JP2005289295A - ポッド推進船の船橋構造 - Google Patents

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良昌 田井
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Abstract

【課題】繰舵室内の配員を2名から1名に減員できる船橋構造を提供する。
【解決手段】ポッド推進船は複数台の小型の発電機を用いるので、船体上に大きな煙突を設ける必要がなく、船橋の後方視界を確保できる。そして、繰舵室を設けた船橋Aを構成する周壁を前壁1、後壁2、左右の斜め前方壁3,4、左右の斜め後方壁5,6、左右の側方壁7,8により多角形に構成し、各壁に前方窓W1、左右の斜め前方窓W3,W4、左右の側方窓W7,W8、左右の斜め後方窓W5,W6、後方窓W2を設けた。このため、繰舵室から全周囲の見通しが確保でき、視界確保のための連絡要員が不要になるので、繰舵室の配員を1名に減員できる。
【選択図】図1

Description

本発明は、ポッド推進船の船橋構造に関する。ポッド推進船とは、船の推進装置として、従来のスクリューに代え、ポッド推進装置を船尾に備えた船舶をいう。
ポッド推進装置を用いない従来船では、推進器であるスクリューを駆動するための大形のエンジンを船体内の機関室に据え付けており、そのエンジンが出す排気を船外に出す煙突が必ず必要となる。その煙突110は図4に示すように、通常は船橋100の後方に配置される。その理由は、船橋100の前方と両側方の視界確保が重要なためである。
そこで船橋100の構造も、前方と左右両側方の視界を重視して下記のように構成されている。
図5は従来船の船橋の平面図である。船橋100は船橋甲板101上に設けられている。この船橋100は略四角形の壁面をもった構造物であって、前面と両側面の壁に窓103が設けられ、後面の壁にはほとんど窓が設けられていない。内部には、航海に必要な海図室や繰舵室などが設けられている。
この船橋100は、船橋甲板101の中央を占めている。また、船橋甲板101の左右両端部には、接岸時等に左右の下方を監視する監視コーナ102が設けられている。
図6は船橋内から前方を見た窓構造の一例を示し、図示のごとく窓103は、船橋内の前方壁面104の上方部分にのみ設けられている。
上記の船橋構造では、後方の見通しがよくない。そこで、国際衝突予防規則により、繰舵室内に配された2名の乗組員の下、船を操船するために必要な見通しを確保していた。すなわち、煙突110等の船体構造物で死角になっている方向の見通しを確保するため、繰舵室内を移動し、指令伝達方式で操船指示を行っていた。そのため、船橋内には常時、最低2名の配員が必要となっていた。
本発明は上記事情に鑑み、繰舵室内の配員を2名から1名に減員できる船橋構造を提供することを目的とする。
第1発明のポッド推進船の船橋構造は、複数台の発電機で推進動力と船内電気設備の電力を供給するポッド推進船において、繰舵室を設けた船橋を構成する周壁に、船橋の周囲全方向を見通す窓を設けたことを特徴とする。
第2発明のポッド推進船の船橋構造は、第1発明において、前記周壁が四角以上の多角形であり、各辺の壁にそれぞれ窓を設けたことを特徴とする。
第3発明のポッド推進船の船橋構造は、第2発明において、前記周壁が、前壁、後壁、左右の斜め前方壁、左右の斜め後方壁、左右の側方壁を備えており、前記各壁に前方窓、左右の斜め前方窓、左右の側方窓、左右の斜め後方窓、後方窓を設けことを特徴とする。
第4発明のポッド推進船の船橋構造は、第3発明において、前記左右の側方壁は、前記左右の斜め前方壁の側端および前記左右の斜め後方壁の側端に対し、それぞれ連絡壁を介して接続して、船体の側端部に位置させたことを特徴とする。
第5発明のポッド推進船の船橋構造は、第3発明において、前記前壁には、前記前窓の下方に、下窓を設けたことを特徴とする。
第6発明のポッド推進船の船橋構造は、第1発明において、前記船橋の内部に四周をガラス張りにしたサニタリー室を設けたことを特徴とする。
第7発明のポッド推進船の船橋構造は、第1発明において、前記船橋内に、床より下げた位置に降ろして格納したり、床上に引き上げて仮止めできる沈下式の付属設備を設けたことを特徴とする。
第8発明のポッド推進船の船橋構造は、第1発明において、前記船橋内の甲板下に、非繰船用機器の格納スペースを設けたことを特徴とする。
第1発明によればつぎの効果を奏する。ポッド推進船は複数台の小型の発電機を用いるので、船体上に大きな煙突を設ける必要がない。このため、船橋の後方視界を確保できる。そして、船橋の周囲全方向を見通す窓を設けているので、視界確保のための連絡要員が不要になり、繰舵室の配員を1名に減員できる。
第2発明によれば、四角以上の多角形の壁のそれぞれに窓を設けるので、船橋の周囲を多方向から見通して、1名で充分な見張りが可能となる。
第3発明によれば、船橋の周壁に前後左右を見通す前方窓、後方窓、左右の側方窓に加え、左右の斜め前方と斜め後方を見通す斜め前方窓と斜め後方窓を設けたことにより繰舵室から8方向の見通しが確保でき、1名で充分な見張りが可能となる。
第4発明によれば、左右の側方窓が船体の側端部に位置するので、離着桟や係船作業などの監視がしやすくなる。
第5発明によれば、下窓から船橋周囲の直下部を見通せるので、暴露甲板や岸壁などの監視がしやすくなる。
第6発明によれば、サニタリー室を使用中でもガラス越しに、船橋外を監視することができる。
第7発明によれば、付属設備を床下に下げておけば、その上方から船橋外を見通すことができるので、視界確保に有益である。
第8発明によれば、操船に必要のない非繰船用機器を船橋の甲板下に格納したので、船橋から外を見通す視界を広く確保できる。
つぎに、本発明の実施形態を図面に基づき説明する。
図1は本発明の一実施形態に係る船橋構造の平面図である。図2は同船橋構造の前方窓を示す斜視図である。図3は同船橋構造を有する船の側面図である。
まず、図3に基づきポッド推進船の特徴を説明する。ポッド推進船は、2台以上のポッド推進装置を用いることが、規則で義務付けられているが、ポッド推進装置に給電する発電機は1台の大形のエンジンを用いるのではなく、多数の発電機、例えば2台から4台位を用いて給電するようになっている。各発電機は小形でよいので、大きい煙突に集約して排煙する必要はなく、船体の適宜の場所、例えば船尾係船甲板下などから個々に排煙するようにしている。この結果、船橋Aの後方に煙突がない構造をポッド推進船ではとることができる。
そこで、煙突を無くして後方視界を確保できる特徴を活かしたのが、本発明の船橋構造である。
本実施形態の船橋構造を図1に基づき説明する。
同図に示すように、本実施形態の船橋Aは平面視において多角形である。すなわち、基本的には8角形である。
まず、船橋Aの前方には前壁1が設けられ、後方には後壁2が設けられている。前記前壁1の左右両側には、左斜め前方に向いた左斜め前方壁3と右斜め前方に向いた右斜め前方壁4とが設けられている。さらに、前記後壁2の左右両側には、左斜め後方に向いた左斜め後方壁5と右斜め後方に向いた右斜め後方壁6とが設けられている。そして、左斜め前方壁3と左斜め後方壁5との間には、左側方壁7が設けられ、右斜め前方壁4と右斜め後方壁6との間には右側方壁8が設けられている。これらの8カ所の壁1〜8により、基本的には8角形である。
ただし、上記2カ所の側方壁7,8に関しては、以下のような特殊な形状となっている。すなわち、いずれの側方壁7,8も連続しておらず、側方に突出した形で設けられている。すなわち、左斜め前方壁3から側方に延びる前連絡壁7aを設け、左斜め後方壁5から側方に延びる後連絡壁7bを設け、これら前・後連絡壁7a,7bの先端同士の間に左側方壁7が設けられている。
また、右斜め前方壁4から側方に延びる前連絡壁8aを設け、右斜め後方壁6から側方に延びる後連絡壁8bを設け、前・後連絡壁8a,8bの先端同士の間に右側方壁8が設けられている。
このように、側方壁7,8を側方に突出させることで、船体側方の直下付近の見通しを良くすることができる。
前記船橋Aは周壁を構成する前記各壁1〜8で囲まれており、それぞれの壁1〜8に、下記のように外を見通す窓が設けられている。
前壁1 : 前窓W1
後壁2 : 後窓W2
左斜め前方壁3 : 左斜め前方窓W3
右斜め前方壁4 : 右斜め前方窓W4
左斜め後方壁5 : 左斜め後方窓W5
右斜め後方壁6 : 右斜め後方窓W6
左側方壁7 : 左側方窓W7
右側方壁8 : 右側方窓W8
なお、前記各連絡壁にも、下記の窓がそれぞれ設けられている。
前連絡壁7a : 前連絡窓W7a
後連絡壁7b : 後連絡窓W7b
前連絡壁8a : 前連絡窓W8a
後連絡壁8b : 後連絡窓W8b
上記のとおり、前後左右を見通す前方窓W1、後方窓W2、左右の側方窓W7,W8に加え、左右の斜め前方と斜め後方を見通す斜め前方窓W3,W4と斜め後方窓W5,W6を有するので、船橋内の繰舵室から全周方向の見通しが確保できる。このため、視界確保のための連絡要員が不要になるので、繰舵室の配員を1名に減員できる。
さらに、2カ所の側方壁7,8にそれぞれ設けた2カ所の側方窓W7,W8は、船体の側方端に位置するので、離着桟や係船などの作業時に便利である。
本実施形態では、上記の窓構造のうち、前方を見る窓については、下方を見通す窓も設けられている。すなわち、下窓UWが図2に示すように設けられている。
前窓W1の下方 : 下窓UW1
右斜め前方窓W4の下方 : 下窓UW4
右側の前連絡窓W8aの下方 : 下窓UW8a
図2には示していないが、左斜め前方窓W3の下方には下窓UW3が、左側の前連絡窓W7aの下方には下窓UW7aが、それぞれ設けられている(図1参照)。
これらの下窓があると、船橋Aの下方視界も確保でき、離着桟や係船時の作業の監視に好適である。なお、本実施形態では、前壁1,左斜め前方壁3,右斜め前方壁4,前連絡壁7a,前連絡壁8aに下窓UWを設けたが、このうちいずれに下窓UWを設けるかは任意であり、用途・目的に応じて取捨選択すればよい。
つぎに、船橋Aの内部構造を図1に基づき説明する。
11は便器等を備えたサニタリー室である。このサニタリー室11の四周もガラス張りにして、用足し中にも船外を監視できるようにすることが好ましい。なお、ガラス張りの壁は上方が透明ガラスで、下方がスリガラスにするとよい。
12は航海用のディスプレーであるが、乗員がディスプレー12の前方に居ても後方に居ても情報が得られるように、回転式にしておくことが好ましい。
13はロッカーや本棚などの付属設備であるが、これも視界の妨げとならないように沈下式とし、船橋A内の床より下げた位置に降ろして、降ろされたロッカーの上方を見通して視界を確保できるようにすることが好ましい。なお、使用時には、引き上げて仮止めできるようにしておけばよい。
なお、14は下層の甲板と通ずる階段である。
図3に示すように、船橋Aの甲板15の下方には、格納スペース16が設けられている。この格納スペース16は甲板15の下方で高さ1500mm〜1300mm位でよい。この格納スペース16には、繰船には必要のない非繰船用機器、例えば、分電盤やサーバ等が格納される。これらの非繰船用機器の出し入れは、甲板15に設けたハッチ17から行えばよい。
このように構成することで、繰舵室内の障害物を無くし、船橋外を見通す視界も広く確保できる。
つぎに、他の実施形態を説明する。
本発明における船橋の周壁は、前記の基本8角形に限らず、四角以上の多角形を用いたり、また円形や楕円形等の形状であってもよい。そして、多角形の壁のそれぞれに窓を設けたり、円形や楕円形等の壁に船橋の周囲を多方向に見通す窓を設けたものであってもよい。
本発明の船橋構造は、ポッド推進船であって船橋の後方に煙突のない船であれば、どのような船種にも適用することができる。
本発明の一実施形態に係る船橋構造の平面図である。 同船橋構造の前方窓を示す斜視図である。 同船橋構造を有する船の側面図である。 従来船の船の側面図である 従来船の船橋の平面図である。 船橋内から前方を見た斜視図である。
符号の説明
1 前壁
2 後壁
3 左斜め前方壁
4 右斜め前方壁
5 左斜め後方壁
6 右斜め後方壁
7 左側方壁
8 右側方壁
W1 前窓
W2 後窓
W3 左斜め前方窓
W4 右斜め前方窓
W5 左斜め後方窓
W6 右斜め後方窓
W7 左側方窓
W8 右側方窓
UW1 下窓
UW3 下窓
UW4 下窓

Claims (8)

  1. 複数台の発電機で推進動力と船内電気設備の電力を供給するポッド推進船において、
    繰舵室を設けた船橋を構成する周壁に、船橋の周囲全方向を見通す窓を設けた
    ことを特徴とするポッド推進船の船橋構造。
  2. 前記周壁が四角以上の多角形であり、各辺の壁にそれぞれ窓を設けた
    ことを特徴とする請求項1記載のポッド推進船の船橋構造。
  3. 前記周壁が、前壁、後壁、左右の斜め前方壁、左右の斜め後方壁、左右の側方壁を備えており、
    前記各壁に前方窓、左右の斜め前方窓、左右の側方窓、左右の斜め後方窓、後方窓を設けた
    ことを特徴とする請求項2記載のポッド推進船の船橋構造。
  4. 前記左右の側方壁は、前記左右の斜め前方壁の側端および前記左右の斜め後方壁の側端に対し、それぞれ連絡壁を介して接続して、船体の側端部に位置させた
    ことを特徴とする請求項3記載のポッド推進船の船橋構造。
  5. 前記前壁には、前記前窓の下方に、下窓を設けた
    ことを特徴とする請求項3記載のポッド推進船の船橋構造。
  6. 前記船橋の内部に四周をガラス張りにしたサニタリー室を設けた
    ことを特徴とする請求項1記載のポッド推進船の船橋構造。
  7. 前記船橋内に、床より下げた位置に降ろして格納したり、床上に引き上げて仮止めできる沈下式の付属設備を設けた
    ことを特徴とする請求項1記載のポッド推進船の船橋構造。
  8. 前記船橋内の甲板下に、非繰船用機器の格納スペースを設けた
    ことを特徴とする請求項1記載のポッド推進船の船橋構造。
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