JP4815178B2 - 予混合圧縮自己着火式エンジン用燃料 - Google Patents

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本発明は、予混合圧縮自己着火式エンジン用の燃料に関し、詳しくは、予混合圧縮自己着火燃焼において優れた着火性を有し、エンジン出力並びにエンジン回転領域をできるだけ広げ、エンジン熱効率の向上を達成することができる予混合圧縮自己着火式エンジン用燃料に関する。
今日、自動車用内燃機関としては、火花点火式ガソリンエンジンと圧縮自己着火式ディーゼルエンジンの二種類が広く使用されている。
火花点火式ガソリンエンジンは、吸気ポートあるいは燃焼室内に燃料を噴射して燃料と空気の予混合気を形成させ、スパークプラグによる電気放電で強制的に点火、燃焼させる方式であり、燃料特性として、蒸発しやすいこと、自己着火し難いこと、点火後は火炎伝播がスムーズに行われること等が求められる。火花点火式ガソリンエンジンにおいては、窒素酸化物(NOx)、炭化水素(HC)、一酸化炭素(CO)が排出されるため、これらの浄化に三元触媒等が広く使用されている。しかし、三元触媒による排出ガス浄化システムは、燃料と空気との割合が理論空燃比近傍になる範囲にしか適用できないため、圧縮自己着火式ディーゼルエンジンと比較すると熱効率、燃費が著しく劣るという欠点がある。
一方、圧縮自己着火式ディーゼルエンジンは、圧縮工程でのピストン上昇により燃焼室内の空気が圧縮されて温度が上昇し、軽油の臨界温度以上に達したところに燃料を噴霧し自己着火燃焼させる方式であり、燃料特性には自己着火しやすいことが求められる。圧縮自己着火式ディーゼルエンジンは、燃費及び熱効率面に優れるものの燃料噴霧を圧縮上死点前30クランク角度から圧縮上死点後10クランク角度付近で行うため、燃焼時の温度分布に濃淡が生じ、NOx及び煤の排出量が著しく高くなるという欠点がある。また圧縮自己着火式ディーゼルエンジンでは、排出ガス浄化のための触媒があまり普及しておらず、NOxが100〜1200質量ppmと非常に高いレベルで大気中に放出されるケースもある。
このように、従来の火花点火式ガソリンエンジンは、排出ガスの浄化はある程度できるが燃費や熱効率の面に課題があり、一方、圧縮自己着火式ディーゼルエンジンは、低燃費、高熱効率であるが、NOx等の排出ガスの面に課題がある。このため、低NOx排出ガス、低燃費及び高熱効率を同時に達成するという課題を解決すべく予混合圧縮自己着火式エンジンが現在検討されている。
予混合圧縮自己着火式エンジンは、燃料の噴射圧力レベルが20MPa以下と圧縮自己着火式ディーゼルエンジンにおける噴射圧力に比べると著しく低い燃料噴射圧力にて燃料を吸気ポート又は燃焼室内に噴射し、そのサイクルで燃焼する燃料噴射を圧縮上死点前60クランク角度以前に終了するシステムであって、燃料と空気との予混合気をスパークプラグによる強制点火ではなく、自己着火で燃焼させるエンジンである。予混合圧縮自己着火式エンジンは、従来の圧縮自己着火式ディーゼルエンジンに比べて燃料が噴射されてから燃焼の始まるまでの時間が長く、燃料が燃料室内で均一に混合されるため、燃焼時に局部的に温度の高い領域ができず、NOx排出レベルを触媒未装着状態で10質量ppm以下に抑えることが可能となり、かつ燃費及び熱効率を圧縮自己着火式ディーゼルエンジン並みの低燃費、高効率にすることが可能である。
このような予混合圧縮自己着火式エンジン用の燃料としては、燃料の揮発性指標およびセタン価、オクタン価等の既存のガソリンエンジン、ディーゼルエンジンの着火性指標に着目した燃料が提案されているが(例えば、特許文献1〜13参照。)、予混合圧縮自己着火燃焼のメカニズム面(燃料自身の自己着火特性)からみて、その特性を十分に発揮できているとは必ずしもいえず、予混合圧縮自己着火式エンジンにさらに適した燃料の開発が望まれている。
特開2004−91657号公報 特開2004−91658号公報 特開2004−91659号公報 特開2004−91660号公報 特開2004−91661号公報 特開2004−91662号公報 特開2004−91663号公報 特開2004−91664号公報 特開2004−91665号公報 特開2004−91666号公報 特開2004−91667号公報 特開2004−91668号公報 特開2004−315604号公報
本発明の目的は、予混合圧縮自己着火燃焼において優れた着火性を有し、エンジン出力並びにエンジン回転領域をできるだけ広げ、エンジン熱効率の向上を達成することができる予混合圧縮自己着火式エンジン用燃料を提供することにある。
本発明者らは、上記課題を解決するため、鋭意研究を重ねた結果、特定の組成を有し、かつ特定の条件で高温酸化反応が開始する燃料が予混合圧縮自己着火式エンジンの燃料に適していることを見いだし、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、シクロペンタン類の含有量が7容量%以下、ペンテン類の含有量が4容量%以下、芳香族分の含有量が3.2容量%以上15容量%以下、及びナフテン分の含有量が10容量%以下であり、かつ温度及び圧力が下記高温酸化反応式(1)を具備する条件下に高温酸化反応が開始することを特徴とする予混合圧縮自己着火式エンジン用燃料に関する。
(1) −0.0105×T+14≦P≦−0.0105×T+16
(ここで、Pは高温酸化反応開始時の圧力(MPa)、Tは高温酸化反応開始時の温度(K)を示す。)
本発明の燃料は、予混合圧縮自己着火燃焼時のエンジン出力並びにエンジン回転領域をできるだけ広げ、エンジン熱効率の向上を達成することができる。また、本発明の燃料は、予混合圧縮自己着火方式エンジンと火花点火方式エンジン、ディーゼルエンジン、電気モーターエンジン火花点火方式エンジンまたはディーゼルエンジンと電気モータ等を組み合わせたハイブリッド式エンジン等とを併用するエンジンの燃料としても利用可能である。
以下に本発明を詳述する。
本発明における燃料は、予混合圧縮自己着火方式エンジンに適した燃料である。ここで予混合圧縮自己着火方式とは、下記(A)、(B)及び(C)の条件下に燃料を噴射させ、自己着火により燃焼を行わせる燃焼形態をいう。
(A)燃料噴射圧力:20MPa以下
(B)燃料噴射位置:吸気ポート及び/又は燃焼室内部
(C)燃料噴射終了時期:圧縮上死点前60クランク角度以前
予混合圧縮自己着火方式は、従来のディーゼルエンジンなどにみられる圧縮自己着火方式と比較し、(A)の燃料噴射圧力が著しく低く、(C)の燃料噴射終了時期、即ち、燃料が噴射されてから燃焼が始まるまでの時間がかなり長い。従って、予混合圧縮自己着火方式においては、燃料が燃焼室内で均一に混合されるため、燃焼室内において局部的に温度の高い領域ができず、窒素酸化物の排出量を触媒未装着状態で10質量ppm以下にすることができる。
なお、予混合圧縮自己着火方式は、HCCI(Homogeneous Charge Compression Ignition)、PCCI(Premixed Charge Compression Ignition)、PCI(Premixed Compression Ignition)、CAI(Controlled Auto-Ignition)、AR(Active Radical (Combustion) )と呼ばれることもある。
本発明の燃料は、予混合圧縮自己着火方式エンジンに適した燃料であるが、該予混合圧縮自己着火方式と予混合圧縮自己着火方式エンジンと火花点火方式エンジン、ディーゼルエンジン、電気モーターエンジン火花点火方式エンジンまたはディーゼルエンジンと電気モータ等を組み合わせたハイブリッド式エンジン等とを併用するエンジンに対しても適用することができる。
燃料が自己着火する場合は、図1に示す通り、まず低温酸化反応が起こり、続いて高温酸化反応が起きる。図1は、排気量2000cc、圧縮比14の4サイクル直列6気筒ガソリンエンジンを改造した予混合圧縮自己着火式エンジンにおいて、シリンダ内に埋め込まれた高速応答型圧力センサー(例えば、日本キスラー社製601A)から得られる熱発生率の変化を、クランク角度(CAdeg)を横軸に熱発生率(J/CAdeg)を縦軸にとって示した図である。ここで低温酸化反応の活性が低下すると、続いて起こる高温酸化反応開始時の温度及び圧力に負の影響を及ぼし、予混合圧縮自己着火式エンジンのエンジン回転領域を著しく低減させてしまうことを種々の検討結果により本発明者等は明らかにした。下記に示す高温酸化反応式(1)は上述の自己着火特性をもとに、予混合圧縮自己着火式エンジンにおいて安定した自己着火が得られる範囲を高温酸化反応開始時の温度(T)と圧力(P)の関係から本発明者等が見出したものである。ここでいう高温酸化反応開始時の温度(T)及び圧力(P)とは、図1において熱発生率(J/CAdeg)がマイナスからプラスに転じたクランク角度でのエンジンシリンダ内の温度(K)及び圧力(MPa)を指す。
なお、この高温酸化反応式(1)は予混合圧縮自己着火式エンジンであればエンジンの種類や運転条件(回転数、負荷、過給圧力、空気量、燃料消費量、吸気温度、EGR率、バルブタイミングなど)に左右されることなく式中の圧力(P)及び温度(T)により求められるものである。
(1) −0.0105×T+14≦P≦−0.0105×T+16
本発明の燃料は、予混合圧縮自己着火式エンジンにおいて安定した燃焼、エンジン出力の向上、及び広いエンジン回転領域が得られる点から、高温酸化反応開始時の温度(T)及び圧力(P)が、上記の高温酸化反応式(1)の条件を満たすことが必要である。高温酸化反応開始時の温度及び圧力が、高温酸化反応式(1)の条件から外れると、高温酸化反応が阻害され、予混合圧縮自己着火燃焼が不安定化するので好ましくない。
本発明の燃料は、シクロペンタン類の含有量が7容量%以下であり、かつペンテン類の含有量が4容量%以下であることを満たすことが必要である。予混合圧縮自己着火式エンジンにおいて安定した燃焼、エンジン出力の向上、及び広いエンジン回転領域を得られる点からシクロペンタン類の含有量は5容量%以下が好ましく、3容量%以下がさらに好ましい。同様の理由から、ペンテン類の含有量は2容量%以下であることが好ましい。
シクロペンタン類の含有量及びペンテン類の含有量が上述の上限を超えると、予混合圧縮自己着火燃焼において、低温酸化反応の活性が低下し、引き続き起きる高温酸化反応が阻害されるので好ましくない。
シクロペンタン類としては、シクロペンタン骨格にアルキル基等の側鎖が1つまたは複数ついたものが挙げられ、代表的なものとしてはシクロペンタン、メチルシクロペンタン、エチルシクロペンタン、プロピルシクロペンタン、ジメチルシクロペンタン、メチルエチルシクロペンタン、トリメチルシクロペンタン及びこれらの異性体等が挙げられる。
また、ペンテン類としては、1−ペンテン、2−ペンテン等が代表的なものとして挙げられる。
なお、ここでいうシクロペンタン類の含有量及びペンテン類の含有量は、JIS K2536「石油製品−成分試験方法」に準拠してガスクロマトグラフを利用して測定される値をいう。
本発明の燃料において、芳香族分及びナフテン分は、予混合圧縮自己着火燃焼をする際の低温酸化反応が小さく、低温酸化反応を抑制するインヒビターとしての作用を有するため、それぞれの含有量は3.2容量%以上15容量%以下、10容量%以下である。またエンジンの負荷と回転数に対して熱効率の高い予混合圧縮自己着火燃焼の領域をさらに広げるためには芳香族分の含有量は10容量%以下であることがさらに好ましい。
なお、ここでいう芳香族分およびナフテン分のそれぞれの含有量は、JIS K2536「常圧法蒸留試験方法」による終点が250℃以下の場合は、JIS K2536「石油製品−成分試験方法」に準拠してガスクロマトグラフを利用して測定される値であり、終点が250℃を超える場合は、ナフテン分(容量%)はASTM D2786「Standard Test Method for Hydrocarbon Types Analysis of Gas-Oil Saturates Fractions by High Ionizing Voltage Mass Spectrometry」に準拠して測定され、芳香族分(容量%)は、社団法人石油学会により発行されている石油学会誌JPI−5S−49−97「炭化水素タイプ試験法−高速液体クロマトグラフ法」に準拠して測定される値を指す。
本発明の燃料において、硫黄分の含有量は特に限定されないが、10質量ppm以下であることが好ましく、触媒の性能維持の点から5質量ppm以下がより好ましく、1質量ppm以下が最も好ましい。硫黄分が10質量ppmを超えると、エンジンに装着した排出ガス浄化のための触媒が硫黄により被毒され、排出ガス浄化能力が低下する問題が生じ好ましくない。
ここで、硫黄分とは、JIS K2541「原油及び石油製品一硫黄分試験方法」により測定される値である。
本発明の燃料は、主成分として炭化水素を含むが、その他に、エーテル、アルコール、ケトン、エステル、グリコール等の含酸素化合物を含有していてもよい。
含酸素化合物としては、例えば、メタノール、エタノール、ノルマルプロピルアルコール、イソプロピルアルコール、ノルマルブチルアルコール、イソブチルアルコール、ジメチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、メチルターシャリーブチルエーテル(MTBE)、エチルターシャリーブチルエーテル(ETBE)、ターシャリーアミルメチルエーテル(TAME)、ターシャリーアミルエチルエーテル、脂肪酸メチルエステル、脂肪酸エチルエステル等が挙げられる。
本発明の燃料は、前記含酸素化合物を含有することにより、排出ガス中の未燃炭化水素(HC)、微小粒子状物質等を低減することができる。また、バイオマス由来の含酸素化合物を使用した場合は、二酸化炭素削減等にも寄与する。しかし、場合によっては窒素化合物の増加を招く場合もあるので、含酸素化合物の含有割合は、酸素元素換算(酸素含有量)で燃料全量に対し20質量%以下が好ましく、10質量%以下がより好ましく、3質量%以下が最も好ましい。
本発明の燃料は、上述の通り所定の性状を有する燃料を得られさえすれば、その基材については特に制限されるものではなく、例えば、原油蒸留装置、ナフサ改質装置、アルキレーション装置等から得られるプロパンを中心とした直留系プロパン留分、ブタンを中心とした直留系ブタン留分、それらを脱硫した直留系脱硫プロパン留分、直留系脱硫ブタン留分、接触分解装置等から得られるプロパン・プロピレンを中心とした分解系プロパン留分、ブタン・ブテンを中心とした分解系ブタン留分、原油を常圧蒸留して得られるナフサ留分(フルレンジナフサ)、ナフサの軽質留分(軽質ナフサ)、ナフサの重質留分(重質ナフサ)、フルレンジナフサを脱硫した脱硫フルレンジナフサ、軽質ナフサを脱硫した脱硫軽質ナフサ、重質ナフサを脱硫した脱硫重質ナフサ、軽質ナフサを異性化装置でイソパラフィンに転化して得られる異性化ガソリン、イソブタン等の炭化水素化合物に低級オレフィンを付加(アルキル化)することによって得られるアルキレート、接触改質法で得られる改質ガソリン、改質ガソリンから芳香族分を抽出した残分であるラフィネート、改質ガソリンの軽質留分、改質ガソリンの中重質留分、改質ガソリンの重質留分、接触分解法、水素化分解法等で得られる分解ガソリン、分解ガソリンの軽質留分、分解ガソリンの重質留分、原油の常圧蒸留装置から得られる直留軽油および直留灯油、常圧蒸留装置から得られる直留重質油や残査油を減圧蒸留装置で処理して得られる減圧軽油、減圧重質軽油あるいは脱硫重油を接触分解または水素化分解して得られる接触分解軽油、接触分解灯油、水素化分解軽油または水素化分解灯油、これらの石油系炭化水素を水素化精製して得られる水素化精製軽油、水素化脱硫軽油、若しく水素化精製灯油、及び天然ガス等を一酸化炭素と水素とに分解した後にF−T(Fischer−Tropsch)合成で得られるGTL(Gas to liquids)のナフサ留分、灯油留分、軽油留分等の基材を1種又は2種以上混合して調製することができる。
本発明の燃料には、必要に応じて公知の燃料添加剤を添加しても良い。例えば、燃料添加剤としては、高級カルボン酸とアルコールアミンとのアミド化合物等の摩擦調整剤、コハク酸イミド、ポリアルキルアミン、ポリエーテルアミン等の清浄分散剤、N,N’−ジイソプロピル−p−フェニレンジアミン、N,N’−ジイソブチル−p−フェニレンジアミン、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、ヒンダードフェノール類等の酸化防止剤、N,N’−ジサリチリデン−1,2−ジアミノプロパン等のアミンカルボニル縮合化合物等の金属不活性化剤、有機リン系化合物等の表面着火防止剤、多価アルコール及びそのエーテル等の氷結防止剤、有機酸のアルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩、高級アルコール硫酸エステル等の助燃剤、アニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、両性界面活性剤等の帯電防止剤、アゾ染料等の着色剤、有機カルボン酸及びそれらの誘導体類、アルケニルコハク酸エステル等の防錆剤、ソルビタンエステル類等の水抜き剤、硝酸エステルや有機過酸化物等のセタン価向上剤、カルボン酸系、エステル系、アルコール系およびフェノール系の潤滑性向上剤、シリコン系などの消泡剤、エチレン−酢酸ビニル共重合体、アルケニルコハク酸アミド等の低温流動性向上剤、キニザリン、クマリン等の識別剤、着臭剤等が挙げられる。これらの添加剤は、単独若しくは混合物として添加することができ、これら添加剤全量が、燃料全量基準で0.5質量%以下、より好ましくは0.2質量%以下となるような割合で添加することが好ましい。なお、ここでいう添加剤全量とは、添加剤の有効成分としての添加量を意味している。
以下に、実施例及び比較例を挙げ、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。
(実施例1〜9および比較例1〜8)
表1に示す組成に従って本発明の燃料(実施例1〜9)及び比較用の燃料(比較例1〜8)を常法により調製した。得られた各燃料の炭化水素化合物の含有割合、硫黄分、並びに高温酸化反応開始時の温度、圧力の測定結果を表1に併記した。
また、得られた各燃料を下記の予混合圧縮自己着火式エンジンを用いて、以下の試験を行い燃料の評価を実施した。結果を表2に示す。
(エンジン諸元)
エンジン種類:直列6気筒予混合圧縮自己着火式エンジン
排気量:2000cc
圧縮比:14
燃料噴射圧力:8MPa
(エンジン試験)
<ケース1>
実施例及び比較例の燃料について、エンジン回転数:2000rpm、トルク:80Nmで、2400サイクル分(400サイクル分×6回)の燃焼圧力データ(分解能0.25CAdeg)を小野測器社製燃焼解析装置(型番DS2100)を用いて採取し、以下の値を求めた。
(1)高温酸化反応開始時の温度T(K)、圧力P(MPa)
(2)y切片A:P=−0.0105×T+Aの式に高温酸化反応開始時の温度(T) 及び圧力(P)を代入して算出
(3)最大圧力上昇率
(4)平均有効圧力の変動値(平均有効圧力変動幅/平均有効圧力)
(結果)
実施例の燃料は、全て予混合圧縮自己着火に適正な最大圧力上昇率を示し、平均有効圧力の変動率は小さく、安定した予混合圧縮自己着火燃焼が得られた。一方、比較例の燃料は最大圧力上昇率が小さくなるのと同時に平均有効圧力の変動率が大きく、不安定な燃焼を起こし、予混合圧縮自己着火エンジンに不適な燃料であることが分かる。
また、高温酸化反応開始時の温度、圧力及びy切片Aを求めたところ、実施例の燃料のy切片Aは全て14以上16以下に収まり、高温酸化反応式(1)を満たすのに対し、比較例の燃料のy切片Aは14未満となり高温酸化反応式(1)を満たしていない。
<ケース2>
実施例及び比較例の燃料について、さまざまな負荷でエンジンを運転し、運転できる最大及び最小の回転数の限界を求め、エンジン運転領域の広さの比較を燃料毎に実施する。
(結果)
実施例の燃料に比べ、比較例の燃料は可能運転回転領域が著しく狭く、予混合圧縮自己着火エンジンに不適な燃料であることが分かる。
Figure 0004815178
Figure 0004815178
シリンダ内の熱発生率の変化を、クランク角度を横軸に熱発生率を縦軸にとって示した図である。

Claims (1)

  1. シクロペンタン類の含有量が7容量%以下、ペンテン類の含有量が4容量%以下、芳香族分の含有量が3.2容量%以上15容量%以下、及びナフテン分の含有量が10容量%以下であり、かつ温度及び圧力が下記高温酸化反応式(1)を具備する条件下に高温酸化反応が開始することを特徴とする予混合圧縮自己着火式エンジン用燃料。
    (1) −0.0105×T+14≦P≦−0.0105×T+16
    (ここで、Pは高温酸化反応開始時の圧力(MPa)、Tは高温酸化反応開始時の温度(K)を示す。)
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