JP2005290038A - 蛍光体薄膜並びにその製造方法及び製造装置 - Google Patents

蛍光体薄膜並びにその製造方法及び製造装置 Download PDF

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洋一郎 中西
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Abstract

【課題】 同じ蛍光体母体材料であるSr(In,Ga) 2 S 4 を使用するものはあるが、発光中心となる元素と母体材料を同時に成膜・形成しているため、蛍光体薄膜を発光中心毎に別々に作成する必要があり、煩雑である。
【解決手段】 基板25に形成させた同一の蛍光体母体材料からなる母体薄膜24に、発光中心G,B,Rとなる複数の元素が個別にイオン注入され、異なる発光中心R,G,Bの注入された蛍光体2R,2G,2Bの領域がそれぞれ発色できる。
【選択図】 図1

Description

本発明は、蛍光体薄膜並びにその製造方法及び製造装置に関し、特にフィールドエミッションディスプレイにおいて、同一の蛍光体母体材料からなる1 色又は2 色以上の発光領域を持ち、低速電子線で励起されて発光する蛍光体薄膜と、蛍光体薄膜の製造方法及びその製造装置に関するものである。
フルカラーを含むカラーの電界放射型ディスプレイ(フィールドエミッションディスプレイ(以下「FED 」という。))において、陽極に蛍光体が使用されている。このFED の蛍光体層には、一般に粉末の蛍光体が用いられてきた。
従来の蛍光面の製造方法において、被着した蛍光体の母体となる基体材料に、イオン注入を用いて発光中心となる元素をドーピングし、熱処理することで、所定のパターンで発光する蛍光面を作る方法が特許文献1(特開昭52-117886 号)に記載されている。この方法は、蛍光体の母体となる基体材料は母体材料からなる結晶を有していることが前提となっており、被着の手段として挙げられているものは、沈殿法、電着法、スプレー法、フォトレジスト法、スクリーン印刷法など、粉末の蛍光体被着工程で製造する蛍光体層の製造方法である。
そして、低電圧型のFED においては、蛍光体が電子線の衝突によって劣化する問題、蛍光体の分解に伴うガス放出や表面に吸着している分子の離脱によるガス放出があり、ガスは陽極上で正に帯電し、放出されると陰極へ加速して飛んでいき、陰極の構造物を破壊するという問題(アウトガス問題)、表面の電気伝導性の悪さから帯電して発光輝度が落ちるという問題(チャージアップ問題)などが問題とされている。これらの問題は、従来、粉末の蛍光体層の表面上にアルミニウムからなる保護層を設けることで解決していた。
しかし、低電圧型のFED では加速された電子が深くまで進入できないため、アルミニウムからなる保護層を使用することができないことに加えて、上記の蛍光体が電子線の衝突によって劣化する問題、アウトガス問題、チャージアップ問題などを克服する必要があった。
このような特性が望まれる中で、粉末の蛍光体にあっては、表面積が大きいためにアウトガスが発生し、粉末状で伝導性が非常に悪いため帯電しやすく、表面の平坦性が悪いために電子線の衝突で蛍光体の劣化が進みやすい、などの問題が顕著であった。
以上の問題を解決するために、粉末の蛍光体に代えて、薄膜とした蛍光体薄膜を使用することが検討されている。
従来の蛍光体薄膜の作成では、例えば複数の元素の蒸発量をコントロールして所定元素の比で薄膜を作成していたが、母体結晶中の発光中心濃度の違いによって、発光輝度に違いが起こるため、発光中心となる元素の量を厳密に制御する必要があった。
一方、低速電子線用蛍光体の製造を目的として、蛍光体母体結晶にイオン注入により発光中心を母体結晶表面から0.5 μm 以下の深さに注入したのち、熱処理を施して蛍光体の結晶を得る方法が特許文献2(特許2677143 )によって知られている。しかし、この方法は結晶化された母体結晶へのイオン注入に限定されている。また、このイオン注入は基板上と別の場所で蛍光体の粉末を攪拌しながらイオン注入することが予定され、基板上の薄膜に適用するものではない。
また、蛍光体薄膜は、無機ELディスプレイの発光層として使用されている。無機ELディスプレイにおいても、フルカラーのディスプレイとするためにはRGB 3 色つまり赤、緑、青3色の蛍光体薄膜を同じ基板の上に作成する必要がある。
従来、RGB 3 色の蛍光体薄膜を同じ基板の上に作成する方法としては、リフトオフ法が行われてきた。図15(1),(2),(3) を参照してリフトオフ法による蛍光体薄膜の作成方法を説明する。図15(1)(a)に示すように基板25の上に感光性のレジスト42を形成する。その
後、パターンが描かれたマスク43の位置を合わせて設置し、光44により露光してマスクのパターンをレジスト42に転写する。レジスト42としては感光部分がエッチングにより選択除去されるものを使用できる。次に、レジスト42の露光部分をエッチングして図15(1)(b)に示すレジストパターン42a を形成し、基板25上とレジストパターン4 2aの上に赤色発光中心r を含む母体材料1x薄膜1Ra を成膜する。その後、図15(1)(c)のように不要なフォ
トレジスト上の赤色発光中心r を含む母体材料1x薄膜1Ra をレジストごとエッチングしてリフトオフすることによって所定の位置に赤色発光中心r を含む母体材料1x薄膜1Ra を配置し、残りのGBに関しても図15(1)(d)〜図15(3)(i)で示すように、上記工程を繰り返し
てRGB 3 色の発光中心を含む母体材料薄膜を同じ基板の上に作成している。
さらに、RGB 3 色の蛍光体薄膜を同じ基板の上に作成した後、蛍光体薄膜が高輝度に発光するように熱処理を行う必要がある。しかし、RGB に発色する蛍光体母体材料1x、1y、1zがそれぞれ異なり、個々の蛍光体薄膜でそれぞれ熱処理温度や時間が異なっているため、必要な発光特性を得るための各々の蛍光体薄膜を作成する条件が異なり、フルカラーの蛍光体薄膜とすることが困難であった。
この問題を解決するための従来の技術としては、蛍光体を作成する毎にアニールを複数回実施することで、高輝度にするために必要な熱処理温度が低くなることを利用し、RGB
それぞれの輝度が高くなるよう選択して実施して、RGB 3 色の蛍光体薄膜が同じ基板の上に作成された高輝度な蛍光体薄膜を製造する技術が特許文献3(特開2003-272848 )によって提案されている。この方法によると、熱処理温度がそれぞれ異なるという課題を解決できる。
また、別の従来技術として、RGB の発光に使用する蛍光体に、同一の成膜手法を用いて高い輝度を得ることが可能な、化学的あるいは物理的な性質が類似した蛍光体の母体材料を使用することで、同一の作成手法を用いて高輝度な蛍光体薄膜を作成する提案が特許文献4(特許2840185 )によってなされている。この方法によれば、熱処理の時間と温度がRGB に発色する個々の蛍光体薄膜で異なるという課題を改善できる。
特開昭52-117886 号公報 特許2677143 号公報 特開2003-272848 号公報 特許2840185 号公報
特許文献3に係る発明にあっては、複数回の熱処理を必要とするため、工程が煩雑になり熱処理にも長時間が必要であった。加えて、熱処理装置は温度を設定する通常のものであり、レーザアニールを予定していない。
また、特許文献4に係る発明にあっては、実施例として2 色で同じ蛍光体母体材料であるSr(In,Ga) 2 S 4 を使用するが、発光中心と母体材料を同時に成膜していたため、各色毎に蛍光体薄膜を別々に作成する必要があり、作業が煩雑である。
要するに、特許文献1〜4の方法が持つ共通の問題点は次のようである。複数色の発光に使用する蛍光体薄膜を、リフトオフ法を用いて複数回成膜とフォトリソグラフィーとエッチングを行うという工程の煩雑さがあった。そして、蛍光体を高輝度にするためのアニール温度や時間が異なるため、特許文献3(特開2003-272848 )による提案を用いても長時間を要し、特許文献4(特許2840185 )による提案を用いても薄膜作成時に母体材料と発光中心となる元素を同時に形成するため、同じ蛍光体の母体材料を用いても、リフトオフ法を用いて複数回成膜を行う必要があった。
本発明では、特に2 色以上の異なる色の発光領域を同じ基板上に作成した蛍光体薄膜を、複数の原料をコントロールして行う薄膜作成回数を1 回で行い、高輝度化と結晶化に必要な熱処理温度と時間をほぼ同じくすることができる材料を用いることで、薄膜作成回数及び熱処理回数を減少させて蛍光体薄膜の製造工程を短縮し、製造コストを低減することができる蛍光体薄膜並びにその製造方法及び製造装置を提供することを目的としている。同時に、イオン注入する工程を採用し、発光中心の平面方向の濃度を厳密に制御し、かつ、深さ方向においても最適な発光中心濃度分布とすることにより、熱処理に際する基板への熱影響を軽減させ、1 色以上の発光領域を基板上に作成する蛍光体薄膜として、低電圧型FED で使用できる蛍光体薄膜並びにその製造方法及び製造装置を提供することを目的としている。
さらに、本発明では、特にRGB3色の発光を行う蛍光体薄膜の製造で、同一母体材料でRGB3色の発光が可能な母体材料と発光中心からなる蛍光体薄膜を提供することにより、同一条件の成膜、同一条件の熱処理で結晶化と高輝度化を行うことが可能にすることを目的としている。
本発明は、このような従来の技術的課題に鑑みてなされたもので、その構成は、次の通りである。
請求項1の発明は、基板に形成させた同一の蛍光体母体材料からなる母体薄膜(24)に、発光中心となる複数の元素が個別にイオン注入され、異なる発光中心の注入された蛍光体の領域がそれぞれ発色できることを特徴とする蛍光体薄膜である。
請求項2の発明は、前記発光中心となる元素が3種類以上からなり、発光中心の異なる蛍光体の領域が、赤、青、緑を含む3 色以上をそれぞれの領域で発色できると共に、
前記同一の蛍光体母体材料からなる母体薄膜(24)が、AB2 C 4 の構造式で表わされる化合物を主体とし、前記A がMg、Ca、Sr及びBaから選ばれた少なくとも1 つの元素であり、前記B がAl、Ga及びInから選ばれた少なくとも1 つの元素であり、前記C がO、S 及びSeから選ばれた少なくとも1 つの元素であることを特徴とする請求項1の蛍光体薄膜である。
請求項3の発明は、基板に形成される同一の蛍光体母体材料からなる母体薄膜(24)の中に発光中心が異なる領域を2つ以上有する蛍光体薄膜の製造方法であつて、
(a ) 基板の一側に、同一の蛍光体母体材料を使用する全領域に対して、発光中心を含まない蛍光体の母体材料薄膜(41)を成膜手段により形成する工程、
(b ) 発光中心となる異なる元素を、前記母体材料薄膜(41)の異なる所定の位置にイオン注入する工程、
(c ) イオン注入された発光中心含有の母体材料薄膜(47)に熱処理を施す工程、を順次に行うことを特徴とする蛍光体薄膜の製造方法である。
請求項4の発明は、前記イオン注入する工程が、赤、青、緑を含む3 色以上の発光中心となる元素をそれぞれイオン注入することを特徴とする請求項3に記載の蛍光体薄膜の製造方法である。
請求項5の発明は、前記イオン注入する工程が、イオンビームを所定照射形状に調整して所定色のイオンを母体材料薄膜(41)の所定の位置に注入した後、基板とイオンビームとに相対変位を与え、イオンビームを所定照射形状に調整したままで所定色とは異なる色のイオンを母体材料薄膜(41)の異なる位置に注入することを特徴とする請求項3又は4の蛍光体薄膜の製造方法である。
請求項6の発明は、前記母体薄膜(24)が、AB2 C4の構造式で表わされる化合物を主体とし、前記A がMg、Ca、Sr及びBaから選ばれた少なくとも1 つの元素であり、前記B がAl、Ga及びInから選ばれた少なくとも1 つの元素であり、前記C がO、S 及びSeから選ばれた少なくとも1つの元素であることを特徴とする請求項3,4又は5の蛍光体薄膜の製造方法である。
請求項7の発明は、前記発光中心となる元素が、希土類元素又は遷移金属であることを特徴とする請求項3,4,5又は6の蛍光体薄膜の製造方法である。
請求項8の発明は、前記熱処理を行う工程が、紫外領域のレーザ光を照射するレーザアニールによって実施されることを特徴とする請求項3,4,5,6又は7の蛍光体薄膜の製造方法である。
請求項9の発明は、前記熱処理を行う工程が、熱アニールとレーザ光を照射するレーザアニールとの組み合わせによって実施されることを特徴とする請求項3,4,5,6又は7の蛍光体薄膜の製造方法である。
請求項10の発明は、前記熱処理を行う工程が、硫化水素雰囲気によって実施されることを特徴とする請求項3,4,5,6,7,8又は9の蛍光体薄膜の製造方法である。
請求項11の発明は、発光中心を含まない蛍光体の母体材料薄膜(41)を基板の1側に形成する成膜手段と、発光中心となる元素を前記母体材料薄膜(41)にイオン注入するイオン注入手段と、イオン注入された発光中心含有の母体材料薄膜(47)に対して熱処理を行う熱処理手段とを備え、基板の一側に形成した蛍光体の母体材料薄膜(41)に発光中心となる元素をイオン注入して発光中心含有の母体材料薄膜(47)となし、発光中心含有の母体材料薄膜(47)に熱処理を施して蛍光体薄膜(48)を得ることを特徴とする蛍光体薄膜の製造装置である。
請求項12の発明は、発光中心を含まない同一種類の蛍光体の母体材料薄膜(41)を基板の1側に形成する成膜手段と、発光中心となる複数の元素を前記母体材料薄膜(41)のそれぞれの所定の位置にイオン注入するイオン注入手段と、複数の元素をイオン注入された発光中心含有の母体材料薄膜(47)に対して熱処理を行う熱処理手段とを備え、基板の一側に形成した母体材料薄膜(41)に発光中心となる元素をイオン注入して発光中心含有の母体材料薄膜(47)となし、該発光中心含有の母体材料薄膜(47)に熱処理を施して蛍光体薄膜(48)を得ることを特徴とする蛍光体薄膜の製造装置である。
請求項13の発明は、基板に形成される同一の蛍光体母体材料からなる母体薄膜(24)に、同一の元素がイオン注入された発光中心の領域を1つ以上有する蛍光体薄膜の製造方法であつて、
(a ) 基板の一側に、同一の蛍光体母体材料を使用する全領域に対して、発光中心を含まない蛍光体の母体材料薄膜(41)を成膜手段により形成する工程、
(b ) 発光中心となる元素を、前記母体材料薄膜(41)の1側となる表層側にのみイオン注入する工程、
(c ) イオン注入された発光中心含有の母体材料薄膜(47)に熱処理を施す工程、を順次に行うことを特徴とする蛍光体薄膜の製造方法である。
先ず、蛍光体を粉末に代えて薄膜としたことで、蛍光体の表面積が大きいことに起因する不具合が低減する。すなわち、アウトガス量が減少し、表面の伝導性の向上によって帯電が減少し、表面の平坦性向上によって蛍光体の分解や劣化などが減少し、また、これらが良好に防止されるという非常に優れた効果が得られる。
独立請求項1,3に係る発明によれば、その蛍光体薄膜は、基板に形成させた同一の蛍光体母体材料からなる薄膜に、発光中心となる複数の元素が個別にイオン注入され、異なる発光中心の注入された蛍光体の領域がそれぞれ発色できる。すなわち、同一の蛍光体母体材料を使用する全領域に対し、発光中心を含まない蛍光体の母体材料薄膜を成膜手段により一面に形成し、その後に発光中心となる元素の種類ごとにイオン注入を行うようになるので、多元素からなる蛍光体の成膜工程を1 回で行うことができ、成膜作業を極めて簡素化することができる。また、成膜工程において、同じ原料を使用することになり、蛍光体原料の種類を少なくすることができ、同じ原料の使用量が多くなるため、原料にかかるコストを低減でき、その結果、製造コストを低減できるという効果がある。
また、イオン注入に所定のパターンの穴を持つマスクを用いるなどしてイオン注入を行うことで、フォトリソグラフィーやエッチングを用いずにRGB 3色を同じ基板の上側に作成することができ、煩雑な工程を大幅に減少させる効果があり、さらに薄膜表面がレジストやエッチングの影響を受けることなく蛍光体薄膜を製造できるという優れた効果も奏し得る。
さらに、同一の蛍光体母体材料を使用して、2色は勿論のこと、RGB 3 色を同じ基板の上に作成することができる。このとき、同一の蛍光体母体材料を結晶化させる熱処理の温度や時間が同一条件になることに加え、高輝度が得られるアニール温度や時間もほぼ同じ条件で行うことができるため、1 回のアニールで2色又はRGB 3 色を同時に高輝度にすることが可能となる。特に、使用する同一の蛍光体母体材料においてストロンチウムチオガレイトを主体とすることで、高輝度で色純度の良い2色又はRGB 3 色以上を同じ基板の上に配置した蛍光体薄膜が得られるという優れた効果がある。
イオン注入によって発光中心を導入するようにしたので、以下に挙げる効果を奏する。イオン注入技術により発光中心の深さ方向の分布制御に大変優れ、注入量の制御にも優れ、所定の濃度で精密に制御可能である。そのため、発光中心を効果的な濃度や場所に分布させることができ、品質に優れた蛍光体薄膜を製造することが可能である。
特に、イオン注入する対象が蛍光体の粉末ではなく、蛍光体の薄膜であるため、発光中心を効果的な濃度や場所に分布させる意義が大きいと共に、蛍光体粉末の蛍光体層に比べて薄膜の表面方向の電気抵抗は非常に小さくなる。そのため、蛍光体薄膜の表面に蓄積される電荷がたまりにくく、帯電を中和する手段を必要とせずにイオン注入を行うことができるという有利な効果がある。
さらに、イオン注入により所定の場所に所定の濃度で発光中心が分布しているため、熱処理を行って発光中心を拡散させる必要に乏しく、必要以上の高温や長時間のアニールを必要としないという特徴を持つ。
数キロボルトまでの電子線が蛍光体薄膜に進入できる深さは100nm ほどであることを知得しているため、この発明に係る蛍光体薄膜を低速電子線用蛍光体に用いる場合、作成する蛍光体の中の発光中心は表面に近い部分に分布していれば十分必要な輝度を得ることができ、イオン注入も浅い位置のみの注入で済む効果がある。加えて、イオン注入する工程が成膜後に実施されるので、作業工程が著しく簡素化される。すなわち、本発明に係る所定の成膜及びイオン注入を実施することにより、低速電子線で励起されて発光する蛍光体薄膜が高品質かつ極めて容易に得られるという著効が得られる。
また、請求項3に係る発明によれば、イオン注入前の母体材料薄膜は結晶性の改善をおこなっておらず、イオン注入後に行う熱処理を施す工程のみによって蛍光体母体材料の結晶化と、発光中心の活性化を同時かつ簡素に行うことができる。
請求項5によれば、イオン注入する工程が、イオンビームを所定照射形状に調整して所定色のイオンを母体材料薄膜の所定の位置に注入した後、基板とイオンビームとに相対変位を与え、イオンビームを所定照射形状に調整したままで所定色とは異なる色のイオンを母体材料薄膜の異なる位置に注入する。これにより、イオン注入する元素を変更するだけで、次々に母体材料薄膜の所定の位置に能率的にイオン注入することができる。
請求項8によれば、熱処理を行う工程が、紫外領域のレーザ光を照射するレーザアニールによって実施され、また、請求項9によれば、熱処理を行う工程が、熱アニールとレーザ光を照射するレーザアニールとの組み合わせによって実施される。このように、アニールにレーザアニールを単独、もしくは熱アニールと併用することで、アニールに必要な時間は短くなり、発光中心が必要以上に拡散しない効果がある。
請求項11及び12によれば、基板に形成させた蛍光体母体材料からなる薄膜に、発光中心となる元素がイオン注入された蛍光体薄膜を製造することができる。従って、請求項1,3に係る発明と同様の効果を奏することができる。イオン注入して発光中心含有の母体材料薄膜となし、この発光中心含有の母体材料薄膜に熱処理を施して蛍光体薄膜を得る点でも、請求項3に係る発明と同様の効果を奏することができる。
請求項13によれば、請求項3に係る発明と比較して、基板に形成される同一の蛍光体母体材料からなる母体薄膜に、同一の元素がイオン注入された発光中心の領域を1つ以上有する蛍光体薄膜が製造される点で相違している。そして、発光中心となる元素が母体材料薄膜の1側となる表層側にのみイオン注入されているので、熱処理を少なくともレーザアニールによるものとし、イオン注入された発光中心含有の母体材料薄膜の1側表面からレーザを照射して所要温度に加熱することにより、基板の熱損傷を抑制することができ、低速電子線で励起されて発光する蛍光体薄膜を備える高品質の商品を得ることができる。これは、イオン注入する工程で母体材料薄膜の1側寄りとなる表層側にのみ所要量イオン注入し、イオン注入が必要量されていない母体材料薄膜の部分を、所要温度にまで加熱する熱処理は必要としない部分として基板の一側付近に残存させ、基板の過熱を抑制させる結果である。
(第1 の実施の形態)
以下、この発明の第1 の実施の形態について図面を参照しながら説明する。図1 はこの発明を適用することが可能な電界放射型ディスプレイ(フィールドエミッションディスプレイ)の蛍光体薄膜を備える陽極パネルの断面図である。
この陽極は、透明基板21及び透明電極22を基板25とし、赤、青、緑色の発色に同一の蛍光体母体材料を使用してなる母体薄膜24の1側となる表層側に赤色蛍光体2R、緑色蛍光体2G、青色蛍光体2Bを有する。但し、図2 に示すようにブラックマトリクス23によって赤色蛍光体2R、緑色蛍光体2G、青色蛍光体2Bを区画した構造としても良い。なお、図1 ,図2
に示す符号24a は、母体薄膜24の他側端付近に残存・形成され、イオン注入が必要量されていない部分である。
赤色蛍光体2R、緑色蛍光体2G、青色蛍光体2Bは、図示を省略した陰極の所定のものからの電子線を図1 及び図2 で示す陽極パネルの上側より照射されることにより、母体薄膜24の表層部付近にのみ位置する赤色蛍光体2R、緑色蛍光体2G及び青色蛍光体2Bが適宜に電子線励起されて発光するので、これを透明電極22及び透明基板21を透して視認することができる。
以下、第1 の実施の形態に係る蛍光体薄膜の製造方法について説明する。図1 及び図2
に示す陽極パネルの製造に際しては、絶縁性及び光透過性を有する透明基板21の上に透明電極22を形成したものを用意する。透明基板21には、ガラス基板を使用することができる。しかし、ガラス基板に限定するものではなく、絶縁性及び光透過性を有する基板であれば、別の材料を使用することもできる。
蛍光体薄膜の作成方法について、図3(1),(2)を参照しながら詳細に説明する。初めに、図3(1)(a) に示す中間基板40を作成する。先ず、基板25の一側に、同一の蛍光体母体材料を使用する全領域に対して、発光中心を含まない蛍光体の母体材料薄膜41を成膜手段により形成する工程を行う。具体的な成膜手段としては真空蒸着法である電子線加熱蒸着を用いることができる。電子線蒸着法は図4 に示すように、真空ポンプ51に接続される真空容器52の中に、基板25を設置して行う。基板25の上方には温度センサー53及びヒーター54が配置され、基板25の下方には開口部55a を有する開口板55及びシャッター56が配置される。また、シャッター56の下方には、第1 と第2 の蒸発源50a と50b を配置する。第1 の蒸着源50a 、第2 の蒸着源50b は、それぞれ材料を加熱する電子線発生装置と材料を冷却するハースとを備えている。
第1 の蒸発源のハースの上にはGa2 S 3 (硫化ガリウム)からなるペレットを、第2 の蒸発源のハースの上にはSrS (硫化ストロンチウム)からなるペレットを設置した。ペレットは所定の形状に材料粉末を押し固め、必要に応じて焼成をしたものである。基板25をヒーター54と温度センサー53によって所定温度としたのち、ペレットをそれぞれ電子線で加熱して蒸発させ、シャッター56を移動させて開口板55の開口部55a を開き、基板25の1側表面への蒸着を行った。これにより、同一の蛍光体母体材料として赤、青、緑の3色を発光可能なストロンチウムチオガレイト蛍光体の母体材料薄膜41が形成される。
ペレットがうまく蒸発しないときは、Ta(タンタル)金属などからなるハースライナーをハースとペレットの間に敷いて使用することで、安定した蒸発を得ることが出来た。また、電子線の電流を蒸発量が一定になるよう制御したりして安定な蒸発を得るようにすることもできる。さらに、必要により基板25を回転させたり、移動させるなどして蒸着物質の組成と膜厚分布をより均一にすることができる。
成膜条件は、基板の温度を350 〜600 ℃とし、好ましくは温度450 ℃、真空度10- 5 〜10- 9 Torr(133 ×10- 4 〜133 ×10- 8 Pa )、室温までの温度降下速度5 ℃/分とし、蒸着を行った。図6 は、蒸着直後の母体材料薄膜41のX 線回折の測定結果である。測定から、作成した薄膜はGaS (硫化ガリウム)結晶を主体とし、結晶化していないSr(ストロンチウム)、Ga(ガリウム)、S (硫黄)を含む薄膜であることがわかり、母体材料の結晶化がなされていないことがわかる。以上が、基板25の1側に、同一の蛍光体母体を使用する全領域に対して、発光中心を含まない母体材料薄膜41を成膜手段により一面に形成する工程となる。
次に、発光中心となる元素の種類ごとに、母体材料薄膜41の所定の場所にイオン注入する工程について説明する。イオン注入は、いわゆるイオン注入手段を使用して行うことができる。しかし、装置をイオン注入装置に限定するものではなく、発光中心となる元素をイオン化し、電圧をかけて加速し、母体材料薄膜41の表面及びその付近の所定の深さまでイオンを打ち込むことのできる構造を有している手段を広く使用することができる。イオン注入に際しては、表面方向で均一な分布を得るために、母体材料薄膜41を有する基板40を回転させたり、揺動させる手段を用いることができる。
母体材料薄膜41の成膜後に、図3(1)(b) に示すように母体材料薄膜41の上にレジスト42を作成し、上方の所定の位置に合わせてマスク43を設置する。最初の位置のマスク43は、緑色蛍光体2Gとしたい部分のみ光が透過してレジストと反応するようにしてある。その後、光を照射してレジストを感光し、エッチングして感光部分を除去して図3(1)(c) に示すレジストパターン42a を作成した。次に、レジストパターン42a をマスクにして、緑色発光中心G となるEu(ユーロピウム)イオンを含むイオンビーム45G により緑色発光中心G
をイオン注入する。注入する深さは、低速の電子線が発光に関与できる深さまでとすればよく、表面及びその付近に発光中心が分布していることが好ましい。このようにして、緑色蛍光体としたい領域に緑色発光中心G のイオン注入を行い、緑色発光中心G を含む母体材料薄膜2Ga とした。その後、レジストパターン42a を除去した。
発明者等は低電圧のFED においては、電子が進入できる深さは数kV の加速電圧においても100nm 以下であることを知得した。このことは、蛍光体薄膜の深さ方向においては100nm より深い部分では同じ発光中心濃度である必要がないことを示している。そのため、蛍光体の発光中心は電子線が侵入できる表面及びその近くに分布していれば十分であることがわかった。
再度、図3(1)(b) に示すものと同様に母体材料薄膜41の上にレジスト42を作成し、同じマスク43を使用し、マスク43の位置を形成後の緑色発光中心G を覆う位置として図3(2)(d) に示すように青色発光中心B を含む母体材料薄膜2Ba 又は赤色発光中心R を含む母体材料薄膜2Ra のいずれか一方を形成する。引き続き、図3(1)(b) に示すものと同様に母体材料薄膜41の上にレジスト42を作成し、同じマスク43を使用し、マスク43の位置を形成後の緑色発光中心G 及び青色発光中心B 又は赤色発光中心R を覆う位置として図3(2)(d) に示すように青色発光中心B を含む母体材料薄膜2Ba 又は赤色発光中心R を含む母体材料薄膜2Ra のいずれか他方を形成する。かくして、母体材料薄膜41の表面に近い所要部分に発光中心G ,B ,R が必要量分布して、発光中心含有の母体材料薄膜47(緑色発光中心G 含有の母体材料薄膜2Ga 、青色発光中心B 含有の母体材料薄膜2Ba 及び赤色発光中心R 含有の母体材料薄膜2Ra )が形成される。
青色発光中心B としてはCe(セリウム)イオンをイオン注入し、赤色発光中心R としてはSm(サマリウム)イオンをイオン注入した。これにより、図3(2)(d) に示すように青色発光中心B を含む母体材料薄膜2Ba 、赤色発光中心R を含む母体材料薄膜2Ra とした。この発光中心を含む母体材料薄膜を図3(2)(d) に示す発光中心含有の母体材料薄膜47とし、発光中心含有の母体材料薄膜47を形成した基板25を中間基板46とした。なお、発光中心含有の母体材料薄膜47と基板25との間には、イオン注入が必要量されていない(全くされていない場合を含む)母体材料薄膜41が薄層をなすように残存している。
この発光中心が所定の位置にイオン注入された母体材料薄膜(発光中心含有の母体材料薄膜47)には、熱処理を施す。イオン注入された発光中心含有の母体材料薄膜47に熱処理を施し、これを発光中心含有の蛍光体薄膜48となす工程について説明する。本発明では、赤色、青色、緑色の発光領域は、全て、同一の蛍光体母体材料を使用する領域とし、同じ母体材料で構成されているため、同様の熱処理温度及び時間で結晶性の向上及び発光輝度の向上を行うことができた。熱処理は通常の熱アニールで行うことが可能であるが、熱アニールに代えて、レーザアニールとすることもできる。
レーザアニールを行うための装置を、図5 を参照しながら説明する。パルスレーザからなるエキシマレーザを発生させるレーザ発振器60で生じさせたレーザ光A1を光学系容器69内へ導き、アッテネータ61によってエネルギーを自動設定するとともに、反射ミラー67で方向転換させ、長軸ホモジナイザー62a 及び短軸ホモジナイザー62b を通して整形して強度を均一化させた後、再度、反射ミラー68で方向転換させ、集光レンズ63を通すことにより、長軸×短軸が、例えば200mm ×0.4mm のレーザ光64に整形し、発光中心含有の母体材料薄膜47に照射する。発光中心含有の母体材料薄膜47を有する中間基板46は、レーザアニール装置のレーザ処理用チャンバー内に設置されている。
レーザ光64を照射する際には、中間基板46を収容するレーザ処理用チャンバー内を真空、希ガス等の処理材料に適した雰囲気に設定し、適当なエネルギー密度のレーザ光64を所定回数で照射するように照射条件を選定することが、良好な発光と結晶を得るために必要である。
レーザ処理用チャンバー内の酸素及び水分を十分に除去すれば蛍光体や母体材料の薄膜が酸化されることを防止できる。
発光中心含有の母体材料薄膜47に対し、通常の熱アニールに代えてレーザアニールを行うことによって、より短時間のアニールで済ませることができ、イオン注入された発光中心の不必要な拡散を防ぐ優れた効果がある。低速の電子線により発光する本発明の蛍光体薄膜にあっては、イオン注入によって発光中心は発光に寄与する所定の深さ範囲に多く分布しており、レーザ光64は、発光中心が存在する深さまでレーザアニールが及ぶようにレーザ光64の波長を選んで実施することができ、表面近くのアニールが十分に必要な本蛍光体薄膜ではレーザアニールで十分に熱処理効果を得ることができた。但し、紫外領域のレーザ光を照射するレーザアニールは、単独でなく、通常の熱アニールと組み合わせて実施することができるし、アニール雰囲気にH 2 S (硫化水素)を含むガスを使うこともでき、硫黄もしくは硫黄化合物など任意の雰囲気の中で実施することができる。レーザアニールと熱アニールとを組み合わせるときは、熱アニールによって所要の熱処理温度よりも低い余熱を与えた状態でレーザアニールを施すことができる。
ストロンチウムチオガレイト蛍光体からなる母体薄膜24の表層側の赤色蛍光体2R、緑色蛍光体2G、青色蛍光体2Bは、赤、青、緑の3 色を発光可能な材料である。加えて、同一の蛍光体母体材料を使用することで、結晶化されていない母体材料を結晶化するとともに、発光中心を所定の格子位置に配置し活性化を行い、所望の発光色にするための熱処理温度と時間がほぼ同じになる。以下では真空蒸着法の一つである多元蒸着法(MSD )によって作成した薄膜を例にして、赤、青、緑の熱アニールによる熱処理条件がほぼ同じであることを説明する。
MSD 法での薄膜作成に際しては、抵抗線による加熱によって原料であるSr(ストロンチウム)金属、Ga2 S 3 (硫化ガリウム)粉末、及び発光中心を含むLnCl3 (塩化ランタノイド、LnはCe、Eu、Smを示す)を蒸発させ、基板25上への供給比を制御して薄膜を作成した。青色発光を示すCe付活ストロンチウムチオガレイトでは、基板上へのSrに対するGa2 S 3 の供給比Ga2 S 3 /Sr を60とし、Srに対するCeの供給比Ce/Sr を、0.01〜0.3 とし、好ましくは0.03とすれば高輝度な発光が得られる。また、熱処理条件としては、H 2 S (硫化水素)を1%含むAr雰囲気の中で、温度は450 ℃〜900 ℃とすればよく、好ましくは800 ℃である。図7 はX 線回折のパターンであり、700 〜900 ℃で90分間熱処理したものを比較して表示している。700 ℃では結晶性の改善が不十分であり、900 ℃では他の成分が増加することから、800 ℃での熱処理が好ましいことがわかる。時間は15分〜90分とすればよく、好ましくは30分である。図8 は電子線励起による蛍光体の発光輝度と発光効率であり、800 ℃で15〜60分間熱処理したものを比較して示してある。30分間熱処理したものがもっとも輝度が高いことがわかる。図9 及び図10は本実施の形態による青色発光蛍光体の発光スペクトル及びCIE1931 による色度座標であり、優れた青色発光スペクトルと色度座標を有していることがわかる。
以上のように本実施の形態にもとづき熱処理したものは、最も発光輝度を高くすることができると共に、良好な発光スペクトルと色度座標を得ることができる。熱処理雰囲気のH 2 S はA r に対して1%に限定しているものではなく、任意の濃度で実施することができる。
緑色発光を示すEu付活ストロンチウムチオガレイトでは、基板25上へのSrに対するGa2 S 3 の供給比Ga2 S 3 /Sr を60とし、Srに対するEuの供給比Eu/Sr を、0.005 〜0.05とし、好ましくは0.015 とすれば高輝度な発光が得られる。また、熱処理条件としては、H 2 S を1%含むAr雰囲気の中で、温度は450 ℃〜900 ℃とすればよく、好ましくは800 ℃であり、時間は15分〜90分とすればよく、好ましくは30分である。図11及び図12は本実施の形態による緑色発光蛍光体の発光スペクトル及びCIE1931 による色度座標であり、優れた緑色発光スペクトルと色度座標を有していることがわかる。以上のように熱処理したものは良好な発光スペクトルと色度座標を得ることができる。
赤色発光を示すSm付活ストロンチウムチオガレイトでは、基板25上へのSrに対するGa2 S 3 の供給比Ga2 S 3 /Sr を60とし、Srに対するSmの供給比Sm/Sr を、好ましくは0.001
〜0.2 とし、より好ましくは0.1 とすれば赤色発光が得られる。また、熱処理条件としては、H 2 S を1%含むAr雰囲気の中で、温度は450 ℃〜900 ℃とすればよく、好ましくは800 ℃であり、時間は15分〜90分とすればよく、好ましくは30分である。図13及び図14は本実施の形態による赤色発光蛍光体の発光スペクトル及びCIE1931 による色度座標であり、優れた赤色発光スペクトルと色度座標を有していることがわかる。以上のように熱処理したものは良好な発光スペクトルと色度座標を得ることができる。
また、赤色発色にはPr(プラセオジウム)付活ストロンチウムチオガレイトを使用することもできる。基板25上へのSrに対するGa2 S 3 の供給比Ga2 S 3 /Sr を60とし、Srに対するPrの供給比Pr/Sr を、好ましくは0.001 〜0.2 とし、熱処理条件としては、H 2 S を1%含むAr雰囲気の中で、温度は450 ℃〜900 ℃とすればよく、好ましくは800 ℃であり、時間は15分〜90分とすればよく、好ましくは30分で熱処理することで赤色発光が得られる。
蛍光体薄膜48を構成する同一の蛍光体母体材料(母体薄膜24)は、AB2 C 4 の構造式で表わされる化合物を主体としてイオン注入されており、A がアルカリ土類元素であるMg、Ca、Sr及びBaから選ばれた少なくとも1 つの元素であり、B がAl、Ga及びInから選ばれた少なくとも1 つの元素であり、C がカルコゲン元素であるO、S 及びSeから選ばれた少なくとも1 つの元素とすることが望まれる。また、発光中心G ,B 又はR となる元素は、希土類元素又は遷移金属とすることが望まれる。なかでも、同一の蛍光体母体材料としては、A がSrであり、B がGaであり、C がS である組み合わせ、ストロンチウムチオガレイトSrGa2S4 とすることが好ましく、その際の発光中心G ,B , R としては、緑色発光中心G
がEuで、青色発光中心B がCeで、赤色発光中心R がSmとすることが好ましい。
以上のように所定の位置にイオン注入された発光中心含有の母体材料薄膜47(2Ra ,2Ga ,2Ba )に対して同じ(例えば800 ℃で30分)熱処理を行うことで、発光中心を含む結晶性が改善されていない図3(2)(d) の赤色発光中心R 含有の母体材料薄膜2Ra 、緑色発光中心G 含有の母体材料薄膜2Ga 、青色発光中心B 含有の母体材料薄膜2Ba を、結晶性が改善されたのみでなく高輝度で良好な色純度をもつ図3(2)(e) の赤色蛍光体2R、緑色蛍光体2G、青色蛍光体2Bとすることができた。すなわち、赤色蛍光体SrGa2 S 4 : Sm、緑色蛍光体SrGa2 S 4 :Eu 及び青色蛍光体SrGa2 S 4 :Ce を有する蛍光体薄膜48を得ることができた。
しかも、発光中心となる元素が母体材料薄膜41の1側となる表層側にのみ所要深さでイオン注入されているので、イオン注入された発光中心含有の母体材料薄膜47に少なくともレーザアニールによる熱処理を施し、母体材料薄膜41の発光中心含有の必要部分のみを所要温度に加熱して、基板25の熱損傷を抑制することができ、低速電子線で励起されて発光する蛍光体薄膜48を備える高品質の商品を得ることができる。これは、イオン注入する工程で母体材料薄膜41の1側となる表層側にのみ所要量イオン注入し、イオン注入が必要量されていない母体材料薄膜41の部分を、所要温度に加熱する熱処理を必要としない部分(図1 ,図2 に示す母体薄膜24a )として基板25の一側寄りに残存させ、基板25の過熱を抑制させる結果である。
以上説明したように、同一の蛍光体母体材料を使用する本実施の形態によって、RGB 3
色を配置した蛍光体薄膜を製造することができ、低速電子線で励起され色純度よく高輝度に発光する蛍光体薄膜を得ることができた。
本実施の形態では、同一の蛍光体母体でRGB 3 色を発光させることができる材料として、ストロンチウムチオガレイトを用いて説明をしたが、ストロンチウムチオガレイトに限定するものではなく、公知のY 2 3 蛍光体母体材料にTmを付活したY 2 3 :Tm 青色発光蛍光体、Tbを付活したY 2 3 :Tb 緑色発光蛍光体、Euを付活したY 2 3 :Eu 赤色発光蛍光体や、RGB 発光蛍光体ZnS に公知の発光中心を加えて用いても良く、ほかのRGB 3
色を発光できる同一の蛍光体母体材料を使用できることはもちろんである。また、本発明は、同一の元素がイオン注入された発光中心の領域を1つ以上有する蛍光体薄膜に適用することが可能であり、イオン注入する工程では、1 色の発光中心となる元素をイオン注入して、1 種類の発光中心の注入された蛍光体の領域を1 色に発色させるようにすることもできるし、2 色以上の発光中心となる元素のそれぞれを順次にイオン注入して、異なる発光中心の注入された蛍光体の領域をそれぞれ異色に発色させるようにすることもできるし、赤、青、緑を含む3 色以上の発光中心となる元素をそれぞれイオン注入して、異なる発光中心の注入された蛍光体の領域をそれぞれ異色に発色させる蛍光体薄膜を製造することもできる。
また、本実施の形態では電子線加熱蒸着を用いて薄膜を作成しているが、これに限定されるものではなく、多元蒸着法(MSD )でも行うことができたし、分子線エピタキシー法(MBE )でも作成することができ、任意の真空蒸着法、薄膜作成法(成膜手段)で実施することができる。
(第2 の実施の形態)
次に、第2 の実施の形態の要部、つまり、図3(1)(a) で示される基板上25の1側に母体材料薄膜41を蒸着した中間基板40に、所定の場所のみにイオン注入して、図3(2)(d) で示される赤色発光中心R 含有の母体材料薄膜2Ra 、緑色発光中心G 含有の母体材料薄膜2Ga
、青色発光中心B 含有の母体材料薄膜2Ba を配置する蛍光体薄膜の製造方法の要部について説明する。
図3(1)(a) で示した中間基板40を作製し、図3(2)(f) を参考に製造方法の要部を説明する。中間基板の上にマスク43f を位置を合わせて設置する。このマスク43f は、緑色蛍光体2Gとしたい部分のみ、緑色発光中心G 含有イオンビーム45G が通過できるように、穴があいた構造を有している。それ以外の部分は導電性のある金属などで構成され、緑色蛍光体2Gとしない部分へのイオンビームを通過させず、選択領域のみにイオン注入を行うようにしてある。このマスク43f は導電性を有するので、選択領域外へ照射されているイオンビームの通過を阻止し、イオンビームに含まれる電荷は即座に中和されるため、帯電しないようになっている。イオン注入する深さは、低速の電子線が発光に関与できる深さまでとすればよく、図3(2)(d) に示す母体材料薄膜41ひいては図3(2)(e) に示す蛍光体薄膜48の表面付近の所要部分に発光中心が必要量分布していることが好ましい。このようにして、緑色蛍光体としたい領域に緑色発光中心G のイオン注入を行い、緑色発光中心G を含む母体材料薄膜2Ga とした。
以上のように、青、赤についても穴あきの導電性を有するマスク43f を用いてイオン注入を行い、青色発光中心B としてCeイオンをイオン注入し、緑色発光中心G としてEuイオンをイオン注入し、また赤色発光中心R としてSmイオンをイオン注入し、図3(2)(d) に示すように青色発光中心B を含む母体材料薄膜2Ba 、緑色発光中心G を含む母体材料薄膜2Ga 及び赤色発光中心R を含む母体材料薄膜2Ra とした。
上記実施の形態では、イオン注入する領域に穴明きマスク43f を用いて選択的に発光中心のイオン注入を行ったが、このように実施することで、1色以上、特にRGB 3 色以上を配置した蛍光体薄膜を作製するために、フォトリソグラフィーやエッチングを用いずに製造することができる。
さらに、イオンビームを適当な大きさの照射形状に調整して、直接、母体材料薄膜41の選択領域にイオン注入することも出来る。このように実施することで、マスク43,43f自体が不要となり、さらに必要な工程数が減少する。例えば、静電レンズを使用してイオンビームを細く絞り、さらにイオン注入手段からのビームを偏向装置で走査してイオンを注入する。このようにしてイオン注入の予定領域のみにイオンビームを照射することで、マスクを用いずにイオン注入を行うことができた。また、偏向装置で走査せずに、イオン注入の予定領域に応じて基板25を走査しても、同様にイオン注入を行うことができた。
要するに、イオン注入する工程では、イオンビームを所定照射形状に調整・固定し、複数色のイオンをそれぞれ個別に母体材料薄膜41の所定位置に注入するようにし、複数の異なる発光中心G 、B 、R を有する母体材料薄膜41(発光中心含有の母体材料薄膜47)を形成すればよい。その際、母体材料薄膜41を有する基板25とイオンビームとに相対変位を与えると共にイオンを変更し、蛍光体の複数の領域に合わせて、所定位置に各色に応じたイオンを注入させた母体材料薄膜41(発光中心含有の母体材料薄膜47)を形成する。つまり、イオン注入する工程は、イオンビームを所定照射形状に調整して所定色のイオンを母体材料薄膜41の所定の位置に注入した後、基板25とイオンビームとに相対変位を与え、イオンビームを所定照射形状に調整したままで所定色とは異なる色のイオンを母体材料薄膜41の異なる所定の位置に注入し、発光中心含有の母体材料薄膜47ひいては熱処理後の蛍光体薄膜48を形成すればよい。基板25とイオンビームとの相対変位を、マスク43,43fの移動によって行うことができることは勿論である。
このような発光中心含有の母体材料薄膜47に対し、実施の形態1 と同様に熱処理を行うことで、発光中心を含む結晶性が改善されていない図3(2)(d) の赤色発光中心R 含有の母体材料薄膜2Ra 、緑色発光中心G 含有の母体材料薄膜2Ga 、青色発光中心B 含有の母体材料薄膜2Ba を、結晶性が改善されたのみでなく高輝度で良好な色純度をもつ図3(2)(e) の赤色蛍光体2R、緑色蛍光体2G、青色蛍光体2Bとすることができた。
以上説明したように、同一の蛍光体母体材料を使用する第2の実施の形態によって、1色以上、特にRGB 3 色を配置した蛍光体薄膜を製造することができ、第1の実施の形態と同様に、低速電子線で励起され色純度よく高輝度に発光する、蛍光体薄膜を得ることができた。
ところで、上記実施の形態であげた成膜手段と、イオン注入手段と、熱処理手段を1 つのチャンバー内に収める構成とすることができる。このような1 つのチャンバー内に収める構成とすれば、チャンバー内に収めた基板25及び母体材料薄膜41(蛍光体薄膜48)を1
度も大気に触れることなく、不純物による汚染を最小限にして蛍光体薄膜を製造することができ、高品位の製品を製造することができるという効果が得られる。
このようにして製造した蛍光体薄膜は、特に低速の電子線励起による発光特性に優れた電界放射型ディスプレイ(フィールドエミッションディスプレイ)の陽極パネルとして使用することができる。第1 の実施の形態による蛍光体薄膜の製造方法では、詳細なパターンを形成することができるため、特に小型の詳細な陽極パネルに利用できる。第2 の実施の形態による蛍光体薄膜の製造方法では、特に大型の陽極パネルとして利用できる。また、基板25の構造は透明基板21と透明電極22により構成しているが、そのような構成に制限するものではなく、透明基板21として透明性を有する絶縁性の基板であれば、どの材料を用いてもよいことはもちろんであり、透明電極の上に下部絶縁膜をもうけた構成を基板25として、本発明による蛍光体薄膜を作製したのち、この蛍光体薄膜の上に上部絶縁膜と背面電極をもうけることでも、無機ELのパネルとして利用することができる。
本発明の実施の形態に係る蛍光体薄膜を備える陽極パネルの断面図。 同じく他の構造例に係る蛍光体薄膜を備える陽極パネルの断面図。 同じく蛍光体薄膜の製造方法を示し、図3 (1) (a) 〜(c) は、第1 の実施形態の製造方法を示す概念図。 同じく蛍光体薄膜の製造方法を示し、図3 (2) (d) 〜(e) は、第1 の実施形態の製造方法を示す概念図、図3 (2) (f) は、第2の実施形態の製造方法の要部を示す概念図。 同じく電子線加熱蒸着装置を示す概略図。 同じくレーザアニール装置の概略図を示し、(イ)は正面図、(ロ)は右側面図。 同じく成膜手段により形成した直後の母体材料薄膜のX 線回折パターン特性を、縦軸を回折線強度(任意単位)とし、横軸を回折角2 θ(deg.)として示す線図。 同じく蛍光体薄膜のX 線回折パターン特性を、縦軸を回折線強度(任意単位)とし、横軸を回折角2 θ(deg.)とし、熱処理前(as-depo )及び熱処理時間(分)を相違させて示す線図。 同じく青色蛍光体薄膜のCL(電子線励起ルミネセンス)特性図であり、左軸は発光強度(cd/m2 )、右軸は発光効率(lm/W)、横軸は加速電圧(kV )を示す。 同じく青色蛍光体薄膜のCLスペクトルを示す線図であり、縦軸は発光強度(任意単位)、横軸は波長(nm)である。 同じく青色蛍光体薄膜のCLによるCIE1931 色度座標。 同じく緑色蛍光体薄膜のCLスペクトルを示す線図であり、縦軸は発光強度(任意単位)、横軸は波長(nm)である。 同じく緑色蛍光体薄膜のCLによるCIE1931 色度座標。 同じく赤色蛍光体薄膜のCLスペクトルを示す線図であり、縦軸は発光強度(任意単位)、横軸は波長(nm)である。 同じく赤色蛍光体薄膜のCLによるCIE1931 色度座標。 従来のRGB 3 色を配置する蛍光体薄膜の製造工程を示す概念図。 従来のRGB 3 色を配置する蛍光体薄膜の製造工程を示す概念図。 従来のRGB 3 色を配置する蛍光体薄膜の製造工程を示す概念図。
符号の説明
21:透明基板
22:透明電極
24,24a:母体薄膜
25:基板
41:母体材料薄膜
43,41f:マスク
47:発光中心含有の母体材料薄膜
48:蛍光体薄膜
B:青色発光中心(発光中心)
G:緑色発光中心(発光中心)
R:赤色発光中心(発光中心)

Claims (13)

  1. 基板に形成させた同一の蛍光体母体材料からなる母体薄膜(24)に、発光中心となる複数の元素が個別にイオン注入され、異なる発光中心の注入された蛍光体の領域がそれぞれ発色できることを特徴とする蛍光体薄膜。
  2. 前記発光中心となる元素が3種類以上からなり、発光中心の異なる蛍光体の領域が、赤、青、緑を含む3 色以上をそれぞれの領域で発色できると共に、
    前記同一の蛍光体母体材料からなる母体薄膜(24)が、AB2 C 4 の構造式で表わされる化合物を主体とし、前記A がMg、Ca、Sr及びBaから選ばれた少なくとも1 つの元素であり、前記B がAl、Ga及びInから選ばれた少なくとも1 つの元素であり、前記C がO、S 及びSeから選ばれた少なくとも1 つの元素であることを特徴とする請求項1の蛍光体薄膜。
  3. 基板に形成される同一の蛍光体母体材料からなる母体薄膜(24)の中に発光中心が異なる領域を2つ以上有する蛍光体薄膜の製造方法であつて、
    (a ) 基板の一側に、同一の蛍光体母体材料を使用する全領域に対して、発光中心を含まない蛍光体の母体材料薄膜(41)を成膜手段により形成する工程、
    (b ) 発光中心となる異なる元素を、前記母体材料薄膜(41)の異なる所定の位置にイオン注入する工程、
    (c ) イオン注入された発光中心含有の母体材料薄膜(47)に熱処理を施す工程、を順次に行うことを特徴とする蛍光体薄膜の製造方法。
  4. 前記イオン注入する工程が、赤、青、緑を含む3 色以上の発光中心となる元素をそれぞれイオン注入することを特徴とする請求項3に記載の蛍光体薄膜の製造方法。
  5. 前記イオン注入する工程が、イオンビームを所定照射形状に調整して所定色のイオンを母体材料薄膜(41)の所定の位置に注入した後、基板とイオンビームとに相対変位を与え、イオンビームを所定照射形状に調整したままで所定色とは異なる色のイオンを母体材料薄膜(41)の異なる位置に注入することを特徴とする請求項3又は4の蛍光体薄膜の製造方法。
  6. 前記母体薄膜(24)が、AB2 C4の構造式で表わされる化合物を主体とし、前記A がMg、Ca、Sr及びBaから選ばれた少なくとも1 つの元素であり、前記B がAl、Ga及びInから選ばれた少なくとも1 つの元素であり、前記C がO、S 及びSeから選ばれた少なくとも1つの元素であることを特徴とする請求項3,4又は5の蛍光体薄膜の製造方法。
  7. 前記発光中心となる元素が、希土類元素又は遷移金属であることを特徴とする請求項3,4,5又は6の蛍光体薄膜の製造方法。
  8. 前記熱処理を行う工程が、紫外領域のレーザ光を照射するレーザアニールによって実施されることを特徴とする請求項3,4,5,6又は7の蛍光体薄膜の製造方法。
  9. 前記熱処理を行う工程が、熱アニールとレーザ光を照射するレーザアニールとの組み合わせによって実施されることを特徴とする請求項3,4,5,6又は7の蛍光体薄膜の製造方法。
  10. 前記熱処理を行う工程が、硫化水素雰囲気によって実施されることを特徴とする請求項3,4,5,6,7,8又は9の蛍光体薄膜の製造方法。
  11. 発光中心を含まない蛍光体の母体材料薄膜(41)を基板の1側に形成する成膜手段と、発光中心となる元素を前記母体材料薄膜(41)にイオン注入するイオン注入手段と、イオン注入された発光中心含有の母体材料薄膜(47)に対して熱処理を行う熱処理手段とを備え、基板の一側に形成した蛍光体の母体材料薄膜(41)に発光中心となる元素をイオン注入して発光中心含有の母体材料薄膜(47)となし、発光中心含有の母体材料薄膜(47)に熱処理を施して蛍光体薄膜(48)を得ることを特徴とする蛍光体薄膜の製造装置。
  12. 発光中心を含まない同一種類の蛍光体の母体材料薄膜(41)を基板の1側に形成する成膜手段と、発光中心となる複数の元素を前記母体材料薄膜(41)のそれぞれの所定の位置にイオン注入するイオン注入手段と、複数の元素をイオン注入された発光中心含有の母体材料薄膜(47)に対して熱処理を行う熱処理手段とを備え、基板の一側に形成した母体材料薄膜(41)に発光中心となる元素をイオン注入して発光中心含有の母体材料薄膜(47)となし、該発光中心含有の母体材料薄膜(47)に熱処理を施して蛍光体薄膜(48)を得ることを特徴とする蛍光体薄膜の製造装置。
  13. 基板に形成される同一の蛍光体母体材料からなる母体薄膜(24)に、同一の元素がイオン注入された発光中心の領域を1つ以上有する蛍光体薄膜の製造方法であつて、
    (a ) 基板の一側に、同一の蛍光体母体材料を使用する全領域に対して、発光中心を含まない蛍光体の母体材料薄膜(41)を成膜手段により形成する工程、
    (b ) 発光中心となる元素を、前記母体材料薄膜(41)の1側となる表層側にのみイオン注入する工程、
    (c ) イオン注入された発光中心含有の母体材料薄膜(47)に熱処理を施す工程、を順次に行うことを特徴とする蛍光体薄膜の製造方法。
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