JP2005290544A - 耐摩耗性および延性に優れた高炭素鋼レールの製造方法 - Google Patents

耐摩耗性および延性に優れた高炭素鋼レールの製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】 高炭素含有の鋼レールの製造において、熱間連続圧延時の最大圧延パス間時間を、鋼の炭素量、圧延時の最大レール頭部表面温度、パス回数から算定される値以下に制御し、加えてV、Nb、Nの添加量を制御し、レール頭部のオーステナイト粒を微細化し、更に圧延後にレール頭部表面を所定の温度範囲、所定の冷却速度で加速冷却を施し、高硬度で微細なパーライト組織を得、レール頭部の延性を改善して使用寿命向上を図る。
【解決手段】 質量%で、C:0.85超〜1.40%を含有するレール圧延用鋼片からレールを製造するに際し、仕上圧延を1パス当たりの断面減少率が2〜30%のパス回数2回の連続仕上圧延において、圧延圧延パス間時間(S、sec )が、鋼の炭素量(C、mass%)、圧延時の最大レール頭部表面温度(T、℃)から下記式1で示す値(CPT1)に対し、S≦CPT1となるよう連続圧延を行う。CPT1=800/(C×T)…(1) 【選択図】 図3

Description

本発明は、重荷重鉄道に使用されるレールにおいて、耐摩耗性と延性を同時に付与することを目的としたパーライト組織を呈した高炭素鋼レールの製造方法に関する。
高炭素含有のパーライト鋼はその優れた耐摩耗性鋼から鉄道用レール材料として使用されてきた。しかしながら炭素含有量が非常に高いため、延性や靭性が低いといった問題があった。
例えば、非特許文献1に示されている炭素量0.6〜0.7mass%の普通炭素鋼レールでは、JIS3号Uノッチシャルピー衝撃試験での常温の衝撃値は12〜18J/cm2 程度であり、このようなレールを寒冷地等の低温度域で使用した場合、微小な初期欠陥や疲労き裂から脆性破壊を引き起こすといった問題があった。
また、近年レール鋼は耐摩耗性改善のため、より一層の高炭素化を進めており、これに伴い延性や靭性がさらに低下するといった問題があった。
一般にパーライト鋼の延性や靭性を向上させるには、パーライト組織(パーライトブロックサイズ)の微細化、具体的には、パーライト変態前のオーステナイト組織の細粒化やパーライト組織の微細化が有効であると言われている。オーステナイト組織の細粒化を達成するには、熱間圧延時の圧延温度の低減、圧下量の増加、さらにはレール圧延後に低温再加熱による熱処理が行われている。また、パーライト組織の微細化を図るには、変態核を利用したオーステナイト粒内からのパーライト変態の促進等が行われている。
しかしレールの製造においては、熱間圧延時の成形性確保の観点から、圧延温度の低減、圧下量の増加には限界があり、十分なオーステナイト粒の微細化が達成できなかった。 また、変態核を利用したオーステナイト粒内からのパーライト変態については、変態核の量の制御が困難なことや粒内からのパーライト変態が安定しない等の問題があり、十分なパーライト組織の微細化が達成できなかった。
これらの諸問題から、パーライト組織のレールにおいて延性や靭性を抜本的に改善するには、レール圧延後に低温再加熱を行い、その後、加速冷却によりパーライト変態をさせ、パーライト組織を微細化する方法が用いられてきた。しかし、近年耐摩耗性改善のためレールの高炭素化が進み、上記の低温再加熱処理時に、オーステナイト粒内に粗大な炭化物が溶け残り、加速冷却後のパーライト組織の延性や靭性が低下するといった問題があった。また、再加熱であるため製造コストが高く、生産性も低い等の経済性の問題もあった。
そこで、圧延時成形性を確保し、圧延後のパーライト組織の微細化する高炭素鋼レールの製造方法の開発が求められるようになってきた。この問題を解決するため、下記に示すような高炭素鋼レールの製造方法が開発された。
(1) 高炭素鋼含有の鋼レールの仕上げ圧延において、所定のパス間時間で連続3パス以 上の圧延を行う高延性レールの製造法(特許文献1)。
(2) 高炭素鋼含有の鋼レールの仕上げ圧延において、所定のパス間時間で連続2パス以 上の圧延を行い、さらに、連続圧延を行った後、圧延終了後に加速冷却を行う高耐摩 耗性・高靭性レールの製造方法(特許文献2)。
(3) 高炭素鋼含有の鋼レールの仕上げ圧延において、パス間で冷却を施し、さらに、連 続圧延を行った後、圧延終了後に加速冷却を行う高耐摩耗性・高靭性レールの製造方 法(特許文献3)。
これらのレールの特徴は、レールの延性や靭性の向上を図るため、パーライト組織を微細化する方法として、オーステナイト組織の微細化を検討し、高炭素鋼が比較的低温で、かつ小さい圧下量でも再結晶し易いことを利用して、小圧下の連続圧延によって整粒の微細オーステナイト粒を得、パーライト鋼の延性や靭性を向上させるものであった。
特開平7−173530号公報 特開2001−234238号公報 特開2002−226915号公報 JISE1101−1990
上記に示された連続圧延方法では、主に鋼の炭素量、連続熱間圧延時の温度、圧延パス数やパス間時間の組み合わせによっては、オーステナイト組織の微細化が図れず、パーライト組織が粗大化し、延性が向上しないといった問題があった。
特に炭素含有量が高い鋼では、圧延直後の粒成長速度が大きいため、連続圧延時のパス
間時間の選択によっては、パス間でのオーステナイト粒の成長が顕著となり、上記に示された連続圧延方法やパス間での冷却を行っても、オーステナイト組織の微細化が図れず、パーライト組織が粗大化し、延性が向上しないといった問題があった。
このような背景から、高炭素鋼含有の鋼レールの仕上げ圧延において、整粒の微細オーステナイト粒を得、同時に、パス間でのオーステナイト粒の成長を抑制し、安定的に延性を向上させるレール製造方法の開発が求められていた。
すなわち、本発明は、高炭素含有の鋼片をレールとして熱間連続圧延する際に、最大パス間時間(S、sec )を鋼の炭素量(C、mass%)、圧延時の最大レール頭部表面温度 (T、℃)、さらには、パス回数(P、回)から算定される値以下に納め、次に、熱間連続圧延後に、ある一定の温度範囲において、レール頭部表面に加速冷却を施し、高硬度で微細なパーライト組織を得、レール頭部の耐摩耗性と延性を確保することを目的としたものである。
本発明は、以下の構成からなる。
(1)質量%で、C:0.85超〜1.40%を含有するレール圧延用鋼片からレールを製造するに際して、1パス当たりの断面減少率が2〜30%のパス回数2回の連続仕上げ圧延において、最大圧延パス間時間(S、sec )が、鋼の炭素量(C、mass%)、圧延時の最大レール頭部表面温度(T、℃)からなる下記の式1で示される値(CPT1)に対して、S≦CPT1となるように連続圧延を行うことを特徴とする耐摩耗性および延性に優れた高炭素鋼レールの製造方法。
CPT1=800/(C×T) ………………(式1)
(2)質量%で、C:0.85超〜1.40%を含有するレール圧延用鋼片からレールを製造するに際して、1パス当たりの断面減少率が2〜30%のパス回数3回以上の連続仕上げ圧延において、最大圧延パス間時間(S、sec )が、鋼の炭素量(C、mass%)、圧延時の最大レール頭部表面温度(T、℃)、パス回数(P、回)からなる下記の式2で示される値(CPT2)に対して、S≦CPS2となるように連続圧延を行うことを特徴とする耐摩耗性および延性に優れた高炭素鋼レールの製造方法。
CPT2=2400/(C×T×P) ………(式2)
(3)また、上記(1)〜(2)のレールには、質量%でさらに、下記1)〜10)の成分を選択的に含有させることができる。
1)Si:0.05〜2.00%、Mn:0.05〜2.00%の1種または2種、
2)Cr:0.05〜2.00%、Mo:0.01〜0.50%の1種または2種、
3)B :0.0001〜0.0050%の1種、
4)Co:0.003〜2.00%、Cu:0.01〜1.00%の1種または2種、 5)Ni:0.01〜1.00%の1種、
6)Ti:0.0050〜0.0500%、Mg:0.0005〜0.0200%、
Ca:0.0005〜0.0150%の1種または2種以上、
7)Al:0.0100〜1.00%の1種、
8)Zr:0.0001〜0.2000%の1種、
9)N :0.0060〜0.0200%の1種、
10)V:0.005〜0.50%、Nb:0.002〜0.050%の1種または2種を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる。
(4)また、上記(3)のうち10)のレールにおいて、鋼レールの化学成分からなる下記の式3で示される値(PC)が、0.30≧PC≧0.04の範囲となることを特徴とする耐摩耗性および延性に優れた高炭素鋼レールの製造方法。
PC=V(質量%)+10×Nb(質量%)+5×N(質量%)…………(式3)
(5)また、上記(1)〜(4)のレールにおいて、熱間連続圧延後直ちに、レール頭部表面を冷却速度5〜30℃/sec で950〜750℃まで加速冷却することを特徴とする耐摩耗性および延性に優れた高炭素鋼レールの製造方法。
(6)また、上記(1)〜(5)のレールにおいて、熱間連続圧延後、引き続き700℃以上の温度から、レール頭部表面を冷却速度2〜30℃/sec で少なくとも600℃まで加速冷却し、その後放冷することを特徴とする耐摩耗性および延性に優れた高炭素鋼レールの製造方法。
本発明によれば、高炭素含有の鋼レールの製造において、熱間連続圧延時の最大圧延パス間時間を鋼の炭素量、圧延時の最大レール頭部表面温度、パス回数から算定される値以下に制御し、これに加えて、V、Nb、Nの添加量を制御し、レール頭部のオーステナイト粒を微細化し、さらに圧延後に、レール頭部表面を、所定の温度範囲、所定の冷却速度で加速冷却を施すことにより、高硬度で微細なパーライト組織を得、レール頭部の延性を改善し、使用寿命の向上を図ることが可能となる。
以下に本発明について詳細に説明する。
まず本発明者らは、高炭素含有のレール鋼において、鋼の炭素量、連続仕上げ圧延時のレール頭部表面温度、断面減少率やパス間時間の組み合わせ方によって、パーライト組織の粗大化により、延性が向上しない要因を解析した。様々な検証実験を行った結果、連続圧延時の最大パス間時間がある一定値を超えると、熱間連続圧延後のオーステナイト粒が粗大化することが確認された。
そこで本発明者らは、高炭素含有のレール鋼において、最大パス間時間の増大により、オーステナイト粒が粗大化する要因を解析した。様々な検証実験を行った結果、オーステナイト粒の粒成長は、鋼の炭素量、連続仕上げ圧延時の最大レール頭部表面温度との正の相関があることが確認された。引き続き解析を進めた結果、パス回数3回以上の連続仕上げ圧延においては、圧延パス回数との正の相関があることが確認された。
これらの検討結果から、本発明者らは、オーステナイト粒を粗大化させない最適なパス間時間と鋼の炭素量、連続仕上げ圧延時の最大レール頭部表面温度、圧延パス回数との関係を重相関により解析を行った。その結果、連続仕上げ圧延のパス回数が2回の場合は、鋼の炭素量と連続仕上げ圧延時の最大レール頭部表面温度からなる式、連続仕上げ圧延のパス回数が3回以上の場合は、鋼の炭素量、連続仕上げ圧延時の最大レール頭部表面温度、パス回数からなる式で算定される値以下に連続圧延時の最大パス間時間を制御することにより、圧延パス間でのオーステナイト粒の粒成長が抑制され、熱間連続圧延後のオーステナイト粒が微細化することが確認された。
次に本発明者らは、析出物の適用により、連続圧延後に発生するオーステナイト粒の粒成長を抑制する方法を検討した。熱間連続圧延実験の結果、V炭化物、V窒化物、V炭窒化物、Nb炭化物、Nb炭窒物が連続圧延中に析出して、ピンニングにより、圧延後のオーステナイト粒の粒成長が抑制されることを見出した。
さらに本発明者らは、オーステナイト粒のピンニングに有効なV炭化物、V窒化物、V炭窒化物、Nb炭化物、Nb炭窒物が十分に析出する条件を検討した。その結果、V、Nb、Nの添加量(質量%)からなる式で算定される範囲内に、V、Nb、Nのそれぞれの添加量を制御することにより、連続圧延後のオーステナイト粒の粒成長が十分に抑制されることを確認した。
次に本発明者らは、圧延直後に加速冷却を適用することにより、連続圧延後に発生するオーステナイト粒の粒成長を抑制する方法を検討した。その結果、上記の連続圧延直後に、レール頭部表面を、所定の温度範囲、所定範囲の冷却速度で加速冷却を施すことにより、圧延後のオーステナイト粒の粒成長を抑制できることを見出した。
これらの発明に加えて、本発明者らは、微細なオーステナイト粒から耐摩耗性や延性に優れたパーライト組織を得る方法を検討した。その結果、オーステナイト域にあるレール頭部表面を、所定の温度範囲、所定の冷却速度で加速冷却することにより、高硬度で微細なパーライト組織が得られ、レール頭部の耐摩耗性や延性が確保できることを見出した。
従って本発明では、高炭素含有の鋼片をレールとして連続圧延する際に、最大パス間時間を鋼の炭素量と圧延時の最大レール頭部表面温度からなる式、または、鋼の炭素量、圧延時の最大レール頭部表面温度、パス回数からなる式で算定される値以下に制御し、これに加えて、連続圧延後に発生するオーステナイト粒の粒成長を抑制するため、V、Nb、Nの添加量をそれぞれの添加量から算定される値内に治め、さらには、連続圧延直後にレール頭部表面を、所定の温度範囲、所定の冷却速度で加速冷却すること、さらに、耐摩耗性や延性に優れたパーライト組織を得るため、オーステナイト域にあるレール頭部表面を、所定の温度範囲、所定の冷却速度で加速冷却することにより、高硬度で、かつ微細なパーライト組織が得られ、耐摩耗性の確保と延性の改善が図れることを知見した。
すなわち、本発明では、高炭素含有の鋼片をレールとして連続熱間圧延する際に、鋼の炭素量、圧延時の最大レール頭部表面温度、パス回数を考慮して圧延時の最大パス間時間を制御することにより、レール頭部のオーステナイト粒を微細化し、これに加えて、V、Nb、Nの添加量を制御し、圧延後に、レール頭部表面を、所定の温度範囲、所定の冷却速度で加速冷却を施すことにより、レール頭部の耐摩耗性と延性を同時に確保することを目的とした高炭素鋼レールの製造方法に関するものである。
次に、本発明の限定理由について詳細に説明する。
(1)鋼レールの化学成分の限定理由:
まず、レール鋼の化学成分を上記請求範囲に限定した理由について詳細に説明する。
Cは、パーライト変態を促進させ、かつ耐摩耗性を確保する有効な元素である。C量が0.85%以下では、パーライト組織中のセメンタイト相の体積比率が確保できず、重荷重鉄道において耐摩耗性が維持できない。またC量が1.40%を超えると、本製造方法では、旧オーステナイト粒界に初析セメンタイト組織が多量に生成し、耐摩耗性や延性が低下する。このためC量を0.85超〜1.40%に限定した。なお、炭素量を0.95%以上にすると、耐摩耗性がより一層向上し、レールの使用寿命の改善効果が高い。
また、上記の成分組成で製造されるレールは、パーライト組織の硬度(強化)の向上、パーライト組織の延性の向上、溶接熱影響部の軟化の防止、レール頭部内部の断面硬度分布の制御を図る目的で、Si、Mn、Cr、Mo、V、Nb、B、Co、Cu、Ni、Ti、Mg、Ca、Al、Zr、Nの元素を必要に応じて添加する。
ここで、Siはフェライト相への固溶強化によりレール頭部の硬度(強度)を上昇させ、初析セメンタイト組織の生成を抑制し、硬度と延性を確保する元素である。Mnは焼き入れ性を高め、パーライトラメラ間隔を微細化することにより、パーライト組織の硬度を確保する元素である。Cr、Moは、パーライトの平衡変態点を上昇させ、主にパーライトラメラ間隔を微細化することによりパーライト組織の硬度を確保する。V、Nbは、熱間圧延やその後の冷却課程で生成した炭化物や窒化物により、オーステナイト粒の成長を抑制し、さらに析出硬化により、パーライト組織の延性と硬度を向上させる。また、再加熱時に炭化物や窒化物を安定的に生成させ、溶接継ぎ手熱影響部の軟化を防止する。
Bは、初析セメンタイト組織の生成を微細化し、同時にパーライト変態温度の冷却速度依存性を低減させ、レールの延性を向上させ、さらにレール頭部の硬度分布を均一にする。Coは、パーライト組織中のフェライトに固溶し、パーライト組織の硬度を高めると同時に、レール頭部の摩耗面において微細なフェライト組織の形成を促進し、耐摩耗性を向上させる元素である。Cuは、パーライト組織中のフェライトに固溶し、パーライト組織の硬度を高める。Niは、Cu添加による熱間圧延時の脆化を防止し、同時にパーライト鋼の硬度を向上させ、さらに溶接継ぎ手熱影響部の軟化を防止する。
Tiは、熱影響部の組織の微細化を図り、溶接継ぎ手部の脆化を防止する。Mg、Caは、レール圧延時においてオーステナイト粒の微細化を図り、同時にパーライト変態を促進し、パーライト組織の延性を向上させる。Alは、共析変態温度を高温側へ移動させ、パーライト組織を強化し、レールの耐摩耗性の向上させる。さらに共析炭素量を高炭素側へ移動させ、初析セメンタイト組織の生成を抑制する。Zrは、ZrO2 介在物が高炭素レール鋼の凝固核となり、凝固組織の等軸晶化率を高めることにより、鋳片中心部の偏析帯の形成を抑制し、初析セメンタイト組織の厚さを微細化し、レールの延性低下を防止する。Nはオーステナイト粒界からのパーライト変態を促進させ、パーライト組織を微細にすることより、延性を向上させることが主な添加目的である。
これらの成分の限定理由について、以下に詳細に説明する。
Siは、脱酸材として必須の成分である。また、パーライト組織中のフェライト相への固溶強化によりレール頭部の硬度(強度)を上昇させる元素である。さらに、過共析鋼において初析セメンタイト組織の生成を抑制し、延性の低下を抑制する元素である。しかし、Si量が0.05%未満ではこれらの効果が十分に期待できない。またSi量が2.00%を超えると、熱間圧延時に表面疵が多く生成することや、酸化物の生成により溶接性が低下する。さらに、焼入性が著しく増加し、レールの耐摩耗性や延性に有害なマルテンサイト組織が生成する。このためSi量を0.05〜2.00%に限定した。
Mnは、焼き入れ性を高め、パーライトラメラ間隔を微細化することにより、パーライト組織の硬度を確保し、耐摩耗性を向上させる元素である。しかし、Mn量が0.05%未満ではその効果が小さく、レールに必要とされる耐摩耗性の確保が困難となる。またMn量が2.00%を超えると、焼入性が著しく増加し、耐摩耗性や延性に有害なマルテンサイト組織が生成し易くなる。このためMn量を0.05〜2.00%に限定した。
Crは、パーライトの平衡変態点を上昇させ、結果としてパーライト組織を微細にして高硬度(強度)化に寄与すると同時に、セメンタイト相を強化して、パーライト組織の硬度(強度)を向上させることにより耐摩耗性を向上させる元素である。しかし、Cr量が0.05%未満ではその効果は小さい。またCr量が2.00%を超えると、焼入性が著しく増加し、マルテンサイト組織が多量に生成し、レールの耐摩耗性や延性が低下する。このためCr量を0.05〜2.00%に限定した。
Moは、Cr同様パーライトの平衡変態点を上昇させ、結果としてパーライト組織を微細にすることにより高硬度(強度)化に寄与し、パーライト組織の硬度(強度)を向上させる元素である。Mo量が0.01%未満ではその効果が小さく、レール鋼の硬度を向上させる効果が全く見られなくなる。またMo量が0.50%を超えると、パーライト組織の変態速度が著しく低下し、延性に有害なマルテンサイト組織が生成しやすくなる。このためMo添加量を0.01〜0.50%に限定した。
Bは、旧オーステナイト粒界に鉄炭ほう化物を形成し、初析セメンタイト組織の生成を微細化し、同時にパーライト変態温度の冷却速度依存性を低減させ、頭部の硬度分布を均一化することにより、レールの延性低下を防止し、高寿命化を図る元素である。しかし、B量が0.0001%未満ではその効果は十分でなく、初析セメンタイト組織の生成やレール頭部の硬度分布には改善が認められない。またB量が0.0050%を超えると、旧オーステナイト粒界に粗大な鉄の炭ほう化物が生成し、レールの延性、さらには耐疲労損傷性が大きく低下することから、B量を0.0001〜0.0050%に限定した。
Coは、パーライト組織中のフェライトに固溶し、固溶強化によりパーライト組織の硬度(強度)を向上させる元素であり、さらに、パーライトの変態エネルギーを増加させて、パーライト組織を微細にすることにより延性を向上させる元素である。さらに、レール頭部の摩耗面において、車輪との接触により形成させる微細なフェライト組織をより一層微細化し、耐摩耗性を向上させる元素である。しかし、Co量が0.003%未満ではその効果が期待できない。またCo量が2.00%を超えると、パーライト組織中のフェライト相の延性が著しく低下し、ころがり面にスポーリング損傷が発生し、レールの耐表面損傷性が低下する。このためCo量を0.003〜2.00%に限定した。
Cuは、パーライト組織中のフェライトに固溶し、固溶強化によりパーライト組織の硬度(強度)を向上させる元素である。しかし、Cu量が0.01%未満ではその効果が期待できない。またCu量が1.00%を超えると、著しい焼入れ性向上により耐摩耗性に有害なマルテンサイト組織が生成しやすくなる。さらに、パーライト組織中のフェライト相の延性が著しく低下し、レールの延性が低下する。このためCu量を0.01〜1.00%に限定した。
Niは、Cu添加による熱間圧延時の脆化を防止し、同時にフェライトへの固溶強化によりパーライト鋼の高硬度(強度)化を図る元素である。さらに、溶接熱影響部においては、Tiと複合でNi3 Tiの金属間化合物が微細に析出し、析出強化により軟化を抑制する元素である。しかし、Ni量が0.01%未満ではその効果が著しく小さい。またNi量が1.00%を超えると、フェライト相の延性が著しく低下し、ころがり面にスポーリング損傷が発生し、レールの耐表面損傷性が低下する。このためNi量を0.01〜1.00%に限定した。
Tiは、溶接時の再加熱において析出したTiの炭化物、Tiの窒化物が溶解しないことを利用して、オーステナイト域まで加熱される熱影響部の組織の微細化を図り、溶接継ぎ手部の脆化を防止するのに有効な成分である。しかし、Ti量が0.0050%未満ではその効果が少ない。またTi量が0.0500%を超えると、粗大なTiの炭化物、Tiの窒化物が生成して、レールの延性、これに加えて耐疲労損傷性が大きく低下することから、Ti量を0.0050〜0.0500%に限定した。
Mgは、O、または、SやAl等と結合して微細な酸化物を形成し、レール圧延時の再加熱において結晶粒の粒成長を抑制し、オーステナイト粒の微細化を図り、パーライト組織の延性を向上させるのに有効な元素である。さらに、MgO、MgSがMnSを微細に分散させ、MnSの周囲にMnの希薄帯を形成し、パーライト変態の生成に寄与し、その結果パーライトブロックサイズを微細化することにより、パーライト組織の延性を向上させるのに有効な元素である。しかし、Mg量が0.0005%未満ではその効果は弱い。またMg量が0.0200%を超えると、Mgの粗大酸化物が生成し、レールの延性、さらには耐疲労損傷性を低下させるため、Mg量を0.0005〜0.0200%に限定した。
Caは、Sとの結合力が強く、CaSとして硫化物を形成し、さらにCaSがMnSを微細に分散させ、MnSの周囲にMnの希薄帯を形成し、パーライト変態の生成に寄与し、その結果パーライトブロックサイズを微細化することにより、パーライト組織の延性を向上させるのに有効な元素である。しかし、Ca量が0.0005%未満ではその効果は弱い。またCa量が0.0150%を超えると、Caの粗大酸化物が生成し、レールの延性、さらには耐疲労損傷性を低下させるため、Ca量を0.0005〜0.0150%に限定した。
Alは、脱酸材として必須の成分である。また、共析変態温度を高温側へ、共析炭素量を高炭素側へ移動させる元素であり、パーライト組織の高強度化と初析セメンタイト組織の生成抑制に有効な元素である。しかし、Al量が0.0100%未満ではその効果が弱い。またAl量が1.00%を超えると、鋼中に固溶させることが困難となり、疲労損傷の起点となる粗大なアルミナ系介在物が生成し、レールの延性、さらには耐疲労損傷性が低下する。また溶接時に酸化物が生成して溶接性が著しく低下するため、Al量を0.0100〜1.00%に限定した。
Zrは、ZrO2 介在物がγ−Feとの格子整合性が良いため、γ−Feが凝固初晶である高炭素レール鋼の凝固核となり、凝固組織の等軸晶化率を高めることにより、鋳片中心部の偏析帯の形成を抑制し、レール偏析部に生成する初析セメンタイト組織の生成を抑制する元素である。しかし、Zr量が0.0001%未満ではZrO2 系介在物の数が少なく、凝固核として十分な作用を示さない。その結果、偏析部に初析セメンタイト組織が生成してレールの延性を低下させる。またZr量が0.2000%を超えると、粗大Zr系介在物が多量に生成し、レールの延性が低下することや、粗大Zr系介在物を起点とした疲労損傷が発生しやすくなり、レールの使用寿命が低下する。このためZr量を0.0001〜0.2000%に限定した。
Nは、連続圧延中に、V窒化物やV炭窒化物、Nb炭窒化物を析出させ、オーステナイト粒の粒成長を抑制する。また、連続圧延後の冷却過程でV窒化物やV炭窒化物、Nb炭窒化物を析出させ、パーライト組織の延性を高めると同時に、硬度(強度)を向上させるのに有効な元素である。さらに、Ac1 点以下の温度域に再加熱された熱影響部において、V窒化物やV炭窒化物、Nb炭窒化物を析出させ、溶接継ぎ手熱影響部の軟化を防止するのに有効な元素である。これに加えて、オーステナイト粒界に偏析することにより、オーステナイト粒界からのパーライト変態を促進させ、パーライトブロックサイズを微細化することにより、パーライト組織の延性を向上させるのに有効な元素である。
しかし、N量が0.0060%未満ではその効果が弱い。またN量が0.0200%を超えると、鋼中に固溶させることが困難となり、疲労損傷の起点となる気泡が生成することから、N量を0.0060〜0.0200%に限定した。
なおレール鋼においては、Nは不純物として最大0.0050%程度含まれる。したがって上記の効果を得るには、Nは少なくとも0.0060%以上の添加が必要である。
Vは、連続圧延中に析出したV炭化物、V窒化物、V炭窒化物によりオーステナイト粒の粒成長を抑制し、また、連続圧延後の冷却過程で析出したV炭化物、V窒化物、V炭窒化物による析出硬化により、パーライト組織の延性を高めると同時に、硬度(強度)を向上させるのに有効な元素である。さらに、Ac1 点以下の温度域に再加熱された熱影響部において、比較的高温度域でV炭化物、V窒化物、V炭窒化物が析出し、溶接継ぎ手熱影響部の軟化を防止するのに有効な元素である。しかし、V量が0.005%未満ではその効果が十分に期待できず、パーライト組織の延性や硬度の向上は認められない。またV量が0.500%を超えると、疲労損傷の起点となる粗大なV炭化物、V窒化物、V炭窒化物が生成し、レールの延性や耐疲労損傷性が低下する。このためV量を0.005〜0.500%に限定した。
Nbは、連続圧延中に析出したNb炭化物、Nb炭窒化物によりオーステナイト粒の粒成長を抑制し、また、連続圧延後の冷却過程で析出したNb炭化物、Nb炭窒化物による析出硬化により、パーライト組織の延性を高めると同時に、硬度(強度)を向上させるのに有効な元素である。さらに、Ac1 点以下の温度域に再加熱された熱影響部において、低温度域から高温度域までNb炭化物やNb炭窒化物が析出し、溶接継ぎ手熱影響部の軟化を防止するのに有効な元素である。しかしその効果は、Nb量が0.002%未満では期待できず、パーライト組織の硬度の向上や延性の改善は認められない。またNb量が0.050%を超えると、疲労損傷の起点となる粗大なNb炭化物やNb炭窒化物が生成し、レールの延性や耐疲労損傷性が低下する。このためNb量を0.002〜0.050%に限定した。
(2)圧延後のオーステナイト粒の粒成長を抑制するV、Nb、Nの添加量の限定理由: 次に、V、Nb、Nのそれぞれの添加量をV(質量%)、Nb(質量%)、N(質量%)からなる下記の式(3式)で算定される範囲内に限定した理由を説明する。
高炭素含有のレール鋼の連続圧延において、析出物の適用により、圧延後に発生するオーステナイト粒の粒成長を抑制する方法を検討した。その結果、V炭化物、V窒化物、V炭窒化物、Nb炭化物、Nb炭窒物が連続圧延中に析出して、ピンニングにより圧延後のオーステナイト粒の粒成長が抑制されることを見出した。
次に、オーステナイト粒のピンニングに有効なV炭化物、V窒化物、V炭窒化物、Nb炭化物、Nb炭窒物が十分に析出する条件を検討した。その結果、これらの析出物の生成はV、Nb、Nの添加量との正の相関があることが確認された。
これらの結果から、オーステナイト粒の粒成長を十分に抑制するV、Nb、Nの添加量の範囲を実験により検討した。その結果、V(質量%)、Nb(質量%)の添加量、さらに、Vの窒化物、V、Nbの炭窒物の形成を促進させるために添加するN(質量%)の添加量には、それぞれ単位添加量当たりの寄与率が異なることが確認され、この寄与率を実験により求め、下記の式(3式)を導き出した。
さらに、この式から、V、Nb、Nの最適な添加量範囲を実験により検討した。その結果、下記の式(3式)から求められるPC値を、0.30≧PC≧0.04の範囲に治めることにより、連続圧延後のオーステナイト粒の粒成長が十分に抑制されることを知見した。
なお、V、Nb、Nの添加量の組合せにより、PC値が上記の範囲外になった場合は、連続圧延後のオーステナイト粒の粒成長が十分に抑制されず、熱処理後のパーライト組織の延性が十分に向上しない。したがって、PC値が上記の範囲外になったとしても、延性の向上は図れないが、レールの諸特性に悪影響を与えるものではない。
PC=V(質量%)+10×Nb(質量%)+5×N(質量%)………(式3)
ここで、NはV窒化物、V炭窒化物、Nb炭窒物の形成を促進させるために添加されており、Nのみの単独添加では上記の析出物が形成されず、オーステナイト粒の粒成長抑制効果はない。したがって、上記のオーステナイト粒の粒成長抑制効果を得るには、V単独、Nb単独、VとNbの複合添加、VとNの複合添加、NbとNの複合添加、V、NbとNの複合添加の場合に限られ、上記の式(3式)の算定においては、Nの単独添加についてはその量を0(質量%)として取り扱う。
なお、上記のN添加量の限定理由でも説明したように、レール鋼においては、Nは不純物として最大0.0050%程度含まれるが、V窒化物、V炭窒化物、Nb炭窒物の形成を促進させるには、Nは少なくとも0.0060%以上の添加が必要である。したがって、上記の式(3式)の算定においては、不純物レベルのN量についてはその量を0(質量%)として取り扱う。
(3)1パス当たりの断面減少率の限定理由:
仕上げ圧延時の1パス当たりの断面減少率を2〜30%の範囲に限定した理由を説明する。仕上げ圧延時の1パス当たりの断面減少率が30%を超えると、熱間圧延後の加工発熱量が大きく、圧延後の頭部表面温度が大きく上昇し、頭部のオーステナイト粒が粗大化し、レールの延性が確保できない。さらに、レール圧延において成形性の確保が困難となる。また、仕上げ圧延時の1パス当たりの断面減少率が2%未満では、レール頭部のオーステナイト粒を再結晶させるのに必要な最低限の歪み量を確保できず、オーステナイト粒が微細化せず、レールの延性が確保できない。このため、仕上げ圧延時の1パス当たりの断面減少率を2〜30%の範囲に限定した。
(4)最大圧延パス間時間の限定理由:
連続圧延時の最大圧延パス間時間(S)を、鋼の炭素量(C、mass%)、圧延時の最大レール頭部表面温度(T、℃)、パス回数(P、回)からなる下記の式(1式、2式)で算定される値以下に限定した理由を説明する。
高炭素含有のレール鋼において、最大圧延パス間時間の増大により、オーステナイト粒が粗大化する要因を解析した結果、オーステナイト粒の粒成長は、鋼の炭素量、連続仕上げ圧延時の最大レール頭部表面温度との正の相関があることが確認された。引き続き解析を進めた結果、パス回数3回以上の連続仕上げ圧延においては、圧延パス回数との正の相関があることが確認された。
これらの結果から、オーステナイト粒を粗大化させない最適な最大圧延パス間時間と鋼の炭素量(C、mass%)、連続仕上げ圧延時の最大レール頭部表面温度(T、℃)、圧延パス回数(P、回)との関係を重相関により解析を行った。その結果、連続仕上げ圧延のパス回数が2回の場合は、鋼の炭素量と連続仕上げ圧延時の最大レール頭部表面温度からなる下記の式(1式)、連続仕上げ圧延のパス回数が3回以上の場合は、鋼の炭素量、連続仕上げ圧延時の最大レール頭部表面温度、パス回数からなる下記の式(2式)で算定される値(CPT1、CPT2)以下に連続圧延時の最大圧延パス間時間(S、sec )を制御することにより、圧延パス間でのオーステナイト粒の粒成長が抑制され、熱間連続圧延後のオーステナイト粒が微細化することを知見した。
CPT1= 800/(C×T) ……………(式1)
CPT2=2400/(C×T×P) ………(式2)
S(sec )≦CPT1、CPT2
ここで、最大パス間時間について定義する。最大パス間時間とは、本発明においては、連続圧延における1パス毎の熱間圧延時の経過時間の最大値を示すものである。したがって3パス連続圧延の場合、1パス目と2パス目の経過時間と2パス目と3パス目の経過時間の内、大きな方の値を最大パス間時間として取り扱う。
なお、1式、2式中のCは炭素量(mass%)、Tは連続仕上げ圧延時の最大レール頭部表面温度(℃)、Pは圧延パス回数(回)である。いずれの値も正の値を取り、Pは自然数である。
また、圧延時の最大レール頭部表面温度とは、連続圧延する場合の各パスでのレール頭部表面における最大値である。
(5)熱間圧延直後の頭部加速冷却条件の限定理由:
熱間連続圧延直後のレール頭部表面の加速冷却速度、加速冷却停止温度を上記請求範囲に限定した理由について詳細に説明する。
まず、加速冷却速度の範囲について説明する。熱間連続圧延後のレール頭部表面の冷却速度が5℃/sec 未満では、加速冷却中にオーステナイト粒が粗大化し、レール頭部の延性が低下する。またレール頭部表面の冷却速度が30℃/sec を超えると、加速冷却後に発生するレール頭部内部からの復熱量が多く、レール頭部表面の温度が上昇するためオーステナイト粒が粗大化し、レール頭部の延性が低下する。このため、レール頭部表面の加速冷却速度の範囲を5〜30℃/sec の範囲に限定した。
次に、加速冷却温度の範囲について説明する。950℃を超えた温度でレール頭部表面の加速冷却を停止すると、鋼の炭素量によっては、加速冷却終了後にオーステナイト粒の粒成長が著しく、オーステナイト粒が粗大化してレール頭部の延性が低下する。また750℃未満までレール頭部表面の加速冷却を行うと、冷却速度によっては、加速冷却後に発生するレール頭部内部からの復熱量が多く、レール頭部表面の温度が上昇するためオーステナイト粒が粗大化し、レール頭部の延性が低下する。このため加速冷却を950〜750℃まで行うことに限定した。
(6)熱間圧延後の頭部加速冷却条件の限定理由:
熱間連続圧延後に行われる最終熱処理のレール頭部表面の加速冷却速度、加速冷却停止温度を上記請求範囲に限定した理由について詳細に説明する。
まず、加速冷却速度開始温度について説明する。レール頭部表面の加速冷却速度開始温度が700℃未満になると、加速冷却前にパーライト変態が始まり、レール頭部の高硬度が図れず、耐摩耗性が確保できない。また鋼の炭素量や合金成分によっては、初析セメンタイト組織が生成し、レール頭部表面の延性が低下する。このためレール頭部表面の加速冷却速度開始温度を700℃以上とした。
次に、加速冷却速度の範囲について説明する。レール頭部表面の加速冷却速度が2℃/sec 未満では、本レール製造条件ではレール頭部の高硬度が図れず、レール頭部の耐摩耗性の確保が困難となる。さらに、鋼の炭素量や合金成分によっては初析セメンタイト組織が生成し、レールの頭部の延性が低下する。また、加速冷却速度が30℃/sec を超えると、本成分系ではマルテンサイト組織が生成し、レール頭部の延性が大きく低下する。このため、レール頭部表面の加速冷却速度の範囲を2〜30℃/sec の範囲に限定した。
次に、加速冷却温度の範囲について説明する。600℃を超えた温度でレール頭部の加速冷却を停止すると、加速冷却終了後にレール内部から過大な復熱が発生する。この結果、温度上昇によりパーライト変態温度が上昇し、パーライト組織の高硬度が図れず、耐摩耗性を確保できない。また、パーライト組織が粗大化してレール頭部の延性も低下する。このため、少なくとも600℃まで加速冷却を行うことを限定した。
なお、レール頭部の加速冷却を終了する温度の下限は特に限定してないが、レール頭部表面の硬度を確保し、かつ頭部内部の偏析部等に生成しやすいマルテンサイト組織の生成を防止するには、実質的に400℃が下限となる。
ここで、レールの部位について説明する。図1はレール部位の呼称を示したものである。「レール頭部」とは、図2に示す頭頂部(符号:1)および頭部コーナー部(符号:2)を含む部分である。圧延時のレール頭部表面温度は、頭頂部(符号:1)および頭部コーナー部(符号:2)の頭部表面の温度を制御することにより、圧延時のオーステナイト粒の微細化が図れ、レールの延性を向上させることができる。
また、上記に説明した熱間連続圧延直後の熱処理、さらに、熱間連続圧延後に行われる熱処理における加速冷却開始温度、加速冷却速度、加速冷却停止温度は、図1に示す頭頂部(符号:1)および頭部コーナー部(符号:2)の頭部表面、または、頭部表面から深さ5mmの範囲で測温すれば、レール頭部の全体を代表させることができ、この部分の温度や冷却速度を制御することにより、耐摩耗性に優れた微細なパーライト組織を得ることができる。
本製造方法では、特に冷媒については限定していないが、所定の冷却速度を確保し、レール各部位において、冷却条件の制御を確実に行うため、エアー、ミスト、エアーとミストの混合冷媒を用いて、レール各部位の外表面に所定の冷却を行うことが望ましい。
なお、本製造方法によって製造された鋼レールの頭部の金属組織はパーライト組織であることが望ましいが、成分系、さらには加速冷却条件の選択によっては、パーライト組織中に微量な初析フェライト組織、初析セメンタイト組織およびベイナイト組織が生成することがある。しかし、パーライト組織中にこれらの組織が微量に生成してもレールの疲労強度や延性に大きな影響を及ぼさないため、本製造方法によって製造された鋼レールの頭部の組織としては、若干の初析フェライト組織、初析セメンタイト組織およびベイナイト組織の混在も含んでいる。
次に、本発明の実施例について説明する。
表1に供試レール鋼の化学成分を示す。
表2は、表1に示す供試レール鋼を用いて、本発明のレール製造方法で製造したレールの成分(炭素量、PC値)、熱間圧延条件、熱処理条件、さらにはレール頭部のミクロ組織、硬さ、引張試験の全伸び値を示す。
表3は、表1に示す供試レール鋼を用いて、比較レール製造方法で製造したレールの成分(炭素量、PC値)、熱間圧延条件、熱処理条件、さらにはレール頭部のミクロ組織、硬さ、引張試験の全伸び値を示す。
ここで、本明細書中の図について説明する。図1はレール各部位の呼称を示したものである。図1において、1は頭頂部、2は頭部コーナー部である。図2は表2と表3に示す引張試験における試験片採取位置を図示したものである。また、図3は表2に示す本発明のレール製造方法で製造したレールと表3に示す比較レール製造方法で製造したレールの頭部引張試験結果における炭素量と全伸び値の関係を示したものである。
なお、レールの構成は以下のとおりである。
(1)本発明熱処理レール(24本)
上記成分範囲内のレール鋼を、上記限定範囲内の熱間圧延条件、熱処理条件で製造したレール:符号1〜4、6〜15。
上記成分範囲内で、かつPC値が上記範囲内のレール鋼を、上記限定範囲内の熱間圧延条件、熱処理条件で製造したレール:符号5、16〜24。
(2)比較熱処理レール(16本)
上記成分範囲内のレール鋼を、上記限定範囲外の熱間圧延条件で製造したレール:符号25〜33。
上記成分範囲内のレール鋼を、上記限定範囲外の熱処理条件で製造したレール:符号34〜40。
また、各種試験条件は下記のとおりである。
(3)頭部引張試験
試験機:万能小型引張試験機
試験片形状:JIS4号相似
平行部長さ:25mm、平行部直径:6mm、伸び測定評点間距離:21mm
試験片採取位置:レール頭部表面下5mm(図2参照)
引張速度:10mm/min、試験温度:常温(20℃)
表2、表3に示すように、本発明レール鋼(符号:1〜24)は、比較レール鋼(符号:25〜40)と比べて、連続圧延時の最大圧延パス間時間を、レール鋼の炭素量、連続圧延時の最大レール頭部表面温度、パス回数からなる式で算定される値以下に制御し、さらには圧延直後に熱処理を行うことにより、オーステナイト組織の微細化を図り、これに加えて、圧延後に適切な温度範囲と冷却速度で熱処理を行うことにより、延性に悪影響を与える初析セメンタイト組織やマルテンサイト組織などを生成させず、耐摩耗性と延性を確保した微細なパーライト組織とすることができる。
図3に示すように、本発明レール鋼(符号:1〜24)は、連続圧延時の最大圧延パス間時間を制御しなかった比較レール鋼(符号:25〜33)と比べて、いずれの炭素量においてもレール頭部の延性が向上している。これらの連続圧延時の最大圧延パス間時間の制御に加えて、さらに連続圧延後に発生するオーステナイト粒の粒成長を抑制するため、PC値(3式)の範囲に従い、V、Nb、Nを添加した本発明レール鋼(符号:5、16〜24)は、いずれの炭素量においても、レール頭部の延性がより一層向上している。
また表2、表3に示すように、本発明レール鋼(符号:1〜24)は、連続圧延後の熱処理を適切に行わなかった比較レール鋼(符号:34〜40)と比べて、いずれの炭素量においてもレール頭部の延性が確保されている。
本発明のレール製造方法で製造したレールの頭部断面表面位置での呼称を示した図。 表2と表3に示す引張試験における試験片採取位置を示した図。 表2に示す本発明レール鋼(V、Nb、N添加量未制御鋼、符号:1〜4、6〜15)、本発明レール鋼(V、Nb、N添加量制御鋼、符号:5、16〜24)と表3に示す比較レール鋼(符号:25〜40)の引張試験結果における炭素量と全伸び値の関係を示した図。
符号の説明
1:頭頂部
2:頭部コーナー部

Claims (15)

  1. 質量%で、C:0.85超〜1.40%を含有するレール圧延用鋼片からレールを製造するに際して、1パス当たりの断面減少率が2〜30%のパス回数2回の連続仕上げ圧延において、圧延パス間時間(S、sec)が、鋼の炭素量(C、mass%)、圧延時の最大レール頭部表面温度(T、℃)からなる下記の式1で示される値(CPT1)に対して、S≦CPT1となるように連続圧延を行うことを特徴とする耐摩耗性および延性に優れた高炭素鋼レールの製造方法。
    CPT1=800/(C×T) …………………(式1)
  2. 質量%で、C:0.85超〜1.40%を含有するレール圧延用鋼片からレールを製造するに際して、1パス当たりの断面減少率が2〜30%のパス回数3回以上の連続仕上げ圧延において、最大圧延パス間時間(S、sec)が、鋼の炭素量(C、mass%)、圧延時の最大レール頭部表面温度(T、℃)、パス回数(P、回)からなる下記の式2で示される値(CPT2)に対して、S≦CPS2となるように連続圧延を行うことを特徴とする耐摩耗性および延性に優れた高炭素鋼レールの製造方法。
    CPT2=2400/(C×T×P) …………(式2)
  3. 成分が質量%で、さらに、
    Si:0.05〜2.00%、
    Mn:0.05〜2.00%
    の1種または2種を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなることを特徴とする請求項1または2に記載の耐摩耗性および延性に優れた高炭素鋼レールの製造方法。
  4. 成分が質量%で、さらに、
    Cr:0.05〜2.00%、
    Mo:0.01〜0.50%
    の1種または2種を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の耐摩耗性および延性に優れた高炭素鋼レールの製造方法。
  5. 成分が質量%で、さらに、
    B :0.0001〜0.0050%
    を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の耐摩耗性および延性に優れた高炭素鋼レールの製造方法。
  6. 成分が質量%で、さらに、
    Co:0.003〜2.00%、
    Cu:0.01〜1.00%
    の1種または2種を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の耐摩耗性および延性に優れた高炭素鋼レールの製造方法。
  7. 成分が質量%で、さらに、
    Ni:0.01〜1.00%
    を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の耐摩耗性および延性に優れた高炭素鋼レールの製造方法。
  8. 成分が質量%で、さらに、
    Ti:0.0050〜0.0500%、
    Mg:0.0005〜0.0200%、
    Ca:0.0005〜0.0150%
    の1種または2種以上を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の耐摩耗性および延性に優れた高炭素鋼レールの製造方法。
  9. 成分が質量%で、さらに、
    Al:0.0100〜1.00%
    を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の耐摩耗性および延性に優れた高炭素鋼レールの製造方法。
  10. 成分が質量%で、さらに、
    Zr:0.0001〜0.2000%
    を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなることを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項に記載の耐摩耗性および延性に優れた高炭素鋼レールの製造方法。
  11. 成分が質量%で、さらに、
    N :0.0060〜0.0200%
    を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなることを特徴とする請求項1〜10のいずれか1項に記載の耐摩耗性および延性に優れた高炭素鋼レールの製造方法。
  12. 成分が質量%で、さらに、
    V :0.005〜0.50%、
    Nb:0.002〜0.050%
    の1種または2種を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなることを特徴とする請求項1〜11のいずれか1項に記載の耐摩耗性および延性に優れた高炭素鋼レールの製造方法。
  13. 請求項12において、鋼レールの化学成分からなる下記の式3で示される値(PC)が、0.30≧PC≧0.04の範囲となることを特徴とする耐摩耗性および延性に優れた高炭素鋼レールの製造方法。
    PC=V(質量%)+10×Nb(質量%)+5×N(質量%)………(式3)
  14. 熱間連続圧延後直ちに、レール頭部表面を冷却速度5〜30℃/secで950〜750℃まで加速冷却することを特徴とする請求項1〜13のいずれか1項に記載の耐摩耗性および延性に優れた高炭素鋼レールの製造方法。
  15. 熱間連続圧延後、700℃以上の温度から、レール頭部表面を冷却速度2〜30℃/secで少なくとも600℃まで加速冷却し、その後放冷することを特徴とする請求項1〜14のいずれか1項に記載の耐摩耗性および延性に優れた高炭素鋼レールの製造方法。
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