JP2005289943A - シュードモナス・フロレッセンスによる疫病べと病防除剤およびその防除方法 - Google Patents

シュードモナス・フロレッセンスによる疫病べと病防除剤およびその防除方法 Download PDF

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Abstract

【課題】本発明は、化学薬剤耐性菌の出現頻度の高い地上部病害防除分野であり且つ比較的低温で蔓延する疫病べと病を防除対象に、比較的低温でも活躍できて且つ環境負荷の少ない微生物農薬を提供し、IPM(総合防除)に貢献できうる防除手段を提供することを課題とする。
【解決手段】本発明は、シュードモナス・フロレッセンス細菌の菌体又は培養物を含むことを特徴とする防除剤を、植物の地上部に処理することにより、比較的低温でも疫病べと病を簡易に防除することができる。また自然土壌から分離した微生物であることから環境にもやさしい薬剤と防除法であり、IPM(総合防除)に貢献しうる手段でもある。
【選択図】なし

Description

本発明は植物の地上部に処理することにより、疫病菌とべと病菌に起因する植物の地上部病害を簡易且つ効率的に防除する防除剤および防除方法に関するものである。防除対象植物は作物(野菜、果菜、果樹、豆類、イモ類)にとどまらず、食用及び鑑賞用の花卉、街路樹や生垣に利用されるかん木等のアメニティ植物を含む。
植物病害の主たる防除方法として、従来から数多くの化学薬剤が使用されて来ている。しかしながら、類似骨格を有する同作用系の化学薬剤の同種病害防除への頻繁な使用や過剰投与、撲滅効果の無い化学薬剤の中途半端な使用、多作用点を有する化学薬剤の欠如等、により化学薬剤に対する植物病原菌の耐性化問題が、話題にのぼらないことは過去20年にはなかった。疫病菌とべと病菌においても、化学薬剤に耐性を持つ菌が出現してきている。
一方では昨今、化学薬剤の環境ホルモン的作用がにわかに疑問視され出し、消費者からの減又は無化学農薬作物へのニーズが高まり、有機農産物認証制度もその運用が正確化しかつ基準自体も厳格化してきている。このような状況下、以前から存在し続けたIPM(総合的病虫害防除)、すなわち化学薬剤による防除以外にも、物理化学的防除(太陽熱土壌消毒、紫外線カットフィルム、熱水土壌消毒、養液栽培での病原菌ろ過等)や、耕種的防除(輪作や病原菌クリーニングクロップや病害抵抗性品種の栽培、混植栽培等)や生物的防除(生物源天然物、天敵、拮抗微生物)等の組み合わせによる総合的病虫害管理への期待が再度高まりを見せている。なかでも生物的防除に対する期待度は大きくなってきている。
近年、農園芸植物を各種病害から保護する方法として、安全性、効果の持続性を考慮して、各種病害を引き起こす病原菌と拮抗する微生物を用いる病害防除方法が用いられてきている。
農園芸植物の病害を防除する薬剤に用いられてきた微生物として、トリコデルマ属、グリオクラディウム属、アンペロマイセス属、コニンシリュウム属、フザリウム属、ピシウム属、タラロマイセス属、カンディダ属等のカビ、ストレプトマイセス属の放線菌、バチルス属、シュウドモナス属、アグロバクテリウム属、エルビニア属に属する細菌等が挙げられ、これまでに、これらの微生物を含有する農園芸用殺菌剤組成物も数多く研究はされて来てはいる。
しかしながら、その多くは化学農薬でも難防除の土壌病害対象であり、その処理方法は土壌混和、土壌かん注、土壌散布等の土壌処理や、種子粉衣、種子浸漬、種子コーティング等の種子処理、移植前の植物根のディッピング処理(バクテリゼーション)が多く、いわゆる作物地下部への処理が殆どであった。
このうち国内でシュードモナス属に属する細菌については、例えば、特開昭60−186230号公報では、シュードモナス・ソラナセアルム種(M4S菌株)によるナス科植物青枯れ病防除例、特開昭63−190806号公報では、シュードモナス・フロレッセンス種(SCBNoの3菌株)によるウリ科野菜の苗立枯病防除例、特開昭63−246306号公報では、シュードモナス・グルメ種菌株によるナス科野菜の土壌病害防除例、特開平1−42410号公報では、シュードモナス・グラディオリ種(M−2196菌株)による土壌病害防除例、特開平1−193203号公報では、シュードモナス・フロレッセンス種(MD−4f菌株)によるバレイショそうか病防除例、特開平2−59504号公報では、シュードモナス・グルメ種菌株によるフザリウム病の防除例、特開平3−220108号公報では、シュードモナス・バンディー種(VA−1316菌株)によるフザリウム病の防除例、特開平7−25716号公報では、シュードモナス・セパシア種(AGF−158菌株)によるイネ苗床病害の防除例、特開平9−37771号公報では、シュードモナス・オーレオファシエンス種(TB−57菌株)による黒根病防除例、特開平9−37772号公報では、シュードモナス・フロレッセンス種(H−3982菌株)による黒根病防除例、特開平9−124427号公報では、シュードモナス属・エスピー(CAB02菌株)によるイネ苗立枯れ性病害、特開平9−124427号公報では、シュードモナス属エスピー(CAB02菌株)によるイネ苗立枯れ性病害、特開平9−255513号公報では、シュードモナス属エスピー(CGF−72菌株)によるフザリウム病、バーティシリウム病防除例等が報告されている。
地上部処理による地上部病害防除例は特開平2−149507号公報では、シュードモナス・フロレッセンス種とシーウドモナス・プチダ種の菌株による小麦の茎葉汚染病害(葉がれ病、さび病)の防除例、特開平10−7515号公報では、シュードモナス属細菌の新種であるキチン分解能力のあるP68菌株によるセントポーリアのうどんこ病防除例等が報告されているが、土壌病害防除微生物資材に比べると圧倒的に少ない。
さらに、植物地上部に散布処理する簡便な方法により、低温時でも疫病とべと病を防除可能な微生物殺菌剤は無いのが実情である。また化学薬剤のフェニルアマイド系やメトキシアクリレート系殺菌剤等に対して、薬剤耐性の疫病菌とべと病菌が出現し、効果不足が起きている。
特開昭60−186230号公報 特開昭63−190806号公報 特開昭63−246306号公報 特開平1−42410号公報 特開平1−193203号公報 特開平2−59504号公報 特開平3−220108号公報 特開平7−25716号公報 特開平9−37771号公報 特開平9−37772号公報 特開平9−124427号公報 特開平2−149507号公報 特開平10−7515号公報
本発明者らはこのような状況を鑑み、化学薬剤耐性菌の出現頻度の高い地上部病害防除分野であり且つ比較的低温で蔓延する疫病・べと病を防除対象に、比較的低温でも活躍できて且つ環境負荷の少ない微生物農薬を提供することを課題とし、IPM(総合的病虫害管理)に貢献できる手段を提供することを課題とした。
本発明者らは、低温時でも防除活性があり且つ化学薬剤耐性菌にも効果が期待できる、未利用の微生物素材を提供すべく、天然土壌中から微生物を分離しながらアッセイを行い、鋭意検討を重ねた。その結果、シュードモナス・フロレッセンスに属する細菌の菌体又は培養物を含む防除剤を、植物地上部(地際部を含む茎葉部)に処理することにより、疫病・べと病を比較的簡便に防除することを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明は、以下に示す疫病・べと病防除剤及びその防除方法である。
(1)シュードモナス・フロレッセンス種に属する細菌の菌体又は培養物を含むことを特徴とする、疫病べと病防除剤。(2)シュードモナス・フロレッセンス種に属する細菌が、MCIB−9(FERM P−19144)、MCIB−10(FERM P−19145)、MCIB−11(FERM P−19146)の菌株である、(1)に記載の疫病べと病防除剤。(3)シュードモナス・フロレッセンス細菌の菌体が1×10の7乗個/g濃度以上、好ましくは1×10の8乗個/g〜1×10の11乗個/g含まれる(1)〜(2)のいずれか一項に記載の疫病べと病防除剤。(4)(1)〜(3)のいずれか一項に記載の疫病べと病防除剤を植物地上部に処理する、疫病とべと病の防除方法。
本発明の、シュードモナス・フロレッセンス細菌の菌体又は培養物を含む防除剤は、植物の地上部(花部や茎葉部)に処理することにより、化学薬剤耐性菌の出現する疫病とべと病菌を、比較的簡便に防除することができ、化学薬剤耐性菌をも防除することが可能である。また自然土壌から分離した微生物であることから環境にもやさしい薬剤と防除法であり、IPM(総合防除)に貢献しうる手段である。
以下、本発明を詳細に説明する。
<1>本発明に用いる微生物
先ず本発明に用いた微生物であるシュードモナス・フロレッセンス(Pseudomonas fluorescens)菌株は、MCIB−9菌株、MCIB−10菌株,MCIB−11菌株であり、全て自然土壌から分離したものである。これらの菌株は、独立行政法人産業技術総合研究所特許生物寄託センター(茨城県つくば市東1丁目1番1 中央第6)に、各々、FERM P−19144、FERM P−19145、FERM P−19146の受託番号で平成14年12月9日から寄託されている。これら菌株の同定時の分類学的諸性質を第1表、第2表に示す。
Figure 2005289943
Figure 2005289943
<2>本発明に使用する微生物の培養方法
本発明の細菌の培養は、例えば、往復式振盪培養、ロータリー培養、ジャーファメンター培養、培養タンク培養等の液体培養やシュードモナスに属する細菌の通常の培養方法に準じて行うことができる。
培養に用いる培地は、生育しやすい培地であれば何でもよく、例えば炭素源としてグルコース、デンプン、デキストリン、シュークロース、糖蜜等の糖類、窒素源としては酵母エキス、コーン・スティープ・リーカー、肉エキス、小麦胚芽、ペプトン類、バレイショエキス、大豆粉等の有機窒素源が好ましいが、塩安,硝安、硫安等の無機塩も利用できる。また、無機塩としてリン酸、カリウム、カルシウム、マンガン、マグネシウム、鉄等の塩類、例えば、塩化カリウム、塩化カルシウム、硫酸マンガン、硫酸第一鉄などを配合することができる。また、必要に応じて消泡剤、バッファー等の種々の添加剤を用いることも可能である。
培養の条件は特に限定されるものではないが、培養は液体培養では通気撹拌や振盪培養等の好気的条件下で行うことが好ましく、温度は15〜30℃、好ましくは25〜30℃、pHは6〜9、より好ましくは6〜8の範囲で行う。
<3>本発明の疫病べと病防除剤
本発明のシュードモナス・フロレッセンス細菌の「菌体又は培養物」の「培養物」とは、上記で説明したような培養で得られた菌体を含む全てのものを意味する。すなわち「菌体又は培養物」を含む防除剤は、(菌体含有培養物)をそのまま使用することができるし、培養物から菌体を除いた培養液を使用することもできるし、菌体のみでも使用できる。この培養物(又は培養液)は、適宜希釈または濃縮して使用することができる。菌体を液体培地で培養して得た培養物は、懸濁液の状態で植物の葉や茎に散布することができるため、植物の葉や茎等の地上部処理に好ましい。
植物の地上部に散布する際には、長期的に防除効果を得るためには、菌体を多数含む処理剤を散布するのが好ましい。好ましい処理時の菌体濃度は1×10の5乗個/g濃度以上で、更に好ましくは1×10の6乗個/g〜1×10の9乗個/g濃度にして散布するのが好ましい。水和剤の例で示すと1×10の8乗個/g〜1×10の11乗個/gの防除剤を水で100倍以上に適宜希釈し、上記濃度で散布するのが好ましい。
本発明の疫病べと病防除剤は、通常の化学農薬製剤や微生物製剤で一般的(他社権利範囲外)に利用されて来た製造方法に従って、シュードモナス・フロレッセンス細菌の「菌体又は培養物」を、必要に応じて各種任意成分と共に、粉剤、水和剤、顆粒水和剤、乳剤、液剤、フロアブル、塗布剤等として使用できる。
上記任意成分としては、固体担体として、ベントナイト、モンモリロナイト、珪藻土、酸性白土、タルク類、パーライト、バーミキュライト等の鉱物質微粉末、硫酸塩、尿素、塩化塩、硝酸塩等の無機塩、フスマ、キチン、多糖類、米糠、小麦粉等の有機物微粉末等を、また、補助剤として、カゼイン、ゼラチン、アラビアガム、アルギン酸、糖類、合成高分子(ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸類等)、ベントナイト等の固着剤や分散剤、その他の成分として、プロピレングリコール、エチレングリコール等の凍結防止剤、キサンタンガム等の天然多糖類、ポリアクリル酸類等の増粘剤、また展着剤、乳化剤、着色剤等を添加することができる。
この様にして得られる本発明の疫病べと病防除剤の地上部防除対象植物は、作物(野菜、果菜、イモ類、豆類、特用作物)にとどまらず、食用及び鑑賞用の花卉、街路樹や生垣に利用されるかん木等のアメニティ植物を含む。
先ず最初の防除対象病原菌は疫病を引き起こすフィトフトラ(Phytophthora)属の菌類であり、以下に本発明が防除対象とする、疫病の具体的対象植物及びその病原菌の例を示す。
<疫病対象植物、病原菌>
トマト、ジャガイモの疫病菌フィトフトラ・インフェスタンス(Phytophthora infestans)、トマト、キュウリの灰色疫病菌であり、且つトウガラシ、ピーマン、カボチャの疫病菌であるフィトフトラ・キャプシシ(Phytophthora capsici)、メロン、キュウリ、イチゴ、ゴマ、カーネーション、ガーベラ、ユリ類の疫病菌であるフィトフトラ・ニコチアネ・バライエティー・パラジティカ(Phytophthora nicotianae var. parasitica)、ダイズの茎疫病菌フィトフトラ・メガスペルマ・バライエティー・ソジャエ(Phytophthora megasperma var. sojae)、アズキの茎疫病菌フィトフトラ・ビグネ(Phytophthora vignae)、ソラマメ、タマネギ、ネギの疫病菌であるフィトフトラ・ニコチアネ・バライエティー・ニコチアネ(Phytophthora nicotianae var. nicotianae)、キク、チューリップの疫病菌であるフィトフトラ・カクトラム(Phytophthora cactorum)、スイカ疫病菌フィトフトラ・ドレクスレリ(Phytophthora drechsleri)、キュウリの疫病菌フィトフトラ・メロニス(Phytophthora melonis)、ホウレンソウ疫病菌フィトフトラ・エスピー(Phytophthora sp.) 等が挙げられる。
次に、本発明のもう一つの防除対象病害であるべと病の具体的対象植物及びその病原菌の例を示す。
<べと病対象植物、病原菌>
(野菜)
キュウリ、メロン、スイカ、カボチャのべと病菌シュードペロノスポーラ・キュベンシス(Pseudoperonospora cubensis)、ダイコン、ハクサイ、キャベツ、カブのべと病菌ペロノスポーラ・ブラシケ(Peronospora brassicae)、タマネギ、ネギのべと病菌ペロノスポーラ・デストラクター(Peronospora destructor)、ホウレンソウのべと病菌ペロノスポーラ・スピナシエ(Peronospora spinaciae)、シュンギクのベト病菌ペロノスポーラ・クリサンセミ−コロナリー(Peronospora chrisanthemi-coronarii)、レタスのべと病菌ブレミア・ラクツケ(Bremia lactucae)、セリ科植物のべと病菌プラズモパーラ・ニベア(Plasmopara nivea)、
(果樹)
ブドウのべと病菌プラズモパーラ・ビティコーラ(Plasmopara viticola)、
(豆類と特用作物)
エンドウのべと病菌ペロノスポーラ・ピシ(Peronospora pisi)、ソラマメのべと病菌ペロノスポーラ・ビシエ(Peronospora viciae)、テンサイのべと病菌ペロノスポーラ・シャクチー(Peronospora schachtii)、ナタネのべと病菌ペロノスポーラ・ブラシケ(Peronospora brassicae)、ホップのべと病菌(シュードペロノスポーラ・フムリ(Pseudoperonospora humuli)、タバコのべと病菌ペロノスポーラ・タバシナ(Peronospora tabacina)、
(花卉類)
バラのべと病菌ペロノスポーラ・スパルサ(Peronospora sparsa)、キクのべと病菌ペロノスポーラ・ダニカ(Peronospora danica)等が挙げられる。
<4>本発明の疫病べと病防除方法
本発明の病害防除法においては、上記の様な各種栽培植物の疫病べと病を防除する目的で、上記本発明の病害防除剤を栽培植物の地上部(茎葉部や花果部等)に施用する。
施用の方法としては、剤型等の使用形態、作物や病害によって適宜選択され、例えば、地上液剤散布、地上固形散布、空中液剤散布、空中固形散布、施設内施用等の茎葉花部への散布処理や、その他の単花処理、栽培植物の傷口箇所、剪定部への塗布処理等の方法を挙げることができる。
また、栽培植物への施用に際して、殺虫剤、殺線虫剤、殺ダニ剤、除草剤、殺菌剤、植物生長調節剤、液肥、葉面散布剤等を混合施用、あるいは混合せずに交互施用、または同時施用することも可能である。
本発明の防除剤施用量は、病害の種類、適用植物の種類、防除剤の剤型等によって異なるため一概には規定できないが、例えば、水和性の剤を水で希釈して地上部散布する場合には、その施用時の菌体濃度は、通常約1×10の5乗個/mL以上であり、好ましくは約1×10の6乗個/mL〜1×10の9乗個/mLであり、施用量は、好ましくは50〜500L/10aである。
以下実施例により、本発明を更に具体的に説明する。但し、本発明は実施例にのみ限定されるものではない。
<培養製造例>
(培養製造例1)イーストエキス(DIFCO社)5gとポリペプトン(日本製薬社)10gと塩化ナトリウム5gを蒸留水1L当りに添加し、PH7.0前後に調整したイーストペプトン培養液を、500mlの振とう用フラスコに100ml入れ滅菌後、供試微生物菌株を無菌的に移植し、30℃、120rpmの条件で2日間ロータリー培養した。フラスコの培養本数は適宜増やした。
(培養製造例2)グルコース(和光純薬工業)10gとポリペプトン(日本製薬社)10gと硫酸マグネシウム七水和物(和光純薬工業)1.5g、リン酸水素ニカリウム(和光純薬工業)1.5gを蒸留水1L当りに添加し、PH7.0前後に調整した培養液を、500mlの振とう用フラスコに100ml入れ滅菌後、供試微生物菌株を無菌的に移植し、30℃、120rpmの条件でロータリー培養した。得られた培養物約100mLを前記同培地5Lの入った10L容の発酵槽に植菌し、好気的条件下で30℃で40時間培養して培養液を得た。得られた約5Lの培養液を常法に従って遠心分離(6000rpm、20分間)濃縮して菌体培養物の濃縮物(約150g)を得た。この菌体培養濃縮物を減圧下で乾燥して粉砕すれば菌体培養濃縮物の乾燥物とすることができる。また、直ぐに使用しない場合は乾燥前に凍結貯蔵することもできる。得られた菌体培養濃縮物又はその乾燥物の一部を製剤に使用した。
<製剤例>
(製剤例1)前記(培養製造例1)で培養して得られた菌体培養濃縮物に、キサンタンガムを混ぜ、1×10の11乗個/mlになるようにして、簡易液剤を調整した。
(製剤例2)前記(培養製造例2)で培養して得られた菌体培養濃縮物70部、グルコース30%水溶液30部を加え、凍結乾燥し、混合解砕後、約5×10の10乗個/gの簡易水和剤を得た。
(製剤例3)前記(製剤例2)で得られた菌体乾燥物75部、ラジオライト(焼成ケイソウ土)10部、リグニンスルホン酸ナトリウム1部、アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム1部、ホワイトカーボン13部を混合解砕し、水和剤100部を得た。得られた剤中の菌体濃度を測定したところ約3×10の10乗個/gであった。
<病害防除試験例>
(試験例1)トマト疫病防除試験
温室内にて直径7.5cmのプラスチックポットに5葉期まで生育させたトマト(品種:世界一)に製剤例2に準じて調整した製剤を水で1000倍に希釈し、4ポットあたり50mlづつスプレーガンにて散布した。薬液が乾いた後に、ジャガイモ塊茎上で培養し、水で回収した疫病菌(フェニルアマイド系耐性菌)の遊走子のう懸濁液を5×10の4乗個に調製し、10℃前後にして約50%の間接発芽を確認後に接種した。接種後、人口気象室(16〜20℃)の湿室内に7日間保った後、調査を実施した。比較対照薬剤例として、市販生物農薬のB剤(1000倍希釈液)と市販化学農薬のR剤(実用濃度1500倍希釈液)を同時に試験した。調査はトマト全小葉あたりの発病小葉の割合である発病小葉率を調べた。各処理区および無処理区の平均値を発病小葉率とした。防除価は以下の様に算出した。結果は第3表に示した。
防除価=[(1−処理区の発病小葉率)/(無処理区の発病小葉率)]×100
Figure 2005289943
(試験例2)キュウリ灰色疫病防除試験
温室内にて直径15cmのプラスチックポットに結実期まで生育させたキュウリ(品種:相模半白)に製剤例1に準じて調整した製剤を水で1000倍に希釈し、6ポットあたり300mlづつハンディースプレーにて散布した。薬液が乾いた後に、キュウリ果実上で培養し、水で回収した灰色疫病菌の遊走子のう懸濁液を5×10の4乗個/mlに調製し、接種した。接種後、加湿器導入の温室内湿室(20〜30℃)に14日間保った後、調査を実施した。調査はキュウリ果実の発病のみで行い、全果実あたりの発病果実の割合である発病果率を調べた。各処理区および無処理区の平均値を発病果率とした。防除価は以下の様に算出した。結果は第4表に示した。
防除価=[(1−処理区の発病果率)/(無処理区の発病果率)]×100
Figure 2005289943
(試験例3)キュウリべと病防除試験
温室内にて直径7.5cmのプラスチックポットに1.5葉期まで生育させた2本立てのキュウリ(品種:相模半白)に製剤例2に準じて調整した製剤を水で1000倍に希釈し、4ポットあたり50mlづつスプレーガンにて散布した。薬液が乾いた後に、予め発病させておいたキュウリの発病葉から水で回収したべと病菌(メトキシアクリレート系薬剤耐性菌)の遊走子のうを5×10の4乗個/mlに調製して接種した。接種後、人工気象室(19〜24℃)の湿室内に7日間保った後、調査を実施した。比較対照薬剤例として、市販生物農薬のB剤(1000倍希釈液)と市販化学農薬のA剤(実用濃度2000倍希釈液)を同時に試験した。調査はキュウリ1葉当りに病斑が占める面積を下記の指標に従って調査し、各区の平均発病度から下記の計算式により防除価を算出した。結果は第5表に示した。
発病度指数 0:病斑無し
1:病斑面積が 5%以下
2:病斑面積が 6〜25%
3:病斑面積が 2〜50%
4:病斑面積が 51%以上
各処理区および無処理区の平均値を発病度とした。防除価は以下の様に算出した。
防除価=[(1−処理区の発病度)/(無処理区の発病度)]×100
Figure 2005289943
(試験例4)ブドウべと病防除試験
温室内にて直径15cmのプラスチックポットに10葉期以上まで生育させたブドウ(品種:デラウエア)に製剤例3に準じて調整した製剤を水で1000倍に希釈し、2ポットあたり200mlづつスプレーガンにて散布した。薬液が乾いた後に、予めブドウ園にて自然発生したべと病罹病葉から水で回収したべと病菌の遊走子のうを5×10の4乗個/mlに調製して接種した。接種後、人工気象室(18〜23℃)の湿室内に14日間保った後、調査を実施した。調査はブドウ1葉当りに病斑が占める面積を下記の指標に従って調査し、各区の平均発病度から下記の計算式により防除価を算出した。結果は第6表に示した。
発病度指数 0:病斑無し
1:病斑面積が 5%以下
2:病斑面積が 6〜25%
3:病斑面積が 26〜50%
4:病斑面積が 51%以上
各処理区および無処理区の平均値を発病度とした。防除価は以下の様に算出した。
防除価=[(1−処理区の発病度)/(無処理区の発病度)]×100
Figure 2005289943
(試験例5)ハクサイべと病防除試験
温室内にて直径7.5cmのプラスチックポットに5葉期まで生育させたハクサイ(品種:青和1号)に製剤例2に準じて調整した製剤を水で1000倍に希釈し、5ポットあたり50mlづつスプレーガンにて散布した。薬液が乾いた後に、予め発病させておいたハクサイの罹病葉から水で回収したべと病菌(フェニルアマイド系薬剤耐性菌)の分生子を1×10の5乗個/mlに調製して接種した。接種後、プレハブ冷蔵庫(8〜12℃)の湿室内に3日間保った後、グロースチャンバー内湿室(10〜20℃)で8日間置き調査を実施した。比較対照薬剤例として、化学農薬のR剤(実用濃度2000倍希釈液)を同時に試験した。調査はハクサイ1葉当りに病斑が占める面積を下記の発病度指数に従って調査し、各区の平均発病度から下記の計算式により防除価を算出した。結果は第7表に示した。
発病度指数 0:病斑無し
1:病斑面積が 5%以下
2:病斑面積が 6〜25%
3:病斑面積が 26〜50%
4:病斑面積が 51%以上
各処理区および無処理区の平均値を発病度とした。防除価は以下の様に算出した。
防除価=[(1−処理区の発病度)/(無処理区の発病度)]×100
Figure 2005289943

Claims (4)

  1. シュードモナス・フロレッセンス種に属する細菌の菌体又は培養物を含むことを特徴とする、疫病べと病防除剤。
  2. シュードモナス・フロレッセンス種に属する細菌が、MCIB−9(FERM P−19144)、MCIB−10(FERM P−19145)、MCIB−11(FERM P−19146)の菌株である、請求項1に記載の疫病べと病防除剤。
  3. シュードモナス・フロレッセンス細菌の菌体が1×10の7乗個/g濃度以上、好ましくは1×10の8乗個/g〜1×10の11乗個/g含まれる請求項1〜2のいずれか一項に記載の疫病べと病防除剤。
  4. 請求項1〜3のいずれか一項に記載の疫病べと病防除剤を植物地上部に処理する、疫病とべと病の防除方法。
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