以下、図面を参照しつつ、本発明の実施の形態について説明する。なお、以下の説明では、本発明をパチンコ遊技機に使用した場合を例示して説明する。
先ず、図1〜図3を参照しつつ、本発明の第1の実施の形態におけるパチンコ遊技機の概略構成について説明する。ここで、図1は本実施の形態におけるパチンコ遊技機を示す正面図及びその施錠装置を拡大して示す正面図、図2はそのパチンコ遊技機を開放した状態を示す背面図及びその施錠装置を拡大して示す背面図、図3はそのパチンコ遊技機を示す側面図及びその施錠装置を拡大して示す側面図である。
このパチンコ遊技機11は、基枠として方形枠状に形成された外枠12と、この外枠12の開口面域に整合するように方形状に形成された開閉搭載枠としての前枠13とを備えており、前枠13は、外枠12に対して、外枠12の正面左側上下に設けられたヒンジ金具14a,14bにより開閉可能に取り付けられていると共に、正面右側に設けられた施錠装置15により閉鎖状態に保持されるようになっている。
前枠13には、遊技盤16が収容されており、遊技盤16の前面側には、図柄表示装置の表示部17、中央飾り18、始動入賞口19、大入賞口20等の各種遊技部品がそれぞれ配設され、遊技領域21が形成されている。そして、前枠13の正面側には、ガラス扉22が開閉可能且つ着脱可能に取り付けられ、ガラス扉22は施錠装置15により前枠13に閉鎖状態に保持されるようになっている。また、前枠13のガラス扉22の下方には上球皿23が設けられ、その上球皿23の下方には下球皿24が設けられ、さらに、下球皿24の正面右側には発射ハンドル25が前方に突出して設けられている。
一方、前枠13の背面側には裏セット盤26が設けられている。その裏セット盤26は、背面側から見て右側の上下に設置されたヒンジ27a,27bにより開閉可能に設けられ、さらに、閉鎖レバー28a,28b,28cにより遊技盤16の裏面を覆うように閉鎖状態に保持されるようになっている。そして、裏セット盤26には、予備賞球を貯留する球貯留タンク29、遊技球を整列状態で待機させる待機通路30、遊技盤16での入賞状態等に基づき賞球を払い出す球払出装置31、球払出装置31から払い出された賞球を上球皿23又は下球皿24に排出するための球払出通路32等の賞球装置が装備されていると共に、電源基板33や遊技制御基板34等の各種回路基板及び電子部品等が取付けられている。
次に、図1〜図3を参照しつつ、このパチンコ遊技機11における施錠装置15の概略構成について説明する。
施錠装置15は、前枠13の右側部背面側に設けられた施錠金具35と、外枠12の右側枠杆36の内面側において上下2箇所に設けられた施錠受け金具37とから構成されている。
施錠金具35は、略L字状に折曲成形されたベース板38を基体として構成されており、ベース板38には、前枠13の右側部背面に沿って複数のネジにより固定される固定片40と、固定片40の左側部から後方に折曲された立設片41とが形成されている。そして、立設片41の上下端部には、それぞれ、内側方に延出する支持片部42が形成されており、各支持片部42にはリベット状の傾動支点43を介して上下のフック部材44が傾動可能に枢設されている。
この上下のフック部材44の各基端部には、リベット状の連結支点45を介してそれぞれ第1昇降杆46の上下端部が枢設されており、第1昇降杆46は、固定片40に突設された複数のガイド突部47と立設片41とにより左右方向への変位が規制されるようになっている。また、第1昇降杆46は、固定片40との間に掛け渡されたバネ48により下方に付勢されていると共に、立設片41の下端に突設されたストッパ部49により、下方への移動が規制されるようになっている。これにより、フック部材44と第1昇降杆46とはリンク機構を構成し、通常は、フック部材44及び第1昇降杆46が所定の施錠位置に保持されており、第1昇降杆46をバネ48の付勢力に抗して上昇させると、傾動支点43を支点として上下のフック部材44の先端部が略水平姿勢から下方に傾動し、解錠状態に移行するようになっている。
ベース板38の立設片41と第1昇降杆46の間には、ガラス扉22を施錠又は解錠するための第2昇降杆50が挟装されており、第2昇降杆50は、第1昇降杆46に形成された第1案内長孔51と第2昇降杆50に形成された第2案内長孔52とを貫通して立設片41に固着されたリベット状の案内ピン53により、昇降可能に保持されている。また、第2昇降杆50には、内側方に折曲された操作片54が形成されており、操作片54は立設片41に形成された長孔(図示せず)を貫通している。さらに、第2昇降杆50は、固定片40との間に掛け渡されたバネ55により上方に付勢されていると共に、前記長孔の上端面と操作片54の上端部とが当接することにより施錠位置に保持されるようになっている。
ベース板38の固定片40の中央部分には、前枠13の前面側に鍵穴56が露出するように錠57が取り付けられており、錠57の回動軸58の後端には解錠盤59が固定されている。解錠盤59には、それぞれ第1突出端部60及び第2突出端部61が内側方に突出して形成されており、第1突出端部60は前枠13を解錠させるために機能し、第2突出端部61はガラス扉22を解錠させるために機能するようになっている。そして、解錠盤59は、解錠操作時以外には中立角度位置に保持され、鍵を鍵穴56に挿入すると、回動軸58が回動可能な状態になり、鍵を左右2方向に回転操作可能となっている。一方、第1昇降杆46の第1突出端部60及び第2突出端部61に対応する位置には第1係合孔62が形成されており、第1係合孔62の開口端面63に第1突出端部60の先端が係合可能となっている。また、第2昇降杆50の第2突出端部61に対応する位置には第2係合孔64が形成されており、第2係合孔64の開口端面65に第2突出端部61の先端が係合可能となっている。
したがって、前枠13の前面側から鍵穴56に鍵を挿入し、右方向に回転させると、解錠盤59は同方向(図2では左方向)に回転し、第1突出端部60の先端が第1係合孔62の開口端面63に係合し、第1昇降杆46はバネ48の付勢力に抗して上昇すると共に上下のフック部材44が傾動し、前枠13が施錠状態から解錠状態に移行するようになっている。一方、前枠13の前面側から鍵穴56に挿入した鍵を左方向に回転させると、解錠盤59は同方向(図2では右方向)に回転し、第2突出端部61の先端が第2係合孔64の開口端面65に係合し、第2昇降杆50はバネ55の付勢力に抗して下降すると共に操作片54が下降し、ガラス扉22が施錠状態から解錠状態に移行するようになっている。
次に、図4〜図10を参照しつつ、本発明の実施の形態に係る遊技機の施錠装置について説明する。なお、該実施の形態に係る施錠装置は上部及び下部共に同様の構成を有しているので、以下の説明では、説明の簡略化のため、施錠装置の上部を主体に説明する。
ここで、図4は該実施の形態に係る遊技機の施錠装置を背面側から示す分解斜視図、図5は施錠装置を前面側から示す斜視図、図6(a)は施錠装置の操作前の状態を示す側面図、図6(b)はその操作後の状態を示す側面図、図7(a)〜(c)は施錠装置の作用を示す側断面図、図8は施錠装置を示す平断面図、図9は施錠装置の図8より下方部分を示す平断面図、図10(a)は施錠装置の操作前の状態を示す背面図、図10(b)はその操作後の状態を示す背面図である。
上記した施錠金具35において、フック部材44では、先端部分71が内側にクランク状に折曲して形成されており、その先端部分71の上端部には三角形状の受け部係合部72が形成されている。受け部係合部72の基端面73は鉛直面に対して先端側に傾斜角度α、傾斜して形成されており(図7(a)参照)、この傾斜角度αは、傾動支点43を中心として基端面73の最下点を通過するように描いた半径rの円弧より基端面73が外側に位置するように設定されている(図6(b)参照)。そして、フック部材44の先端部分71には、外側面に先端曲面状の左右方向移動規制ピン74が垂直に突設され、内側面に半球面状の施錠受け金具当接部75が突設されている。また、立設片41の支持片部42の下端部には、フック部材44の基端部分76を挟み込むように折曲された挟持片部77が形成されており、挟持片部77によりフック部材44の左右方向の変位を抑止可能となっている。なお、右側枠杆36の内面前側角部には、図8に良く示されているように、ネジ逃げ用の座グリ部66が切欠されており、ベース板38固定用のネジ67が右側枠杆36に干渉しないようになっている。この場合、ネジ67に皿ネジを使用すれば、座グリ部66を設ける必要はない。
一方、上記した施錠受け金具37には、ベース部材78が設けられている。ベース部材78は、右側枠杆36の内面に形成された欠込み部79に対してネジ止め等の固定手段により右側枠杆36に固定される固定部80と、固定部80の前端において内方に垂直に折曲され、フック部材44の受け部係合部72が係合可能なように鉛直姿勢を成す施錠受け部81と、施錠受け部81の先端においてさらに後方に垂直に折曲された鉛直姿勢の左右方向移動規制部82とから構成されており、左右方向移動規制部82の下端部外側面には、フック部材44の受け部係合部72を施錠受け部81に誘い込み易くするために、傾斜面84が形成されている(図10参照)。
固定部80の下端には左右方向移動規制ピン74が当接可能なように受け座90が内方に突出してネジ止め等の固定手段により固定されており、受け座90の下端部には、左右方向移動規制ピン74を受け座90に誘導し易くするために、案内部91が傾斜して形成されている。このように、受け座90を内方に突設させることにより、左右方向移動規制ピン74の外方への突出長の短縮化が図れるので、前枠13の開閉操作時に左右方向移動規制ピン74が右側枠杆36に干渉するのを防止するために右側枠杆36の内面前側部分を欠き込む等の加工を行う必要がなくなり、外枠12の加工作業を省力化することができると共に、外枠12の強度を保持することができる。
施錠受け部81には、上部に支持孔83が穿設されており、その支持孔83には、回転可能なように昇降操作部材85が挿通されている。昇降操作部材85は、支持孔83に挿通される連結ロッド86と、連結ロッド86の前端側に形成された操作部87と、連結ロッド86の後端側に嵌着される変位カム88とから構成され、操作部87と施錠受け部81との間には円筒スリーブ89が介装されている。そして、操作部87の前端部には、六角柱状の係合部92が形成されており、前枠13の前面側から六角レンチ等の操作具93をこの係合部92に係合させ、回転させると、変位カム88は、回転し、後述する間隙填塞部材96に当接し、その間隙填塞部材96に対して降下方向に力を作用する作用部として機能するようになっている。また、前枠13には操作具挿入用の操作孔68が形成されており、この操作孔68に操作具93を通すことにより、前枠13の前面側から変位カム88の回転操作が可能となっている。さらに、変位カム88の後端部には、六角柱状の係合部94が形成されており、この係合部94に操作具93を係合させ、回転させることにより、後方からも変位カム88を操作可能なようになっている。
また、施錠受け金具81には、支持孔83の下方に矩形状の欠込み部95が形成されており、この欠込み部95に間隙填塞部材96が設けられている。間隙填塞部材96は、水平板状の変位カム当接部97と、変位カム当接部97の下面に鉛直に設けられた前後一対のスライドガイド部98,99とを主体に構成されている。変位カム当接部97の外周部には施錠受け金具81に係合可能なガイド溝106が形成されていると共に、前後のスライドガイド部98,99は施錠受け金具81を挟持可能に形成されており、これらにより、間隙填塞部材96は施錠受け金具81に沿って昇降可能なようになっている。
また、後側のスライドガイド部99には欠込み部95に対応した位置に矩形の板バネ挿通孔101が形成されており、前側のスライドガイド部98はさらに左右に分割され、施錠受け部81の前面側中央部の欠込み部95下方に板バネ収容部107が形成されている。この板バネ収容部には板バネ102が固定されており、板バネ102は、その先端部103が、欠込み部95及び板バネ挿通孔101を挿通するように、後方斜め上方に向かって延出すると共に変位カム当接部97の下面に当接しており、間隙填塞部材96を上方に付勢している。さらに、前側のスライドガイド部98の下端部には、フック部材44との干渉を防止するための逃げ部104が形成されており、後側のスライドガイド部99の下端部には傾斜面105が形成されている。そして、この傾斜面105の鉛直面に対する傾斜角度β(図7(a)参照)は、受け部係合部72の基端面73の傾斜角度αと同一又はそれ以下に設定されている。
このように、本実施の形態に係る施錠装置は、ベース部材81、昇降操作部材85、及び間隙填塞部材96の各構成部品が予め組み付けれた状態で右側枠杆36に取り付けられるようになっているため、取付作業の効率化、取付誤差の微小化を図ることができる。
次に、本発明の第1の実施の形態に係る遊技機の施錠装置の作用について説明する。なお、該実施の形態に係る施錠装置は上部及び下部共に同様の構成を有しているので、以下の説明では、説明の簡略化のため、施錠装置の上部を主体に説明する。
前枠13をヒンジ金具14a,14bを支点として回転させ、外枠12に対して前枠13を押し込むと、図6(a)及び図10(a)に示すように、受け部係合部72が施錠受け部81の下端と係合し、フック部材44は下方に傾動する。この時、挟持片部77によりフック部材44の左右方向の変位が防止されているため、フック部材44の傾動動作は円滑且つ確実に行われる。
そして、前枠13をさらに閉鎖位置まで押し込むと、受け部係合部72の頂部が施錠受け部81を潜り越え、受け部係合部72は施錠受け部81に掛止する。受け部係合部72の基端面73の傾斜角度αが傾動支点43を中心として基端面73の最下点を通過するように描いた半径rの円弧より基端面73が外側に位置するように設定されており、また、施錠受け金具当接部75が半球状に形成されていると共に左右方向移動規制部82の下端外面に傾斜面84が形成されているため、上記した施錠受け部81に対する受け部係合部72の掛止動作は円滑且つ確実に行われる。また、この時、左右方向移動規制ピン74の先端は案内部91により案内され、受け座90に当接すると共に、施錠受け金具当接部75が左右方向移動規制部82に当接するため、フック部材44の左右方向の揺動が規制され、外枠12に対する前枠13の左右方向の揺動が抑止される(図10(b)参照)。
次に、このように受け部係合部72が施錠受け部81に掛止した状態において、前枠13の前面側から操作具93を操作部87の係合部92に係合させ、その操作具93を前面から見て左方向に回転させる。或いは、背面側から操作具93を変位カム88の係合部94に係合させ、その操作具93を背面から見て右方向に回転させる。そうすると、変位カム88が回転し、図6(b)及び図10(b)に示すように、間隙填塞部材96は板バネ102の付勢力に抗して施錠受け部81に沿って降下する。そして、フック部材44の基端面73と施錠受け部81の後面との間の前後方向の間隙100に間隙填塞部材96の後側のスライドガイド部99の下端部が進入し、フック部材44の前後方向の移動が規制される。
より具体的には、例えば、図7(a)に示すように、フック部材44の基端面73と施錠受け部81の後面との間に前後方向の間隙100がまったく生じない理想的な場合には、間隙填塞部材96の後側のスライドガイド部99の下端部はフック部材44の受け部係合部72の状態に当接した状態となる。一方、図7(b)に示すように、その間隙100が広い場合(t1の場合)には、後側のスライドガイド部99の下端部はその間隙100に深く進入し、また、図7(c)に示すように、その間隙100が狭い場合(t2の場合)には、後側のスライドガイド部99の下端部はその間隙100に浅く進入する。そして、両方いずれの場合にも、間隙100は、間隙填塞部材96によって填塞され、これにより、フック部材44の前後方向の移動が規制され、外枠12に対する前枠13の前後方向の揺動が抑止される。
上記したように、後側のスライドガイド部9の下端部の傾斜面105の傾斜角度βが受け部係合部72の基端面73の傾斜角度αと同一又はそれ以下の角度に設定されているため、後側のスライドガイド部99の下端部の間隙100への進入動作はいずれも円滑且つ確実に行われる。
このように、本実施の形態によれば、パチンコ遊技機11の出荷時に製造ライン上において、外枠12に前枠13をセットした状態で一方の施錠装置15の操作及び調整を背面側から目視しながら行った後に、それを基準として、他方の施錠装置15を前枠13の前面側から操作及び調整を行うことができ、また、パチンコ遊技機11を出荷後、遊技島に取り付ける迄の過程において、前後方向に間隙100ができたとしても、施錠装置15を前枠13の前面側から操作及び調整を行うことができる。したがって、施錠装置15の操作、調整及び微調整を容易且つ確実に行うことができ、前枠13の揺動防止をより確実且つより好適に行うことができる。
なお、上記実施の形態においては、作用部である変位カム88を介して間隙填塞部材96に対して降下方向にのみ力を作用させ、上昇方向には板バネ102の付勢力により移動させるように構成しているが、例えば、昇降操作部材としてピニオンを使用すると共に、間隙填塞部材としてラックを使用し、昇降いずれの方向にも、前枠13の前面側及び又は後面側から操作具93により操作可能なように構成してもよい。
また、上記実施の形態において、左右揺動抑止機構として、フック部材44側に側方当接部である左右方向移動規制ピン74を設け、施錠受け金具37側に被側方当接部である受け座90を設けているが、反対に、フック部材44側に被側方当接部を設け、施錠受け金具37側に側方当接部を設けてもよい。
さらに、上記実施の形態では、本発明をパチンコ遊技機11に適用した場合について説明したが、これは単なる例示に過ぎず、本発明は、スロットマシン等、パチンコ遊技機11以外の他の遊技機にも適用可能であることは言う迄もない。