JP2005307854A - ベーンポンプ - Google Patents
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Abstract
【課題】作動室の液体と背圧室の液体との差圧が小さくなってもベーンのチャタリングを確実に抑制する。
【解決手段】ベーンポンプ11は、カムリング12内に収容されたロータ17と、ロータ17の外周面に開口する複数のベーン溝24にそれぞれ出没可能に設けられ、かつロータ17の回転に伴いカムリング12のカム面13を摺動する複数のベーン25と、隣合うベーン25間毎に設けられた複数の作動室26とを備え、ロータ17の回転に伴う各作動室26の容積変化により同作動室26内へ液体を吸入し、これを加圧して吐出する。こうしたベーンポンプ11において、各ベーン溝24の底部毎に、作動室26から吐出された液体が導かれる背圧室27をさらに設け、各ベーン25について、作動室26内の液体の圧力が作用する外端面の受圧面積を、背圧室27内の液体の圧力が作用する内端面の受圧面積よりも小さく設定する。
【選択図】 図1
【解決手段】ベーンポンプ11は、カムリング12内に収容されたロータ17と、ロータ17の外周面に開口する複数のベーン溝24にそれぞれ出没可能に設けられ、かつロータ17の回転に伴いカムリング12のカム面13を摺動する複数のベーン25と、隣合うベーン25間毎に設けられた複数の作動室26とを備え、ロータ17の回転に伴う各作動室26の容積変化により同作動室26内へ液体を吸入し、これを加圧して吐出する。こうしたベーンポンプ11において、各ベーン溝24の底部毎に、作動室26から吐出された液体が導かれる背圧室27をさらに設け、各ベーン25について、作動室26内の液体の圧力が作用する外端面の受圧面積を、背圧室27内の液体の圧力が作用する内端面の受圧面積よりも小さく設定する。
【選択図】 図1
Description
本発明は、複数のベーンを有するロータをカムリング内で回転させ、その回転に伴い隣合うベーン間の作動室の容積を変化させてポンプ作用を行うようにしたベーンポンプに関するものである。
ポンプの一形態として知られるベーンポンプでは、一般にカムリング内にロータが設けられている。ロータには、その外周面において開口し、かつロータの中心に向って延びる複数のベーン溝が設けられ、各ベーン溝にベーンが出没可能に収容されている。このベーンポンプでは、隣合うベーン間の作動室の容積がロータの回転に伴い変化し、その変化により液体の吸入・加圧・吐出が行われる。
こうしたポンプ作用を行うには、各ベーンが径方向外方へ付勢されて、常にカムリング内周のカム面に接触することが重要である。このベーンの付勢のために、各ベーン溝の底部に背圧室が設けられており、作動室から吐出された高圧の液体が背圧室に導入される。
各ベーンの外端面には、その受圧面積と作動室内の液体の圧力との積で表される力が、ベーンをベーン溝内に没入させようとする力として作用する。また、各ベーンの内端面には、その受圧面積と背圧室内の液体の圧力との積で表される力が、ベーンをベーン溝から突出させようとする力として作用する。そして、各ベーンはこれらの力が釣合う方向へ変位する。基本的には、背圧室内の液体の圧力が作動室内の液体の圧力よりも高い。そのため、各ベーンの内端面の受圧面積と外端面の受圧面積とが同じである場合には、ベーンがベーン溝から突出する方向へ変位してカム面に当接する。なお、ベーン溝内にベーンをベーン溝から突出させる方向へ付勢するばねが設けられる場合もある。
本発明にかかる先行技術文献としては、例えば特許文献1に記載された「可変容量型流体機械」が挙げられる。これは、シリンダ(カムリング)を二分割して一対の可動シリンダ半部を形成し、それらの対向間隔を変化させることで吐出容量を無段階に変化させるように構成したものである。さらに、この「可変容量型流体機械」では、カム面の形状を工夫することで、ロータの回転に伴いベーンが一方の可動シリンダ半部から他方の可動シリンダ半部へ移行する際(カム面の継目部分を通過する際)のチャタリング発生を抑制しようとしている。
特開2004−44414号公報
上述したように、従来のベーンポンプでは、背圧室側から作用する液体の圧力と作動室側から作用する液体の圧力との差圧を利用してベーンをカム面に押付けるようにしている。一方で、作動室ではその容積変化に伴い液体の圧力が変化する。外部から液体を吸入する際には作動室内の圧力が低いが、ロータの回転に伴う容積減少に従い圧力が上昇する。この圧力の上昇に従い前記差圧が小さくなり、液体を吐出する前後の期間では差圧が実質的に「0」となる。そのため、ベーンをベーン溝から突出させる方向の力は、ロータの回転に伴う遠心力(ばねを用いている場合にはその付勢力が加わる)のみになる。その結果、ベーンのカム面に対する押付力が小さくなり、ベーンがカム面に接触したり離れたりする現象(チャタリング)が発生するおそれがある。
なお、特許文献1に記載された技術は、カム面の継目部分をベーンが摺動する際にチャタリングが起るのを抑制するものであり、上述したような作動室の圧力が高くなって差圧が小さくなったときに発生するチャタリングについて対策するものではない。
本発明はこのような実情に鑑みてなされたものであって、その目的は、作動室の液体と背圧室の液体との差圧が小さくなってもベーンのチャタリングを確実に抑制することのできるベーンポンプを提供することにある。
以下、上記目的を達成するための手段及びその作用効果について記載する。
請求項1に記載の発明では、カムリングと、前記カムリング内に設けられたロータと、前記ロータの外周面に開口する複数のベーン溝にそれぞれ出没可能に設けられ、前記ロータの回転に伴い前記カムリングのカム面を摺動する複数のベーンと、隣合うベーン間毎に設けられた複数の作動室とを備え、前記ロータの回転に伴う各作動室の容積変化により、同作動室内へ液体を吸入し、これを加圧して吐出するベーンポンプにおいて、前記各ベーン溝の底部毎に、前記作動室から吐出された液体が導かれる背圧室を設け、前記各ベーンについて、前記作動室内の液体の圧力が作用する外端面の受圧面積を、前記背圧室内の液体の圧力が作用する内端面の受圧面積よりも小さく設定している。
請求項1に記載の発明では、カムリングと、前記カムリング内に設けられたロータと、前記ロータの外周面に開口する複数のベーン溝にそれぞれ出没可能に設けられ、前記ロータの回転に伴い前記カムリングのカム面を摺動する複数のベーンと、隣合うベーン間毎に設けられた複数の作動室とを備え、前記ロータの回転に伴う各作動室の容積変化により、同作動室内へ液体を吸入し、これを加圧して吐出するベーンポンプにおいて、前記各ベーン溝の底部毎に、前記作動室から吐出された液体が導かれる背圧室を設け、前記各ベーンについて、前記作動室内の液体の圧力が作用する外端面の受圧面積を、前記背圧室内の液体の圧力が作用する内端面の受圧面積よりも小さく設定している。
上記の構成によれば、カムリング内でロータが回転すると、その回転に伴い隣合うベーン間毎の作動室の容積が変化する。この変化により液体が各作動室内に吸入され、加圧及び吐出される。
各ベーンの外端面には、その受圧面積と作動室内の液体の圧力との積で表される力が、ベーンをベーン溝内に没入させようとする力として作用する。また、各ベーンの内端面には、その受圧面積と背圧室内の液体の圧力との積で表される力が、ベーンをベーン溝から突出させようとする力として作用する。背圧室内の液体は作動室から吐出されたものであり、高い圧力を有する。そして、各ベーンはこれらの力が釣合う方向へ変位する。
ここで、請求項1に記載の発明では、各ベーンについて、外端面の受圧面積が内端面の受圧面積よりも小さく設定されている。このため、作動室の容積減少に伴う圧力上昇に従い背圧室の液体の圧力との差圧が小さくなっても、各ベーンをベーン溝から突出させる方向の力が、ベーン溝内に没入させる方向の力に打勝ち、各ベーンがカム面に押付けられる。従って、ベーンがカム面に接触したり、カム面から離れたりするチャタリング現象が起りにくくなる。
請求項2に記載の発明では、請求項1に記載の発明において、前記各ベーンの出没方向における中間部分には段差部が設けられ、同ベーンの前記段差部よりも前記作動室側の部分が前記背圧室側の部分よりも細く形成されているとする。
上記のように、各ベーンの形状を工夫することで、簡単な構成でありながら、請求項1における各ベーンの外端面及び内端面についての受圧面積の大小関係を簡単に設定することができる。
請求項3に記載の発明では、請求項2に記載の発明において、前記作動室内の液体の圧力が前記背圧室内の液体の圧力と略同一となるときに、前記各ベーンと前記ベーン溝の壁面との隙間を通って前記段差部に至る液体の圧力を低下させるための圧力低下手段がさらに設けられているとする。
ここで、各ベーンがベーン溝に対し出没することから、同ベーンとベーン溝の壁面との間には少なからず隙間が生ずる。作動室内又は背圧室内の液体がこの隙間を通って段差部に至ると、その段差部にも同液体の圧力が作用する。この圧力が作用する方向は、各ベーンをベーン溝内に没入させる方向である。そのため、作動室内の液体の圧力が背圧室内の液体の圧力と略同一となったときには、各ベーンの外端面の受圧面積が段差部の分実質的に増大して内端面の受圧面積と略同一になってしまい、ベーンの外端面の受圧面積を内端面の受圧面積よりも小さくしたことによる効果が相殺されるおそれがある。
この点、請求項3に記載の発明では、段差部に至る液体の圧力が圧力低下手段によって低下させられる。そのため、この低下の分、各ベーンをベーン溝内に没入させる方向の力が弱まり、同ベーンは確実にカム面に押付けられることとなる。
請求項4に記載の発明では、請求項3に記載の発明において、前記圧力低下手段は、前記ベーン溝の前記段差部近傍と、前記作動室への前記液体の吸入通路とを繋ぐ連通路を備えるとする。
上記の構成によれば、段差部に至った液体は、連通路を通って作動室への液体の吸入通路へ導かれる。吸入通路での液体の圧力は、作動室での加圧前であることから低い。この吸入通路に繋がっている連通路での液体の圧力も低い。従って、段差部に至った液体が連通路を経て吸入通路へ導かれることで、同段差部近傍の液体の圧力が低下し、請求項3に記載の発明の効果が確実なものとなる。なお、請求項4に記載の発明では、吸入通路が圧力低下のための通路の一部を構成するため、その分、同圧力低下のための通路が短くてすむ。
以下、本発明のベーンポンプを具体化した一実施形態について、図面を参照して説明する。このベーンポンプの適用対象としては、例えば、内燃機関に燃料を供給する燃料ポンプ、自動車のパワーステアリング装置に使用するポンプ等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
図1及び図2に示すように、ベーンポンプ11は、略円環状をなし、かつ自身の内周面をカム面13とするカムリング12を備えている。ここで、カム面13の位置を特定するために、図1における右下45°の箇所を便宜上基準位置とし、反時計回り方向の角度θで表すこととする。基準位置の角度θをθ0とし、この基準位置から45°ずつ回転位相が進んだ位置をそれぞれθ1,θ2,・・・,θ7とする。
「カムリング12の中心C」−「カム面13」の距離D(図2参照)は角度θに応じて異なっている。距離Dは、角度θがθ0となる位置(基準位置)で最小となり、回転位相が進む(角度θが大きくなる)に従って徐々に大きくなる。そして、距離Dは基準位置から90°回転位相が進んだ位置(角度θがθ2となる位置)で最大となる。さらに、回転位相が進むと、距離Dは前記とは逆に徐々に小さくなる。そして、距離Dは基準位置から180°回転位相が進んだ位置(角度θがθ4となる位置)で最小、すなわち基準位置と同じになる。距離Dは前記θ4から回転位相が進むに従って再び徐々に大きくなる。そして、距離Dは基準位置から270°回転位相が進んだ位置(角度θがθ6となる位置)で最大となる。さらに、回転位相が進むと、距離Dは前記とは逆に徐々に小さくなる。このように、角度θがθ0〜θ4となる領域、及びθ4〜θ0となる領域のそれぞれによって、距離Dの変化態様についてのサイクルが構成されている。
カムリング12は、その厚み方向における両側(図2の左右両側)に配置された一対の側板14,15によって挟み込まれている。一方(図2の左側)の側板14においてカムリング12の中心Cに対応する箇所には、内燃機関等によって回転駆動される駆動軸16が貫通した状態で、図1の反時計回り方向への回転可能に支持されている。駆動軸16の一部はカムリング12内に入り込んでおり、その周りには、同カムリング12内に収容された円板状のロータ17が一体回転可能に取付けられている。このロータ17は駆動軸16と一体形成されてもよい。
両側板14,15、カムリング12及びロータ17によって囲まれる空間Sに燃料、オイル等の非圧縮性の液体18を吸入するために、側板14のロータ17側の面(図2の右側面)には、略円弧状をなす一対の吸入ポート19が形成されている。両吸入ポート19は、径方向については、前記空間Sに対応する箇所に位置している。また、両吸入ポート19は、周方向については、前述したカム面13の角度θがθ1,θ5である箇所の近傍に位置している。このように、両吸入ポート19は中心Cを挟んで相対向する箇所(図1の左右)に位置している。なお、側板15のロータ17側の面(図2の左側面)にも、同様の一対の吸入ポート19が形成されている。側板14側の吸入ポート19と側板15側の吸入ポート19とは前記空間Sを介して常時連通している。
また、側板14側の吸入ポート19には、同側板14の外面(図2の下面)において開口する吸入通路21が接続されており、貯留タンク(図示略)等に貯留された液体18が吸入通路21及び吸入ポート19を通じて空間Sに導入される。
前記空間Sから液体18を吐出するために、側板15のロータ17側の面には略円弧状をなす一対の吐出ポート22が形成されている。両吐出ポート22は、径方向については、前記空間Sに対応する箇所に位置している。また、両吐出ポート22は、周方向については、前述したカム面13の角度θがθ3,θ7である箇所の近傍、すなわち、各吸入ポート19に対し回転位相を約90°ずらした箇所の近傍に位置している。このように、両吐出ポート22は中心Cを挟んで相対向する箇所(図1の上下)に位置している。側板14のロータ17側の面にも、同様の一対の吐出ポート22が形成されている。側板15の吐出ポート22と側板14の吐出ポート22とは前記空間Sを介して常時連通している。
また、側板15の吐出ポート22には、同側板15の外面(図2の上面)において開口する吐出通路23が接続されており、前記空間S内で加圧されて高圧となった液体18が、これらの吐出ポート22及び吐出通路23を通じてベーンポンプ11外の液体供給先(例えば内燃機関の場合、燃料噴射弁)へ向けて吐出される。
ロータ17にはその外周面において開口し、かつ中心Cに向けて延びる複数(ここでは8つ)のベーン溝24が、周方向に等角度毎又は略等角度毎に設けられている。各ベーン溝24には、ベーン25が出没可能に収容されている。各ベーン25はベーン溝24から突出する方向(径方向外方)へ付勢されて、前記カム面13に押付けられる構成となっている。この構成については後述する。
隣合うベーン25間であって、カムリング12、ロータ17及び両側板14,15によって囲まれた空間は、ロータ17の回転に伴い容積が変化する作動室26を構成している。この構成により、ベーンポンプ11では、容積の拡大に伴い発生する吸引力により、外部から液体18が吸入通路21及び吸入ポート19を通じて作動室26に吸入される。ロータ17の回転に伴い、作動室26の回転方向における後ろ側のベーン25が吸入ポート19を通過すると作動室26が閉空間となる。さらに、ロータ17の回転に伴う作動室26の容積の減少に従い液体18が加圧され、高圧となった液体18が、吐出ポート22及び吐出通路23を通じて外部へ吐出される。
因みに、カム面13が前述したような略楕円形状をなしていることから、角度θがθ2〜θ4となる箇所、及びθ6〜θ0となる箇所をベーン25が摺動するときには作動室26の容積が減少する。また、角度θがθ0〜θ2となる箇所、及びθ4〜θ6となる箇所をベーン25が摺動するときには作動室26の容積が増加する。
こうした液体18の吸入・加圧・吐出等からなるポンプ作用を行うには、各ベーン25がベーン溝24から突出する方向へ付勢されて、常にカム面13に接触することが重要である。そこで、このベーン25の付勢のために、図3に示すように各ベーン溝24の底部に背圧室27が設けられている。また、両側板14,15のロータ17側の面にはそれぞれ円環状をなす背圧導入溝28が設けられている。各背圧導入溝28は、径方向については、各背圧室27に対応する箇所に位置している。側板14側の背圧導入溝28と側板15側の背圧導入溝28とは各背圧室27を介して常時連通している。側板15側の背圧導入溝28は前述した吐出通路23に接続されており、吐出ポート22を通じて吐出された高圧の液体18が、吐出通路23及び背圧導入溝28を順に経て背圧室27に導入される。
各ベーン25の外端面25Aには、その受圧面積S1と作動室26内の液体18の圧力P1との積で表される力F1が、ベーン25をベーン溝24内に没入させようとする力として作用する。また、各ベーン25の内端面25Bには、その受圧面積S2と背圧室27内の液体18の圧力P2との積で表される力F2が、ベーン25をベーン溝24から突出させようとする力として作用する。背圧室27内の液体18は作動室26から吐出ポート22を通じて吐出されたものであり、高い圧力を有する。そして、各ベーン25はこれらの力F1,F2が釣合う方向へ変位する。基本的には、圧力P2が圧力P1よりも高いため、ベーン25がベーン溝24から突出する方向へ変位させられてカム面13に押付けられる。
ここで、仮に、各ベーン25における受圧面積S1,S2が互いに同一であるとすると、圧力P2と圧力P1との差圧ΔP(=P2−P1)により、正確にはこれに遠心力が加わって、ベーン25がカム面13に押付けられる。一方で、作動室26ではその容積変化に伴い液体18の圧力P1が変化する。外部から液体18を吸入する際には作動室26内の圧力P1が低いが、ロータ17の回転に伴う容積減少に従い同圧力P1が上昇する。そのため、液体18を吸入する等、作動室26内の圧力P1が低いときには前記差圧ΔPが大きく、ベーン25がカム面13に押付けられる。ところが、上記容積減少に伴う圧力P1の上昇に従い前記差圧ΔPが小さくなり、液体18を吐出する前後の期間では差圧ΔPが実質的に「0」となる。その結果、ベーン25のカム面13に対する押付力ΔF(=F2−F1)が小さくなり、ベーン25がカム面13に接触したり離れたりする現象(チャタリング)が発生するおそれがある。
そこで、本実施形態では、こうしたチャタリングの発生を抑制するために、各ベーン溝24について、ロータ17外周面での開口部が同ベーン溝24の底部よりも小さく形成されている。各ベーン溝24において、前記開口部と底部との中間の部分には段差部24Aが形成されている。この段差部24Aはベーン溝24の幅方向(図3の左右方向)における片側のみに設けられている。
これに対応して、各ベーン25の出没方向における中間部分には段差部25Cが設けられている。この段差部25Cはベーン25の厚み方向(図3の左右方向)における片側にのみ設けられている。そして、この段差部25Cの形成により、ベーン25の段差部25Cよりも作動室26側の部分が背圧室27側の部分よりも細くなっている。こうすることで、各ベーン25における外端面25Aの受圧面積S1が内端面25Bの受圧面積S2よりも小さくされている。
さらに、各ベーン25がベーン溝24に対し出没することから、同ベーン25とベーン溝24の壁面との間には少なからず隙間G1,G2が生ずる。作動室26内又は背圧室27内の液体18がこれらの隙間G1,G2を通って段差部25Cに至ると、その段差部25Cにも同液体18の圧力が作用する。この圧力が作用する方向は、各ベーン25をベーン溝24内に没入させる方向である。そのため、圧力P1が圧力P2と略同一となったときには、各ベーン25の外端面25Aの受圧面積S1が実質的に増大して外端面25Aの受圧面積S2と略同一になってしまい、受圧面積S1を受圧面積S2よりも小さくしたことによる効果が相殺されるおそれがある。
そこで、本実施形態では、上記のように圧力P1が圧力P2と略同一となるときに、隙間G1,G2を通って段差部25Cに至った液体18の圧力を低下させるために、略円弧状をなす一対の圧力低下溝31が設けられている。両圧力低下溝31は、径方向については、段差部24Aに対応する箇所に位置している。また、両圧力低下溝31は、周方向については作動室26の容積が減少して液体18の圧力P1が上昇する領域に位置している。ここでは、両圧力低下溝31はカム面13について、角度θがθ2〜θ4となる箇所と、θ6〜θ0となる箇所とに位置している。
側板14の圧力低下溝31は、同側板14内に設けられた圧力低下通路32によって前述した吸入通路21に接続されている。これらの圧力低下溝31及び圧力低下通路32によって、段差部24Aの近傍と吸入通路21とを繋ぐ連通路33が構成されている。
なお、図2中の34は、液体18が側板14と駆動軸16との隙間を通って外部へ漏れ出るのを抑制するためのシール部材である。
上記のようにして本実施形態のベーンポンプ11が構成されている。このベーンポンプ11では、駆動軸16の回転に伴いカムリング12内でロータ17が回転すると、その回転に伴い隣合うベーン25間毎の作動室26の容積が変化し、液体18が各作動室26内に吸入され、加圧及び吐出される。
上記のようにして本実施形態のベーンポンプ11が構成されている。このベーンポンプ11では、駆動軸16の回転に伴いカムリング12内でロータ17が回転すると、その回転に伴い隣合うベーン25間毎の作動室26の容積が変化し、液体18が各作動室26内に吸入され、加圧及び吐出される。
各ベーン25の外端面25Aには、その受圧面積S1と作動室26内の液体18の圧力P1との積で表される力F1が、ベーン25をベーン溝24内に没入させようとする力として作用する。また、各ベーン25の内端面25Bには、その受圧面積S2と背圧室27内の液体18の圧力P2との積で表される力F2が、ベーン25をベーン溝24から突出させようとする力として作用する。そして、各ベーン25はこれらの力F1,F2が釣合う方向へ変位する。
ここで、本実施形態では、各ベーン25の形状の工夫により、外端面25Aの受圧面積S1が内端面25Bの受圧面積S2よりも小さく設定されている。このため、作動室26の容積減少に伴う圧力P1の上昇に従い背圧室27の液体18の圧力P2との差圧ΔP(=P2−P1)が小さくなっても、各ベーン25をベーン溝24から突出させる方向の力F2が、ベーン溝24内に没入させる方向の力F1に打勝ち、各ベーン25がカム面13に押付けられる。従って、ベーン25のチャタリングが起りにくくなる。
また、作動室26内又は背圧室27内の各液体18が、ベーン25とベーン溝24の壁面との隙間G1,G2を通って段差部25Cに至ると、その段差部25Cにも液体18の圧力が作用する。この圧力が作用する方向は、各ベーン25をベーン溝24内に没入させる方向である。しかし、前記のようにして段差部25Cに至った高圧の液体18は、圧力低下溝31及び圧力低下通路32からなる連通路33を通って吸入通路21へ導かれる。これは、吸入通路21内の液体18の圧力が段差部25Cでの液体18の圧力(吐出ポート22からの吐出圧と同じ)よりも低いからである。これに伴い段差部25C近傍の液体18の圧力が低下し、その分、各ベーン25をベーン溝24内に没入させる方向の力F1が弱まる。圧力P1が圧力P2と略同一となるときには、各ベーン25の外端面25Aの受圧面積S1が実質的に増大して内端面25Bの受圧面積S2と略同一になるが、前述した段差部25Cでの液体18の圧力低下に伴う力F1の減少により、ベーン25はカム面13に押付け続けられることとなり、チャタリングの発生が確実に抑制される。
図4は、ベーン25が、図1における角度θがθ0(又はθ4)となる位置からθ4(又はθ0)となる位置まで変位する際のベーン25の押付力ΔFの変化態様を示している。同図4における実線は、受圧面積S1を受圧面積S2よりも小さく設定し、かつ連通路33を設けた場合(実施例)を示し、二点鎖線は前記設定をせず、かつ連通路33を設けない場合(比較例)を示している。
角度θが概ねθ0〜θ2(θ4〜θ6)の範囲で変化する際には、実施例及び比較例のいずれの場合にも、押付力ΔFは十分大きな値ΔF1となる。一方、角度θが概ねθ2〜θ4(θ6〜θ0)の範囲で変化する場合、比較例では押付力ΔFが略「0」となるのに対し、実施例では押付力ΔFが前述した値ΔF1ほどではないものの「0」よりも十分大きな値ΔF2となる。このことからも、角度θがθ2〜θ4(θ6〜θ0)の範囲で変化する場合、実施例では比較例に比べベーン25のチャタリングが起りにくくなっていることがわかる。
以上詳述した本実施形態によれば、次の効果が得られる。
(1)各ベーン25について、作動室26内の液体18の圧力P1が作用する外端面25Aの受圧面積S1を、背圧室27内の液体18の圧力P2が作用する内端面25Bの受圧面積S2よりも小さく設定している。このため、圧力P1が高くなって圧力P2との差圧ΔP(P2−P1)が小さくなっても、各ベーン25をベーン溝24から突出させる方向へ付勢してカム面13に押付けられた状態に維持し、チャタリングの発生を抑制することができる。
(1)各ベーン25について、作動室26内の液体18の圧力P1が作用する外端面25Aの受圧面積S1を、背圧室27内の液体18の圧力P2が作用する内端面25Bの受圧面積S2よりも小さく設定している。このため、圧力P1が高くなって圧力P2との差圧ΔP(P2−P1)が小さくなっても、各ベーン25をベーン溝24から突出させる方向へ付勢してカム面13に押付けられた状態に維持し、チャタリングの発生を抑制することができる。
(2)各ベーン25の出没方向における中間部分に段差部25Cを設け、同ベーン25の段差部25Cよりも作動室26側の部分を背圧室27側の部分よりも細く形成している。このように、各ベーン25の形状を工夫することで、簡単な構成でありながら上記(1)における各ベーン25の外端面25A及び内端面25Bについての受圧面積S1,S2の大小関係を簡単に設定することができる。
(3)圧力P1が圧力P2と略同一となるときに、各ベーン25とベーン溝24の壁面との隙間G1,G2を通って段差部25Cに至った液体18の圧力を低下させるようにしている。このため、段差部25Cに作用する圧力を低くし、受圧面積S1を受圧面積S2よりも小さくしたことによる効果が相殺されるのを抑制することができる。
(4)吸入通路21内の液体18の圧力が、吐出ポート22から吐出される液体18の圧力よりも低いことを利用し、段差部25C近傍の液体18を、連通路33を通じて吸入通路21に流出させることで同段差部25C近傍の液体18の圧力を低下させるようにしている。このため、液体18を圧力の低い箇所へ導くための通路(ここでは圧力低下通路32が相当する)を短くすることができる。
(5)本実施形態では、各ベーン25をベーン溝24から突出させる方向へ付勢するために弾性体等の別部材を新たに設けていない。そのため、こうした別部材の追加に伴う部品点数の増加を抑制することができる。また、上記別部材の配置に伴うベーン溝24の加工が不要であり、加工部位の増加も抑制することができる。
(6)各ベーン25をカム面13に押付けるために、本実施形態以外にも例えばロータ17の回転に伴う遠心力を増大させる機構を設けることが考えられる。この場合には、ロータ17の回転速度が低いときにベーン25の十分な押付力ΔFが得られないおそれがある。この点、各ベーン25における外端面25Aの受圧面積S1を内端面25Bの受圧面積S2よりも小さく設定した本実施形態では、ロータ17の回転速度に拘らず、各ベーン25をベーン溝24から突出させる方向の付勢力を得ることができる。ロータ17が低い回転速度で回転している場合でも、各ベーン25をカム面13に確実に押付けてチャタリングの発生を抑制することができる。
こうした効果は、駆動軸16が自動車等のエンジンの出力軸によって回転されるベーンポンプ11に特に有効である。エンジンの始動時には、その出力軸の回転速度が低く、ベーンポンプ11の駆動軸16及びロータ17の回転速度も低くなるからである。
(7)各ベーン25をカム面13に押付けるために、本実施形態以外にも例えばベーン25の外端部に磁石を設け、その磁気吸引力によってベーン25をカムリング12に接触させることが考えられる。しかし、磁石に鉄系の異物が吸着した場合、取り除くことが難しい。こうして付着した異物は、カム面13を摩耗し、吐出効率の低下等を引き起すおそれがある。この点、本実施形態では、磁石を用いることなく各ベーン25をカム面13に押付けるようにしている。そのため、異物の吸着がなく、その異物による上記不具合の発生を抑制することができる。
なお、本発明は次に示す別の実施形態に具体化することができる。
・段差部24A近傍の液体18の圧力を低下させるために、同液体18を吸入通路21とは異なる箇所、例えば、液体の貯留タンク(燃料タンク等)へ導いてもよい。ただし、この場合には圧力低下溝31と貯留タンクとを繋ぐ管路(リターン通路)が別途必要となる。
・段差部24A近傍の液体18の圧力を低下させるために、同液体18を吸入通路21とは異なる箇所、例えば、液体の貯留タンク(燃料タンク等)へ導いてもよい。ただし、この場合には圧力低下溝31と貯留タンクとを繋ぐ管路(リターン通路)が別途必要となる。
・前記実施形態では、各ベーン25の厚み方向(図3の左右方向)における片側に段差部25Cを設けたが、両側に段差部25Cを設けてもよい。この場合、ベーン25の形状変更に対応してベーン溝24における段差部24Aの形状も変更する。このようにベーン25及びベーン溝24の形状を変更しても、前記実施形態と同様の作用及び効果が得られる。
・本発明は、ベーン溝24内にベーン25を突出させる方向へ付勢するばねを設けたタイプのベーンポンプにも適用可能である。
・本発明は、駆動軸16をカムリング12の中心Cから偏心した箇所に設けたベーンポンプ11にも適用可能である。
・本発明は、駆動軸16をカムリング12の中心Cから偏心した箇所に設けたベーンポンプ11にも適用可能である。
11…ベーンポンプ、12…カムリング、13…カム面、17…ロータ、18…液体、21…吸入通路、24…ベーン溝、25…ベーン、25A…外端面、25B…内端面、25C…段差部、26…作動室、27…背圧室、33…連通路(圧力低下手段)、G1,G2…隙間、S1,S2…受圧面積、P1,P2…圧力。
Claims (4)
- カムリングと、
前記カムリング内に設けられたロータと、
前記ロータの外周面に開口する複数のベーン溝にそれぞれ出没可能に設けられ、前記ロータの回転に伴い前記カムリングのカム面を摺動する複数のベーンと、
隣合うベーン間毎に設けられた複数の作動室と
を備え、前記ロータの回転に伴う各作動室の容積変化により、同作動室内へ液体を吸入し、これを加圧して吐出するベーンポンプにおいて、
前記各ベーン溝の底部毎に、前記作動室から吐出された液体が導かれる背圧室を設け、前記各ベーンについて、前記作動室内の液体の圧力が作用する外端面の受圧面積を、前記背圧室内の液体の圧力が作用する内端面の受圧面積よりも小さく設定することを特徴とするベーンポンプ。 - 前記各ベーンの出没方向における中間部分には段差部が設けられ、同ベーンの前記段差部よりも前記作動室側の部分が前記背圧室側の部分よりも細く形成されている請求項1に記載のベーンポンプ。
- 前記作動室内の液体の圧力が前記背圧室内の液体の圧力と略同一となるときに、前記各ベーンと前記ベーン溝の壁面との隙間を通って前記段差部に至る液体の圧力を低下させるための圧力低下手段がさらに設けられている請求項2に記載のベーンポンプ。
- 前記圧力低下手段は、前記ベーン溝の前記段差部近傍と、前記作動室への前記液体の吸入通路とを繋ぐ連通路を備える請求項3に記載のベーンポンプ。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2004125874A JP2005307854A (ja) | 2004-04-21 | 2004-04-21 | ベーンポンプ |
Applications Claiming Priority (1)
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JP2004125874A JP2005307854A (ja) | 2004-04-21 | 2004-04-21 | ベーンポンプ |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
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Family Applications (1)
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JP2004125874A Pending JP2005307854A (ja) | 2004-04-21 | 2004-04-21 | ベーンポンプ |
Country Status (1)
Country | Link |
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JP (1) | JP2005307854A (ja) |
Cited By (3)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
KR101003954B1 (ko) | 2008-01-15 | 2010-12-30 | 인천대학교 산학협력단 | 일체형 구동축-베인이 구비된 로타리 압축기 |
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-
2004
- 2004-04-21 JP JP2004125874A patent/JP2005307854A/ja active Pending
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