する工程は前記基板における前記積層共振体を設けた面とは反対側の面側よりエッチング液を用いたウエットエッチングにより開口するようにしたことを特徴とする。
このようにすることにより、ドライエッチングにより基板に貫通穴を形成する場合に較べて貫通穴の形成が短時間で行え、しかも第一電極膜の損傷を防止するためのエッチングマスク以外の別の膜も不要となり、工程数も減少させて本発明に係る圧電薄膜共振子を製造することができる。従って、本発明の製造方法によっても、本発明に係る圧電薄膜共振子と同様の効果を奏する。
実施の形態1.
図1は本発明の実施の形態1に係る圧電薄膜共振子の概略構成を示す断面図、図2は同圧電薄膜共振子の構成部材の平面形状を示す平面図、図3は同圧電薄膜共振子の共振特性を示すグラフ、図4は同圧電薄膜共振子の膜厚と周波数の関係を示すグラフである。
図1において、圧電薄膜共振子10は、シリコン基板11と、その上に形成された積層共振体12とを有する。シリコン基板110は、(110)カットされた単結晶シリコン基板であり、(110)面に相当する第1の面(上面)11a及び第2の面(下面)11bを有する。
積層共振体12は、第1電極膜である下電極膜13と、第2電極膜である上電極膜14と、これらに挟まれた圧電膜15とからなる。
シリコン基板11と下電極膜13との間には保護膜16が介装されている。
本実施の形態では、下電極膜13と上電極膜14は、(111)の一軸配向構造をとる例えばAlにより形成されている。圧電膜15は、(002)の一軸配向構造をとる例えばZnOにより形成されている。
図2において、シリコン基板11には、積層共振体12の下方に貫通穴18が形成されている。貫通穴18は、第1の面11a及び第2の面11bに対して垂直にシリコン基板11を貫通しており、第2の面11bにおける貫通穴18の開口部は、第1の面11aにおける開口部と同一の面積及び形状を有する。
そして、シリコン基板11を開口して形成された貫通穴18の平面形状は、方形を除く平行四辺形である。
このように、貫通穴18の第1の面11aにおける開口部が第2の面11bにおける開口部よりも拡がっていないため、シリコン基板11ひいては圧電薄膜共振子10を小型に設計することが可能になっている。
また、積層共振体12における上電極膜14の平面形状は、図2に示すように、その輪郭が自由曲線で構成されている。ここで、自由曲線とは曲線で囲まれた、円又は楕円以外の形状をいうものとする。
また、図2に示すように、下電極膜13の平面形状は上電極膜14や貫通穴18より大きい長方形である。
このように下電極膜13と上電極膜14の平面形状は大きさや形状は異なるが、積層共振体12の音響空洞は電極膜の重なりによって決定されるため、これら電極膜のうちの一方の電極膜の形状によって決まることとなる。
従って、この実施の形態1では積層共振体12の音響空洞は一番小さい上電極膜14の平面形状、即ちその輪郭が自由曲線で構成された形状によって決められることとなる。
以上のように、この実施の形態1の圧電薄膜共振子10においては、積層共振体12の下電極膜13とシリコン基板11との間に保護膜16が介装されおり、下電極膜13と上電極膜14はAlにより形成され、保護膜16はSiO2 により形成され、積層共振体12の圧電膜15はZnOにより形成されている。
そして、この実施の形態1の圧電薄膜共振子10は、図3のグラフに示すような共振周波数特性を有する。
また、この実施の形態1では、シリコン基板11を開口して形成された貫通穴18の平面形状は方形を除く平行四辺形で、積層共振体12のうち、上電極膜14はその輪郭が自由曲線で構成された形状としたので、これら電極膜13、14の重なりによって決定される音響空洞の壁の平面形状はその輪郭が自由曲線で構成された形状であるため、壁のある点を出た横モードの音波は対向する壁で反射してその音波が出た点に戻ってくることはないため、横モードの経路長が長くなって横モードが減衰されることとなる。
また、シリコン基板11を開口して形成された貫通穴18の平面形状は方形を除く平行四辺形であるため、音響空洞からはみ出した横モードの音波も貫通穴の内周面で反射してその音波が出た点に戻ってくることはなく、横モードの経路長が長くなって横モードが減衰されることとなる。
また、シリコン基板11は(110)カットのシリコン基板であるため、後述するようにウエットエッチングにより、平面形状が方形を除く平行四辺形の貫通穴18を形成すると、その貫通穴18を容易に形成することができる。
さらに、シリコン基板11と下電極膜13の間に保護膜16を設けているので、シリコン基板11に貫通穴18を後述するウエットエッチングにより形成する場合に、ドライエッチングのようにエッチングマスク以外の別の膜を用いなくても下電極膜13を損傷することなく貫通穴18を形成することができる。
また、この保護膜16はSiO2を主成分とする酸化膜又は窒化シリコンを主成分とする窒化膜からなるが、保護膜16がSiO2を主成分とする酸化膜である場合には、保護膜16はAlにより形成された下電極膜13と上電極膜14の温度の上昇及び下降に伴い共振周波数を増大及び減少させる温度特性とは逆の温度特性を持つため、下電極膜13又上電極膜14の温度特性を保護膜16の温度特性が相殺し、保護膜16は温度補正膜としての機能を有することにより、圧電薄膜共振子10は環境温度が変化しても共振周波数があまり変化しない温度特性を持った周波数選択性が良好なものとなる。
さらに、この実施形態1では、下電極膜13及び上電極膜14をAlで形成しているが、圧電膜に応じて、圧電膜が最適な配向性を持つようにMo、Ti、Pt、Au、W、Ta等で形成するようにしてもよいことは勿論である。
また、Al、Mo、Ti、Pt、Au、W、Taのいずれか2種類以上を積層或いは2種類以上の合金又は積層したもの同士の合金で形成するようにしてもよい。この場合の組み合せとして、例えば、Mo/Tiの積層膜、TiN/Alの積層膜とCu数%/TiNの積層膜との合金、Ti/Al−Cu合金の積層膜、TiW/Cr/Auの積層膜がある。
また、この実施形態1では、圧電膜15をZnOで形成しているが、ZnO以外では、AlN(窒化アルミニウム)、KNbO3(ニオブ酸カリウム)、LiNbO3(ニオブ酸リチウム)、LiTaO3(タンタル酸リチウム)、PZT(チタン酸ジルコン酸鉛を主成分とするセラミックス)、BaTiO3(チタン酸バリウムをその主成分とするセラミックス)、水晶等により形成することもできる。
さらに、保護膜16は、SiO2又はSiO2を主成分とする酸化膜により形成されているが、それ以外では、BPSG(ボロン・リンドープのSiO2)、PSG(燐石英ガラス)のような半導体で用いられる酸化膜、SiN(窒化シリコン)、Si3N4(窒化シリコン)のような窒化シリコンを主成分とする窒化膜等により形成することもできる。
また、保護膜16をシリコン基板11の第2の面11bの開口側より削る等して除去又は保護膜16にシリコン基板11の第2の面11bの開口側より新たに保護膜を堆積することにより、保護膜16を含む積層共振体12全体の厚みが変わるため、共振周波数も変わることにより、周波数調整を行うこともできる。
これは図4のグラフに示すように、積層共振体12全体の厚み、即ち膜厚と共振周波数は反比例の関係にあるからで、保護膜16を除去すれば、積層共振体12の膜厚は薄くなって共振周波数を高く調整でき、保護膜16に新たに保護膜を堆積させれば、積層共振体12の膜厚は厚くなって共振周波数を低く調整でき、所望の共振周波数を得るには積層共振体12の膜厚を考慮すればよい。
実施の形態2.
図5は本発明の実施の形態2に係る圧電薄膜共振子を示す断面図である。
この実施の形態2は、シリコン基板11と保護膜16との間で、貫通穴18周辺に弾性波吸収層19を設けたものである。
この弾性波吸収層19は例えば、エポキシ樹脂、ポリイミド等の合成樹脂で形成されている。
この実施の形態2では、シリコン基板11と保護膜16との間で、貫通穴18周辺に弾性波吸収層19を設けたことにより、積層共振体12より洩れた横モードを弾性波吸収層19が吸収するため、共振特性が良好となる。
なお、この実施の形態2では、シリコン基板11と保護膜16との間に弾性波吸収層19を設けているが、シリコン基板11に下電極膜13が直接設けられたものでは、シリコン基板11に下電極膜13との間に弾性波吸収層19を設けても、弾性波吸収層19が前記と同様の作用効果を発揮することはいうまでもない。
実施の形態3.
図6は本発明の実施の形態3に係る圧電薄膜共振子により構成したラダー型フィルタを示す平面図、図7は図6のA−A線断面図、図8は図6のB−B線断面図、図9は同ラダー型フィルタをパッケージに入れた断面図、図10は同圧電薄膜共振子により構成したラダー型フィルタの回路図、図11はラダー型フィルタの共振特性を示すグラフ、図12はラダー型フィルタの共振特性の一部を拡大した図、図13はラダー型フィルタの製造工程を示す説明図である。
この実施の形態3のラダー型フィルタ20はバンドパスフィルタとして使用されるものである。そのラダー型フィルタ20を構成する各圧電薄膜共振子は、実施の形態1と同様に、シリコン基板11と、シリコン基板11の上に形成された保護膜16と、保護膜16の上に形成された下電極膜13と、下電極膜13の上に形成された圧電膜15と、圧電膜15の上に形成された上電極膜14とを備えて構成されている。
下電極膜13、圧電膜15及び上電極膜14は、相互に直列に接続されている3つの圧電薄膜共振子(図6に示すC1からC3)と、相互に並列に接続されている4つの圧電薄膜共振子(図6に示すCAからCD)とを構成するように、重なり合っている。
かかるラダー型フィルタ20は、合計7個の圧電薄膜共振子が単一のシリコン基板11において一体的に構成されている。
このように、ラダー型フィルタ20においては、各圧電薄膜共振子の貫通穴18は、シリコン基板11において、積層共振体12の励起部に対応する位置で開口し、シリコン基板11の第1の面11aないし積層共振体12に対して垂直に形成されている。
したがって、各積層共振体12を近接配置することができ、その結果、ラダー型フィルタ20の小型化が図れる。
また、各積層共振体12を近接配置することによって、圧電薄膜共振子10間を電気的に接続するための配線距離を短くすることができ、その結果、各圧電薄膜共振子10間の配線抵抗を低減することが可能となっている。
また、シリコン基板11を開口して形成された各貫通穴18の平面形状は、方形を除く平行四辺形である。
さらに、各上電極膜14の平面形状は、実施の形態1と同様に、その輪郭が自由曲線で構成された形状である。
したがって、各圧電薄膜共振子は実施の形態1と同様に、積層共振体12のうち、上電極膜14はその輪郭が自由曲線で構成された形状としたので、横モードの経路長が長くなって横モードが減衰されることとなる。
また、各貫通穴18の平面形状は方形を除く平行四辺形としたので、音響空洞からはみ出した横モードの経路長も長くなって横モードが減衰されることとなる。
かかる構成のラダー型フィルタ20は、図9に示すようにパッケージに入れられて実際は使用される。30は容器である、31は容器の蓋、32は端子、33は端子板である。
図10はバンドパスフィルタとして使用されるラダー型フィルタ20の回路図である。
また、この実施の形態2のラダー型フィルタ20は、図11のグラフに示すような共振周波数特性を有する。
本実施の形態におけるラダー型フィルタ20を構成する各圧電薄膜共振子は、実施の形態2と同様に、シリコン基板11と保護膜16との間で、各貫通穴18周辺に弾性波吸収層19を設けることにより、積層共振体12より洩れた横モードを弾性波吸収層19が吸収する。
したがって、ラダー型フィルタ20としての共振周波数特性は、図12に示すように、共振周波数帯域でフラットな特性で共振特性が良好なものとなっている。これに対して弾性波吸収層19を設けていないものは、図12に示すように、共振周波数帯域で周波数が小さく変動するギザギザな特性で共振特性が良好とはいえないものとなっている。
なお、この実施の形態3で、シリコン基板11と保護膜16との間に弾性波吸収層19を設けるようにしているが、シリコン基板11に下電極膜13が直接設けられたものでは、シリコン基板11に下電極膜13との間に弾性波吸収層19を設けてても、弾性波吸収層19が前記と同様の作用効果を発揮することはいうまでもない。
また、ラダー型フィルタ20を構成する各圧電薄膜共振子について、実施の形態1と同様に、下電極膜13と上電極膜14を構成する素材についても任意のものを選択することができることはいまでもない。
図13は、図1に示す圧電薄膜共振子により構成したラダー型フィルタの製造工程を示す説明図である。
ラダー型フィルタの製造においては、まず、図13(a)に示すように、シリコン基板11の第1の面(上面)に加熱処理を施して熱酸化被膜であるSiO2 の保護膜16を成膜する。
次に、図13(b)に示すように、スパッタリング法により、保護膜16に対して、下電極膜13を成膜し、しかる後に、所定のレジストパターンを介してドライエッチングまたはウェットエッチングを施すことにより、下電極膜13をパターニングする。
ドライエッチングにおいては、例えばAlに対してBCl3およびCl2の混合ガスを使用する。
また、ウェットエッチングにおけるエッチング液として、例えば、Alに対しては、リン酸、酢酸、硝酸を含む水溶液を使用する。電極膜に対する以降のエッチングについても、これらを使用する。
次に、図13(c)に示すように、スパッタリング法により、圧電膜15を成膜し、しかる後に、所定のレジストパターンを介してドライエッチングまたはウェットエッチングを施すことにより、圧電膜15をパターニングする。圧電膜122はZnOにより形成されている。
ウェットエッチングにおけるエッチング液として、例えば、ZnOに対しては酢酸水溶液を使用し、AlNに対しては加熱リン酸を含む水溶液を使用する。
次に、図13(d)に示すように、スパッタリング法により、上電極膜14を成膜し、しかる後に、所定のレジストパターンを介してドライエッチングまたはウェットエッチングを施すことにより、上電極膜14をパターニングする。
上電極膜14がパターンニングされることによって、各素子ごとに保護膜16を備えた積層共振体12が形成されることになる。
次に、図13(e)に示すように、シリコン基板11の第2の面(下面)11bに対して所定のレジストパターンを介してウエットエッチングを施す。
これによって、シリコン基板11の第1の面11a及び第2の面11bに対して垂直で平面的には平行四辺形の貫通穴18が形成される。
ウエットエッチングにおけるエッチング液として、例えばKOH液を使用する。
こうして複数の圧電薄膜共振子からなるラダー型フィルタが完成する。
上述した本発明に係る圧電薄膜共振子は、デュプレクサー又はインクジェットヘッドに応用することができる。
本発明の実施の形態1に係る圧電薄膜共振子を示す断面図。 同圧電薄膜共振子を示す平面図。 同圧電薄膜共振子の共振特性を示すグラフ。 同圧電薄膜共振子の膜厚と周波数の関係を示すグラフ。 本発明の実施の形態2に係る圧電薄膜共振子を示す断面図。 本発明の実施の形態3に係る圧電薄膜共振子により構成したラダー型フィルタを示す平面図。 図6のA−A線断面図。 図6のB−B線断面図。 同ラダー型フィルタをパッケージに入れた断面図。 同圧電薄膜共振子により構成したラダー型フィルタの回路図。 ラダー型フィルタの共振特性を示すグラフ。 ラダー型フィルタの共振特性の一部を拡大した図。 ラダー型フィルタの製造工程を示す説明図。
符号の説明
10 圧電薄膜共振子、11 シリコン基板、12 積層共振体、13 下電極膜(第1の電極膜)、14 上電極膜(第2の電極膜)、15 圧電膜、16 保護膜、18 貫通穴

Claims (11)

  1. 基板と、前記基板上に設けられた第一電極膜、前記第一電極膜に重なる圧電膜及び前記圧電膜に重なる第二電極膜からなる積層共振体とを備え、前記基板の前記積層共振体の対応位置に該基板を開口して貫通穴を形成し、
    前記積層共振体の平面形状はその輪郭が自由曲線で構成されることを特徴とする圧電薄膜共振子。
  2. 前記第一電極膜又は/及び第二電極膜の平面形状はその輪郭が自由曲線で構成されていることを特徴とする請求項1記載の圧電薄膜共振子。
  3. 前記基板を開口して形成された貫通穴の平面形状は方形を除く平行四辺形であることを特徴とする請求項1又は2記載の圧電薄膜共振子。
  4. 前記基板は(110)カットのシリコン基板であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の圧電薄膜共振子。
  5. 前記基板と前記第一電極膜の間であって、少なくとも前記貫通穴周辺に弾性波吸収層を設けたことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の圧電薄膜共振子。
  6. 前記弾性波吸収層は合成樹脂で構成されていることを特徴とする請求項5記載の圧電薄膜共振子。
  7. 前記基板と前記第一電極膜の間に保護膜を設けることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の圧電薄膜共振子。
  8. 前記保護膜を前記基板の開口側より所望の周波数となるように除去又は前記保護膜に前記基板の開口側より所望の周波数となるように新たに保護膜を堆積させることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の圧電薄膜共振子。
  9. 前記圧電膜はZnO、AlN、KNbO3、LiNbO3、LiTaO3、PZT、BaTiO3、水晶のいずれかで形成されていることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の圧電薄膜共振子。
  10. 請求項1〜9のいずれか1つに記載の圧電薄膜共振子を複数有し、前記複数の圧電薄膜共振子がラダー型接続され、ラダー型フィルタとして構成されていることを特徴とするフィルタ。
  11. 基板と、前記基板上に設けられた第一電極膜、前記第一電極膜に重なる圧電膜及び前記圧電膜に重なる第二電極膜からなる積層共振体を形成する工程と、
    前記基板に対して、前記積層共振体に対応する位置において開口する貫通穴を形成する工程とを含む圧電薄膜共振子の製造方法において、
    前記貫通穴を形成する工程は前記基板における前記積層共振体を設けた面とは反対側の面側よりエッチング液を用いたウエットエッチングにより開口するようにしたことを特徴とする圧電薄膜共振子の製造方法。
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