以下、本発明をテープ印字装置につき具体化した実施形態に基づき図面を参照しつつ詳細に説明する。先ず、本実施形態に係るテープ印字装置の概略構成について図1〜図3に基づき説明する。図1は本実施形態に係るテープ印字装置の概略外観図で、(A)は概略上方外観図、(B)は概略右側方外観図である。図2は本実施形態に係るテープ印字装置のサーマルヘッドの概略構成を示す図で、(A)は平面図、(B)は正面図である。図3はテープ印字装置1に装着されるテープカセット35のカバーを外した場合の平面図である。
図1に示すように、テープ印字装置1には、文書データからなるテキストを作成するための文字入力キー2、テキストの印字を指令する印字キー3、及び、改行指令や各種処理の実行、選択を指令するリターンキー4、文字等のキャラクタを複数行に渡って表示する液晶ディスプレイ7上でカーソルを前後、左右に移動させるカーソルキーC等を設けたキーボード6、及び、後述のテープカセット35(図3参照)を収納するカセット収納部8が収納カバー8Aで覆われて配設されている。また、このキーボード6の下側には、制御回路部が構成される制御基板12が配設され、この制御基板12の前端部下面には、環境温度を検出するためのサーミスタ13が取り付けられている。また、カセット収納部8の左側面部には、印字されたテープが排出されるラベル排出口16が形成され、該カセット収納部8の右側面部には、電源アダプタが取り付けられるアダプタ挿入口17が設けられている。尚、サーミスタ13は、サーマルヘッド9から離れた場所に設けられているため、該サーマルヘッド9の発熱駆動の影響を受けない。
また、このカセット収納部8には、後述のサーマルヘッド9(図2参照)と、このサーマルヘッド9に対向するプラテンローラ10と、このプラテンローラ10の下流側のテープ送り用ローラ11と、このテープ送り用ローラ11に対向するテープ駆動ローラ軸14とが配置されている他に、更に、テープカセット35内に収納されるインクリボンを送るリボン巻取軸15等が配置されている。かかるリボン巻取軸15は、後述のステッピングモータ等により構成されるテープ送りモータ30(図4参照)から適宜の駆動機構を介して回転駆動されて、後述するように印字後のインクリボン43(図3参照)を巻き取るインクリボン巻取りリール44(図3参照)に嵌挿され、印字スピードと同期して該インクリボン巻取りリール44を回転駆動する。また、テープ駆動ローラ軸14は、テープ送りモータ30から適宜の伝達機構を介して回転駆動され、後述するテープ駆動ローラ53(図3参照)を回転駆動する。
また、図2に示すように、サーマルヘッド9は、略縦長四角形の平板状に形成されたいわゆる厚膜ヘッドであり、このサーマルヘッド9の前面の左端縁部には、所定個数(本実施形態では、128個である。)の各発熱素子R1〜Rn(nは、所定個数である。)が、該左端縁部の辺に沿って一列に配列されて形成されている。そして、このサーマルヘッド9の前面右端縁部には、制御基板12上に設けられるコネクタ(図示略)に接続されるフレキシブルケーブルFの他端が半田付け等により電気的に接続されている。また、サーマルヘッド9は、メッキ鋼板やステンレス鋼板等により形成される略四角形の放熱板9Aの前面の左端縁部に、各発熱素子R1〜Rnの配列方向が、該放熱板9Aの左端縁部の辺に平行になるように接着剤などによって固着されている。また、フレキシブルケーブルFの上端右角部は、両面テープ等によって放熱板9Aの前面に固着されている。更に、該フレキシブルケーブルFの一端側は、放熱板9Aの下端縁部に穿設される水平略長四角形の貫通孔9Dに挿入されて、後側に引き出されている。また、放熱板9Aの下端縁部には、略直角前側方向に所定幅延出される延出部9Bが形成されて、4個の各貫通孔9C、9C、9C、9Cが穿設されている。そして、該放熱板9Aは、各発熱素子R1〜Rnの配列方向が、テープカセット35の開口部52(図3参照)における被印字テープ36(図3参照)の搬送方向に略直交するように、各貫通孔9C、9C、9C、9Cを介してビス止め等によってカセット収納部8の下側に取り付けられる。
次に、図3に示すように、テープカセット35は透明テープ等からなる被印字テープ36、この被印字テープ36に印字を施すためのインクリボン43、更には、印字がなされた被印字テープ36に裏貼りされる両面粘着テープ46を各々、テープスプール37、リール42、テープスプール47に巻回して、カセット本体35Bの底面に立設されるカセットボス38、リールボス50、カセットボス48に回転可能に嵌挿して収納したものであり、更に、使用済みのインクリボン43を巻き取るインクリボン巻取リール44を備えている。
そして、前記リール42に巻回され、このリール42から引き出された未使用インクリボン43は、被印字テープ36と重ね合わされ、被印字テープ36と共に開口部52に入り、サーマルヘッド9及びプラテンローラ10の間を通過する。その後、インクリボン43は、被印字テープ36から引き離され、リボン巻取軸15により回転駆動されるインクリボン巻取リール44に至り、このインクリボン巻取リール44により巻き取られる。
また、前記両面粘着テープ46は、片面に離形紙を重ね合わされた状態で、離形紙を外側にしてテープスプール47に巻回されて収納されている。そして、このテープスプール47から引き出された両面粘着テープ46は、テープ駆動ローラ53とテープ送り用ローラ11との間を通過し、離形紙が重ね合わされない側の粘着面が被印字テープ36に貼着される。また、両面粘着テープ46の上下両端部には、スペーサ46Aが挿入されている。
これにより、前記テープスプール37に巻回され、このテープスプール37から引き出された被印字テープ36は、テープカセット35のサーマルヘッド9が挿入される開口部52を通過する。その後、両面粘着テープ46が貼り合わされる被印字テープ36は、テープカセット35の片側下方部(図3中、左下側部)に回転自在に設けられ、テープ送りモータ30(図4参照)の駆動を受けて回転するテープ駆動ローラ53と、このテープ駆動ローラ53に対向配置されるテープ送り用ローラ11との間を通過して、テープカセット35の外部に送り出されて、テープ印字装置1のラベル排出口16より排出される。この場合、両面粘着テープ46は、被印字テープ36に対してテープ駆動ローラ53及びテープ送り用ローラ11によって圧着される。
次に、テープ印字装置1の電気的構成について、図4を参照して説明する。図4はテープ印字装置の制御構成を示すブロック図である。図4に示すように、テープ印字装置1の制御構成は、制御基板12上に形成される制御回路部20を核として構成されている。制御回路部20には、各機器を制御するCPU21と、このCPU21にデータバス22を介して接続された入出力インタフェース23、CGROM24、ROM25、26、RAM27とから構成されている。なお、CPU21の内部にはタイマ210が設けられている。
ここで、CGROM24には、多数のキャラクタの各々に関して、表示のためのドットパターンデータがコードデータに対応させて格納されている。
また、ROM(ドットパターンデータメモリ)25には、アルファベット文字や記号等のキャラクタを印字するための多数のキャラクタの各々に関して、印字用ドットパターンデータが、書体(ゴシック系書体、明朝体書体等)毎に分類され、各書体毎に6種類(16、24、32、48、64、96のドットサイズ)の印字文字サイズ分、コードデータに対応させて格納されている。また、グラフィック画像を印字するためのグラフィックパターンデータも記憶されている。
また、ROM26には、キーボード6から入力された文字や数字等のキャラクタのコードデータに対応させてLCDC28を制御する表示駆動制御プログラム、印字バッファ272のデータを読み出してサーマルヘッド9やテープ送りモータ30を駆動する印字駆動制御プログラム、各印字ドットの形成エネルギ量に対応するパルス数を決定するパルス数決定プログラム、及び後述のサーマルヘッド9の各発熱素子R1〜Rnの駆動制御プログラム、その他テープ印字装置1の制御上必要な各種のプログラムが格納されている。そして、CPU21は、かかるROM26に記憶されている各種プログラムに基づいて各種の演算を行うものである。
さらに、RAM27には、テキストメモリ271、印字バッファ272、ライン印字ドット数メモリ273、総印字ドット数メモリ274、パラメータメモリ275、電圧測定値メモリ276等が設けられており、テキストメモリ271には、キーボード6から入力された文書データが格納される。また、印字バッファ272には、複数の文字や記号等の印字用ドットパターンや各ドットの形成エネルギ量である印加パルス数等がドットパターンデータとして格納され、サーマルヘッド9はかかる印字バッファ272に記憶されているドットパターンデータに従ってドット印字を行う。また、ライン印字ドット数メモリ273には、サーマルヘッド9により印字される1ライン(本実施形態では、128ドット)分の印字ドット数のカウント値が格納される。また、総印字ドット数メモリ274には、サーマルヘッド9により印字される起動時からの総印字ドット数が記憶される。また、パラメータメモリ275には、後述のように各種のパラメータテーブルが記憶される。さらに、電圧測定値メモリ276には、検出された電圧値が前回と今回について格納される。
また、入出力インタフェース23には、キーボード6と、サーミスタ13と、LCD7に表示データを出力するためのビデオRAM281を有するディスプレイコントローラ(以下、LCDCという)28と、サーマルヘッド9を駆動するための駆動回路29と、テープ送りモータ30を駆動するための駆動回路31とが各々接続されている。よって、キーボード6の文字キーを介して文字等が入力された場合、そのテキスト(文書データ)がテキストメモリ271に順次記憶されていくとともに、ドットパターン発生制御プログラム及び表示駆動制御プログラムに基づいてキーボード6を介して入力された文字等に対応するドットパターンがLCD7上に表示される。また、サーマルヘッド9は駆動回路29を介して駆動され、印字バッファ272に記憶されたドットパターンデータの印字を行い、これと同期してテープ送りモータ30が駆動回路31を介してテープの送り制御を行う。ここで、サーマルヘッド9は、駆動回路29を介して各発熱素子R1〜Rnが1ライン分の印字ドットに対応して選択的に発熱駆動されることによって、文字等をテープ上に印字する。
また、制御回路部20及び駆動回路29、駆動回路31には、電源32から電力が供給される。電源32の電圧は、電圧測定部34により所定間隔で測定される。また、電源32は、その電圧を低電圧化した出力にする安定化電源33に接続されている。
さらに、電源32は、サーマルヘッド9及びテープ送りモータ30のそれぞれの駆動回路29,31に接続され、直接電源32の電力が供給される。一方、安定化電源33は、制御回路部20に接続され、LCD7を含めた制御回路部20に電源32からの電力を定電圧化して供給する。なお、電源としては、電池電源でもよいし、商用電源を入力してその交流を整流し且つ降圧して直流を出力するACアダプタからなる直流電源でもよい。
電圧測定部34は、制御回路部20のCPU21と接続され、電源32の電圧を測定し、その測定結果をCPU21に出力している。
ここで、パラメータメモリ275に記憶される各種のパラメータテーブルについて図5〜図8に基づいて説明する。図5は、ドット数パラメータテーブル61のデータ構成を示す模式図である。図6は、蓄熱係数テーブル62のデータ構成を示す模式図である。図7は、電圧変動係数テーブル63のデータ構成を示す模式図である。
図5に示すように、ドット数パラメータテーブル61は、サーミスタ13を介して測定される温度を示す環境温度611と、この環境温度611に対応する総量612と流出量613とから構成されている。この総量612は、環境温度等によって決定される連続印字可能な最大総印字ドット数であり、後述のように連続印字によって上昇するサーマルヘッド9の各発熱素子R1〜Rnの印字ドットの潰れ等を発生しないことを保証する蓄熱温度を表している。また、流出量613は、後述のように所定時間毎(本実施形態では、約1秒毎)に総印字ドット数から減算するドット数である。尚、この流出量613は、(1)サーマルヘッド9の材質、形状、大きさ、(2)放熱板9Aの材質、形状、大きさ、(3)サーマルヘッド9と放熱板9Aの間の接着剤の材質、厚み、(4)放熱板9Aとテープ印字装置1のメカフレームとの接合方法、(5)このメカフレームの材質、形状、大きさ、(6)環境温度などによって決定される印字ドット数であり、サーマルヘッド9の放熱板9A等を介した自然放熱量を表している。
また、ドット数パラメータテーブル61の環境温度611には、「30℃以上」、「20℃以上30℃未満」、「20℃未満」の3種類の環境温度範囲が予め登録されている。そして、この各環境温度611に対する総量612には、環境温度611の「30℃以上」に対して「250000ドット」、環境温度611の「20℃以上30℃未満」に対して「300000ドット」、環境温度611の「20℃未満」に対して「460000ドット」が総量612として予め登録されている。また、各環境温度611に対する流出量613には、環境温度611の「30℃以上」に対して「1800ドット」、環境温度611の「20℃以上30℃未満」に対して「2000ドット」、環境温度611の「20℃未満」に対して「2600ドット」が流出量613として予め登録されている。尚、各環境温度611に対応する総量612と流出量613は、放熱板9Aの形状変更などによるサーマルヘッド9の自然放熱量の変化などに対応して、任意の数値に変更できるパラメータである。
次に、図6に示すように、蓄熱係数テーブル62は、図5のドット数パラメータテーブル61により求められた総量を基準値として、現在の総ドット数のうち基準値を超える部分の超過ドット数621と、サーミスタ13を介して測定される環境温度622に対応して定められる蓄熱係数dの値が予め記憶されたものである。ここで、超過ドット数621を求めるための基準値は、ドット数パラメータテーブル61により定められる「総量」の値が用いられる。環境温度622は、「40〜32℃」「31〜28℃」、「27〜22℃」、「21〜17℃」、「16〜10℃」の5つのレベルに分けられ、それぞれのレベルと超過ドット数621に対応して蓄熱係数dが定められている。この蓄熱係数dは、後述の蓄熱制御処理において、発熱素子に対する印加エネルギーの再評価を行なう際に使用され、サーマルヘッド9の蓄積温度に対応して印加エネルギーを補正するために減算する値を定めるために用いられる。そして、同じ超過ドット数621であれば、環境温度622が高くなるほど蓄熱係数dの値は大きくなり、同じ環境温度622であれば、超過ドット数が多くなるほど蓄熱係数dの値は大きくなる。従って、環境温度622が高く超過ドット数621が多い、蓄熱が進んだ状態では、蓄熱係数dの値が大きくなるので、通電時間が短くなり、蓄熱印字潰れが起きないように調整される。なお、蓄熱係数dは、温度の上昇過程(非定常時)と飽和(定常時)の両方を補正対象とする。
次に、図7に示すように、電圧変動係数テーブル63は、各発熱素子に対する印加エネルギーを設定する際に電圧に応じて印加するパルス幅を変化させるために用いられる定数である電圧変動係数を定めたものであり、電圧センター値631、これに対応する電圧の範囲(16進数データ値)632に対応する電圧変動係数C(V)633からなっている。図7では、電圧変動係数C(V)の値も16進数データで記載されている。電圧値が高いほど、発熱に要する通電時間は短くてよいので、電圧値が高くなるほど電圧変動係数C(V)の値は高くなる。後述するように、固定値からC(V)の値を減算して0になったときに発熱体をOFFするように制御が行なわれるため、電圧が高くなるほどC(V)の値が大きくなれば、駆動パルスの印加時間を短くするように印加エネルギーの調整が行なわれることになる。
次に、上記のように構成されるテープ印字装置1のテープ印字動作について図8及び図9のフローチャートを参照して説明する。図8は、テープ印字装置1の蓄熱制御処理の流れを示すフローチャートである。図9は、図8のフローチャートのS25で行なうパルス印加処理のサブルーチンのフローチャートである。
まず、電源が投入されてテープ印字装置1の処理が開始されると、サーミスタ13から環境温度を取得する(S1)。次に、利用者からの指示に従い、印刷を開始する(S3)。なお、印刷の開始とともにタイマー210のカウントが開始される(S5)。
次に、S1で取得した環境温度に基づいて温度係数t、総量初期値(基準ドット数)、流出量を決定する(S9)。温度係数tは、環境温度のAD変換値に対して、例えば、t=a/温度AD値+b(a,bは固定値)のような式により算出されるものであり、後述する発熱体への印加エネルギー決定の際に使用される。総量値および流出量は、パラメータメモリ275に記憶されているドット数パラメータテーブル61に従って、環境温度に対応する値が代入される。この総量および流出量は、RAM27の総印字ドット数メモリ274に格納される。
次に、印字を実行する1ライン分のデータを入力し、対応する1ライン分のドット数をRAM27の1ライン印字ドット数メモリ273に格納する(S11)。そして、S11で決定した総量に、1ライン印字ドット数メモリ273に格納されている1ライン分のドット数を加算して総ドット数Dを算出する(S13)。次に、S13で算出された総ドット数Dから、S9で決定した流出量に印字開始からの経過時間を乗じたものを減算してドット数を調整する(S15)。S13およびS15の処理により、ドット数Dは、S9で決定した総量値に今から印字する1ライン分のドット数を加算し、S9で決定した流出量に印字開始からの経過時間を乗じたものが減算されて算出されたことになる(総ドット数←総量+印字ドット数−流出量×経過時間)。このように、印字ドット数を逐次加算し、放熱量をドット数に換算して印字ドット数から減算するという調整を行うことで、サーマルヘッド9の温度の蓄積状況をドット数で表現することができる。
次に、S15で調整されたドット数Dと基準ドット数(S9で設定した総量初期値)の差分である超過ドット数およびS1で取得した環境温度に基づいて、蓄熱係数dを設定する(S17)。蓄熱係数dは、パラメータメモリ275に記憶されている蓄熱係数テーブル62に従って決定される。1回目の処理では、現在のドット数Dと基準ドット数の差は50000以下であるから、環境温度が何度であっても、蓄熱係数dは1となる。
次に、サーマルヘッド9にかかる電圧を電圧測定部34からAD値として取得し、RAM22の電圧測定値メモリ276に格納する(S19)。そして、取得した電圧AD値に基づいて電圧変動係数C(V)を設定する(S23)。電圧変動係数C(V)は、パラメータメモリ275に記憶されている電圧変動係数テーブル63に従って決定され、後述のパルス印加処理の際に用いられる。
次に、発熱素子に印加するパルスを設定するパルス印加処理を実行する(S25)。パルス印加処理の詳細は、図9を参照して後述する。パルス印加処理が終了したら、印字を継続するか否かを判断し(S27)、継続する場合は(S27:YES)、S11に戻って、次の1ラインのデータの入力を行なう。継続しない場合は(S27:NO)、処理を終了する。
次に、図9を参照して、図8のS25で実行するパルス印加処理の詳細について説明する。まず、各発熱素子に対して印加するパルス幅(通電時間)を、印加制御係数Cに所定値を代入することにより設定する(S101)。ここで印加制御係数Cに代入される値は、サーマルヘッド9とS7で取得したテープの種類に対応してあらかじめ定められた固定値である。この固定値から、所定時間ごとに、後述の計算式により、環境温度、電圧、蓄熱の状況に応じた値を減算し、Cの値が0になるまで発熱体にエネルギーを印加する(通電する)。ここでは、例えば55400がCに代入される。
次に、印加制御係数Cが0未満となったか否かを判断する(S103)。Cが0以上であれば(S103:NO)、駆動パルスを印加して発熱体をONする(S105)。そして、250マイクロ秒経過したかを判断する(S107)。250マイクロ秒経過するまでは(S107:NO)、駆動パルスの印加を継続する(S105)。
250マイクロ秒経過したら(S107:YES)、サーマルヘッド9にかかる電圧を電圧測定部34からAD値として取得する(S109)。そして、電圧測定値メモリ276に格納されている前回の電圧測定値(AD値)と比較して、等しいか否かを判断する(S111)。前回の電圧値と等しい場合には(S111:YES)、前回の電圧変動係数C(V)をそのまま使用するので、なにもせずにS117に進む。
前回の電圧値と等しくなければ(S111:NO)、前回の電圧値より大きいか否かを判断する(S113:NO)。前回の電圧値より大きければ(S113:YES)、現在の電圧変動係数C(V)の電圧値(AD値)を1インクリメントしてC(V+1)をC(V)に代入する(S115)。前回の電圧値よりも小さければ(S113:NO)、現在の電圧変動係数C(V)の電圧値(AD値)を1デクリメントしてC(V−1)をC(V)に代入する(S119)。このようにして得られた電圧変動係数C(V)を印加制御係数Cから差し引くことにより、印加エネルギーを再評価する(S117)。そして、S103に戻る。
以上の処理を繰り返して、印加パルスの幅を250マイクロ秒毎に決定し、Cが0未満となったら(S103:YES)、発熱体を所定時間OFFにして(S121)、ヘッドを冷却する。そして、図8の蓄熱制御のメインルーチンに戻る。
以上説明したように、本実施形態のテープ印字装置1によれば、発熱体への通電開始後に電圧値を読み取り、印加エネルギーの評価を行なうパラメータである電圧変動係数C(V)をその電圧値に基づいて決定する。このため、印字開始前の状態での比較的高めになりやすい無負荷電圧をパラメータの決定に採用しないので、高い電圧値により通電時間が短くなるために、印加エネルギーが不足してかすれが発生することが防止できる。さらに、電圧測定部34から取得した電圧AD値を直接利用するのではなく、前回の電圧値と今回の電圧値を比較して等しい場合には前回と同一の電圧AD値を用い、前回の電圧値よりも今回の電圧値が高い場合には1インクリメントした電圧AD値を用い、前回の電圧値よりも今回の電圧値が低い場合には1デクリメントした電圧AD値を用いて印加パルス幅を決定するので、電圧値の読み取りノイズを避けるために複数回読み取って平均値を取らなくても、リニアにC(V)値を設定して印加パルス幅の制御を行なうことができる。
なお、上記実施の形態において、図8のフローチャートのS13で印字ドット数を加算するCPU21が本発明の総ドット数計数手段として機能し、S15で流出量を減算するCPU21が本発明の調整手段として機能し、S25及び図9のフローチャートでパルス印加処理を実行するCPU21が本発明のパルス幅設定手段として機能する。また、図9のフローチャートのS109で電圧測定値を取得するCPU21が本発明の電圧測定手段として機能し、S111及びS113で前回の電圧値との比較判断処理を実行するCPU21が本発明の電圧値比較手段として機能する。さらに、図9のフローチャートのS115及びS119でインクリメント・デクリメント処理を実行するCPU21が本発明のパラメータ設定手段として機能する。