JP2005290147A - 反応性多分岐多糖誘導体 - Google Patents
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Abstract
Description
本発明は、直鎖状多糖とは異なる物性や生理活性が期待される多分岐多糖の誘導体、特に反応性に優れた多分岐多糖誘導体及びその製造方法、並びに前記多分岐多糖誘導体を用いたゲル化組成物、特に医療用接着剤、癒着防止材料および創傷被覆材料等として有用な医療用ゲル化組成物、この組成物を用いるゲル化方法並びにゲル化により得られるゲルおよびこのゲルを含む人工組織に関する。
手術時や受傷時においては、生体、特に血管に生じた破孔や損傷、接合部を安全、確実かつ迅速に封鎖する必要がある。こうした目的には、縫合や吻合時に人工繊維片を補助として用いるか、ゲル化材料が用いられてきた。
人工繊維片としては、天然の線維状のコラーゲンが生化学的な止血作用を奏することを利用して、これを成形した止血材料が記載されている(例えば、特許文献1:特願2002−56901号)。しかしながら、天然の線維状のコラーゲンは生体内での分解性が低く、長期間残留することによって異物として種々の問題を引き起こす可能性がある。そこで、抗原決定基を酵素処理またはアルカリ処理して抗原性を低下させて得られるアテロコラーゲンも用いられる(例えば、特許文献2:特開平6−339483号公報および特許文献3:特開平6−197946号公報)。しかし、これらのアテロコラーゲンは止血性が弱いため、再線維化に加え架橋を施さないと、止血するまでの一定期間、生体内に溶解させずに留置させることは難しい。しかし、強度に架橋を加えたアテロコラーゲンは、生体適合性が低く、炎症性を発現するという報告がある(非特許文献1:Koide et al.,Journal of Biomedical Materials Research,27(1)(1993)p.79-87)。
ゲル化材料としては、現在、外科用接着剤、止血剤として用いられている医療用ゲル材料の殆どは、人の血漿蛋白質や、牛や豚の骨や皮などの生体材料(フィブリノゲン、ゼラチン、コラーゲンなど)を原料にして製造されている。例えば、特許文献4(特開平8−196614号公報)は、エチレンオキシドにより滅菌されたコラーゲン蛋白部分加水分解物質および多価フェノール化合物を主成分とする糊剤成分およびアルデヒド類を主成分とする硬化成分を含む生体用止血乃至組織接着剤を開示している。ここで、コラーゲン蛋白部分加水分解物質はゼラチンまたは膠である。しかし、一般に生体由来材料には肝炎ウイルス、発熱性物質、アレルゲン、牛海綿状脳症(BSE)等が含まれているおそれがあり、感染症等に対する懸念から他の材料に置換えることが望ましい。
そこで、人体や動物に由来する原料を用いることなく製造された、化学合成による外科用接着剤や止血剤も検討されている。例えば、特許文献5(特開平10−314294号公報)には特定構造の直鎖ジアミンの塩を架橋剤として用いた、分子内にカルボキシル基を有する多糖類からなる水膨潤性高分子ゲルが記載されている。カルボキシル基を有する多糖類としてはアルギン酸塩またはヒアルロン酸塩が、また、直鎖ジアミンの塩としてはN−ヒドロキシコハク酸イミド塩が挙げられている。
また、特許文献6(特許第3107726号)には、カルボキシル基を有する多糖に、カルボニルジイミダゾール、カルボニルトリアゾール、ヨウ化クロロメチルピリジリウム(CMP−J)、ヒドロキシベンゾトリアゾール、p−ニトロフェノールp−ニトロフェニルトリフルオロアセテート、N−ヒドロキシスクシンイミド等と反応させてなる化合物を、特定構造のポリアミンで架橋するゲル化方法が記載されている。この公報にはカルボキシル基を有する多糖としてカルボキシメチルセルロースも挙げられているが、実施可能な特性を備えたカルボキシメチルセルロースを用いた医療用接着材料は開示されていない。また、ポリアミンとしては直鎖ジアミンのみが記載されている。
化学合成品として現段階で実用化されているのは、シアノアクリレート系、およびポリエチレングリコール系の材料のみであるが、その性能や毒性に基づく制約から適用はごく限られたものにとどまっている。
本発明は、上記の医療用途その他に幅広く使用できるゲル化組成物およびこれに利用可能な新規構造を有する多分岐多糖高分子を提供することを課題とする。
本発明者らは、特異な多分岐構造を有する多分岐多糖を生体適合性のハイドロゲル等として先に提案した(特開2003−252904号公報参照)が、この多分岐多糖に特定の基を導入することにより、ゲル化材料としてその特性を細かく調整することが可能な反応性多糖誘導体を開発することに成功し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、以下の反応性に優れた多分岐多糖誘導体及びその製造方法、前記誘導体を用いた、特に医療用として有用なゲル化組成物、この組成物を用いたゲル化方法、並びにゲル化により得られるゲルおよびこのゲルを含む人工組織を提供する。
本発明は、分子形状が球に近く(球状体)分子同士の「絡み合い」が少ない結果として粘性が小さく、また、鎖状分子と比べて分子全体の形状の変化が少ないという特異な性質を有する多分岐多糖の水酸基を反応性の官能基に置換した反応性多分岐多糖を提供したものである。前記球状多糖の表面またはそれに近い層の糖単位に修飾基(前記式(I)の置換基)を有することから、安定的かつ優れた反応性が得られる。
すなわち、本発明は以下の1〜20からなる。
1.多分岐多糖分子中の水酸基の少なくとも一部の水素原子を
(式中、Zは、
(a)水素原子もしくは金属原子、または
(b)次式:
で表わされるN−スクシンイミド基であり、nは1以上の数である。)で置換してなる多分岐多糖誘導体。
2.多分岐多糖の分岐度が0.05〜1.00の範囲である前記1に記載の多分岐多糖誘導体。
3.多分岐多糖誘導体が、D−グルコース、D−マンノース、D−ガラクトース、D−アロース、D−アルトロース、D−イドース、D−タロース、D−キシロース、D−リボースおよびD−アラビノースからなる群から選択される1種または複数の単糖類を構成単位として含む前記1または2に記載の多分岐多糖誘導体。
4.構成単位当たり平均して0.01個〜3個の水素原子が前記式(I)の置換基で置換されている前記1乃至3のいずれかに記載の多分岐多糖誘導体。
5.多分岐多糖が無水糖の重合反応によって得られるものである前記1乃至4のいずれかに記載の多分岐多糖誘導体。
6.無水糖がピラノース環またはフラノース環に存在する立体的に縮合可能な任意の2つの水酸基を脱水縮合してなるものである前記5に記載の多分岐多糖誘導体。
7.前記式(I)中のnが2である前記1に記載の多分岐多糖誘導体。
8.多分岐多糖誘導体を無水ジカルボン酸と反応させ、所望に応じてさらに金属塩と反応させることを特徴とする、前記1の前記式(I)におけるZが水素原子もしくは金属原子である多分岐多糖誘導体化合物の製造方法。
9.無水ジカルボン酸が無水コハク酸である前記8に記載の多分岐多糖誘導体化合物の製造方法。
10.多分岐多糖誘導体を無水ジカルボン酸と反応させた後、さらにN−ヒドロキシスクシンイミドと反応させることを特徴とする、前記1の前記式(I)におけるZが前記式(II)で表わされるN−スクシンイミド基である多分岐多糖誘導体化合物の製造方法。
11.無水ジカルボン酸が無水コハク酸である前記10に記載の多分岐多糖誘導体化合物の製造方法。
12.(i)多分岐多糖分子中の水酸基の少なくとも一部の水素原子を
(式中、Zは、
(a)水素原子もしくは金属原子、または
(b)次式:
で表わされるN−スクシンイミド基であり、nは1以上の数である。)で置換してなる多分岐多糖誘導体を含む第1液と
(ii)ポリアミンを含む第2液
を含み両者の混合によりゲル化する組成物。
13.多分岐多糖誘導体が、透析によって低分子量の不純物を除去したものである前記12に記載のゲル化組成物。
14.ポリアミンがポリアリルアミンである前記12に記載のゲル化組成物。
15.ポリアミンのアミノ基の少なくとも一部がアシル基またはアニオンと反応してアミドまたは塩を形成しており、これによってゲル化特性が調整される前記12に記載のゲル化組成物。
16.ゲルがヒトもしくは動物の任意の組織または人工組織の接着、吻合、閉鎖、閉塞、分離、被覆を含む用途に用いられる前記12乃至15のいずれかに記載の医療用ゲル化組成物。
17.前記12乃至16のいずれかに記載のゲル化組成物の第1液と第2液とを反応させて得られるゲル。
18.前記12乃至16のいずれかに記載のゲル化組成物の第1液と第2液とを同時または時間をおいて適用することによりヒトもしくは動物の任意の組織または人工組織の接着、吻合、閉鎖、閉塞、分離または被覆を行なう方法。
19.第2液中のポリアミンについて、アミノ基の少なくとも一部をアシル基またはアニオンと反応させてアミドまたは塩を形成させることによりゲル化特性を調整する前記18に記載のヒトもしくは動物の任意の組織または人工組織の接着、吻合、閉鎖、閉塞、分離または被覆を行なう方法。
20.前記18または19に記載の方法により医療用ゲル組成物が付与された人工組織。
1.多分岐多糖分子中の水酸基の少なくとも一部の水素原子を
(a)水素原子もしくは金属原子、または
(b)次式:
2.多分岐多糖の分岐度が0.05〜1.00の範囲である前記1に記載の多分岐多糖誘導体。
3.多分岐多糖誘導体が、D−グルコース、D−マンノース、D−ガラクトース、D−アロース、D−アルトロース、D−イドース、D−タロース、D−キシロース、D−リボースおよびD−アラビノースからなる群から選択される1種または複数の単糖類を構成単位として含む前記1または2に記載の多分岐多糖誘導体。
4.構成単位当たり平均して0.01個〜3個の水素原子が前記式(I)の置換基で置換されている前記1乃至3のいずれかに記載の多分岐多糖誘導体。
5.多分岐多糖が無水糖の重合反応によって得られるものである前記1乃至4のいずれかに記載の多分岐多糖誘導体。
6.無水糖がピラノース環またはフラノース環に存在する立体的に縮合可能な任意の2つの水酸基を脱水縮合してなるものである前記5に記載の多分岐多糖誘導体。
7.前記式(I)中のnが2である前記1に記載の多分岐多糖誘導体。
8.多分岐多糖誘導体を無水ジカルボン酸と反応させ、所望に応じてさらに金属塩と反応させることを特徴とする、前記1の前記式(I)におけるZが水素原子もしくは金属原子である多分岐多糖誘導体化合物の製造方法。
9.無水ジカルボン酸が無水コハク酸である前記8に記載の多分岐多糖誘導体化合物の製造方法。
10.多分岐多糖誘導体を無水ジカルボン酸と反応させた後、さらにN−ヒドロキシスクシンイミドと反応させることを特徴とする、前記1の前記式(I)におけるZが前記式(II)で表わされるN−スクシンイミド基である多分岐多糖誘導体化合物の製造方法。
11.無水ジカルボン酸が無水コハク酸である前記10に記載の多分岐多糖誘導体化合物の製造方法。
12.(i)多分岐多糖分子中の水酸基の少なくとも一部の水素原子を
(a)水素原子もしくは金属原子、または
(b)次式:
(ii)ポリアミンを含む第2液
を含み両者の混合によりゲル化する組成物。
13.多分岐多糖誘導体が、透析によって低分子量の不純物を除去したものである前記12に記載のゲル化組成物。
14.ポリアミンがポリアリルアミンである前記12に記載のゲル化組成物。
15.ポリアミンのアミノ基の少なくとも一部がアシル基またはアニオンと反応してアミドまたは塩を形成しており、これによってゲル化特性が調整される前記12に記載のゲル化組成物。
16.ゲルがヒトもしくは動物の任意の組織または人工組織の接着、吻合、閉鎖、閉塞、分離、被覆を含む用途に用いられる前記12乃至15のいずれかに記載の医療用ゲル化組成物。
17.前記12乃至16のいずれかに記載のゲル化組成物の第1液と第2液とを反応させて得られるゲル。
18.前記12乃至16のいずれかに記載のゲル化組成物の第1液と第2液とを同時または時間をおいて適用することによりヒトもしくは動物の任意の組織または人工組織の接着、吻合、閉鎖、閉塞、分離または被覆を行なう方法。
19.第2液中のポリアミンについて、アミノ基の少なくとも一部をアシル基またはアニオンと反応させてアミドまたは塩を形成させることによりゲル化特性を調整する前記18に記載のヒトもしくは動物の任意の組織または人工組織の接着、吻合、閉鎖、閉塞、分離または被覆を行なう方法。
20.前記18または19に記載の方法により医療用ゲル組成物が付与された人工組織。
(a)水素原子もしくは金属原子、または
(b)次式
第1群:
これは、多分岐多糖誘導体の水酸基を下記式の反応性スペーサ基で置換したものである。
(式中、Mは水素原子もしくは金属原子)。
上記式中、nの値は特に限定されず、式(III)の各Rにおいてそれぞれ異なっていてもよいが、後述のように活性なジカルボン酸、特に無水ジカルボン酸を用いるという点からは1〜4、好ましくは2〜3、最も好ましくは2である。
これは、多分岐多糖誘導体の水酸基を下記式の反応性スペーサ基で置換したものである。
上記式中、nの値は特に限定されず、式(III)の各Rにおいてそれぞれ異なっていてもよいが、後述のように活性なジカルボン酸、特に無水ジカルボン酸を用いるという点からは1〜4、好ましくは2〜3、最も好ましくは2である。
第1群の化合物(カルボン酸)は、末端カルボキシル基をさらに種々の基に誘導可能であることから様々な反応性を有する分岐多糖誘導体とすることができる。また、後述の第2群の化合物の製造中間体として有用である。なお、金属原子としては特に限定されないが、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属類、あるいはカルシウム等のアルカリ土類金属類が挙げられる。
第2群の化合物は、末端基(スクシンイミド基)を介してまたは脱離させて例えばポリアミンと反応させることによりゲル化させることが可能である。第2群の化合物は、ジカルボン酸HOOC(CH2)nCOOHを介してスクシンイミド基を多糖分子に連結した構造を有するが、スクシンイミド基はジカルボン酸の導入部位にのみ結合するので、ジカルボン酸の反応度(これは反応物の濃度や反応時間によって決まる。)を調整することにより多分岐多糖へのスクシンイミド基の導入制御が容易であり、また、糖分子とN−スクシンイミド基とがジカルボン酸によって隔てられ立体障害が減少することからN−スクシンイミド基のポリアミンとの反応が円滑に進行する。
多分岐多糖誘導体中に導入する修飾基の数は、多分岐多糖誘導体の使用目的や修飾基の種類、分子量によって変わるが、通常は構成単位当たり0.01個以上、好ましくは0.1個以上、より好ましくは0.4個以上であり、さらに好ましくは約1個以上の修飾基を含む。なお、置換度の上限値は、5個の糖と結合している分岐ユニットが0個、4個の糖と結合している分岐ユニットが1個、3個の糖と結合している分岐ユニットが2個、2個の糖と結合している直鎖ユニットが3個、1個の糖と結合している末端ユニットが4つであり、従って、単位構成あたり3個である。なお、導入する置換基の数は、反応原料の量比の制御等や反応時間、温度等の反応条件の制御によって容易に調整することができる。
なお、式(III)ではD−グルコースを構成単位として描いているが、本発明の多分岐多糖誘導体を構成する単糖類は特に限定されない。構成単位として使用できる単糖類の例としては、D−グルコース、D−マンノース、D−ガラクトース、D−アロース、D−アルトロース、D−イドース、D−タロース等のヘキソアルドース(6炭糖)、D−キシロース、D−リボース、D−アラビノース等のペントアルドース(5炭糖)またはこれらの誘導体が挙げられる。但し、これらに限定されるものでなく、例えば、D−フルクトース等のケトースも用い得る。また、対応するL体でもよい。
式(III)に示すタイプの多分岐多糖類は、例えば、次式
で表わされる分子内脱水糖(無水糖)を適当な開始剤の存在下に重合することにより得られる(特開2003−252904号)。無水糖としては、1,6−アンヒドロ−β−D−グルコピラノース、1,6−アンヒドロ−β−D−マンノピラノース、1,6−アンヒドロ−β−D−ガラクトピラノース、1,6−アンヒドロ−β−D−アロピラノース、1,6−アンヒドロ−β−D−アルトロピラノース等の1,6−アンヒドロ糖;1,4−アンヒドロ−β−D−リボピラノース、1,4−アンヒドロ−β−D−キシロピラノース、1,4−アンヒドロ−β−D−アラビノピラノース、1,4−アンヒドロ−β−D−リキソピラノース等の1,4−アンヒドロ糖;1,3−アンヒドロ−β−D−グルコピラノース、1,3−アンヒドロ−β−D−マンノピラノース等の1,3−アンヒドロ糖;1,2−アンヒドロ−β−D−グルコピラノース、1,2−アンヒドロ−β−D−マンノピラノース等の1,2−アンヒドロ糖;さらに5,6−アンヒドロ−β−D−グルコピラノース等の5,6−アンヒドロ糖;および3,5−アンヒドロ糖等が含まれる。これらの無水糖は、例えば、木材等の含セルロース材料のマイクロ波処理や熱分解により得ることができる。
重合開始剤としては、スルホニウムアンチモネート等の熱カチオン開始剤や光カチオン開始剤、三フッ化ホウ素、四塩化スズ、五塩化アンチモン、五フッ化リン等のルイス酸、トリフルオロメタンスルホン酸等のブレンステッド酸等のカチオン開始剤、並びにKOH等の水酸化物、tert−BuOKやZn(OMe)n等の金属アルコラートを含むアニオン開始剤を用いることができる。
式(III)で示される本発明の多分岐多糖類は大きな多分岐度を有しており、この結果、ユニークな特徴を有する。例えば、分子形状が球に近く(球状体)分子同士の「絡み合い」が少ない結果として粘性が小さい。また、鎖状分子と比べて分子全体の形状の変化が少なく、前記球状体の表面またはそれに近い層の糖単位に集中して修飾基(前記式(I)の置換基)が導入されやすく、かつ、導入された修飾基が常に表面層に存在することから、安定的かつ優れた反応性が得られる。
本願において、分岐度は以下のいずれかで定義される。
(1)Frechetの式:
分岐度=(分岐ユニット数+ポリマー末端数)/(分岐ユニット数+ポリマー末端数+直鎖ユニット数)
(2)Freyの式:
分岐度=(分岐ユニット数+ポリマー末端数−分子数)/(分岐ユニット数+ポリマー末端数+直鎖ユニット数−分子数)
(1)Frechetの式:
分岐度=(分岐ユニット数+ポリマー末端数)/(分岐ユニット数+ポリマー末端数+直鎖ユニット数)
(2)Freyの式:
分岐度=(分岐ユニット数+ポリマー末端数−分子数)/(分岐ユニット数+ポリマー末端数+直鎖ユニット数−分子数)
ここで、分岐ユニット数とは分岐を有する糖単位(すなわち、隣接する糖3分子以上と結合している糖単位)の数であり、直鎖ユニット数とは分岐を有さず隣接する2分子とのみ結合している糖単位の数であり、ポリマー末端数とは隣接する1分子とのみ結合している糖単位の数である。また、分子数は測定対象とする分子集団に含まれる多糖分子の合計数である。
重合体の分子量が低いときには中心核の影響が強く出るためFreyの式がより正確であるが、重合度が増すに連れて両者の値は接近し、十分大きな重合度ではほぼ等しくなる。以下の説明および例は、特に断らない限り、Frechetの式による。直鎖状ポリマーの場合は分岐ユニット数=0、直鎖ユニット数=構成単位数、ポリマー末端数=2であるから、十分大きな重合度であれば、分岐度はほぼ0である。また、直鎖ユニットを含まないデンドリマーの場合は、分岐度は1である。分岐度の範囲は、構成単位や多糖誘導体の用途にもよるが、通常は0.05〜1.00、好ましくは0.4〜1.0の範囲である。分岐度0.05未満では一般には多分岐多糖としての特徴が十分に現れない。多糖は前記構成糖の1種のみから構成されるホモ多糖、またはこれらの構成糖類の2種以上から構成されるヘテロ多糖でもよい。
(B)多分岐多糖誘導体の製造方法
本発明の多分岐多糖誘導体のうち、上記第1群の化合物は、特開2003−252904号公報に記載の方法により合成した多分岐多糖分子と活性なジカルボン酸とを反応させることにより得られる。
本発明で有用な活性なジカルボン酸としては無水ジカルボン酸が挙げられる。このような無水ジカルボン酸の例としては、無水コハク酸、無水グルタル酸、無水アジピン酸が挙げられるが、コスト等の点から見て無水コハク酸が好ましい。
本発明の多分岐多糖誘導体のうち、上記第1群の化合物は、特開2003−252904号公報に記載の方法により合成した多分岐多糖分子と活性なジカルボン酸とを反応させることにより得られる。
本発明で有用な活性なジカルボン酸としては無水ジカルボン酸が挙げられる。このような無水ジカルボン酸の例としては、無水コハク酸、無水グルタル酸、無水アジピン酸が挙げられるが、コスト等の点から見て無水コハク酸が好ましい。
多分岐多糖と無水ジカルボン酸は、無水条件下、好ましくは適当な触媒の存在下に反応させる。
触媒の例としては、ピリジン、ジメチルアミノピリジン等の有機求核試薬やパラトルエンスルホン酸、スルホン酸、硫酸等の酸触媒等が挙げられる。
反応溶媒としては、ピリジン、トルエン、酢酸エチル等を用いることができる。従って、例えば、ピリジンを溶媒に用いる場合には特に触媒を添加する必要はない。
もっとも、これらは例示であって上記と同様の機能・性質を有する他の触媒や溶媒も利用できる。
触媒の例としては、ピリジン、ジメチルアミノピリジン等の有機求核試薬やパラトルエンスルホン酸、スルホン酸、硫酸等の酸触媒等が挙げられる。
反応溶媒としては、ピリジン、トルエン、酢酸エチル等を用いることができる。従って、例えば、ピリジンを溶媒に用いる場合には特に触媒を添加する必要はない。
もっとも、これらは例示であって上記と同様の機能・性質を有する他の触媒や溶媒も利用できる。
反応温度及び反応時間は、反応溶媒や触媒の種類、所望の置換度により決定される。所望の置換度(多分岐多糖誘導体中に導入することが修飾基の数)は、最終用途に応じて決定される。すなわち、多分岐多糖と無水ジカルボン酸の反応によって、前記式(Ia)の置換基を導入した多分岐多糖誘導体はさらに別の誘導体に転換することができるが、このような誘導体で望まれる置換度に応じて多分岐多糖と無水ジカルボン酸の反応条件を決定すればよい。
通常は、反応温度は0〜180℃の範囲、好ましくは4〜60℃の範囲であり、反応時間は60分〜72時間、好ましくは12〜48時間である。
通常は、反応温度は0〜180℃の範囲、好ましくは4〜60℃の範囲であり、反応時間は60分〜72時間、好ましくは12〜48時間である。
用いる多分岐多糖と無水ジカルボン酸の量比は、所望の置換度に応じて選択される。例えば、糖単位をn個含む多分岐多糖において、1糖単位当たりm個の水酸基を置換する(置換度m)場合は、通常、n×mの1〜10倍程度、好ましくは1〜5倍程度、最も好ましくは1〜2倍の無水ジカルボン酸を用いればよい。
なお、カルボン酸をその金属塩に転換する方法は慣用の方法によればよい。
なお、カルボン酸をその金属塩に転換する方法は慣用の方法によればよい。
上記第2群の化合物は、上のプロセスで得られたカルボキシル化多糖(多分岐多糖ポリカルボン酸)とN−ヒドロキシスクシンイミドを反応させることにより得ることができる。多糖とN−ヒドロキシスクシンイミドとの量比は、多糖に含有されるカルボキシル基の量によるが、通常、カルボキシル基に対して0.25モル以上のN−ヒドロキシスクシンイミドを用いる。カルボキシル化多糖とN−ヒドロキシスクシンイミドとの間のエステル化反応は、好ましくは水溶性カルボジイミドの存在下で行なう。水溶性カルボジイミドの存在によりエステル化反応が顕著に促進される。
水溶性カルボジイミドとしては、例えば、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド、1−シクロヘキシル−3−(2−モルホリニル−4−エチル)カルボジイミド、またはこれらの塩酸塩もしくはスルホン酸塩等が好ましく使用できる。エステル化反応の反応時間は特に限定されるものではないが、1分間〜3時間が好ましい。また、反応温度も特に限定されないが、0〜40℃が好ましい。水溶性カルボジイミドに加え、1−ヒドロキシルベンゾトリアゾール(HOBt)の存在下に反応させることによりエステル化合物がさらに効率良く生成する。可溶性カルボジイミドおよび/または1−ハイドロキシルベンゾトリアゾール(HOBt)の添加量はN−ヒドロキシスクシンイミドと等モル程度である。
以上において、得られた多分岐多糖誘導体は、好ましくは透析により低分子不純物を除去することが望ましい。例えば、透過分子量14000以下の透析膜を用いて、2時間〜3日間程度、好ましくは1〜2日間程度かけて行なうことが好ましい。特に好適な透析は、室温で蒸留水中、所定時間(例えば、1時間)おきに蒸留水を交換することで行なうことができる。
(C)ゲル化組成物
本発明のゲル化組成物は、簡単に言えば、
(i)上記多分岐多糖誘導体分子を含む第1液と
(ii)ポリアミンを含む第2液
を含むゲル化組成物である。
本発明の典型的態様では、反応性多分岐多糖分子は球状分子であり、その表面またはこれに近い層の糖単位の水酸基が上記式(I)で表わされる反応性置換基で置換されていている(球状分子内部の水酸基も置換されていてもよい)。複数の反応性多分岐多糖誘導体が存在する系中にポリアミンを添加すると、反応性多分岐多糖誘導体表面の上記反応性置換基を介して分子間に架橋または相互作用を生じさせる。この結果、ゲル体が生じることになる。
本発明のゲル化組成物は、簡単に言えば、
(i)上記多分岐多糖誘導体分子を含む第1液と
(ii)ポリアミンを含む第2液
を含むゲル化組成物である。
本発明の典型的態様では、反応性多分岐多糖分子は球状分子であり、その表面またはこれに近い層の糖単位の水酸基が上記式(I)で表わされる反応性置換基で置換されていている(球状分子内部の水酸基も置換されていてもよい)。複数の反応性多分岐多糖誘導体が存在する系中にポリアミンを添加すると、反応性多分岐多糖誘導体表面の上記反応性置換基を介して分子間に架橋または相互作用を生じさせる。この結果、ゲル体が生じることになる。
具体的には上記の多分岐多糖誘導体分子とポリアミン分子とが反応してHO−N(COCH2)2(すなわち、N−ヒドロキシスクシンイミド)の脱離を伴いながら、多分岐多糖誘導体分子の端部カルボキシル基(式(I)でZがHの場合におけるカルボキシル基)とポリアミン分子中の複数のアミノ基とが架橋する反応と考えられる。
ゲル化組成物は第1液と第2液とから構成されるが、第1液の主成分である反応性多分岐多糖分子は上記の通りである。第2液の主成分であるポリアミンは、分子中に2以上のアミノ基を有する化合物であり、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン等のポリアルキレンポリアミン、側鎖にアミノ基を有する次式
(式中、R1は、水素原子、炭素数1〜10個のアルキル、フェニルまたはベンジル基であり、Bは単結合または炭素数1〜10個のアルキレン、好ましくは炭素数1〜6個のアルキレンであり、Aは単結合またはヒドロキシ、カルボキシ、ハロゲン、アルコキシ、アミノもしくはアリール基により置換されていてもよい炭素数1〜10個のアルキレンまたはアルキレンにより結合された1個以上のオキシ基、カルボニル基もしくはアミノ基を表わし、pは2以上の整数であり、R1、BおよびAは上記単位ごとに異なっていてもよい。)等が挙げられる。なお、式(IV)のポリアミンにおいて定義していない末端基は、例えば水素原子またはメチル等のアルキル基である。式(IV)のポリアミンにおいて好適なポリアミンの例としてはポリアリルアミンが挙げられる。
ポリアミンの分子量は適用時に十分な流動性を有する限り特に限定されないが、例えば、ポリアリルアミンの場合、好ましい分子量は1,000〜200,000、より好ましくは2,000〜50,000程度である。
ポリアミンは、必要に応じてアミノ基の数を調整してもよい。すなわち、未反応アミノ基が残留すると使用時に悪影響を及ぼすので、予めゲル化に必要な程度以上のアミノ基は封鎖しておくことができる。
アミノ基の調整方法としては、アミノ基を本発明の反応に悪影響を及ぼさないよう保護されたアミノ基に変換する任意の方法が利用できるが、例えば、有機酸ハロゲン化物等を用いてアシル化をする方法、有機酸や無機酸を用いて塩を形成する方法等が挙げられる。有機酸ハロゲン化物の例としては、アセチルクロライド、プロピオニルクロライド、ブチリルクロライド、イソブチリルクロライド、アクリロイルクロライド、ベンゾイルクロライド、オキサリルクロライド、スクシニルクロライド等が挙げられる。有機酸の例としては、ギ酸、酢酸、プロピオン酸等のモノカルボン酸、乳酸等のヒドロキシ酸等が挙げられる。無機酸の例としては、塩酸、硫酸、次亜リン酸等が挙げられる。もっともこれらは例示であり、ハロゲン化物はアシル化に有効な他の酸ハロゲン化物(例えば、カルボン酸残基を含むものや臭化物等)でもよいし、アミノ基と反応して塩を形成する任意の酸、特に酸を介して複数のポリアミンの結合が生じない有機酸および無機酸が使用できる。
ポリアミン中アミノ基の封鎖は、例えば、残存アミノ基再現性よく10モル%以下、好ましくは5モル%以下とするように行なうことができる。
アミノ基の調整方法としては、アミノ基を本発明の反応に悪影響を及ぼさないよう保護されたアミノ基に変換する任意の方法が利用できるが、例えば、有機酸ハロゲン化物等を用いてアシル化をする方法、有機酸や無機酸を用いて塩を形成する方法等が挙げられる。有機酸ハロゲン化物の例としては、アセチルクロライド、プロピオニルクロライド、ブチリルクロライド、イソブチリルクロライド、アクリロイルクロライド、ベンゾイルクロライド、オキサリルクロライド、スクシニルクロライド等が挙げられる。有機酸の例としては、ギ酸、酢酸、プロピオン酸等のモノカルボン酸、乳酸等のヒドロキシ酸等が挙げられる。無機酸の例としては、塩酸、硫酸、次亜リン酸等が挙げられる。もっともこれらは例示であり、ハロゲン化物はアシル化に有効な他の酸ハロゲン化物(例えば、カルボン酸残基を含むものや臭化物等)でもよいし、アミノ基と反応して塩を形成する任意の酸、特に酸を介して複数のポリアミンの結合が生じない有機酸および無機酸が使用できる。
ポリアミン中アミノ基の封鎖は、例えば、残存アミノ基再現性よく10モル%以下、好ましくは5モル%以下とするように行なうことができる。
第1液において反応性多分岐多糖分子は、そのままでも用い得るが、コストを考慮して希釈して用いてもよい。希釈に用いる溶媒は特に限定されないが、生体内での使用または生体組織との接触を考慮すると、水性溶媒、特に水や希エタノール等が好ましい。通常、1〜75質量%程度、好ましくは2〜60質量%、より好ましくは3〜30質量%、最も好ましくは4〜20質量%に希釈する。また、分岐度が0.05未満で多分岐多糖誘導体と同種の置換基を有する鎖状多糖やその誘導体を併用してもよい。
また、ポリアミンを含む第2液は、通常の濃度で用い得るが、特に広い範囲に適用する場合には水性溶媒、特に水や希エタノール等で、通常1〜75質量%程度、好ましくは2〜60質量%、より好ましくは3〜30質量%、最も好ましくは4〜20質量%に希釈して用いることが好ましい。反応に害を及ぼさない範囲の任意の塩類を含んでもよく、例えば、リン酸塩、クエン酸塩、カルボン酸塩等でpHを調節してもよい。
(D)適用
上記ゲル化組成物は、ヒトもしくは動物の任意の組織または人工組織の接着、吻合、閉鎖、閉塞、分離、被覆を含む用途に用いられる。
ゲル化に際しては、反応性多分岐多糖分子を含む第1液またはポリアミンを含む第2液の一方を対象面に塗付し、次いで、前記対象面に他方の液を塗付または滴下してゲル状反応生成物を生じさせることによってゲル化させる重層塗布法が通常であるが、接着においては、接続または吻合すべき患部の一方に第1液(第2液)を塗布し、他方に第2液(第1液)を塗布する二面塗布法でもよい。または同時に上記2液を滴下する方法、あるいはスプレー法等の混合塗布法等も用い得る。
上記ゲル化組成物は、ヒトもしくは動物の任意の組織または人工組織の接着、吻合、閉鎖、閉塞、分離、被覆を含む用途に用いられる。
ゲル化に際しては、反応性多分岐多糖分子を含む第1液またはポリアミンを含む第2液の一方を対象面に塗付し、次いで、前記対象面に他方の液を塗付または滴下してゲル状反応生成物を生じさせることによってゲル化させる重層塗布法が通常であるが、接着においては、接続または吻合すべき患部の一方に第1液(第2液)を塗布し、他方に第2液(第1液)を塗布する二面塗布法でもよい。または同時に上記2液を滴下する方法、あるいはスプレー法等の混合塗布法等も用い得る。
本発明のゲル化組成物は特に医療用ゲル化材料として有用である。
このような本発明の医療用ゲル化材料は、前述の通り、組織の接着、接合、被覆、補強、封鎖、分離(癒着防止)などに広く用いることができる。組織は人体、動物の任意の組織を含み、さらに人工血管などの人工組織を含む。より具体的には、例えば、硬膜、腹膜、筋膜、胸膜の接着、骨あるいは軟骨の接着、実質臓器切開部の接着、皮膚の接着、神経吻合、微小血管吻合、腸管吻合、卵管吻合、植皮片あるいは創傷被覆保護材の貼付等の組織の接着を目的とした生体接着剤として用いることができる。また、本発明の医療用ゲル化材料は、血液、体液のような水分存在下においてもゲルを形成し、生体組織に対して高い接着性を示すので、実質臓器の微小血管からの出血、縫合時の縫合糸穴からの出血等の止血を目的とした止血材や、髄液、胆汁等の体液の漏出防止、鼓膜欠損の閉鎖、代用血管の閉鎖、肺手術後の空気漏れ穴の閉鎖、気管支の閉鎖、シャントチューブのシールを目的とした生体または医療材料の閉鎖材等として用いることができる。さらに外科手術によって分離された組織間の術後癒着の防止材としても有用である。
このような本発明の医療用ゲル化材料は、前述の通り、組織の接着、接合、被覆、補強、封鎖、分離(癒着防止)などに広く用いることができる。組織は人体、動物の任意の組織を含み、さらに人工血管などの人工組織を含む。より具体的には、例えば、硬膜、腹膜、筋膜、胸膜の接着、骨あるいは軟骨の接着、実質臓器切開部の接着、皮膚の接着、神経吻合、微小血管吻合、腸管吻合、卵管吻合、植皮片あるいは創傷被覆保護材の貼付等の組織の接着を目的とした生体接着剤として用いることができる。また、本発明の医療用ゲル化材料は、血液、体液のような水分存在下においてもゲルを形成し、生体組織に対して高い接着性を示すので、実質臓器の微小血管からの出血、縫合時の縫合糸穴からの出血等の止血を目的とした止血材や、髄液、胆汁等の体液の漏出防止、鼓膜欠損の閉鎖、代用血管の閉鎖、肺手術後の空気漏れ穴の閉鎖、気管支の閉鎖、シャントチューブのシールを目的とした生体または医療材料の閉鎖材等として用いることができる。さらに外科手術によって分離された組織間の術後癒着の防止材としても有用である。
特に本発明の反応性多分岐多糖誘導体(a)は低粘度なので、これを含む第1液を人工組織(例えば、人工血管)の内部に流し、しかる後にゲル形成化学種(b)を含む第2液を流すことにより、内部被覆が容易に行なえる(液の適用順序は反対でもよい)。同様の理由で反応性多分岐多糖誘導体(a)を含む第1液に人工組織を浸漬し、しかる後にゲル形成化学種(b)を含む第2液に浸漬することにより、内部に中空部を有する構造や組織内外面の被覆が容易に行なえる(液の適用順序は反対でもよい)。従って、本発明は、上記のようにして医療用ゲル組成物が付与された人工組織も含む。
以下、参考例および実施例により本発明を具体的に説明するが、これらは本発明を限定するものではない。なお、以下の例において「置換度」は、元素分析の結果から算出した糖鎖水酸基の置換度である。なお、以下の例においてハイパーブランチグルカンは、前記特開2003−252904号公報の実施例1に準じて合成した多分岐多糖であり、重量平均分子量:70,000(分子量は静的光散乱測定法により測定した。)である。
ハイパーブランチグルカン0.2gをドライピリジン(関東化学社製)9mLに溶解した。この溶液を100℃に加熱した後、無水コハク酸0.25gを加え、撹拌しながら24時間反応させた。冷却後、反応溶液を過剰量のメタノールに注ぎいれて反応を停止した。精製は蒸留水を用いた透析(孔径1000の透析膜使用)により行なった。得られたポリマー(収量:0.25g)は、水、メタノール、ジメチルスルホキシド等の溶媒にに可溶で、アセトン、クロロホルム、ジクロロメタン、エーテル、ヘキサン等の有機溶媒に不溶であった。
置換度は1H−NMRスペクトル積分比から1.9と概算された。
生成物の1H−NMRスペクトルを図1に示す。
置換度は1H−NMRスペクトル積分比から1.9と概算された。
生成物の1H−NMRスペクトルを図1に示す。
実施例2 多分岐多糖誘導体(コハク酸N−ヒドロキシコハク酸イミドエステル)の合成
以下の手順により、前記式(III)においてRが
(式中、SucはN−スクシンイミド基)で表わされる多分岐多糖誘導体(コハク酸N−ヒドロキシコハク酸イミドエステル)を合成した。
以下の手順により、前記式(III)においてRが
実施例1で得られた多分岐多糖誘導体(コハク酸エステル)0.5g、N−ヒドロキシコハク酸イミド0.09gおよび1−ヒドロキシベンゾトリアゾール0.19gをメタノールと水の混合溶媒(メタノール:水=1:9)(10.5mL)に入れ、脱水縮合剤として水溶性カルボジイミド0.22gを滴下した。室温で24時間撹拌後、過剰量のメタノールに注ぎ入れて反応を止め、蒸留水を用いた透析により精製した。凍結乾燥後、メタノールおよびジメチルスルホキシドに可溶の薄黄色固体を得た(収量:0.55g)。
実施例3:多分岐多糖誘導体(コハク酸N−ヒドロキシコハク酸イミドエステル)とポリアリルアミンの架橋反応を用いたゲルの合成
実施例2で得られた多分岐多糖誘導体(コハク酸N−ヒドロキシコハク酸イミドエステル)をpH7.4のリン酸緩衝液溶液(多糖誘導体濃度:20質量%)に溶解し、分子量15,000(濃度10%)の直鎖状ポリアリルアミン水溶液を加え室温で撹拌した。滴下後、系内は瞬時に濁り、糊状のゲルを形成した。
実施例2で得られた多分岐多糖誘導体(コハク酸N−ヒドロキシコハク酸イミドエステル)をpH7.4のリン酸緩衝液溶液(多糖誘導体濃度:20質量%)に溶解し、分子量15,000(濃度10%)の直鎖状ポリアリルアミン水溶液を加え室温で撹拌した。滴下後、系内は瞬時に濁り、糊状のゲルを形成した。
実施例4:多分岐多糖誘導体(コハク酸N−ヒドロキシコハク酸イミドエステル)とポリアリルアミンの架橋反応を用いたゲルの合成
実施例2で得られた多分岐多糖誘導体(コハク酸N−ヒドロキシコハク酸イミドエステル)をpH7.4のリン酸緩衝液溶液(多糖誘導体濃度:25質量%)に溶解し、分子量3,000(濃度40%)の直鎖状ポリアリルアミン水溶液を加え室温で撹拌した。滴下後、系内は瞬時に濁り、糊状のゲルを形成した。
実施例2で得られた多分岐多糖誘導体(コハク酸N−ヒドロキシコハク酸イミドエステル)をpH7.4のリン酸緩衝液溶液(多糖誘導体濃度:25質量%)に溶解し、分子量3,000(濃度40%)の直鎖状ポリアリルアミン水溶液を加え室温で撹拌した。滴下後、系内は瞬時に濁り、糊状のゲルを形成した。
Claims (20)
- 多分岐多糖の分岐度が0.05〜1.00の範囲である請求項1に記載の多分岐多糖誘導体。
- 多分岐多糖誘導体が、D−グルコース、D−マンノース、D−ガラクトース、D−アロース、D−アルトロース、D−イドース、D−タロース、D−キシロース、D−リボースおよびD−アラビノースからなる群から選択される1種または複数の単糖類を構成単位として含む請求項1または2に記載の多分岐多糖誘導体。
- 構成単位当たり平均して0.01個〜3個の水素原子が前記式(I)の置換基で置換されている請求項1乃至3のいずれかに記載の多分岐多糖誘導体。
- 多分岐多糖が無水糖の重合反応によって得られるものである請求項1乃至4のいずれかに記載の多分岐多糖誘導体。
- 無水糖がピラノース環またはフラノース環に存在する立体的に縮合可能な任意の2つの水酸基を脱水縮合してなるものである請求項5に記載の多分岐多糖誘導体。
- 前記式(I)中のnが2である請求項1に記載の多分岐多糖誘導体。
- 多分岐多糖誘導体を無水ジカルボン酸と反応させ、所望に応じてさらに金属塩と反応させることを特徴とする、請求項1の前記式(I)におけるZが水素原子もしくは金属原子である多分岐多糖誘導体化合物の製造方法。
- 無水ジカルボン酸が無水コハク酸である請求項8に記載の多分岐多糖誘導体化合物の製造方法。
- 多分岐多糖誘導体を無水ジカルボン酸と反応させた後、さらにN−ヒドロキシスクシンイミドと反応させることを特徴とする、請求項1の前記式(I)におけるZが前記式(II)で表わされるN−スクシンイミド基である多分岐多糖誘導体化合物の製造方法。
- 無水ジカルボン酸が無水コハク酸である請求項10に記載の多分岐多糖誘導体化合物の製造方法。
- 多分岐多糖誘導体が、透析によって低分子量の不純物を除去したものである請求項12に記載のゲル化組成物。
- ポリアミンがポリアリルアミンである請求項12に記載のゲル化組成物。
- ポリアミンのアミノ基の少なくとも一部がアシル基またはアニオンと反応してアミドまたは塩を形成しており、これによってゲル化特性が調整される請求項12に記載のゲル化組成物。
- ゲルがヒトもしくは動物の任意の組織または人工組織の接着、吻合、閉鎖、閉塞、分離、被覆を含む用途に用いられる請求項12乃至15のいずれかに記載の医療用ゲル化組成物。
- 請求項12乃至16のいずれかに記載のゲル化組成物の第1液と第2液とを反応させて得られるゲル。
- 請求項12乃至16のいずれかに記載のゲル化組成物の第1液と第2液とを同時または時間をおいて適用することによりヒトもしくは動物の任意の組織または人工組織の接着、吻合、閉鎖、閉塞、分離または被覆を行なう方法。
- 第2液中のポリアミンについて、アミノ基の少なくとも一部をアシル基またはアニオンと反応させてアミドまたは塩を形成させることによりゲル化特性を調整する請求項18に記載のヒトもしくは動物の任意の組織または人工組織の接着、吻合、閉鎖、閉塞、分離または被覆を行なう方法。
- 請求項18または19に記載の方法により医療用ゲル組成物が付与された人工組織。
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JP2007252699A (ja) * | 2006-03-24 | 2007-10-04 | Mcrotech Kk | ゲル組成物、それを用いた移植用材料及びそれらの製造方法 |
JP2009523179A (ja) * | 2005-12-06 | 2009-06-18 | タイコ ヘルスケア グループ リミテッド パートナーシップ | 生体吸収性化合物およびそれらを含む組成物 |
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JP2003252904A (ja) * | 2002-03-04 | 2003-09-10 | Japan Science & Technology Corp | 多分岐多糖 |
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-
2004
- 2004-03-31 JP JP2004105591A patent/JP2005290147A/ja active Pending
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