JP2005285674A - 開閉器及びその遮断方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】遮断性能を向上させることができる消弧装置及びそれを備えた開閉器を提供する。
【解決手段】可動消弧室32を電源側ブッシング13の内端部に対して回動可能に設けると共に開路時において固定電極15と可動電極18との間に発生したアークに連動追従するように且つアークの引き伸ばし方向へ移動可能に構成した。可動消弧室32の互いに対向する一対の側壁の外面にはそれぞれ永久磁石61a,61b(図1では永久磁石61bのみ図示する。)を固定するようにした。開路時には、可動電極18の開路動作に連動して、両永久磁石61a,61b間の磁束は固定電極15と可動電極18との間に発生したアークを分断するように移動する。このため、アークの引き延ばし距離が増大し、開閉器11の遮断性能を向上させることができる。
【選択図】 図1

Description

本発明は、開閉器及びその遮断方法に関するものである。
従来、次のような気中直流遮断器が知られている。即ち、気中直流遮断器のケース内には固定接触子及び当該固定接触子に接離可能に対応する可動接触子が設けられている。可動接触子はその基部の回動支点を中心として回動可能に支持されており、当該可動接触子の一端(先端)には可動接点が固定されている。固定接触子の一端には固定接点が固定されており、前記可動接触子が回動することにより可動接点と固定接点とは互いに接離可能となっている。可動接点の近傍には一対の永久磁石が当該可動接点を挟むようにして配置されている。また、固定接点は陰極接点とされ、可動接点は陽極接点とされている。
両永久磁石により可動接点の移動方向に対して直交する向きに磁界を発生させ、この磁界により発生するローレンツ力により、電流遮断動作時に可動接点の近傍に存在する電離気体をケースの可動接触子の先端側の側壁に形成された排気口側へ駆動するように構成されている。このため、電流遮断動作時において、開放位置にある可動接点の付近に存在する電離気体は固定接点の付近に比べて排除されやすくなる。このようにして、固定接点と可動接点との間の絶縁回復時間を早め、遮断性能を確保するようにしている(例えば、特許文献1参照。)。
また、固定消弧室の定位置に永久磁石を固定し、この永久磁石の磁力によりアークを消弧室内において駆動するようにした消弧室もある(例えば、特許文献2,3参照。)。特許文献2に記載の消弧室には、固定接触子が収容されていると共に、当該固定接触子に接離可能に対応する可動接触子を通過可能とした可動接触子入出用の細隙通路を備えている。この消弧室は固定接触子と可動接触子とが離間する際に両接触子間に発生するアークとの接触により消弧性ガスを発生する絶縁性及び消弧性を有する合成樹脂材料により形成されている。前記細隙通路を構成する互いに対向する一対の側壁のうち一方の側壁は永久磁石が埋設された永久磁石埋設壁とされており、同じく他方の側壁は前記一方の側壁に対して接近又は離間する方向へ移動する移動壁とされている。可動接触子抜き出し後は、前記永久磁石埋設壁と前記移動壁との間に、アーク通過用の微小間隔が形成されるようになっている。固定接触子と可動接触子との間に発生したアークは消弧室内において永久磁石の磁力により駆動されて引き延ばされる。
一方、特許文献3に記載の消弧室は、可動電極の先端に設けられた消弧棒と、当該消弧棒の外周を微小間隔を隔てて囲む消弧筒とを備えており、前記微小間隔の部分で消弧するようになっている。消弧筒を構成する側壁において、前記消弧棒に対応する部位には永久磁石が埋設されている。電流遮断時に発生するアークは前記磁石による磁界により駆動されて引き延ばされる。
特開平10−334785号公報 実開昭54−124969号公報 実開昭54−141470号公報
ところが、特許文献1に記載の気中直流遮断器においては、両永久磁石間の磁界中をアークが通過する。このため、両永久磁石間の磁界がアーク電流によって発生する磁界より強い場合は、両永久磁石間の磁界によってアークは内方へ駆動されて故障(例えば短絡)するおそれがあった。また、両永久磁石間の磁界がアーク電流によって発生する磁界より弱い場合は、アークは両永久磁石間の磁界の内方及び外方へ振動して引き延ばされないおそれがあった。
特許文献2に記載の消弧室においては、可動接触子が細隙通路の永久磁石埋設壁を通過するまでの間の開路途中において、固定接触子と可動接触子との間に発生したアークを左右に振動させて引き延ばし、アーク熱によって発生した消弧性ガスによって消弧されるので、消弧までに時間がかかっていた。場合によりアークが再発弧するおそれがあった。
特許文献3に記載の消弧室においては、可動接触子が消弧筒における永久磁石が埋設された部位を通過するまでの間において、固定接触子と可動接触子との間に発生したアークが引き延ばされ、アーク熱によって発生した消弧性ガスによって消弧される。このため、消弧までに時間がかかっていた。場合によりアークが再発弧するおそれがあった。また、特許文献2,3の消弧室では電離気体の吹き飛ばし作用は得られない。
従って、特許文献1の気中直流遮断器及び特許文献2,3のいずれの消弧室においても、アークの引き延ばし距離の増大には限界があり、消弧性能、ひいては開閉器の遮断性能の向上には限界があった。
本発明は前記問題点を解決するためになされたものであって、その目的は、消弧性能及び遮断性能をそれぞれ向上させることができる開閉器及びその遮断方法を提供することにある。
請求項1に記載の発明は、固定電極と、当該固定電極に対して接離可能に対応する可動電極とを備えた開閉器の遮断方法において、開路時において前記固定電極と可動電極との間に発生するアークに磁束を作用させると共に、当該磁束を前記可動電極の開路動作に連動してアークに対して交差する方向へ移動させるようにしたことを要旨とする。
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、閉路時には前記磁束をアーク発生部位におけるアークの引き延ばし方向とは反対方向へずれた位置に作用させると共に、当該磁束を可動電極の開路動作に追従するように且つアークを外側に押しやる方向に移動させるようにしたことを要旨とする。
請求項3に記載の発明は、固定電極と、当該固定電極に対して接離可能に対応する可動電極とを備えた開閉器において、前記可動電極におけるアーク発生部の近傍に配置される磁界発生手段と、前記磁界発生手段により発生した磁束が前記両電極間に発生するアークに交差するように当該磁界発生手段を当該可動電極の開路動作に連動して移動させる追従機構とを備えたことを要旨とする。
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の発明において、本体ケースの両側壁に各相毎に相対するように貫通支持された一対のブッシングを備え、一方のブッシングの内端部には前記固定電極を、また他方のブッシングの内端部には前記可動電極を回動可能に設け、前記一方のブッシングの内端部に固定電極を覆うように且つ当該内端部に対して回動可能に設けられると共に固定電極から可動電極が離間されたときに当該両電極間に発生したアークを消弧する消弧室を備え、前記消弧室を前記可動電極の開路動作に連動して両電極間に発生するアークに追従して移動するように構成し、当該消弧室には前記アークに対する連動追従移動に伴って両電極間のアーク発生部へ進入してアークの引き伸ばし距離を大きくする隔壁部材を設けたことを要旨とする。
(作用)
請求項1に記載の発明によれば、開路時において前記固定電極と可動電極との間に発生するアークには磁束が作用する。この磁束は前記可動電極の開路動作に連動してアークに対して交差する方向へ移動する。開路途中においても両電極間に発生したアークには磁束が作用し、当該アークは磁束の移動方向と反対方向へ押しやられる。このため、開路途中においてアークに磁束を作用させないようにした場合に比べて当該アークの引き延ばし距離が増大する。
請求項2に記載の発明によれば、請求項1に記載の発明の作用に加えて、閉路時には前記磁束はアーク発生部位におけるアークの引き延ばし方向とは反対方向へずれた位置に作用する。開路時において、当該磁束は可動電極の開路動作に追従するように(即ち磁束はアーク発生後に動き出すように)且つアークを外側に押しやる方向に移動する。このため、アークの引き延ばし距離がより増大する。
請求項3に記載の発明によれば、前記可動電極におけるアーク発生部の近傍に磁束が発生する。磁界発生手段により発生した磁束が前記両電極間に発生するアークに交差するように、当該磁界発生手段は可動電極の開路動作に連動して移動する。このため、アークの引き延ばし距離が増大する。
請求項4に記載の発明によれば、請求項3に記載の発明の作用に加えて、消弧室は可動電極の開路動作に連動して両電極間に発生するアークに追従して移動する。また、消弧室のアークに対する連動追従移動に伴って、当該消弧室に設けた隔壁部材が両電極間のアーク発生部へ進入する。このため、アークの引き伸ばし距離が大きくなる。さらに、可動電極の開路動作に連動して前記磁界発生手段により発生した磁束は両電極間に発生するアークに交差するように移動する。このため、アークの引き延ばし距離がいっそう増大する。
本発明によれば、可動電極の移動に伴って磁束がアークを分断するように移動することにより、開閉器の消弧性能及び遮断性能をそれぞれ向上させることができる。
(第1実施形態)
以下、本発明を気中開閉器に搭載される可動消弧室に具体化した第1実施形態を図1〜図8に基づいて説明する。
(開閉器全体)
図1及び図2に示すように、開閉器11の本体ケース12の互いに対向する両側壁には電源側ブッシング13及び負荷側ブッシング14が3相各相毎(図1においては1相分のみ示す。)に互いに対向するように貫通支持されている。電源側ブッシング13の内端部には棒状の固定電極15が突設されている。負荷側ブッシング14の内端部には導電棒16が突設されており、同導電棒16には軸17を介して可動電極18の基端部が回動可能に支持されている。可動電極18は平行に配置された一対の接触刃18a, 18b(図2参照)から構成されている。
可動電極18(接触刃18a, 18b)は鎌状に形成されている。そして、可動電極18の外側先端と内側先端との回動方向長さを異ならせることにより、当該外側先端が固定電極15から最後に離間するように、可動電極18(両接触刃18a, 18b)は形成されている。即ち、開路時においてアークは可動電極18の外側先端に発生するようになっている。
一方、前記本体ケース12内の上部には、複数のリンク等からなるリンク機構(図示略)を介して、本体ケース12外部の操作ハンドル(図示略)に作動連結された回動軸19が設けられており、同回動軸19にはレバー20が一体回動可能に固定されている。レバー20の先端には駆動リンク21の一端が回動可能に連結されており、同駆動リンク21の他端は可動電極18の中央近傍に回動可能に連結されている。また、前記レバー20の先端には作動リンク22の一端が回動可能に連結されている。
従って、前記操作ハンドルが操作されると、可動電極18は前記リンク機構、回動軸19、レバー20及び駆動リンク21を介して軸17を中心に図1に実線で示す投入位置Aと図1に二点鎖線で示す開放位置Bとの間を移動する。尚、前記リンク機構、回動軸19、レバー20及び駆動リンク21から開閉機構部23が構成されている。
前記本体ケース12の内側壁において、電源側ブッシング13の下方には断面L字状の対地間バリア(絶縁部材)24が複数の支持部材25を介して固定されている。この対地間バリア24はナイロン及びポリプロピレン等の絶縁性を有する合成樹脂により形成されている。対地間バリア24は本体ケース12の内底面における電源側ブッシング13側から本体ケース12の電源側ブッシング13固定側の内側面の中央近傍まで本体ケース12の内側面に沿うように設けられている。
(消弧装置)
図1に示すように、前記電源側ブッシング13の内端部には消弧装置30が固定電極15を覆うように設けられている。消弧装置30は電源側ブッシング13の内端部に固着された支持台31と、同支持台31に対して回動可能に支持された消弧室としての可動消弧室32とを備えている。支持台31及び可動消弧室32はそれぞれメラミン、ユリア及びナイロン等の絶縁性及び消弧性を有する合成樹脂材料により一体的に形成されている。
(支持台)
図2及び図3に示すように、前記支持台31は電源側ブッシング13の内端部が挿入された円筒状の挿入部33を備えている。挿入部33のブッシング挿入側の外周には一対の軸34が互いに反対側に位置するように突設されている。挿入部33の反ブッシング挿入側には四角板状の規制部材35が設けられており、同規制部材35の中央には固定電極15を挿通可能とした挿通孔36が形成されている。
規制部材35の負荷側ブッシング14側の前面において、挿通孔36の周囲には四角筒状の挿通ガイド部材37が突設されており、同挿通ガイド部材37の互いに対向する一対の側壁にはそれぞれ切欠38が形成されている。挿通ガイド部材37の下側側壁の中央には固定挟入部材としての扇状のガイド部材39が突設されている。ガイド部材39の円弧部は負荷側ブッシング14側を向いている。また、ガイド部材39の一方の直線部は挿入部33の軸線方向に延びており、他方の直線部は一方の直線部に直交するように規制部材35に沿って下方へ延びている。
図2に示すように、挿入部33内に挿入された電源側ブッシング13の内端は規制部材35に当接しており、これにより支持台31の電源側ブッシング13外端方向(図2における左方向)への移動が規制されている。固定電極15は前記挿通孔36及び挿通ガイド部材37を通過して負荷側ブッシング14側に突出している。支持台31は止めネジ(図示略)が切欠38を介して固定電極15の外周に形成された雌ネジ部15a(図3参照)に螺合されることにより固定電極15に対して固定されている。
(可動消弧室)
図3及び図6に示すように、前記可動消弧室32は電源側ブッシング13の内端部が位置する第1収容部41と、同第1収容部41の外周中央に沿うように突設され固定電極15の先端部が位置する第2収容部42とを備えており、第1及び第2収容部41, 42の内部は互いに連通している。第1収容部41及び第2収容部42における負荷側ブッシング14側の隔壁41a,42aの外面はそれぞれ所定の曲率半径を有する円弧面とされている。
(第1収容部)
図2〜図4に示すように、第1収容部41は互いに対向する一対の側壁41b, 41bを備えている。両側壁41b, 41bの電源側ブッシング13側の側縁部には、それぞれ半円形状の軸着部43が突設されており、当該軸着部43には挿通孔44が形成されている。両挿通孔44,44には支持台31の両軸34,34が挿通されており、可動消弧室32は両軸34,34を中心として回動可能となっている。また、両側壁41b, 41bにおける両隔壁41a,41a寄りの中央近傍にはそれぞれ作動ピン45が突設されている。図2に示すように、両作動ピン45,45にはそれぞれ前記作動リンク22の他端が回動可能に連結されている。
(第2収容部)
図2〜図5に示すように、第2収容部42は互いに対向する一対の側壁51a,51aを備えており、両側壁51a,51aは前記隔壁42aにより連結されている。また、第2収容部42は両側壁51a,51a及び隔壁42aをそれらの上部側において連結する送風壁51bを備えている。第2収容部42の内部空間、即ち両側壁51a,51a、隔壁42a及び送風壁51bにより囲まれた空間は送風室51とされている。図7及び図8に示すように、この送風室51(第2収容部42)における送風壁51bと反対側に位置する開口部は開放動作時において可動電極18の回動方向と逆方向を向くように設けられている。
両側壁51a,51aの基端部側にはそれぞれ外側細隙壁53,53が外方(反電源側ブッシング13側)へ向かって突設されている。隔壁42aの基端部側には挟入部材としての中央細隙壁54が両外側細隙壁53の中間に位置するように突設されている。両外側細隙壁53,53及び中央細隙壁54から可動電極18を挿入可能な細隙消弧部55が構成されている。図2に示すように、両外側細隙壁53,53と中央細隙壁54との間の距離はそれぞれ両接触刃18a,18bの厚みよりも若干大きくされており、両接触刃18a,18bは両外側細隙壁53,53と中央細隙壁54との間をそれぞれ通過可能となっている。
従って、開閉操作時、前記操作ハンドルが操作されると、可動消弧室32はリンク機構(図示略)、回動軸19、レバー20、作動リンク22及び作動ピン45を介して図6に示す投入対応位置Cと図8に示す開放対応位置Dとの間を移動する。可動消弧室32が投入対応位置Cにあるときには可動電極18は投入位置Aにあり、同じく開放対応位置Dにあるときには可動電極18は開放位置Bにある。
尚、可動消弧室32が投入対応位置Cから開放対応位置Dへと移動するとき、支持台31の規制部材35が第1収容部41の内面に接触しない程度に、第1収容部41の隔壁41a内面の曲率半径は設定されている。また、第2収容部42の隔壁42a内面の曲率半径は前記ガイド部材39の円弧部(円弧面)の曲率半径とほぼ同じ程度とされており、可動消弧室32が投入対応位置Cから開放対応位置Dへ移動するとき、固定電極15の先端部が第2収容部42の内面に接触しない程度とされている。
(磁界発生手段)
図3に示すように、側壁51a,51aにおいて、隔壁42aと両外側細隙壁53,53との境界付近に対応する部位には、それぞれ円板状の永久磁石61a,61bが固定されている。また、図6に示すように、可動消弧室32が投入対応位置Cにあるとき、両永久磁石61a,61bは、両側壁51a,51aにおける次の位置に配置されている。即ち、固定電極15と可動電極18との接離箇所(即ち、アーク発生部)に対してアークの引き延ばし方向と反対方向へずれた位置(図6における可動電極18の先端部の直上位置)に磁束が作用するように、両永久磁石61a,61bは配置されている。換言すれば、可動電極18が投入状態にあるとき、両永久磁石61a,61b間に発生する磁束Mは前記アーク発生部に対してアークIの引き延ばされる方向と反対方向(アークの押出方向とは反対方向)へずれた位置にある。
両永久磁石61a,61bはそれぞれ一方面側がS極とされており、他方面側がN極とされている。両永久磁石61a,61bは側壁51a,51aを介してS極とN極とが互いに対向するように配置されている。複数本の磁力線Ma(磁束M)は一方の永久磁石61aのN極から他方の永久磁石61bのS極へ向う。本実施形態では、磁力線Maは可動電極18の回動方向に対して直交する。開路時に固定電極15と可動電極18との間に発生するアークIが磁力線Maを回避するのに十分な程度に、換言すれば前記アークIが両永久磁石61a,61b間を通過不能になる程度(即ち、打ち勝つ程度)に、磁力線Maの強さ(磁界の強さ)は設定されている。
また、図2に示すように、本体ケース12内において、S極とN極とが異相間方向に交互に並ぶように各永久磁石61a,61bはそれぞれ配置されている。具体的には、異相間方向において互いに隣り合う可動消弧室32の側壁に固定された永久磁石61a,61bの極性は「S−N、S−N、S−N」又は「N−S、N−S、N−S」の順番となっている。さらに、各相において、互いに対向配置された一対の永久磁石61a,61b間の距離をd1、異相間において互いに隣り合う永久磁石61a,61b間の距離をd2としたとき、d1<d2の関係が成立するように、3相各相の可動消弧室32はそれぞれ配置されている。このため、3相各相毎の可動消弧室32内に作用する磁束Mは良好に保持される。
前述したように、開閉操作時には前記操作ハンドルが操作されることにより、可動電極18は投入位置Aと開放位置Bとの間を移動すると共に、可動消弧室32は投入対応位置Cと開放対応位置Dとの間を移動する。即ち、可動消弧室32は可動電極18の開閉動作に追従して軸34を中心に回動する。このため、可動消弧室32に固定された両永久磁石61a,61bもそれぞれ可動電極18の開閉動作に追従して軸34を中心に回動する。
尚、本実施形態において、作動リンク22及び消弧装置30は磁束MがアークIに交差するように両永久磁石61a,61bを可動電極18の開路動作に連動させる追従機構を構成する。また、可動消弧室32は消弧室を構成し、隔壁41aは隔壁部材を構成する。さらに、永久磁石61a,61bは磁界発生手段を構成する。
(実施形態の作用)
次に、前述のように構成した消弧装置の作用を図6〜図8に従って説明する。 図6に示す投入状態において、前記操作ハンドルが開路操作されると、回動軸19を介してレバー20が左回動する。これに伴って、駆動リンク21は下方へ移動され、可動電極18が軸17を中心に左回動する。図7に示すように、可動電極18が固定電極15から離間すると、固定電極15と可動電極18(厳密には、可動電極18の外側先端)との間にはアークIが発生する。開路時において、可動電極18の回動に起因する遠心力が作用することにより固定電極15と可動電極18との間のアークIは外側へ引き延ばされる。
一方、前記レバー20の左回動に伴って、作動リンク22が下方に移動される。すると、図7に示すように、可動消弧室32は作動ピン45を介して下方へ移動され、軸34を中心に右回動する。即ち、可動消弧室32は可動電極18の左回動に連動して当該可動電極18に追従するようにアークIの引き伸ばし方向へ移動する。そして、可動電極18の左回動に伴って、両接触刃18a, 18b間には前記支持台31のガイド部材39が相対的に進入する。このため、両接触刃18a, 18bは両側壁51a,51aとガイド部材39の両側壁とによって挟まれ、当該固定電極15と可動電極18との間に発生したアークIは細隙消弧されながら引き延ばされる。
また、可動電極18の左回動に伴って、両永久磁石61a,61b(磁界)は、図6に示す可動電極18における先端の直上位置から固定電極15の先端近傍を通過し、さらに図7に示す固定電極15の直下位置に移動する。換言すると、両永久磁石61a,61b(磁界)の軌道は、アーク発生部の手前(可動電極18の先端部の直上位置)から当該アーク発生部の内側(負荷側ブッシング14側)を通過して、当該可動電極18の後を追うように遅れてアークIの引き伸ばし方向へ移動する。
両永久磁石61a,61bがなす可動消弧室32を横切る複数本の磁力線Ma(磁束M)の可動電極18の開放方向への移動により、固定電極15と可動電極18との間に発生したアークIの引き延ばしが促進される。即ち、両永久磁石61a,61b間の磁束MはアークIを分断する方向(換言すれば、アークIに対して交差する方向)へ内側から移動し、当該磁束MによりアークIは外方(可動電極18先端部において遠心力の作用する方向)へ押される。
両永久磁石61a,61b間に発生した磁束Mの磁気バリヤ効果(遮蔽効果)により、アークIは当該磁束Mを回避する(即ち、通過不能である)ので、当該アークIの最短経路への戻りが防止される。これは、アーク電流(アークI)が磁力線Maを回避するのに十分な程度に両永久磁石61a,61bの磁力線Maの強さ(磁界の強さ)が設定されているからである。即ち、両永久磁石61a,61b間に発生する磁界はアーク電流により発生する磁界よりも強いので、アークIは外方へ押される。この結果、アークIの引き延ばしが促進される。ちなみに、アークIの最短経路とは、固定電極15のアーク発生部と可動電極18の先端部におけるアーク発生部とを直線で結んだときの経路をいう。このアークIの引き延ばし作用は可動消弧室32の右回動及び可動電極18の開放動作に伴って増大する。
アークIとの接触により(即ち、アーク熱により)、可動消弧室32の内面から発生した消弧性ガス、炭化物及び金属蒸気等のガス状生成物(電離気体)は、両永久磁石61a,61b間の磁束Mと共に移動する。即ち、磁束Mが移動することにより前記ガス状生成物に作用する磁束Mが変化し、この磁束の変化に起因して電磁誘導が発生する。この結果、前記ガス状生成物は磁束Mの移動に引っ張られて移動する。従って、アークI及びガス状生成物はそれぞれ固定電極15の後方(図7及び図8に矢印Gで示す方向)へ押しやられる。前記ガス状生成物が可動電極18の開放方向とは逆方向(外方)へ放出されるので、可動消弧室32の内部における遮断不能の要因である雰囲気形成が回避される。
さらに、可動消弧室32の回動に伴い、当該可動消弧室32の送風室51における送風壁51bの移動により、当該送風室51内の空気(ガス状生成物)が可動電極18と固定電極15との間に発生したアークに吹き付けられると共に、アークIは送風室51内をその開口部側に向かって引き延ばされて拡散する。このため、細隙消弧部55での消弧作用が促進される。また、アークIは固定電極15の後方(図7及び図8に矢印Gで示す方向)へ押しやられる。これにより、前記ガス状生成物が可動電極18の開放方向とは逆方向(外方)へ放出されるので、アークIの引き延ばしが促進される。
図8に示すように、前記レバー20がさらに左回動されると、可動消弧室32は第2収容部42(隔壁42a)の内面が前記ガイド部材39の円弧部により案内されながら右回動する。これに伴って、隔壁42aはアークIを遮るように(遮蔽するように)固定電極15と可動電極18との間、即ちアーク発生部に進入する。また、両接触刃18a, 18b間には前記ガイド部材39に代わって前記中央細隙壁54が進入する。このため、両接触刃18a, 18bはそれぞれ外側細隙壁53と中央細隙壁54とによって挟着され、固定電極15と可動電極18との間に発生したアークIは引き続き細隙消弧されながらさらに引き延ばされ、消弧される。
そして、可動電極18の両接触刃18a, 18bがそれぞれ外側細隙壁53と中央細隙壁54との間を通過するとき、隔壁42aは固定電極15のアーク発生部と可動電極18のアーク発生部とを直線で結んだ線分を遮るように(遮蔽するように)移動する。このため、図8に実線で示すように、アーク経路は隔壁42aを迂回するように屈曲され、アーク経路、即ちアークIの引き伸ばし距離が直線(固定電極15と可動電極18の先端部との最短距離を結んだ直線)の場合に比べて大きくなる。アーク経路の屈曲度は可動消弧室32の右回動に伴って増大する。
両永久磁石61a,61bと可動電極18とは、所定の回動位置に至るまではそれぞれ同方向(アークIの引き伸ばし方向)へ移動し、それ以降は互いに反対方向へ移動する。このため、アークIはいっそう引き延ばされる。そして、可動電極18が図8に示す開放位置Bまで移動すると、アークIは完全に消弧され開路動作は終了する。このとき、アーク経路は図8に実線で示すように固定電極15と可動電極18との間の絶縁距離が十分に確保される程度に屈曲する。即ち、開路終了後、隔壁42aは同相間絶縁バリアとして機能し、固定電極15と可動電極18との間の絶縁耐力が向上する。このため、固定電極15と可動電極18との間の距離を短縮することが可能となる。
ちなみに、開路時において、可動消弧室32の移動軌跡と前記可動電極18の移動軌跡との共通部分がアークを細隙消弧する空間となる。また、アーク発生時に発生した前記ガス状生成物(炭化物等を含む分解ガスであり、電気的に導体)は、両永久磁石61a,61bの磁束Mにより固定電極15の後方(図7及び図8に矢印Gで示す方向)へ押しやられ、可動消弧室32内部から開口部を介して可動電極18とは反対方向へ速やかに放出される。即ち、前記ガス状生成物は可動電極18の開放方向とは逆方向へ放出される。このため、遮断不能の要因である可動消弧室32の内部における雰囲気形成が回避される。可動消弧室32の内部及び可動電極18の周辺に前記ガス状生成物が存在することもない。
また、ガス状生成物は可動消弧室32の開口部を介して外部に放出されるので、当該ガス状生成物の放出方向性が特定される。本実施形態では、前記ガス状生成物は本体ケース12の電源側ブッシング13側の内側壁方向に放出される。しかし、本体ケース12の電源側ブッシング13側の内側壁方向に放出された前記ガス状生成物は、対地間バリア(絶縁部材)24に遮られることにより本体ケース12の内側面に接触することはない。以上のことから、開閉器の遮断性能がいっそう向上する。
尚、閉路時には、前記可動消弧室32の移動軌跡と前記可動電極18の移動軌跡との共通部分がアークの引き伸ばし空間となる。閉路時には前述の開路時とは逆の動作が行われる。
(実施形態の効果)
従って、本実施形態によれば、以下の効果を得ることができる。
(1)開路時に固定電極15と可動電極18との間に発生するアークIに磁束Mが作用するように、当該磁束Mを前記可動電極18の開路動作に連動してアークIの引き延ばし方向へ移動させるようにした(厳密には、アークIの内側から外側へ向って磁束M移動させるようにした。)。このため、開路途中においても固定電極15と可動電極18との間に発生するアークIには磁束Mが作用する。従って、アークIは磁束Mとは反対方向へ押しやられ、開路途中においてアークIに磁束Mを作用させないようにした場合に比べて当該アークIの引き延ばし距離が増大する。ひいては、開閉器11の遮断性能を向上させることができる。
(2)磁束MをアークIの引き延ばし方向に対して交差する方向(ほぼ直交する方向)へ移動させるようにした。このため、アークIの引き延ばし距離を、より増大させることができる。
(3)閉路時にはアーク発生部の手前(アーク発生部におけるアークIの引き延ばし方向と反対方向へずれた位置)に磁束Mを作用させると共に、当該磁束Mを可動電極18の開路動作に追従するように且つアークIを外側へ押しやる方向(可動電極18の遠心力作用方向)に移動させるようにした。開路時、磁束MはアークIが発生した後に当該アークIを外側に押しやる方向へ移動することにより、アークIの引き延ばし距離をいっそう増大させることができる。
(4)可動電極18の開路動作に連動して両永久磁石61a,61b(磁束M)を、固定電極15と可動電極18との間に発生したアークIを分断する方向へ移動させるようにした。アークIは磁束Mを通過不能であるから、当該アークIは磁束Mを外側へ迂回するように引き延ばされる。換言すれば、アークIは磁束Mにより外方へ押しやられる。このように、磁束Mの磁気バリヤ効果(遮蔽効果)により、アークIは磁束Mを通過不能であるので、当該アークIの最短経路への戻りが防止することができる。従って、アークIの引き延ばしを確実に行うことができる。
(5)可動電極18の開路動作に連動して両永久磁石61a,61b(磁束M)が所定の軌道を通過するように構成した。両永久磁石61a,61b(磁界)の軌道は、アーク発生部の手前(可動電極18の先端部直上付近)からアーク発生部の内側(固定電極15の内側)を通過して、当該可動電極18の後を追うように遅れて固定電極15の直下まで移動するものである。アークIは磁束Mを通過不能であるから、当該アークIは磁束Mを外側へ迂回するように引き延ばされる。このため、アークIのアーク長が増大し、消弧性能をいっそう向上させることができる。
(6)開路時には、可動電極18の回動により発生する遠心力によるアークIの外方向への引き延ばし作用と、可動消弧室32の回動による前記ガス状生成物のアークIへの吹付け作用に加えて、次の作用が得られる。即ち、可動電極18の回動に連動して磁束Mを移動させることによりガス状生成物に作用する磁束Mを変化させる。これにより、電磁誘導が発生して前記ガス状生成物が磁束Mの移動に伴って引っ張られるようにした。このため、アークIは固定電極15の後方(図7及び図8に矢印Gで示す方向)へより押しやられ、アークIの引き延ばし距離をいっそう増大することができる。
また、可動消弧室32の回動に伴って送風室51内のガス状生成物は送風壁51bの内面により当該送風室51の開口部を介して固定電極15の後方へ押しやられる。このガス状生成物がアークIに吹き付けられることにより当該アークIは固定電極15の後方へさらに押しやられる。このため、アークIの引き延ばし距離をいっそう増大することができる。
(7)可動消弧室32を電源側ブッシング13の内端部に対して回動可能に設けると共に開路時において固定電極15と可動電極18との間に発生したアークに連動して追従するように且つアークIの引き伸ばし方向へ移動可能に構成した。そして、この可動消弧室32には前記連動追従移動に伴ってアーク発生部へ進入してアークIの引き伸ばし距離を大きくするための隔壁42aを設けるようにした。また、可動消弧室32の互いに対向する一対の側壁の外面にはそれぞれ永久磁石61a,61bを固定するようにした。開路時には、可動消弧室32の連動追従移動に伴って隔壁42aがアーク発生部へ進入することにより、アークIの引き伸ばし距離が大きくなる。加えて、可動電極18の開路動作に連動して、両永久磁石61a,61b間の磁束Mは、固定電極15と可動電極18との間に発生したアークIを分断するように(遮蔽するように)、換言すれば、アークIを外方へ押しやるように移動する。このため、アークIの引き延ばし距離がいっそう増大し、開閉器11の遮断性能をさらに向上させることができる。
(8)磁束Mは永久磁石61a,61bにより形成するようにした。このため、開閉器11に複雑な機構を設けることなく、簡単に磁束Mを発生させることができる。ひいては、開閉器11の製品コストも低減させることができる。
(9)一対の永久磁石61a,61bをN極とS極とが互いに対向するように可動消弧室32の互いに対向する両側壁外面に固定するようにした。磁束Mは一方の永久磁石61aのN極から他方の永久磁石61bのS極へ向う。このため、両永久磁石61a,61b間に発生する磁束が安定する。また、可動電極18の回動方向に対して直交する方向の磁束Mをより確実に発生させることができる。 (10)可動消弧室32は可動電極18とは反対方向へ回転する。このため、両永久磁石61a,61bと可動電極18は所定の回動位置まではそれぞれ同方向へ移動し、それ以降は互いに反対方向へ移動する。このため、アークIをいっそう引き延ばすことができる。
(11)開閉器11の本体ケース12内において、異相間方向に所定間隔おきに配置された3相各相毎の可動消弧室32の互いに対向する側壁外面にはそれぞれ永久磁石61a,61bを固定した。そして、異相間方向において、互いに隣り合う可動消弧室32の側壁に固定された永久磁石61a,61bの極性との関係が、「S−N、S−N、S−N」又は「N−S、N−S、N−S」となるように3相各相の可動消弧室32の側壁に永久磁石61a,61bをそれぞれ配置するようにした。このため、本体ケース12内には一本の大きな磁束が形成され、各可動消弧室32の互いに対向する側壁外面に固定された永久磁石61a,61b間に発生した磁束Mを良好に保持することができる。ちなみに、異相間方向において、互いに隣り合う可動消弧室32の側壁に固定された永久磁石61a,61bの極性の関係が、「S−N、N−S、S−N」又は「N−S、S−N、N−S」となるようにした場合(即ち、同じ極性が隣り合うようにした場合)、N−S間の磁束が隣の永久磁石61a,61bの磁束Mにより打ち消されるおそれがある。
(12)1つの相において、互いに対向配置された一対の永久磁石61a,61b間の距離をd1、異相間において互いに隣り合う永久磁石61a,61b間の距離をd2としたとき、d1<d2の関係が成立するようにした。このため、各相毎の可動消弧室32内に作用する磁束Mを良好に保つことができる。
(第2実施形態)
次に、本発明をガス開閉器に具体化した第2実施形態を図9〜図12に基づいて説明する。本実施形態は、消弧装置が省略されている点において前記第1実施形態と主に異なる。従って、前記第1実施形態と同様の部材構成については同一の符号を付し、その詳細な説明を省略する。
図9に示すように、電源側ブッシング13の内端には小径部13aが形成されており、当該小径部13aの先端には棒状の固定電極15が突設されている。小径部13aには支持台71が当該小径部13aの内端側から挿通されている。支持台71は絶縁性及び消弧性を有する合成樹脂材料により一体的に形成されている。
図12に示すように、支持台71の外周面には一対のピン72,72が可動電極18の移動方向に対して直交する方向において互いに反対側に位置するように突設されている。両ピン72,72にはそれぞれ連結リンク73,73の一端が回動可能に連結されており、両連結リンク73,73の他端はそれぞれピン74,74を介して前記作動リンク22,22の他端に回動可能に連結されている。 図9及び図12に示すように、両連結リンク73,73において、作動リンク22連結側端部の内面にはそれぞれ永久磁石61a,61bがN極とS極とが互いに対向するように固定されている。磁束Mは可動電極18の回動方向に対して直交する。図9に示すように、可動電極18が投入状態にあるとき、両永久磁石61a,61bは、固定電極15と可動電極18との接離箇所(即ち、アーク発生部)の直上位置に対応する位置(アーク発生部の手前から磁束を作用させる位置)に配置されている。即ち、可動電極18が投入状態にあるとき、両永久磁石61a,61b間に発生する磁束Mは前記アーク発生部に対してアークIの引き延ばされ方向と反対方向(アークの押出方向とは反対方向)へずれた位置にある。
一方、負荷側ブッシング14の内端には導電棒16を介して支持部材75が下方に延びるように固定されており、この支持部材75には可動電極18の基端部が軸76を介して回動可能に支持されている。従って、前記操作ハンドルによる開路操作に連動して、両永久磁石61a,61bは前記リンク機構、回動軸19、レバー20及び作動リンク22を介して連結リンク73はピン72を支点として下方(図10における時計方向)へ回動する。
尚、本実施形態において、作動リンク22、ピン72及び連結リンク73は、磁束MがアークIに交差するように両永久磁石61a,61bを可動電極18の開路動作に連動させる追従機構を構成する。
さて、図9に示す投入状態において、前記操作ハンドルが開路操作されると、回動軸19、レバー20及び駆動リンク21を介して可動電極18が軸76を支点として図9における反時計方向へ回動する。可動電極18が固定電極15から離間すると、当該固定電極15と可動電極18との間にはアークIが発生する。両永久磁石61a,61bは可動電極18の先端部(アーク発生部)の側方に配置されているので、両永久磁石61a,61bにアークが飛ぶことはない。
一方、図10に示すように、前記開路操作によるレバー20の回動に伴って作動リンク22が下方に移動すると、両連結リンク73,73は両ピン72,72を支点として時計方向へ回動する。これに伴って、両永久磁石61a,61bはそれぞれ図10における時計方向、即ち固定電極15と可動電極18との間に発生したアークIを分断する方向(交差する方向)へ移動する。換言すれば、両永久磁石61a,61bは可動電極18の反時計方向への回動に連動して、アークIの引き伸ばし方向へ移動する。両連結リンク73,73の時計方向への回動に伴って、両永久磁石61a,61b間の磁束Mは固定電極15と可動電極18との間の距離が最短となるように結んだ最短経路を遮るように(遮蔽するように)固定電極15と可動電極18との間に進入する。
図11に示すように、可動電極18が開放位置まで移動すると、アークIは完全に消弧され開路操作は終了となる。開路操作終了後、アーク経路(図11中、アークIで示す。)は固定電極15と可動電極18との間の絶縁距離が十分に確保される程度に伸長される。
従って、本実施形態によれば、以下の効果を得ることができる。
・可動電極18の先端側の両側方(可動電極18におけるアーク発生部の近傍)にそれぞれ永久磁石61a,61bを配置した。そして、両永久磁石61a,61b間に発生した磁束MがアークIに交差するように当該両永久磁石61a,61bを可動電極18の開路動作に連動させるようにした。このため、開路時、磁束MはアークIの内側(可動電極18の遠心力作用方向とは反対の方向)に位置し、当該磁束MによりアークIが分断される方向へ押される。従って、当該アークIの引き延ばし距離が増大して引き延ばしが促進される。ひいては、開閉器11がガス開閉器である場合の遮断性能を向上させることができる。
(第3実施形態)
以下、本発明を気中開閉器に搭載される細隙消弧装置に具体化した第3実施形態を図13〜図16に基づいて説明する。本実施形態は電源側ブッシングの内端部に細隙消弧室がさらに設けられている点で前記第2実施形態と主に異なる。従って、前記第2実施形態と同様の部材構成は同一の符号を付し、その重複した説明を省略する。
図13に示すように、電源側ブッシング13の内端部には導電棒81が突設されており、当該導電棒81には固定電極82が固定されている。固定電極82は一枚の金属板を折り曲げることにより形成されており、互いに対向する一対の固定接触子82a,82b(図16参照)を備えている。両固定接触子82a,82b間には後述する可動電極86を挟入可能に設けられている。
電源側ブッシング13の内端部には支持台83が装着されており、当該支持台83の外周面には一対の軸84,84が互いに反対側に位置するように突設されている。両軸84,84にはそれぞれ連結リンク73,73の一端が回動可能に連結されており、両連結リンク73,73の他端はそれぞれピン74,74を介して前記作動リンク22,22の他端に回動可能に連結されている。
一方、負荷側ブッシング14の内端部には導電棒85が突設されており、当該導電棒85には一枚の可動接触刃からなる可動電極86が軸87を支点として回動可能に支持されている。可動電極86は両固定接触子82a,82b間に挟入可能に(抜き差し可能に)対応している。
電源側ブッシング13の内端部には細隙消弧室91が設けられている。この細隙消弧室91は固定電極82を覆うように設けられた細隙消弧室本体92と、同細隙消弧室本体92の基端部開口を閉鎖するように設けられた底部カバー93とを備えている。細隙消弧室本体92及び底部カバー93は消弧性及び絶縁性を有する合成樹脂材料にて形成されている。
図16に示すように、細隙消弧室本体92は互いに対向する一対の細隙消弧部材92a, 92b及び両細隙消弧部材92a, 92bを電源側ブッシング13側の側縁において相互に連結する奥壁92cを備えている。両細隙消弧部材92a, 92bは底部カバー93に対して斜状に形成されていると共に、可動電極86が通過可能な程度に離間されている。また、両細隙消弧部材92a, 92bの先端は互いに離間する方向に拡開されたテーパ部となっている。
両連結リンク73,73において、作動リンク22連結側端部の内面には、それぞれ永久磁石61a,61bが固定されている。両永久磁石61a,61bはN極とS極とが細隙消弧部材92a, 92bを介して互いに対向するように配置されている。磁束Mは可動電極86の回動方向に対して直交する。図13に示すように、可動電極86が投入状態にあるとき、両永久磁石61a,61bは、固定電極82と可動電極86との接離箇所(即ち、アーク発生部)の直上に対応する位置(アーク発生部の手前から磁束を作用させる位置)に配置されている。
図16示すように、両永久磁石61a,61bの配置間隔が両細隙消弧部材92a, 92bの外面間の距離よりも大きくなっている。このため、前記操作ハンドルの開閉操作に伴って、両永久磁石61a,61bは細隙消弧室91に干渉することなく当該細隙消弧室91の外面(厳密には細隙消弧部材92a, 92bの外面)に沿うように移動する。尚、本実施形態において、作動リンク22、連結リンク73及び支持台83は磁束MがアークIに交差するように両永久磁石61a,61bを可動電極18の開路動作に連動させる追従機構を構成する。また、細隙消弧室91は消弧室を構成する。
さて、図13に示すように、閉路状態において、前記操作ハンドルが開路操作されると、可動電極86は開路方向へ回動して両細隙消弧部材92a, 92b間を図14における上方から下方へ移動する。可動電極86は両細隙消弧部材92a, 92bにより挟着され、固定電極82と可動電極86との間に発生したアークIは細隙消弧されながら引き延ばされる。このとき、アーク熱により発生した消弧性ガスによりアークIの消弧が促進される。
一方、開路操作時、両永久磁石61a,61bは可動電極86の反時計方向への回動に連動追従し、軸84を支点として時計方向へ回動する。即ち、両永久磁石61a,61b間の磁束MはアークIを分断する方向へ移動する。このとき、両永久磁石61a,61bは細隙消弧室91に干渉することなく両細隙消弧部材92a, 92bの外面に沿うように移動する。細隙消弧室91内において、前記アークIは、両永久磁石61a,61b間の磁束Mにより細隙消弧室91の奥壁92c側へ押しやられ、当該奥壁92cの内面に沿うようにして引き延ばされる。
このため、細隙消弧室91を設けるだけの場合と比較して、アーク経路(アークの引き伸ばし距離:図14及び図15中、アークIにより示す。)が長くなる。アークIの引き伸ばし距離は両永久磁石61a,61bの下方(時計方向)への移動及び可動電極86の反時計方向への回動に伴って増大する。そして、図15に示すように、可動電極86が開放位置まで移動すると、アークIは完全に消弧され開路動作は終了となる。
従って、本実施形態によれば、以下の効果を得ることができる。
・細隙消弧室91の両側外部にはそれぞれ永久磁石61a,61bを配置した。そして、可動電極86の開路動作に追従して細隙消弧室91の外側面に対して相対移動可能となるように両永久磁石61a,61bをそれぞれ設けた。このため、開路操作時、アークIは細隙消弧室91の奥方へ駆動され、奥壁92cの内面に沿うようにして引き延ばされる。従って、細隙消弧室91内におけるアーク経路(即ち、アークIの引き延ばし距離)が増大し、消弧性能を向上させることができる。また、消弧性能を向上させるために細隙消弧室91を大型化(可動電極86の開路方向への長大化)する必要もない。このように、消弧装置の大型化を抑制しつつ消弧性能、ひいては開閉器11の遮断性能を向上させることができる。さらに、両永久磁石61a,61bにより磁束Mを発生させるようにしたので、構成が複雑になることがない。
(別例)
尚、前記各実施形態は、次のように変更して実施してもよい。
・第1〜第5実施形態では、一対の永久磁石61a,61bをN極とS極とが互いに対向するように配置することによって、両永久磁石61a,61b間に磁束Mを発生させるようにしたが、当該両永久磁石61a,61bのうちいずれか一方のみ設けるようにしてもよい。このようにしても、両永久磁石61a,61bのうちいずれか一方の永久磁石から発生した磁束をアークIに作用させることができる。
(付記)
次に前記各実施形態及び別例から把握できる技術的思想を以下に追記する。
(イ)前記磁石はS極とN極とが対向するように各相毎に配置された一対の永久磁石であり、異相間方向においてS極とN極とが交互に並ぶように各永久磁石を配置するようにした請求項6〜請求項8のうちいずれか一項に記載の開閉器。このようにすれば、異相間方向において1本の大きな磁束が形成されることにより、安定した磁束を得ることができる。ちなみに、例えば3相開閉器において、N−S、S−N、N−Sのように同じ極性が隣り合うように各永久磁石を配置するようにした場合、N−S極間の磁束が隣の永久磁石の磁束で打ち消されるおそれがある。
(ロ)前記磁石はS極とN極とが対向するように各相毎に配置された一対の永久磁石であり、1つの相において互いに対向配置された一対の永久磁石間の距離をd1、異相間において互いに隣り合う永久磁石間の距離をd2としたとき、d1<d2の関係が成立するようにした請求項6,7,8及び前記(イ)項のうちいずれか一項に記載の開閉器。このようにすれば、各相毎に安定した磁束を得ることができる。
(ハ)前記磁束は永久磁石により形成するようにした請求項1又は請求項2に記載の開閉器の遮断方法。
この構成によれば、請求項1又は請求項2に記載の開閉器の遮断方法の作用に加えて、前記磁束は永久磁石により形成される。このため、磁束を発生するための構成が簡単になる。
(ニ)前記一方のブッシングの内端部に固定電極を覆うように設けられると共に固定電極から可動電極が離間されたときに当該固定電極と可動電極との間に発生したアークを消弧する消弧室を備え、前記磁界発生手段は、前記可動電極の開路動作に追従するように前記消弧室の外側面に対して相対移動可能に設けられた磁石である請求項3に記載の開閉器。
この構成によれば、請求項3に記載の開閉器の作用に加えて、固定電極から可動電極が離間されたときに当該固定電極と可動電極との間に発生したアークは消弧室内において消弧される。この際、磁石は可動電極の開路動作に追従するように消弧室の外側面に対して相相対的に移動する。このため、消弧室内におけるアークの引き延ばし距離が増大する。
(ホ)前記消弧室は前記可動電極と反対方向へ回転するように構成した請求項4に記載の開閉器。
この構成によれば、請求項4に記載の開閉器の作用に加えて、消弧室は可動電極とは反対方向へ回転する。磁石と可動電極は所定の回動位置まではそれぞれ同方向へ移動し、それ以降は互いに反対方向へ移動する。このため、アークがいっそう引き延ばされる。
第1実施形態における開閉器の正断面図。 第1実施形態における開閉器の要部平面図。 第1実施形態における可動消弧室の取付けを示す斜視図。 第1実施形態における可動消弧室の斜視図。 第1実施形態における可動消弧室の側面図。 第1実施形態における閉路時の消弧装置の正断面図。 第1実施形態における開路途中における消弧装置の正断面図。 第1実施形態における開路時の消弧装置の正断面図。 第2実施形態における閉路時の消弧装置の正断面図。 第2実施形態における開路途中における消弧装置の正断面図。 第2実施形態における開路時の消弧装置の正断面図。 図9における1−1線断面図。 第3実施形態における閉路時の消弧装置の正断面図。 第3実施形態における開路途中における消弧装置の正断面図。 第3実施形態における開路時の消弧装置の正断面図。 図13における2−2線矢視図。
符号の説明
11…開閉器、12…本体ケース、13…電源側ブッシング、
14…負荷側ブッシング、15,82…固定電極、18,86,113…可動電極、
22…追従機構を構成する作動リンク、30…追従機構を構成する消弧装置、
32,91…消弧室を構成する可動消弧室、41a…隔壁部材を構成する隔壁、61a,61b…磁界発生手段を構成する永久磁石、
72…追従機構を構成するピン、73…追従機構を構成する連結リンク、
83…追従機構を構成する支持台、101…追従機構を構成する支持リンク、
117a,117b…追従機構を構成する支持リンク、I…アーク、M…磁束。

Claims (4)

  1. 固定電極と、当該固定電極に対して接離可能に対応する可動電極とを備えた開閉器の遮断方法において、
    開路時において前記固定電極と可動電極との間に発生するアークに磁束を作用させると共に、当該磁束を前記可動電極の開路動作に連動してアークに対して交差する方向へ移動させるようにした開閉器の遮断方法。
  2. 閉路時には前記磁束をアーク発生部位におけるアークの引き延ばし方向とは反対方向へずれた位置に作用させると共に、当該磁束を可動電極の開路動作に追従するように且つアークを外側に押しやる方向に移動させるようにした請求項1に記載の開閉器の遮断方法。
  3. 固定電極と、当該固定電極に対して接離可能に対応する可動電極とを備えた開閉器において、
    前記可動電極におけるアーク発生部の近傍に配置される磁界発生手段と、
    前記磁界発生手段により発生した磁束が前記両電極間に発生するアークに交差するように当該磁界発生手段を当該可動電極の開路動作に連動して移動させる追従機構とを備えた開閉器。
  4. 本体ケースの両側壁に各相毎に相対するように貫通支持された一対のブッシングを備え、
    一方のブッシングの内端部には前記固定電極を、また他方のブッシングの内端部には前記可動電極を回動可能に設け、
    前記一方のブッシングの内端部に固定電極を覆うように且つ当該内端部に対して回動可能に設けられると共に固定電極から可動電極が離間されたときに当該両電極間に発生したアークを消弧する消弧室を備え、
    前記消弧室を前記可動電極の開路動作に連動して両電極間に発生するアークに追従して移動するように構成し、
    当該消弧室には前記アークに対する連動追従移動に伴って両電極間のアーク発生部へ進入してアークの引き伸ばし距離を大きくする隔壁部材を設けた請求項3に記載の開閉器。
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