JP2005291819A - メタボリックシンドロームの治療薬成分のスクリーニング方法と、メタボリックシンドロームの診断方法 - Google Patents

メタボリックシンドロームの治療薬成分のスクリーニング方法と、メタボリックシンドロームの診断方法 Download PDF

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【目的】 メタボリックシンドローム治療薬の成分物質をスクリーニングする方法と、メタボリックシンドロームを診断する方法を提供する
【構成】 メタボリックシンドロームの治療薬成分をスクリーニングする方法であって、KLF5-PPARγ複合体の形成をレポーター分子のシグナルによって検出することのできる系に被験物質を添加し、レポーター分子のシグナル量を指標としてKLF5-PPARγ複合体の活性調節物質を特定することを特徴とする方法と、メタボリックシンドロームの診断方法であって、被験者から単離した脂肪組織におけるKLF5発現量を測定することを特徴とする方法。
【選択図】 なし

Description

この出願の発明は、深刻な生活習慣病であるメタボリックシンドロームの治療薬成分を特定するためのスクリーニングする方法と、メタボリックシンドロームの発病やその病態の程度を診断するための方法に関するものである。
糖尿病、高血圧、高脂血症、肥満をはじめとしたメタボリックシンドロームは近年、先進各国において罹患者が著しく増大しつつあり、米国では成人に診断されうる国民病となっている。またこのメタボリックシンドロームでは、肥満に基づく代謝系のバランス破綻の結果、いわゆる動脈硬化症が進展し、脳梗塞や心筋梗塞などの重大な心血管病を引き起こす。
健常人では体重の約20〜25%が脂肪組織で占められており、この割合を超えて脂肪が過剰に蓄積された状態が肥満である。これまで脂肪組織は単に余剰のエネルギーを蓄積する場と考えられてきた。しかしながら近年の研究では、脂肪組織は人体最大の内分泌臓器として、アディウポサイトカイン(アディポネクチンなど)を産生して周辺臓器や遠隔臓器に作用し、代謝系のバランスを維持する重要な役割を担っていることが明らかになっている。また肥満状態となると、脂肪細胞は肥大化して正常な脂肪細胞としての機能は失われ、正常な代謝バランスの維持に必要なアディウポサイトカインの発現が減少し、これが更なる悪循環を引き起こしてメタボリックシンドロームの悪化につながると考えられている。
従って、メタボリックシンドロームの予防、あるいはその初期の段階での根元的な治療のためには、脂肪細胞の状態を正しく診断すること、そして脂肪細胞の異常な形質転換を防止することが重要であり、そのための有効な手段が求められている。
様々な生体内タンパク質が細胞の発生、分化、活性化等の調節因子として働くことが知られている。KLF(Kruppel-like transcription factor)ファミリータンパク質もそのような調節因子であり、KLF2が脂肪細胞の発生に関与すること(非特許文献1)、KLF15がインスリン感受性グルコース輸送因子GLUT4を調節すること(非特許文献2)などが知られている。また、KLF5は血管形成や心血管病の発症に関与することが知られている。さらにこの出願の発明者らは、KLF5が脂肪細胞の正常な分化に必要な因子であることを報告している(非特許文献3)。しかしながら、これらのKLFファミリーを含め、脂肪細胞の「異常な形質転換」に対する責任因子はこれまで知られていない。
一方、PPARγは、糖尿病におけるインスリン抵抗性改善薬チアゾリジン(TZD)に対する核内レセプターであることが知られている(非特許文献4)。また、TZDは脂肪細胞の分化を促進し、これによりTZDの投薬は肥満を促進すること(非特許文献5)も知られているから、TZDとPPARγの生体内での作用点は、脂肪前駆細胞から脂肪細胞への分化と、成熟脂肪細胞での遺伝子の転写調節であると考えられている。ところで、PPARγを含む核内レセプターによる転写調節には、DNAとは直接結合せず、タンパク質−タンパク質相互作用を介してDNA結合性調節因子に働くコファクターと呼ばれる因子の関与が知られている。そこで、例えば特許文献1には、糖尿病治療薬の成分物質として、PPARγとそのコファクターである新規タンパク質PGC2との複合体形成に作用するリガンド分子をスクリーニングする方法が提案されている。
特開2002-58489号公報 Banerjee et al., J. Biol. Chem. 278:2581-2584, 2003 Gray et al., J. Biol. Chem. 277:34322-34828, 2002 Oishi et al., Circ. J. 68: (Supplement) 217, 2003 Lehmann et al., J. Biol. Chem. 270:12953-12956, 1995 Willson et al., J. Med. Chem. 39:665-668, 1996
前記のとおり、メタボリックシンドロームの直接的な原因は、脂肪細胞の異常な形質転換にある。細胞の形質転換は遺伝子発現を含めた分子生物学的な事象であり、それ故に、脂肪細胞の形質転換を診断し、予防し、あるいは治療するためには、そのような形質転換に関与する分子生物学的な因子を特定することが最も重要である。この点に関して、KLFファミリータンパク質やPPARγが何らかの役割を果たしていることが示唆されているが、脂肪細胞の異常な形質転換に決定的な役割を果たす生体内因子は特定されておらず、またその因子がどのような作用機序によって脂肪細胞の形質転換を生じさせるかも全く知られていなかった。
この出願の発明は、異常のとおりの事情に鑑みてなされたものであって、脂肪細胞の異常な形質転換の原因をなる分子生物学的な事象を基礎として、メタボリックシンドローム治療薬の成分物質をスクリーニングする方法と、そのような分子生物学的事象を対象としてメタボリックシンドロームを診断する方法を提供することを課題としている。
この出願は、前記の課題を解決するための第1の発明として、メタボリックシンドロームの治療薬成分をスクリーニングする方法であって、KLF5-PPARγ複合体の形成をレポーター分子のシグナルによって検出することのできる系に被験物質を添加し、レポーター分子のシグナル量を指標としてKLF5-PPARγ複合体の活性調節物質を特定することを特徴とする方法を提供する。
また第2の発明として、メタボリックシンドロームの診断方法であって、被験者から単離した脂肪組織におけるKLF5発現量を測定することを特徴とする方法を提供する。
すなわち、この出願の発明者らは、KLF5が正常な脂肪細胞の分化のみならず、異常な形質転換の際にも発現亢進すること、そしてKLF5はPPARγとの相互作用によって脂肪細胞の形質転換に作用することを見出した。前記の第1発明および第2発明は、これらの新規な知見に基づいて完成されたものである。
なお、この発明において「メタボリックシンドロームの治療薬」とは、脂肪細胞の異常な形質転換を予防し、または形質転換した脂肪細胞を正常細胞へと回復させることによってメタボリックシンドロームの発症を予防、またはその症状を改善もしくは治癒する作用を有する薬剤である。またその成分物質としての「活性調節物質」とは、例えばKLF5-PPARγの複合体形成に対して抑制的に作用する物質、あるいはKLF5-PPARγ複合体の転写調節活性等の機能に対して抑制的に作用する物質である。
さらにこの発明における「診断」とは、被験者の脂肪細胞が異常な形質転換を引き起こす可能性を事前に予測すること、および脂肪細胞の形質転換の程度を定量的に把握することを意味する。
この発明におけるその他の用語や概念は、発明の実施形態の説明や実施例において詳しく規定する。またこの発明を実施するために使用する様々な技術は、特にその出典を明示した技術を除いては、公知の文献等に基づいて当業者であれば容易かつ確実に実施可能である。例えば、薬剤の調製はRemington's Pharmaceutical Sciences, 18th Edition, ed. A. Gennaro, Mack Publishing Co., Easton, PA, 1990に、遺伝子工学および分子生物学的技術はSambrook and Maniatis, in Molecular Cloning-A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory Press, New York, 1989; Ausubel, F. M. et al., Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons, New York, N.Y, 1995等に記載されている。
第1の発明は、KLF5-PPARγ複合体の形成をレポーター分子のシグナルによって検出することのできる系に被験物質を添加し、レポーター分子のシグナル量を指標としてKLF5-PPARγ複合体の活性調節物質を特定することを特徴とする。
「KLF5-PPARγ複合体の形成をレポーター分子のシグナルによって検出することのできる系」とは、例えば公知のTwo-hybridシステムや蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)を利用したシステムである。
例えば、Two-Hybridシステムの場合には、以下のようにしてスクリーニングを行うことができる。すなわち、例えば酵母細胞におけるTwo-Hybridシステムの場合には、(1)転写活性化タンパク質(アクチベーター)のDNA結合ドメイン(DNA-BD)とKLF5との融合タンパク質(DNA-BD/KLF5)を発現するベクター、(2)アクチベーターの転写活性化ドメイン(AD)とPPARγの融合タンパク質(AD/PPARγ)を発現するベクター、(3)レポーター分子をコードする遺伝子(レポーター遺伝子)を発現するベクター、をそれぞれ酵母に導入する。レポーター遺伝子発現ベクターは、アクチベーターに対する応答因子とプロモーターを連結しており、アクチベーターの結合によってレポーター分子を発現するように構成されている。
あるいはまた、前記(1)の発現ベクターと(2)の発現ベクターは融合パートナーが逆でもよく(すなわち、DNA-BD/PPARγ発現ベクターと、AD/KLF5発現ベクター)、あるいはそれぞれの融合タンパク質を共発現する単一ベクター(DNA-BD/PPARγ2・AD/KLF5発現ベクター、またはDNA-BD/KLF5・AD/PPARγ2発現ベクター)であってもよい。
転写アクチベーターとしては、例えば酵母GAL4タンパク質やLexAを使用することができる。
DNA-BD/KLF5発現ベクターにおけるDNA結合ドメイン(DNA-BD)として、例えば酵母GAL4タンパク質の結合ドメイン、あるいはLexAプロモーターを使用することができる。その際、天然のDNA結合ドメインの全長は必要ではなく、少なくともDNA結合領域を含み、融合タンパク質の発現ベクターの構築を可能とするサイズであればよい。例えば、GAL4タンパク質のDNA結合ドメインの場合、およそ第1〜147番目のアミノ酸を含む領域がDNA結合領域である。
AD/PPARγ)発現ベクターにおける活性化ドメイン(AD)としては、DNA-BDとして使用した転写アクチベーターのAD領域を使用することが好ましい。例えば、DNA-BDとしてGAL4タンパク質のDNA結合ドメインを使用した場合は、GAL4タンパク質のAD領域である。またLexAオペレーターをDNA-BDとした場合のADはLexAタンパク質を使用することができる。これらのADについてもその全長を使用する必要はなく、少なくともAD活性の領域を含むサイズであればよい。
また、このADとして、ヘルペス単純ウイルスの活性化ドメインを使用することによって、哺乳動物細胞においてTwo-Hybridシステムを行うことができる(哺乳動物Two-Hybridシステム)。この哺乳動物Two-Hybridシステムでは、リン酸化、アセチル化、タンパク質分解等のプログラム化された変化を再現することが可能であり、より詳細なスクリーニングのために好ましいシステムである。従って、酵母によるTwo-Hybridシステムで1次スクリーニングを行い、哺乳動物Two-Hybridシステムによって2次スクリーニングを行うことも好ましい。
レポーター遺伝子発現ベクターにおけるレポーター遺伝子としては、LacZ遺伝子、HIS3遺伝子、ルシフェラーゼ遺伝子、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ(CAT)遺伝子、ヒト胎盤(分泌型)アルカリホスファターゼ(SEAP)遺伝子等を使用することができる。またこのレポーター遺伝子の上流の応答因子は、用いられるDNA-BDによりその種類は左右される。例えば、GAL4タンパク質のDNA結合ドメインを採用した場合には、UASs(ガラクトース代謝遺伝子の上流活性化部位)を使用することができる。さらに、応答因子の下流で、レポーター遺伝子の上流に位置するプロモーターは、レポーター遺伝子の発現を可能とするものであれば特に限定されない。
以上の各ベクターは、それぞれの融合タンパク質遺伝子やレポーター遺伝子を、公知のプラスミドベクター、コスミドベクター、ウイルスベクター等に挿入結合して作成することができる。また、酵母Two-Hybridシステムおよび哺乳動物Two-Hybridシステムのそれぞれに適したDNA-BD発現ベクターおよびAD発現ベクターが公知であり、それぞれにKLF5遺伝子およびPPARγ遺伝子を挿入結合して目的の発現ベクターを作成することもできる。例えば、GAL4タンパク質のDNA-BDベクターとしてはpMベクター、V16ADベクターとしてはpV16ベクターが市販されている。また各種のレポーター遺伝子発現ベクターも市販されている。例えば、SEAP発現ベクターであるpG5SEAPベクターや、CAT発現ベクターである。
一方、これらのベクターにおける融合タンパク質遺伝子を構成するKLF5遺伝子およびPPARγ遺伝子は、例えばそれぞれ公知のヌクレオチド配列またはその一部配列からなるDNA断片をプローブとしてゲノムDNAライブラリーやcDNAライブラリーをスクリーニングすることによって単離することができる。得られたポリヌクレオチドは、例えば、PCR(Polymerase Chain Reaction)法、NASBN(Nucleic acid sequence based amplification)法、TMA(Transcription-mediated amplification)法およびSDA(Strand Displacement Amplification)法などの通常行われる遺伝子増幅法により増幅することができる。また、cDNAの場合には、公知配列に基づいて合成したプライマーを用いて、細胞から単離したmRNAを鋳型とするRT-PCR法によっても目的cDNAを得ることもできる。なお、ヒトKLF5のcDNA配列はGenBank/AF287272として公知である。またヒトPPARγは、詳しくはPPARγ2(例えば、Tontonoz, et al., Cell 79(7): 1147-1156, 1994)であり、そのcDNA配列はGenBank/NM 015869として公知である。
また、FRETシステムでは、ドナー蛍光タンパク質を連結したKLF5と、アクセプター蛍光タンパク質を連結したPPARγとを反応させる。KLF5とPPARγが複合体を形成すると、ドナー蛍光タンパク質とアクセプター蛍光タンパク質が接近し、共鳴による励起エネルギーの移動が生じる。例えば、ドナー蛍光タンパク質としてシアン蛍光タンパク質(CFP)を、アクセプター蛍光タンパク質として黄色蛍光タンパク質(YFP)を使用した場合、CFPは440nmの励起光に対して波長480nmの蛍光を発するが、YFPが接近した場合には発光波長は535nmとなる。従って、このような蛍光タンパク質をそれぞれに結合したKLF5とPPARγを反応させ、蛍光波長の変化を測定することによって、KLF5とPPARγとの複合体形成を確認することができる。
この出願の第1発明では、以上のとおりの系においてKLF5とPPARγとの複合体形成を確認した後、被験物質を添加し、レポーター分子のシグナル変化を指標としてKLF5/PPARγ複合体に対する活性調節物質を特定する。
スクリーニングの対象となる被験物質には、例えば、有機または無機の化合物(特に低分子量の化合物)、タンパク質、ペプチド等が含まれる。これらの物質は、機能や構造が公知のものであって未知のものであってもよい。
また、「コンビナトリアルケミカルライブラリー」は、目的物質を効率的に特定するための被験物質群として有効な手段である。コンビナトリアルケミカルライブラリーは、化学合成または生物学的合成により、試薬などの多くの化学的「ビルディングブロック」を結びつけることにより生成される種々の化学組成物のコレクションである。例えば、ペプチドライブラリーなどの直線的なコンビナトリアルケミカルライブラリーは、ビルディングブロック(アミノ酸)のセットを、所与の化合物の長さ(すなわちペプチドのサイズ)について可能なすべての方法で結びつけることにより形成される。化学的なビルディングブロックについてのこのようなコンビナトリアルミキシングを通して、多数の化学組成物を合成することが可能である。例えば、100の可換的な化学的ビルディングブロックについての系統的なコンビナトリアルミキシングは、結果として1億個の4量体化合物または100億個の5量体化合物を生じる(例えば、Gallop et al.,(1994)37(9):1233-1250参照)。コンビナトリアルケミカルライブラリーの調製およびスクリーニングは、当該技術分野において周知である(例えば、米国特許第6,004,617号;5,985,365号を参照)。このようなコンビナトリアルケミカルライブラリーは、例えばペプチドライブラリー(例えば米国特許第5,010,175号;Furka(1991)Int. J. Pept. Prot. Res., 37:487-493、Houghton et al.,(1991)Nature, 354:84-88参照)、ペプトイド(peptoids)(例えば、WO91/19735参照)、コード化ペプチド(例えば、WO93/20242参照)、ランダムなバイオオリゴマー(例えば、WO92/00091参照)、ベンゾジアゼピン(例えば、米国特許第5,288,514号参照)、ヒダントイン、ベンゾアゼピン、およびジペプチド(例えば、Hobbs(1993)Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90:6909-6913参照)などのダイバーソマー(diversomer)、ビニログ性ポリペプチド(例えば、Hagihara(1992)J. Amer. Chem. Soc. 114:6568参照)、β-D-グルコース骨格をもつ非ペプチド性ペプチド模倣物(例えばHirschmann(1992)J. Amer. Chem. Soc. 114:9217-9218参照)、低分子化合物ライブラリーの類似有機合成(例えば、Chen(1994)J. Amer. Chem. Soc. 116:2661参照)、オリゴカルバメート(例えば、Cho(1993)Science 261:1303)、および/またはペプチジルホスホネート(例えば、Campbell(1994)J. Org. Chem. 59:658参照)等である。また核酸ライブラリー(例えばGordon(1994)J. Med. Chem. 37:1385参照)、ペプチド核酸ライブラリー(例えば米国特許第5,539,083号参照)、抗体ライブラリー(例えばVaughn(1996)Nature biotechnology 14:309-314参照)、炭水化物ライブラリー(例えばLiang et al.,(1996)Science 274:1520-1522、米国特許第5,593,853号参照)、有機低分子ライブラリーとしてイソプレノイドライブラリー(例えば米国特許第5,569,588号参照);チアゾリジノンおよびメタチアゾノンライブラリー(米国特許第5,549,974号参照);ピロリジンライブラリー(米国特許第5,525,735号および5,519,134号参照);モルフォリノ化合物ライブラリー(米国特許第5,506,337号参照)、ベンゾジアゼピンライブラリー(米国特許第5,288,514号参照)等も使用することができる。さらには、市販のライブラリー(例えば、米国ComGenex社製、ロシアAsinex社製、米国Tripos, Inc.社製、ロシアChemStar, Ltd社製、米国3D Pharmaceuticals社製、Martek Biosciences社製などのライブラリー)を使用することもできる。
次に、第2発明は、被験者から単離した脂肪組織におけるKLF5発現量を、脂肪細胞の異常な形質転換の指標とすることによって、被験者がメタボリックシンドロームの罹患する危険性があるか、または既に罹患しているか、あるいは罹患している場合にはそれがどの程度のものであるかを診断する方法である。
KLF5の発現は、具体的には、KLF5遺伝子の転写産物を測定することによって定量することができる。KLF5遺伝子の転写産物としてmRNAを測定する場合には、公知の遺伝子工学および分子生物学的技術に従い、当該分野で特定の遺伝子の発現を検知測定するために知られた手法、例えばin situ ハイブリダイゼーション、ノーザンブロッティング、ドットブロット、RNaseプロテクションアッセイ、RT-PCR、Real-Time PCR(Journal of Molecular Endocrinology, 25, 169-193(2000)およびそこで引用されている文献)、DNA アレイ解析法(Mark Shena編、"Microarray Biochip Technology", Eaton Publishing, 2000)などによってKLF5 mRNA発現量を検知・測定して実施することができる。
例えば、オリゴヌクレオチドプローブを用いてKLF5 mRNA量を検出する方法(ノーザンブロット分析法の場合には、少なくとも以下の工程:
(a)被験者の生体試料よりRNAを調製する工程;
(b)工程(a)で調製されたRNAを電気泳動分離する工程;
(c)工程(b)で分離されたRNAをオリゴヌクレオチドプローブとストリンジェントな条件下でハイブリダイズする工程;
(d)工程(e)でRNAにハイブリダイズしたオリゴヌクレオチドプローブの標識量をKLF5 mRNA発現量の指標とし、正常生体試料の結果と比較する工程;および
(e)正常生体試料と比較して有意に高いKLF5 mRNA発現量を、脂肪細胞の以上な形質転換またはそのリスクの程度を示す指標として使用する工程、
を含むことを特徴とする。
オリゴヌクレオチドプローブは、KLF5 mRNAとストリンジェントな条件(例えば特表平10-508186号公報、特表平9-511236号公報に記載された条件)でハイブリダイズするため、mRNAの任意領域と正確に相補的な配列からなるDNA配列を用いる。このようなDNA配列は、例えばKLF5 cDNAを適当な制限酵素で切断することによっても得ることができる。あるいは、Carruthers(1982)Cold Spring Harbor Symp. Quant. Biol. 47:411-418; Adams(1983)J. Am. Chem. Soc. 105:661; Belousov(1997)Nucleic Acid Res. 25:3440-3444; Frenkel(1995)Free Radic. Biol. Med. 19:373-380; Blommers(1994)Biochemistry 33:7886-7896; Narang(1979)Meth. Enzymol. 68:90; Brown(1979)Meth. Enzymol. 68:109; Beaucage(1981)Tetra. Lett. 22:1859; 米国特許第4,458,066号に記載されているような周知の化学合成技術により、in vitroにおいて合成することができる。
また、オリゴヌクレオチドプローブはラジオアイソトープ(RI)法または非RI法によって標識するが、非RI法を用いることが好ましい。非RI法としては、蛍光標識法、ビオチン標識法、化学発光法等が挙げられるが、蛍光標識法を用いることが好ましい。蛍光物質としては、オリゴヌクレオチドの塩基部分と結合できるものを適宜に選択して用いることができるが、シアニン色素(例えば、Cy Dye TMシリーズのCy3、Cy5等)、ローダミン6G試薬、N-アセトキシ-N2-アセチルアミノフルオレン(AAF)、AAIF(AAFのヨウ素誘導体)などを使用することができる。また標識法としては、当該分野で知られた方法(例えばランダムプライム法、ニック・トランスレーション法、PCRによるDNAの増幅、ラベリング/テイリング法、in vitro transcription法等)を適宜選択して使用できる。例えば、HRFオリゴヌクレオチドに官能基(例えば、第一級脂肪族アミノ基、SH基など)を導入し、こうした官能基に前記の標識を結合して標識化オリゴヌクレオチドプローブを作成することができる。
また、DNAマイクロアレイを使用することによってもKLF5 mRNA量を測定することができる。この方法は、少なくとも以下の工程:
(a)被験者の生体試料よりRNAを調製する工程;
(b)工程(a)で調製したRNAから、標識cDNAを調製する工程、
(c)工程(b)で調製した標識cDNAをDNAマイクロアレイに接触させる工程;
(d)工程(c)でDNAマイクロアレイのキャプチャープローブにハイブリダイズした標識cDNAの標識量をKLF5 mRNA量の指標とし、正常生体試料の結果と比較する工程;および
(e)正常生体試料と比較して有意に高いKLF5 mRNA量を、脂肪細胞の以上な形質転換またはそのリスクの程度を示す指標として使用する工程、
を含むことを特徴とする。
この方法に使用するDNAマイクロアレイは、KLF5 mRNAより合成されるcDNAとハイブリダイズするオリゴヌクレオチドをキャプチャープローブとして備えている。マイクロアレイの作製方法としては、固相担体表面で直接オリゴヌクレオチドを合成する方法(オン・チップ法)と、予め調製したオリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチドを固相担体表面に固定する方法とが知られている。この発明で使用するマイクロアレイは、このいずれの方法でも作製することができる。オン・チップ法としては、光照射で選択的に除去される保護基の使用と、半導体製造に利用されるフォトリソグラフィー技術および固相合成技術とを組み合わせて、微少なマトリックスの所定の領域での選択的合成を行う方法(マスキング技術:例えば、Fodor, S.P.A. Science 251:767, 1991)等によって行うことができる。一方、予め調製したオリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチドを固相担体表面に固定する場合には、官能基を導入したオリゴヌクレオチドを合成し、表面処理した固相担体表面にオリゴヌクレオチドを点着し、共有結合させる(例えば、Lamture, J.B. et al. Nucl. Acids Res. 22:2121-2125, 1994; Guo, Z. et al. Nucl. Acids Res. 22:5456-5465, 1994)。オリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチドは、一般的には、表面処理した固相担体にスペーサーやクロスリンカーを介して共有結合させる。ガラス表面にポリアクリルアミドゲルの微小片を整列させ、そこに合成オリゴヌクレオチドを共有結合させる方法も知られている(Yershov, G. et al. Proc. Natl. Acad. Sci. USA 94:4913, 1996)。また、シリカマイクロアレイ上に微小電極のアレイを作製し、電極上にはストレプトアビジンを含むアガロースの浸透層を設けて反応部位とし、この部位をプラスに荷電させることでビオチン化オリゴヌクレオチドを固定し、部位の荷電を制御することで、高速で厳密なハイブリダイゼーションを可能にする方法も知られている(Sosnowski, R.G. et al. Proc. Natl. Acad. Sci. USA 94:1119-1123, 1997)。このマイクロアレイを使用してKLF5 mRNA量を測定する場合には、例えば被験者の細胞から単離したmRNAを鋳型として、cDNAを合成し、PCR増幅する。その際に、標識dNTPを取り込ませて標識cDNAとする。この標識cDNAをマクロアレイに接触させ、マイクロアレイのキャプチャープローブにハイブリダイズしたcDNAを検出する。ハイブリダイゼーションは、96穴もしくは384穴プラスチックプレートに分注して標識cDNA水性液を、マイクロアレイ上に点着することによって実施することができる。点着の量は、1〜100nl程度とすることができる。ハイブリダイゼーションは、室温〜70℃の温度範囲で、6〜20時間の範囲で実施することが好ましい。ハイブリダイゼーション終了後、界面活性剤と緩衝液との混合溶液を用いて洗浄を行い、未反応の標識cDNAを除去する。界面活性剤としては、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)を用いることが好ましい。緩衝液としては、クエン酸緩衝液、リン酸緩衝液、ホウ酸緩衝液、トリス緩衝液、グッド緩衝液等を用いることができるが、クエン酸緩衝液を用いることが好ましい。
またさらに、KLF5 mRNA量はRT-PCT法によっても測定することができる。この方法は、少なくとも以下の工程:
(a)被験者の生体試料よりRNAを調製する工程;
(b)工程(a)で調製したRNAを鋳型とし、プライマーセットを用いてcDNAを合成する工程;
(c)工程(b)で合成されたcDNA量をKLF5 mRNA量の指標とし、正常生体試料の結果と比較する工程;および
(d)正常生体試料と比較して有意に高いKLF5 mRNA量を、脂肪細胞の以上の形質転換またはそのリスクの程度を示す指標として使用する工程、
を含むことを特徴とする。
使用するプライマーセットは、公知のKLF5 cDNA配列(GenBank/AF287272)に基づき設計し、合成・精製の各工程を経て調製することができる。なお、プライマーのサイズ(塩基数)は、鋳型DNAとの間の特異的なアニーリングを満足させることを考慮し、15-40塩基、望ましくは15-30塩基である。ただし、LA(long accurate)PCRを行う場合には、少なくとも30塩基が効果的である。センス鎖(5'末端側)とアンチセンス鎖(3'末端側)からなる1組あるいは1対(2本)のプライマーが互いにアニールしないよう、両プライマー間の相補的配列を避けると共に、プライマー内のヘアピン構造の形成を防止するため自己相補配列をも避けるようにする。さらに、鋳型DNAとの安定な結合を確保するためGC含量を約50%にし、プライマー内においてGC-richあるいはAT-richが偏在しないようにする。アニーリング温度はTm(melting temperature)に依存するので、特異性の高いPCR産物を得るため、Tm値が55-65℃で互いに近似したプライマーを選定する。また、PCRにおけるプライマー使用の最終濃度が約0.1〜約1μMになるよう調整する等を留意することも必要である。また、プライマー設計用の市販のソフトウェア、例えばOligoTM[National Bioscience Inc.(米国)製]、GENETYX[ソフトウェア開発(株)(日本)製]等を用いることもできる。
KLF5遺伝子の発現を測定する別の方法は、KLF5遺伝子の転写産物としてKLF5タンパク質量を定量することである。このような診断方法は、公知の遺伝子工学および分子生物学的技術に従い、当該分野で特定のタンパク質量を検知測定するために知られた手法、例えばin situ ハイブリダイゼーション、ウェスタンブロッティング、各種の免疫組織学的方法などによってKLF5タンパク質量を検知・測定して実施することができる。
具体的には、KLF5タンパク質を特異的に認識する抗体を用いて実施することができる。抗体はポリクローナル抗体またはモノクローナル抗体であり、それぞれKLF5タンパク質のエピトープに結合することができる全体分子、およびFab、F(ab')2、Fv断片等が全て含まれる。このような抗体は、例えばポリクローナル抗体の場合には、タンパク質やその一部断片を免疫原として動物を免役した後、血清から得ることができる。あるいは、上記の真核細胞用発現ベクターを注射や遺伝子銃によって、動物の筋肉や皮膚に導入した後、血清を採取することによって作製することができる。動物としては、マウス、ラット、ウサギ、ヤギ、ニワトリなどが用いられる。
また、モノクローナル抗体は、公知のモノクローナル抗体作製法(「単クローン抗体」、長宗香明、寺田弘共著、廣川書店、1990年; "Monoclonal Antibody" James W. Goding, third edition, Academic Press, 1996)に従い作製することができる。
また標識物質によって標識化された抗体として使用する。標識物質は、酵素、放射性同位体または蛍光色素を使用することができる。酵素は、turnover numberが大であること、抗体と結合させても安定であること、基質を特異的に着色させる等の条件を満たすものであれば特段の制限はなく、通常のEIAに用いられる酵素、例えば、ペルオキシダーゼ、β−ガラクトシダーゼ、アルカリフォスファターゼ、グルコースオキシダーゼ、アセチルコリンエステラーゼ、グルコース−6−リン酸化脱水素酵素、リンゴ酸脱水素酵素等を用いることもできる。また、酵素阻害物質や補酵素等を用いることもできる。これら酵素と抗体との結合は、マレイミド化合物等の架橋剤を用いる公知の方法によって行うことができる。基質としては、使用する酵素の種類に応じて公知の物質を使用することができる。例えば酵素としてペルオキシダーゼを使用する場合には、3,3',5,5'−テトラメチルベンジシンを、また酵素としてアルカリフォスファターゼを用いる場合には、パラニトロフェノール等を用いることができる。放射性同位体としては、125Iや3H等の通常のRIAで用いられているものを使用することができる。蛍光色素としては、フルオレッセンスイソチオシアネート(FITC)やテトラメチルローダミンイソチオシアネート(TRITC)等の通常の蛍光抗体法に用いられるものを使用することができる。
このような抗体を使用する方法は、例えば免疫染色、例えば組織あるいは細胞染色、免疫電子顕微鏡、イムノアッセイ、例えば競合型イムノアッセイまたは非競合型イムノアッセイで行うことができ、放射免疫測定法(RIA)、蛍光免疫測定法(FIA)、ルミネッセント免疫測定法(LIA)、酵素免疫測定法(EIA)、ELISAなどを用いることができ、B-F分離を行ってもよいし、あるいは行わないでその測定を行うことができる。好ましくはRIA、EIA、FIA、LIAであり、さらにサンドイッチ型アッセイが挙げられる。サンドイッチ型アッセイには、同時サンドイッチ型アッセイ、フォワード(forward)サンドイッチ型アッセイあるいは逆サンドイッチ型アッセイなどであってもよい。
このような抗体を用いた診断方法における一つの態様は、抗体とKLF5タンパク質との結合を液相系において検出する方法である。例えば、標識化抗体と生体試料とを接触させて標識化抗体とKLF5タンパク質を結合させ、この結合体を分離する。分離は、公知の分離手段(クロマト法、固相法等)によって行うことができる。また公知のウエスタンブロット法に準じた方法を採用することもできる。標識シグナルの測定は、標識として酵素を用いる場合には、酵素作用によって分解して発色する基質を加え、基質の分解量を光学的に測定することによって酵素活性を求め、これを結合抗体量に換算し、標準値との比較から抗体量が算出される。放射生同位体を用いる場合には、放射性同位体の発する放射線量をシンチレーションカウンター等により測定する。また、蛍光色素を用いる場合には、蛍光顕微鏡を組み合わせた測定装置によって蛍光量を測定すればよい。
液相系での診断の別の方法は、一次抗体と生体試料(脂肪細胞)とを接触させて一次抗体とKLF5タンパク質を結合させ、この結合体に標識化二次抗体を結合させ、この三者の結合体における標識シグナルを検出する。あるいは、さらにシグナルを増強させるためには、非標識の二次抗体を先ず一次抗体+KLF5タンパク質結合体に結合させ、この二次抗体に標識物質を結合させるようにしてもよい。このような二次抗体への標識物質の結合は、例えば二次抗体をビオチン化し、標識物質をアビジン化しておくことによって行うことができる。あるいは、二次抗体の一部領域(例えば、Fc領域)を認識する抗体(三次抗体)を標識し、この三次抗体を二次抗体に結合させるようにしてもよい。なお、一次抗体と二次抗体は、両方ともモノクローナル抗体を用いることもでき、あるいは、一次抗体と二次抗体のいずれか一方をポリクローナル抗体とすることもできる。液相からの結合体の分離やシグナルの検出は前記と同様とすることができる。
抗体を用いる場合のさらに別の態様は、抗体とKLF5タンパク質との結合を固相系において試験する方法である。この固相系における方法は、極微量のKLF5タンパク質の検出と操作の簡便化のため好ましい方法である。すなわちこの固相系の方法は、抗体を樹脂プレートまたはメンブレン等に固定化し、この固定化抗体にKLF5タンパク質を結合させ、非結合タンパク質を洗浄除去した後、プレート上に残った抗体+KLF5タンパク質結合体に標識化抗抗体を結合させて、この標識化抗体のシグナルを検出する方法である。この方法は、いわゆる「サンドイッチ法」と呼ばれる方法であり、マーカーとして酵素を用いる場合には、「ELISA(enzyme linked immunosorbent assay)」として広く用いられている方法である。2種類の抗体は、両方ともモノクローナル抗体を用いることもでき、あるいは、いずれか一方をポリクローナル抗体とすることもできる。
なおこの出願の第2発明においては、以上に例示した各方法の2以上を組み合わせて行うことによって、より精度の高い診断方法とすることもできる。
以下、実施例を示してこの出願の発明についてさらに詳細かつ具体的に説明するが、この出願の発明は以下の例によって限定されるものではない。
脂肪細胞の分化ステージにおけるKLF5の発現を以下のとおりに確認した。
(1)材料と方法
マウス脂肪前駆細胞3T3-L1培養細胞をコンフルエントとしたのちinsulin, dexamethasone, Isobuthylmethylxantiheを含む分化誘導刺激を加えた。図1示す時間経過ごとに細胞を回収し全RNAを抽出した。RT-PCR法を用いmRNAレベルでの遺伝子発現を検討した。
(2)結果
3T3-L1細胞を用いたin vitroでの脂肪細胞分化の実験系において、KLF5はC/EBPδ、にひきつづいて分化の初期段階で高発現していた。また、KLF5の発現ののちに脂肪細胞特異的な転写因子であるPPARγ2の発現が誘導された。
以上の結果から、KLF5は脂肪細胞分化の初期段階で発現し、しかもKLF5はPPARγ2との相互作用によって脂肪細胞の分化を制御することが確認された。
KLF5が脂肪細胞の異常な肥大化に際して発現低下することを以下のとおりに確認した。
(1)材料と方法
高度な病的肥満を呈するob/obマウス、中等度の肥満を呈するIRS-2ノックアウトマウス(ホモ)、および肥満のない野生型のC57BL6マウスの白色脂肪組織より全RNAを抽出・精製した。RT-PCR法を用いmRNAレベルでのKLF5の発現を検討した。
(2)結果
肥満の程度が高度であるほど病理学的には脂肪細胞の肥大化が観察される。図2に示したとおり、病的肥満を呈し脂肪細胞の肥大化を認めるob/obマウスおよびIRS-2ノックアウトマウスでは野生型マウスに比しKLF5の発現が低下していた。
KLF5タンパク質が、褐色脂肪細胞や肝細胞における脂肪蓄積にも関与することを以下のとおりに確認した。
(1)材料と方法
KLF5ノックアウトマウス(ヘテロ)および同腹子の野生型マウ6ス(いずれもオス、6
週齢)に高脂肪食を20週間負荷した。負荷終了後、解剖し褐色脂肪組織および肝組織を採取した。それぞれの組織をホルマリンで固定し、パラフィン包埋後薄切し、ヘマトキシリン-エオジン染色標本を作製した。
(2)結果
高脂肪食負荷による体重増加は、KLF5ヘテロノックアウトマウスと野生型マウスの間でほぼ同等であった。図3に示したように、野生型マウスの肝臓では、病理学的に、高度な脂肪肝が観察されたが、KLF5ヘテロノックアウトマウスでは脂肪肝は軽度で、肝組織は比較的正常に近い状態に保たれていた。
また、図4に示したように、野生型マウスの褐色脂肪組織では、多くの細胞が大きな単一の脂肪滴を含む形状に変化しており白色脂肪細胞化が明らかであった。一方、KLF5ヘテロノックアウトマウスの褐色脂肪組織では、多くの細胞が褐色脂肪細胞特有の複数の小さな脂肪滴を含む細胞質に富む形質を示し、白色脂肪細胞化がほとんどみられなかった。
哺乳動物細胞を用いたTwo-Hybridシステムによって、KLF5とPPARgが結合することを確認した。
(1)材料と方法
酵母Gal4DNA-BD/PPARγ2発現ベクターまたは酵母Gal4DNA-BD/empty controlベクター、VP16 AD/KLF5発現ベクターまたはVP16 AD/empty controlベクターおよびレポーターとしてのGal4結合配列-Luciferaseベクターを培養平滑筋細胞に導入した。導入後48時間経過後にルシフェラーゼ活性を定量した。
(2)結果
図5に示したとおりである。Gal4DNA-BD/PPARγ2発現ベクターとVP16 AD/empty controlベクターおよびVP16 AD/KLF5発現ベクターと酵母Gal4DNA-BD/empty controlの組み合わせで細胞に導入した場合にはルシフェラーゼ活性はほとんど観察されないが、Gal4DNA-BD/PPARγ2発現ベクターおよびVP16 AD/KLF5発現ベクターを共に細胞導入した場合には、高いルシフェラーゼ活性が観察された。この結果から、KLF5とPPARγ2が細胞内で結合することが確認された。
KLF5とPPARγ2との細胞内での相互作用を、レポーターアッセイを用いて確認した。
(1)材料と方法
KLF5発現ベクターまたはPPARγ2 発現ベクター、およびPPARg2のレポーターとしてのアポリポプロテインAIIプロモーター-Luciferaseベクターを培養平滑筋細胞に導入した。導入後12時間目に一部の細胞にはPPARγ2のリガンドであるtrogrlitazone 2mMを培養上清中に添加した。導入後48時間経過後にルシフェラーゼ活性を定量した。
(2)結果
図6に示したとおりである。すなわち、KLF5は単独ではアポリポプロテインAIIプロモーター活性を上昇させないが、PPARγ2の存在下に相乗的にアポリポプロテインAIIプロモーター活性を上昇させた。この作用は、PPARγ2のリガンドの添加によりさらに増強された。
哺乳動物細胞を用いたTwo-Hybridシステムによって、KLF5-PPARγ複合体に対する活性調節因子をスクリーニングした。
(1)材料と方法
酵母Gal4DNA BD/PPARγ2・VP16 AD/KLF5発現ベクターまたはGal4DNA-BD/KLF5・VP16 AD/ PPARγ2発現ベクター、およびレポーターとしてのGal4結合配列-SEAPベクターを培養平滑筋細胞に導入した。導入後12-24時間経過後に培養上清中へ被験物質およびコントロールとしてPBSを添加し、添加後12・24時間経過後に培養上清をそれぞれ100マイクロリットルずつ採取、SEAP活性を定量した。
(2)結果
前記の各ベクターを導入した培養平滑筋細胞では、高値の安定したSEAP活性が得られた。このことは細胞内でPPARγ2およびKLF5が強制的に高発現し、さらにGal4結合配列上に両者が結合した状態が再現できいることを示す結果である。また、コントロールとしてのPBSの添加ではSEAP活性に変化がないが、被験物質(化合物A)ではSEAP活性がさらに上昇、逆に被験物質(化合物B)ではSEAP活性は基線以下となった。
以上詳しく説明したとおり、この出願の発明によって、脂肪細胞の異常な形質転換の原因をなる分子生物学的な事象を基礎として、メタボリックシンドローム治療薬の成分物質をスクリーニングする方法と、そのような分子生物学的事象を対象としてメタボリックシンドロームを診断する方法が提供される。これらの発明によって、メタボリックシンドロームの有効な予防、症状の改善および症状の治癒が可能となる。
KLF5が脂肪細胞分化の初期段階で発現し、しかもKLF5はPPARγ2との相互作用によって脂肪細胞の分化を制御することを示すRT-PCRの結果である。 肥満モデルマウスの脂肪組織ではKLF5の発現が低下していることを示すRT-PCRの結果である。 KLF5ヘテロノックアウトマウスでは脂肪肝の発症が抑制されていることを示す顕微鏡像である。 KLF5ヘテロノックアウトマウスでは高脂肪食付加による褐色脂肪組織の白色脂肪組織化が抑制されることを示す顕微鏡像である。 KLF5とPPARγ2とが、細胞内で結合する哺乳動物細胞Two-Hybridシステムによって確認した結果である。 KLF5とPPARγ2とが細胞内で相互作用することをレポーターアッセイによって確認した結果である。

Claims (2)

  1. メタボリックシンドロームの治療薬成分をスクリーニングする方法であって、KLF5-PPARγ複合体の形成をレポーター分子のシグナルによって検出することのできる系に被験物質を添加し、レポーター分子のシグナル量を指標としてKLF5-PPARγ複合体の活性調節物質を特定することを特徴とする方法。
  2. メタボリックシンドロームの診断方法であって、被験者から単離した脂肪組織におけるKLF5発現量を測定することを特徴とする方法。

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