JP2005288468A - 鋼の連続鋳造用浸漬ノズル - Google Patents

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Abstract

【課題】 溶鋼流通孔部へのアルミナ付着や吐出孔の損傷を防止することができ、鋳造終了時まで所定のモールド内溶鋼流動を確保することができる鋼の連続鋳造用浸漬ノズルを提供すること。
【解決手段】 (1)ノズルの溶鋼流通孔部の底部が深さ2mm以上の凹部形状を呈するノズルであって、この底部のコーナーの半径Rが15mm以上で、かつ、底部中心部に略水平面を有すること、(2)ノズルの溶鋼流通孔部の底部が深さ2mm以上の凹部形状を呈するノズルであって、この底部のコーナーの半径Rが15mm以上であり、溶鋼流通孔部に2mm以上の高さの凸部を有すること、(3)ノズルの溶鋼流通孔部の底部が深さ2mm以上の凹部形状を呈するノズルであって、この底部と底部側面の成す角度が100〜170°であること、を特徴とする鋼の連続鋳造用浸漬ノズル。
【選択図】 なし

Description

本発明は、鋼の連続鋳造用浸漬ノズルに関し、特に、溶鋼流通孔部の底部へのアルミナ付着や、吐出孔部の損傷を防止することで、溶鋼の偏流を防止することを特徴とする鋼の連続鋳造用浸漬ノズルに関する。
鋼の連続鋳造用浸漬ノズルは、タンディッシュ・モールド間をシールし、溶鋼の再酸化を防止すると共に、該浸漬ノズルの吐出孔からの溶鋼流を制御し、かつモールド内に均一に溶鋼を供給し、操業の安定化,鋳片品質の向上を図ることにある。
浸漬ノズルを介して溶鋼をモールド内に供給する操業条件では、一般に、アルミキルド鋼が鋳造される。アルミキルドとは、精錬時に溶鋼中の酸素をアルミと酸化反応させて除去することであるが、この場合、溶鋼中に酸化アルミニウム(以下、“アルミナ”という)が懸濁する。このアルミナは、大部分が浮上・除去されるものであるが、その一部は、溶鋼中に懸濁したままである。そのため、浸漬ノズルの溶鋼流通孔部を流下する溶鋼中にもアルミナが存在し、このアルミナが浸漬ノズルの溶鋼流通孔部内の“流れの淀む部位”に付着する。
この付着厚みが増加すると、吐出孔から吐出する溶鋼流の向きや勢いが変化し、モールド内における溶鋼流動が理想的な状態を保てなくなる。そのため、鋳片品質の悪化や、場合によっては、ブレイクアウト等のトラブルを引き起こすことにつながる。また、更に付着が進行すると、浸漬ノズルの溶鋼流通孔部が狭窄し、所定の溶鋼通過量を確保できなくなり、生産性が低下する。
このアルミナ付着を防止する技術として、ノズルからのガス吹きや難アルミナ付着材の適用および溶鋼流通孔部の“形状の改善”の他に、吐出孔近傍の形状を変更する方法がある。
例えば、「吐出孔から下部の溶湯流通路断面積を真上部の通路断面積より小さくすると共に、吐出孔に対し直角だけずれた位置の通路内径を吐出孔の水平寸法に等しくしたノズル」(特許文献1:特公平7−67602号公報参照)といった、吐出孔から下部の溶鋼流通孔を縮小する提案がある。
また、「ノズルの底部が窪んだ半球面状をなし、吐出孔上縁がノズル内側から外側にかけて円弧状に形成されていることを特徴とするノズル」(特許文献2:特開平2-165851号公報参照)や、「吐出流速パターン判別式を用いた判別指数が一定の範囲になるような球面底の深さを有することを特徴とした浸漬ノズル」(特許文献3:特許第2610560号公報参照)といった、球面状の底部を形成させた提案もされている。
特公平7−67602号公報(請求項1参照) 特開平2−165851号公報(特許請求の範囲参照) 特許第2610560号公報(請求項1参照)
上記従来技術では、吐出孔近傍の形状を工夫することにより、いくらかはアルミナ付着を抑制することができるが、まだまだ不充分である。また、形状によっては、吐出孔部における吐出流速分布を不均一にしたり、吐出流速を増速させてしまい、モールド内での溶鋼流動を理想的な状態に保つことができなくなる。
本発明者等は、各種調査の結果、例えば、吐出孔が2孔ある浸漬ノズルであって、底部が凹んでいる場合、従来の一般的な底部形状(矩形形状:図5,図6参照)では、底部コーナー部に“溶鋼流が淀む領域”が発生し、ここにアルミナ付着が発生することを見いだした。
このアルミナ付着について、図5および図6に基づき以下に説明する。なお、図5は、従来の浸漬ノズルを示す概略図であり、図6は、図5に示す従来の浸漬ノズルを使用した際のアルミナ付着を説明するための図であって、これらの図は、いずれも浸漬ノズルを吐出孔の巾中心で垂直に半割りにした図である。
図5に示す従来の浸漬ノズル(1)は、「底部の底面(7)と底部の側面(6)が成す角度(9)」が90°,「底部の底面(7)と底部の側面(6)が成すコーナー部(8)」の半径Rが5mmであり、また、底部深さ(5)が20mmの場合を示している。この従来の浸漬ノズル(1)を使用すると、図6に示すように、溶鋼流通孔部を流下してきた溶鋼流(12)は、ノズル下部までほぼ垂直に流下し、そのまま吐出孔(2)から吐出する流れと、一旦底部の底面(7)に衝突したあと吐出孔(2)より吐出する流れとがある(図6の「吐出流(13)」参照)。この場合、底部の底面(7)と底部の側面(6)が成すコーナー部(8)は、溶鋼流が淀む領域となり、ここにアルミナが付着・堆積する(図6の「コーナー部のアルミナ付着(14)」参照)。なお、図5において、(3)は、吐出孔(2)の外側上端、(4)は、吐出孔(2)の内側下端、(10)は、吐出孔(2)の下面、(11)は、底部の側面(6)と吐出孔の下面(10)とが成すエッジ部である。
また、従来の一般的な底部形状(矩形形状:図5,図6参照)では、コーナー部にアルミナが付着すると(図6の符号(14)参照)、このアルミナ付着は、底部全体に均一に付着するわけではないので、溶鋼流は、左右いずれかの吐出孔から優先的に吐出するようになる。例えば、図7に示すように、左側の吐出孔(2)から優先的に吐出すると、底部の側面と吐出孔の下面とが成すエッジ部(11)は鋭角であり、物理的に脆いため、左側のエッジ部(11)が溶鋼流により損傷する(図7の符号(16)参照)。このように片側の吐出孔が溶損すると、左右の吐出流のバランスが崩れ、モールド内流動が不均一になる。
本発明者等は、前記した“アルミナ付着の防止”および“エッジ部の損傷防止”のためには、溶鋼流の淀みが発生しないような底部形状を採用することが必要である、という点に着目して、本発明を完成したものである。
すなわち、本発明は、上記従来技術の欠点,問題点に鑑み成されたものであって、その目的とするところは、前掲の図5に基づいて説明すると、“底部、特にコーナー部(8)が淀むことを防止することで、該部分へのアルミナ付着を防止すること”である。さらに、“底部の側面(6)と吐出孔の下面(10)とが成すエッジ部(11)の角度を出来るだけ大きくすることにより、この部分の損傷を防止すること”である。これにより、溶鋼流通孔部へのアルミナ付着や吐出孔の損傷を防止することができ、鋳造終了時まで所定のモールド内溶鋼流動を確保することができる鋼の連続鋳造用浸漬ノズルを提供することである。
上記目的を達成する手段として、すなわち、“溶鋼通過量の低下や吐出流速分布の不均一化,吐出流速の増速といった問題を招くことなく、ノズル内孔部の、特に底部へのアルミナの付着、および、底部の側面と吐出孔の下面とが成す部分の損傷を防止する”ための技術的構成として、本発明に係る鋳造用ノズルは、溶鋼流通孔部に突起等を配設していないストレートノズルの場合、「浸漬ノズルの溶鋼流通孔部の底部が深さ2mm以上の凹部形状を呈する鋳造用浸漬ノズルであって、この底部のコーナーの半径Rが15mm以上で、かつ、底部中心部に略水平面を有することを特徴とする鋼の連続鋳造用浸漬ノズル。」を要旨とする(以下、“本発明の第1のノズル”という)。
また、溶鋼流通孔部に突起を配設しているノズルの場合、「浸漬ノズルの溶鋼流通孔部の底部が深さ2mm以上の凹部形状を呈する鋳造用浸漬ノズルであって、この底部のコーナーの半径Rが15mm以上であり、溶鋼流通孔部に2mm以上の高さの凸部を有することを特徴とする鋼の連続鋳造用浸漬ノズル。」を要旨とする(以下、“本発明の第2のノズル”という)。
更に、底部のコーナー部の半径Rが15mm未満のノズルの場合、「浸漬ノズルの溶鋼流通孔部の底部が深さ2mm以上の凹部形状を呈する鋳造用浸漬ノズルであって、この底部の底面と底部の側面の成す角度が100〜170°であることを特徴とする鋼の連続鋳造用浸漬ノズル。」を要旨とする(以下、“本発明の第3のノズル”という)。
このように従来の底部形状ではなく、底部のコーナー部で発生し易い溶鋼流の淀み部を解消する底部形状とすることで、底部のコーナー部へのアルミナ付着を防止することができるものである。更に、物理的に損傷し易い底部の側面と吐出孔の下面とで成すエッジ部の角度を大きくすることで、吐出孔の損傷による変形を防止することができるため、鋳造終了時まで安定したモールド内流動を確保することができ、安定操業や鋳片品質の向上に寄与することができる。
以下、本発明に係る鋳造用ノズル(本発明の第1〜3のノズル)の実施の形態について詳細に説明する。
(本発明の第1のノズルの実施形態)
本発明の第1のノズルは、前記したとおり、溶鋼流通孔部が突起を配設していないストレート形状の場合、「浸漬ノズルの溶鋼流通孔部の底部が深さ2mm以上の凹部形状を呈する鋳造用浸漬ノズルであって、この底部のコーナーの半径Rが15mm以上で、かつ、底部中心部に略水平面を有する」ことを特徴とする。
ここで「底部の深さ」とは、前掲の図5の符号(5)で示す「吐出孔内側下端(4)から底部の底面(7)までの長さ」を差す。また、「底部のコーナー」とは、図5の符号(8)で示す部位のことである。なお、底部のコーナーの半径R(図5で示す底部の底面(7)と底部の側面(6)が成すコーナー部(8)の半径R)は、従来の浸漬ノズルでは、通常5mm程度のRをとり、加圧成形時の亀裂の発生を防止している。
本発明の第1のノズルにおいて、浸漬ノズルの溶鋼流通孔部の“底部の深さ”を2mm以上とし、底部のコーナーの半径Rを15mm以上とすることを特徴とする。これは、次の理由による。
すなわち、底部の深さが2mm未満では、底部に衝突した溶鋼流が“一旦攪拌されて均一化したうえで吐出する”という効果が生じ難い。しかし、あまり深すぎても溶鋼流が淀むので、本発明の第1のノズルでは、好ましくは3〜30mm,より好ましくは3〜25mm,更に好ましくは3〜20mm,最も好ましくは5〜20mmである。また、底部のコーナーの半径Rが15mm未満の場合は、従来品の如く、コーナー部での溶鋼流が淀み、ここにアルミナが付着するので好ましくない。
さらに、本発明の第1のノズルにおいて、底部の中心部は、図1の符号(15)に示すように、“略水平面”を有することを特徴とする。水平面を有しない場合、つまり、完全な凹球面状(図2参照)、あるいは、2面以上の凹球面状で形成された底部形状では、あまりにスムーズすぎて直ちに吐出してしまうため、従来の矩形凹形状(図5参照)のように底部に衝突した溶鋼流が“一旦攪拌され均一化されたのちに吐出される”わけではなく、好ましくない。
この現象を更に詳細に説明すると、溶鋼流通孔部を流下する溶鋼流は、完全な均一流ではなく、例えば、ノズル上方のスライドプレートによる絞りの影響を受けているため偏流状態にある。この偏流状態は、ノズル底部に凹部があることで一旦攪拌され均一化されて吐出するわけであるが、底部形状が球面であると、充分に攪拌されることなく直ちに吐出されるため、吐出流が偏る。従来の矩形凹部(図5参照)では、この攪拌性に優れるため、この特徴を生かしつつコーナー部の淀み部をなくす形状とすることが重要である。
なお、“略水平面”とは、底部の底面の中心部に、溶鋼流通方向に垂直な略平面のことを指す。この略水平面の面積は、溶鋼流通孔部の溶鋼流通方向に垂直な内管断面面積の1〜45%であることが好ましく、より好ましくは1〜40%,更に好ましくは2〜40%,最も好ましくは3〜35%である。
(本発明の第2のノズルの実施形態)
本発明の第2のノズルは、前記したとおり、溶鋼流通孔部に突起を配設しているノズルの場合、「浸漬ノズルの溶鋼流通孔部の底部が深さ2mm以上の凹部形状を呈する鋳造用浸漬ノズルであって、この底部のコーナーの半径Rが15mm以上であり、溶鋼流通孔部に2mm以上の高さの凸部を有する」ことを特徴とする。
本発明の第2のノズルにおいて、底部の深さを2mm以上とし、底部のコーナーの半径Rを15mm以上とする理由は、前記本発明の第1のノズルと同じであり、そして、この第2のノズルにおいても、底部の深さは、好ましくは3〜30mm,より好ましくは3〜25mm,更に好ましくは3〜20mm,最も好ましくは5〜20mmである。
また、本発明の第2のノズルにおいて、溶鋼流通孔部に2mm以上の高さの凸部を有することを特徴とする。この場合、前記本発明の第1のノズルと異なり、底部形状が完全な凹球面状(図2参照)、あるいは、2面以上の凹球面状で形成されていてもよい。その理由は、溶鋼流通孔部に2mm以上の高さの凸部を有する場合は、溶鋼流通孔部を流下する溶鋼流は、突起によって整流化されており、底部で攪拌されずにそのまま吐出されても、均一に吐出することができるからである。
しかし、スライドプレートの内径に対してスループットが小さく、スライドプレートの絞りがきつい(スライドプレートの開度が小さい)場合は、“略水平面”を有するほうが好ましい。この略水平面の面積は、前記本発明の第1のノズルの場合と同様、
溶鋼流通孔部の溶鋼流通方向に垂直な内管断面面積の1〜45%であることが好ましく、より好ましくは1〜40%、更に好ましくは2〜40%、最も好ましくは3〜35%である。
なお、溶鋼流通孔部に配設する高さ2mm以上の凸部は、従来の段差形状や独立突起等いずれの形状でも良く、これらの突起を組み合わせて配設することも可能である。また、突起部は、鋳造用ノズルの本体と一体成形されることが好ましい。一体成形でない嵌め込み式等の場合は、突起部と本体の隙間に溶鋼や鋼中介在物が入り込み、突起部の脱落につながることが懸念されるため、好ましくない。
(本発明の第3のノズルの実施形態)
本発明の第3のノズルは、前記したとおり、底部のコーナー部の半径Rが15mm未満のノズルの場合、「浸漬ノズルの溶鋼流通孔部の底部が深さ2mm以上の凹部形状を呈する鋳造用浸漬ノズルであって、この底部と底部側面の成す角度が100〜170°である」ことを特徴とする。
本発明の第3のノズルにおいて、底部の深さを2mm以上とする理由は、前記本発明の第1のノズルと同じであり、そして、この第3のノズルにおいても、底部の深さは、好ましくは3〜30mm,より好ましくは3〜25mm,更に好ましくは3〜20mm,最も好ましくは5〜20mmである。
ここで、「底部のコーナー部の半径Rが15mm未満のノズルの場合」とは、例えば、溶鋼流通孔部の内径が小さい(例えば、内径が25mm)などの何らかの理由により、コーナー部の半径Rが15mm以上確保できない場合を差し、この場合は、底部と底部側面の成す角度を100°〜170°とすれば、コーナー部の淀みを解消することができる。この場合の例を図3に示すが、これは、底部の底面と底部の側面の成す角度が120°であり、コーナー部の半径Rは5mmの場合である。
本発明の第3のノズルにおいて、底部側面は、2面以上から構成されていても良い。この場合は、いずれかの底部の底面と底部の側面の成す角度が100°〜170°であれば良い。この例を図4(A),(B)に示す。ただし、図4の(B)は、吐出孔下面と、底部側面(a)が成すエッジ部が図4の(A)より鋭角であり、このエッジ部の損傷を考慮すると、図4(A)のように、エッジ部の角度をできるだけ大きくするような形状とする方が好ましい。
また、底部の底面と底部の側面の成す角度が100°〜170°の場合には、溶鋼流通孔部に2mm以上の高さの凸部を有することが好ましい。“底部に衝突した溶鋼流が、底部で攪拌されて均一化する効果”のみに注目すると、従来の矩形構造(図5参照)が好ましいが、底部のコーナー部の半径Rが15mm未満の場合では、コーナー部にアルミナが付着する。Rが15mm未満の場合は、底部の底面と底部の側面の成す角度が100°〜170°とすることが好ましいわけであるが、従来の矩形構造より底部での攪拌効果が低下する。そのため、溶鋼流通孔部に2mm以上の高さの凸部を配設し、予め溶鋼流通孔部を流下する溶鋼を整流化しておく方が好ましい。
(本発明の第1〜3のノズルに共通する実施形態)
本発明に係る鋳造用ノズル(本発明の第1〜3のノズル)は、ノズルの側面に設けられた吐出孔が、その高さより幅のほうが大きいほうが好ましい。
本発明は、底部の、特にコーナー部にアルミナが付着しないような形状を考慮したものであるが、そうすると、“底部での攪拌作用により吐出孔から均一に吐出させる”ことが難しくなる傾向にある。吐出孔から均一に吐出しないということは、吐出孔の上部に負圧域が発生し、パウダースラグを吸い込むので、吐出孔が溶損される。これを防止するため、本発明の底部形状では、吐出孔の高さより幅のほうが大きい扁平形状としたほうが、吐出孔を溶損することなく好ましい。
また、本発明に係る鋳造用ノズル(本発明の第1〜3のノズル)は、ノズルの側面に設けられた吐出孔の底部側面と吐出孔下面とが成すエッジ部の角度を大きくするほうが好ましい。これにより、吐出孔の損傷による変形を防止することができるため、鋳造終了時まで安定したモールド内流動を確保することができ、安定操業や鋳片品質の向上に寄与することができる。なお、上記エッジ部の角度としては、好ましくは45°以上,より好ましくは50°以上,更に好ましくは55°以上,最も好ましくは60°以上である。
本発明において、ノズルの材質は特に限定されない。通常使用されるアルミナ−カーボン材質やスピネル−カーボン材質,ジルコニア−カーボン材質等の黒鉛含有材質や、黒鉛を含まないノンカーボン材質等、いずれの材質も適用可能である。
また、本発明の浸漬ノズルを使用する場合、通常実施されている“Ar等のガスの吹込み”も勿論行うことができる。上ノズルやプレートから、また、浸漬ノズルからのガス吹き等、いずれの方法にも適用することができる。
更に、本発明の底部形状を有する浸漬ノズルは、吐出孔が単孔ではなく、2孔以上あるノズルを指す。通常、スラブ用浸漬ノズルには“2孔”ないし側面2孔と底孔からなる“3孔”が一般的であり、更に、ブルーム用等の小断面モールド用には“4孔”や、側面4孔と底孔からなる“5孔”のものも存在するが、いずれのノズルにも適用することができる。
(本発明と先行技術との対比)
ここで、前記“背景技術”の項で挙げた先行技術と本発明とを対比することで、本発明を更に詳細に説明する。
本発明に関連する、浸漬ノズルの底部近傍のアルミナ付着を防止する技術としては、前掲の特許文献1(特公平7−67602号公報)には、「吐出孔から下部の溶湯流通路断面積を真上部の通路断面積より小さくすると共に、吐出孔に対し直角だけずれた位置の通路内径を吐出孔の水平寸法に等しくしたノズル」が開示されている。これは、吐出孔から下部の溶鋼流通孔を縮小する提案であり、底部近傍のアルミナ付着に関してはある程度の効果が発揮されるものの、溶鋼通過量に重要な影響を及ぼす吐出孔内孔側を縮小するため、所望の溶鋼通過量を確保することができない。本発明は、吐出孔より下部の底部形状のみを改良して、底部へのアルミナ付着を防止するものであり、この点が本発明とは異なるものである。
また、前掲の特許文献2(特開平2-165851号公報)には「ノズルの底部が窪んだ半球面状をなし、吐出孔上縁がノズル内側から外側にかけて円弧状に形成されていることを特徴とするノズル」や、前掲の特許文献3(特許第2610560号公報)には「吐出流速パターン判別式を用いた判別指数が一定の範囲になるような球面底の深さを有することを特徴とした浸漬ノズル」が開示されている。これらは、底部を球面状に形成させた提案であり、アルミナ付着に関しては本発明と同様に有効であるが、底部での攪拌により均一な吐出流を吐出させる効果は期待できない。
これらは、いずれも「底部のコーナー部へのアルミナ付着を防止する底部形状」と「底部での攪拌効果による吐出流の均一化効果」の両方を兼ね備えていないことが本発明とは異なるものである。
つまり、従来の技術では、本発明で特定する次の(1)〜(3)で“攪拌効果を確保しつつ、底部コーナー部へのアルミナ付着を防止する”という作用効果を奏する底部形状とはなっておらず、ここに本発明の新規性がある。
(1)溶鋼流通孔部に突起等を配設していないストレートノズルの場合、「浸漬ノズルの溶鋼流通孔部の底部が深さ2mm以上の凹部形状を呈する鋳造用浸漬ノズルであって、この底部のコーナーの半径Rが15mm以上で、かつ、底部中心部に略水平面を有すること」(本発明の第1のノズル)
(2)溶鋼流通孔部に突起を配設しているノズルの場合、「浸漬ノズルの溶鋼流通孔部の底部が深さ2mm以上の凹部形状を呈する鋳造用浸漬ノズルであって、この底部のコーナーの半径Rが15mm以上であり、溶鋼流通孔部に2mm以上の高さの凸部を有すること」(本発明の第2のノズル)
(3)底部のコーナー部の半径Rが15mm未満のノズルの場合、「浸漬ノズルの溶鋼流通孔部の底部が深さ2mm以上の凹部形状を呈する鋳造用浸漬ノズルであって、この底部の底面と底部の側面の成す角度が100〜170°であること」(本発明の第3のノズル)
以下、本発明の実施例を比較例と共に挙げ、本発明を具体的に説明するが、本発明は、以下の実施例1〜3によって限定されるものではない。
<実施例1(本発明の第1のノズルに係る実施例:図1),比較例1:図5>
実施例1として、溶鋼流通孔部に相当する内管部に突起を配設していないストレート形状であって、図1に示す略水平面(15)を有する底部形状[底部深さ(5):20mm,コーナー部(8)の半径R:20mm]の透明なアクリル製浸漬ノズル(1)を用い、一方、比較例1として、同じくストレート形状であって、図5に示す矩形形状[底部深さ(5):20mm,コーナー部(8)の半径R:5mm]の透明なアクリル製浸漬ノズル(1)を用い、上ノズルから空気を3L/minで吹き込んで水モデル実験を行った。
底部の様子を観察した結果、実施例1では、底部のコーナー部に気泡の停滞が認められなかったのに対し、比較例1では、コーナー部に気泡が停滞する領域が認められ、実機では、ここにアルミナが付着すると考えられる(図6の符号(14)参照)。
そこで、実施例1と比較例1の実機形状ノズルを試作し、実機での比較試験を行った。比較試験は、鋼種:アルミキルド極低炭素鋼,溶鋼通過量:5.5t/min,モールドサイズ:240×1450mm,連々数:6chでストランド比較を行った。
結果は、実施例1では、底部のアルミナ付着や吐出孔の損傷が全く見られなかったのに対し、比較例1では、水モデル実験で認められたと同様、底部のコーナー部に最大19mmのアルミナ付着が認められた(図6の符号(14)参照)。さらに、比較例1では、図7の符号(16)に示すように、左側の吐出孔の下面と底部の側面とが成すエッジ部が損傷していたので、左側の吐出孔から多く吐出していたと考えられる。実際、実機のモールド狭面中央の熱伝対温度は、左側のほうが右側より3〜7℃高く、このことからも実際に偏流状態にあったことが伺える。
<実施例2(本発明の第2のノズルに係る実施例:図1),比較例2:図5>
実施例2として、溶鋼流通孔部に相当する内管部に“溶鋼流通方向に垂直な突起の高さ:5mm,溶鋼流通方向に平行な突起の長さ:100mm”の環状突起を70mmの間隔をあけて配設したノズルであって、図1に示す底部形状を有するノズル(1)[底部深さ(5):18mm,コーナー部(8)の半径R:19mm]を用い、一方、比較例2として、同じく環状突起を配設したノズルであって、図5に示す底部形状(矩形形状)を有するノズル(1)「底部深さ(5):18mm,コーナー部(8)の半径R:5mm」を用いて、実機でのストランド比較試験を行った。試験条件は、鋼種:アルミキルド低炭素鋼、溶鋼通過量:3.5t/min、モールドサイズ:230×1800mm、連々数:5chである。
結果は、比較例2では、吐出孔下面の損傷および底部コーナー部へのアルミナ付着(最大付着厚み:24mm)が認められ、更に、吐出孔上部に負圧域が発生したことによる吐出孔上端(3)の溶損が発生していたのに対し、実施例2では、アルミナ付着や吐出孔の損傷は全く認められなかった。
<実施例3(本発明の第3のノズルに係る実施例:図3),比較例3:図5>
実施例3として、溶鋼流通孔部に相当する内管部は突起を配設していないストレート形状であって、図3に示す底部形状[底部深さ(5):20mm,コーナー部の半径R:5mm,底部の底面と側面が成す角度:120°]を有するノズルを用い、一方、比較例3として、同じくストレート形状であって、底部は、図5に示す矩形形状[底部深さ(5):20mm,コーナー部(8)の半径R:5mm,底部の底面と側面が成す角度:90°]を有するノズルを用い、実機でのストランド比較試験を行った。試験条件は、鋼種:アルミキルド低炭素鋼,溶鋼通過量:5.3t/min,モールドサイズ:250×2000mm,連々数:6chである。
結果は、比較例3では、底部のコーナー部にアルミナ付着(最大13mm)が認められたのに対し、実施例3では、最大付着量:2mmとほとんど問題のない程度であった。また、比較例3は、今回も吐出孔のエッジ部が損傷し、吐出孔が変形したことによる偏流がモールドに設置されている熱伝対温度から検知されたのに対し、実施例3では、鋳造終了時までモールドの左右および前後の熱伝対温度が均一であった。
本発明に係る鋼の連続鋳造用浸漬ノズルは、以上詳記したとおり、
溶鋼流通孔部が突起を配設していないストレート形状の場合、「浸漬ノズルの溶鋼流通孔部の底部が深さ2mm以上の凹部形状を呈する浸漬ノズルであって、この底部のコーナーの半径Rが15mm以上で、かつ、底部中心部に略水平面を有すること」(本発明の第1のノズル)、
溶鋼流通孔部に突起を配設しているノズルの場合、「浸漬ノズルの溶鋼流通孔部の底部が深さ2mm以上の凹部形状を呈する浸漬ノズルであって、この底部のコーナーの半径Rが15mm以上であり、溶鋼流通孔部に2mm以上の高さの凸部を有すること」(本発明の第2のノズル)、
底部のコーナー部の半径Rが15mm未満のノズルの場合、「浸漬ノズルの溶鋼流通孔部の底部が深さ2mm以上の凹部形状を呈する浸漬ノズルであって、この底部の底面と底部の側面の成す角度が100〜170°であること」(本発明の第3のノズル)、
を特徴とする。
これらにより、底部の、特にコーナー部へのアルミナ付着を防止することができ、更に、吐出孔の損傷を防止し、均一な吐出流を吐出させ、モールド内の溶鋼流動を所定の状態に保つことができる。これにより、鋳造終了時まで安定したモールド内流動を確保することができ、操業の安定化や鋼の鋳片品質の向上に寄与するものである。
本発明の第1,第2のノズル(実施例1,2)の実施形態を示す概略図であって、該ノズルを吐出孔の巾中心で垂直に半割りにした図である。 完全な凹球面状の底部形状を示す概略図であって、該ノズルを吐出孔の巾中心で垂直に半割りにした図である。 本発明の第3のノズル(実施例3)の実施形態を示す概略図であって、該ノズルを吐出孔の巾中心で垂直に半割りにした図である。 本発明に係る浸漬ノズルの底部形状の実施形態(底部の側面が2つの面で形成された形状)を示す概略図であって、該ノズルを吐出孔の巾中心で垂直に半割りにした図である。 従来の浸漬ノズル(比較例1に使用したノズル)を示す概略図であって、該浸漬ノズルを吐出孔の巾中心で垂直に半割りにした図である。 図5に示す従来の浸漬ノズルを使用した際の、特に“アルミナ付着”を説明するための図であって、該浸漬ノズルを吐出孔の巾中心で垂直に半割りにした図である。 図5に示す従来の浸漬ノズルを使用した際の、特に“吐出孔下面(エッジ部)の損傷”を説明するための図であって、該浸漬ノズルを吐出孔の巾中心で垂直に半割りにした図である。
符号の説明
(1)・・・・・浸漬ノズル
(2)・・・・・吐出孔
(3)・・・・・吐出孔の外側上端
(4)・・・・・吐出孔の内側下端
(5)・・・・・底部深さ
(6)・・・・・底部の側面
(7)・・・・・底部の底面
(8)・・・・・底部の底面(7)と底部の側面(6)が成すコーナー部
(9)・・・・・底部の底面(7)と底部の側面(6)が成す角度
(10)・・・・吐出孔の下面
(11)・・・・底部の側面(6)と吐出孔の下面(10)とが成すエッジ部
(12)・・・・溶鋼流
(13)・・・・吐出流
(14)・・・・コーナー部(8)のアルミナ付着
(15)・・・・略水平面
(16)・・・・エッジ部(11)の損傷

Claims (5)

  1. 浸漬ノズルの溶鋼流通孔部の底部が深さ2mm以上の凹部形状を呈する鋼の連続鋳造用浸漬ノズルであって、この底部のコーナーの半径Rが15mm以上で、かつ、底部中心部に略水平面を有することを特徴とする鋼の連続鋳造用浸漬ノズル。
  2. 浸漬ノズルの溶鋼流通孔部の底部が深さ2mm以上の凹部形状を呈する鋼の連続鋳造用浸漬ノズルであって、この底部のコーナーの半径Rが15mm以上であり、溶鋼流通孔部に2mm以上の高さの凸部を有することを特徴とする鋼の連続鋳造用浸漬ノズル。
  3. 浸漬ノズルの溶鋼流通孔部の底部が深さ2mm以上の凹部形状を呈する鋼の連続鋳造用浸漬ノズルであって、この底部の底面と底部の側面の成す角度が100〜170°であることを特徴とする鋼の連続鋳造用浸漬ノズル。
  4. 前記ノズルの溶鋼流通孔部に2mm以上の高さの凸部を有することを特徴とする請求項3に記載の鋼の連続鋳造用浸漬ノズル。
  5. 前記ノズルの側面に設けられた吐出孔が、高さより幅のほうが大きいことを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の鋼の連続鋳造用浸漬ノズル。
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