JP2005299478A - ピストン式圧縮機 - Google Patents

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井上  宜典
Naoto Kawamura
川村  尚登
Shigeki Kawachi
繁希 河内
Masanori Masuda
将典 増田
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Abstract

【課題】吐出孔内に残る残留ガスを効率よく導通路に排出できるピストン式圧縮機を提供する。
【解決手段】 ピストン式圧縮機において、ロータリバルブ42がシリンダブロック11の収容孔41内に収容され、シリンダブロック11に形成された圧縮室22と収容孔41とを連通する導通路43、及びロータリバルブ42の外周面42aに形成された残留ガスバイパス通路45を介して、吐出終了後の圧縮室22と比べて低圧な圧縮室22へと順次連通されることにより、吐出終了後の圧縮室22内に残る残留ガスが回収される。そして、導通路43における圧縮室22側の開口部43bは、弁・ポート形成体13のシリンダブロック11側の面13aに臨む弁・ポート形成体側開口面61を有する。そして、弁・ポート形成体13において、弁・ポート形成体側開口面61を介して導通路43と吐出孔26とが連通するような位置に、吐出孔26は形成されている。
【選択図】 図1

Description

本発明は、例えば吐出終了後の高圧側の圧縮室に残留したガスを低圧側の圧縮室へとバイパスする構成を備えたピストン式圧縮機に関する。
例えば、車両空調装置の冷媒圧縮機として用いられるピストン式圧縮機においては、シャフトを取り囲むように複数のシリンダボアがシリンダブロックに形成され、各シリンダボアにはそれぞれピストンが往復動可能に挿入され、駆動軸の回転によってピストンが往復動されることで、吸入弁装置を介した吸入圧領域から圧縮室へのガスの吸入、及び圧縮室内でのガスの圧縮、並びに圧縮室からのガスの吐出が行われる。
しかし、前記ピストン式圧縮機においては、例えば、上死点に位置したピストンが弁・ポート形成体に対して衝突しないように、上死点位置にあるピストンと弁・ポート形成体との間にはクリアランスが設定されている。また、圧縮室には、弁・ポート形成体に形成された吐出孔が常時連通されている。従って、ピストンが上死点に位置したとしても、該クリアランスや吐出孔内に高圧のガスが残留することとなる。
よって、ピストンが上死点位置から下死点位置へ移動する吸入行程において圧縮室の残留ガスが再膨張し、この再膨張の期間において、吸入孔及び吸入弁を介した新たな冷媒ガスの圧縮室への吸入が妨げられる。その結果、残留ガスの再膨張による体積増加分だけ冷媒ガスの吸入量が少なくなる問題、つまり圧縮室に対する冷媒ガスの吸入効率が悪化する問題があった。
そこで、残留ガスの再膨張の問題を解決するために、例えば図12に示すように、残留ガスバイパス構造を備えたロータリバルブを吸入弁として用いたピストン式圧縮機が従来から存在する(特許文献1参照)。即ち、シリンダブロック101のシリンダボア102に囲まれた中心部には収容孔106が形成され、該収容孔106内にはロータリバルブ107が収容されている。また、シリンダブロック101内の各シリンダボア102と収容孔106との間には、各シリンダボア102と収容孔106とを放射状に連通する導通路109が貫通形成されている。導通路109における圧縮室105側の開口部109aはシリンダボア102の内周面102aだけに開口している。ロータリバルブ107は駆動軸100の回転に同期して回転を行うように結合されている。ロータリバルブ107には、吸入行程の圧縮室105と結ばれた導通路109と、収容孔106内の吸入圧領域とを順次連通する吸入通路112が形成されている。更に、ロータリバルブ107には、圧縮した冷媒ガスの吐出を完了したシリンダボア102の圧縮室105と、当該シリンダボア102の圧縮室105の吐出完了時点で冷媒ガスの吸入を既に完了している他のシリンダボア102の圧縮室105とを、駆動軸100の回転に同期して連通させる残留ガスバイパス通路108が形成されている。
そして、駆動軸100と同期してロータリバルブ107が回転することにより、ピストン103が吸入行程にある間、吸入圧領域の冷媒ガスが順次吸入通路112及び導通路109を経て各圧縮室105内に吸入される。また、圧縮室105内から吐出室115への冷媒ガスの吐出は、ピストン103の上死点位置への移動により、弁・ポート形成体104に形成された吐出孔110と、この吐出孔110の吐出室115側に設けられてシリンダボア102内の圧力に応じて吐出孔110を開放する吐出弁111とを介して行われる。更に、吐出終了後に、吐出しきれずに圧縮室105内に残った残留ガスは、ロータリバルブ107が回転することで、前記導通路109及び前記残留ガスバイパス通路108を介して吐出終了後の圧縮室105と比べて低圧な圧縮室105へと順次連通されることにより吸入される。よって、圧縮室105の吸入行程中における残留ガスの再膨張が少なくなり、該圧縮室105内へ吸入圧領域の冷媒ガスを確実に吸入でき、ピストン式圧縮機の体積効率を向上させることができる。

特開平5−71467号公報
上記従来の圧縮機の場合、図13のようにピストン103が上死点位置付近に位置する時に、圧縮室105内に残る残留ガスは該圧縮室105から導通路109に排出されていく。しかし、ピストン103と弁・ポート形成体104との間のクリアランスTが非常に狭い場合、残留ガスが排出される通路は吐出孔110の位置から導通路109までの間で絞られるので、吐出孔110内の残留ガスが導通路109側に排出され難くなってしまう。よって残留ガスの排出の効率が低減する。
本発明の目的は、吐出終了後に吐出孔内に残る残留ガスを効率よく導通路に排出できるピストン式圧縮機を提供することにある。
上記目的を達成するために請求項1の発明のピストン式圧縮機は、導通路における圧縮室側開口部は、弁・ポート形成体のシリンダブロック側の面に臨む弁・ポート形成体側開口面を有し、該導通路は弁・ポート形成体側開口面を介して吐出孔と連通する。
従って、ピストンと弁・ポート形成体との間のクリアランスが小さい場合であっても、導通路は弁・ポート形成体側開口面を介して吐出孔と連通しているので、吐出孔から直接導通路に残留ガスを排出することができる。よって、吐出孔内に残った残留ガスが導通路に排出され難くなることはなく、吐出終了後に吐出孔内に残る残留ガスを効率よく導通路に排出することができる。なお、本実施形態における圧縮室とはピストンと弁・ポート形成体とで区画される空間であり、弁・ポート形成体における吐出孔内の空間も含む。
請求項2に記載の発明は、請求項1において前記圧縮室側開口部における弁・ポート形成体側開口面は、前記導通路がシリンダボアの内周面とシリンダブロックの弁・ポート形成体側面とが交差する角部にて開口することにより形成されることを特徴とする。
従って、弁・ポート形成体側開口面を形成するにあたって、従来のシリンダボアの内周面だけに開口していた導通路を、角部位置にて開口させるように開口位置を変更するだけでよい。よって、従来のシリンダボアの内周面だけに開口していた導通路からの変更が容易である。
請求項3に記載の発明は、請求項1において前記圧縮室側開口部における弁・ポート形成体側開口面は、シリンダボアの内周面とシリンダブロックの弁・ポート形成体側面とが交差する角部を導通路から弁・ポート形成体に向けて切り欠くことにより形成されていることを特徴とする。
従って、弁・ポート形成体側開口面を形成するにあたって、シリンダボアの内周面とシリンダブロックの弁・ポート形成体側面とが交差する角部を導通路から弁・ポート形成体に向けて切り欠くことだけで良い。よって、従来のシリンダボアの内周面だけに開口していた導通路からの変更が容易である。
上記目的を達成するために請求項4の発明のピストン式圧縮機は、前記導通路の圧縮室側開口部はシリンダボアの内周面の弁・ポート形成体側端部にて開口していて、ピストンが上死点位置に位置する際に圧縮室側開口部に臨むピストンの弁・ポート形成体側の端部は一部が切除されて、ピストンが上死点位置にある際に、ピストンの切除された部分、圧縮室側開口部、及び弁・ポート形成体に囲まれる空間が形成され、該空間に臨む位置に吐出孔は形成されていることを特徴とする。
従って、ピストンと弁・ポート形成体との間のクリアランスが小さい場合であっても、吐出終了後に吐出孔内に残る残留ガスをピストンの切除された部分、圧縮室側開口部、及び弁・ポート形成体に囲まれる空間を介して排出することができる。よって、吐出孔内に残った残留ガスが導通路に排出され難くなることはなく、吐出孔内の残留ガスを効率よく導通路に排出することができる。
請求項5に記載の発明は、請求項1〜4のいずれか一項において、前記回転弁には外周面で開口する吸入案内孔が形成され、吸入案内孔が前記導通路へと順次連通されて、吸入圧領域から前記圧縮室への吸入案内孔及び導通路を介したガスの吸入が行われることを特徴とする。
請求項1〜4のいずれか一項の発明によれば、吐出終了後の時点で、吐出孔内の残留ガスを効率よく導通路に排出することができる。吐出終了後、導通路を介したガスの吸入が行われる場合、ピストンと弁・ポート形成体との間のクリアランスが小さくても、吐出孔にガスを導通路から吸入することができる。従って、圧縮室が吸入行程へ移った段階において、ガスの吸入遅れが生じることを防止でき、確実にガスを吸入し始めることができるので、吸入効率を向上させることができる。よって、請求項1〜4のいずれか一項の発明を、回転弁に形成した吸入案内孔が形成され、吸入案内孔が導通路へと順次連通されて、吸入圧領域から圧縮室への吸入案内孔及び導通路を介したガスの吸入が行われるピストン式圧縮機に適用することは好適である。
請求項1〜5の発明のピストン式圧縮機によれば、吐出終了後に吐出孔内に残る残留ガスを効率よく導通路に排出できる。
以下、本発明のシール装置を、車両用空調装置に用いられる冷媒圧縮用の容量可変型斜板式圧縮機に具体化した第1、第2及び第3実施形態について説明する。なお、第2及び第3実施形態においては第1実施形態との相違点についてのみ説明し、同一又は相当部材には同じ番号を付して説明を省略する。
○第1実施形態
まず、容量可変型斜板式圧縮機(以下圧縮機とする)について説明する。
図1は圧縮機10の縦断面図を示し、該図において左方を圧縮機10の前方とし、右方を圧縮機10の後方とする。図1に示すように、圧縮機10のハウジングは、シリンダブロック11と、その前端に接合固定されたフロントハウジング12と、シリンダブロック11の後端に弁・ポート形成体13を介して接合固定されたリヤハウジング14とからなっている。
前記シリンダブロック11とフロントハウジング12とで囲まれた領域にはクランク室15が区画されている。クランク室15内においてフロントハウジング12とシリンダブロック11との間には、駆動軸16が架設支持されている。駆動軸16の前端側は、転がり軸受けよりなるラジアルベアリング31によって、フロントハウジング12に回転可能に支持されている。駆動軸16の後端側は、滑り軸受けよりなるラジアルベアリング32によって、シリンダブロック11に回転可能に支持されている。駆動軸16は車両の走行駆動源である図示しないエンジンに作動連結されており、該エンジンから動力の供給を受けて回転される。
前記クランク室15内において駆動軸16には、ラグプレート17が一体回転可能に固定されている。クランク室15内において駆動軸16には、斜板18がスライド移動可能でかつ傾動可能に支持されている。ラグプレート17と斜板18との間にはヒンジ機構19が介在されている。斜板18は、ヒンジ機構19を介したラグプレート17との間でのヒンジ連結、及び駆動軸16の支持により、ラグプレート17及び駆動軸16と同期回転可能であるとともに、駆動軸16の軸線Lに沿う方向へのスライド移動を伴いながら駆動軸16に対して傾動可能となっている。
前記シリンダブロック11には、複数のシリンダボア20が、駆動軸16の後端側を一定の角度間隔にて取り囲むようにしてそれぞれ貫通形成されている。各シリンダボア20には片頭型のピストン21が往復動可能に収容されている。
前記シリンダボア20の前後開口は、弁・ポート形成体13及びピストン21によって閉塞されており、このシリンダボア20内にはピストン21の往復動に応じて容積変化する圧縮室22が区画されている。各ピストン21は、シュー23を介して斜板18の外周部に係留されている。従って、駆動軸16の回転にともなう斜板18の回転が、シュー23を介してピストン21の往復動に変換される。
前記リヤハウジング14内には、吸入圧領域としての吸入通路24及び吐出室25がそれぞれ区画されている。吸入通路24はリヤハウジング14の中央部に形成されている。吐出室25は吸入通路24の外周を取り囲むようにして形成されている。吸入通路24には、図示しない外部冷媒回路が備える蒸発器の出口につながる外部配管が接続されている。吐出室25には、図示しない外部冷媒回路が備えるガスクーラの入口につながる外部配管が接続されている。この外部冷媒回路及び圧縮機10は冷媒循環回路を構成する。
前記吸入通路24内の冷媒ガスは、各ピストン21の上死点位置から下死点位置側への移動により、シリンダブロック11内に配設された吸入弁機構40を介して圧縮室22へと吸入される。圧縮室22に吸入された冷媒ガスは、ピストン21の下死点位置から上死点位置側への移動により所定の圧力にまで圧縮され、弁・ポート形成体13に形成された吐出孔26及び吐出弁27を介して吐出室25へと吐出される。
また、吐出弁27の付け根部27aはリヤハウジング14の外周寄りのシリンダブロック11との接合端面11aと、シリンダブロック11の外周寄りのリヤハウジング14との接合端面14aとの間に支持されている。吐出弁27の開閉部27bは付け根部27aから内周側に向かって形成されている。また吐出弁27の開閉部27bはリテーナ48によって開放位置が規制されている。
前記圧縮機10のハウジング内には、抽気通路28及び給気通路29並びに制御弁30が設けられている。抽気通路28の一部は、駆動軸16の軸心位置に設けられている。抽気通路28は、クランク室15と吸入通路24とを連通する。給気通路29は吐出室25とクランク室15とを連通する。給気通路29の途中には、電磁弁よりなる周知の制御弁30が配設されている。
前記制御弁30の開度を調節することで、給気通路29を介したクランク室15への高圧な吐出ガスの導入量と抽気通路28を介したクランク室15からのガス導出量とのバランスが制御され、クランク室15の内圧が決定される。クランク室15の内圧変更に応じて、クランク室15の内圧と圧縮室22の内圧とのピストン21を介した差が変更され、斜板18の傾斜角度が変更される結果、ピストン21のストロークすなわち圧縮機10の吐出容量が調節される。
次に前記吸入弁機構40について図2、図3、図4及び図5を用いて説明する。図2は図1のA−A線における断面図である。前記シリンダブロック11において、複数(本実施形態では6つ)のシリンダボア20に取り囲まれた中心部には、収容孔41が形成されている。収容孔41内には回転弁としてのロータリバルブ42が収容されている。ロータリバルブ42は、収容孔41の内周面41aによって摺動可能に支持されている。ロータリバルブ42は、駆動軸16に対して一体回転可能に連結されている。シリンダブロック11には、各シリンダボア20の圧縮室22と収容孔41とを連通する円筒状の導通路43がそれぞれ貫通形成されている。
ロータリバルブ42の外周面42aには吸入案内孔44が形成され、該吸入案内孔44には吸入通路24から冷媒ガスが導入されている。
そして、前記駆動軸16の回転つまりはピストン21の往復動に同期してロータリバルブ42が回転することで、該ロータリバルブ42の吸入案内孔44が、吸入行程にある圧縮室22へとつながる導通路43に順次連通されて、吸入通路24から圧縮室22への冷媒ガスの吸入が許容される。吸入行程の終了時には、吸入案内孔44が導通路43に対して周方向へ完全にずれ、吸入通路24から圧縮室22への冷媒ガスの吸入が停止される。圧縮・吐出行程に移行されると、ロータリバルブ42の外周面42aにおいて吸入案内孔44が開口していない面によって、導通路43と吸入案内孔44との間が閉塞状態に保持され、冷媒ガスの圧縮及び圧縮済み冷媒ガスの吐出室25への吐出が妨げられることはない。
次に、残留ガスのバイパス構造について説明する。図3においては、前記ロータリバルブ42の回転運動を直線状に展開するとともに、吸入案内孔44の軸線L周りでの旋回を左方への移動に置換した状態を示している。ロータリバルブ42の外周面42aには残留ガスバイパス通路45が形成されている。残留ガスバイパス通路45は、駆動軸16の軸線Lに沿う方向(図面の上下方向)に延在される高圧側溝45a、同じく軸線Lに沿う方向に延在される低圧側溝45b、及びロータリバルブ42の周方向(図面の左右方向)に延在されて両溝45a、45bの前方側の端部間を連通する連絡溝45cとからなっている。
前記高圧側溝45aは、ピストン21が上死点位置にある圧縮室22、つまり吐出終了直後の高圧側の圧縮室22へとつながる導通路43の収容孔41側の開口部43aと対向可能な位置に配置されている。低圧側溝45bは、ピストン21が下死点位置にある圧縮室22、つまり吸入終了直後の低圧側の圧縮室22へとつながる導通路43の開口部43aと対向可能な位置に配置されている。また、連絡溝45cは、導通路43の開口部43aに重なることのない位置に配置されている。
次に導通路43における圧縮室22側の開口部43bについて図2、図4及び図5に従って説明する。図4は図1における一点鎖線円B中の拡大断面図である。図5はシリンダボア20の内周面20aを平面状に展開した図である。従来、導通路における圧縮室側の開口部はシリンダボアの内周面だけに開口していた。本実施形態の導通路43における圧縮室22側の開口部43bは、シリンダボア20の内周面20aとシリンダブロック11の弁・ポート形成体側面としての後端面11bとが交差する角部で開口している。よって、開口部43bはシリンダボア20の内周面20aにて開口するシリンダボア側開口面60、及びシリンダブロック11の後端面11bに開口して、弁・ポート形成体13のシリンダブロック11側の面13aに臨む弁・ポート形成体側開口面61を有する。シリンダボア側開口面60はシリンダボア20の内周面20aにおける弁・ポート形成体13側の端部にて、弧状の縁60aをもって開口している。シリンダボア20の内周面20aを直線状に展開して見たとき、シリンダボア側開口面60の形状は半円弧形状となっている。一方で弁・ポート形成体側開口面61はシリンダブロック11の後端面11bにて、前記縁60aの両端部を両端とする弧状の縁61aをもって開口している。シリンダブロック11の後端側から弁・ポート形成体側開口面61を見たとき、弁・ポート形成体側開口面61の形状は三日月形状となっている。軸線Lからシリンダボア側開口面60の軸線Lに最も近い位置(シリンダボア20の内周面20aにおける軸線Lに最も近い位置)までの径方向距離をd1とし、軸線Lから弁・ポート形成体側開口面61の軸線Lに最も近い位置(縁61aにおける軸線Lに最も近い位置)までの径方向距離をd2とした時、(d1−d2)>0となっている。
また、シリンダブロック11と弁・ポート形成体13とを接合した際に、弁・ポート形成体側開口面61を介して導通路43と吐出孔26とが連通するような位置に、吐出孔26は形成されている。従来、ピストンに臨む範囲内に吐出孔は設けてあり、吐出孔のシリンダブロック側開口面はピストンと対向する面だけであった。本実施形態において、吐出孔26のシリンダブロック側開口面26aには、ピストン21と対向する面64と、弁・ポート形成体側開口面61と対向する面65とがある。よって、従来であれば吐出孔と導通路とは圧縮室を間に介して連通していたが、本実施形態では弁・ポート形成体側開口面61により、吐出孔26は直接導通路43と連通している状態となる。軸線Lから吐出孔26のシリンダブロック側開口面26aの軸線Lに最も近い位置及び最も遠い位置までの径方向距離をそれぞれd3、d4としたとき、d3<d1<d4となっている。なお本実施形態では、d3がd2と等しくなっている。
従って、吐出終了直後の圧縮室22において、吐出しきれずに残った冷媒ガス(残留ガス)は、導通路43、残留ガスバイパス通路45(高圧側溝45a、連絡溝45c及び低圧側溝45b)、及び導通路43を同順に経由して、吸入終了直後の圧縮室22へとバイパス(回収)される。
上記構成の本実施形態においては次のような効果を奏する。
(1)本実施形態では、導通路43における圧縮室22側の開口部43bはシリンダブロック11の後端面11bに開口し、弁・ポート形成体13のシリンダブロック11側の面13aに臨む弁・ポート形成体側開口面61を有し、導通路43は弁・ポート形成体側開口面61を介して吐出孔26と連通している。
従って、ピストン21と弁・ポート形成体13との間のクリアランスTcが小さい場合であっても、吐出孔26から弁・ポート形成体側開口面61を介して直接導通路43に残留ガスを排出することができる。よって、吐出孔26内に残った残留ガスが導通路43に排出され難くなることはなく、吐出孔26内の残留ガスを効率よく導通路43に排出することができる。よって、吸入行程中における圧縮室22での残留ガスの再膨張が少なくなり、該圧縮室22へと吸入される冷媒ガスの量を多くできて、該圧縮室22に対する冷媒ガスの吸入効率を向上させることができる。
(2)本実施形態では、弁・ポート形成体側開口面61は、シリンダボア20の内周面20aとシリンダブロック11の後端面11bとが交差する角部で開口することにより形成されている。
従って、弁・ポート形成体側開口面61を形成するにあたって、従来のシリンダボアの内周面だけに開口していた導通路を、角部位置にて開口させるように開口位置を変更するだけでよい。よって、従来のシリンダボアの内周面だけに開口していた導通路からの変更が容易である。
(3)本実施形態では、吐出を終了して、残留ガスが吸入終了直後の圧縮室22へとバイパスされた後の圧縮室22では、導通路43を介した冷媒ガスの吸入が行われる。
従って、残留ガスを排出後、吸入行程へ移った初期段階で、ピストン21と弁・ポート形成体13との間のクリアランスTcが小さく、ピストン21が導通路43のシリンダボア側開口面61をほとんど塞いだ状態であっても、本実施形態においては弁・ポート形成体側開口面61から吐出孔26を介して冷媒ガスを吸入することができる。
よって、圧縮室22が吸入行程へ移った初期段階において、冷媒ガスの圧縮室22への吸入遅れが生じることを防止でき、確実に冷媒ガスを圧縮室22に吸入し始めることができるので、吸入効率を向上させることができる。
(4)本実施形態においては、弁・ポート形成体側開口面61を介して導通路43と吐出孔26とが連通するような位置に、吐出孔26は形成されている。また吐出弁27の付け根部27aはリヤハウジング14の外周のシリンダブロック11との接合端面11aと、シリンダブロック11の外周のリヤハウジング14との接合端面14aとの間に支持されている。吐出弁27の開閉部27bは付け根部27aから内周側に向かって形成されている。
従って、従来のピストンに臨む範囲内に吐出孔が設けてある場合と比較して、吐出弁27の付け根部27aから開閉部27bまでの長さを長くすることができる。よって、吐出弁27の開閉動作が円滑に行われ、圧縮効率が向上する。
○第2実施形態
図6及び図7は第2実施形態を示す。図7は図6のシリンダボア20の内周面20aを平面状に展開した図である。本実施形態において、上記第1実施形態と導通路43の形状(特に圧縮室22側の開口部43b)が異なる。圧縮室22側の開口部43bは、シリンダボア20の内周面20aに開口した開口部63と、シリンダボア20の内周面20aとシリンダブロック11の後端面11bとが交差する角部を導通路43から弁・ポート形成体13に向けて切り欠いて形成された凹溝64とからなり、凹溝64における弁・ポート形成体13側の端部により弁・ポート形成体側開口面61が形成されている。また、シリンダボア側開口面60は開口部63及び凹溝64におけるシリンダボア20の内周面20a側の開口からなる。
本実施形態においては上記第1実施形態の(1)、(3)及び(4)の効果と同様の効果を奏する。
また、本実施形態においては弁・ポート形成体側開口面61を形成するにあたって、シリンダボア20の内周面20aとシリンダブロック11の後端面11bとが交差する角部を導通路43から弁・ポート形成体13に向けて切り欠くだけでよい。よって、従来のシリンダボアの内周面だけに開口していた導通路からの変更が容易である。
○第3実施形態
図8は第3実施形態を示す。本実施形態において導通路43における圧縮室22側の開口部43bの開口する位置及び、吐出孔26の形成位置が異なる。圧縮室22側の開口部43bの開口位置はシリンダボア20の内周面20aの弁・ポート形成体13側の端部の位置である。圧縮室22側の開口部43bはシリンダボア側開口面60だけが形成され、弁・ポート形成体側開口面61は形成されない。ピストン21が上死点位置に位置しているときに、ピストン21の先端部21aの開口部43bに臨む一部を切除することにより、ピストン21が上死点位置に位置したときに、ピストン21と弁・ポート形成体13との間のクリアランスTcより広い幅をもつ空間65を作り出している。吐出孔26は空間65に臨む位置に形成されている。従って、ピストン21と弁・ポート形成体13との間のクリアランスTcが小さい場合であっても、吐出孔26は空間65を介して導通路43に残留ガスを排出することができる。
本実施形態においては上記第1実施形態の(1)及び(3)の効果と同様の効果を奏する。
なお、本発明の趣旨から逸脱しない範囲で例えば以下の態様でも実施できる。
○ロータリバルブ42の外周面には残留ガスバイパス通路45のみを設け、吸入案内孔44を形成しないこと。そして、各圧縮室に対応した吸入圧領域としての吸入室をリヤハウジングに形成して、吸入室と圧縮室とを連通させる吸入口及び吸入弁を弁・ポート形成体に形成して、吸入を行うこと。
○上記第1実施形態及び第2実施形態において、第3実施形態のようにピストン21が上死点位置に位置しているときに、ピストン21の先端部21aの開口部43bに臨む一部を切除すること。
○上記第1及び第2実施形態において、吐出孔26を形成する位置を従来の形成位置から変更して、弁・ポート形成体側開口面61を介して導通路43と吐出孔26とを連通させるのではなく、吐出孔26の形状を変形して、弁・ポート形成体側開口面61を介して導通路43と吐出孔26とを連通させること。具体的には、吐出孔26を図9のように貫通孔66及び凹溝67より形成して、吐出孔26のシリンダブロック側開口面26aを広くすることにより、弁・ポート形成体側開口面61を介して導通路43と吐出孔26とが連通するようにしてもよい。
また、図10のように吐出孔26の形状を、鍵穴状の貫通孔として、弁・ポート形成体側開口面61を介して導通路43と吐出孔26とが連通するようにしてもよい。なお、以上のような吐出孔26の形状変更は第3実施形態に適用しても良い。すなわち第3実施形態において、吐出孔26は空間65に臨む位置に形成されていたが、吐出孔26の形状を変更することにより吐出孔26の一部が空間65に臨むようにしてもよい。
○上記第1及び第2実施形態において、導通路43の圧縮室22側の開口部43bにおける弁・ポート形成体側開口面61は、導通路43における圧縮室22側の開口部43bがシリンダボア20の内周面20aと、シリンダブロック11の弁・ポート形成体側面としての後端面11bとが交差する角部で開口すること、又は圧縮室22側の開口部43bがシリンダボア20の内周面20aに開口した開口部63と、シリンダボア20の内周面20aとシリンダブロック11の後端面11bとが交差する角部を導通路43から弁・ポート形成体13に向けて切り欠いて形成された凹溝64とからなることから形成されていた。
これを変更して、図11のように導通路43の圧縮室22側の開口部43bは、シリンダボア20の内周面20aに開口した開口部67と、導通路43の通路途中から弁・ポート形成体13の方向に貫通した貫通孔68とからなり、貫通孔68の弁・ポート形成体13側端部により、開口部43bにおける弁・ポート形成体側開口面61が形成される。
第1実施形態を示す容量可変型斜板式圧縮機の縦断面図。 図1のA−A線断面図。 ロータリバルブの回転運動を直線状に展開した図。 図1における一点鎖線円B中の拡大断面図。 第1実施形態におけるシリンダボアの内周面を平面状に展開した図。 第2実施形態を示す図であり容量可変型斜板式圧縮機の縦断面部分図。 第2実施形態におけるシリンダボアの内周面を平面状に展開した図。 第3実施形態を示す図であり容量可変型斜板式圧縮機の縦断面部分図。 別例を示す図であり容量可変型斜板式圧縮機の縦断面部分図。 別例を示す図であり弁・ポート形成体のシリンダブロック側側面図。 別例を示す図であり容量可変型斜板式圧縮機の縦断面部分図。 従来技術を示す容量可変型斜板式圧縮機の縦断面部分図。 図12における一点鎖線円C中の拡大断面図。
符号の説明
11・・・シリンダブロック、13・・・弁・ポート形成体(a・・・シリンダブロック側の面)、20・・・シリンダボア(a・・・内周面)、21・・・ピストン(a・・・先端部)、22・・・圧縮室、24・・・吸入圧領域としての吸入通路、25・・・吐出室、26・・・吐出孔(a・・・シリンダブロック側開口面)、27・・・吐出弁(a・・・付け根部、b・・・開閉部)、41・・・収容孔(a・・・内周面)、42・・・ロータリバルブ(a・・・外周面)、43・・・導通路(a・・・収容孔側の開口部、b・・・圧縮室側の開口部)、44・・・吸入案内孔、45・・・残留ガスバイパス通路(a・・・高圧側溝、b・・・低圧側溝、c・・・連絡溝)、60・・・シリンダボア側開口面(a・・・縁)、61・・・弁・ポート形成体側開口面(a・・・縁)、64・・・吐出孔におけるシリンダブロック側開口面のうちピストンと対向する面、65・・・吐出孔におけるシリンダブロック側開口面のうち弁・ポート形成体側開口面と対向する面。

Claims (5)

  1. ハウジングの一部を構成するシリンダブロックには複数のシリンダボアが貫通形成され、前記各シリンダボアにはピストンが往復動可能に挿入され、前記シリンダボア内には、前記ピストンと、前記シリンダブロックに接合された弁・ポート形成体とで圧縮室が区画形成され、弁・ポート形成体には前記各圧縮室に対応して吐出孔及び吐出弁がそれぞれ形成され、吸入圧領域から吸入したガスが圧縮室で圧縮され、吐出孔及び吐出弁を介して吐出され、前記シリンダブロックの前記シリンダボアに囲まれた中心部には収容孔が形成され、該収容孔内には回転弁が収容され、該回転弁には残留ガスバイパス通路が形成され、前記シリンダブロックには前記各圧縮室と前記収容孔とを接続する導通路がそれぞれ貫通形成され、吐出終了後に圧縮室内に残る残留ガスは、前記回転弁が回転することで、前記導通路及び前記残留ガスバイパス通路を介して吐出終了後の圧縮室と比べて低圧な圧縮室へと順次連通されることにより吸入されるピストン式圧縮機において、
    前記導通路における圧縮室側開口部は、弁・ポート形成体のシリンダブロック側の面に臨む弁・ポート形成体側開口面を有し、該導通路は弁・ポート形成体側開口面を介して吐出孔と連通することを特徴とするピストン式圧縮機。
  2. 前記圧縮室側開口部における弁・ポート形成体側開口面は、前記導通路がシリンダボアの内周面とシリンダブロックの弁・ポート形成体側面とが交差する角部にて開口することにより形成されることを特徴とする請求項1に記載のピストン式圧縮機。
  3. 前記圧縮室側開口部における弁・ポート形成体側開口面は、シリンダボアの内周面とシリンダブロックの弁・ポート形成体側面とが交差する角部を導通路から弁・ポート形成体にむけて切り欠くことにより形成されていることを特徴とする請求項1に記載のピストン式圧縮機。
  4. ハウジングの一部を構成するシリンダブロックには複数のシリンダボアが貫通形成され、前記各シリンダボアにはピストンが往復動可能に挿入され、前記シリンダボア内には、前記ピストンと、前記シリンダブロックに接合された弁・ポート形成体とで圧縮室が区画形成され、弁・ポート形成体には前記各圧縮室に対応して吐出孔及び吐出弁がそれぞれ形成され、吸入圧領域から吸入したガスが圧縮室で圧縮され、吐出孔及び吐出弁を介して吐出され、前記シリンダブロックの前記シリンダボアに囲まれた中心部には収容孔が形成され、該収容孔内には回転弁が収容され、該回転弁には残留ガスバイパス通路が形成され、前記シリンダブロックには前記各圧縮室と前記回転弁とを接続する導通路がそれぞれ貫通形成され、吐出終了後に圧縮室内に残る残留ガスは、前記回転弁が回転することで、前記導通路及び前記残留ガスバイパス通路を介して吐出終了後の圧縮室と比べて低圧な圧縮室へと順次連通されることにより吸入されるピストン式圧縮機において、
    前記導通路の圧縮室側開口部はシリンダボアの内周面の弁・ポート形成体側端部にて開口していて、ピストンが上死点位置に位置する際に圧縮室側開口部に臨むピストンの弁・ポート形成体側の端部は一部が切除されて、ピストンが上死点位置にある際に、ピストンの切除された部分、圧縮室側開口部、及び弁・ポート形成体に囲まれる空間が形成され、該空間に臨む位置に吐出孔は形成されていることを特徴とするピストン式圧縮機。
  5. 前記回転弁には外周面で開口する吸入案内孔が形成され、吸入案内孔が前記導通路へと順次連通されて、吸入圧領域から前記圧縮室への吸入案内孔及び導通路を介したガスの吸入が行われることを特徴とした請求項1〜4のいずれか一項に記載のピストン式圧縮機。
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