JP5334556B2 - 低温、予混合化圧縮着火エンジン用燃料油組成物 - Google Patents

低温、予混合化圧縮着火エンジン用燃料油組成物 Download PDF

Info

Publication number
JP5334556B2
JP5334556B2 JP2008322444A JP2008322444A JP5334556B2 JP 5334556 B2 JP5334556 B2 JP 5334556B2 JP 2008322444 A JP2008322444 A JP 2008322444A JP 2008322444 A JP2008322444 A JP 2008322444A JP 5334556 B2 JP5334556 B2 JP 5334556B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
oil composition
fuel oil
combustion
exhaust gas
fuel
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Active
Application number
JP2008322444A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2009167400A (ja
Inventor
行男 赤坂
昭雄 鈴木
善克 鈴木
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Eneos Corp
Original Assignee
JXTG Nippon Oil and Energy Corp
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by JXTG Nippon Oil and Energy Corp filed Critical JXTG Nippon Oil and Energy Corp
Priority to JP2008322444A priority Critical patent/JP5334556B2/ja
Publication of JP2009167400A publication Critical patent/JP2009167400A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP5334556B2 publication Critical patent/JP5334556B2/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Landscapes

  • Liquid Carbonaceous Fuels (AREA)

Description

本発明は、排気ガス再循環装置を具え、多量のEGRを使用する低温、予混合化圧縮着火エンジン用の燃料油組成物に関し、特には、排気ガスを再循環させ、吸入空気中の酸素濃度が17体積%以下となる条件下で運転しても、安定した低温、予混合化燃焼が成立し、有害ガス成分の排出を削減することが可能で、且つ従来型のディーゼルエンジンにも適用できる燃料油組成物に関するものである。
自動車から排出される窒素酸化物(NOx)、粒子状物質(PM)、一酸化炭素(CO)、炭化水素(HC)は、大気中におけるこれら有害成分濃度に一定の寄与があるため、大気環境改善の観点から、これら有害排出ガス成分の削減が強く求められている。一方、地球温暖化防止のためには、化石燃料の燃焼で排出されるCO2の削減が必要であり、自動車からのCO2排出の削減、即ち、自動車の燃料消費効率(燃費)の向上が強く求められている。そこで、CO2排出の少ないディーゼル車が注目されているが、ディーゼル車は排出ガスの点でガソリン車に劣っており、排出ガスの改善が強く求められている。なお、排出ガスの浄化には後処理装置の装着が必要であるが、長期に渡って使用される同装置への負荷を軽減し、性能を維持するために、クリーンなディーゼル燃焼が求められ、多量の排出ガスの再循環(EGR)を採用する低温、予混合化燃焼が開発されている。この低温、予混合化燃焼が可能なエンジンの運転範囲は限定されるので、従来型のディーゼル燃焼と併用することとなるが、低温、予混合化燃焼範囲の拡大に向けた開発が進んでいる。
多量のEGRを採用して低温、予混合化燃焼が成立するエンジン条件下では、EGR量の増加によってNOxは低減されるものの、PM、HC、COの増加や着火・燃焼が不安定となり燃焼変動の増大を招いてしまう。そのため、EGR量の増加には、限界があり、燃料の着火性や排出ガス特性が重要な役割を演じる事となる。また、低温、予混合化圧縮着火エンジンでは、従来型ディーゼル燃焼を併用するので、同エンジン用燃料は、低温、予混合化燃焼と従来型ディーゼル燃焼の両者に適用できることが必要である。
一方、従来型ディーゼルエンジンでは、種々の有害ガス成分の排出低減に寄与するクリーン燃料として酸素含有化合物の利用が提案されているが、多量のEGRを導入した低温、予混合化燃焼からの排出ガスを改善できる酸素含有化合物配合クリーン燃料は開発されていない。そこで、低温、予混合化燃焼と従来型ディーゼル燃焼の両者からの有害排出ガスの少ない酸素含有化合物配合燃料の開発が望まれている。
特開2005−23139号公報 KOZAK Miloslaw, "The Influence of Synthetic Oxygenates on Euro IV Diesel Passenger Car Exhaust Emissions", SAE Technical Paper 2007-01-0069 (2007)
このような状況下、本発明の目的は、従来型のディーゼル燃焼でも排出ガスの浄化に効果があり、且つ多量の外部EGRの採用で吸入空気中の酸素濃度が17体積%以下となる条件下で低温、予混合化燃焼運転しても、安定した着火・燃焼が成立し、かつ有害排出ガス成分の削減に寄与することが可能な低温、予混合化圧縮着火エンジン用の酸素含有化合物配合燃料油組成物を提供することにある。
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意検討した結果、特定の蒸留性状を有し、硫黄分及び芳香族分が少ない上、酸素含有化合物が一定量以上配合されたセタン価の高い燃料油組成物を、排気ガス再循環装置を具える低温、予混合化圧縮着火エンジンに用いた場合、該エンジンを吸入空気中の酸素濃度が17体積%以下となる条件下で運転しても、低温、予混合化燃焼が成立する上、有害ガス成分の排出を削減できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
即ち、本発明の燃料油組成物は、
・排気ガスの少なくとも一部を吸入空気中に再循環する排気ガス再循環装置を具え、吸入空気と再循環された排気ガスとの混合ガス中の酸素濃度が17体積%以下となる条件で運転される低温、予混合化圧縮着火エンジン用の燃料油組成物であって、
・硫黄分が10質量ppm以下で、
・90容量%留出温度が300℃以下で、
・セタン価(CN)が58以上で、且つ
・芳香族分が20容量%以下であり、
・酸素含有化合物を5容量%以上含有する
ことを特徴とする。
なお、本発明において、硫黄分はJIS K2541−6に従って測定され、90容量%留出温度はJIS K2254に従って測定され、セタン価(CN)はJIS K2280に従って測定され、芳香族分は石油学会石油類試験関係規格JPI−5S−49−97に従って測定される。
また、本発明の燃料油組成物において、前記酸素含有化合物としては、下記一般式(1):
1O−(AO)n−H ・・・ (1)
[式中、R1は炭素数1〜4のアルキル基であり、Aはそれぞれ独立して炭素数2〜4のアルキレン基であり、nは2〜10である]で表わされるポリアルキレングリコール、及び下記一般式(2):
2−COO−R3 ・・・ (2)
[式中、R2−COは炭素数12〜20の飽和又は不飽和の脂肪酸残基であり、R3は炭素数1〜4のアルキル基である]で表わされる脂肪酸エステルが好ましい。
本発明によれば、特定の蒸留性状を有し、硫黄分及び芳香族分が少ない上、酸素含有化合物が一定量以上配合されたセタン価の高い燃料油組成物を、排気ガス再循環装置を具える低温、予混合化圧縮着火エンジンに用いることで、該エンジンを吸入空気中の酸素濃度が17体積%以下となる条件下で運転しても、低温、予混合化燃焼を安定的に成立させることができ、且つ有害ガス成分の排出を削減することも可能となる。
以下に、本発明を詳細に説明する。本発明の燃料油組成物は、排気ガスの少なくとも一部を吸入空気中に再循環する排気ガス再循環装置を具え、吸入空気と再循環された排気ガスとの混合ガス中の酸素濃度が17体積%以下となる条件で運転される低温、予混合化圧縮着火エンジン用の燃料油組成物であって、硫黄分が10質量ppm以下で、90容量%留出温度が300℃以下で、セタン価(CN)が58以上で、且つ芳香族分が20容量%以下であり、酸素含有化合物を5容量%以上含有することを特徴とする。本発明の燃料油組成物は、90容量%留出温度が低く且つ芳香族分が少ないため、燃料油組成物と空気との混合気の形成や燃焼性に支障を来たすことが無く、また、セタン価(CN)が高く且つ酸素含有化合物が配合されているため、吸入ガス中の酸素濃度が17体積%以下となる条件下で低温、予混合化燃焼運転しても、従来の燃料を用いて運転する時に見られる排出ガスの悪化を抑制することができ、且つ従来型ディーゼル燃焼でも有害排出ガスの低減に効果がある。
<硫黄分>
本発明の低温、予混合化圧縮着火エンジン用燃料油組成物は、硫黄分が10質量ppm以下であり、好ましくは4質量ppm以下である。本発明の燃料油組成物は、硫黄分が10質量ppm以下であるため、燃焼生成物である硫黄酸化物が少なく、環境負荷の低減に寄与できる。また、硫黄分は、排出ガス浄化触媒を被毒するので、硫黄分の低減は、排出ガス浄化触媒の性能の維持を通じても、環境負荷の低減に寄与できる。更に、NOx吸蔵還元触媒を装着した車輌においては、該触媒の硫黄被毒の再生に燃料を使用するので、硫黄分の低減は、燃費の向上にも寄与する。そして、これらの効果は、硫黄分が低い程顕著であるため、本発明の燃料油組成物中の硫黄分は、4質量ppm以下であることが好ましい。
<90容量%留出温度(T90)>
本発明の低温、予混合化圧縮着火エンジン用燃料油組成物は、90容量%留出温度(T90)300℃以下である。90容量%留出温度(T90)が330℃を超えると、粒子状物質(PM)の排出量が増加して、環境負荷を十分に低減できない。また、燃料油組成物の後留部分の揮発性は、燃料油組成物と空気との混合気の形成や燃焼性に影響し、90容量%留出温度(T90)が330℃を超えると、燃料油組成物と空気との混合気の形成に支障を来たしたり、該混合気の燃焼性が低下してしまう。更に、ディーゼルエンジンに比べて燃料を早期に噴射する低温、予混合化圧縮着火エンジンでは、燃料の一部がシリンダーライナーに到達し、ピストンの下降で掻き落とされてオイルパンへと流れ込み、エンジンオイルの希釈を引き起こすことがあるが、90容量%留出温度(T90)が330℃以下の燃料組成物は、気化し易く、ピストンの下降前に十分気化・燃焼するため、エンジンオイルの希釈を抑制することができる。従って、低温、予混合化圧縮着火エンジン用燃料の性状としては、90容量%留出温度(T90)が330℃以下であることが必要である。そして、上記の問題に対応するには、90容量%留出温度(T90)が低い程好ましいため、本発明の燃料油組成物は、90容量%留出温度(T90)300℃以下である。また、特に限定されるものではないが、本発明の燃料油組成物は、軽油の生産量減少を抑制する観点から、90容量%留出温度(T90)が270℃以上であることが好ましい。
<セタン価(CN)>
本発明の低温、予混合化圧縮着火エンジン用燃料油組成物は、高EGR条件下でも安定した着火を確保しつつ、HCやCOの増加を抑え、更には、低負荷条件下での低温、予混合化燃焼を確保する観点から、セタン価(CN)58以上である。なお、従来型ディーゼル燃焼では、セタン価が45以上で十分な性能を発揮するが、低温、予混合化燃焼では、高いセタン価(CN)と酸素含有化合物の配合との組み合わせが重要である。なお、セタン価を調整するために、本発明の燃料油組成物には、セタン価向上剤を添加してもよい。
<セタン価向上剤>
上記セタン価向上剤としては、アルキルナイトレート系セタン価向上剤、有機過酸化物系セタン価向上剤が挙げられる。上記アルキルナイトレート系セタン価向上剤としては、炭素数6〜12のアルキルナイトレートが好ましく、2-メチルヘキシルナイトレートが特に好ましい。また、上記有機過酸化物系セタン価向上剤としては、炭素数6〜12のジアルキルパーオキサイドが好ましく、ジ-t-ブチルパーオキサイドが特に好ましい。これらセタン価向上剤の添加量は、0.5質量%以下の範囲が好ましく、0.1質量%以下の範囲が更に好ましい。
<芳香族分>
本発明の低温、予混合化圧縮着火エンジン用燃料油組成物は、芳香族分が20容量%以下である。芳香族分が増加すると、排出ガス中の一酸化炭素(CO)や粒子状物質(PM)が増加するため、本発明の燃料油組成物は、芳香族分が20容量%以下、好ましくは19容量%以下、更に好ましくは18容量%以下である。
<酸素含有化合物>
本発明の低温、予混合化圧縮着火エンジン用燃料油組成物は、有害ガス成分の排出削減の観点から、酸素含有化合物を5容量%以上含有し、好ましくは10容量%以上含有する。また、酸素含有化合物を5容量%以上含有する事で従来型ディーゼル燃焼にも効果がある。一方、特に限定されるものではないが、本発明の燃料油組成物は、経済性や燃料性状全体のバランスを確保する観点から、酸素含有化合物の含有量が40容量%以下であることが好ましい。
本発明の燃料油組成物に配合する酸素含有化合物としては、上記一般式(1)で表わされるポリアルキレングリコール、及び上記一般式(2)で表わされる脂肪酸エステルが好ましく、これら酸素含有化合物は、一種単独で使用してもよいし、二種以上を組み合わせて使用してもよい。
上記一般式(1)において、R1は炭素数1〜4のアルキル基であり、Aはそれぞれ独立して炭素数2〜4のアルキレン基であり、nは2〜10である。ここで、R1における炭素数1〜4のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、i-プロピル基、n-ブチル基、i-ブチル基等が挙げられ、これらの中でもメチル基が好ましい。また、Aにおける炭素数2〜4のアルキレン基としては、エチレン基、トリメチレン基、プロピレン基、テトラメチレン基、ブチレン基、イソブチレン基等が挙げられ、これらの中でもプロピレン基が好ましい。また、式(1)のポリアルキレングリコールとしては、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノエチルエーテル等が挙げられ、これらの中でも、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル(TPM)が好ましい。
上記一般式(2)において、R2−COは炭素数12〜20の飽和又は不飽和の脂肪酸残基であり、R3は炭素数1〜4のアルキル基である。R2−COにおける炭素数12〜20の飽和又は不飽和の脂肪酸残基としては、パルミチン酸残基、ステアリン酸残基、オレイン酸残基、リノール酸残基、リノレン酸残基等が挙げられる。また、R3における炭素数1〜4のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、i-プロピル基、n-ブチル基、i-ブチル基等が挙げられ、これらの中でもメチル基が好ましく、即ち、式(2)の脂肪酸エステルとしては、脂肪酸メチルエステル(FAME)が好ましい。
<燃料油組成物の調製>
本発明の低温、予混合化圧縮着火エンジン用燃料油組成物は、上記の性状を満たすように、例えば、軽油基材に対して、酸素含有化合物を配合して調製することができる。この場合、配合する酸素含有化合物の沸点は、軽油基材の分留性状範囲に影響しないよう、150〜400℃の範囲が好ましい。また、ベースとなる軽油基材のセタン価は通常45以上であり、本発明の燃料油組成物はセタン価が58以上であるため、セタン価向上剤を用いる場合を想定しても、配合する酸素含有化合物はセタン価が45以上であることが好ましい。更に、排出ガスの浄化に効果を発揮するためには、酸素含有化合物の酸素含有量が一定値以上であることが好ましく、具体的には、酸素/炭素比が0.05以上であることが好ましい。加えて、実用上の観点から、酸素含有化合物は、軽油基材に可溶であることが好ましく、また、軽油基材と酸素含有化合物の混合物に水を加えても相分離しないことが好ましい。
上記軽油基材は、好ましくは、硫黄分が10質量ppm以下で、90容量%留出温度(T90)が330℃以下で、セタン価(CN)が45以上である。使用する軽油基材の硫黄分、90容量%留出温度(T90)及びセタン価(CN)がこの範囲を外れると、添加剤を用いても製品となる燃料油組成物の硫黄分、90容量%留出温度(T90)及びセタン価(CN)を本発明で規定する範囲にすることが難しくなる。上記軽油基材は、石油由来であっても、非石油由来であってもよく、該軽油基材としては、例えば、原油を常圧蒸留して得られ直留軽油留分や、原油を常圧蒸留または減圧蒸留して得られる石油留分を水素化精製、水素化分解、接触分解、溶剤抽出等して得られる軽油留分、更には、FT法等で誘導される合成軽油等を挙げることができる。
<その他の添加剤>
本発明の低温、予混合化圧縮着火エンジン用燃料油組成物には、上記セタン価向上剤以外の添加剤として、燃料油組成物の安定性を確保するための酸化防止剤、低温流動性を確保するための低温流動性向上剤、潤滑性を確保するための潤滑性向上剤、エンジンの清浄性を確保するための清浄剤等を適宜添加することができる。
上記酸化防止剤としては、2,6-ジ-t-ブチルフェノール、2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノール、2,4-ジメチル-6-t-ブチルフェノール、2,4,6-トリ-t-ブチルフェノール、2-t-ブチル-4,6-ジメチルフェノール、2-t-ブチルフェノール等のフェノール系酸化防止剤や、N,N'-ジイソプロピル-p-フェニレンジアミン、N,N'-ジ-sec-ブチル-p-フェニレンジアミン等のアミン系酸化防止剤、及びこれらの混合物が挙げられる。これら酸化防止剤の添加量は、特に限定されず、目的に応じて、適宜選択することができる。
上記低温流動性向上剤としては、公知のエチレン共重合体等を用いることができるが、特には、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル等の飽和脂肪酸のビニルエステルが好ましく用いられる。これら低温流動性向上剤の添加量は、特に限定されず、目的に応じて、適宜選択することができる。
上記潤滑性向上剤としては、例えば、長鎖(例えば、炭素数12〜24)の脂肪酸又はその脂肪酸エステルが好ましく用いられる。該潤滑性向上剤を10〜500質量ppmの範囲、好ましくは50〜100質量ppmの範囲で添加することで、耐摩耗性を十分に向上させることができる。
上記清浄剤としては、コハク酸イミド、ポリアルキルアミン、ポリエーテルアミン等が挙げられる。これら清浄剤の添加量は、特に限定されず、目的に応じて、適宜選択することができる。
<低温、予混合化圧縮着火エンジン>
上述した本発明の燃料油組成物は、低温、予混合化圧縮着火エンジンに用いられる。該エンジンは、予混合圧縮着火エンジンであるPCCI(Premixed Charge Compression Ignition)やHCCI(Homogeneous Charge Compression Ignition)エンジンを包含するものであり、予混合燃焼を主に多量のEGRによって達成するものである。低温、予混合化燃焼は、従来のディーゼルエンジンと同様に圧縮着火であるが、燃料噴射時期、燃料噴射圧力や噴射パターン、圧縮比、燃焼室構造などを最適化して達成される燃料と空気が十分に混合した予混合気の燃焼で形成される予混合火炎のみで燃焼を完結する燃焼方式であり、また、該低温、予混合化燃焼は、予混合気の形成に必要な長い着火遅れを多量のEGRで達成するものであり、多量のEGRが必須な予混合燃焼である。従来のディーゼルエンジンでは、予混合火炎に加えて燃料と空気の境界層に火炎が形成される拡散火炎が観察されるが、低温、予混合化圧縮着火エンジンでは、この拡散火炎が観察されない。すなわち、該低温、予混合化燃焼は、熱発生率曲線を観察すると冷炎に伴う微弱な熱発生に続いて、主燃焼による熱発生のピークが予混合火炎に対応する1つのピークだけの燃焼であり、NOxやPMが抑制されている。一方、実際の熱発生曲線では熱発生の後半がテーリングする事があるため、低温、予混合化圧縮着火エンジンは、予混合燃焼に伴う熱発生が全体の90%以上(予混合燃焼か拡散燃焼かが明確でない後半の燃焼が10%以下)のエンジンと定義される。また、該予混合化圧縮着火エンジンは、高圧縮比で運転できることなどから、ガソリンエンジン(火花点火式エンジン)に比べて高効率であるという特徴を有する。
また、該予混化圧縮着火エンジンは、排気ガス再循環装置を具え、多量な排気ガス再循環(EGR)により着火時期を抑制して、低温化、予混合化を図るエンジン条件において、従来の燃料を用いると、粒子状物質(PM)、一酸化炭素(CO)、炭化水素(HC)が増加し、また、燃焼変動が増大する問題がある。これに対して、特定の蒸留性状を有し、硫黄分、セタン価(CN)及び芳香族分が特定の範囲にある上、酸素含有化合物が一定量以上配合された本発明の燃料油組成物を用いることで、PM、HC、CO等の有害ガス成分の排出を抑制しつつ、燃焼変動も小さくなる。そして、この効果は、例えば、排気ガス再循環(EGR)率を35体積%以上、更には、45体積%以上とし、吸入空気と再循環された排気ガスとの混合ガス中の酸素濃度が17体積%以下となる条件で運転した際に顕著となる。より具体的には、本発明の燃料油組成物を用いることにより、吸入空気中の酸素濃度が17体積%以下となる条件下で低温、予混合化圧縮着火燃焼運転をしても安定した燃焼が成立し、また、有害ガス成分の排出を削減することも可能となる。
以下に、実施例を挙げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明は下記の実施例に何ら限定されるものではない。
以下の供試燃料に対して、下記の方法で性状分析を行い、更に、下記のエンジンを下記の条件で運転して、排出ガス中の粒子状物質(PM)、窒素酸化物(NOx)、炭化水素(HC)、一酸化炭素(CO)の各濃度、燃焼変動、着火遅れ、熱発生率の最大値を下記の方法で測定・評価し、市販軽油での結果を基準として各供試油の性能が改善された場合を(○)、悪化した場合を(×)、殆ど変化しなかった場合を(△)、やや改善した場合を(△/○)として相対評価した。燃料の性能評価は、エンジンを十分に暖気した後に、燃料噴射量を固定してEGR率を0から70%まで順次、増大させて(吸入空気中の酸素濃度は22体積%から8%体積まで)、EGRを用いない従来型ディーゼル燃焼から高EGR条件下での低温、予混合化燃焼におけるエンジン性能(排出ガス、燃焼挙動)を総合的に評価した。なお、低温、予混合化燃焼条件では、燃焼の開始が上死点になるように、燃料の噴射時期を調整した。結果を表1に示す。
<供試燃料の調製>
・軽油:市販の軽油(JIS 2号)を準備した。
・燃料−1:市販軽油90容量%に、トリプロピレングリコールメチルエステル(TPM)を10容量%混合して調製した。
・燃料−2:市販軽油を90容量%留出温度(T90)が300℃以下となるように分留した軽質軽油基材90容量%に、トリプロピレングリコールメチルエステル(TPM)を10容量%混合し、該混合物にアルキルナイトレート(NT, セタン価向上剤)を0.5質量%添加して調製した。
・燃料−3:市販軽油80容量%に、接触分解装置からの接触分解油(LCO)を20容量%混合して調製した。
・TPM:川口薬品化学(株)から純度97.5%以上を購入した。
・アルキルナイトレート:アフトンケミカル・ジャパン(株)製HITEC−4105K
<燃料の性状分析法>
・密度:JIS K2249「原油及び石油製品密度試験法」
・蒸留性状:JIS K2254「蒸留試験法」
・硫黄分:JIS K2541−6「硫黄分試験法(紫外蛍光法)」
・セタン価(CN):JIS K2280「石油製品−燃料油−オクタン価及びセタン価試験方法並びにセタン指数算出方法」に規定された実測法(指数は適用できない)
・芳香族分:JPI−5S−49−97「石油製品−炭化水素タイプ試験方法−高速液体クロマトグラフ法」
<供試機関諸元>
・気筒数:1
・排気量(cm3):1007
・圧縮比:14〜18
・燃料供給方式:筒内噴射(コモンレール)
<運転条件>
・回転速度(rpm):1200
・燃料噴射量(mm3):可変(PCCI燃焼範囲をカバー)
・燃料噴射圧力(MPa):40〜120
・EGR率(%):0〜70
<性能評価方法>
(1)排出ガス測定
堀場製排出ガス測定装置を用いて、排出ガス中の窒素酸化物(NOx)、炭化水素(HC)、一酸化炭素(CO)の各濃度を測定した。また、黒煙の測定には小野測器製スモークメータを用いた。
(2)燃焼解析
小野測器製燃焼解析装置を用いて、燃焼変動、着火遅れ、熱発生率の最大値を測定した。
Figure 0005334556
表1から明らかなように、本発明で規定する性状を満たし、酸素含有化合物が5容量%以上配合された燃料油組成物を用いた場合、EGRの採用で吸入空気中の酸素濃度が17体積%以下となる条件下で低温、予混合化圧縮着火エンジンを運転しても、安定した低温、予混合化燃焼が成立し、黒煙、HC、CO等の有害ガス成分の排出を削減することができる。また、従来型ディーゼル燃焼でも排出ガスの低減に効果がある。

Claims (2)

  1. 排気ガスの少なくとも一部を吸入空気中に再循環する排気ガス再循環装置を具え、吸入空気と再循環された排気ガスとの混合ガス中の酸素濃度が17体積%以下となる条件で運転される低温、予混合化圧縮着火エンジン用の燃料油組成物であって、
    硫黄分が10質量ppm以下で、90容量%留出温度が300℃以下で、セタン価(CN)が58以上で、且つ芳香族分が20容量%以下であり、酸素含有化合物を5容量%以上含有することを特徴とする燃料油組成物。
  2. 前記酸素含有化合物が、下記一般式(1):
    1O−(AO)n−H ・・・ (1)
    [式中、R1は炭素数1〜4のアルキル基であり、Aはそれぞれ独立して炭素数2〜4のアルキレン基であり、nは2〜10である]で表わされるポリアルキレングリコール、及び下記一般式(2):
    2−COO−R3 ・・・ (2)
    [式中、R2−COは炭素数12〜20の飽和又は不飽和の脂肪酸残基であり、R3は炭素数1〜4のアルキル基である]で表わされる脂肪酸エステルからなる群から選択される少なくとも一種であることを特徴とする請求項1に記載の燃料油組成物。
JP2008322444A 2007-12-18 2008-12-18 低温、予混合化圧縮着火エンジン用燃料油組成物 Active JP5334556B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2008322444A JP5334556B2 (ja) 2007-12-18 2008-12-18 低温、予混合化圧縮着火エンジン用燃料油組成物

Applications Claiming Priority (3)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2007326246 2007-12-18
JP2007326246 2007-12-18
JP2008322444A JP5334556B2 (ja) 2007-12-18 2008-12-18 低温、予混合化圧縮着火エンジン用燃料油組成物

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2009167400A JP2009167400A (ja) 2009-07-30
JP5334556B2 true JP5334556B2 (ja) 2013-11-06

Family

ID=40968944

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2008322444A Active JP5334556B2 (ja) 2007-12-18 2008-12-18 低温、予混合化圧縮着火エンジン用燃料油組成物

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP5334556B2 (ja)

Families Citing this family (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2010222457A (ja) * 2009-03-23 2010-10-07 Jx Nippon Oil & Energy Corp 燃料油組成物

Family Cites Families (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
FR2849052B1 (fr) * 2002-12-19 2009-05-01 Inst Francais Du Petrole Methode d'elaboration de formulations de carburants permettant un fonctionnement optimum d'un moteur developpe pour le mode de combustion hcci
JP2006037075A (ja) * 2004-06-21 2006-02-09 Idemitsu Kosan Co Ltd 予混合圧縮自己着火式エンジン用燃料油組成物
JP5184903B2 (ja) * 2008-01-28 2013-04-17 Jx日鉱日石エネルギー株式会社 低温、予混合化圧縮着火エンジン用燃料油組成物

Also Published As

Publication number Publication date
JP2009167400A (ja) 2009-07-30

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP5178253B2 (ja) 予混合圧縮自己着火式エンジン用燃料
JP5355064B2 (ja) 予混合圧縮自己着火式エンジン用燃料
JP2006028493A (ja) 予混合圧縮自己着火式エンジン用燃料油組成物
JP2008031436A (ja) 圧縮着火式内燃機関用の燃料油組成物および圧縮着火式内燃機関の制御方法
JP5019802B2 (ja) 予混合圧縮自己着火式エンジン用燃料
JP2006037075A (ja) 予混合圧縮自己着火式エンジン用燃料油組成物
JP5545677B2 (ja) 予混合圧縮自己着火式エンジン用燃料
JP5184903B2 (ja) 低温、予混合化圧縮着火エンジン用燃料油組成物
JP5334556B2 (ja) 低温、予混合化圧縮着火エンジン用燃料油組成物
JP2005343917A (ja) 予混合圧縮自己着火式エンジン用燃料油組成物
JP5319128B2 (ja) 予混合圧縮着火エンジン用燃料油組成物及びその製造方法
JP5130065B2 (ja) オフロード用予混合圧縮着火エンジン用の燃料油組成物
JP2005343919A (ja) 予混合圧縮自己着火式エンジン用燃料油組成物
JP5283950B2 (ja) 低温、予混合化圧縮着火エンジン用燃料油組成物
JP5350769B2 (ja) 低温、予混合化圧縮着火エンジン用燃料油組成物
JP5342865B2 (ja) 予混合圧縮着火エンジン用燃料油組成物及びその製造方法
JP4815178B2 (ja) 予混合圧縮自己着火式エンジン用燃料
JP5188796B2 (ja) 予混合圧縮着火エンジン用燃料油組成物及びその製造方法
JP5436849B2 (ja) 予混合圧縮着火式エンジン用燃料油組成物
JP5334557B2 (ja) 予混合圧縮着火式エンジン用燃料油組成物
JP5620057B2 (ja) 予混合圧縮自己着火式エンジン用燃料油組成物
JP5436848B2 (ja) 予混合圧縮着火式エンジン用燃料油組成物
JP5342864B2 (ja) 予混合圧縮着火エンジン用燃料油組成物及びその製造方法
JP2005343918A (ja) 予混合圧縮自己着火式エンジン用燃料油組成物
JP5627845B2 (ja) 予混合圧縮着火ガソリンエンジン用燃料油組成物

Legal Events

Date Code Title Description
A711 Notification of change in applicant

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A712

Effective date: 20100831

A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20110217

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20130416

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20130521

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20130723

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20130730

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 5334556

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

S531 Written request for registration of change of domicile

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R313531

S533 Written request for registration of change of name

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R313533

R350 Written notification of registration of transfer

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R350

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

S533 Written request for registration of change of name

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R313533

R350 Written notification of registration of transfer

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R350

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

S533 Written request for registration of change of name

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R313533

R350 Written notification of registration of transfer

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R350

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250