JP2008515394A - 心臓の圧負荷関連遺伝子 - Google Patents

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Abstract

本発明は、遺伝子産物が心臓の圧負荷により差次的に発現する遺伝子を同定する。本発明は、多くの病因による心不全に対する個体の感受性、ならびに肥大、心腔拡大、または収縮期心不全の存在および重症度を診断または評価する方法を提供する。心臓病患者を治療する治療法、または心不全に対する個体の感受性を予防的に治療する方法もまた提供する。さらに本発明は、心発作を患うかまたは心不全の危険性がある個体を治療するために投与し得る作用物質を同定するためのスクリーニング法について記載する。

Description

序論
心不全は西洋文化における罹患率の主要原因である。うっ血性心不全(CHF)は、血漿量が増加し、体液が肺、腹部器官(特に肝臓)、および末梢組織に貯留した場合に生じる。心疾患の多くの形態において、HFの臨床症状は左室または右室の機能障害を反映し得る。左室(LV)不全は、特徴として、冠動脈疾患、高血圧、心臓弁膜症、多くの形態の心筋症、および先天性欠損に発症する。右室(RV)不全は、最も一般的には、先行するLV不全(肺静脈圧が上昇し、肺動脈高血圧に至る)および三尖弁逆流によって起こる。心不全は、収縮機能障害もしくは拡張機能障害またはその両者を呈する。収縮異常および拡張異常の合併が一般的である。
主として心室収縮不全の問題である収縮機能障害では、心臓は十分な循環拍出量を組織に供給できない。エネルギー利用、エネルギー供給、電気生理学的機能、および収縮要素の相互作用に様々な欠陥が生じるが、これは細胞内Ca++調節およびアデノシン三リン酸(ATP)産生の異常を反映しているようである。収縮機能障害には多くの原因がある;最も一般的なのは、冠動脈疾患、高血圧、弁膜症、および拡張型心筋症である。さらに、拡張型心筋症には多くの既知原因およびおそらく多くの未知原因があり、例として、ウイルス感染、例えばアルコール、種々の有機溶媒、ある種の化学療法薬(例えば、ドキソルビシン)、β遮断薬、Ca拮抗薬、および抗不整脈薬などの毒性物質がある。
拡張機能障害は、心不全の原因の20〜40%を占める。拡張機能障害は一般に、等容性弛緩期に測定される心室弛緩時間の延長を伴う。充満抵抗は心室拡張期圧と直接関連する;この抵抗は加齢に伴って上昇するが、これはおそらく心筋細胞の喪失および間質コラーゲンの沈着を反映している。拡張機能障害は、肥大型心筋症、心室肥大が著明な状態、例えば、高血圧、重症大動脈弁狭窄、および心筋のアミロイド浸潤で顕著であると考えられる。治療介入しなければ、肥大型心筋症および拡張機能障害は、多くの場合、疾患の自然経過において収縮機能障害および顕性症候性心不全に進行する。
哺乳動物の心臓は、左室肥大(LVH)および左房拡大(LAE)を起こすことにより、圧負荷に応答する。血行動態負荷の増加に対するこれらの適応応答は、心筋の構造および機能の多くの変化を含む。これらの応答は、後負荷が増加する中で心拍出量を維持するために短期的には必要であるが、LVHおよびLAEは、突然死の危険性の増大、および西洋文化における罹患率の主要原因である心不全への進行と関連する。これらの変化を伴う分子事象の詳細な理解は、それらの進行を妨げるかまたは覆す能力に向けた重要な段階である。
圧負荷の過程では、LVが圧傷害の矢面に立つ一方で、左房は、拡大およびリモデリングを生じる、僧帽弁逆流および壁応力の増大に起因する生理学的課題に直面する。肥大型心筋症、心臓弁膜症、およびうっ血性心不全の最も重要な臨床的合併症の大部分は心房拡大によるもので、これには心房細動およびその他の電気生理学的障害、ならびに心室充満の減少によって起こる血行動態の悪化が含まれる。ヒトにおいて、左房拡大の血行動態的および電気生理学的続発症は、LVHに起因するものとほぼ同程度に重要である。
ヒトの死亡率および罹患率における心筋症の重要性を考慮すると、この疾患に関与する遺伝子の同定および治療方法の開発は非常に興味深い。
発明の概要
本発明は、心不全をきたす心疾患を含むがこれに限定されない、圧負荷に関連する心疾患を診断および治療するための方法ならびに組成物を提供する。数ある病態の中でも、圧負荷は、哺乳動物の心臓において左室肥大(LVH)および左房拡大(LAE)の発症を誘導する。
具体的には、心臓に圧負荷を誘導した後に差次的に発現する遺伝子を同定し、本明細書に記載する。例えば、血液試料、生検材料の解析、インビボ画像化、酵素活性の代謝アッセイなどによる、これらの遺伝子のコード配列および/またはポリペプチド産物の検出は、心臓の肥大および拡大をきたす状態の早期発見、診断、病期決定、およびモニタリングの有用な方法を提供する。心臓組織における一連の遺伝子の発現シグニチャー(signature)もまた、心臓の圧負荷を示す状態に関して評価することができる。
本発明はまた、圧負荷が関与する心疾患において遺伝子の発現または遺伝子産物の活性を調節する化合物を同定する方法、および心不全症状または傾向を示す個体にそのような化合物を投与することにより疾患を治療する方法を提供する。
表Iは、横行大動脈狭窄後に差次的に発現する遺伝子配列のリストを提供する。スタンフォード遺伝子ID(Stanford Gene ID)は、Genbankアクセッション番号を含むデータベースを提供するgenome-www5.stanford.eduのインターネットアドレスを指す。1〜12ページは有意に上方制御される遺伝子を提供し、13〜26ページは有意に下方制御される遺伝子を提供する。表IAは関心対象の上方制御遺伝子のサブセットを提供し、「UGRepAcc [A]」という表題の下に、Genbankで利用できる代表的な遺伝子配列のアクセッション番号を含む。「LLRepProtAcc [A]」という表題の下には、Genbankにおける代表的なタンパク質配列のアクセッション番号を提供する。表IBは、同様に注釈づけられた、関心対象の配列のさらなるサブセットを提供する。表IAまたはIBの配列は、表II、III、またはIVにおけるそれらの表示に従って、さらに細分され得る。
表IIは、血清学的アッセイの対象となる、横行大動脈狭窄後に差次的に発現する、表Iに記載の遺伝子配列のリストを提供する。表IIはさらに、Genbankアクセッション番号、ヒト相同体のGenbankアクセッション番号、ならびに遺伝子が横行大動脈狭窄において左房(UP TAC LAと表示)で上方制御されるのか、および/または左室(UP TAC LVと表示)で上方制御されるのかを提供する。
表IIIは、画像化アッセイの対象となる、横行大動脈狭窄後に差次的に発現する、表Iに記載の遺伝子配列のリストを提供する。表IIIはさらに、Genbankアクセッション番号、ヒト相同体のGenbankアクセッション番号、ならびに遺伝子が横行大動脈狭窄において左房(UP TAC LAと表示)で上方制御されるのか、および/または左室(UP TAC LVと表示)で上方制御されるのかを提供する。
表IVは、代謝アッセイの対象となる、横行大動脈狭窄後に差次的に発現する、表Iに記載の遺伝子配列のリストを提供する。表IVはさらに、Genbankアクセッション番号、ヒト相同体のGenbankアクセッション番号、ならびに遺伝子が横行大動脈狭窄において左房(UP TAC LAと表示)で上方制御されるのか、および/または左室(UP TAC LVと表示)で上方制御されるのかを提供する。
態様の詳細な説明
心筋症;心不全;などを含むがこれに限定されない、圧負荷が関与する心疾患を診断および治療するための方法ならびに組成物を提供する。本発明は、例えば左房拡大および左室肥大の過程で、圧負荷に応答して差次的に発現する遺伝子の発現および役割の評価に一部基づく。肺高血圧などの病態に関連した遺伝子発現では、右心腔も同様の変化を有し得る。そのような配列は、心疾患の診断およびモニタリングにおいて有用である。遺伝子産物もまた、薬物スクリーニングおよび薬物作用の治療標的として有用である。
これらの過程を媒介する転写変化を体系的に調べるため、横行大動脈狭窄後に、4つの心腔それぞれのゲノム全体にわたる転写プロファイリングを行った。拡大の過程において、左房が遺伝子転写の激変を起こすことが本明細書において示される。LAおよびLVの構造変化は、これらの心腔の転写プロファイルの顕著な変化と相関する。結果を統計解析することにより、血管新生、脂肪酸酸化、酸化的リン酸化、細胞骨格およびマトリックスの再構築、ならびにGタンパク質共役受容体シグナル伝達を含む、群全域にわたる有意な変化を有する生物学的過程群が同定された。このようにして同定された遺伝子、およびそれらの生物学的過程群への分類を表Iに提供する。上方制御される遺伝子のサブセットを表IAおよびIBに提供する。表IAは表Iのサブセットであり、表IBは表IAのサブセットである。
本発明のいくつかの方法では、例えば少なくとも1つ、少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つ、少なくとも5つ、少なくとも10、少なくとも15、少なくとも20を含む一連の配列を選択するが、一連の配列は特定の表(I、IA、IB;および/またはII、III、IV)の実質的にすべての配列を含んでもよいし、または約100以下の異なる配列、約50以下の異なる配列、約25以下の異なる配列などに限定されてもよい。アレイに含めるため、診断パネルで使用するためなどの配列の選択は、1つまたは複数の副表中の配列の表示、例えば表IAまたは表IB中に存在する選択配列;表IBおよび表II;表IBおよび表III;表IBおよび表IVなどの両方に存在する配列の表示に基づき得る。配列のヒト相同体を使用することが、特に興味深い。または配列の選択は、有意性のカットオフまたは発現の変化倍率に基づき得り、例えば、そのような配列は少なくとも約3倍、少なくとも約6倍、少なくとも10倍、またはそれ以上の変化倍率を有する。配列の選択はまた、例えば遺伝子がエネルギー経路、細胞接着、細胞間情報伝達、シグナル伝達群などに分類され得る図5に記載の分類を使用して、生物活性分類に基づき得る。
圧負荷関連遺伝子の同定は、圧負荷関連遺伝子の発現変化を検出することにより、疾患、特にそのような疾患が心不全の傾向を示す、例えば心筋症;心房拡大;心筋肥大;などの発生を検出するか;またはそのような疾患に対する個体の感受性を評価する、診断および予後診断法を提供する。遺伝子またはそれらの産物の早期検出を用いて、発症しそうな疾患の発生を決定することができ、それにより適切な予防または防御手段を用いた介入が可能になる。
本発明の診断法では、種々の技法および試薬が役立つ。本発明の1つの態様では、血液試料または血液に由来する試料、例えば血漿、血清などを、圧負荷関連遺伝子によってコードされるポリペプチド、例えば細胞表面ポリペプチド、および特に興味深いことには分泌ポリペプチドの存在についてアッセイする。このようなポリペプチドは、特異的結合メンバーを介して検出され得る。この目的での抗体の使用は特に興味深い。このようなアッセイには、抗体アレイ;ELISAおよびRIA型式;懸濁液/溶液中での標識抗体の結合およびフローサイトメトリー、質量分析などによる検出を含む種々の型式が役立つ。検出には、1つまたは一連の抗体を利用し得る。血清学的アッセイの対象となる遺伝子および遺伝子産物のサブセットを表IIに提供する。これらの配列は、表IAおよび/または表IBに記載の配列を参照することによりさらに規定され得り、すなわち、表IIおよび表IAまたは表IBの両方に存在する配列が、血清学的アッセイの特に対象となり得る。
別の態様においては、インビボ画像化を利用して、心臓組織における圧負荷関連遺伝子の発現を検出する。このような方法は、例えば、細胞表面圧負荷関連遺伝子産物に特異的な標識抗体またはリガンドを利用し得る。このような方法に含まれるのは、標識試薬のインサイチュー結合によって位置が特定され得る、心腔で差次的に発現する遺伝子産物である。これらの態様では、ポリペプチドに特異的な検出可能に標識された部分、例えば抗体、リガンドなどを(例えば、注射により)個体に投与し、磁気共鳴画像法、コンピュータ断層撮影法などを含むがこれらに限定されない標準的な画像化技法を用いて、標識された細胞の位置を特定する。検出には、1つの画像化試薬または画像化試薬の混合物を利用し得る。画像化アッセイの対象となる遺伝子および遺伝子産物のサブセットを表IIIに提供する。これらの配列は、表IAおよび/または表IBに記載の配列を参照することによりさらに規定され得り、すなわち、表IIIおよび表IAまたは表IBの両方に存在する配列が、画像化アッセイの特に対象となり得る。
別の態様では、例えば標識された基質を用いて代謝試験を行い、圧負荷関連遺伝子産物の酵素活性のレベルを決定する。このようなアッセイの対象となる遺伝子産物には、その反応産物が、例えば血液試料中で容易に検出される酵素が含まれる。例えば、酸化的リン酸化は左室肥大および心房拡大において顕著に下方制御され、心不全の危険性のマーカーを提供することが本明細書で示される。代謝アッセイの対象となる遺伝子および遺伝子産物のサブセットを表IVに提供する。これらの配列は、表IAおよび/または表IBに記載の配列を参照することによりさらに規定され得り、すなわち、表IVおよび表IAまたは表IBの両方に存在する配列が、代謝アッセイの特に対象となり得る。
別の態様では、心臓組織に由来する、好ましくは圧負荷により冒された1つまたは複数の心腔に由来するmRNA試料を、圧負荷、および心不全の傾向の徴候を示す遺伝子シグニチャーについて解析する。発現シグニチャーは典型的に、一連の遺伝子配列、例えば、マイクロアレイ型式;多重増幅などを、疾患シグニチャーと統計的に有意な一致が存在するかどうかを決定するための結果の解析と共に利用する。
圧負荷関連遺伝子およびそれらの産物の機能的調節は、肥大および拡大の病態生理学的過程を遮断するための介入の要点を提供し、また同様の病態生理を有するその他の循環系疾患における治療介入を提供する。これらの遺伝子およびそれらの産物はまた、心不全の危険性が高い患者の予防戦略において、損傷を防ぐ、減弱する、または低減するためにも使用することができる。その発現が肥大または拡大の発症過程で変化する遺伝子は、心臓を損傷する可能性がある。心臓損傷遺伝子の活性または発現を阻害する作用物質は、治療薬または予防薬として使用することができる。そのような遺伝子産物活性を減少させるように作用する作用物質は、心臓損傷遺伝子に相当する部分を含むアンチセンス核酸もしくはRNAi核酸、または遺伝子産物の直接もしくは間接的阻害剤として作用する任意の作用物質、例えば薬理学的アゴニストまたは部分アゴニストであり得る。
病態
心不全とは、多くの疾患過程の最終共通経路を表す一般用語である。心不全は通常、心筋収縮の効率が減少することにより起こる。しかし、心収縮が正常であるかまたは上昇した力学的過負荷もまた、心不全を引き起こし得る。この力学的過負荷は、動脈性高血圧、または大動脈弁、僧帽弁、もしくは肺動脈弁の狭窄もしくは漏出、またはその他の原因に起因し得る。過負荷に対する初期応答は通常、力発生を増大し、心拍出量(CO)を正常レベルに戻すための心筋の肥大(細胞拡大)である。典型的に、肥大心臓は、拡張機能障害と称される症候群である、弛緩障害を有する。疾患の自然な経過では、継続的過負荷に直面した代償性肥大の後に、菲薄化、拡張、および拡大が起こり、結果として心不全としても一般的に知られる収縮機能障害が生じる。この自然な進行は典型的に、過負荷刺激の重症度に応じて、ヒトでは数ヶ月から長年かけて起こる。肥大段階での治療介入は、臨床的に重要な収縮機能障害段階への進行を遅延させ得るかまたは妨げ得る。したがって、早期肥大段階での診断により、独自の治療機会が提供される。うっ血性心不全の最も一般的な原因は冠動脈疾患であり、これは心筋梗塞(心発作)を引き起こし得り、心筋梗塞は心臓により少ない心臓細胞で同じ仕事を行うことを余儀なくさせる。その結果、心臓が、代謝している組織または細胞の栄養および酸素所要量を満たすのに十分な血液を排出し得ない病態生理学的段階が起こる。
LV不全では、COが低下し、肺静脈圧が上昇する。肺毛細血管圧が血漿タンパク質の膠質浸透圧(約24 mm Hg)を超えるレベルにまで上昇すると、肺水の増加、肺コンプライアンスの低下、および呼吸仕事量のO2使用量の増加を招く。LV不全に起因する肺静脈高血圧および浮腫は、肺機能、ひいては換気/灌流関係に顕著に変化をきたす。肺静脈静水圧が血漿タンパク質膠質浸透圧を超える場合には、体液は毛細管、間質腔、および肺胞に血管外遊出する。
心拍数および心筋収縮性の増加、選択された血管床における細動脈狭窄、静脈収縮、ならびにNaおよび水分貯留が、心室機能の低下を初期段階で代償する。これらの代償の試み(adverse effect)の有害な影響には、心仕事量の増加、冠灌流の減少、心臓の前負荷および後負荷の増加、うっ血をもたらす体液貯留、筋細胞の喪失、K排泄量の増加、ならびに心不整脈が含まれる。
心機能不全を有する無症候性患者が顕性CHFを発症する機構は不明であるが、それは、腎灌流の低下に続発するNaおよび水分の腎臓貯留から発症する。したがって、心機能が悪化するにつれて、腎血流はCOの低下に比例して減少し、GFRは減少し、腎臓内の血流は再分配される。ろ過率およびろ過Naは減少するが、尿細管再吸収は上昇する。
症状および徴候、例えば労作性呼吸困難、起座呼吸、浮腫、頻拍、肺ラ音、第3心音、頸静脈怒張などは、70〜90%の診断特異性を有するが、従来の試験の予測精度は低い。B型ナトリウム利尿ペプチドのレベルの上昇は、診断となり得る。補助試験には、CBC、血中クレアチニン、BUN、電解質(例えば、Mg、Ca)、グルコース、アルブミン、および肝機能試験が含まれる。ECGはHFを有するすべての患者で行われ得るが、発見は特異的ではない。
本発明の方法により心不全の危険性があると診断される患者は、心不全の危険性を低減するよう適切に治療され得る。収縮機能障害の薬物治療には、主として、利尿薬、ACE阻害剤、ジギタリス、およびβ遮断薬が含まれ;大部分の患者はこれらのクラスの少なくとも2つで治療を受ける。HFの標準的な3剤治療にヒドララジンおよび二硝酸イソソルビドを添加することで、血行動態および運動耐容能が改善され、難治性患者の死亡率が減少し得る。アンジオテンシンII受容体遮断薬ロサルタンは、ACE阻害剤の効果と類似した効果を有する。
ジギタリス調製物は、弱い変力作用および房室結節の遮断を含む多くの作用を有する。ジゴキシンは、最もよく処方されるジギタリス調製物である。既知腎疾患を有するかまたは腎疾患の疑いがある患者における代替物、ジギトキシンは、主として胆汁中に排出され、したがって異常な腎機能により影響を受けることはない。
β遮断薬の慎重投与により、患者によっては、特に特発性拡張型心筋症を有する患者は臨床的に改善し、死亡率が減少し得る。第三世代の非選択的β遮断薬であるカルベジロールもまた、α遮断および抗酸化活性を有する血管拡張薬である。ニトログリセリンまたはニトロプルシドなどの血管拡張薬は、収縮期心室壁応力、大動脈インピーダンス、心室腔サイズ、および弁逆流を軽減することにより、心室機能を改善する。
原発性または続発性の動脈性高血圧または収縮期および/もしくは拡張期BPの上昇は、高い頻度で心臓の圧負荷と関連し、心不全の重要な危険因子である。高血圧患者は、肥大、拡張機能障害の同時発症、および心不全の傾向があるかどうかを決定するために、本発明の診断法で解析することができる。高血圧の基準は典型的に、約140 mm Hgを超える収縮期血圧、および/または約90 mm Hgを超える拡張期血圧である。
原発性(本態性)高血圧の原因は不明である;血行動態および病態生理のその多様な撹乱は、単一の原因によるとは考えにくい。遺伝は素因ではあるが、正確な機構は不明である。発症機序は、血管収縮の誘発による総末梢血管抵抗の増加、および心拍出量の増加をもたらし得る。
原発性高血圧では初期に病理学的変化は起こらないが、最終的には全身性の細動脈硬化を発症する。左室の肥大、および最終的には拡張が徐々に起こる。高血圧はアテローム発生を促進するため、高血圧患者では冠動脈、脳、大動脈、腎、および末梢動脈アテローム硬化が多く、しかも重症度が高い。
大動脈弁、僧帽弁、肺動脈弁、もしくは三尖弁の狭窄または機能不全を含む弁膜症もまた、高い頻度で心臓の過負荷と関連し、心不全のもう1つの重要な危険因子である。弁膜症を有する患者は、肥大、拡張機能障害の同時発症、および心不全の傾向があるかどうかを決定するために、本発明の診断法で解析することができる。弁膜症は典型的に、顕著な弁狭窄または弁機能不全の心エコー測定により診断される。心臓弁膜症は、リウマチ性心疾患、先天性弁欠陥、心内膜炎、加齢などを含むがこれらに限定されない多くの病因を有する。弁膜症が心不全を引き起こす発症機序は、種々の心腔からの血液流出の閉塞、およびそれによる負荷の増大である。
心筋症とは、心室心筋の構造的または機能的異常を指す。心筋症には多くの原因がある。病歴、身体検査、および侵襲的または非侵襲的検査による病態生理学的分類(拡張型うっ血性、肥大型、または拘束型心筋症)が行われる。原因が発見できない場合は、心筋症は原発性または特発性と見なされる。
拡張型うっ血性心筋症は心不全を伴う心筋機能障害を含み、心室拡張および収縮機能障害が顕著である。温帯において最も多い識別可能な原因は、びまん性の虚血性ミオパチーを伴うびまん性冠動脈疾患である。最も一般的には、診察時に、びまん性の筋細胞喪失を伴う慢性心筋線維症を認める。診断は、特徴的な病歴および身体検査、ならびにその他の心室不全の原因の排除に依存する。ECGは、洞頻脈、低電位QRS、および低電位または陰性T波を伴う非特異的ST低下を示し得る。
肥大型心筋症は、後負荷の増大の不在下で発症し得る拡張機能障害を伴う著明な心室肥大を特徴とする、先天性または後天性疾患である。心筋は細胞のおよび筋原線維の錯綜配列を伴う異常を示すが、この所見は肥大型心筋症に特異的なものではない。心室中隔は、左室後壁に比べより肥大している(非対称性中隔肥大)。最も多い非対称性形態の肥大型心筋症では、大動脈弁下の上部心室中隔の著明な肥大および肥厚が認められる。収縮期には中隔は肥厚し、心室の形が異常なため既に位置が異常である僧帽弁前尖は中隔に向かって吸い寄せられ、流出路閉塞を生じる。臨床症状は、単独でまたは任意の組み合わせで起こり得る:胸痛は通常、労作に関連した典型的な狭心症である。失神は通常は労作性であり、心筋症、不整脈、流出路閉塞、および心室拡張期充満の減少の組み合わせに起因する。労作時呼吸困難は、左室拡張期コンプライアンスの低下により起こるが、このコンプライアンスの低下は、血流が増加すると左室拡張終期圧の急激な上昇を引き起こす。流出路閉塞は、心拍出量を減少させることにより呼吸困難に寄与し得る。
拘束型心筋症は、硬くコンプライアンスの低下した心室壁を特徴とし、一方または両方の心室(最も一般的には左室)の拡張期充満に対して抵抗を示す。原因は通常不明である。心筋を冒すアミロイドーシスは、ヘモクロマトーシスにおける鉄の浸潤と同様、通常全身性である。サルコイドーシスおよびファブリ病は心筋を冒し、結節伝導組織も冒され得る。レフラー病(一次性に心臓を冒す好酸球増加症候群の亜群)は、拘束型心筋症の一因である。これは熱帯地方に発生する。これは、好酸球増加症を伴う急性動脈炎として発症し、その後、心内膜、腱、および房室弁に血栓を形成し、線維症へと進行する。心内膜線維症は温帯で発生し、左室のみを冒す。これらの病理学的状態の主な血行動態結果は、高い充満圧を伴う硬くコンプライアンスの低下した心腔の拡張機能障害である。浸潤または繊維化の起こった心腔の症例で、代償性肥大が不十分である場合、収縮機能は悪化し得る。壁在血栓症および全身性塞栓症が、拘束型または閉塞型を合併する場合がある。
圧負荷に関連した遺伝子の同定
圧負荷関連遺伝子を同定するため、横行大動脈狭窄後の心腔から、または対照非罹患組織から組織を採取した。そのような組織から全RNAまたはmRNAを単離する。例えば、Sambrook et al., 1989, Molecular Cloning, A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Press, New York;およびAusubel, F. M. et al., eds., 1987-1993, Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons, Inc., New Yorkを参照されたいが、これらはいずれもその全体が参照として本明細書に組み入れられる。実験状態と対照状態の間の遺伝子発現レベルを比較することにより、差次的に発現した遺伝子を検出する。ディファレンシャルスクリーニング法、サブトラクティブハイブリダイゼーション法、ディファレンシャルディスプレイ法、または複数個の遺伝子配列を含むアレイへのハイブリダイゼーションを含む、当業者に周知である種々の方法を利用して、差次的に発現した遺伝子を表す、収集したRNA試料内の転写産物を同定し得る。
本明細書で用いる「差次的発現」とは、遺伝子の時間的発現パターンおよび/または組織発現パターンの定量的および定性的な差を指す。したがって、差次的に発現する遺伝子は、正常状態に比して疾患状態において、または対照状態に比して実験状態において、その発現が活性化または不活化され得る。好ましくは、調節を受ける遺伝子は、所与の組織または細胞種において、対照対象または疾患対象のどちらか一方で検出可能であって、両者で検出されない発現パターンを示す。本明細書で使用する検出可能とは、当業者に周知であるディファレンシャルディスプレイ、逆転写-(RT-)PCR、および/またはノーザン解析、ELISA法、RIA法、代謝アッセイ法などの標準的な技法により検出可能なRNA発現パターンまたはポリペプチド産物の存在を指す。一般に、差次的発現とは、疾患組織発現と対照組織発現との間に少なくとも20%の変化、および他の例では少なくとも2、3、5、または10倍の差が存在することを意味する。差は通常、統計的に有意なものであり、これは偶然によって起こる差の確率(P値)がある所定のレベル(例えば、5%)未満であることを意味する。通常、信頼水準(P値)は<0.05であり、より典型的には<0.01、および他の例では<0.001である。
表Iは、肥大型心筋症において有意な発現変化を有する配列の一覧を提供するが、遺伝子は表中に示すように誘導または抑制され得る。表IAは、関心対象の上方制御される遺伝子のサブセットを提供する。表IBは、関心対象の上方制御される配列のさらなるサブセットを提供する。表IAまたは表IBの配列は、表II、III、またはIV中のそれらの表示にしたがってさらに細分され得る。いくつかの態様では、関心対象の配列は、少なくとも約4倍;少なくとも約5倍、少なくとも約6倍、またはそれ以上の、表Iに記載の「変化倍率」を有する。
核酸
圧負荷関連遺伝子の配列は、診断および予後診断法、コードされるポリペプチドの組み換え産生などに有益である。圧負荷関連遺伝子配列の一覧を、表Iおよびその副表に提供する。本発明の核酸には、表Iに提供する配列の1つと高度の配列類似性または配列同一性を有する核酸が含まれ、また相同体、特にヒト相同体も含まれ、その例を表II、III、およびIVに提供する。配列同一性は、ストリンジェントな条件下、例えば50℃またはそれ以上の温度および0.1×SSC(9 mM NaCl/0.9 mMクエン酸Na)でのハイブリダイゼーションにより決定され得る。ハイブリダイゼーションの方法および条件は当技術分野において周知であり、例えば米国特許第5,707,829号を参照されたい。提供する核酸配列と実質的に同一である核酸、例えば対立遺伝子変種、遺伝子改変型の遺伝子などは、ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下で、表Iおよびその副表に提供する配列の1つと結合する。核酸の調製に関するさらなる具体的な手引きは、Fleury et al. (1997) Nature Genetics 15:269-272;Tartaglia et al., WO 96/05861;およびChen et al., WO 00/06087により提供されるが、これらはそれぞれその全体が本明細書に組み込まれる。
表Iおよびその副表に列挙した遺伝子は、適切なcDNAまたはゲノムDNAライブラリー中の遺伝子を検出するための適切なプローブの使用、共通の構造的特徴を有するクローン化DNA断片を検出するための発現ライブラリーの抗体スクリーニング、直接化学合成、および増幅手順を含むがこれらに限定されない、当業者に周知の種々の方法を使用して得ることができる。ライブラリーは好ましくは、神経細胞から調製される。クローニング法は、Berger and Kimmel, Guide to Molecular Cloning Techniques, Methods in Enzymology, 152, Academic Press, Inc. San Diego, CA;Sambrook, et al. (1989) Molecular Cloning - A Laboratory Manual (2nd ed) VoIs. 1-3, Cold Spring Harbor Laboratory, Cold Spring Harbor Press, NY;およびCurrent Protocols (1994), a joint venture between Greene Publishing Associates, Inc. and John Wiley and Sons, Inc.に記載されている。
部分コード配列または非コード配列を含むクローンから得られた配列を用いて、RACE法(Chenchik et al. (1995) CLONTECHniques (X) 1: 5-8)を使用することにより全コード領域を得ることができる。オリゴヌクレオチドは、全コード配列をコードする逆転写されたmRNAを増幅し得る、部分クローンから得られた配列に基づいて設計することができる。または、プローブを用いて、遺伝子が転写される適切な細胞または細胞株から調製されたcDNAライブラリーをスクリーニングすることができる。標的核酸が同定されたならば、単離して、周知の増幅技法でクローニングすることができる。このような技法には、ポリメラーゼ連鎖反応法(PCR法)、リガーゼ連鎖反応法(LCR法)、Qβ-レプリカーゼ増幅法、自律的配列複製系(SSR)、および転写に基づく増幅系(TAS)が含まれる。このような方法には、例えば、Mullis et al.の米国特許第4,683,202号;PCR Protocols A Guide to Methods and Applications (Innis et al. eds) Academic Press Inc. San Diego, CA (1990);Kwoh et al. (1989) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 86: 1173;Guatelli et al. (1990) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 87: 1874;Lomell et al. (1989) J. Clin. Chem. 35: 1826;Landegren et al. (1988) Science 241 : 1077-1080;Van Brunt (1990) Biotechnology 8: 291-294;Wu and Wallace (1989) Gene 4: 560;およびBarringer et al. (1990) Gene 89: 117に記載されているものが含まれる。
核酸のクローニングの別法として、適切な核酸を化学合成することもできる。直接化学合成法には、例えば、Narang et al. (1979) Meth. Enzymol. 68: 90-99のホスホトリエステル法;Brown et al. (1979) Meth. Enzymol. 68: 109-151のホスホジエステル法;Beaucage et al. (1981) Tetra. Lett., 22: 1859-1862のジエチルホスホロアミダイト法;および米国特許第4,458,066号の固相支持体法が含まれる。化学合成により、一本鎖オリゴヌクレオチドが生成される。これは、相補配列とのハイブリダイゼーションにより、または一本鎖を鋳型として用いるDNAポリメラーゼによる重合により、二本鎖DNAに変換することができる。DNAの化学合成は、約100塩基の配列に制限される場合が多いが、短い配列を連結することで、より長い配列を得ることができる。または、サブ配列をクローニングし、適切な制限酵素を使用して適切なサブ配列を切断してもよい。
核酸は、cDNAまたはゲノムDNA、およびそれらの断片であってよい。本明細書で用いる「cDNA」という用語は、天然の成熟mRNA種に見出される配列エレメントの配置を共有する核酸をすべて含むことを意図するが、ここで配列エレメントとは、エキソンならびに3'側および5'側の非コード領域のことである。通常、mRNA種は、介在イントロンが存在する場合には、これが核内RNAスプライシングによって除去された連続したエキソンを有して、本発明のポリペプチドをコードする連続したオープンリーディングフレームを生じる。
関心対象のゲノム配列は、列挙した配列において定義される開始コドンと終止コドンの間に存在する核酸を含み、天然の染色体に通常存在するイントロンをすべて含む。これは、成熟mRNAに見出される3'側および5'側の非翻訳領域をさらに含み得る。これは、プロモーター、エンハンサーなどの特定の転写および翻訳制御配列をさらに含み得り、転写領域の5'末端または3'末端における約1 kb、場合によってはさらに長い隣接ゲノムDNAを含む。コード領域の3'側もしくは5'側に隣接するゲノムDNA、または場合によってイントロン内に見出されるような内部制御配列は、適切な組織特異的、時期特異的、または疾患状態特異的発現に必要な配列を含んでおり、腫瘍細胞における発現の上方制御を調査するのに有用である。
本発明の核酸に特異的なプローブは、表Iおよびその副表に開示する核酸配列を使用して作製することができる。プローブは、好ましくは、表Iおよびその副表に提供する配列の1つの、少なくとも約18 nt、25 nt、もしくは50 nt、またはそれ以上の長さの対応する連続配列であり、通常、約2、1、または0.5 kb長未満である。好ましくは、プローブは、低い複雑度をマスキングするためのマスキングプログラム、例えばBLASTXを適用した後に、マスキングされずに残った連続配列に基づき設計される。二本鎖または一本鎖断片は、従来法によるオリゴヌクレオチドの化学合成、制限酵素消化、PCR増幅などにより、DNA配列から得ることができる。プローブは、例えば放射性タグ、ビオチン化タグ、または蛍光タグにより標識され得る。
本発明の核酸は、一般的には完全な染色体以外として、単離され、実質的純度で得られる。通常、DNAまたはRNAとしての核酸は、他の天然核酸配列を実質的に含まずに得られ、一般的には少なくとも約50%、通常は少なくとも約90%純粋であり、典型的には「組換え体」であり、例えば、天然の染色体では通常会合していない1つまたは複数のヌクレオチドが隣接している。
本発明の核酸は直鎖状分子として、または環状分子内に提供され得り、自己複製分子(ベクター)、または複製配列を含まない分子内に提供され得る。核酸の発現は、自己の、または当技術分野において周知のその他の制御配列によって制御され得る。本発明の核酸は、トランスフェリンポリカチオン媒介性DNA移入、裸の核酸または封入核酸を用いたトランスフェクション、リポソーム媒介性DNA移入、DNAで被覆されたラテックスビーズの細胞内輸送、プロトプラスト融合、ウイルス感染、エレクトロポレーション、遺伝子銃、リン酸カルシウム媒介性トランスフェクションなど、当技術分野において利用できる種々の技法を使用して、適切な宿主細胞内に導入することができる。
PCRなどの増幅反応で使用する場合、1対のプライマーが用いられる。プライマー配列の正確な組成は本発明にとって重要ではないが、大部分の適用では、プライマーは、当技術分野において周知であるストリンジェントな条件下で本発明の配列にハイブリダイズする。少なくとも約50 nt、好ましくは少なくとも約100 ntの増幅産物を生じる1対のプライマーを選択することが好ましい。プライマー配列を選択するためのアルゴリズムは周知であり、市販のソフトウェアパッケージとして入手できる。増幅プライマーはDNAの相補鎖とハイブリダイズし、互いに向かってプライミングする。ハイブリダイゼーションプローブには、安定性および結合親和性を改良するために、核酸類似体を使用することが望ましい場合がある。「核酸」という用語はそのような類似体も包含するものと理解されたい。
ポリペプチド
圧負荷関連遺伝子によってコードされるポリペプチドは、スクリーニング法のため、抗体を産生させるための試薬として、治療薬としてなど興味深い。このようなポリペプチドは、天然供給源からの単離、組換え法、および化学合成により生成することができる。さらに、機能的に等価なポリペプチドも有益でありえ、等価なポリペプチドは相同体、例えばヒト相同体であってよく、サイレント変化(silent change)をもたらし、そのため機能的に等価な遺伝子産物を生じるアミノ酸残基の欠失、付加、または置換を含み得る。アミノ酸置換は、関連する残基の極性、電荷、可溶性、疎水性、親水性、および/または両親媒性に基づいて作製され得る。本明細書において使用する「機能的に等価」とは、表Iおよびその副表に提供する圧負荷関連遺伝子によってコードされるポリペプチドと実質的に同様のインビボ活性を示し得るタンパク質を指す。
ペプチド断片は種々の方法において有益であり、断片は通常、少なくとも約10アミノ酸長、約20アミノ酸長、約50アミノ酸長、またはそれよりも長く、最長で実質的全長までの長さである。特に対象となる断片には、特異的抗体を産生させるために使用できるエピトープを含む断片が含まれる。例えば膜貫通ドメインで切断された細胞表面タンパク質の可溶性断片もまた興味深い。
ポリペプチドは、当技術分野で周知の技法を使用して、組換えDNA技術によって生成することができる。当業者に周知の方法を用いて、コード配列および適切な転写/翻訳調節シグナルを含む発現ベクターを構築することができる。これらの方法には、例えば、インビトロ組換えDNA技法、合成技法、およびインビボ組換え/遺伝子組換えが含まれる。または、関心対象のポリペプチドをコードし得るRNAを化学合成してもよい。
典型的には、コード配列は、比較的大量の遺伝子産物を産生するため、所望の宿主細胞において機能的であるプロモーターの調節下に置かれる。極めて多様なプロモーターが周知であり、特定の適用に応じて、それらを本発明の発現ベクターにおいて使用することができる。通常、選択されるプロモーターは、プロモーターが活性を有し得る細胞に依存する。リボソーム結合部位、転写終結部位などのその他の発現調節配列もまた任意に含まれる。これらの調節配列を1つまたは複数含む構築物は、「発現カセット」と称される。発現は、特定の宿主細胞に適したプロモーターおよびその他の制御作用物質を利用して、原核細胞および真核細胞において達成され得る。例示的な宿主細胞には、大腸菌(E. coli)、その他の細菌宿主、酵母、ならびにCOS、CHO、およびHeLa細胞株、ならびに骨髄腫細胞株などの種々の高等真核細胞が含まれるが、これらに制限されない。
哺乳動物宿主細胞では、レトロウイルス、レンチウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルスなどを含む、ウイルスに基づく多くの発現系を使用することができる。アデノウイルスを発現ベクターとして使用する場合には、関心対象のコード配列を、アデノウイルス転写/翻訳調節複合体、例えば後期プロモーターおよび3部分(tripartite)リーダー配列に連結し得る。次いで、このキメラ遺伝子を、インビトロまたはインビボ組換えによりアデノウイルスゲノム中に挿入し得る。ウイルスゲノムの非必須領域(例えば、領域E1またはE3)に挿入することで、生存可能であり、感染宿主において差次的発現遺伝子または経路遺伝子タンパク質を発現し得る組換えウイルスが得られる。
特定の開始シグナルもまた、遺伝子の効率的な翻訳に必要とされ得る。これらのシグナルには、ATG開始コドンおよび隣接配列が含まれる。自己の開始コドンおよび隣接配列を含む完全な遺伝子が適切な発現ベクター内に挿入される場合には、さらなる翻訳調節シグナルは必要とされない場合もある。しかしながら、遺伝子コード配列の一部のみが挿入される場合には、外因性の翻訳調節シグナルが提供されなければならない。これらの外因性翻訳調節シグナルおよび開始コドンは、天然および合成の様々な起源のものであってよい。発現の効率は、適切な転写エンハンサーエレメント、転写ターミネーターなどを含めることにより増強され得る。
さらに、挿入配列の発現を調節するか、または所望の特定の様式で遺伝子産物を修飾およびプロセシングする宿主細胞株が選択され得る。タンパク質産物のそのような修飾(例えば、グリコシル化)およびプロセシング(例えば、分解)は、タンパク質の機能にとって重要であり得る。異なる宿主細胞は、タンパク質の翻訳後プロセシングおよび修飾に関して特徴的な特定の機構を有している。発現される外来タンパク質の正確な修飾およびプロセシングを確実にするため、適切な細胞株または宿主系が選択され得る。そのためには、一次転写産物の適切なプロセシング、遺伝子産物のグリコシル化およびリン酸化の細胞機構を有する真核宿主細胞が使用され得る。そのような哺乳動物宿主細胞には、CHO、VERO、BHK、HeLa、COS、MDCK、293、3T3、WI38などが含まれるが、これらに制限されない。
組換えタンパク質を長期的に高収率で産生させるには、安定発現が好ましい。例えば、差次的発現遺伝子または経路遺伝子タンパク質を安定して発現する細胞株を作出してもよい。ウイルスの複製開始点を含む発現ベクターを使用するのではなく、適切な発現調節エレメントによって調節を受けるDNAおよび選択可能マーカーで宿主細胞を形質転換し得る。外来DNAを導入した後、操作された細胞を濃縮培地中で1〜2日間培養してもよく、次いで選択培地に切り替える。組換えプラスミド中の選択可能マーカーは選択に対する耐性を付与し、細胞がその染色体中にプラスミドを安定に組み込み、フォーカスを形成するよう増殖することを可能にし、そのフォーカスをクローニングし、細胞株へと拡大することができる。この方法を有利に使用して、標的タンパク質を発現する細胞株を作出することができる。このように作出された細胞株は、差次的発現遺伝子または経路遺伝子タンパク質の内因性活性に影響を及ぼす化合物のスクリーニングおよび評価に特に有用であり得る。単純ヘルペスウイルス(herpes simplex virus)チミジンキナーゼ遺伝子、ヒポキサンチン-グアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ遺伝子、およびアデニンホスホリボシルトランスフェラーゼ遺伝子を含むがこれらに限定されない多くの選択系が使用され得る。代謝拮抗薬耐性を、メトトレキセートに対する耐性を付与するdhfr;ミコフェノール酸に対する耐性を付与するgpt;アミノグリコシドG-418に対する耐性を付与するneo;およびハイグロマイシンに対する耐性を付与するhygroの選択の基礎として使用することができる。
ポリペプチドは、直接または間接的に標識することができる。125Iなどの放射性同位体;基質に曝露された場合に、検出可能な比色シグナルまたは光を発生する酵素標識系;および蛍光標識を含むがこれらに限定されない種々の適切な標識系のいずれかを使用し得る。間接標識は、関心対象のポリペプチドに特異的に結合する標識抗体などのタンパク質の使用を含む。そのような抗体には、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、キメラ抗体、一本鎖抗体、Fab断片、およびFab発現ライブラリーにより産生される断片が含まれるが、これらに限定されない。
発現されたならば、組換えポリペプチドを、硫安沈殿、アフィニティーカラム、イオン交換および/またはサイズ排除クロマトグラフィー、ゲル電気泳動などを含む、当技術分野の標準的な手順に従って精製し得る(一般には、R. Scopes, Protein Purification, Springer--Verlag、N.Y. (1982)、Deutscher, Methods in Enzymology Vol 182: Guide to Protein Purification., Academic Press, Inc. N.Y. (1990)を参照されたい)。
組換え法の選択肢として、ポリペプチドおよびオリゴペプチドを化学合成することができる。そのような方法には典型的に固体アプローチが含まれるが、そのような方法はまた、溶液に基づく化学および組み合わせまたは固体アプローチと溶液アプローチとの組み合わせを利用し得る。タンパク質を合成するための固体方法の例は、Merrifield (1964) J. Am. Chem. Soc. 85:2149;およびHoughton (1985) Proc. Natl. Acad. Sci., 82:5132に記載されている。心臓保護タンパク質の断片を合成し、次いで結合することも可能である。そのような反応を行うための方法は、Grant (1992) Synthetic Peptides: A User Guide, W.H. Freeman and Co., N.Y.;および「Principles of Peptide Synthesis,」(Bodansky and Trost, ed.), Springer-Verlag, Inc. N.Y., (1993)に記載されている。
アレイ
アレイは、試料中の多数のポリヌクレオチドまたはポリペプチドをアッセイし得るハイスループット技法を提供する。本発明の1つの局面では、表Iおよびその副表に記載の圧負荷関連遺伝子、遺伝子産物、遺伝子産物に特異的な結合メンバーなどの1つまたは複数を含む、好ましくは少なくとも4つの異なる遺伝子もしくは遺伝子産物、少なくとも約8個、少なくとも10個、少なくとも約15個、少なくとも約25個、またはそれ以上のこれら配列を含むアレイが構築され、アレイは、心臓組織において上方制御または下方制御されることが知られている他の配列をさらに含み得る。
この技術は、差次的発現について試験するためのツールとして使用することができる。アレイは、ポリヌクレオチドプローブ、抗体、ポリペプチドなどを、基材(例えば、ガラス、ニトロセルロースなど)上に、結合したプローブを有する二次元マトリックスまたはアレイ状にスポットすることにより作製することができる。プローブは、共有結合、または疎水性相互作用などの非特異的相互作用により、基材に結合させることができる。アレイを構築するための技法、およびこれらのアレイを使用する方法は、例えば、Schena et al. (1996) Proc Natl Acad Sci U S A. 93(20):10614-9;Schena et al. (1995) Science 270(5235):467-70;Shalon et al. (1996) Genome Res. 6(7):639-45、USPN 5,807,522、EP 799 897;WO 97/29212;WO 97/27317;EP 785 280;WO 97/02357;USPN 5,593,839;USPN 5,578,832;EP 728 520;USPN 5,599,695;EP 721 016;USPN 5,556,752;WO 95/22058;およびUSPN 5,631,734に記載されている。
アレイに利用されるプローブは様々な種類のものであってよく、例えば、比較的短い長さ(例えば、20-merまたは25-mer)の合成プローブ、cDNA(遺伝子の全長または断片)、増幅DNA、DNAの断片(例えば制限酵素により作製)、逆転写DNA、ペプチド、タンパク質、抗体またはその断片などが含まれ得る。アレイは、差次的発現レベルの検出に利用することができる。
アレイは、例えば、遺伝子の差次的発現を調べるために使用することができる。例えば、アレイは圧負荷関連遺伝子の差次的発現を検出するために使用することができ、試験細胞と対照細胞との間で発現が比較される。アレイの例示的な使用は、例えば、Pappalarado et al. (1998) Sem. Radiation Oncol. 8:217;およびRamsay. (1998) Nature Biotechnol. 16:40にさらに記載されている。さらに、アレイを使用した検出方法の多くの変化形が、充分に当技術分野の技術の範囲内、および本発明の範囲内にある。例えば、プローブを固体支持体に固定化するのではなく、試験試料を固体支持体に固定化し、次いでそれをプローブと接触させることが可能である。発現解析におけるマイクロアレイの使用に関するさらなる考察は、例えば、Duggan et al., Nature Genetics Supplement 21:10-14 (1999);Bowtell, Nature Genetics Supplement 21:25-32 (1999);Brown and Botstein, Nature Genetics Supplement 21:33-37 (1999);Cole et al., Nature Genetics Supplement 21:38-41 (1999);Debouck and Goodfellow, Nature Genetics Supplement 21:48-50 (1999);Bassett, Jr., et al., Nature Genetics Supplement 21:51-55 (1999);およびChakravarti, Nature Genetics Supplement 21:56-60 (1999)に見出され得る。
発現レベルを検出するには、通常、試験試料から核酸を取得し、直接標識するかまたは標識cDNAへと逆転写する。または、タンパク質試料、例えば血清試料を使用し、アレイへの結合後に標識し得る。次いで、核酸またはタンパク質を含む試験試料をアレイと接触させる。試料中に存在する任意の核酸またはタンパク質がプローブに結合するのに十分な時間おいた後、典型的には、未結合の核酸を除去し、アレイのプローブへの非特異的結合を最小限に抑えるために、アレイを1回または複数回の洗浄に供する。標識配列の結合は、種々の市販のスキャナーおよび添付のソフトウェアプログラムのいずれかを使用して検出される。
例えば、試料由来の核酸が蛍光標識で標識されている場合、ハイブリダイゼーション強度は、例えば光子計数モードの走査型共焦点顕微鏡により決定され得る。適切な走査装置は、例えばTrulson et al.のU.S. 5,578,832およびStern et al.のU.S. 5,631,734により記載されており、GeneChip(商標)標識としてAffymetrix, Inc.より入手可能である。いくつかの種類の標識は、酵素法によって増幅され得るシグナルを提供する(例えば、Broude et al., Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 91, 3072-3076 (1994)を参照されたい)。例えば、放射性同位体、発色団、磁気粒子、および高電子密度粒子を含む種々の他の標識もまた適している。
試料と結合したプローブアレイ上の位置は、米国特許第5,143,854号、WO 90/15070、および米国特許第5,578,832号に記載されるような読み取り装置を使用して検出される。カスタマイズされたアレイの場合、次にハイブリダイゼーションパターンを解析して、例えばWO 97/10365に記載されるように解析される試料中の既知種の存在および/または相対量もしくは絶対量を決定することができる。
特異的結合メンバー
本明細書において使用する「特異的結合メンバー」または「結合メンバー」という用語は、特異的結合対、すなわち一方の分子(すなわち、第1の特異的結合メンバー)が、化学的または物理的手段により他方の分子(すなわち第2の特異的結合メンバー)と特異的に結合する2つの分子、通常2つの異なる分子のメンバーを指す。特異的結合対の相補的メンバーは、リガンドおよび受容体;または受容体および対受容体(counter-receptor)と称される場合がある。本発明の目的のため、2つの結合メンバーは相互に会合することが周知であり得、例えば、既知結合対の会合を妨げる化合物の検出に対してアッセイが行われる。または、関心対象の化合物の結合パートナーであると予測される候補化合物を使用することも可能である。
関心対象の特異的結合対には、糖質およびレクチン;相補的なヌクレオチド配列;ペプチドリガンドおよび受容体;エフェクター分子および受容体分子;ホルモンおよびホルモン結合タンパク質;酵素補助因子および酵素;酵素阻害剤および酵素;脂質および脂質結合タンパク質などが含まれる。特異的結合対には、本来の特異的結合メンバーの類似体、誘導体、および断片も含まれ得る。例えば、受容体およびリガンド対には、ペプチド断片、化学合成されたペプチド模倣体、標識タンパク質、誘導体化タンパク質などが含まれ得る。
好ましい態様において、特異的結合メンバーは抗体である。「抗体」または「抗体部分」という用語は、エピトープに適合し、それを認識する特定の形状を有する任意のポリペプチド鎖含有分子構造であって、1つまたは複数の非共有結合相互作用が分子構造とエピトープとの間の複合体を安定化する構造を含むことが意図される。所与の構造とその特異的エピトープとの特異的または選択的適合は、時として「鍵と鍵穴」適合と称される。原型的な抗体分子は免疫グロブリンであり、あらゆる起源、例えばヒト、げっ歯動物、ウサギ、ウシ、ヒツジ、ブタ、イヌ、その他の哺乳動物、ニワトリ、その他のトリなどに由来するあらゆる種類の免疫グロブリン、IgG、IgM、IgA、IgE、IgDなどが「抗体」と見なされる。本発明において利用される抗体はポリクローナル抗体であってもよいが、モノクローナル抗体は、細胞培養または組換えによって複製することができ、また抗原性を減少させるよう修飾することができるため、モノクローナル抗体が好ましい。
ポリクローナル抗体は、上記のように製剤化された抗原組成物を産生動物に注射することによる標準的な手順により産生され得る。例えば、Harlow and Lane, Antibodies: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory, 1988を参照されたい。1つのそのような技法では、最初に、タンパク質標的の抗原性部分を含む抗原を多種多様な哺乳動物(例えば、マウス、ラット、ウサギ、ヒツジ、またはヤギ)のいずれかに注射する。タンパク質全体またはタンパク質の大きな部分を利用する場合には、タンパク質および適切なアジュバント(例えば、フロイントアジュバント、フロイント完全アジュバント、水中油乳剤など)で産生動物を免疫化することにより、抗体が産生され得る。より小さなペプチドを利用する場合には、ペプチドをより大きな分子と結合させて免疫賦活性複合体を作製することが有利である。そのような使用のために市販されている一般的に利用される結合タンパク質には、ウシ血清アルブミン(BSA)およびキーホールリンペットヘモシアニン(KLH)が含まれる。特定のエピトープに対する抗体を産生させるために、完全配列に由来するペプチドを利用してもよい。または、タンパク質標的の比較的短いペプチド部分に対する抗体を作製するために、ポリペプチドをオボアルブミン、BSA、またはKLHなどの担体タンパク質に結合させると、優れた免疫応答が誘発され得る。ペプチド複合体を、好ましくは1回または複数回の追加免疫を組み込んだ所定のスケジュールに従って動物宿主に注射し、定期的に動物から採血する。次いで、例えば適切な固体支持体に結合させたポリペプチドを使用するアフィニティークロマトグラフィーにより、ポリペプチドに特異的なポリクローナル抗体をそのような抗血清から精製し得る。
または、モノクローナル抗体に関しては、接種した動物の脾臓に由来する細胞などの刺激を受けた免疫細胞を単離して、ハイブリドーマを形成し得る。次いで、これらの細胞を、細胞培養において無限に複製することができる骨髄腫細胞または形質転換細胞などの不死化細胞に融合し、それにより不死の免疫グロブリン分泌細胞株を生成する。利用する不死細胞株は、好ましくは、ある種の栄養素の利用に必要な酵素が欠損しているように選択される。多くのそのような細胞株(骨髄腫など)は当業者に周知であり、これには例えば、チミジンキナーゼ(TK)またはヒポキサンチン-グアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(HGPRT)が含まれる。これらの欠損により、例えばヒポキサンチンアミノプテリンチミジン培地(HAT)上で増殖する能力による融合細胞の選択が可能になる。
好ましくは、利用する不死の融合パートナーは、免疫グロブリンを分泌しない株に由来する。得られた融合細胞またはハイブリドーマを、融合細胞の生存は可能にするが非融合細胞の生存は可能にしない条件下で培養し、得られたコロニーを所望のモノクローナル抗体の産生に関してスクリーニングする。そのような抗体を産生するコロニーをクローニングし、拡大し、大量の抗体を産生するよう増殖させる。例えば、Kohler and Milstein, 1975 Nature 256:495(その開示は参照により本明細書に組み入れられる)を参照されたい。
次いで、マウスの腹腔内にクローンを注射し、そこから腹水を回収することにより、分泌ハイブリドーマに由来する大量のモノクローナル抗体が生成され得る。好ましくはプリスタンまたはその他の何らかの腫瘍プロモーターで刺激し、化学的にまたは照射により免疫抑制するマウスは、当業者に周知である種々の適切な株のいずれかであり得る。マウスから腹水を回収し、例えばCMセファロースカラムまたはその他のクロマトグラフィー手段により、そこからモノクローナル抗体を精製する。または、ハイブリドーマをインビトロで、または懸濁培養物として培養してもよい。バッチ培養、連続培養、またはその他の適切な培養工程が利用され得る。次いで、培地または上清からモノクローナル抗体を回収する。
本発明のタンパク質標的に対するモノクローナル抗体は、現在、市販の供給源から入手することができる。これらの抗体は、本発明の組成物中での使用に適している。
加えて、抗体または抗原結合断片は、遺伝子工学によって作製することもできる。この技法では、標準的なハイブリドーマ手順と同様に、抗体産生細胞を所望の抗原または免疫原に対して感作させる。免疫脾臓細胞またはハイブリドーマから単離されたメッセンジャーRNAを鋳型として用いて、PCR増幅によりcDNAを作製する。増幅された免疫グロブリンcDNAの適切な部分を発現ベクターに挿入することにより、それぞれが初期の抗原特異性を保持している1つの重鎖遺伝子および1つの軽鎖遺伝子を含むベクターのライブラリーを作製する。重鎖遺伝子ライブラリーを軽鎖遺伝子ライブラリーと組み合わせることにより、コンビナトリアルライブラリーが構築される。これにより、(抗体分子のFab断片または抗原結合断片に類似した)重鎖と軽鎖を同時発現するクローンのライブラリーが得られる。これらの遺伝子を保有するベクターを、宿主(例えば、細菌、昆虫細胞、哺乳動物細胞、またはその他の適切なタンパク質産生宿主細胞)に同時トランスフェクションする。トランスフェクションした宿主において抗体遺伝子合成を誘導すると、重鎖および軽鎖タンパク質は自己集合して、抗原または免疫原によるスクリーニングによって検出され得る活性抗体を産生する。
免疫グロブリン全体(またはそれらの組換え対応物)に加え、エピトープ結合部位を含む免疫グロブリン断片(例えば、Fab'断片、F(ab')2断片、またはその他の断片)も本発明における抗体部分として有用である。そのような抗体断片は、フィシン、ペプシン、パパイン、またはその他のプロテアーゼ切断により、全免疫グロブリンから作製され得る。「断片」または最小免疫グロブリンは、組換え免疫グロブリン技法を利用して設計され得る。例えば、本発明において使用するための「Fv」免疫グロブリンは、ペプチドリンカー(例えば、αヘリックスまたはβシートモチーフを形成しないポリグリシンまたは別の配列)を介して、軽鎖可変領域を重鎖可変領域に連結することにより作製され得る。
さらに、化学的リンカー、検出可能な部分、例えば、蛍光色素、酵素、基質、化学発光部分など、または特異的結合部分、例えば、ストレプトアビジン、アビジン、またはビオチンなど、が付加された誘導体化免疫グロブリンも、本発明の方法および組成物において利用することができる。便宜上、「抗体」または「抗体部分」という用語は、タンパク質標的のエピトープに特異的に結合する分子を一般的に指すために全体を通して使用するが、この用語は、上記のような免疫グロブリン、誘導体、断片、組換えまたは改変免疫グロブリン、および修飾免疫グロブリンをすべて包含する。
診断および予後診断法
圧負荷関連遺伝子の差次的発現は、これらの配列が、診断のマーカーとして、および心房拡大、心室肥大、心不全などを含む心臓病態の危険性がある個体を検出するための予後評価において役立ち得ることを示す。予後診断法はまた、発症の前または後の個体の健康状態をモニターするため、ならびに発症の重症度および回復の可能性および程度を評価する上で、利用することができる。
一般に、そのような診断および予後診断法は、個体の細胞もしくは組織、またはそれらに由来する試料における圧負荷関連遺伝子または遺伝子産物の発現レベルの変化を検出して、発現プロファイルを作成する段階を含む。遺伝子転写産物およびタンパク質のレベルを検出する方法を含む、種々の異なるアッセイ法を利用して、圧負荷関連遺伝子発現の増加を検出することができる。より具体的には、本明細書に開示する診断および予後診断法は、個体から試料を得る段階、および試料中の圧負荷関連遺伝子産物発現のレベルを、少なくとも定性的に、好ましくは定量的に決定する段階を含む。通常、この決定値または試験値を、何らかの種類の参照または基線値と比較する。
発現プロファイルという用語は、ゲノム発現プロファイル、例えばmRNAの発現プロファイル、またはプロテオミクス発現プロファイル、例えば1つもしくは複数の異なるタンパク質の発現プロファイルを含めて広く用いられる。プロファイルは、2つの試料間の差次的遺伝子発現を決定するための任意の簡便な手段、例えばmRNA、標識mRNA、増幅mRNA、cRNAなどの定量的ハイブリダイゼーション、定量PCR、タンパク質定量のためのELISAなどにより作成され得る。
発現プロファイルは、任意の簡便な手順を使用して、生体試料から作成され得る。差次的遺伝子発現解析の分野で使用されるような、発現プロファイルを作成する種々の異なる方法が周知であるが、発現プロファイルを作成するための手順の1つの代表的かつ簡便な形式は、アレイに基づく遺伝子発現プロファイル作成手順である。アッセイする試料から発現プロファイルを得た後に、この発現プロファイルを参照または対照プロファイルと比較して、試料を得た/試料が由来した細胞または組織の感受性表現型に関して診断する。典型的には、比較は、非罹患正常供給源に由来する一連の細胞に対して行う。さらに、参照または対照プロファイルは、心不全の傾向があることが分かっている細胞/組織から得られたものであってもよく、したがってこれは陽性参照または対照プロファイルとなり得る。
特定の態様においては、得られた発現プロファイルを単一の参照/対照プロファイルと比較して、アッセイする細胞/組織の表現型に関する情報を得る。さらなる他の態様では、得られた発現プロファイルを、2つまたはそれ以上の異なる参照/対照プロファイルと比較して、アッセイする細胞/組織の表現型に関するより詳細な情報を得る。例えば、得られた発現プロファイルを陽性および陰性参照プロファイルと比較して、細胞/組織が関心対象の表現型を有するかどうかに関する確認された情報を得ることができる。
差分値、すなわち照射の有無における発現の差は、任意の簡便な方法を用いて行うことができ、例えば、発現プロファイルのデジタル画像を比較することによる、発現データのデータベースを比較することによるなど、種々の方法が当業者に周知である。発現プロファイルを比較する方法について記載している特許には、その開示が参照により本明細書に組み入れられる米国特許第6,308,170号および同第6,228,575号が含まれるが、これらに限定されない。発現プロファイルを比較する方法はまた、上記されている。次いで統計解析段階を行い、一連の予測遺伝子の加重した寄与率(weighted contribution)を得る。
本発明の1つの態様においては、血液試料または例えば血漿、血清など血液に由来する試料を、圧負荷関連遺伝子によってコードされるポリペプチド、例えば細胞表面ポリペプチドおよび特に興味深いことには分泌ポリペプチド、の存在についてアッセイする。このようなポリペプチドは、特異的結合メンバーを介して検出され得る。この目的での抗体の使用は特に興味深い。このようなアッセイには、抗体アレイ;ELISAおよびRIA型式;懸濁液/溶液中での標識抗体の結合およびフローサイトメトリー、質量分析などによる検出を含む種々の型式が役立つ。検出は、1つの特異的結合メンバー、または例えば少なくとも約2つ、少なくとも約3つ、少なくとも約5つ、少なくとも約10個、またはそれ以上の異なる遺伝子産物に特異的な一連の特異的結合メンバーを利用し得る。血清学的アッセイの対象となる遺伝子および遺伝子産物のサブセットを表IIに提供する。
別の態様においては、インビボ画像化を利用して、心臓組織における圧負荷関連遺伝子の発現を検出する。このような方法は、例えば、細胞表面圧負荷関連遺伝子産物に特異的な標識抗体またはリガンドを利用し得る。このような方法に含まれるのは、標識試薬のインサイチュー結合によって位置が特定され得る、心腔で差次的に発現する遺伝子産物である。これらの態様では、ポリペプチドに特異的な検出可能に標識された部分、例えば抗体、リガンドなどを(例えば、注射により)個体に投与し、磁気共鳴画像法、コンピュータ断層撮影法などを含むがこれらに限定されない標準的な画像化技法を用いて標識された細胞の位置を特定する。検出は、1つの画像化試薬または画像化試薬の混合物、例えば少なくとも約2つ、少なくとも約3つ、少なくとも約5つ、少なくとも約10個、またはそれ以上の異なる遺伝子産物に特異的な画像化試薬を利用し得る。画像化アッセイの対象となる遺伝子および遺伝子産物のサブセットを表IIIに提供する。
別の態様では、例えば標識された基質を用いて代謝試験を行い、圧負荷関連遺伝子産物の酵素活性のレベルを決定する。このようなアッセイの対象となる遺伝子産物には、その反応産物が例えば血液試料中で容易に検出される酵素が含まれる。例えば、酸化的リン酸化は心房拡大において顕著に下方制御され、心不全の危険性のマーカーを提供することが本明細書で示される。代謝アッセイの対象となる遺伝子および遺伝子産物のサブセットを表IVに提供する。アッセイは、1つまたは複数の代謝活性に対して行われ得る。
別の態様では、心臓組織に由来する、好ましくは圧負荷により冒された1つまたは複数の心腔に由来するmRNA試料を、圧負荷および心不全の傾向の徴候を示す遺伝子シグニチャーについて解析する。発現シグニチャーは典型的に、一連の遺伝子配列、例えばマイクロアレイ型式;多重増幅などを、疾患シグニチャーと統計的に有意な一致が存在するかどうかを決定するための結果の解析と共に利用する。
表Iおよびその副表に提供する配列の1つの配列に由来するポリペプチドに特異的な核酸または抗体などの結合メンバーが、対応するmRNAまたはタンパク質の発現増加に関して患者試料をスクリーニングするのに使われ得る。試料は、種々の供給源から入手し得る。例えば、本方法は主としてヒトの危険因子を診断および評価するよう設計されているため、試料は典型的にヒト対象から得られる。しかしながら、本方法は、霊長動物、例えば類人猿およびチンパンジー、マウス、ネコ、ラット、ならびにその他の動物などの他の様々な哺乳動物から得られた試料と共に利用され得る。そのような試料を患者試料と称する。
試料は、個体の組織または体液、および細胞培養物または組織ホモジネートから得ることができる。例えば、試料は、全血、心臓組織生検試料、血清、唾液、涙液、尿、糞便物質、汗、頬側、皮膚などから得ることができる。この用語には、そのような細胞および体液の誘導体および画分も含まれる。細胞を解析する場合、試料中の細胞数は多くの場合少なくとも約102個、通常は少なくとも103個であり、約104個またはそれ以上であってもよい。固体組織の場合には、細胞を解離してもよく、または組織切片を解析してもよい。または、細胞の溶解液を調製してもよい。
診断試料は、個体が心筋症、心房拡大、心室肥大などを有すると疑われるか、またはそのような病態を予測する症状を示した後のいずれかの時点で回収される。予防検査においては、試料は、心不全に対する感受性を示す危険因子を示す個体から得ることができ、危険因子には、個体の健康状態の日常的評価の一部としての高血圧、肥満、糖尿病などが含まれる。
圧負荷、心肥大、拡張機能障害、および/または心不全の傾向を被ると考えられる個体の試料に関して決定された種々の試験値を基線値と比較して、もしある場合は発現の増減の程度を評価する。この基線値は、多くの異なる値のいずれかであってよい。場合によっては、基線値は、試験試料と並行して行われる健常な細胞または組織試料を使用する試験において確立される値である。または、基線値は、対照細胞または個体の集団から確立された統計値(例えば、平均または平均値)であってよい。例えば、基線値は、対照個体または対照集団に特徴的な値または範囲であり得る。例えば、基線値は、一般集団、またはより具体的には発作を起こしにくい健常個体の発現レベルを反映する統計的な値または範囲であり得る。発作を起こしにくい個体とは一般的に、例えば高血圧、高コレステロールレベル、糖尿病、喫煙、および塩分の多い食事など、心不全と関連がある明白な危険因子をもたない個体を指す。
核酸スクリーニング法
圧負荷関連遺伝子転写産物の検出を含む診断および予後診断法のいくつかは、細胞の溶解、およびその後の他の細胞物質からの核酸、特にmRNA転写産物の精製から開始する。mRNA転写産物から派生した核酸とは、その合成のために、mRNA転写産物またはそのサブ配列が最終的に鋳型となった核酸を指す。したがって、mRNAから逆転写されたcDNA、そのcDNAから転写されたRNA、cDNAから増幅されたDNA、増幅DNAから転写されたRNAはすべてmRNA転写産物から派生したものであり、そのような派生産物の検出は試料中の最初の転写産物の存在および/または存在量を示す。したがって、適切な試料には、圧負荷関連遺伝子のmRNA転写産物、mRNAから逆転写されたcDNA、cDNAから転写されたcRNA、圧負荷関連核酸から増幅されたDNA、および増幅DNAから転写されたRNAが含まれるが、これらに限定されない。
特定の配列の存在、例えば上方制御された発現に関して核酸を解析するには、多くの方法が利用できる。核酸はポリメラーゼ連鎖反応法(PCR法)などの慣用的技法によって増幅させ、解析用に十分な量を提供することができる。ポリメラーゼ連鎖反応法の使用は、Saiki et al. (1985) Science 239:487に記載されており、技法の概説は、Sambrook et al. Molecular Cloning: A Laboratory Manual, CSH Press 1989, pp. 14.2-14.33に見出され得る。
増幅反応には、検出可能な標識を含めてもよい。適切な標識には、蛍光色素、例えばフルオレセインイソチオシアネート(FITC)、ローダミン、テキサスレッド、フィコエリトリン、アロフィコシアニン、6-カルボキシフルオレセイン(6-FAM)、2,7-ジメトキシ-4,5-ジクロロ-6-カルボキシフルオレセイン(JOE)、6-カルボキシ-X-ローダミン(ROX)、6-カルボキシ-2,4,7,4,7-ヘキサクロロフルオレセイン(HEX)、5-カルボキシフルオレセイン(5-FAM)、またはN,N,N,N-テトラメチル-6-カルボキシローダミン(TAMRA)、放射性標識、例えば32P、35S、3H、などが含まれる。標識は2段階系であってもよく、その場合、増幅DNAは、アビジン、特異的抗体などの高親和性結合パートナーを有するビオチン、ハプテンなどと結合させ、結合パートナーは検出可能な標識と結合させる。標識は、プライマーの一方または両方に結合させてもよい。または、標識が増幅産物中に取り込まれるよう、増幅に使用するヌクレオチドのプールを標識する。
試料核酸、例えば増幅された核酸、標識された核酸、クローン化断片などは、当技術分野で周知の多くの方法の1つにより解析される。プローブをノーザンブロットもしくはドットブロットに対してハイブリダイズさせてもよいし、または液体ハイブリダイゼーション反応を行ってもよい。ジデオキシ法またはその他の方法によって核酸の配列を決定し、その塩基配列を野生型配列と比較することもできる。一本鎖高次構造多型(SSCP)解析、変性勾配ゲル電気泳動(DGGE)、およびゲルマトリックス中でのヘテロ二本鎖解析を用いて、DNA配列変化によって生じる高次構造変化を電気泳動移動度の変化として検出する。分画は、ゲルまたはキャピラリー電気泳動、特にアクリルアミドゲルまたはアガロースゲルにより行う。
インサイチューハイブリダイゼーション法は、ハイブリダイゼーションの前に細胞を溶解しないハイブリダイゼーション法である。この方法はインサイチューで行われるため、細胞からRNAを調製する必要がないという利点を有する。この方法は通常、最初に試験細胞を支持体(例えば、マイクロタイターウェルの壁)に固定する段階、および次いで細胞を適切な透過処理溶液で透過処理する段階を含む。次いで、圧負荷関連遺伝子に対する標識プローブを含む溶液を細胞と接触させ、プローブを核酸とハイブリダイズさせる。過剰のプローブを消化し、洗浄除去し、ハイブリダイズしたプローブの量を測定する。このアプローチは、Harris, D. W. (1996) Anal. Biochem. 243:249-256;Singer, et al. (1986) Biotechniques 4:230-250;Haase et al. (1984) Methods in Virology, vol. VII, pp. 189-226;およびNucleic Acid Hybridization: A Practical Approach (Hames, et al., eds., 1987)によって詳述されている。
種々のいわゆる「リアルタイム増幅」法または「リアルタイム定量PCR」法を利用して、試料中に存在する圧負荷関連遺伝子mRNAの量を決定することも可能である。そのような方法は、増幅工程の間に形成された増幅産物の量を測定する段階を含む。蛍光ヌクレアーゼアッセイ法は、圧負荷関連遺伝子転写産物を検出および定量するために使用できるリアルタイム定量法の1つの具体例である。一般に、このようなアッセイ法では、二重標識された蛍光オリゴヌクレオチドプローブを使用して、PCR産物の蓄積を連続して測定する--文献では単に「タックマン(TaqMan)」法と称されることが多いアプローチ。
このようなアッセイに用いられるプローブは典型的に2つの異なる蛍光標識で標識された短い(約20〜25塩基)ポリヌクレオチドである。プローブの5'末端は典型的にレポーター色素と結合し、3'末端は消光色素と結合しているが、色素はプローブ上の他の位置に結合してもよい。圧負荷関連遺伝子転写産物を測定する場合、プローブは、圧負荷関連遺伝子転写産物上のプローブ結合部位と少なくとも実質的な配列相補性を有するよう設計される。圧負荷関連遺伝子に隣接する領域に結合する、上流および下流PCRプライマーもまた、反応混合物に添加される。
プローブが損なわれない場合には、2つのフルオロフォア間にエネルギー移動が起こり、消光剤がレポーターからの発光を消光する。PCRの伸長期には、Taqポリメラーゼなどの核酸ポリメラーゼの5'ヌクレアーゼ活性によりプローブが切断され、それによりポリヌクレオチド-消光剤複合体からレポーター色素が放出され、結果として適切な検出系によって測定され得るレポーター発光強度が増加する。
蛍光アッセイ中に生じる蛍光発光を測定するのに特に適している1つの検出器は、Applied Biosystems, Inc.、カリフォルニア州、フォスターシティーによって製造されるABI 7700である。機器と共に提供されるコンピュータソフトウェアは、増幅の過程を通してレポーターおよび消光剤の蛍光強度を記録し得る。次いでこれらの記録値を使用して、正規化したレポーター発光強度の増加を連続して計算し、最終的に増幅されたmRNAの量を定量化し得る。
増幅産物の濃度をリアルタイムに決定するための蛍光法の理論および操作に関するさらなる詳細は、例えばGelfandの米国特許第5,210,015号、Livak, et al.の同第5,538,848号、およびHaalandの同第5,863,736号;ならびにHeid, C.A., et al., Genome Research, 6:986-994 (1996);Gibson, U.E.M, et al., Genome Research 6:995-1001 (1996);Holland, P. M., et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 88:7276-7280, (1991);およびLivak, K.J., et al., PCR Methods and Applications 357-362 (1995)に記載されており、これらはそれぞれその全体が参照として組み入れられる。
ポリペプチドスクリーニング法
本発明の配列の発現に関するスクリーニングは、タンパク質の機能特性または抗原特性に基づき得る。表Iまたはその副表に提供する配列に相当する配列によってコードされるタンパク質を定量するよう設計された種々の免疫測定法を、スクリーニングに使用することができる。機能タンパク質アッセイ法または代謝タンパク質アッセイ法が、効率的なスクリーニングツールであることが判明した。酸化的リン酸化アッセイなどにおけるコードされたタンパク質の活性は、非罹患個体と比較することにより決定し得る。
検出は、圧負荷関連ポリペプチドに特異的に結合する抗体またはその他の特異的結合メンバーを使用して従来法に従って実施する、細胞または組織切片の染色を利用してもよい。関心対象の抗体またはその他の特異的結合メンバー、例えば受容体リガンドを細胞試料に添加し、エピトープとの結合に十分な時間、通常少なくとも約10分間インキュベートする。抗体は、直接検出できるように、放射性同位体、酵素、蛍光物質、化学発光物質、またはその他の標識で標識してもよい。または、シグナルを増幅するために二次抗体または試薬を使用する。そのような試薬は、当技術分野において周知である。例えば、一次抗体をビオチンと結合させ、西洋ワサビペルオキシダーゼ結合アビジンを二次試薬として添加し得る。最終検出は、ペルオキシダーゼの存在下で色の変化を起こす基質を使用する。抗体結合の有無は、解離細胞のフローサイトメトリー、顕微鏡観察、ラジオグラフィー、シンチレーション計数などを含む様々な方法によって決定し得る。
別の診断方法は、血液試料、細胞溶解物などにおける、抗体と、表Iまたはその副表の配列に相当するポリペプチドとの間の結合のインビトロの検出に依存する。試料またはその画分中の標的タンパク質の濃度の測定は、種々の特定のアッセイにより達成され得る。従来のサンドイッチ型アッセイ法を使用することができる。例えば、サンドイッチアッセイ法では、最初に特異的抗体を不溶性の表面または支持体に付着させ得る。本発明の試薬および全体的な方法と適合する限り、特定の結合様式は重要ではない。特異的抗体は、共有結合または非共有結合により、好ましくは非共有結合によりプレートに結合させ得る。
不溶性支持体は、ポリペプチドを結合させることができ、可溶性物質から容易に分離され、かつその他の点において全体的な方法と適合する任意の組成物であり得る。そのような支持体の表面は、中実または多孔性であってよく、任意の簡便な形状であってよい。受容体を結合させる適切な不溶性支持体の例には、ビーズ(例えば磁気ビーズ)、膜、およびマイクロタイタープレートが含まれる。これらは典型的に、ガラス、プラスチック(例えば、ポリスチレン)、多糖、ナイロン、またはニトロセルロース製である。マイクロタイタープレートは、少量の試薬および試料を使用して、多数のアッセイを同時に行うことができるため、特に便利である。
次いで、患者試料の溶解物を、抗体を含む個別にアッセイ可能な支持体(例えば、マイクロタイタープレートの個々のウェル)に添加する。好ましくは、既知濃度の試験タンパク質を含む一連の標準物質を、対照として活用するために、試料またはその分割量と並行してアッセイする。好ましくは、試料および標準物質はそれぞれ複数のウェルに添加して、それぞれの平均値を取得し得る。インキュベーション時間は結合に十分であるべきであり、一般に約0.1〜3時間で十分である。インキュベーション後、一般的に、不溶性支持体から非結合成分を洗浄する。一般的に、適切なpH、通常7〜8の希釈した非イオン性界面活性剤媒体を洗浄媒体として使用する。十分量で1〜6回の洗浄を行い、試料中に存在する非特異的タンパク質を完全に洗浄する。
洗浄後、二次抗体を含む溶液を加える。抗体は、関心対象のタンパク質の1つに、存在するその他の成分と区別し得るような十分な特異性で結合する。二次抗体は、直接的または間接的な結合の定量を容易にするため標識され得る。二次受容体結合の直接測定を可能にする標識の例には、3Hまたは125Iなどの放射標識、蛍光物質、色素、ビーズ、化学発光物質、コロイド粒子などが含まれる。結合の間接測定を可能にする標識の例には、基質が有色または蛍光産物を提供し得る酵素が含まれる。好ましい態様において、抗体は、適切な基質の添加後に検出可能な産物シグナルを提供し得る、共有結合した酵素で標識する。複合体での使用に適した酵素の例には、西洋ワサビペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、リンゴ酸デヒドロゲナーゼなどが含まれる。そのような抗体-酵素複合体は、市販されていない場合、当業者に周知の技法によって容易に作製される。インキュベーション時間は、標識リガンドが利用可能な分子と結合するのに十分であるべきである。一般的に約0.1〜3時間で十分であり、通常は1時間で十分である。
第2の結合段階の後、非特異的に結合した物質が除去されるよう不溶性支持体を再度洗浄し、標的タンパク質と特異的結合メンバーとの間で形成された特異的複合体を残す。結合した複合体から生じるシグナルを、従来の手段によって検出する。酵素複合体を使用する場合には、検出可能な産物が形成されるよう適切な酵素基質を提供する。
その他の免疫測定法も当技術分野において周知であり、診断法として有益であり得る。オクタロニープレートは、抗体結合の単純な決定を提供する。ウェスタンブロットは、所望の圧負荷関連ポリペプチドに特異的な検出系を使用して、サンドイッチアッセイ法に関して記載した標識法を便利に使用して、タンパク質ゲルまたはフィルター上のタンパク質スポットにて行い得る。
場合によっては、競合アッセイ法を使用する。患者試料に加え、標的タンパク質に対する競合剤を反応混合物に添加する。競合剤と圧負荷関連ポリペプチドは、特異的結合パートナーとの結合に関して競合する。通常、以前に記載されたようにして競合剤分子を標識し、検出するが、その場合、競合剤結合の量は存在する標的タンパク質の量に比例する。競合剤分子の濃度は、検出の範囲を最も高感度で直線的なものにするため、最大予測タンパク質濃度の約10倍からほぼ等しい濃度までである。
この検出法は、キットの一部として提供することができる。したがって本発明はさらに、生体試料中の、表I、II、もしくはIIIの配列に相当するmRNA、および/またはそれらによりコードされるポリペプチドの存在を検出するためのキットを提供する。これらのキットを使用する手順は、臨床検査室、実験室、開業医、または私的な個人によって行われ得る。ポリペプチドを検出するための本発明のキットは、ポリペプチドと特異的に結合する部分を含み、これは特異的抗体であってよい。核酸を検出するための本発明のキットは、このような核酸と特異的にハイブリダイズする部分を含む。キットは任意に、緩衝剤、発色試薬、標識、反応表面、検出手段、対照試料、標準物質、指示書、および解釈情報を含むがこれらに限定されない、手順において有用であるさらなる成分を提供し得る。
インビボ画像化
いくつかの態様では、例えば圧負荷関連遺伝子が発現する部位を特定または同定するために、本方法をインビボでの画像化用途に適合させる。これらの態様では、圧負荷関連ポリペプチドに特異的な、検出可能に標識された部分、例えば抗体を(例えば、注射により)個体に投与し、磁気共鳴画像法、コンピュータ断層撮影法などを含むがこれらに限定されない標準的な画像化技法を用いて標識された細胞の位置を特定する。
インビボ画像診断の場合、利用できる検出装置の種類が、所与の放射性核種の選択における重要な要因である。選択される放射性核種は、所与の種類の装置で検出できる減衰形態を有していなければならない。一般に、画像診断を可視化するための任意の従来法を本発明に従って利用し得る。インビボ診断のための放射性核種の選択におけるもう一つの重要な要因は、その半減期が標的組織による最大取り込みの時点でなお検出可能である程度に長く、しかし宿主への有害な照射が最小限に抑えられる程度に短いということである。99mTcによる標識に現在用いられている方法は、キレート前駆体の存在下で過テクネチウム酸イオンを還元して、不安定な99mTc-前駆体複合体を形成させ、それを次に二官能性に(bifunctionally)修飾された走化性ペプチドの金属結合基と反応させ、99mTc-走化性ペプチド複合体を形成させるというものである。
標的の発現を解析するには、検出可能に標識された抗体を画像化技法と共に使用する。1つの態様において、画像化法は、放射性核種を総合的または局所的に患者に投与する画像化技法であるPETまたはSPECTの1つである。その後の放射性トレーサーの取り込みを経時的に測定し、これを用いて標的組織に関する情報を得る。使用する特定の同位体が高エネルギー(γ線)放射であり、ならびにそれらを検出するために使用する装置が高感度および精巧であるため、体外から放射能の2次元分布を推量することができる。
PETにおいて最も一般的に使用される陽電子放出核種には、11C、13N、150、および18Fが含まれる。SPECTでは、電子捕獲および/またはγ放射により減衰する同位体が用いられ、これには123Iおよび99mTcが含まれる。
経時的解析
患者の心不全の危険性を評価するある種の予後診断法は、心不全を起こしやすい患者の発現レベルをモニターして、圧負荷関連遺伝子の発現変化があるかどうかを経時的に追跡する段階を含む。経時的な発現増加は、個体の心不全の危険性が高いことを示し得る。その他の測定と同様に、心不全の危険性がある患者の発現レベルは基線値と比較される。そのような解析における基線は、同一個体について決定された以前の値であってもよいし、または対照群(例えば、明白な神経学的危険因子がない個体の集団)について決定された統計値(例えば、平均または平均値)であってもよい。経時的に圧負荷関連発現レベルが統計的に有意な増加を示す個体は、個体の医師を促して、個体の心不全の可能性を低減させる予防処置を講じさせることができる。例えば、医師は特定の生活習慣の変化(例えば、薬物療法、食事の改善、運動プログラム)を推奨して、心不全の危険性を軽減することができる。
発現プロファイルのデータベース
表現型決定遺伝子の発現プロファイルのデータベースもまた提供される。そのようなデータベースは典型的に、感受性表現型を有する種々の細胞/組織の発現プロファイル、陰性発現プロファイルなどを含み、そのようなプロファイルについては以下にさらに説明する。
発現プロファイルおよびそのデータベースは、それらの使用を容易にする様々な媒体において提供され得る。「媒体」とは、本発明の発現プロファイル情報を含む製品を指す。本発明のデータベースは、コンピュータ可読媒体、例えばコンピュータにより直接解読およびアクセス可能な任意の媒体に記録できる。そのような媒体は、以下を含むが、それらに限定されるものではない:磁気記憶媒体、例えばフロッピーディスク、ハードディスク記憶媒体、および磁気テープ;光学的記憶媒体、例えばCD-ROM;電気的記憶媒体、例えばRAMおよびROM;ならびにこれらのカテゴリーの複合型、例えば磁気/光学的記憶媒体。現在知られているコンピュータ可読媒体のいずれかを使用して、いかにして本データベース情報の記録を含む製品を作製し得るかということを、当業者は容易に理解できる。「記録される」とは、当技術分野において周知であるような任意の方法を使用して、コンピュータ可読媒体上に情報を記憶させる工程を指す。記憶された情報へのアクセスに使用される手段に基づき、任意の簡便なデータ記憶構造を選択し得る。記憶には、例えばワードプロセッシングテキストファイル、データベースフォーマットなどの、データ処理装置の様々なプログラムおよびフォーマットが使用できる。
本明細書で使用する「コンピュータに基づくシステム」とは、本発明の情報を解析するために用いられるハードウェア手段、ソフトウェア手段、およびデータ記憶手段を指す。本発明のコンピュータに基づくシステムの最小ハードウェアは、中央演算処理装置(CPU)、入力手段、出力手段、およびデータ記憶手段を含む。現在利用できるコンピュータに基づくシステムのいずれかが、本発明における使用に適していることは、当業者は容易に理解し得る。データ記憶手段は、上記の本情報の記録を含む任意の製品、またはそのような製品にアクセスできるメモリアクセス手段を構成し得る。
入力手段および出力手段のための様々な構造フォーマットを使用して、本発明のコンピュータに基づくシステムにおいて情報を入力および出力することができる。そのような提示は当業者に類似性の順位を提供し、それにより試験発現プロファイルに含まれる類似性の程度が同定される。
治療的/予防的処置法
圧負荷関連遺伝子の活性を調節する作用物質は、治療的または予防的介入の要点を提供する。発現を直接調節する作用物質、例えば発現ベクター、標的遺伝子に特異的なアンチセンス;およびタンパク質に作用する作用物質、例えば特異的抗体およびその類似体、触媒活性を阻止する有機小分子を含む多くの作用物質が、この活性の調節において有用である。
遺伝子、遺伝子断片、またはコードされるタンパク質もしくはタンパク質断片は、発現障害に関連した疾患を治療する治療法において有用である。治療観点から見て、活性の調節は多くの変性疾患に治療効果を及ぼし得る。例えば、発現ベクターを導入する、発現を増強する、標的ポリペプチドの活性を模倣する分子を提供するなどして、発現を上方制御することができる。
アンチセンス分子は、細胞における発現を下方制御するために使用され得る。アンチセンス試薬は、アンチセンスオリゴヌクレオチド(ODN)、特に天然核酸からの化学修飾を有する合成ODN、またはRNAのようなアンチセンス分子を発現する核酸構築物であってよい。アンチセンス配列は標的遺伝子のmRNAに相補的であり、標的遺伝子産物の発現を阻害する。アンチセンス分子は、様々な機構によって、例えばRNAse Hの活性化または立体障害により、翻訳に利用できるmRNAの量を減少させることによって、遺伝子発現を阻害する。1種類のアンチセンス分子またはアンチセンス分子の組み合わせを投与することができ、組み合わせは複数の異なる配列を含み得る。
アンチセンス分子は、アンチセンス鎖がRNA分子として産生されるよう転写開始が方向づけられている適切なベクター中での、標的遺伝子配列のすべてまたは一部の発現により生成され得る。または、アンチセンス分子は合成オリゴヌクレオチドである。アンチセンスオリゴヌクレオチドは一般に少なくとも約7、通常は少なくとも約12、より一般的には少なくとも約20ヌクレオチド長であって、約500、通常は約50、より一般的には約35ヌクレオチド長以下であり、長さは、阻害の効率、交差反応性の欠如を含む特異性などにより支配される。
アンチセンスオリゴヌクレオチドは、当技術分野において周知の方法により化学合成され得る(Wagner et al. (1993) 前記、およびMilligan et al.、前記を参照されたい)。好ましいオリゴヌクレオチドは、細胞内安定性および結合親和性を増大させるため、天然ホスホジエステル構造から化学修飾される。骨格、糖、または複素環塩基の化学的性質を変更するそのような多くの修飾は、文献に記載されている。
本発明の1つの態様においては、RNAi技術が用いられる。本明細書において使用するRNAi技術とは、候補遺伝子の発現を阻害するため、すなわちその発現を「サイレンシング」するため、候補遺伝子を発現している細胞に二本鎖RNAを導入する過程を指す。dsRNAは、候補遺伝子と実質的な同一性を有するよう選択される。一般にそのような方法は、最初に、候補遺伝子のすべてまたは一部を含む核酸を、一本鎖または二本鎖RNAになるよう転写する段階を含む。センスRNA鎖およびアンチセンスRNA鎖を適切な条件下でアニーリングして、dsRNAを形成させる。得られたdsRNAを、種々の方法により細胞に導入する。通常、dsRNAは2つの別個の相補的RNA鎖からなる。しかし場合によっては、dsRNAは自己相補的なRNAの一本鎖により形成され得り、鎖ループが自身に戻ってヘアピンループを形成する。形態にかかわらず、RNA二重鎖形成は細胞の内部または外部で起こり得る。
dsRNAは、インビトロ方法およびインビボ方法、ならびに合成化学アプローチを含む、当技術分野において周知である多くの方法のいずれかに従って調製され得る。そのような方法の例には、これらに限定されるわけではないが、Sadher et al. (Biochem. Int. 14:1015, 1987);Bhattacharyya (Nature 343:484, 1990);およびLivache, et al. (米国特許第5,795,715号)により記載される方法が含まれ、これらはそれぞれその全体が参照により本明細書に組み入れられる。一本鎖RNAはまた、酵素合成および有機合成の併用、または全有機合成により生成され得る。合成化学法を使用することで、所望の修飾ヌクレオチドまたはヌクレオチド類似体をdsRNA中に導入することが可能となる。dsRNAはまた、多くの確立された方法に従ってインビボで調製され得る(例えば、それぞれその全体が参照により本明細書に組み入れられる、Sambrook, et al. (1989) Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 2nd ed.;Transcription and Translation (B.D. Hames, and S.J. Higgins, Eds., 1984);DNA Cloning, volumes I and II (D.N. Glover, Ed., 1985);およびOligonucleotide Synthesis (M.J. Gait, Ed., 1984)を参照されたい)。
dsRNAを細胞または細胞集団に送達するために、多くの選択肢が利用され得る。例えば、RNAは細胞内に直接導入することができる。このような場合には、マイクロインジェクションによる投与などの種々の物理的方法が一般的に利用される(例えば、Zernicka-Goetz, et al. (1997) Development 124:1133-1137;およびWianny, et al. (1998) Chromosoma 107: 430-439を参照されたい)。細胞送達の他の選択肢には、細胞膜の透過処理およびdsRNAの存在下におけるエレクトロポレーション、リポソーム媒介性トランスフェクション、またはリン酸カルシウムなどの化学物質を使用するトランスフェクションが含まれる。dsRNAを細胞に導入するには、多くの確立された遺伝子治療技法もまた利用され得る。ウイルス粒子内のウイルス構築物を導入することにより、例えば、発現構築物の細胞内への効率的な導入、および構築物によってコードされるRNAの転写が達成され得る。
化合物スクリーニング
化合物スクリーニングは、インビトロモデル、遺伝子改変細胞もしくは動物、または提供する圧負荷関連遺伝子のいずれかに相当する精製タンパク質を使用して実施し得る。コードされるポリペプチドと結合する、その作用を阻害する、調節する、または模倣するリガンドまたは基質を同定することができる。
ポリペプチドには、提供する遺伝子配列、および遺伝暗号の縮重のために開示する核酸と配列が同一でない核酸、およびそれらの変種によってコードされるものが含まれる。変種ポリペプチドは、アミノ酸(aa)の置換、付加、または欠失を含み得る。アミノ酸置換は保存的アミノ酸置換であるか、または例えばグリコシル化部位、リン酸化部位、もしくはアセチル化部位を改変するための、または機能に必要でない1つもしくは複数のシステイン残基の置換もしくは欠失による誤った折りたたみを最小限に抑えるための、非必須アミノ酸を除去するための置換であり得る。変種は、タンパク質の特定領域(例えば、機能ドメイン、および/またはポリペプチドがタンパク質ファミリーのメンバーである場合にはコンセンサス配列に関連した領域)の生物活性を保持するか、または増強されたそのような活性を有するよう設計され得る。変種にはまた、本明細書に開示するポリペプチドの断片、特に生物活性のある断片および/または機能ドメインに相当する断片が含まれる。関心対象の断片は、典型的には少なくとも約10aa〜少なくとも約15aa長、通常は少なくとも約50aa長であり、300aa長またはそれ以上の長さであってもよいが、通常は約500aa長以下であり、断片は、圧負荷関連遺伝子またはその相同体によってコードされるポリペプチドと同一の連続した一続きのアミノ酸を有する。
トランスジェニック動物またはそれに由来する細胞もまた、化合物スクリーニングに用いられる。トランスジェニック動物は相同組換えによって作製されてもよく、圧負荷関連遺伝子に対応する正常な遺伝子座が改変される。または、核酸構築物がゲノム中にランダムに組み込まれる。安定的組込みのためのベクターには、プラスミド、レトロウイルスおよびその他の動物ウイルス、YACなどが含まれる。異なるドメインの役割を決定するために、一連の小さな欠失および/または置換をコード配列中に作製することができる。関心が高いのは、心不全のトランスジェニック動物モデルを構築するための圧負荷関連遺伝子の使用である。関心対象の特定の構築物には、標的遺伝子の発現およびドミナントネガティブ変異の発現を阻止するアンチセンス配列が含まれる。lacZなどの検出可能マーカーを関心対象の遺伝子座に導入してもよく、その場合、発現の上方制御により表現型の変化が容易に検出される。通常であれば発現されない細胞もしくは組織における、または異常な発生時点における、標的遺伝子またはその変種の発現を提供することも可能である。標的タンパク質の発現を、通常であればそれが産生されない細胞内において提供することにより、細胞挙動の変化を誘導することができる。
化合物スクリーニングにより、圧負荷関連遺伝子の機能を調節する作用物質が同定される。特に興味深いのは、ヒト細胞に対して毒性の低い作用物質のスクリーニングアッセイ法である。標識インビトロタンパク質-タンパク質結合アッセイ法、電気泳動移動度シフトアッセイ法、タンパク質結合に関する免疫測定法などを含む幅広い種類のアッセイ法が、この目的のために使用され得る。精製組換えタンパク質の結晶化から導出された、コードされるタンパク質の三次元構造に関する知識は、活性を特異的に阻害する小さな薬物の合理的設計をもたらし得る。これらの薬物は、特定のドメインに指向化され得る。
本明細書において使用する「作用物質」という用語は、圧負荷関連遺伝子の生理学的機能を改変または模倣する能力を有する任意の分子、例えばタンパク質または薬剤を表す。一般に、様々な濃度に対する差次的な応答を得るため、複数のアッセイ混合物を異なる作用物質濃度で並行して実行する。典型的には、これらの濃度の1つは陰性対照、すなわちゼロ濃度または検出レベル未満である。
候補作用物質には多数の化学物質クラスが包含されるが、典型的には、それらは、有機分子、好ましくは50ダルトン超、約2,500ダルトン未満の分子量を有する小さな有機化合物である。候補作用物質は、タンパク質との構造的相互作用、特に水素結合に必要な官能基を含み、典型的には、少なくとも1個のアミン基、カルボニル基、ヒドロキシル基、又はカルボキシル基を含み、好ましくは、官能化学基のうちの少なくとも2個を含む。候補作用物質は、上記の官能基のうちの1個またはそれ以上で置換された環式炭素又は複素環式構造、及び/又は芳香族もしくは多環芳香族構造を含む場合が多い。候補作用物質は、ペプチド、糖類、脂肪酸、ステロイド、プリン、ピリミジン、それらの誘導体、構造類似体、又は組み合わせを含む生体分子の中にも見い出され得る。
候補作用物質は、合成化合物または天然化合物のライブラリーを含む多種多様な供給源から得られる。例えば、多種多様な有機化合物および生体分子のランダム合成および指向合成には、ランダム化されたオリゴヌクレオチドおよびオリゴペプチドの発現を含む、多くの手段が利用できる。または、細菌、真菌、植物、および動物抽出物の形態をした天然化合物のライブラリーが使用できるか、または容易に作製される。さらに、天然のまたは合成により作製されたライブラリーおよび化合物を、従来の化学的、物理的、および生化学的手段によって容易に修飾し、コンビナトリアルライブラリーを作製するために使用することができる。構造類似体を作製するために、既知の薬理学的作用物質を、アシル化、アルキル化、エステル化、アミド化などの指向性またはランダム化学修飾に供してもよい。試験作用物質は、例えば天然物ライブラリーまたはコンビナトリアルライブラリーなどのライブラリーから得られ得る。多くの異なる種類のコンビナトリアルライブラリーおよびそのようなライブラリーを調製するための方法が、例えば、WO 93/06121、WO 95/12608、WO 95/35503、WO 94/08051、およびWO 95/30642に記載されており、これらはそれぞれ参照として本明細書に組み入れられる。
スクリーニングアッセイが結合アッセイである場合には、1つまたは複数の分子を標識に結合させてもよく、その場合、標識によって検出可能なシグナルが直接的または間接的に提供され得る。種々の標識には、放射性同位体、蛍光物質、化学発光物質、酵素、特異的結合分子、粒子(例えば、磁気粒子)などが含まれる。特異的結合分子には、ビオチンとストレプトアビジン、ジゴキシンとアンチジゴキシンなどの対が含まれる。特異的結合メンバーの場合には、相補的メンバーを、通常周知の手順に従って検出を提供する分子で標識する。
その他の種々の試薬をスクリーニングアッセイに含めてもよい。これらには、最適なタンパク質-タンパク質結合を促進する、および/または非特異的もしくはバックグラウンド相互作用を低減するために用いられる塩、中性タンパク質(例えば、アルブミン)、界面活性剤などの試薬が含まれる。プロテアーゼ阻害剤、ヌクレアーゼ阻害剤、抗菌剤など、アッセイの効率を改善する試薬も使用され得る。成分の混合物を、必要な結合を提供する任意の順序で添加する。インキュベーションは、任意の適切な温度、典型的には4〜40℃で行う。インキュベーション時間は最適な活性が得られるよう選択するが、迅速なハイスループットスクリーニングを容易にするように最適化してもよい。典型的には、0.1〜1時間で十分である。
圧負荷関連遺伝子産物と結合し得る化合物のスクリーニングにより、予備スクリーニングを実施してもよく、そのようにして同定された化合物のうちの少なくともいくつかは、阻害剤である可能性が高い。結合アッセイは通常、タンパク質を1つまたは複数の試験化合物と接触させる段階、およびタンパク質と試験化合物が結合複合体を形成するのに十分な時間おく段階を含む。形成された任意の結合複合体は、確立されている多くの解析技法のいずれかを用いて検出することができる。タンパク質結合アッセイ法には、共沈殿、非変性SDS-ポリアクリルアミドゲル上での共移動、およびウェスタンブロット上での共移動を測定する方法が含まれるが、これらに限定されない。そのようなアッセイに利用するタンパク質は、天然に発現したものであっても、クローニングしたものであっても、または合成したものであってもよい。
前述のスクリーニング法のうちのいずれかによりはじめに同定された化合物は、明白な活性を確認するためにさらに試験され得る。そのような方法の基本形式は、最初のスクリーニングにおいて同定されたリード化合物を、ヒトのモデルとなる動物に投与する段階、および次いで圧負荷関連遺伝子が実際に差次的に制御されるかどうかを決定する段階を含む。確証研究において利用される動物モデルは、一般に哺乳動物である。適切な動物の具体例には、霊長動物、マウス、およびラットが含まれるが、これらに制限はされない。
本明細書に記載するスクリーニング法により同定された活性試験作用物質は、類似体化合物を合成するためのリード化合物となり得る。典型的には、類似体化合物は、リード化合物と類似した電子配置および分子立体構造を有するように合成される。類似体化合物の同定は、自己無撞着場(SCF)解析、配置間相互作用(CI)解析、および正規モード動態解析などの技法を使用して実施され得る。これらの技法を実行するためのコンピュータープログラムが利用できる。例えば、Rein et al., (1989) Computer-Assisted Modeling of Receptor-Ligand Interactions (Alan Liss, New York)を参照されたい。
類似体が調製されたならば、遺伝子産物活性を調節する能力の増加を示す類似体を同定するため、本明細書中に開示する方法を用いてこれらをスクリーニングし得る。次いで、そのような化合物をさらなる解析に供して、薬学的作用物質として最大限の可能性を有すると考えられる化合物を同定し得る。または、スクリーニング法により活性を有することが示された類似体を、さらなる類似体の調製におけるリード化合物とすることができ、さらなる類似体を本明細書に記載の方法によりスクリーニングすることができる。スクリーニング、類似体の合成、および再スクリーニングのサイクルを複数回繰り返すことができる。
上記のスクリーニング法により同定された化合物およびその類似体は、心不全の傾向を含む種々の疾患を治療するために製剤化される薬学的組成物中の有効成分となり得る。組成物は、送達および有効性を増強するための種々の他の作用物質もまた含み得る。組成物は、有効成分の送達および安定性を増強するための種々の作用物質もまた含み得る。
したがって、例えば組成物は、所望の製剤に応じて、動物またはヒト投与用の薬学的組成物を製剤化するために一般的に使用される媒体と定義される、薬学的に許容される非毒性の希釈剤担体もまた含み得る。希釈剤は、組み合わせの生物活性に影響を及ぼさないように選択される。そのような希釈剤の例は、蒸留水、緩衝水、生理食塩水、PBS、リンゲル液、デキストロース溶液、およびハンクス液である。さらに、薬学的組成物または製剤は、その他の担体、補助剤、または非毒性の非治療用の非免疫原性安定化剤、賦形剤などを含み得る。組成物は、pH調整緩衝剤、毒性調整剤、湿潤剤、および界面活性剤など、生理的条件に近づけるためのさらなる物質もまた含み得る。
組成物はまた、例えば抗酸化剤のような種々の安定化剤のいずれかを含み得る。薬学的組成物がポリペプチドを含む場合、ポリペプチドは、ポリペプチドのインビボ安定性を増強するか、またはさもなくば薬理学的特性を増強する(例えば、ポリペプチドの半減期を延長する、毒性を減少させる、可溶性または取り込みを増強する)、様々な周知の化合物と複合体化され得る。そのような修飾または複合体化剤の例には、硫酸、グルコン酸、クエン酸、およびリン酸が含まれる。組成物のポリペプチドはまた、インビボ属性を増強する分子と複合体化され得る。そのような分子には、例えば、炭水化物、ポリアミン、アミノ酸、その他のペプチド、イオン(例えば、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、マンガン)、および脂質が含まれる。
様々な種類の投与に適した製剤に関するさらなる手引きは、Remington's Pharmaceutical Sciences, Mace Publishing Company, Philadelphia, PA, 17th ed. (1985)に見出され得る。薬物送達の方法の簡潔な総説については、Langer, Science 249:1527-1533 (1990)を参照されたい。
薬学的組成物は、予防的および/または治療的処置のために投与され得る。有効成分の毒性および治療効果は、例えばLD50(集団の50%にとって致死的な用量)およびED50(集団の50%において治療的に有効な用量)の決定を含む、細胞培養物および/または実験動物における標準的な薬学的手順に従って決定され得る。毒性効果と治療効果との用量比が治療係数であり、LD50/ED50比として表すことができる。大きな治療係数を示す化合物が好ましい。
細胞培養および/または動物試験から得られたデータは、ヒトに対する投与量の範囲を規定する上で使用され得る。有効成分の投与量は典型的に、毒性のほとんどないED50を含む循環濃度の範囲内にある。投与量は、使用する剤形および利用する投与経路に応じて、この範囲内で変動し得る。
本明細書に記載する薬学的組成物は、種々の異なる方法で投与することができる。例として、経口、鼻腔内、直腸内、局所、腹腔内、静脈内、筋肉内、皮下、真皮下、経皮、および髄腔内方法を介した、薬学的に許容される担体を含む組成物の投与が挙げられる。
例えば、関節内(関節の中)、静脈内、筋肉内、皮内、腹腔内、および皮下経路などの非経口投与に適した製剤には、抗酸化剤、緩衝剤、静菌剤、および製剤を対象レシピエントの血液と等張にする溶質を含み得る水性および非水性の等張無菌注射溶液、ならびに懸濁化剤、可溶化剤、増粘剤、安定剤、および保存剤を含み得る水性および非水性の無菌懸濁液が含まれる。
薬学的組成物を製剤化するために用いられる成分は、好ましくは高純度であり、潜在的に有害な混入物を実質的に含まない(例えば、少なくともナショナルフード(National Food;NF)等級、一般的には少なくとも分析等級、より典型的には少なくとも医薬品等級)。さらに、インビボ使用を目的とする組成物は、通常、無菌である。所与の化合物を使用前に合成する限り、得られる産物は典型的に、合成または精製の過程で存在し得る任意の潜在的毒性物質、特に任意の内毒素を実質的に含まない。非経口投与用の組成物も無菌であり、実質的に等張であり、GMP条件下で製造される。
実験
下記実施例は、本発明をいかに実施しかつ使用するかに関する完全な開示および説明を当業者に提供するために示すものであり、本発明者らが自身の発明と見なす範囲を制限することを意図するものではなく、下記の実験が実施した実験のすべて、または実施した実験のみを示していることを意図するものでもない。使用した数字(例えば、量、温度など)に関しては正確性を期すよう努力したが、いくらかの実験誤差および偏差が考慮されるべきである。特記しない限り、割合は重量割合であり、分子量は重量平均分子量であり、温度は摂氏、圧力は大気圧またはその近傍である。
本明細書に引用した出版物および特許出願はすべて、個々の出版物または特許出願が詳細にかつ個別に参照として組み入れられることが示されるように、参照として本明細書に組み入れられる。
本発明者らが見出したまたは提案する特定の態様の観点から、本発明の実施にとって好ましい様式を含めて、本発明を説明してきた。本開示を考慮すれば、本発明の意図する範囲から逸脱することなく、例示した特定の態様において多くの改良および変更を行い得ることは当業者には明らかである。例えば、コドン重複性のために、タンパク質配列に影響することなく、基礎となるDNA配列に変更を加えることが可能である。さらに、生物学的機能の等価性を考慮して、生物学的作用の種類または量に影響することなく、タンパク質構造に変更を加えることが可能である。このような改良はいずれも、添付の特許請求の範囲内に含まれることが意図される。
哺乳動物の心臓は、左室肥大(LVH)および左房拡大(LAE)を起こすことにより、圧負荷に応答する。圧負荷に対する応答は大部分が、遺伝子転写の変化によって媒介され、標準的な分子生物学的技法、計算技法、最近ではマイクロアレイ技法を用いたこれまでの研究から、LVHの病態生理に関与する多くの遺伝子が同定されている。これらの以前の研究で同定された差次的発現遺伝子の多くは、細胞骨格およびマトリックスのリモデリング、ミオシンアイソフォーム変換(MHCαからMHCβへ)、TGFβシグナル伝達、および胎児性遺伝子発現パターンの全体的な再活性化に関与している。肥大性LVにおける脂肪酸酸化経路の成分の転写による下方制御もまた指摘されているが、その他のエネルギー代謝経路の変化に関する証拠はこれまでほとんどない。
以前の研究ではLVにおける転写変化が調べられ、圧負荷に応答してその他の心腔で起こる変化にはほとんど注意が払われていなかった。
横行大動脈狭窄(TAC)を使用して、成体初期マウスにおいてLVHおよびLAEを誘導し、次いでTAC手術および擬似手術動物の4つの心腔それぞれにおいて、ゲノム全体にわたる転写プロファイリングを行った。何千もの遺伝子の転写が肥大性LVおよび拡大性LAにおいて有意に変化し、TAC LAの転写プロファイルにおいて予想外に劇的な変化が見られた。右房にも右室にも、有意な転写変化は認められなかった。本発明者らは、遺伝子オントロジー群濃縮解析を用いて、群全域にわたる発現の有意な変化を有する生物学的過程群を同定し、LAおよびLVにおけるエネルギー代謝、細胞周期制御、およびシグナル伝達の主要な新規のかつ予想外の変化を見出した。このことは、圧負荷に対する心臓応答の分子基礎に関する我々の理解に多いに影響を与え得る。
材料および方法
動物の手術、RNA調製、およびハイブリダイゼーション。
8週齢の雄FVBマウス20匹に、Nakamura et al. (2001) Am J Physiol Heart Circ Physiol. 281:H1104-12;およびRockman et al. (1991) Proc Natl Acad Sci U S A. 1991;88:8277-81によって記載される通りに行う横行大動脈狭窄を施した。年齢の適合する雄同腹仔20匹に、大動脈結紮を設置せずに同一の手術手順を施し、これらを擬似手術対照とした。
手術の20日後に、心臓を摘出した。15のTAC心臓および15の擬似心臓の心腔を、RNA単離のために3つの独立したプールに分割し(マウス5匹/プール)、十分なRNAを取得して、各心腔について3回の生物学的反復マイクロアレイハイブリダイゼーションを行った。心臓の摘出、心腔の解剖、RNA調製、およびアレイハイブリダイゼーションは、Tabibiazar et al. (2003) Circ Resに以前に記載されている通りに実施した。
マイクロアレイの構築。
本研究で使用したマウストランスクリプトームマイクロアレイは、Stanford Functional Genomics Facilityと共同して本発明者らの研究室で構築した。簡潔に説明すると、本マイクロアレイは、約25,000個の独特の遺伝子およびESTを表す43,200個のマウスcDNAプローブから構成される。これは、米国立高齢化研究所(National Institutes of Aging)15k発生遺伝子セット、理研22k遺伝子セット、および生物学的関心のために選択された約5,000個のその他の独特のクローンから構成される。
データの収集、加工、および統計解析。
マウスcDNAマイクロアレイデータの画像収集、加工、および正規化は、以前に記載されている通りに行った。マイクロアレイ実験は、各組織および対照について3つの生物学的複製物を用いて実施した。3つの生物学的複製物のうち少なくとも2つにおいてバックグラウンドよりも有意に高い値を有する特徴を、2群統計比較に使用した。
マイクロアレイの有意性解析(SAM)アルゴリズムを使用して、各心腔に関してTACと擬似との間で有意に異なる発現レベルを有する遺伝子を同定した。Tabibiazar et al. (2003)、前記によって記載される通りに、一連の可変遺伝子を使用して階層的クラスタリングを行った(ANOVA、全実験にわたってp<0.005)。Heatmap Builder, Version 1を使用して、ヒートマップを作成した。データ解析のアプローチを図1に要約する。
GoMiner解析ソフトウェアを使用して、SAMで記しづけされた遺伝子にフィッシャーの正確確率検定を適用することにより、遺伝子オントロジーカテゴリー内での過剰および過小提示の統計解析を行った。
定量的リアルタイム逆転写-ポリメラーゼ連鎖反応。
9つの代表的な遺伝子のプライマーおよびプローブは、Applied BiosystemsのAssays-on-Demandから得た。定量rtPCRは、Tabibiazar et al. (2003)、前記によって記載される通りに実施した。
結果
心肥大の誘導。
心臓は、LV肥大および心エコー指標が平衡に達した、手術的介入の20日後に摘出した(Nakamura et al. (2001) Am J Physiol Heart Circ Physiol. 281:H1104-12)。横行大動脈狭窄は、予想通り、約50%という心臓重量の増加(TAC 0.192+/-0.03g、擬似0.133+/-0.007g、p<0.03)、および11%という心臓重量と体重の比の増加(TAC 5.27+/-0.69、擬似4.72+/-0.32、p<0.03)を誘導した。視診時には、TAC手術動物の左房および左室は明白に大きく拡大し、左室壁厚も増大していた。
遺伝子発現パターンの概要‐クラスタリング解析。
30匹の個々の動物に由来する24の心腔mRNA試料を標識し、42,300要素を含むマイクロアレイに対して3つ組でハイブリダイズさせ、全部で100万を超える遺伝子発現を測定した。データの階層的クラスタリングから、TAC左房の転写プロファイルにおける大きな変化が明らかになり(図2)、それらは心房よりも心室と、より近傍にクラスター形成した。心房試料の残りは予想通りにクラスター形成し、擬似LA組織は1つの亜群内に、またTACおよび擬似のRA組織は別の亜群内にクラスター形成した。TACマウスの左室が心室群内で異なるサブクラスターを形成する一方、TAC RVならびに擬似のRVおよびLVクラスターは互いにより近傍にクラスター形成し、よってこれらの組織では心室基線と転写変化がほとんどないことが示唆される。これらのクラスタリング結果から、最も顕著な転写変化はLAおよびLVで起こり、この2つの心腔が、後負荷の増加によって最も直接的に影響を受けることが示唆される。
TACマウスの左房および左室における差次的遺伝子発現。
本発明者らはSAMを使用して、TAC LAにおいて891個の上方制御遺伝子および1001個の下方制御遺伝子を同定した(誤検出率(FDR) <0.01)(図3a)。これらの可変遺伝子のヒートマップにより、TAC LAにおける発現が心室パターンと類似していた遺伝子が強調される(図4)。LVでは、SAMにより42個の上方制御遺伝子および532個の下方制御遺伝子が同定された(FDR<0.20)(図3b)。全体的に見て、差次的に制御される遺伝子および発現の変化の方向は、LAおよびLVで類似している。RVおよびRAデータのSAM解析から、これらの組織では遺伝子発現に有意な差がないことが実証された。t-検定により、有意性の傾向を示す差次的発現を有する、RAおよびRVにおけるごくわずかな遺伝子が同定された。
差次的に制御される遺伝子のGO機能群濃縮解析から、生物学的過程の協調的制御が実証される。本発明者らは、アレイ上の8773個の独特のGO注釈付き遺伝子にフィッシャーの正確確率検定を適用して、TAC LAおよびLVにおいて統計的に有意に濃縮されたおよび枯渇されたGO群を同定した(図5)。TAC LAにおいて最も有意に上方制御された過程は、シグナル伝達経路活性化、血管発生/血管新生、細胞マトリックスおよび接着、ならびに細胞骨格構築であった。下方制御される過程は、TAC LAおよびLVのいずれにおいても、脂肪酸酸化、TCA回路、および酸化的リン酸化に関与する遺伝子の下方制御を含むエネルギー経路によって支配された。TAC LVでは上方制御される遺伝子が少数であるため、統計的GO群解析は有効でないと見なした。
シグナル伝達経路の転写制御
圧負荷の生理的ストレスは分子シグナルに伝達されて、心臓細胞において代償機構を作動させるはずである。どの遺伝子および経路がこの伝達に関与しているのかを把握することは、それらがさらなる研究および潜在的には薬物開発の最も興味深い標的のいくつかとなるという理由から、主に重要である。本研究において本発明者らは、これまで圧負荷応答と結びつけられていなかった多くのシグナル伝達経路から、特異的に制御される多くの遺伝子を同定した。
トランスフォーミング増殖因子-βスーパーファミリー経路を介したシグナル伝達は、ストレスに対する心臓応答を調節すると考えられているが、下流分子の多くの役割は十分に特徴づけられていない。本発明者らは、TGF-β2、BMP2、BMP4、BMP受容体1A、ならびに血管新生および血管同一性に関与するTGF-β受容体複合体の成分であるエンドグリンの転写の有意な増加を見出した。さらに、TGF-β誘導性転写産物1、潜在的トランスフォーミング増殖因子-β結合タンパク質3、アクチビン受容体様キナーゼ1、ならびにSMAD 2、5、6、および7を含む多くの下流遺伝子の転写が、TAC LAにおいて有意に増加し、これらも圧力応答に結びつけられた。
Gタンパク質共役受容体(GPCR)シグナル伝達経路は、圧負荷に対する心臓応答において重要な役割を担う。最も顕著な発見は、結紮マウスのLAおよびLVにおける、Gタンパク質シグナル伝達調節因子2(RGS2)の3.6倍の下方制御であった。この遺伝子は、血圧および血管平滑筋弛緩の制御において非常に重要である。関連遺伝子RGS 3、4、および5の発現は、TAC LAにおいて有意に上方制御されるが(約2倍)、LVでは上方制御されなかった。GPCRシグナル伝達のその他の修飾因子、Rho低分子量GTPアーゼもまた、圧負荷において特異的に制御される。Rho A2、C、D、およびGは非常に顕著に増加し、心臓で過剰発現された場合に心臓形態形成を破壊するRho GDP解離阻害因子αは、2.5倍上方制御される。全体では、28個の注釈付きRhoシグナル伝達遺伝子のうち7個、および181個の低分子量GTPアーゼシグナル伝達遺伝子のうち22個が上方制御され、このシグナル伝達経路が一体化して圧負荷応答に関与していることが示唆される。
細胞間シグナル伝達および生理学的制御に関与するいくつかの経路の転写もまた、圧負荷において劇的に影響を受ける。例えば、VEGF A、VEGF C、VEGF-D(fos誘導性増殖因子)、ニューロピリン、TIE 1チロシンキナーゼ受容体、アンジオポエチン2、エンドグリン、PDGF受容体βポリペプチド、MCAM、タンパク質O-フコシルトランスフェラーゼ1、インテグリンαV、内皮PASドメインタンパク質1(HIF2α)、および低酸素誘導因子1aを含む、血管新生シグナル伝達経路の多くの成分がLAにおいて上方制御され、HIFによって直接誘導される転写産物、ケモカイン受容体CXCR 4も上方制御される。LAにおける血行動態の変化もまた、多くの血管作動性ペプチドの制御をもたらす;エンドセリン受容体bの転写は2倍上方制御され、エンドセリン自体の転写は2倍下方制御される。アンジオテンシン変換酵素(3.4倍)、アンジオテンシン受容体様1(アペリン受容体)(2.3倍)、アドレノメデュリン(2.5倍)、およびミオトロフィン(3.4倍)もまたLAにおいて上方制御され、左房が容積状態の感知および容積状態に対する応答において特に重要であることが示唆される。
下流過程の転写制御
マトリックスおよび細胞骨格のリモデリング。
上記のシグナルに応答して、圧負荷心臓は、実質的な組織および細胞リモデリングを起こす。このリモデリングの多くは不適応であり、この過程を妨げる薬物は生存を促進するため(Jessup and Brozena (2003) N Engl J Med. 348:2007-18)、どの特異的遺伝子が関与しているかを理解することは重要である。多くのマトリックスおよび細胞接着遺伝子が高度に差次的に制御され、発現の差は5〜15倍である。特定コラーゲンの発現は上方制御されるか(I、III、IV、V、VI、VIII、XV、XVI、XVIII型)または下方制御され(II、IX、XI、XIV型)、特定のMMPも同様である(2および23は上方制御され、3、8、13、および16は下方制御される)。最も高度に制御されるECM遺伝子の1つは骨芽細胞特異的因子2であり、これは圧負荷の他の調査においても同定されている。全体では、40を超える細胞接着遺伝子がTAC LAにおいて上方制御される(図5)。
圧負荷に応答して、動的な細胞骨格リモデリングもまた起こる。TAC組織では、β細胞質アクチン、カテニンβ、コフィリン1(非筋肉)、αアクチニン1、コロニン、ダイニン細胞質軽鎖1、サイモシンβ4および10、トロポモジュリン3、カルポニン2、デストリン、ドレブリン、新生物で失われる上皮タンパク質(epithelial protein lost in neoplasm)、ビンキュリン、LIMおよびSH-3タンパク質1、アクチン関連タンパク質複合体2/3サブユニット1Bおよび3、グリア成熟因子β、モエシン、ならびに非定型ミオシンIc、Va、およびXを含む、多数のアクチンおよびその他の細胞骨格タンパク質の転写が、高度に上方制御される(図1a)。TAC LVでは、α2平滑筋アクチン、γ-細胞質アクチン、および4.5(four-and-a-half)LIMドメイン1を含むいくつかのアクチン関連遺伝子もまた上方制御される。過剰解析において、298個の注釈付き細胞骨格および構造遺伝子のうち30個が、TAC LAにおいて上方制御される(図5)。広範なマトリックスおよび細胞骨格遺伝子のこのような非常に特異的な制御から、起こっている顕著なリモデリングが緻密な分子的筋書きに従っていることが実証される。
マトリックスメタロプロテイナーゼの特異的阻害またはTIMPの増強など、この不適応な過程が妨げられる多くの点が存在するが、これらの点は疾患過程の新たな局面の治療法を提供し得る。
細胞周期因子発現の正確な制御。
圧負荷におけるシグナル伝達の別の顕著な下流標的は、細胞周期機構である。TAC LAでは、328個の細胞周期遺伝子のうち30個を超える遺伝子が、上方制御される;重要なことには、これらの遺伝子はG1細胞周期機構の明確なサブセットである。初期G1サイクリンD1およびD2の転写は、TAC LAおよびLVのいずれにおいても2.4〜4.7倍上方制御されるが、S期への移行に必要な後期G1サイクリンEまたはG2/M期移行に必要なサイクリンBでは変化は認められない。初代心筋細胞培養におけるサイクリンD発現または下流E2Fの阻害は、心筋細胞肥大の発症を妨げることが示されている。したがって、細胞周期の進行を伴わないサイクリンD/CDK活性は、肥大促進性遺伝子の転写増加を促進することにより、肥大応答を促進すると考えられる。LAおよびLVにおいてこの機構がインビボで活発であるという本発明者らの発見から、D型サイクリン活性の標的阻害により、肥大の別の治療アプローチが提供されることが示される。
エネルギー代謝の制御変化。
圧負荷心臓におけるシグナル伝達の最も顕著でかつ興味深い標的の1つは、エネルギー代謝である。LAおよびLVのいずれにおいても、TAC LAおよびLVでは、ミトコンドリア酸化的リン酸化、TCA回路、および脂肪酸酸化の主要な下方制御が認められる。ミトコンドリア酸化的リン酸化および呼吸鎖機構の複合体(I〜V)に関連する40を超える遺伝子の転写が劇的に下方制御され、7個のTCA回路遺伝子ならびに多数の脂質代謝および脂肪酸酸化経路遺伝子もまた下方制御される(図5、6)。これらの代謝変化は、肥大を存続させ得るシグナル伝達フィードバック機構において重大な意味を有する。
何百もの未同定ESTの差次的発現。
マイクロアレイ解析を行う主な利点は、疾患過程に関与する可能性のある新たな未同定遺伝子を認識できることである。本発明者らは、圧負荷に応答する200を超える上方制御ESTおよび400を超える下方制御ESTを同定した。これらの新規遺伝子をさらに解析することで、ストレスに対する心臓応答の生物学への独自の洞察が提供され得る。
アレイ結果の定量的リアルタイムポリメラーゼ連鎖反応による確認。
アレイの結果が真の発現差を表していることを確認するため、考察した主要な過程に関与する9つの代表的な遺伝子のプライマーを用いて、定量的リアルタイムポリメラーゼ連鎖反応(qRT-PCR)を行った。大部分の場合において、qRT-PCRデータがわずかに大きな測定差を示すものの、qRT-PCRおよびアレイ測定において、遺伝子はそれぞれ同様に制御されることが示された(図7)。
心不全は西洋文化における罹患率の主要原因である。一般に、疾患過程は、多くの場合、全身性高血圧または大動脈弁疾患の結果としての、後負荷の増加に起因して、LVHおよびLAEの発症から始まる。本発明者らは、圧負荷のTACマウスモデルのマイクロアレイプロファイリングを使用して、後負荷増加に対する心臓の応答に関与する遺伝子および過程のより包括的な見解を得た。
心臓圧負荷の以前の研究は1つの心腔、左室にのみ焦点をおき、非常に小さなマイクロアレイを使用するものであった。より包括的なマイクロアレイおよび改良された統計技法を使用して、LVにおける転写を解析することにより、本発明者らは、重要でありかつこれまで認識されていなかった、肥大性LVの変化を媒介する遺伝子、経路、および過程を同定し得た。
圧負荷の過程では、LVが圧傷害の矢面に立つ一方で、左房は、拡大およびリモデリングを生じる、僧帽弁逆流および壁応力の増大に起因する生理学的課題に直面することがわかっている。肥大型心筋症、心臓弁膜症、およびうっ血性心不全の最も重要な臨床的合併症の大部分は心房拡大によるもので、これには心房細動およびその他の電気生理学的障害、ならびに心室充満の減少によって起こる血行動態の悪化が含まれる。どの遺伝子および過程が心房応答に関連しているのかを知ることは、いかにしてこの疾患過程に介入するかについての重要な手掛かりを我々に与え得るが、いずれの研究も、この設定における左房の転写変化についてはこれまで調べていない。驚くべきことに、拡大性LAにおける転写変化は著しく、この時点のLVにおける変化よりも範囲および規模がはるかに大きい。
同様に、以前の研究では、左側ストレスに起因する肺毛細血管楔入圧の増加または全身性神経液性変化が、右室および右房において転写変化を誘導するかどうかを調べていない。RAおよびRVにおける転写を調べることにより、本発明者らは、実質的な左室肥大および左房拡大によって特徴づけられるこの過程のこの時点では、RAおよびRVにおける転写は本質的に変わらないことを示した。
本発明者らの発見により、心不全の生物学に関する多くの興味深い問題に対する答えが提供される。伸張、剪断、および低酸素などの生理学的ストレスが、細胞シグナルに伝達されるはずであることがわかっている。データから、多くの異なる経路が特定の方法で利用されることが示される。例えば、本発明者らは、細胞外空間(TGFβ2、BMP2、および4)から細胞表面受容体(エンドグリン、BMP受容体1a、ACVRL)へ、下流の転写因子(SMAD)へと、TGFβスーパーファミリー経路の活性化の証拠を認める。圧負荷に応答したTGFβ自体の関与は以前から考えられていたが、BMPおよびそれらの受容体が関与することは初めて実証される。BMP経路における変異は遺伝性心筋症の原因となり得り、標的化心筋過剰発現は心臓を肥大化させる。そうであれば、これらのBMP経路の成分は、肥大応答の遮断を目的とする薬物を開発するための魅力的な標的となり得る。
これらの研究による別の独自の知見は、細胞外VEGF A、C、およびDから受容体(Tie1、ニューロフィリン)へ、転写因子(Hif1α)へと、TAC LAにおいて血管新生シグナル伝達経路が上方制御されることである。これは、心筋低酸素をもたらす作業負荷の増大、およびその後の強い血管新生応答の結果である可能性が高い。
正常な成体心筋におけるエネルギー発生は、主にTCA回路およびミトコンドリア酸化的リン酸化を介した長鎖脂肪酸の酸化的代謝に依存するが、これらはいずれも、LAおよびLVにおいて転写が劇的に下方制御されることを、本発明者らが見出した。LV肥大における脂肪酸からグルコースへの代謝基質の変換は周知の現象であるが、ミトコンドリア呼吸鎖遺伝子の発現変化の証拠はこれまでほどんどなく、ストレスを受けた心臓において転写レベル(COX IおよびIV、アデニンヌクレオチド輸送体1、F1ATPアーゼαおよびβ)またはタンパク質レベル(ANT1、F1 ATPアーゼαおよびβ、シトクロムc酸化酵素、シトクロムb5)が減少する例がわずかに報告されているに過ぎなかった。本発明者らは、呼吸鎖の全5つの複合体の複数の成分をコードする40を超える遺伝子の転写が、TAC LAおよびLVの両方において劇的に下方制御されることを見出した(図5)。これに関連した酸素集約的な脂肪酸酸化および酸化的リン酸化(4.1モルATP/1モルO2)から解糖(6.3モルATP/1モルO2)への代謝変換はおそらく、心筋作業の増大および酸素抽出の増大による相対的低酸素に対する応答を示す。しかし、この応答は、ATP形態でのエネルギー生産の低下をもたらす。
このエネルギー欠損が心筋に及ぼす潜在的効果とは何であろうか?ミトコンドリア脂肪酸輸送体CD36、極長鎖アシル-CoA脱水素酵素、アデニンヌクレオチド輸送体-1、およびミトコンドリアtRNAなどの異なるエネルギー経路遺伝子における多くの変異が、非効率的なATP生成をもたらし、肥大型心筋症を引き起こすことがわかっている。別の主要な種類の遺伝性心筋症は、筋節タンパク質変異に起因し、その多くは非効率的なATP利用をもたらす。これにより、収縮末期のATP枯渇が、ATPレベルに対する感受性が極めて高いSERCA2ポンプによる効率的な細胞質カルシウムクリアランスを妨げるモデルが作成された。細胞質カルシウム過渡応答の延長が、次にカルシニュリン、カルモジュリン、およびCaMキナーゼなどのカルシウム感受性メディエータを活性化し、肥大刺激を引き起こす。
本明細書において認められた酸化的リン酸化の劇的な下方制御はまた、このモデルに基づいて、確実にATP生成の減少を引き起こす。圧負荷および低酸素組織における酸化的リン酸化の下方制御の考え得る近因は、直ちに有毒な反応性酸素種の生成を妨げることである;残念なことに、これは肥大の連鎖、酸素要求量の増加、ATP枯渇、およびさらなる肥大シグナル伝達を引き起こす(図8)。
心臓圧負荷に対する応答は、左房および左室における何千もの遺伝子の転写の協調的な制御を必要とする。マイクロアレイ転写プロファイリングならびに厳密かつ革新的な統計技法を使用して、LV肥大およびLA拡大の標準的なマウスモデルにおいて調節を受ける特異的遺伝子および一般的な生物学的過程が同定される。転写パターンから、エネルギー代謝、細胞周期制御、リモデリング、およびシグナル伝達の顕著な変化が実証される。本研究により、LVHおよびLAEの病態生理への重要な洞察が提供され、診断および治療の多くの新たな標的が同定される。
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データ解析の概要を示す。バックグラウンドを差し引き、色素バイアスを正規化した後、シグナル強度の低い、質の不十分な特徴をさらなる解析から排除した。対比較それぞれについて少なくとも66%の実験で有効値を有する特徴を(例えば、LA>66%およびTAC LA>66%)、SAMおよびt-検定を使用するさらなる解析のために残した。次いで、SAMにより上方制御または下方制御されると同定された遺伝子のリストをGO用語に対してマッピングし、フィッシャーの正確確率検定を使用して、群全域にわたる有意な制御を有する生物学的過程群を同定した。 階層的クラスタリングを示す。TAC動物の左房は、心房よりも心室とより近傍にクラスター形成した。 SAM解析を示す。TAC LA(a)およびLV(b)において最も顕著に上方制御および下方制御された上位遺伝子のヒートマップ。遺伝子の順序は、SAMスコアまたはd-統計値の減少順を反映している。 SAM解析を示す。TAC LA(a)およびLV(b)において最も顕著に上方制御および下方制御された上位遺伝子のヒートマップ。遺伝子の順序は、SAMスコアまたはd-統計値の減少順を反映している。 TAC LAにおいてSAMにより同定された、891個の上方制御遺伝子および1001個の下方制御遺伝子のヒートマップを示す。心室様、心房様、および新規TAC発現パターンを有する遺伝子のブロックを強調して表示する。赤色は高発現を表し、緑色は低発現レベルを表す。 TAC LA(aおよびb)およびLV(c)に関する、統計的に有意に制御された上位の遺伝子オントロジー生物学的過程群を示す。図に、生物学的過程群、アレイ上のその群内の注釈付き遺伝子の総数、SAMにより上方制御または下方制御されると同定された、群内の遺伝子数、および各群の差次的制御に関するフィッシャーの正確な片側p値を収載する。 TAC LA(aおよびb)およびLV(c)に関する、統計的に有意に制御された上位の遺伝子オントロジー生物学的過程群を示す。図に、生物学的過程群、アレイ上のその群内の注釈付き遺伝子の総数、SAMにより上方制御または下方制御されると同定された、群内の遺伝子数、および各群の差次的制御に関するフィッシャーの正確な片側p値を収載する。 TAC LAにおいて下方制御されるエネルギー経路遺伝子を示す。この図は、LAにおいて圧負荷に応答して起こるTCA回路、脂肪酸代謝、および酸化的リン酸化遺伝子の下方制御の幅を示す。酸化的リン酸化複合体それぞれに由来する下方制御遺伝子を図に記載する。TAC LVにおいても、同様の数の遺伝子が下方制御される。 マイクロアレイとqRT-PCRの結果の比較を示す。LAおよびLV組織に関して、擬似手術対照に対するlog(10)発現変化倍率として結果をプロットする。この図により、発現の変化倍率が通常、LVよりもLAにおいて大きいことが明らかになる。qRT-PCR確認を行った、制御を受ける9個の遺伝子(frizzled関連タンパク質(Frzb)、サイクリンD1、TGFβ2、HIF1a、エンドセリン受容体b(Ednrb)、4.5 LIMドメイン2(FHL2)、Gタンパク質シグナル伝達の制御因子2(RGS2)、ジアシルグリセロールO-アセチルトランスフェラーゼ2(DGAT2)、およびホメオドメイン-オンリータンパク質(Hop))について結果を示す。

Claims (23)

  1. 心臓における圧負荷を診断する方法であって、
    表Iに記載する1つまたは複数の配列における差次的発現を決定する段階
    を含む方法。
  2. 圧負荷が心房拡大および/または心室肥大と関連している、請求項1記載の方法。
  3. 決定段階が、
    タンパク質を含む生体試料を、圧負荷関連遺伝子によってコードされるアミノ酸配列を有するタンパク質の1つまたは複数に特異的に結合する抗体と接触させる段階;
    該抗体と該タンパク質との間に形成される複合体の存在を検出する段階;
    を含み、
    対照試料と比較した該複合体の存在の変化が心臓における圧負荷を示す、請求項1記載の方法。
  4. 生体試料が血液または血清である、請求項3記載の方法。
  5. 生体試料を圧負荷関連ポリペプチドに特異的な一連の抗体と接触させる、請求項4記載の方法。
  6. 圧負荷関連遺伝子が表IIに記載されている、請求項3〜5のいずれか一項記載の方法。
  7. 生体試料が心臓細胞である、請求項5記載の方法。
  8. 接触段階がインビボで行われる、請求項7記載の方法。
  9. 段階:
    a) 圧負荷関連ポリペプチドに特異的に結合し、可視化法において過負荷状態の心臓組織と周囲組織との間のコントラストを上げる抗体を含む画像化組成物の有効量を患者に投与する段階;および
    b) 該画像化組成物を可視化する段階
    を含む、請求項8記載の方法。
  10. 圧負荷関連遺伝子が表IIIに記載されている、請求項7〜9のいずれか一項記載の方法。
  11. 決定段階が、
    タンパク質を含む生体試料を、圧負荷関連遺伝子によって触媒される代謝反応の標識された基質と接触させる段階;
    該代謝反応の生成物の存在を検出する段階;
    を含み、
    対照試料と比較した該複合体の存在の増加が心臓における圧負荷を示す、請求項1記載の方法。
  12. 圧負荷関連遺伝子が表IVに記載されている、請求項11記載の方法。
  13. 決定段階が、
    圧負荷を被っている疑いのある患者に由来する、核酸を含む生体試料を、前記配列の1つまたは複数に特異的に結合するプローブと接触させる段階;
    該プローブと該核酸との間に形成される複合体の存在を検出する段階;
    を含み、
    対照試料と比較した該複合体の存在の増加が心臓の圧負荷を示す、請求項1記載の方法。
  14. 生体試料が、前記配列により特異的に増幅された核酸を含む、請求項13記載の方法。
  15. 生体試料が血液である、請求項13記載の方法。
  16. 生体試料を一連の圧負荷関連遺伝子配列と接触させる、請求項13記載の方法。
  17. 2つまたはそれ以上の、表Iに記載の圧負荷関連遺伝子、遺伝子産物、または該遺伝子産物に特異的な抗体を含むアレイ。
  18. 圧負荷関連遺伝子または遺伝子産物の活性を調節する作用物質を同定する方法であって、以下の段階:
    候補生物活性剤を、
    (a) 表Iに記載する配列のいずれか1つによりコードされるポリペプチド;
    (b) 表Iに記載する配列のいずれか1つによりコードされるポリペプチドをコードし発現する核酸を含む細胞;または
    (c) (i) 表Iに記載する配列のいずれか1つに相当する遺伝子のノックアウト;(ii) 表Iに記載する配列のいずれか1つを含む、外因性の安定に伝達された哺乳動物遺伝子配列の1つを含む、圧負荷関連遺伝子機能の非ヒトトランスジェニック動物モデルのうちのいずれか1つと混合する段階;および
    圧負荷誘導性の分子および細胞変化に対する該作用物質の効果を決定する段階
    を含む方法。
  19. 生物活性剤が活性を上方制御する、請求項18記載の方法。
  20. 生物活性剤が活性を下方制御する、請求項18記載の方法。
  21. 生物活性剤がポリペプチドに結合する、請求項20記載の方法。
  22. 配列が表IAに記載されている請求項1〜21のいずれか一項記載の方法。
  23. 配列が表IBに記載されている請求項1〜21のいずれか一項記載の方法。
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