JP2007269865A - 多段噴射機構を有するディーゼルエンジン用燃料油、燃焼方法、ディーゼルエンジン - Google Patents
多段噴射機構を有するディーゼルエンジン用燃料油、燃焼方法、ディーゼルエンジン Download PDFInfo
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Abstract
【解決手段】多段噴射機構を有するディーゼルエンジン用の燃料油であって、下記(1)及び(2)に示す性状を具備し、かつ、密度、90%容量留出温度、動粘度(50℃)、硫黄分の含有量、10%残油の残留炭素分、およびアニリン点が特定範囲にある。
(1)全芳香族分:45容量%以上
(2)真発熱量:9000Kcal/L以上
【選択図】なし
Description
一方近年では、エネルギーの有効利用の観点より、コジェネレーションの活用が強く求められている。ディーゼルエンジンは、火花点火ガスエンジンやガスタービンに比較して発電効率が高いため、コジェネレーション用の発電装置としても有利である。従来から使用されている単段噴射方式のディーゼル発電用の燃料としては、一般に軽油、A重油(JIS1種重油)、及びC重油(JIS3種重油)が利用されているが、その中でも特にA重油の使用割合が高い。
また、最近では、ディーゼルエンジンに関して、さらなる効率改善がエンジン及び燃料油の面から一層求められている。エンジン面からは、燃焼性の改善に向けてコモンレール方式の多段噴射機構を有するディーゼルエンジンの開発が進められ、燃料油の面からも、多段噴射機構を有するディーゼルエンジンに適した高性能燃料油の開発が進められている。
そこで、硫黄濃度50質量ppm以下、蒸留の終点350℃以下、セタン価が25〜55の軽油を燃料として単段噴射により予混合圧縮自己着火燃焼を行う技術が提案されている(例えば、特許文献1)。また、多段噴射機構を有するディーゼルエンジン用燃料油として、90%容量留出温度が400℃以下であり、セタン価が10〜40である燃料油が提案されている(例えば、特許文献2)。
そこで、本発明の目的は、芳香族分の含有量が高く、高カロリーな燃料油であって、多段噴射機構を有するディーゼルエンジンに適した燃料油、その燃焼方法、およびそのような燃料油を用いる多段噴射機構を有するディーゼルエンジンを提供することにある。
(1)全芳香族分:45容量%以上
(2)真発熱量:9000Kcal/L以上
(3)密度:0.88g/cm3以上
(4)90容量%留出温度:300℃以上
(5)動粘度(50℃):1.3mm2/s以上
(6)硫黄分の含有量:0.4質量%以下
(7)10%残油の残留炭素分:0.5質量%以下
(8)アニリン点:50℃以下
この発明によれば、硫黄分の含有量が0.4質量%以下であるため、硫黄酸化物の排出量が少なく環境への負荷が低い。また、10%残油の残留炭素分が0.5質量%以下であるので、エンジンを構成する燃料噴射ポンプを高性能な状態で長く維持することができる。また、アニリン点が50℃以下であり、芳香族分が多いため、熱効率にも優れる。アニリン点については、5℃以上であると、より燃焼性のよい高芳香族燃料油とすることができるのでより好適である。
10≦CII≦40 (9)
IC≦85 (10)
[CIIは、CII=64.024/D2+0.00122A2−46.36で表される指標であり(D:密度(g/cm3)、A:アニリン点(℃))、ICは、IC=82.19+0.424D−6.159logV−0.0936Cで表される指標である(V:動粘度(50℃、mm2/s)、C:10%残油の残留炭素分(質量%))。]
ここで、予混合圧縮自己着火燃焼を行うディーゼルエンジンとは、いわゆるHCCIエンジン(Homogeneous Charge Compression Ignition Engine)とも称されるタイプのエンジンのことである。
本発明の燃焼方法によれば、前記した燃料油を、多段噴射機構を有し少なくとも部分的に予混合圧縮自己着火燃焼を行うディーゼルエンジンに使用するので、より一層効率的な燃焼が可能となり、燃費低減のみならず、排出ガス中のNOxやPMなどの排出量を低減でき環境への負荷もより少なくすることができる。
この発明によれば、エンジン内における燃料油の供給を前記した方法により制御しているため、エンジンへの負荷が急に変動した場合であっても、エンジン内の燃焼を常に最適な状態に保って運転することが可能となる。
本発明のディーゼルエンジンによれば、多段噴射機構を具備するとともに前記した燃料油を用いるので、エンジン内の燃焼が効率的であり、前記した効果を奏することができる。
多段噴射機構を有するエンジンの構造については種々の形態があるが、例えば、パイロット噴射機構を取り付けたエンジンがより効果的である。パイロット噴射とは、圧縮行程において主噴射の前に少量の燃料を噴射する機構である。パイロット噴射機構を用いる場合は、パイロット噴射量比を30%以下とすることが燃焼効率向上の観点から好ましい。
本発明の燃料油が適用される多段噴射機構を有するディーゼルエンジンとは、燃料の噴射を単段ではなく多段で行うディーゼルエンジンである。例えば、パイロット噴射機構と主噴射機構を備えたディーゼルエンジンが好適である。
ここで、本発明の多段噴射機構を有するディーゼルエンジン用燃料油は、下記(1)及び(2)を示される性状を有する。
(1)全芳香族分:45容量%以上
(2)真発熱量:9000Kcal/L以上
なお、燃料油中の全芳香族分は、例えば、JPI−5S−49−97「炭化水素タイプ試験方法−高速液体クロマトグラフ法(石油学会法)」に準拠して測定することができる。
(3)密度:0.88g/cm3以上
(4)90容量%留出温度:300℃以上
(5)動粘度(50℃):1.3mm2/s以上
なお、組成物の密度は、例えば、JIS K2249「原油及び石油製品−密度試験方法及び密度・質量・容量換算表」に準拠して測定することができる。
(6)硫黄分の含有量:0.4質量%以下
(7)10%残油の残留炭素分:0.5質量%以下
(8)アニリン点:50℃以下
なお、アニリン点は、例えばJIS K 2256「原油及び石油製品−残留炭素分試験方法」により測定された値である。
10≦CII≦40 (9)
IC≦85 (10)
[CIIは、CII=64.024/D2+0.00122A2−46.36で表される指標であり(D:密度(g/cm3)、A:アニリン点(℃))、ICは、IC=82.19+0.424D−6.159logV−0.0936Cで表される指標である(V:動粘度(50℃、mm2/s)、C:10%残油の残留炭素分(質量%))。]
そこで本発明では、前記したCIIとICを燃焼性の指標として用いた。ここで、CIIは、「Transaction of Institute of Marine Engineers, vol.96,paper66(1984)」に記載されている指標であるCII−2をCIIとして用いたものである。また、ICは、「舶用燃料の科学(成山堂書店 1994)」に記載されている燃焼性の指標である。
燃料油基材としては、これらの一種を単独で使用してもよく、混合して使用しても良い。さらには、各種の灯油、軽油、A重油、C重油、オレフィン重合油留分等を混合して使用しても良い。
なお、これらの添加剤の添加量は、重油基材や軽油基材の種類等を勘案して、必要に応じて適宜選定すればよいが、通常は、添加剤の合計量として、本発明の燃料油組成物全体に対して、0.5質量%以下とすることが好ましい。
多段噴射機構を有するエンジンの構造については種々の形態があるが、例えば、パイロット噴射機構を取り付けたエンジンがより効果的である。パイロット噴射とは、圧縮行程において主噴射の前に少量の燃料を噴射する機構である。なお、多段噴射機構として、パイロット噴射機構を有する場合は、パイロット噴射量比を30%以下とすることが燃焼効率向上の観点から好ましい。
ここで、予混合圧縮自己着火燃焼を行うディーゼルエンジンとは、いわゆるHCCIエンジン(Homogeneous Charge Compression Ignition Engine)とも称されるタイプのエンジンのことである。かかる予混合圧縮自己着火式エンジンは、吸気行程初期にエンジン室内に燃料を噴射し、噴射された燃料を圧縮行程で気化混合させ、圧縮行程の終わりに自然発火により着火燃焼させるものである。従って、エンジン室内では燃料と空気とが均一にかつ希薄に混合した状態で燃焼することになり、燃焼温度が高温にならないという特徴を有する。
本発明の燃料油を、このような多段噴射機構を有し少なくとも部分的に予混合圧縮自己着火燃焼を行うディーゼルエンジンに使用すると、より一層効率的な燃焼が可能となり、燃費低減のみならず、排出ガス中のNOxやPMなどの排出量を低減でき環境への負荷もより少なくすることができる。
また、パイロット噴射ノズルからの燃料の噴射量は、できる限り均一な混合気となるような量にすることが好ましく、そのためにはパイロット噴射ノズルからの燃料の噴射量を全燃料の噴射量(パイロット噴射量+主噴射量)に対する割合(パイロット噴射量比)で30%以下にすることが好ましく、さらに好ましくは0.5〜25%の範囲、特に好ましくは1.0〜20%の範囲で、パイロット噴射量と主噴射量を調節することが好ましい。
このようなパイロット噴射機構を含む多段噴射機能を有するディーゼルエンジンは、騒音低減や有害な排気ガスの低減などの点でさらに有利である。
これらのような集積回路を備えることで、エンジン内における燃料油の供給を制御すると、エンジンへの負荷が急に変動した場合であっても、エンジン内の燃焼を常に最適な状態に保って運転することが可能となる。
表1に示した性状を具備するように重油基材、軽油基材を組み合わせて配合して、基準油1、基準油2を調製した。これらの基準油は、多段噴射機構を有するディーゼルエンジンに用いられることで本発明の燃料油となる。比較用としてA重油(JIS K 2205 1種重油)の性状も示した。
(燃料油の性状測定法)
密度 :JIS K2249「原油及び石油製品−密度試験方法」に準拠して測定した。
硫黄分 :JIS K2541「原油及び石油製品−硫黄分試験方法」に準拠し
て測定した。
動粘度 :JIS K2283「原油及び石油製品−動粘度試験方法」に準拠し
て測定した。
蒸留性状 :JIS K2254「原油及び石油製品−蒸留試験法」に準拠して測定した。
10%残留炭素分:JIS K 2270「原油及び石油製品−残留炭素分試験方法」に準拠して測定した。
全芳香族分 :JPI−5S−49−97「炭化水素タイプ試験方法−高速液体クロマトグラフ法(石油学会法)」に準拠して測定した。
アニリン点 :JIS K2256「石油製品アニリン点試験方法」に準拠して測定した。
真発熱量 :JIS K2279に準拠して測定した。
CII :密度、アニリン点をもとに、式(9)により算出した。
Ic :密度、動粘度(50℃)および10%残留炭素分をもとに、
式(10)により算出した。
下記に示す仕様の多段噴射機構付きディーゼルエンジンを用いて、前記のようにして得られた表1の燃料油を用いて運転試験を行った。具体的には、当該エンジンを下記の運転条件により運転した場合における正味熱効率と騒音を測定するとともに、エンジン出口におけるNOX濃度、およびスモークについて測定して、各燃料油を比較・評価した。結果を表2に示す。
シリンダ数 :1
シリンダ直径×ピストン工程:92mm×96mm
行程容積 :638cm3
圧縮比 :17.7
燃料噴射方式 :コモンレール方式
最高コモンレール圧力 :120MPa
インジェクタ :ソレノイド式
最高出力 :8.46kW/2600rpm
以下のように、正味平均有効圧力(以下、「BMEP」ともいう)を変え、またパイロット噴射を行う場合と行わない場合に分けて高負荷運転試験を行った。エンジン回転数は1300rpmであり、燃料油噴射圧は60MPaである。
・パイロット噴射を行わない場合
主噴射 :噴射時期=−8degATDC、噴射量=26mm3/ストローク
・パイロット噴射を行う場合
パイロット噴射:噴射時期=−25degATDC、噴射量=5mm3/ストローク
主噴射 :噴射時期=−8degATDC、噴射量=21mm3/ストローク
(1)正味熱効率
エンジンの正味熱効率ηeは、使用した燃料油が燃焼したときの低位発熱量Qfuelと、正味仕事Weから、以下の式により算出した。
ηe=We/Qfuel
ここで、正味仕事はWe、過電流ダイナモメータ(明電舎製 TW−D1)を用いて計測したエンジン負荷から算出し、低位発熱量Qfuelは、計量管を用いて計測した燃料消費量から算出した。
(2)騒音
エンジンの燃焼騒音は、騒音測定器(リオン製 NA−23)を用いて測定した。具体的には、測定器の騒音検出部をエンジンのカムカバー中心の正面に載置し、カムカバーから騒音検出部までの距離は450mmとした。
(1)NOx(窒素酸化物)
エンジンの排気管に設置したガスサンプル取り出し口から排出ガスの一部を抜き取って、
自動車排出ガス分析装置(堀場製作所製 MEXA−8120)に組み込まれた化学発光式分析計(堀場製作所製 C5−3013)を用いて測定した。
(2)スモーク
エンジンの排気管に設置したガスサンプル取り出し口から排出ガスの一部を抜き取り、スモークメータ(ボッシュ製 ZEXEL DSM−20AN)を用いて測定した。
実施例1と同じ仕様の多段噴射機構付きディーゼルエンジンを用いて、前記のようにして得られた表1の燃料油を用いて運転試験を行った。エンジン性能試験方法、および排出ガス試験方法は実施例1と同じである。結果を表3に示す。
、エンジンの運転条件を以下のように設定した以外は、実施例1と運転条件は同じである。
(実験2) BMEP=0.5MPa
パイロット噴射:噴射時期=−25degATDC、噴射量=5mm3/ストローク
主噴射 :噴射時期=−4degATDC、噴射量=21mm3/ストローク
なお、基準油1を用いた実施例2よりも、基準油1にくらべて全芳香族分濃度が高く、セタン指数の低い(着火遅れ時間が長い)基準油2を用いた実施例3のほうが、正味熱効率およびスモーク低減効果に関してより優れることもわかる。
Claims (7)
- 下記(1)及び(2)に示す性状を具備することを特徴とする多段噴射機構を有するディーゼルエンジン用燃料油 。
(1)全芳香族分:45容量%以上
(2)真発熱量:9000Kcal/L以上 - 請求項1に記載の燃料油において、
さらに下記(3)〜(5)に示す性状を具備することを特徴とする燃料油。
(3)密度:0.88g/cm3以上
(4)90容量%留出温度:300℃以上
(5)動粘度(50℃):1.3mm2/s以上 - 請求項1または請求項2に記載の燃料油において、
さらに、下記(6)〜(8)に示す性状を具備することを特徴とする燃料油。
(6)硫黄分の含有量:0.4質量%以下
(7)10%残油の残留炭素分:0.5質量%以下
(8)アニリン点:50℃以下 - 請求項1〜請求項3のいずれかに記載の燃料油において、
下記式(9)及び式(10)に示す性状を具備することを特徴とする燃料油。
10≦CII≦40 (9)
IC≦85 (10)
[ここで、CIIは、CII=64.024/D2+0.00122A2−46.36で表される指標であり(D:密度(g/cm3)、A:アニリン点(℃))、ICは、IC=82.19+0.424D−6.159logV−0.0936Cで表される指標である(V:動粘度(50℃、mm2/s)、C:10%残油の残留炭素分(質量%))。] - 請求項1〜請求項4のいずれかに記載の燃料油を、多段噴射機構を有し少なくとも部分的に予混合圧縮自己着火燃焼を行うディーゼルエンジンに使用する燃焼方法。
- 請求項5に記載の燃焼方法において、
前記燃料油の供給を、プログラマブル・ロジック・デバイス(PLD)、プログラマブル・ロジック・アレイ(PLA)及び専用制御デバイスから選ばれる少なくとも一つ以上の集積回路によって制御することを特徴とする燃焼方法。 - 多段噴射機構を具備するディーゼルエンジンであって、燃料として請求項1〜4のいずれかに記載の燃料油を用いたことを特徴とするディーゼルエンジン。
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