JP2005285672A - 高圧放電ランプ - Google Patents

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Abstract

【課題】高圧放電ランプの寿命試験中における外管バルブ内でのアーク放電を防止し、高品質で高効率な高圧放電ランプを提供する。
【解決手段】内空間が真空に排気された外管バルブと、外管バルブ内に収容された発光管と、発光管に印加される電圧を減衰させる電圧減衰スイッチング素子とを具備し、電圧減衰スイッチング素子が、直列接続された熱感応スイッチング素子および始動電圧減衰素子からなる高圧放電ランプであって、熱感応スイッチング素子が所定温度以上である期間は、発光管と前記電圧減衰スイッチング素子とが並列接続された状態で熱感応スイッチング素子が閉じて、始動電圧減衰素子が作動し、熱感応スイッチング素子が所定温度未満である期間は、熱感応スイッチング素子が開いて始動電圧減衰素子が停止する高圧放電ランプ。
【選択図】図3

Description

本発明は、メタルハライドランプなどの高圧放電ランプに関する。
近年、発光管材料として石英に代って半透明の多結晶体アルミナセラミック(PCA)管を用いたメタルハライドランプの開発・展開が活発に進められている。石英の耐熱性は約1000℃であるが、PCA管は約1200℃という高い耐熱性があり、それだけ発光管の管壁負荷を高い範囲に設定できる。従って、PCA管を用いれば、ランプ効率のより高いメタルハライドランプを得ることができる。PCA管を用いたメタルハライドランプ(セラミックメタルハライドランプ)は、当初は店舗などの屋内照明用として高演色性のものが開発され、実用化されてきたが、最近では一般屋外照明用の高効率メタルハライドランプの開発が進められている。
従来の石英発光管を用いた屋外照明用の高効率メタルハライドランプにおいては、発光物質として、比視感度の高い波長領域に発光スペクトルを放射するセリウムのハロゲン化物(CeX3)、プラセオジウムのハロゲン化物(PrX3)などのランタノイド系希土類金属のハロゲン化物と、ナトリウムのハロゲン化物(NaX)とを組合せて用いることが提案されている(例えば特許文献1参照)。
一方、最近開発されたセラミックメタルハライドランプにおいては、発光物質として、セリウム沃化物(CeI3)とナトリウム沃化物(NaI)とを用いることが提案されている。このメタルハライドランプは高効率であり、例えば300Wタイプで115lm/Wが達成されている。また、屋外照明用としては十分な演色性を有し、一般演色評価数Ra70が達成されており、12000時間の定格寿命時間も得られている。
また、従来のメタルハライドランプでは、発光管は例えばドロップ形の外管バルブ内に収納されており、かつ外管バルブ内に窒素(N2)などの不活性ガスが封入されている。発光管は、外管バルブ内において、ステムリードなどにより保持されている。
上記と同様の発光物質(CeI3、NaI)を用いた、さらに高効率なセラミックメタルハライドランプも提案されている(例えば特許文献2参照)。このメタルハライドランプの管形状パラメータ(中央本管部の内径φiに対する電極間距離Leの比)は5より大きく、発光管の形状は比較的細長である。また、発光物質のモル組成比:NaI/CeI3は、3〜25であり、管壁負荷(we)は30W/cm2以下に設定されている。このような構成により、例えば150Wタイプで130lm/Wという高いランプ効率と、Ra53という演色性が得られている。
特開昭57−92747号公報 特表2000−501563号公報
従来のメタルハライドランプでは、上述のように、不活性ガスが外管バルブ内の空間に封入されている。しかし、不活性ガスが封入された外管バルブ内にPCA管を保持すると、発光管外壁からの熱伝導損失が増大するとともに、管壁温度(Tw)の低下によって発光物質の管内蒸気圧が減少する。その結果、ランプ効率をより高めるという目的の達成が難しくなる。そこで、本発明者らは、外管バルブ内に封入する不活性ガスの圧力を、従来のように30kPa程度とするのではなく、真空状態(例えば1Pa以下)とする検討を行った。
ところが、上記のセラミックメタルハライドランプにおいては、ある条件下において、ランプ寿命試験中に外管バルブ内でアーク放電が誘発されることが明らかになった。例えば、メタルハライドランプを電子安定器により点灯し、メタルハライドランプの始動時に約5kVの始動電圧を発光管に印加した場合、ステムリード間においてアーク放電が誘発される。アーク放電が起こると、稀に外管バルブの破損を生じる可能性がある。セラミックメタルハライドランプを実用化するには、このようなアーク放電を防止することが望まれる。
本発明は、内空間が真空に排気された外管バルブと、前記外管バルブ内に収容された発光管と、前記発光管に印加される電圧を減衰させる電圧減衰スイッチング素子とを具備し、前記電圧減衰スイッチング素子が、直列接続された熱感応スイッチング素子および始動電圧減衰素子からなる高圧放電ランプであって、前記熱感応スイッチング素子が所定温度以上である期間は、前記発光管と前記電圧減衰スイッチング素子とが並列接続された状態で前記熱感応スイッチング素子が閉じて、前記始動電圧減衰素子が作動し、前記熱感応スイッチング素子が所定温度未満である期間は、前記熱感応スイッチング素子が開いて前記始動電圧減衰素子が停止する高圧放電ランプに関する。
前記発光管は、前記発光管に印加される電圧を供給する第1リードおよび第2リードにより前記外管バルブ内に固定することができる。この場合、前記電圧減衰スイッチング素子は、前記第1リードおよび前記第2リードのうち、少なくとも一方に固定することができる。
本発明によれば、特に高温状態にある点灯中の高圧放電ランプが立ち消えた場合などににおいて、発光管に印加される始動電圧を、外管バルブ内でアーク放電が誘発されないレベルにまで減衰できる。従って、ランプ寿命試験中における外管バルブ内でのアーク放電の誘発を防止できる。
以下、本発明の実施形態について、図1〜5を参照しながら説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る150Wのメタルハライドランプが具備する発光管1であって、内部構造を示すために発光容器2を断面にした側面図である。
発光管1の発光容器2は、放電空間19を形成する中央本管部3と、その両端からそれぞれ延長された側管部4、5とを有する。中央本管部3と側管部4、5とは、一体焼結されている。発光容器2には、半透明の多結晶体アルミナセラミック(PCA)材料などが用いられる。
側管部4、5の中空には、それぞれ電極6、7が設置されている。電極6、7は、それぞれタングステン製の電極棒8、9と、それらの先端付近に固定されたタングステン製のコイル10、11からなる。電極棒8、9の前記先端は、それぞれ放電空間内に位置している。
電極棒8、9の他端は、それぞれ導電性サーメットからなる給電体12、13の一端に接続されている。給電体12、13は、側管部12、13の中空にそれぞれ延在しており、それらの他端には電極リード15、16の一端がそれぞれ接続されている。なお、給電体12、13を構成する導電性サーメットには、例えばAl23−Mo系の材料が用いられる。また、電極リード15、16には、ニオブ(Nb)などが用いられる。
電極リード15、16が導出される側管部4、5の開口端は、ガラスフリット14により封止されており、放電空間19内は密閉されている。ガラスフリットには、Dy23−Al23−SiO2系のガラスなどが用いられる。メタルハライドランプの点灯時の発光物質17によるガラスフリット14の侵蝕を抑制する観点からは、ガラスフリット14を給電体12、13と電極棒8、9との接続部近傍にまで充填することが好ましい。
発光管1の放電空間19には、発光物質17が封入されている。発光物質17には、金属のハロゲン化物やナトリウムなどが用いられる。従来のメタルハライドランプでは、セリウム沃化物(CeI3)とナトリウム沃化物(NaI)とが発光物質17として用いられているが、本発明においては、発光物質17としてプラセオジウム沃化物(PrI3)とナトリウム沃化物(NaI)とを用いることが好ましい。前者の沃化物を用いた場合、ランプ発光色を緑色領域に偏位させる傾向があるが、後者の沃化物を用いることにより、ランプ発光色を改善することができる。また、放電空間19には、緩衝物質として、水銀(Hg)18が封入されている。さらに、放電空間19には、緩衝・始動補助ガスとして、キセノン(Xe)やアルゴン(Ar)が封入されている。
図2は、図1の発光管1を具備する150Wのメタルハライドランプの一例であって、内部構造を示すために外管バルブ21を断面にした正面図である。
メタルハライドランプ20は、内空間が真空に排気された外管バルブ21と、外管バルブ21内に収容された発光管1と、発光管1に印加される電圧を減衰させる電圧減衰スイッチング(VRS)素子27とを具備する。
外管バルブ21の材質には、硬質ガラスなどが用いられる。外管バルブ21の端部は次第に窄まった形状を有し、その端部には口金22が装着されている。発光管1の側管部から導出され、下方に位置する電極リード16は、外管バルブ21の当該端部から突出するステムガラス23に封着されているステムリード24に、固定されるとともに電気的に接続されている。一方、上方に位置する電極リード15は、ステムガラス23に封着されているステムリード25から延長された支持リード32に、固定されるとともに電気的に接続されている。ステムガラス23には、バリウム(Ba)からなるゲッターリング26が、電極リード15と電極リード16からは絶縁された状態で取り付られている。
例えば、PCA材料からなる発光管(PCA管)を用いた150Wのメタルハライドランプ20の場合、発光管1は細長形状であることが好ましく、具体例としては、電極6、7間の距離Leが32mm、中央本管部3の内径φiが4mm、管形状パラメータLe/φiが8であるものを挙げることができる。
また、上記のような発光管1の場合、例えば、発光物質17(PrI3、NaI)の封入量は9mg、発光物質17の組成比:NaI/PrI3は10、水銀18の封入量は0.7mg、キセノン圧力は約25kPaとすることが好適である。
始動前の上記のような150Wのメタルハライドランプ20を点灯させる場合、周波数80〜400kHz、例えば100kHz程度で5kV程度の高周波始動電圧が、毎秒約50m秒の間隔(50m秒ON/950m秒OFFの間隔)で、メタルハライドランプ20が始動するまで印加される。このようなメタルハライドランプ20の寿命試験を行うと、メタルハライドランプ20が電圧減衰スイッチング素子を有さない場合には、外管バルブ21内でアーク放電が発生する。図2のような構造を有するメタルハライドランプ20であれば、特にステムガラス23内に封着されているステムリード24と25との間でアーク放電が誘発され、稀ではあるが外管バルブ21の破損などに派生する場合がある。
上記のようなアーク放電は、外管バルブ21内のガス圧が1Paを越える状態でメタルハライドランプ20が点灯中に立ち消えた際に、高温状態にある発光管1に始動電圧が再印加されることにより発生すると考えられる。
外管バルブ21内にガスがリークしていない場合には、立ち消えたメタルハライドランプ20の発光管1に始動電圧を印加しても、アーク放電は発生しない。また、外管バルブ21内にガスがリークしている場合でも、発光管1が低温状態であれば、始動電圧の印加によるアーク放電は発生しない。
外管バルブ21内のガス圧が上昇する原因としては、発光管1にクラックが生じて、発光管1内に封入されているXeガスが外管バルブ21内にリークしたり、ステムリード24、25の封止不良や外管バルブ21のマイクロクラックによって外部の空気がリークしたりすることが考えられる。例えば、点灯中のメタルハライドランプ20が立消えると、冷却時の熱応力により、発光管1にクラックが生じて、Xeガスのリークが生じ得る。また、外管バルブ21内のガス圧が高い状態においては、冷却時にはメタルハライドランプ20が始動することができても、点灯中には立消える可能性がある。
なお、外管バルブ21内に約30kPaの窒素が封入されている従来のメタルハライドランプの場合には、アーク放電が見られない。従って、外管バルブ21内のガス圧が30kPa以上であれば、立ち消え後の高温状態にある発光管1に始動電圧を印加しても、アーク放電は発生しないと考えられる。
外管バルブ21内のガス圧が1Pa〜30kPaの範囲内である場合に、外管バルブ21内でアーク放電が発生するのは、熱電子によるガスの電離能率が増大するためである。このような現象は、いわゆるパッシェンの法則に基づいている。外管バルブ21内のアーク放電の発生確率は、特に外管バルブ21内のガス圧が5kPa〜10kPaの場合に高くなる。
また、高温状態のメタルハライドランプ20に限って、外管バルブ21内でアーク放電が発生するのは、高温状態にあるステムリード24、25などの部品から、熱電子が放射され、初期の電子濃度が増加し、電離頻度が増大するためである。
立ち消え後の高温状態にあるメタルハライドランプ20の発光管1においては、放電空間19内の蒸気圧が高いことから、5kVレベルの始動電圧を印加しても、再始動させることは難しい。効率的に再始動を行うには、前記蒸気圧を低下させるために5〜10分の冷却時間を要する。従って、立ち消え後の高温状態にあるメタルハライドランプ20の消灯時には、高周波の始動電圧を、アーク放電が誘発されないレベルにまで減衰せしめることが望ましい。
本発明に係る電圧減衰スイッチング(VRS)素子27は、高温状態にある発光管1に印加される高周波の始動電圧を、アーク放電が誘発されないレベルにまで減衰させる役割を果たすものである。以下に、VRS素子27が付設されたメタルハライドランプ20の動作について詳しく説明する。
図3に、VRS素子27と発光管1とを含む回路図を示す。VRS素子27は、直列接続された熱感応スイッチング素子28および始動電圧減衰素子29からなる。VRS素子27は、熱感応スイッチング素子28が所定温度以上であるときには、発光管1と電圧減衰スイッチング素子29とが並列接続された状態で、熱感応スイッチング素子28が閉じるように設定される。その結果、始動電圧減衰素子29が作動し、発光管1に印加される高周波の始動電圧は、アーク放電が誘発されないレベルにまで減衰する。
一方、熱感応スイッチング素子28が所定温度未満であるときには、熱感応スイッチング素子28は、開いた状態となるように設定される。その結果、始動電圧減衰素子29は作動せず、高周波の始動電圧がそのまま発光管1に印加されることになる。
熱感応スイッチング素子28には、例えば、熱膨張率の異なる2種の金属板を貼り合わせたバイメタル素子や、所定温度以上でON状態となる感温リードスイッチを用いることができる。また、始動電圧減衰素子29には、例えば、セラミックコンデンサなどのコンデンサや、サージアブソーバ素子を用いることができる。
感温リードスイッチは、リードスイッチ、前記リードスイッチに磁束を供給するマグネット、および前記マグネットと接合された感温フェライトからなる。感温フェライトの飽和磁束密度は、キュリー温度付近で急激に減少する。感温フェライトは、マグネットからリードスイッチに供給される磁束量を温度によって制御する役割を果たし、前記磁束量の変化によってリードスイッチのON/OFFが制御される。
図4は、熱感応スイッチング素子28としてバイメタル素子28aを用い、始動電圧減衰素子29としてセラミックコンデンサ29aを用いた場合における、図2のメタルハライドランプ20の要部拡大図である。バイメタル素子28aとセラミックコンデンサ29aとは、接続リード27cによって直列接続されている。セラミックコンデンサ29aの一方の端子は、接続リード27aによってステムリード24に接続されており、接続リード27aとステムリード24との接続位置は固定端子Aを形成している。なお、図4では、固定端子Aは、ステムリード24のステムガラス23近傍に位置するが、固定端子Aの位置はこれに限定されない。
一方、バイメタル素子28aの一端は、可動端子Bとして機能する。例えば100℃未満の低温状態では、バイメタル素子28aの可動端子Bは、ステムリード25から離れた位置にあって、可動端子Bとステムリード25との間には間隔が形成されている。その状態のVRS素子27を回路図で図4A(a)に示す。そして、バイメタル素子28aの温度が100℃以上に上昇すると、可動端子Bがバイメタル素子28aの変形動作によりステムリード25と接触し、可動端子Bとステムリード25とが電気的に接続される。その状態のVRS素子27を回路図で図4A(b)に示す。もちろんバイメタル素子28aとセラミックコンデンサ29aとの接続位置を逆にして、固定端子Aをステムリード25上に設置し、可動端子Bをステムリード24上に設置することもできる。
セラミックコンデンサ29aの容量値は、可動端子Bがステムリード25と接続された場合に、高周波の始動電圧を、正規の値から外管バルブ21内でアーク放電が誘発されないレベルにまで減衰できるような値に設定する。セラミックコンデンサ29aの容量値は、例えば100〜5000pFであることが好ましい。容量値が100pF未満になると、始動電圧を十分に減衰できないことがある。また、容量値が5000pFを越えると、点灯中のメタルハライドランプ20にチラツキなどの不具合が生じることがある。
上記のような構成においては、点灯中の発光管1からの輻射熱により、セラミックコンデンサ29aが加熱されるのを防ぐ観点から、例えばステムリード24には遮蔽板30を設置することが好ましい。遮蔽板30の材質には、セラミックが適している。
メタルハライドランプ20の立ち消えから、VRS素子27によるメタルハライドランプ20の再始動に至るまでの動作は、以下のようなものである。まず、定常点灯中に立ち消えたメタルハライドランプ20のVRS素子27は、バイメタル温度(Tb)が例えば400℃程度の高温状態にあるため、可動端子Bはステムリード25に接続された状態である。従って、発光管1に並列接続されたVRS素子27のセラミックコンデンサ29aの機能により、高周波の始動電圧は減衰される。これにより、メタルハライドランプ20の寿命試験中に外管バルブ21内のガス圧がアーク放電を誘発するレベルにまで上昇している場合でも、外管バルブ21内におけるアーク放電の誘発を確実に防止することができる。
その後、所定の冷却時間が経過すると、バイメタル素子28aの温度(Tb)は、例えば100℃程度にまで低下し、可動端子Bは、ステムリード25から離れた位置に移動する。その結果、正規の高周波始動電圧が、そのまま発光管1に印加され、メタルハライドランプ20は速やかに再始動することができる。
次に、図5は、熱感応スイッチング素子28として感温リードスイッチ28bを用い、始動電圧減衰素子29としてサージアブソーバ素子29bを用いた場合における、図2のメタルハライドランプ20の要部拡大図である。感温リードスイッチ28bとサージアブソーバ素子29bとは、接続リード27c’によって直列接続されている。サージアブソーバ素子29bの一方の端子は、図4の場合と同様に、接続リード27aによってステムリード24に接続されており、接続リード27aとステムリード24との接続位置は固定端子Aを形成している。図5においても、固定端子Aは、ステムリード24のステムガラス23近傍に位置するが、固定端子Aの位置はこれに限定されない。
感温リードスイッチ28bの一方の端子は、接続リード27bによってステムリード25に接続されており、接続リード27bとステムリード25との接続位置は固定端子Cを形成している。すなわち、VRS素子27’は、外形的には、常に発光管1と並列接続された状態であるが、サージアブソーバ素子29bとステムリード25との電気的接続は、感温リードスイッチ28bの挙動に委ねられている。
例えば100℃未満の低温状態では、感温リードスイッチ28bはOFF状態であり、すなわちサージアブソーバ素子29bとステムリード25との電気的接続はOFF状態にある。その状態のVRS素子27’を回路図で図5A(a)に示す。そして、感温リードスイッチ28bの温度が100℃以上に上昇すると、感温リードスイッチ28bはON状態となって、サージアブソーバ素子29bとステムリード25との電気的接続がON状態になる。その状態のVRS素子27’を回路図で図5A(b)に示す。従って、メタルハライドランプ20の立ち消えからメタルハライドランプ20の再始動に至るまでの間において、感温リードスイッチ28bを用いたVRS素子27’は、バイメタル素子28aを用いたVRS素子27と同様に動作する。なお、もちろん感温リードスイッチ28bとサージアブソーバ素子29bとの接続位置を逆にすることもできる。
図4〜5のような構成において、始動電圧減衰素子29として、セラミックコンデンサ29aの代わりに所定値以上の高電圧時に短絡状態となるサージアブソーバ素子29bを用いることができ、逆にサージアブソーバ素子29bの代わりにセラミックコンデンサ29aを用いることができることは明らかである。サージアブソーバ素子29bには、大きく分けて、半導体を用いたタイプと放電を利用するタイプがある。本発明においては、どちらのタイプを使用した場合でも、同様の効果が得られる。
上記のようなVRS素子27、27’は、メタルハライドランプ20の始動時の電圧印加を高周波電圧により行う場合でも、間欠的なパルス電圧により行う場合でも、同様に有効に機能する。また、高周波電圧の波形は特に限定されず、矩形波、正弦波など、様々な波形を用いることができる。さらに、高周波電圧とパルス電圧とを重畳的に印加することもできる。
次に、本発明を実施例および比較例に基づいて、さらに具体的に説明する。
比較例1
(イ)150Wのメタルハライドランプの作製
150Wのメタルハライドランプ用の発光管1を作製した。発光管1の材質にはPCA材料を用いた。得られた発光管1(PCA管)は細長形状であり、電極6、7間の距離Leは32mm、中央本管部3の内径φiは4mm、管形状パラメータLe/は8とした。
発光管1の放電空間19には、発光物質17としてのプラセオジウム沃化物(PrI3)とナトリウム沃化物(NaI)(組成比:NaI/PrI3=10)を9mg、水銀18を0.7mg、キセノンを圧力約25kPaで封入した。
上記の発光管1を用いて、図2に示すような150Wのメタルハライドランプ20を組み立てた。ただし、電圧減衰スイッチング素子27は設置しなかった。
(ロ)実験1
電子安定器により周波数150Hzの矩形波電圧を発光管1に印加して、寿命試験を行った。メタルハライドランプ20の始動前などの消灯時には、周波数約100kHzで約5kVの高周波始動電圧を、約50m秒間隔(50m秒ON/950m秒OFFの間隔)で、メタルハライドランプ20が始動するまで印加した。
寿命試験中に外管バルブ21内でアーク放電が発生した。特に外管バルブ21のステムガラス23近傍のステムリード24、25間でアーク放電が誘発された。ただし、外管バルブ21内でアーク放電が誘発されたのは、外管バルブ21内のガス圧が1Paを越える状態の時に限られていた。また、メタルハライドランプ20が点灯中に立ち消えし、高温状態にある発光管1に始動電圧を再印加したときに限ってアーク放電が誘発された。
一方、外管バルブ21内が高真空に保持されている状態では、外管バルブ21内でアーク放電は発生しなかった。また、外管バルブ21内のガス圧が1Paを越える状態のときでも、発光管1の温度が100℃未満のときには、始動電圧を印加しても外管バルブ21内でアーク放電は発生しなかった。
(イ)150Wのメタルハライドランプの作製
図4に示したように、VRS素子27を設置したこと以外、比較例1と同様のメタルハライドランプ20を作製した。ここでは、バイメタル素子28aとセラミックコンデンサ29aとを直列接続したVRS素子27を用いた。セラミックコンデンサ29aの容量は約3500pFとした。また、バイメタル素子28aには、100℃以上でON状態となり、100℃未満でOFF状態となるものを用いた。このVRS素子27は、高周波の始動電圧を、正規の約5kVから外管バルブ21内でのアーク放電の誘発を防止できる約1kV以下のレベルに減衰することができるものである。
得られたメタルハライドランプ20の初期光束は19700lm、ランプ効率は131.3lm/W、一般演色評価数はRa70であり、屋外照明用として優れたランプ特性であった。
(ロ)実験2
比較例1と同様の寿命試験を行った。
メタルハライドランプ20が立ち消えた直後は、バイメタル素子28aの温度が約400℃の高温状態にあるため、VRS素子27の可動端子Bはステムリード25に接続された状態であった。従って、発光管1に並列接続されたVRS素子27のセラミックコンデンサ29aの機能により、高周波の始動電圧は正規値から約1kVに減衰された。これにより、外管バルブ21内のガス圧が上昇してメタルハライドランプ20が立ち消えた場合、高温の発光管1に始動電圧がそのまま印加されることがなくなり、外管バルブ21内でアーク放電が誘発されることは無かった。
メタルハライドランプ20が立ち消えてから約8分後には、バイメタル素子28aの温度は約100℃まで低下したため、VRS素子27の可動端子Bはステムリード25から離れた。そのため正規の高周波始動電圧がそのまま発光管1に印加され、メタルハライドランプ20は速やかに再始動した。その際には、発光管1の温度が十分に低くなっているため、外管バルブ21内でのアーク放電の誘発は観測されなかった。
以上のように、寿命試験中は、外管バルブ21内でのアーク放電の誘発は全く観測されず、定格寿命時間は12000時間という長寿命であった。
(イ)150Wのメタルハライドランプの作製
図5に示したように、VRS素子27’を設置したこと以外、比較例1と同様のメタルハライドランプ20を作製した。ただし、サージアブソーバ素子の代わりにセラミックコンデンサ29aを用いた。すなわち、ここでは、温感リードスイッチ28bとセラミックコンデンサ29aとを直列接続したVRS素子を用いた。セラミックコンデンサ29aの容量は約3500pFとした。また、感温リードスイッチ28bには、100℃以上でON状態となり、100℃未満でOFF状態となるものを用いた。このVRS素子27’も、高周波の始動電圧を、正規の約5kVから外管バルブ21内でのアーク放電の誘発を防止できる約1kV以下のレベルに減衰することができるものである。得られたメタルハライドランプ20の初期特性は、実施例1と同様であった。
(ロ)実験3
比較例1と同様の寿命試験を行った。
メタルハライドランプ20が立ち消えた直後は、感温リードスイッチ28bの温度が約400℃の高温状態であった。従って、感温リードスイッチ28bはON状態であり、セラミックコンデンサ29aが機能して、高周波の始動電圧は正規値から約1kVに減衰された。これにより、外管バルブ21内のガス圧が上昇してメタルハライドランプ20が立ち消えた場合に、高温の発光管1に始動電圧がそのまま印加されることがなくなり、外管バルブ21内でアーク放電が誘発されることは無かった。
メタルハライドランプ20が立ち消えてから約8分後には、感温リードスイッチ28bの温度は約100℃まで低下したため、感温リードスイッチ28bはOFF状態となった。そのため正規の高周波始動電圧がそのまま発光管1に印加され、メタルハライドランプ20は速やかに再始動した。その際には、発光管1の温度が十分に低くなっているため、外管バルブ21内でのアーク放電の誘発は観測されなかった。
以上のように、寿命試験中は、外管バルブ21内でのアーク放電の誘発は全く観測されず、定格寿命時間は実施例1とほぼ同じであった。
次に、実施例1および2のメタルハライドランプ20の外管バルブ21内に、それぞれ約7kPaの空気を意図的に導入した。そして、メタルハライドランプ20が立ち消えたら強制的に再始動させる強制寿命試験を行った。この試験中においても、外管バルブ21内でのアーク放電の誘発は観測されなかった。
以上のように、本発明によれば、内空間が真空に排気された外管バルブ内に保持された発光管に、始動時に高圧始動電圧が印加されるメタルハライドランプにおいて、ランプ寿命試験中に誘起される外管バルブ内でのアーク放電を防止することができ、よって高品質で高効率なメタルハライドランプを得ることができる。本発明は、特にPCA材料や石英からなる発光管を具備するメタルハライドランプにおいて好ましく適用することができるが、メタルハライドランプ以外の各種高圧放電ランプにも適用できる。
本発明の一実施形態に係る150Wのメタルハライドランプが具備する発光管であって、内部構造を示すために発光容器を断面にした側面図である。 図1の発光管を具備する150Wのメタルハライドランプの一例であって、内部構造を示すために外管バルブを断面にした正面図である。 本発明に係るVRS素子と発光管とを含む回路図である。 熱感応スイッチング素子としてバイメタル素子を用い、始動電圧減衰素子としてセラミックコンデンサを用いた場合の、図2のメタルハライドランプの要部拡大図である。 低温時(a)および高温時(b)における図4のVRS素子の状態をを示す回路図である。 熱感応スイッチング素子として感温リードスイッチを用い、始動電圧減衰素子としてサージアブソーバ素子を用いた場合の、図2のメタルハライドランプの要部拡大図である。 低温時(a)および高温時(b)における図5のVRS素子の状態をを示す回路図である。
符号の説明
1 発光管
2 発光容器
3 中央本管部
4、5 側管部
6、7 電極
8、9 電極棒
10、11 コイル
12、13 給電体
14 ガラスフリット
15、16 電極リード
17 発光物質
18 水銀
19 放電空間
20 メタルハライドランプ
21 外管バルブ
22 口金
23 ステムガラス
24、25 ステムリード
26 ゲッターリング
27、27’ 電圧減衰スイッチング素子
27a 接続リード
27b 接続リード
27c 接続リード
27c’ 接続リード
28 熱感応スイッチング素子
28a バイメタル素子
28b 感温リードスイッチ
29 始動電圧減衰素子
29a セラミックコンデンサ
29b サージアブソーバ素子
30 遮蔽板
32 支持リード

Claims (6)

  1. 内空間が真空に排気された外管バルブと、
    前記外管バルブ内に収容された発光管と、
    前記発光管に印加される電圧を減衰させる電圧減衰スイッチング素子とを具備し、
    前記電圧減衰スイッチング素子が、直列接続された熱感応スイッチング素子および始動電圧減衰素子からなる高圧放電ランプであって、
    前記熱感応スイッチング素子が所定温度以上である期間は、前記発光管と前記電圧減衰スイッチング素子とが並列接続された状態で前記熱感応スイッチング素子が閉じて、前記始動電圧減衰素子が作動し、
    前記熱感応スイッチング素子が所定温度未満である期間は、前記熱感応スイッチング素子が開いて前記始動電圧減衰素子が停止する高圧放電ランプ。
  2. 前記発光管が、前記発光管に印加される電圧を供給する第1リードおよび第2リードにより前記外管バルブ内に固定されており、前記電圧減衰スイッチング素子が、前記第1リードおよび前記第2リードのうち、少なくとも一方に固定されている請求項1記載の高圧放電ランプ。
  3. 前記熱感応スイッチング素子は、バイメタル素子からなる請求項1記載の高圧放電ランプ。
  4. 前記熱感応スイッチング素子は、前記所定温度以上でON状態となる感温リードスイッチからなる請求項1記載の高圧放電ランプ。
  5. 前記始動電圧減衰素子は、コンデンサからなる請求項1〜4のいずれかに記載の高圧放電ランプ。
  6. 前記始動電圧減衰素子は、サージアブソーバ素子からなる請求項1〜4のいずれかに記載の高圧放電ランプ。
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