JP2005283049A - ミニエンバイロメント装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】 ケミカルフィルタの負荷を低減し、内部発生したケミカル成分にも対応でき、冷却器を必要としないミニエンバイロメント装置を提供する。
【解決手段】 外部から空気を取り込む空気取込口60と、この空気取込口60から取り込んだ空気と中間室70から返送された循環空気との混合空気を循環させる循環送風機64と、混合空気中の塵埃を除去するHEPAフィルタ68と、中間室70を通過した空気の一部を循環空気として循環送風機64に返送させるための循環経路78と、中間室70を通過した空気の残部を外部領域に排出させる排気口80と、循環空気の循環ルートに配設されたケミカルフィルタ66と、循環空気の循環率を調整可能なダンパー62とを具備している。
【選択図】 図1


Description

本発明はミニエンバイロメント装置に係り、特に半導体製造機器などの精密品の製造機器に隣接して配置されるミニエンバイロメント装置に関する。
図11はこの種のミニエンバイロメント装置の一般的な設置例を示す正断面図である。クリーンルーム1内には各種の半導体製造機器2,2,…が多数設置され、例えば半導体ウエハに対して種々の処理、加工を行う。ウエハに空気中の浮遊する微細な塵埃が付着すると加工不良が発生し、製品の歩留まりが低下する。このため、クリーンルーム1内の環境を高清浄に維持し、ウエハを取り扱う過程でウエハに塵埃が付着しないようにする必要がある。この目的でクリーンルームの全体を高清浄に維持することが一般的に行われている。しかしながら、このような方法ではクリーンルームの建設費、運転費が莫大となり、ウエハの製造コストを引き上げる大きな要因になっていた。そこで、近年では図示のようなミニエンバイロメント方式が採用されるようになってきた。
この方式ではクリーンルーム1の天井に設置する清浄空気吹出し装置3の台数を大幅に削減し、室内の清浄度を緩和することによって、クリーンルーム1の建設費、運転費の削減を図っている。その代わりに各製造機器2に隣接してミニエンバイロメント装置4を配置する。ミニエンバイロメント装置4にはHEPA(高性能)フィルタ5が装備されており、クリーンルーム1から取り込んだ空気をHEPAフィルタ5によって清浄化し、中間室6を局所的な清浄環境に維持する。クリーンルーム1の通路を走行する自動搬送機7にはFOUP(開閉機構付き密閉容器)8が搭載され、このFOUP8内に被処理品であるウエハが収納されている。自動搬送機7が目的の製造機器2に対応したミニエンバイロメント装置4の前に停止し、ミニエンバイロメント装置4に装備されたオープナ(不図示)上にFOUP8が置かれる。
オープナはFOUP8の扉をクリーンルーム1の雰囲気から遮断した状態で開放する。中間室6内にはウエハの移載機(不図示)が装備されている。FOUP8内のウエハが移載機によって受け渡しされ、ウエハは中間室6内に一旦取り込まれた後、製造機器2に受け渡しされる。製造機器2によって処理、加工を受けたウエハは上記と逆の経路でFOUP8に戻された後、別の処理、加工を受けるために自動搬送機7によって次の製造機器2に搬送される。このように、製造機器2間のウエハの搬送が局所的な清浄環境である中間室6とFOUP8を介してのみ行われるので、搬送の過程でウエハに塵埃が付着することを防止できる。
ところで、清浄度が比較的低いクリーンルーム1の空気中には塵埃以外にウエハに悪影響を与えるケミカル成分(化学物質)が含まれている。したがって、ミニエンバイロメント装置4に取り込んだ空気中のケミカル成分をウエハに接触させないための措置が必要になる。HEPAフィルタ5は塵埃の除去に対しては有効であるが、ケミカル成分を除去することはできない。このため、最近のミニエンバイロメント装置4においては、HEPAフィルタ5とは別個にケミカル成分を除去するケミカルフィルタを装備したものが増えている。このような装置ではクリーンルーム1から取り込んだ空気をケミカルフィルタに通し、ケミカル成分を除去した後の空気をHEPAフィルタ5に通して中間室6に吹き出すようにしている。しかしながら、ケミカルフィルタは一般に高価であり、かつケミカル成分の除去容量が比較的少ない。このため、ケミカルフィルタの寿命が短くなり頻繁な交換を余儀なくされ、保守費が嵩むという問題点があった。
特許文献1には上記問題点を改善したミニエンバイロメント装置が開示されている。図12にその概要を示す。ミニエンバイロメント装置10はクリーンルーム11内に設置されており、クリーンルーム11内の空気12が吸引ファン13によって装置内に取り込まれる。すなわち、空気12を冷却器14で冷却した後、ケミカルフィルタ15によって空気中のケミカル成分を除去し、しかる後に装置内に送り込む。装置内には循環ファン16とHEPAフィルタ17が装備され、HEPAフィルタ17を通過した清浄空気18が中間室19に吹き出され、中間室19は清浄環境に維持される。中間室19を通過した空気は循環経路20を経由して循環ファン16の吸込側に循環される。循環経路20には温度計21が設置されており、温度計21で検出される循環空気の温度が所定値以下となるように冷却器14に通水する冷却水22の流量を調節する。
この特許文献1に記載されたミニエンバイロメント装置10によれば、中間室19に吹き出した清浄空気18を循環ファン16によって内部循環するので、クリーンルーム11内から取り込む空気12の量を大幅に少なくできる。このため、ケミカルフィルタ15に対する負荷がその分、低減し、高価なケミカルフィルタ15の寿命を延ばすことができる。その結果、ケミカルフィルタ15の交換頻度が少なくなり、保守費の低減を図ることができる。なお、清浄空気を内部循環すると循環ファン16の駆動によって循環空気の温度が次第に上昇するが、取り込み空気12を冷却器14で冷却することによって循環空気の温度を所定値以下に維持することができる。
特開2003−51431号公報
しかしながら、上記特許文献1に記載されたミニエンバイロメント装置10では、取り込み空気12のみをケミカルフィルタ15で処理するので、ミニエンバイロメント装置10内で発生したケミカル成分、例えばミニエンバイロメント装置10の構成部材から揮発した有機化合物などのケミカル成分は除去することができない。このため、循環空気中に内部発生に起因したケミカル成分が蓄積することになり、中間室19内を搬送されるウエハなどがケミカル成分によって汚染される恐れがあった。また、特許文献1に記載されたミニエンバイロメント装置10は内部温度の上昇を防ぐために冷却器14を必要としている。クリーンルーム内に多数設置される各製造機器に対応して設けられるミニエンバイロメント装置のそれぞれに冷却器を装備することは設備費の高騰を招き、また、装置の運転保守を複雑にするという問題点があった。このような問題点はウエハの処理、加工を行う製造機器に限らず、各種の精密品の製造機器に隣接して配置されるミニエンバイロメント装置において共通する問題点であった。
本発明の目的は、上記従来技術の問題点を改善し、ケミカルフィルタの負荷を低減できるとともに、内部発生に起因したケミカル成分に対しても対応でき、かつ、冷却器を必要としないミニエンバイロメント装置を提供することにある。
上記の目的を達成するために、本発明に係るミニエンバイロメント装置は、精密品の製造機器に隣接して配置され、外部領域との間で受け渡した精密品を清浄環境が維持された中間室を介して前記製造機器との間で受け渡すようにしたミニエンバイロメント装置であって、空気取込口から取り込んだ空気と前記中間室から返送された循環空気との混合空気を前記中間室に循環させる循環経路と、前記循環空気の循環ルートに配設されたケミカル成分除去手段と、前記循環空気の循環率を調整可能な循環率調整手段とを具備したことを特徴とする。
上記構成のミニエンバイロメント装置は通常クリーンルーム内に配設され、このクリーンルームが前記外部領域とされる。この場合、クリーンルームの天井エリア内の空気を前記空気取込口から取り込むようにしたことが望ましい。また、前記循環率調整手段を前記空気取込口及び/又は前記循環経路に配設されたダンパーとすることができる。前記循環率は0.75〜0.95に調整されていることが望ましい。
上記構成のミニエンバイロメント装置は、前記ケミカル成分除去手段がハニカム構造の成形体によって形成されたケミカルフィルタであることが望ましい。また、前記ケミカル成分除去手段をシート状の除去手段とし、このシート状除去手段を前記循環経路の壁面に貼り付けるようにしてもよい。また、前記循環経路が前記中間室を挟んだ対称位置に2系統で配設されたことが望ましい。
本発明のミニエンバイロメント装置によれば、中間室内に吹き出した清浄空気を内部循環するようにしたので、ケミカル成分が多い外部領域からの空気の取り込み量を削減することができる。その結果、ケミカル成分除去手段の負荷を低減でき、その寿命を長くすることができる。循環空気の循環ルートにケミカル成分除去手段が配設されているので、内部発生に起因したケミカル成分に対しても十分に対応できる。また、循環率調整手段によって循環空気の循環率を任意に調整できるので、循環率を適宜に選定することによって、内部温度を許容値以下に抑えつつケミカル成分の濃度を十分に低減させた運転を、格別な冷却器を装備することなく実現することができる。
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。図1は本発明に係るミニエンバイロメント装置の第1実施形態を示す正断面図、図2は同実施形態の側断面図、図3は図2のA−A矢視平断面図、図4は当該ミニエンバイロメント装置が設置されたクリーンルームの側断面図である。
図4に示したようにクリーンルーム30内には精密品の製造機器32が設置されており、製造機器32に隣接してミニエンバイロメント装置50が配置されている。クリーンルーム30の通路を走行する自動搬送機34にはFOUP(開閉機構付き密閉容器)36が搭載され、このFOUP36内に被処理品である精密品が収納されている。自動搬送機34がミニエンバイロメント装置50の前に停止し、ミニエンバイロメント装置50に装備されたオープナ52上にFOUP36が移載される。
クリーンルーム30には空気調和機38が接続し、空気調和機38ではクリーンルーム30での熱負荷に対応すべく、15℃程度に冷却した空気をダクト39からクリーンルーム30の天井エリア40に供給している。天井エリア40にはHEPAフィルタを内蔵した清浄空気吹出し装置41が分散配置され、清浄空気をクリーンルーム30に吹き出す。従来型の全面層流式クリーンルームに比べて清浄空気吹出し装置41の台数が大幅に削減されているため、クリーンルーム30の清浄度は緩和されており、その分、クリーンルームの建設費、運転費の削減が図られている。クリーンルーム30内を下降した空気は通気性の床面から床下エリア42に吸い込まれ、その大部分が循環経路43を介して天井エリア40に戻り、循環使用される。クリーンルーム30内の空気の一部は換気のためにダクト44などから排気され、この排気量に見合った量の冷却空気が前記空気調和機38から供給されることによって、クリーンルーム30での空気流量バランスが保たれる。
ミニエンバイロメント装置50はケーシング54によって囲われ、ケーシング54にはクリーンルーム30に通じる外部受渡口56,56が設けられ、外部受渡口56,56の設置位置のケーシング54外にはそれぞれオープナ52が取り付けられている。また、外部受渡口56,56の設置位置に対向したケーシング54面には製造機器32と通じる内部受渡口58,58が設けられている。ケーシング54の天井面には空気取込口60,60が設けられ、各空気取込口60にはダンパー62が取り付けられている。
ケーシング54内の各空気取込口60の直下位置にはそれぞれ循環送風機64が配設され、各循環送風機64の下方にケミカルフィルタ66とHEPAフィルタ68とが積層配置されている。なお、HEPAフィルタ68に換えてULPA(超高性能)フィルタを配置してもよい。HEPAフィルタ68の下方が中間室70とされ、中間室70には移載機72が配置されている。中間室70の左右の側面74はケーシング54の側面と間隔をあけて設けられ、その下端が開口している。中間室70の下部には多孔板76が水平に敷設されている。中間室70の左右の側面74とケーシング54の側面との間の空間は空気の循環経路78,78とされ、各循環経路78の下部には排気口80が設けられている。循環経路78,78の少なくとも一方には循環空気の温度を検出する温度計82が取り付けられている。
上記構成のミニエンバイロメント装置50において、循環送風機64を駆動すると、循環送風機64の吸込側に負圧が作用して、空気取込口60からクリーンルーム30内の空気が取り込まれるとともに、中間室70と循環経路78を巡る循環流が生起される。取り込み空気と循環空気が混合した混合空気は、循環送風機64の吐出側からケミカルフィルタ66とHEPAフィルタ68とを経て、中間室70の天井部から下降流として吹き出される。混合空気中のケミカル成分はケミカルフィルタ66によって除去され、混合空気中の微細塵埃はHEPAフィルタ68によって除去されるので、中間室70に吹き出される混合空気は清浄化されている。このため、中間室70内は清浄環境が安定に維持される。
中間室70の下部には多孔板76が水平に敷設されているので、中間室70内では偏流が生じにくく、清浄空気が層流状で安定に下降する。多孔板76を通過した清浄空気は循環経路78に至り、その大部分が循環空気として循環送風機64の吸込側に返送され、一部が排気口80からクリーンルーム30側に排出される。循環経路78が、中間室70を挟んで対称位置に2系統で配設されているため、循環流がバランスよく形成され、中間室70内での偏流がより一層生じにくくなる。
ケミカルフィルタ66としてはケミカル成分の除去性能が優れていることが最重要であるが、通気抵抗が小さいことも重要である。通気抵抗が大きいと循環送風機64の動力の増大や目詰まりの問題が発生する。このため、ケミカルフィルタ66としては図5に示したように活性炭などの多孔質材をハニカム構造に成形した成形体又はこの成形体に、ケミカル成分を吸着可能な吸着剤を担持させたものを用いる。このような構造のケミカルフィルタ66によれば、開口率が大きいので通気抵抗が小さく目詰まりの問題も発生しない。しかしながら、この種のケミカルフィルタ66においては空気が通過する際に、成形体に担持した吸着剤と接触したケミカル成分のみが除去され、吸着剤と接触しないケミカル成分は除去されずにそのままケミカルフィルタ66を素通りするという特性がある。このため、空気をケミカルフィルタ66に1回だけ通過させただけではケミカル成分の除去率が低い。空気を何回も繰り返し通過させることによって、ケミカル成分が吸着剤と接触する機会が増え、ケミカル成分の除去効果が発揮される。この意味で、循環送風機64によって内部空気を繰り返し循環させる本実施形態では、ハニカム構造のケミカルフィルタ66はきわめて有効である。なお、ハニカム構造以外に粒状活性炭や繊維状活性炭を用いて通気抵抗を小さくしたフィルタを用いても良い。
図6は循環率とケミカル成分濃度との関係を示したモデル図である。循環率とは循環送風機64によって中間室70に吹き出す混合空気量に対する循環空気量の比率である。循環率が0の場合とは循環空気量が文字通り零であり、空気取込口60から取り込んだ空気の全量を循環させずに排気口80から排出する運転の場合である。循環率が1.0の場合とは中間室70に吹き出す混合空気量の全量を循環させる運転の場合であり、この場合には空気取込口60から取り込む空気量と排気口80から排出する空気量がいずれも零である。図6から明らかなように循環率を大きくするに従って、取り込んだ空気中のケミカル成分が徐々に除去され、その濃度が低下する。このことから、中間室70におけるケミカル成分濃度を下げるには、なるべく循環率を大きくした運転をすることが望ましい。例えば、ケミカル成分の除去率を90%以上とするために循環率を0.75以上に設定する。
一方、循環率を大きくすると、中間室70を含む装置の内部温度が上昇するという問題がある。図7は循環率と内部温度との関係を示したモデル図である。循環率0の場合には、図中、実線で示したようにクリーンルーム30からの取り込み空気が循環送風機64の駆動エネルギによって昇温し、当該取り込み空気温度よりも少し高い内部温度になる。循環率を大きくするに従って、クリーンルーム30から取り込む比較的冷たい空気の量が少なくり、循環送風機64の駆動エネルギが内部熱に変換して、内部温度が次第に上昇する。したがって、中間室70の内部温度を例えば30℃以下に維持するように循環率を設定する。
以上の関係から、本実施形態のミニエンバイロメント装置50では内部温度の上昇を許容値以内の抑えつつ、循環率をなるべく大きくして中間室70におけるケミカル成分濃度を下げるように循環率を選定して運転する。すなわち、図7において内部温度の許容最大値Xから循環率Yが求まり、この循環率Yの運転を実行することによって、図6に示したようにケミカル成分濃度を小さな値Zにすることができる。又は、ケミカル成分濃度の目標値Zから循環率Yを求め、この循環率Yの運転したときの内部温度Xの妥当性を検証するようにしても良い。
循環率の調整は空気取込口60に設けたダンパー62の開度を調節することによって容易に実施できる。すなわち、ダンパー62を全開にすると空気抵抗の小さい空気取込口60からクリーンルーム30内の空気が多量に取り込まれ、空気抵抗が大きい循環経路78には循環空気が殆ど循環しない循環率が0に近い運転が可能になる。ダンパー62の開度を全開から徐々に絞るに従って、循環率が大きくなり、ダンパー62の開度を全閉にすると循環率が1.0の運転になる。なお、この間の循環送風機64の運転は、中間室70における清浄空気の下降流速を一定にした安定運転を行うために定風量運転をベースとして駆動される。
実運転では循環経路78に設けた温度計82の指示値を監視しながら、ダンパー62の開度を必要に応じて調節する。又は、温度計82の検出信号に基づいてダンパー62の開度を自動制御する制御手段を設けるようにしてもよい。なお、温度計82を循環経路78ではなく、中間室70に設置し、中間室70の温度検出結果に基づいて上記のダンパー開度の調節又は制御を行うようにしてもよい。
上記した循環率の調整によって、中間室70内は許容温度以下で、かつケミカル成分濃度が低い清浄環境に維持される。このような中間室70内の環境下で、オープナ52によってFOUP36の扉がクリーンルーム30の雰囲気から遮断した状態で開放される。そして、図3に示したようにFOUP36に収納された精密品が移載機72によって外部受渡口56から中間室70内に一旦取り込まれた後、内部受渡口58を介して製造機器32に受け渡しされる。製造機器32によって処理、加工を受けた精密品は矢印Bのルートで内部受渡口58を介して中間室70に戻される。次いで、精密品は移載機72によって外部受渡口56を介してFOUP36に戻される。そして、精密品はFOUP36に収納された状態で別の処理、加工を受けるために自動搬送機34によって搬送される。このように精密品の搬送が密閉容器であるFOUP36と局所的な清浄環境である中間室70を介してのみ行われるので、搬送の過程で精密品が塵埃やケミカル成分によって汚染されることを防止できる。
上述のとおり、この第1実施形態のミニエンバイロメント装置50によれば、中間室70内に吹き出した清浄空気を内部循環するようにしたので、ケミカル成分が多いクリーンルーム30内の空気の取り込み量を削減することができる。その結果、ケミカルフィルタ66の負荷を低減でき、その寿命を長くすることができる。また、ミニエンバイロメント装置50の構成部材からもケミカル成分が揮発し、循環空気中にケミカル成分の濃度が上昇することが考えられる。しかしながら、本実施形態では循環空気の循環ルートである循環送風機64の吐出側にケミカルフィルタ66が配設されているので、内部発生に起因したケミカル成分に対しても十分に対応できる。また、ダンパー62の開度を調節することによって、循環空気の循環率を任意に調整することができる。このため、循環率を適宜に選定することによって、内部温度を許容値以下に抑えつつケミカル成分の濃度を十分に低減させた運転を、格別な冷却器を装備することなく実現することができる。
図8は本発明の第2実施形態であるミニエンバイロメント装置が設置されたクリーンルームの側断面図である。図8において図4に示した符号と同一の符号を付した要素は、図4について説明したものと同一であり、その説明を省略する。この第2実施形態では天井エリア40に開口したダクト84がミニエンバイロメント装置50Aの空気取込口に接続している。天井エリア40にはクリーンルーム30を冷却するためにダクト39によって供給された15℃程度の冷却空気の吹き出しており、空気温度が低い。この天井エリア40内の冷たい空気がダクト84から直接にミニエンバイロメント装置50Aに取り込まれる。すると、図7において破線で示したように、クリーンルーム30から空気を取り込んだ場合に比べて内部温度を相対的に低くすることができる。その結果、内部温度の許容最大値Xを維持するための循環率Y1を大きくすることができる。例えば、15℃の空気を取り込むと循環率が0.95と大きい場合でも中間室70の内部温度を30℃以下に抑制できる。
また、循環率が大きくなるため、図6に示したようにケミカル成分濃度を小さな値Z1にすることができる。なお、上記実施形態に替えて、ダクト84の開口をダクト39に接続し、ダクト39内の冷却空気を直接、ミニエンバイロメント装置50Aの空気取込口から取り込むようにしても良い。
図9は本発明に係るミニエンバイロメント装置の第3実施形態を示す正断面図である。図9において図1に示した符号と同一の符号を付した要素は、図1について説明したものと同一であり、その説明を省略する。この第3実施形態の係るミニエンバイロメント装置50Bではケミカル成分除去手段としてシート状除去手段90を用いている。このシート状除去手段90は活性炭やゼオライトなどの分子吸着剤を含むシート材又はこのシート材にケミカル成分を吸着可能な吸着剤を担持させたものであり、循環経路78の壁面に貼り付けられる。このような構成にすれば、循環空気が循環経路78を通過する過程でシート状除去手段90と接触し、循環空気中のケミカル成分が徐々にシート状除去手段90に吸着される。このため、循環空気や中間室内のケミカル成分濃度を低く維持することができる。循環経路78の壁面積は大きいので必要に応じてシート状除去手段90を多面積にわたって貼り付けることができる。また、前記第1実施形態に係るケミカルフィルタ66のような空気流路を横断する構造ではないので循環空気に対する通気抵抗を大幅に低減できる。
また、この第3実施形態では空気取込口60には可動式ルーバ86が取付けられ、循環経路78の下部にはダンパー88が設けられている。この可動式ルーバ86とダンパー88との開度を調節することで循環空気の循環率を任意の値に調整することができる。
図10は本発明に係るミニエンバイロメント装置の第4実施形態を示す平断面図である。ミニエンバイロメント装置50Cは隣接した製造機器32A,32Bを繋ぐようにして配置されている。中間室70A内には移載機72Aが走行自在に配置され、製造機器32Aとの間では内部受渡口58Aを介して、製造機器32Bとの間では内部受渡口58Bを介して精密品を受け渡す。また、外部領域との間では外部受渡口56A,56Bを介して精密品を受け渡す。中間室70A内の清浄空気は循環経路78A,78Bを経て循環される。この実施形態は製造機器32Aで処理、加工した精密品を製造機器32Bでシリーズに処理、加工する場合に特に有効な構成であり、精密品は矢印(1)→(2)→(3)→(4)→(5)→(6)→(7)の順で中間室70A内を搬送される。製造機器32A,32B間での精密品の搬送を清浄環境が維持された中間室70A内で行うことができ、外部領域との精密品の受け渡しを省略できるので、効率のよい精密品の移送を実現できる。ただし、すべての精密品をこの順序で搬送させる必要はなく、例えば製造機器32Aでの処理、加工を独立させ、矢印(1)→(2)→(3)の順で搬送した精密品を直接、外部受渡口56Aから外部領域に渡してもよい。同様に、外部受渡口56から受けた精密品を矢印(5)→(6)→(7)の順で外部領域に渡してもよい。
発明に係るミニエンバイロメント装置の第1実施形態を示す正断面図である。 第1実施形態の側断面図である。 図2のA−A矢視平断面図である。 第1実施形態に係るミニエンバイロメント装置が設置されたクリーンルームの側断面図である。 ケミカルフィルタの基本構造を例示した斜視図である。 循環率とケミカル成分濃度との関係を示したモデル図である。 循環率と内部温度との関係を示したモデル図である。 本発明の第2実施形態であるミニエンバイロメント装置が設置されたクリーンルームの側断面図である。 本発明に係るミニエンバイロメント装置の第3実施形態を示す正断面図である。 本発明に係るミニエンバイロメント装置の第4実施形態を示す平断面図である。 ミニエンバイロメント装置の一般的な設置例を示す正断面図である。 特許文献1に開示されたミニエンバイロメント装置の概要を示す側断面図である。
符号の説明
30………クリーンルーム、32,32A,32B………製造機器、34………自動搬送機、36………FOUP(開閉機構付き密閉容器)、38………空気調和機、41………清浄空気吹出し装置、50,50A,50B,50C………ミニエンバイロメント装置、52………オープナ、54………ケーシング、56………外部受渡口、58………内部受渡口、60………空気取込口、62………ダンパー、64………循環送風機、66………ケミカルフィルタ、68………HEPAフィルタ、70………中間室、72………移載機、76………多孔板、78………循環経路、80………排気口、82………温度計、84………ダクト86………可動式ルーバ、88………ダンパー、90………シート状除去手段。

Claims (7)

  1. 精密品の製造機器に隣接して配置され、外部領域との間で受け渡した精密品を清浄環境が維持された中間室を介して前記製造機器との間で受け渡すようにしたミニエンバイロメント装置であって、空気取込口から取り込んだ空気と前記中間室から返送された循環空気との混合空気を前記中間室に循環させる循環経路と、前記循環空気の循環ルートに配設されたケミカル成分除去手段と、前記循環空気の循環率を調整可能な循環率調整手段とを具備したことを特徴とするミニエンバイロメント装置。
  2. 前記製造機器とミニエンバイロメント装置がクリーンルーム内に配設されており、このクリーンルームが前記外部領域とされ、前記クリーンルームの天井エリア内の空気を前記空気取込口から取り込むようにしたことを特徴とする請求項1に記載のミニエンバイロメント装置。
  3. 前記循環率調整手段が前記空気取込口及び/又は前記循環経路に配設されたダンパーであることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のミニエンバイロメント装置。
  4. 前記循環率が0.75〜0.95に調整されたことを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載のミニエンバイロメント装置。
  5. 前記ケミカル成分除去手段がハニカム構造の成形体によって形成されたケミカルフィルタであることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載のミニエンバイロメント装置。
  6. 前記ケミカル成分除去手段がシート状の除去手段であり、このシート状除去手段が前記循環経路の壁面に貼り付けられたことを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載のミニエンバイロメント装置。
  7. 前記循環経路が前記中間室を挟んだ対称位置に2系統で配設されたことを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれかに記載のミニエンバイロメント装置。
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