JP2005285547A - 回路遮断器の消弧装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】電流遮断時に固定/可動接触子間に発弧したアークに対して、アークの絞り込みによる消弧機能が有効に作用するようにして遮断性能の向上を図った回路遮断器の消弧装置を提供する。
【解決手段】可動接触子2に、その可動接点2aを含む接触子先端部を包囲して固定接触子1の方に延在する絶縁物製の箱形アークバリア5を搭載装備し、電流遮断時に固定接点/可動接点間に生じたアークArcを前記アークバリアの内部で絞り込むようにし、そのアークバリアを耐熱性の高いセラミック,もしくは高温アークに触れてガスを発生する炭化水素系樹脂の絶縁物で作られた細隙構造のU字形箱体で構成し、その左右側壁の先端を固定接触子側に向けて可動接触子の先端部に装着する。
【選択図】 図1

Description

本発明は、配線用遮断器,漏電遮断器などを対象とする回路遮断器の電流遮断部に装備した消弧装置に関する。
まず、頭記した回路遮断器の電流遮断部の消弧装置として消弧グリッドを採用した従来構造を図3に示す(例えば、特許文献1参照)。図において、1は先端の接点部をコ字形に成形した固定接触子、2は回動式の可動接触子、3は固定接触子1の接点部に連なるアークランナ、4は可動接触子2の開極移動経路に沿って複数枚のグリッド板4aをその相互間に間隙を持たせて積層した消弧グリッドである。
上記の構成で、定常の通電時には可動接触子2の可動接点2aが固定接触子1の固定接点(図3には消弧グリッド4の裏に隠れて描かれてない)に接触している。ここで、主回路に短絡電流などの過電流が流れると、固定接触子1,可動接触子2に流れる電流の磁界により固定接触子1と可動接触子2の間に電磁反発力が生じ、この電磁反発力が接点の接圧バネ(図示せず)の荷重を上回ると可動接触子2が開極位置に向けて固定接触子1から離脱するとともに、同時に固定接点と可動接点の極間にアークArcが発弧し、可動接触子の開極移動とともに伸長する。また、アークは可動,固定接触子を流れる電流の磁場による電磁力を受けて固定接触子のアーク発弧点(アークの足)が固定接点からアークランナ3に移動し、さらにグリッド板4aにより分断されてアーク電圧が急速に高まるとともに冷却作用も加わり、これにより電流が限流遮断されることは周知の通りである。
また、回路遮断器の消弧装置として、前記の消弧グリッド4を用いる代わりに磁性体と絶縁体を組み合わせて消弧室を構成し、電流遮断時に固定/可動接触子間に発生したアークを電磁駆動力により前記消弧室の絶縁体に形成したスリットの中に押し込んでアークを圧縮し、さらにアーク熱を受けた絶縁体が熱分解ガスを発生してアークを冷却するアブレーション効果も加わってアーク電圧を高めるようにした絞り込み消弧方式も知られている(例えば、特許文献2参照)。
特開平7−226144号公報 特公平7−93094号公報
ところで、前記した方式による従来の消弧装置を採用した配線用遮断器,漏電遮断器は、構造,遮断性能面で次記のような課題がある。すなわち、
(1)配線用遮断器などの製品はフレーム別に外形サイズが標準化されていて、電流遮断部の容積アップには限界がある。そのために、図3で述べたグリッド消弧方式(特許文献1)では、固定/可動接触子間に発生したアークを十分に伸長させるためのスペース拡大、およびアークを直列に分断させる消弧グリッド板の枚数増加にも限界がある。
(2)また、特許文献2に開示されている絶縁体の消弧室では、固定/可動接触子の極間に発生したアークを絶縁体に形成したスリットに押し込んで絞り込むようにしているが、数十KVA級の回路遮断器では電流遮断時に固定/可動接触子間に発生するアーク柱の径は10mm以上に広がることから、このように広がったアークを絶縁体の狭いスリットに押し込むには強力な電磁駆動力が必要で実際には中々困難である。しかも、スリット内での絞り込みによるアークの限流効果が発揮されるのは、可動接触子の開極動作開始後に発生したアークが電磁力を受けて絶縁体のスリット内に押し込まれてからであり、アークが絶縁体のスリットに移動するまでの時間遅れが回路遮断器の遮断性能に影響を及ぼす。
さらに、極間に発生したアークについて、固定接触子側では電磁力によりアークの足がアークランナの上を移行して消弧室の内方に駆動されて消弧作用を受けるが、可動接触子は消弧室の外側を通って開極位置に移動するので、開極位置では可動接触子の接点から伸びたアークの足の部分には消弧室のアーク絞り込みによる消弧機能が作用しない。
本発明は上記の点に鑑みなされたものであり、その目的は前記課題を解決し、簡易な構造で電流遮断時に固定/可動接触子間に発弧したアークに対して、押し込み駆動を要さず、また可動接触子の開極位置でもアークの絞り込みによる消弧機能が有効に作用するようにして遮断性能の向上を図った回路遮断器の消弧装置を提供することにある。
上記目的を達成するために、本発明によれば、主回路の過電流通電時に可動接触子を固定接触子から開極させて電流遮断を行う回路遮断器において、
第1の発明では、前記可動接触子に、その可動接点を含む接触子先端部を包囲して固定接触子の方に延在する絶縁物製の箱形アークバリアを搭載し、電流遮断時に固定接点/可動接点間に生じたアークを前記アークバリアの内部で絞り込むようにする(請求項1)ものとし、その具体的な態様として、アークバリアを耐熱性の高いセラミック,もしくは高温アークに触れてガスを発生する炭化水素系樹脂の絶縁物で作られた細隙構造のU字形箱体で構成し、その左右側壁の先端を固定接触子側に向けて可動接触子の先端部に装着する(請求項2)。
また、本発明の第2の発明では、可動接触子の開極移動経路の終端位置に、開極動作により前記終端位置に移動して来た可動接触子の接点を含む接触子先端部を収容する絶縁物製の箱形アークバリアを設置し、電流遮断時に固定接点/可動接点間に生じたアークを可動接触子とともに前記アークバリアの内部に引き込んで絞り込むようにし(請求項3)、具体的には、アークバリアを第1の発明と同様にセラミック,もしくは炭化水素系樹脂の絶縁物で作られた細隙構造のU字形箱体で構成し、その左右側壁の先端を可動接触子の移動経路に向けてその開極位置に設置する(請求項4)。
さらに、前記アークバリアと別に、可動接触子の開極移動経路に沿って消弧グリッド板を配置し、この消弧グリッド板とアークバリアとの組み合わせにより回路遮断器の消弧性能をより一層高めるようにする(請求項5)。
上記した第1発明の構成によれば、可動接触子の開極動作開始と同時に固定/可動接触子間に発弧したアークは可動接触子に搭載してその接点部を包囲するアークバリアの内部で絞り込まれ、この状態は可動接触子が固定接触子から開離した直後から開極位置に移動する過程でも継続する。したがって、従来の消弧装置(特許文献2参照)のように接触子から離れて位置する消弧室の絶縁体スリットにアークを押し込み駆動することが必要ないので時間的な遅れなしにアークの絞り込み(圧縮,冷却)による電流の限流機能が作用し、これにより電流遮断の時間が短縮して回路遮断器の遮断性能が向上する。
また、第2の発明によれば、電流遮断時に可動接触子が固定接触子から開離して開極位置に移動すると、固定/可動接触子間に発弧して伸長したアークの足が可動接触子とともに開極位置に配置したアークバリアの中に引き込まれて絞り込まれ、ここでアークバリアのアブレーションによる消弧作用を受けることになる。したがって、可動接触子の開極位置に配した前記のアークバリアと可動接触子の移動経路に沿って配した消弧グリッドと併用することにより、回路遮断器の遮断性能が大幅に向上する。
以下、本発明の実施の形態を図1,図2に示す各実施例に基づいて説明する。
図1(a),(b)は本発明の請求項1,2,5に対応する実施例を示すものである。この実施例においては、図3に示した従来構造と比べて、可動接触子2にはその先端部を包囲するように絶縁物製のアークバリア5が搭載装備されている。このアークバリア5は高耐熱性のセラミック,あるいは高温アークに触れて多量の熱分解ガスを発生する熱可塑性,熱硬化性の炭化水素系樹脂を材料として図示のようにU字形に成形した箱体構造で、その左右側壁の先端を下(固定接触子側)に向けて可動接触子2の接点2aを含む先端部を包囲してその背面にまたがって結合されている。また、アークバリア5は、その左右幅Dを可動接触子2の板厚dと同程度にして左右側壁の間にアーク絞り込みの細隙を形成するとともに、左右側壁の上下方向の長さをLとしてその先端を固定接触子1に向けて延在させている。なお、このアークバリア5は可動接触子の先端部分(図1の左側)を覆うように可動接触子の先端方向に延在させるようにしてもよい。また、固定接触子1は先端部の幅を可動接触子2の板厚dと同程度に狭め、その上面に固定接点1aを設けている。
また、前記のアークバリア5と別に、可動接触子2の開極移動経路には図3と同様に複数枚の消弧グリッド4を配置し、そのグリッド板4aの板面に切欠いた凹溝の中を通って前記アークバリア5が可動接触子2と一緒に開極位置に移動するようにしている。
上記の構成で、可動接触子2の接点2aが固定接触子1の接点1aに接触している閉極状態ではアークバリア5が固定接点1aと可動接点2aを包囲している。ここで、過電流の通電による電磁反発力で可動接触子2が固定接触子1から開離すると、図1(b)で示すように固定接触子1と可動接触子2の接点間に発弧したアークArcは、開極動作の開始直後からアークバリア5の左右側壁間に絞り込まれ、同時に先記したアブレーション効果による冷却作用を受けるようになる。しかも、このアークバリア5によるアーク絞り込みの状態は可動接触子2が開極位置に向けて移動する途上でも継続し、また可動接触子2の開極移動に連れて固定接触子1の接点1aとの間に伸長したアークは電磁力によりアークランナ3に移行し、さらにアーク柱の部分が消弧グリッド板4aにより分断されて限流作用を受けるようになる。つまり、電流遮断時に発弧して極間に伸長したアークArcは時間的遅れなしにアークバリア5および消弧グリッド板4aの消弧作用を受け、これにより短時間でアークが消滅して電流が限流遮断される。
図2は、本発明の請求項3,4,5に対応する実施例を示すものである。この実施例においては、先記の実施例1で述べたと同様な絶縁物で作られたU字形の箱形アークバリア5を、グリッド板4aを積層した消弧グリッド4と組み合わせて可動接触子2の開極位置に設置し、電流遮断時に開極位置へ移動して来た可動接触子2の接点2aをアークバリア5の左右側壁間の細隙に引き込むようにしている。なお、図示の実施例ではグリッド板4aを組立位置に保持する消弧グリッドの左右側板4bを上方に延長してここにアークバリア5を固定している。
上記の構成において、回路遮断器の開極動作で可動接触子2が図示の開極位置に移動して来ると、可動接点を含む可動接触子2の先端部がアークバリア5の左右側壁の間に進入する。したがって、電流遮断時に固定接触子1と可動接触子2との間に発弧して伸長したアークArcのアーク柱部分は消弧グリッド板4aで直列アークに分断され、さらに可動接触子2の開極位置において消弧グリッド装置4の上方に伸びたアークの足の部分が可動接触子と一緒にアークバリア5の中に引き込まれ、ここでアークバリア5の左右側壁間の細隙で絞り込まれて強力な消弧作用を受けるようになる。その結果、図3に示した従来構造の消弧装置と比べて高い遮断性能を確保することができる。
本発明の実施例1に係わる電流遮断部の構成図で、(a)は組立構造の外観斜視図、(b)は(a)における消弧グリッド板を外した状態での斜視図 本発明の実施例2に係わる電流遮断部の構成斜視図 消弧グリッド板を装備した従来構造の電流遮断部の構成斜視図
符号の説明
1 固定接触子
1a 固定接点
2a 可動接点
2 可動接触子
3 アークランナ
4 消弧グリッド
5 アークバリア
Arc アーク

Claims (5)

  1. 主回路の過電流通電時に可動接触子を固定接触子から開極させて電流遮断を行う回路遮断器において、前記可動接触子に、その可動接点を含む接触子先端部を包囲して固定接触子の方に延在する絶縁物製の箱形アークバリアを搭載し、電流遮断時に固定接点/可動接点間に発弧したアークを前記アークバリアの内部で絞り込むようにしたことを特徴とする回路遮断器の消弧装置。
  2. 請求項1記載の消弧装置において、アークバリアがセラミック,もしくは炭化水素系樹脂の絶縁物で作られたU字形の箱体であり、その左右側壁の先端を固定接触子側に向けて可動接触子の先端部に装着したことを特徴とする回路遮断器の消弧装置。
  3. 主回路の過電流通電時に可動接触子を固定接触子から開極させて電流遮断を行う回路遮断器において、可動接触子の開極移動経路の終端位置に、開極動作により前記終端位置に移動して来た可動接触子の接点を含む接触子先端部を収容する絶縁物製の箱形アークバリアを設置し、電流遮断時に固定接点/可動接点間に生じたアークを可動接触子とともに前記アークバリアの内部に引き込んで絞り込むようにしたことを特徴とする回路遮断器の消弧装置。
  4. 請求項3記載の消弧装置において、アークバリアがセラミック,もしくは炭化水素系樹脂の絶縁物で作られたU字形箱体であり、その左右側壁の先端を可動接触子の移動経路に向けてその終端開極位置に設置したことを特徴とする回路遮断器の消弧装置。
  5. 請求項1または3に記載の消弧装置において、アークバリアとは別に、可動接触子の開極移動経路に沿って消弧グリッド板を配置したことを特徴とする回路遮断器の消弧装置。
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