JP2005290041A - 多段噴射機構を有するディーゼルエンジン用燃料油及び多段噴射機構を有するディーゼルエンジン - Google Patents

多段噴射機構を有するディーゼルエンジン用燃料油及び多段噴射機構を有するディーゼルエンジン Download PDF

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和彦 鈴木
Hitoshi Kusaka
仁 草鹿
Akira Miyoshi
明 三好
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Abstract

【課題】多段噴射機構を有するディーゼルエンジンが、低負荷から高負荷の運転領域にわたって安定に運転でき、排気ガスから排出されるNOxやPMや煤などの低減を図るとともに、燃費を向上することができるディーゼルエンジン用燃料油、及び該燃料油を用いる高性能のディーゼルエンジンを提供すること。
【解決手段】90容量%留出温度が400℃以下であり、セタン価が10〜45である多段噴射機構を有するディーゼルエンジン用燃料油、及び該燃料油を用いるパイロット噴射量比が30%以下のディーゼルエンジンである。
【選択図】 なし

Description

本発明は多段噴射機構を有するディーゼルエンジン用燃料油に関し、特にパイロット噴射機構を具備するディーゼルエンジンに有用なディーゼルエンジン用燃料油、及びそれを燃料とし、かつ特定のパイロット噴射量比としたディーゼルエンジンに関する。
ディーゼルエンジンは、ガソリンエンジンと比較して一般的に熱効率が高いため燃費が良く、また単位仕事量当りの二酸化炭素の発生が少ない利点があるが、その一方で排気ガス中のNOx、粒子状物質(PM)や煤などの排出量が多いという欠点がある。そのため、急激に進む排気ガス浄化基準を達成するために、後処理装置を装着するなど、一時的な対応措置に頼らざるを得ない状況にある。そこで抜本的にこの問題を解決する目的で、「予混合圧縮自己着火燃焼方式」を取り込んだディーゼルエンジンの開発が活発に行われ、種々の提案がされている(例えば、非特許文献1及び非特許文献2参照)。
しかしながら、この予混合圧縮自己着火燃焼方式のディーゼルエンジンは、NOxとPMを同時に低減するなど優れた効果を有しているが、その反面、適切な燃料油や運転制御方法がないなど種々の問題があるため、十分な効果が発揮できない状況にある。すなわち、例えば通常の燃料油を用いてこの種のディーゼルエンジンを運転すると、燃料油の着火性が高いために高負荷領域でノッキングを起こし、安定した運転が困難になる。またこの点を考慮して通常より低セタン価の燃料油を用いて運転すると、自己着火性が低いため低温時の始動性に問題が生じる恐れがある。
そこで、さらなる開発が行われており、例えばセタン価の異なる複数の燃料油を用いるディーゼルエンジンの提案などがある(例えば、特許文献1参照)。しかし、これらの提案でも、具体的に有効な燃料油が不明である上に、異なる複数の燃料油を必要とすれば燃料油の充填や供給が煩雑になり、またエンジンの構造も複雑になるため経済的に不都合である。
このように、これまでの提案によっては、いずれもNOxなどの排気ガス浄化を達成し、同時に燃費を向上しつつ低負荷領域から高負荷領域にわたって安定に運転できる予混合圧縮自己着火燃焼方式のディーゼルエンジンの実現ができない状況にあった。
社団法人自動車技術会 学術講演会前刷集981(1998)49〜52頁 JSAE 20030117(SAE2003−01−1815) 特開2001−355471号公報
本発明は、このような状況を考慮して、予混合圧縮自己着火燃焼方式のディーゼルエンジンが、低負荷から高負荷の運転領域にわたって安定に運転でき、排気ガスから排出されるNOxやPMや煤などの低減を図るとともに、燃費を向上することができる燃料油、及び該燃料油を用いた多段噴射機構を有するディーゼルエンジンを提供することを目的とする。
本発明者らは、多段噴射機構の中で、特にパイロット噴射機構を具備するディーゼルエンジン(以下、「パイロット噴射ディーゼルエンジン」ということがある)が、有効にその機能を発揮する燃料油を開発すべく鋭意研究した結果、特定の蒸留性状及びセタン価を有する燃料油がその目的を達成できることを見出した。また、パイロット噴射ディーゼルエンジンにおいて、パイロット噴射量比を特定の範囲にすることが、さらに効果的であることを見出した。本発明はかかる知見に基づいて完成したものである。すなわち、本発明は、
〔1〕90容量%留出温度が400℃以下であり、セタン価が10〜45である多段噴射機構を有するディーゼルエンジン用燃料油、
〔2〕90容量%留出温度が270〜360℃である上記〔1〕に記載の燃料油、
〔3〕セタン価が15〜35である上記〔1〕又は〔2〕に記載の燃料油、
〔4〕前記多段噴射機構を有するディーゼルエンジンが、予混合圧縮自己着火燃焼方式である上記〔1〕〜〔3〕のいずれかに記載の燃料油、
〔5〕前記多段噴射機構を有するディーゼルエンジンが、パイロット噴射機構を有する上記〔4〕に記載の燃料油、
[6]パイロット噴射機構を具備するディーゼルエンジンであって、燃料として上記[1]〜[5]のいずれかに記載の燃料油を用い、パイロット噴射量比を30%以下としたディーゼルエンジン、
を提供するものである。
本発明の燃料油は、パイロット噴射ディーゼルエンジンに用いた場合に、良好な予混合圧縮自己着火燃焼を実現でき、その結果低負荷から高負荷の運転領域にわたって安定に運転でき、排気ガスから排出されるNOxやPM、煤などの低減を図るとともに、燃費を向上することができる効果がある。
本発明の多段噴射機構を有するディーゼルエンジン用燃料油(以下単に「本発明の燃料油」という)は、90容量%留出温度(T90)が400℃以下であることが必要である。T90が400℃を超える燃料油であると、排気ガス中のPMや煤が増加して排気ガス浄化の目的が達成できない恐れがある。燃費改善効果や排気ガス中のPMや煤の低減効果を考慮すると、T90は270〜360℃が好ましい。なお、このT90はJIS K 2254の「石油製品蒸留試験方法」に基づいて測定した値である。
また、本発明の燃料油においては、セタン価が10〜45であることが必要であり、好ましくは15〜35である。セタン価が10未満の場合は自己着火性が不十分のため、低温時の始動性に問題が生じる恐れがある。一方セタン価が45を超えると、パイロット噴射を行った場合に、自己着火時期が早すぎて高い効率が得られない。なお、このセタン価は、JIS K 2280の「セタン価試験方法」によって測定した値である。
本発明の燃料油は、上記蒸留性状のT90とセタン価の条件を満たせば、本発明の目的を達成できるが、その作用機構は以下のように推定される。すなわち本発明の燃料油は、比較的セタン価が低いため、パイロット噴霧装置のノズルから噴霧された燃料油の着火時期が上死点近くまで遅れる。そのため必然的に熱効率が高くなる。また、着火時期が遅れることから燃料油の混合時間が伸びるため燃料油の濃度分布の均一化が図られ、そのことによって良好な予混合圧縮自己着火燃焼を達成できるため、NOxやPMや煤などを抑制できると考えられる。
本発明の燃料油の硫黄分含有量については、0.05質量%以下が好ましく、より好ましくは0.01質量%以下、さらに好ましくは50質量ppm以下、特に好ましくは10質量ppm以下である。硫黄分含有量が0.05質量%以下であると排気ガス中のPMやSOx、NOxの含有量を十分に抑制することが可能となる。なお、この硫黄分含有量はJIS K 2541の「硫黄分試験方法」によって測定した値である。
また、目詰まり点については、低温始動性や低温運転性を確保する観点から−5℃以下が好ましく、−10℃以下がより好ましい。なお、この目詰まり点はJIS K 2288に規定する方法によって測定した値である。
さらに、引火点については安全性の観点から50℃以上が好ましく、60℃以上であることがより好ましい。この引火点は、JIS K 2265に規定する方法によって測定した値である。
本発明の燃料油は、任意の方法で製造することができる。例えば、次に示す軽油基材を用いて、上記T90とセタン価の条件を満たすように適宜配合することにより調製することができる。そのような軽油基材としては、例えば、原油の常圧蒸留によって得られる直留軽油、常圧蒸留によって得られる直留重油や残渣油を減圧蒸留して得られる減圧軽油、減圧軽油を水素化精製して得られる水素化精製軽油、直留軽油を過酷な条件で水素化脱硫して得られる水素化脱硫軽油、減圧軽油や脱硫重油を接触分解して得られる接触分解軽油、原油の常圧蒸留によって得られる直留灯油、直流灯油を水素化精製して得られる水素化精製灯油、原油の常圧蒸留によって得られる軽油留分を分解して得られる分解灯油、オレフィンの重合により得られる合成油などが挙げられる。
本発明の燃料油には、さらに必要に応じて各種の添加剤を適宜配合することができる。このような添加剤としては、例えば、カルボン酸系、エステル系、アルコール系などの潤滑性向上剤;硝酸エステル系や有機過酸化物系などのセタン価向上剤;イミド系化合物、アルケニルコハク酸誘導体、コハク酸エステル、共重合系ポリマーなどの清浄剤;エチレン−酢酸ビニル共重合体、アルケニルコハク酸アミドなどの流動性向上剤;フェノール系、アミン系などの酸化防止剤などが挙げられ、これらを一種あるいは二種以上添加することができる。
また、これら添加剤の添加量は状況に応じて適宜選定すればよいが、通常は添加剤の合計量として燃料油に対して0.5質量%以下とすることが好ましい。
本発明の燃料油は、多段噴射機構を有する予混合圧縮自己着火燃焼方式のディーゼルエンジンに使用すると特に有効である。予混合圧縮自己着火燃焼方式は、予混合により、燃料と空気の混合状態を予め均質化することによってPMや煤などの排出を抑制するとともに、NOxの生成を抑えるエンジンとされている。
多段噴射機構を有するディーゼルエンジンの構造については、種々の形態のものがあるが、好適なものとして例えば、パイロット噴射機構を取り付けたコモンレール方式がある。この場合は通常パイロット噴射装置のノズルから混合気を噴霧する時期は可能なかぎり進角して、例えば−50〜−10deg ATDCとし、一方主ノズルから燃料を噴霧する時期は上死点近傍であって、例えば−10〜+5deg ATDCとするのが好ましい。
また、パイロット噴射ノズルからの燃料の噴射量は、できる限り均一な混合気となるような量にすることが好ましく、そのためにはパイロット噴射ノズルからの燃料の噴射量を全燃料の噴射量(パイロット噴射量+メイン噴射量)に対する割合(パイロット噴射量比)で30%以下にすることが好ましく、さらに好ましくは0.5〜25%の範囲、特に好ましくは1.0〜20%の範囲で、パイロット噴射量とメイン噴射量を調節することが好ましい。
なお、上記パイロット噴射機構を含む多段噴射機能を有するディーゼルエンジンは、騒音低減や有害な排気ガスの低減などの点でさらに有利である。
次に実施例により本発明を詳しく説明するが、本発明はこれらの例によって何ら制限されるものではない。なお、燃料油の性状及び性能は次の方法に従って求めた。
〔燃料油の性状〕
(1)硫黄分;JIS K 2541の微量電量滴定酸化法によって測定した。
(2)密度;JIS K 2249に準拠して測定した。
(3)動粘度;JIS K 2283に準拠して測定した。
(4)蒸留性状;JIS K 2541に準拠して測定した。
(5)10%残油の残留炭素分;JIS K 2270に準拠して測定した。
(6)引火点;JIS K 2265に準拠して測定した。
(7)目詰まり点;JIS K 2288に準拠して測定した。
(8)セタン価;JIS K 2280に準拠して測定した。
〔燃料油の性能〕
(1)エンジンの低負荷運転及び高負荷運転
第1表に示す主要諸元を有し、パイロット噴射機構を備えた直噴ディーゼルエンジンを用いて、低負荷運転(実験I)及び高負荷運転(実験II)を行い、それぞれの運転による燃費と排気ガス中のNOx及び煤濃度を計測して燃料油の性能を評価した。実験I及び実験IIの運転条件は第2表に示した。
(2)燃費
仕込み燃料油を容積式流量検出器(小野測器製FP-2140H)で検出し、デジタル流量計(小野測器製DF-2410)で測定した。
(3)NOx濃度
エンジンの排気管に設置したサンプル口から排気ガスの一部を堀場製作所製自動車排出ガス分析装置(MEXA-9100DGR)に取り入れて測定した。
(4)煤濃度
エンジンの排気管に設置したサンプル口から排気ガスの一部を採取し、堀場製作所製スモークメータ(MEXA-130S)を用いて測定した。
Figure 2005290041
Figure 2005290041
実施例1、2及び比較例1
第3表に示す性状の燃料油を調製し、それらの燃料油の性能を評価した。その結果を第4表に示す。
なお、第3表中に示す基準油は、JIS K 2204に規定される市販の2号軽油であり、代表的な従来品である。また、燃料油1は出光興産株式会社製「出光スーパーゾルFP−25、30及び38を混合して調製した燃料油であり、燃料油2は基準油と燃料油1を混合して調製した燃料油である。
また、第4表の性能評価の結果は、代表的な従来品である上記基準油の性能をベースとし、各実施例の燃料油についての燃費、NOx濃度などを表した。すなわち、負の値のものは、比較例1よりも燃費については燃費が向上したことを、NOxや煤については、排ガス中の濃度が減少したことを表す。
Figure 2005290041
Figure 2005290041
[パイロット噴射量の検討]
実施例3〜6、及び参考例1
第1表に示す主要緒元を有し、パイロット噴射機構を備えた直噴ディーゼルエンジンを用いて、第3表に示す燃料油1を第6表に示すパイロット噴射量比(パイロット噴射量/(パイロット噴射量+メイン噴射量))で、第5表に示す条件にて運転を行い(実験III)、トルクと排気ガス中のNOx及び煤濃度を計測して、パイロット噴射量比の影響を検討した。
なお、トルクはフレックダイナモメータ(明電舎製「FCDY」)により測定し、また、NOx濃度及び煤濃度については、前述の方法で測定した。
結果を第6表に示す。なお、第6表の性能評価の結果は、実施例3のパイロット噴射量比を基準とし、実施例4〜6及び参考例1に示すパイロット噴射量比についてのトルク、NOx濃度、及び煤濃度で表した。トルクについては、数字が大きいほどトルクが高く良好であることを示す。また、NOx及び煤については、数字が大きいほど排ガス中の濃度が増大したことを表す。
第6表の結果から、パイロット噴射量比が30%以下であると、NOx濃度、及び煤濃度の増加を抑制しながら高トルクを得ることが可能であることがわかる。
Figure 2005290041
Figure 2005290041
本発明のディーゼルエンジン用燃料油、さらには該燃料油を用い、かつ特定のパイロット噴射量比を有するディーゼルエンジンによれば、予混合圧縮自己着火燃焼方式のディーゼルエンジンを低負荷から高負荷の運転領域にわたって安定に運転でき、排気ガスから排出されるNOxやPMの低減を図るとともに、燃費を向上することができる。

Claims (6)

  1. 90容量%留出温度が400℃以下であり、セタン価が10〜45である多段噴射機構を有するディーゼルエンジン用燃料油。
  2. 90容量%留出温度が270〜360℃である請求項1に記載の燃料油。
  3. セタン価が15〜35である請求項1又は2に記載の燃料油。
  4. 前記多段噴射機構を有するディーゼルエンジンが、予混合圧縮自己着火燃焼方式である請求項1〜3のいずれかに記載の燃料油。
  5. 前記多段噴射機構を有するディーゼルエンジンが、パイロット噴射機構を有する請求項4に記載のディーゼルエンジン用燃料油。
  6. パイロット噴射機構を具備するディーゼルエンジンであって、燃料として請求項1〜5のいずれかに記載の燃料油を用い、パイロット噴射量比を30%以下としたディーゼルエンジン。












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* Cited by examiner, † Cited by third party
Title
JPN6010041044, 石田正弘 外3名, "ディーゼル燃焼におけるパイロット噴射の効果(第1報,着火遅れの短縮)", 日本機械学會論文集, 1995, B編61(590), p.3518−3523 *
JPN6010041046, 石田正弘 外3名, "ディーゼル燃焼におけるパイロット噴射の効果(第2報,NOx・燃費の背反関係改善)", 日本機械学會論文集, 1995, B編61(590), p.3524−3531 *

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