以下、本発明をテープ印字装置につき具体化した実施形態に基づき図面を参照しつつ詳細に説明する。先ず、本実施形態に係るテープ印字装置の概略構成について図1乃至図3に基づき説明する。図1は本実施形態に係るテープ印字装置1の収納カバーを除いた概略上方外観図である。図2は本実施形態に係るテープ印字装置1のサーマルヘッドの概略構成を示す図で、(A)は平面図、(B)は正面図である。図3はテープ印字装置1に装着されるテープカセット35のカバーを外した場合の平面図である。
図1に示すように、テープ印字装置1には、文書データからなるテキストを作成するための文字入力キー2、テキストの印字を指令する印字キー3、及び、改行指令や各種処理の実行、選択を指令するリターンキー4、文字等のキャラクタを複数行にわたって表示する液晶ディスプレイ7(以下「LCD」という。)上でカーソルを上下、左右に移動させるカーソルキーC等を設けたキーボード6、及び、後述のテープカセット35(図3参照)を収納するカセット収納部8が収納カバー(図示略)で覆われて配設されている。また、このキーボード6の下側には、制御回路部が構成される制御基板(図示略)が配設され、この制御基板の先端部下面には、環境温度を検出するためのサーミスタ13(図4参照)が取り付けられている。また、カセット収納部8の左側面部には、印字されたテープが排出されるラベル排出口16が形成され、該カセット収納部8の右側面部には、電源アダプタが取り付けられるアダプタ挿入口が設けられている。尚、サーミスタ13は、サーマルヘッド9から離れた場所に設けられているため、該サーマルヘッド9の発熱駆動の影響を受けない。
また、このカセット収納部8には、後述のサーマルヘッド9(図2参照)と、このサーマルヘッド9に対向するプラテンローラ10と、このプラテンローラ10の下流側のテープ送り用ローラ11と、このテープ送り用ローラ11に対向するテープ駆動ローラ軸14とが配置されている他に、テープカセット35内に収納されるインクリボンを送るインクリボン巻取軸15等が配置されている。かかるインクリボン巻取軸15は、後述のステッピングモータ等により構成されるテープ送りモータ30(図4参照)から適宜の駆動機構を介して回転駆動されて、後述するように印字後のインクリボン43(図3参照)を巻き取るインクリボン巻取りリール44(図3参照)に嵌挿され、印字スピードと同期して該インクリボン巻取りリール44を回転駆動する。また、テープ駆動ローラ軸14は、テープ送りモータ30から適宜の伝達機構を介して回転駆動され、後述するテープ駆動ローラ53(図3参照)を回転駆動する。
また、カセット収納部8に後述のテープカセット35が装着された場合に、このテープカセット35内に収納される被印字媒体であるテープの種類を特定するテープカセット35のテープ特定部40(図3参照)に対向する位置には、プッシュ式のマイクロスイッチ等から構成されるテープ種検出センサS1、S2、S3、S4、S5が設けられている。この各テープ種検出センサS1〜S5は、プランジャーとマイクロスイッチ等から構成される公知の機械式スイッチからなり、この各テープ種検出センサS1〜S5に対してテープ特定部40に形成される貫通孔があるかどうかを検出して、そのオン・オフ信号によりテープカセット35内に収納されたテープの種類を検出するものである。尚、本実施形態の場合は、各テープ種検出センサS1〜S5は、そのプランジャーが常には、カセット収納部8の底面から突き出しており、マイクロスイッチがオフ状態になっている。そして、テープ特定部40の後述の貫通孔が、各テープ種検出センサS1〜S5に対向する位置に有る場合には、プランジャーが押下されずマイクロスイッチがオフ状態にあるので、オフ信号が出力され、一方、テープ特定部40の後述の貫通孔が、各テープ種検出センサS1〜S5に対向する位置に無い場合には、プランジャーが押下されてマイクロスイッチがオン状態になるので、オン信号が出力される。そして、かかるカセット収納部8は、テープ印字装置1の後方に回動可能に枢支された収納カバーにより開閉され、開状態でテープカセット35の交換等が行われる。
ここで、テープの種類は、「テープのタイプ」と「テープ幅」により特定される。「テープのタイプ」としては、印字テープの表面が保護フィルムで覆われない「レセプター(ノンラミネート)テープ」、印字テープの表面が透明フィルムで保護される「ラミネートテープ」、感圧によるレタリングやアイロン熱によるアイロン転写を行なうための「転写テープ」等がある。また、「テープ幅」は、「6mm」、「9mm]、「12mm」、「18mm」、「24mm」等がある。また、テープのタイプにより、印字に要するエネルギーが異なり、1ドットあたりの所要エネルギーは、「レセプターテープ」では約1.3mJ、「ラミネートテープ」では約1.1mJ、「転写テープ」では約0.7mJである。このように印字エネルギーに差があるのは、「レセプターテープ」では表面にインク部が露出するために、テープ表面へのインクの密着性(耐擦性、堅牢性)が要求されるために必要エネルギーが高くなるためであり、また、「転写テープ」では、一次・二次転写が必要であるため、過度のエネルギによる逆転写(リボンの剥離時にテープ表面の処理層がリボン側に剥ぎ取られてしまうこと)が起きないように、必要エネルギーが低めになるためである。
本実施形態の場合は、後述のように、「テープのタイプ」が「ラミネートテープ」で、「テープ幅」が「24mm」の場合は、テープ種検出センサS1〜S5の信号、即ちセンサ孔の有無は、「S1」は「オン信号、即ち、センサ孔無し」、「S2」は「オン信号、即ち、センサ孔無し」、「S3」は「オン信号、即ち、センサ孔無し」、「S4」は「オフ信号、即ち、センサ孔有り」、「S5」は「オン信号、即ち、センサ孔無し」である。他のテープの種類についても、各テープ判別センサS1〜S5のオン・オフ信号とテープ特定部40に形成される貫通孔の有無の関係は、「オン信号の場合、センサ孔無し」であり、「オフ信号の場合、センサ孔有り」と同様なので、その説明は省略する。
次に、図2に示すように、サーマルヘッド9は、略縦長四角形の平板状に形成されたいわゆる厚膜ヘッドであり、このサーマルヘッド9の前面の左端縁部には、所定個数(本実施形態では、128個である。)の各発熱素子R1〜Rn(nは、所定個数である。)が、該左端縁部の辺に沿って一列に配列されて形成されている。そして、このサーマルヘッド9の前面右端縁部には、制御基板上に設けられるコネクタ(図示略)に接続されるフレキシブルケーブルFの他端が半田付け等により電気的に接続されている。また、サーマルヘッド9は、メッキ鋼板やステンレス鋼板等により形成される略四角形の放熱板9Aの前面の左端縁部に、各発熱素子R1〜Rn の配列方向が、該放熱板9Aの左端縁部の辺に平行になるように接着剤などによって固着されている。また、フレキシブルケーブルFの上端右角部は、両面テープ等によって放熱板9Aの前面に固着されている。更に、該フレキシブルケーブルFの一端側は、放熱板9Aの下端縁部に穿設される水平略長四角形の貫通孔9Dに挿入されて、後側に引き出されている。また、放熱板9Aの下端縁部には、略直角前側方向に所定幅延出される延出部9Bが形成されて、4個の各貫通孔9C、9C、9C、9C(2個のみ図示)が穿設されている。そして、該放熱板9Aは、各発熱素子R1〜Rn の配列方向が、テープカセット35の開口部52(図3参照)におけるラベルテープ36(図3参照)の搬送方向に略直交するように、各貫通孔9C、9C、9C、9Cを介してビス止め等によってカセット収納部8の下側に取り付けられる。
次に、図3に示すように、テープカセット35は透明テープ等からなる被印字テープ36、この被印字テープ36に印字を施すためのインクリボン43、更には、印字がなされた被印字テープ36に裏貼りされる両面粘着テープ46を各々、テープスプール37、リール42、テープスプール47に巻回して、カセット本体35Bの底面に立設されるカセットボス38、リールボス50、カセットボス48に回転可能に嵌挿して収納したものであり、更に、使用済みのインクリボン43を巻き取るインクリボン巻取リール44を備えている。
そして、前記リール42に巻回され、このリール42から引き出された未使用インクリボン43は、被印字テープ36と重ね合わされ、被印字テープ36と共に開口部52に入り、サーマルヘッド9及びプラテンローラ10の間を通過する。その後、インクリボン43は、被印字テープ36から引き離され、リボン巻取軸15により回転駆動されるインクリボン巻取リール44に至り、このインクリボン巻取リール44により巻き取られる。
また、前記両面粘着テープ46は、片面に離形紙を重ね合わされた状態で、離形紙を外側にしてテープスプール47に巻回されて収納されている。そして、このテープスプール47から引き出された両面粘着テープ46は、テープ駆動ローラ53とテープ送り用ローラ11との間を通過し、離形紙が重ね合わされない側の粘着面が被印字テープ36に貼着される。また、両面粘着テープ46の上下両端部には、スペーサ46Aが挿入されている。
これにより、前記テープスプール37に巻回され、このテープスプール37から引き出された被印字テープ36は、テープカセット35のサーマルヘッド9が挿入される開口部52を通過する。その後、両面粘着テープ46が貼り合わされる被印字テープ36は、テープカセット35の片側下方部(図3中、左下側部)に回転自在に設けられ、テープ送りモータ30の駆動を受けて回転するテープ駆動ローラ53と、このテープ駆動ローラ53に対向配置されるテープ送り用ローラ11との間を通過して、テープカセット35の外部に送り出されて、テープ印字装置1のラベル排出口16より排出される。この場合、両面粘着テープ46は、被印字テープ36に対してテープ駆動ローラ53及びテープ送り用ローラ11によって圧着される。
また、テープカセット35をカセット収納部8に装着した場合に、カセット本体35Bの底面部の各テープ種検出センサS1〜S5に対向する角部(図3中、右上角部)には、各テープ種検出センサS4に対向する位置に、該テープ種検出センサS4が挿入される各貫通孔41Aが穿設されたテープ特定部40が設けられている。これにより、各テープ種検出センサS4がオフ信号を出力し、各テープ種検出センサS1、S2、S3、S5がオン信号を出力して、このテープカセット35内に収納される印字テープの種類がテープ幅24mmの所定のラミネートテープであることが検出される。
次に、テープ印字装置1の電気的構成について、図4を参照して説明する。図4はテープ印字装置の制御構成を示すブロック図である。図4に示すように、テープ印字装置1の制御構成は、制御基板(図示略)上に形成される制御回路部20を核として構成されている。制御回路部20には、各機器を制御するCPU21と、このCPU21にデータバス22を介して接続された入出力インタフェース23、CGROM24、ROM25、26、RAM27とから構成されている。なお、CPU21の内部にはタイマ210が設けられている。
ここで、CGROM24には、多数のキャラクタの各々に関して、表示のためのドットパターンデータがコードデータに対応させて格納されている。
また、ROM(ドットパターンデータメモリ)25には、アルファベット文字や記号等のキャラクタを印字するための多数のキャラクタの各々に関して、印字用ドットパターンデータが、書体(ゴシック系書体、明朝体書体等)毎に分類され、各書体毎に6種類(16、24、32、48、64、96のドットサイズ)の印字文字サイズ分、コードデータに対応させて格納されている。また、階調表現を含むグラフィック画像を印字するためのグラフィックパターンデータも記憶されている。
また、ROM26には、キーボード6から入力された文字や数字等のキャラクタのコードデータに対応させてLCDC28を制御する表示駆動制御プログラム、印字バッファ272のデータを読み出してサーマルヘッド9やテープ送りモータ30を駆動する印字駆動制御プログラム、各印字ドットの形成エネルギ量に対応するパルス数を決定するパルス数決定プログラム、及び後述のサーマルヘッド9の各発熱素子R1〜Rnの駆動制御プログラム、その他テープ印字装置1の制御上必要な各種のプログラムが格納されている。そして、CPU21は、かかるROM26に記憶されている各種プログラムに基づいて各種の演算を行うものである。
さらに、RAM27には、テキストメモリ271、印字バッファ272、ライン印字ドット数メモリ273、総印字ドット数メモリ274、パラメータ記憶エリア275、テープ種メモリ276等が設けられており、テキストメモリ271には、キーボード6から入力された文書データが格納される。また、印字バッファ272には、複数の文字や記号等の印字用ドットパターンや各ドットの形成エネルギ量である印加パルス数等がドットパターンデータとして格納され、サーマルヘッド9はかかる印字バッファ272に記憶されているドットパターンデータに従ってドット印字を行う。また、ライン印字ドット数メモリ273には、サーマルヘッド9により印字される1ライン(本実施形態では、128ドット)分の印字ドット数のカウント値が格納される。また、総印字ドット数メモリ274には、サーマルヘッド9により印字される起動時からの総印字ドット数が記憶される。また、パラメータ記憶エリア275には、後述のように各種のパラメータテーブルが記憶される。さらに、テープ種メモリ276には、テープ種検出センサにより検出されたテープの種類が前回と今回について格納される。
また、入出力インタフェース23には、キーボード6と、サーミスタ13と、LCD7に表示データを出力するためのビデオRAM281を有するディスプレイコントローラ(以下、LCDCという)28と、サーマルヘッド9を駆動するための駆動回路29と、テープ送りモータ30を駆動するための駆動回路31とが各々接続されている。よって、キーボード6の文字キーを介して文字等が入力された場合、そのテキスト(文書データ)がテキストメモリ271に順次記憶されていくとともに、ドットパターン発生制御プログラム及び表示駆動制御プログラムに基づいてキーボード6を介して入力された文字等に対応するドットパターンがLCD7上に表示される。また、サーマルヘッド9は駆動回路29を介して駆動され、印字バッファ272に記憶されたドットパターンデータの印字を行い、これと同期してテープ送りモータ30が駆動回路31を介してテープの送り制御を行うものである。ここで、サーマルヘッド9は、駆動回路29を介して各発熱素子R1〜Rnが1ライン分の印字ドットに対応して選択的に発熱駆動されることによって、文字等をテープ上に印字する。
ここで、パラメータ記憶エリア275に記憶される各種のパラメータテーブルについて図5〜図8に基づいて説明する。図5は、ドット数パラメータテーブル61のデータ構成を示す模式図である。図6は、蓄熱係数テーブル62のデータ構成を示す模式図である。図7は、電圧変動係数テーブル63のデータ構成を示す模式図である。図8は、補正係数テーブル64のデータ構成を示す模式図である。
図5に示すように、ドット数パラメータテーブル61は、サーミスタ13を介して測定される温度を示す環境温度611と、この環境温度611に対応する総量612と流出量613とから構成されている。この総量612は、環境温度等によって決定される連続印字可能な最大総印字ドット数であり、後述のように連続印字によって上昇するサーマルヘッド9の各発熱素子R1〜Rnの印字ドットの潰れ等を発生しないことを保証する蓄熱温度を表している。また、流出量613は、後述のように所定時間毎(本実施形態では、約1秒毎)に総印字ドット数から減算するドット数である。尚、この流出量613は、(1)サーマルヘッド9の材質、形状、大きさ、(2)放熱板9Aの材質、形状、大きさ、(3)サーマルヘッド9と放熱板9Aの間の接着剤の材質、厚み、(4)放熱板9Aとテープ印字装置1のメカフレームとの接合方法、(5)このメカフレームの材質、形状、大きさ、(6)環境温度などによって決定される印字ドット数であり、後述のようにサーマルヘッド9の放熱板9A等を介した自然放熱量を表している。
また、ドット数パラメータテーブル61の環境温度611には、「30℃以上」、「20℃以上30℃未満」、「20℃未満」の3種類の環境温度範囲が予め登録されている。そして、この各環境温度611に対する総量612には、環境温度611の「30℃以上」に対して「250000ドット」、環境温度611の「20℃以上30℃未満」に対して「300000ドット」、環境温度611の「20℃未満」に対して「460000ドット」が総量612として予め登録されている。また、各環境温度611に対する流出量613には、環境温度611の「30℃以上」に対して「1800ドット」、環境温度611の「20℃以上30℃未満」に対して「2000ドット」、環境温度611の「20℃未満」に対して「2600ドット」が流出量613として予め登録されている。尚、各環境温度611に対応する総量612と流出量613は、放熱板9Aの形状変更などによるサーマルヘッド9の自然放熱量の変化などに対応して、任意の数値に変更できるパラメータである。
次に、図6に示すように、蓄熱係数テーブル62は、図5のドット数パラメータテーブル61により求められた総量を基準値として、現在の総量ドット数のうち基準値を超える部分の超過ドット数621と、サーミスタ13を介して測定される環境温度622に対応して定められる蓄熱係数dの値が予め記憶されたものである。ここで、超過ドット数621を求めるための基準値は、ドット数パラメータテーブル61により定められる「総量」の値が用いられる。環境温度622は、「40〜32℃」「31〜28℃」、「27〜22℃」、「21〜17℃」、「16〜10℃」の5つのレベルに分けられ、それぞれのレベルと超過ドット数621に対応して蓄熱係数dが定められている。この蓄熱係数dは、後述の蓄熱制御処理において、発熱素子に対する印加エネルギーの再評価を行なう際に使用され、サーマルヘッド9の蓄積温度に対応して印加エネルギーを補正するために用いられる。なお、蓄熱係数dは、温度の上昇過程(非定常時)と飽和(定常時)の両方を補正対象とする。
次に、図7に示すように、電圧変動係数テーブル63は、各発熱素子に対する印加エネルギーを設定する際に電圧に応じて印加するパルス幅を変化させるために用いられる定数である電圧変動係数を定めたものであり、電圧センター値431、これに対応する電圧の範囲(16進数データ値)632、その電圧範囲632に対応する電圧変動係数C(V)633からなっている。図7では、電圧変動係数C(V)の値も16進数データで記載されている。
次に、図8に示すように、補正係数テーブル64は、テープ種の変更がなされた場合に、蓄熱情報を補正するための係数dcを決定するためのテーブルである。図8に示すように、補正係数テーブル64は、前回テープ種641と、今回テープ種642と、これらの組み合わせに対応する補正係数dc643とから構成されている。テープ種による所要印字エネルギーの差が蓄熱状況に反映されるので、これをテープ種類の交換時にも適切に保つように、所要エネルギーが大きいテープ種類から所要エネルギーが小さいテープ種類に交換された場合には、補正係数の値が1より大きくなる。逆に、所要エネルギーが小さいテープ種類から所要エネルギーが大きいテープ種類に交換された場合には、補正係数の値が1より小さくなる。
次に、上記のように構成されるテープ印字装置1の第1実施形態にかかるテープ印字動作について図9のフローチャートを参照して説明する。図9は、テープ印字装置1の第1実施形態にかかる蓄熱制御処理の流れを示すフローチャートである。
まず、電源が投入されてテープ印字装置1の処理が開始されると、前回のテープ種類に初期値を設定し、テープ種メモリ276に格納する(S1)。前回テープ種類には、後述のS4にて検出されるテープ種が各回のルーチンの最後に代入されるものであるが、S1においては、電源投入直後の初期処理であるから、初期値として、最も利用頻度の高いテープ種と考えられるラミネートテープが設定される。
次に、利用者からの指示に従い、印刷を開始する(S2)。なお、印刷の開始とともにタイマー210のカウントが開始される(S3)。そして、テープ種検出センサからの信号により、テープ印字装置1に装着されているテープカセット35が有するテープの種類を検出し、テープ種メモリ276に格納する(S4)。
次に、サーミスタ13から環境温度を取得する(S6)。そして、取得した環境温度に基づいて温度係数t、総量初期値(基準ドット数)、流出量を決定する(S7)。温度係数tは、環境温度のAD変換値に対して、例えば、t=a/温度AD値+b(a,bは固定値)のような式により算出されるものであり、後述する発熱体への印加エネルギー決定の際に使用される。総量値および流出量は、パラメータ記憶エリア275に記憶されているドット数パラメータテーブル61に従って、環境温度に対応する値が代入される。この総量および流出量は、RAM27の総印字ドット数メモリ274に格納される。
次に、S7で決定した総量に今から印字する1ライン分のドット数を加算して総ドット数Dを算出する(S8)。1ライン分のドット数は、RAM27の1ライン印字ドット数メモリ273に格納されているので、この値を使用する。次に、S8で算出された総ドット数Dから、S7で決定した流出量に印字開始からの経過時間を乗じたものを減算してドット数を調整する(S9)。S8およびS9の処理により、総ドット数Dは、S7で決定した総量値に今から印字する1ライン分のドット数を加算し、S7で決定した流出量に印字開始からの経過時間を乗じたものが減算されて算出されたことになる(総ドット数←総量+印字ドット数−流出量×経過時間)。このように、印字ドット数を逐次加算し、放熱量をドット数に換算して印字ドット数から減算するという調整を行うことで、サーマルヘッド9の温度の蓄積状況をドット数で表現することができる。
次に、テープ種メモリ276に格納された前回のテープの種類と、今回検出されたテープの種類が同一か否かを判断する(S10)。前回と今回のテープの種類が同一であれば(S10:YES)、所要印字エネルギーも変化しないので、補正を行う必要はないから、そのままS12に進む。
前回と今回のテープの種類が異なる場合は(S10:NO)、補正係数テーブル64に従って、S9で調整した総ドット数Dを補正する(S11)。この補正は、D=D×dcの式により行われる。例えば、前回のテープの種類がラミネートテープであり、今回のテープの種類がノンラミネート(レセプター)テープであれば、補正係数dcは0.9となり、補正後の総ドット数はS9で求められたDの値の0.9倍となる。補正係数dcは、テープ種による所要エネルギーの違いに対応して、所要エネルギーが大きいテープ種類から所要エネルギーが小さいテープ種類に交換された場合には値が大きくなり、逆に、所要エネルギーが小さいテープ種類から所要エネルギーが大きいテープ種類に交換された場合には値が小さくなるように構成されている。従って、この例では、所要エネルギーが小さいテープ種であるラミネートテープから、所要エネルギーが大きいテープ種であるレセプターテープにテープ種類が交換されたので、蓄熱情報である総ドット数Dの値を少なくして、蓄熱制御が過度に行われて印字かすれが発生しないようにできる。
次に、S11で補正された現在の総ドット数Dと基準ドット数(S7で設定した総量初期値)の差分である超過ドット数およびS6で取得した環境温度に基づいて、蓄熱係数dを設定する(S12)。蓄熱係数dは、パラメータ記憶エリア275に記憶されている蓄熱係数テーブル62に従って決定される。1回目の処理では、現在の総ドット数Dと基準ドット数の差は50000以下であるから、環境温度が何度であっても、蓄熱係数dは1となる。
次に、電圧を検出し(S15)、検出された電圧に基づいて電圧変動係数C(V)を設定する(S16)。電圧変動係数C(V)は、パラメータ記憶エリア275に記憶されている電圧変動係数テーブル63に従って決定され、後述の印加エネルギーの設定の際に用いられる。
次に、各発熱素子に対して印加するパルス幅(通電時間)を、印加制御係数Cに所定値を代入することにより設定する(S17)。ここで印加制御係数Cに代入される値は、あらかじめ定められた固定値である。この固定値から、所定時間ごとに、後述の計算式により、環境温度、電圧、蓄熱の状況に応じた値を減算し、Cの値が0になるまで発熱体にエネルギーを印加する(通電する)。ここでは、例えば55400がCに代入される。
次に、印加制御係数Cが0未満となったか否かを判断する(S18)。Cが0以上であれば(S18:NO)、駆動パルスを印加して発熱体をONする(S19)。そして、250マイクロ秒経過したかを判断する(S20)。250マイクロ秒経過するまでは(S20:NO)、駆動パルスの印加を継続する(S19)。250マイクロ秒経過したら(S20:YES)、駆動パルスの印加を継続すべきか否かを決定するために、印加制御係数Cの値を再計算して、今後印加すべきエネルギー量を決定する(S21)。この印加エネルギーの再評価は、C←C−C(V)×t×dの計算式により行われる。電圧変動係数C(V)は、電圧値が高くなるほど大きくなり、温度係数tは、環境温度が高くなるほど大きくなり、蓄熱係数dの値は、超過ドット数及び環境温度が高くなるほど大きくなる。従って、これらの要素を全て乗じることにより導き出される値は環境温度が高く、印字継続によるサーマルヘッド9の蓄熱が進んでいる場合に大きくなる。Cの値からこの乗算結果の値を減じて新たなCの値とすると、蓄熱が進んでいる場合にCの値がより小さくなる結果となる。すなわち、より早くCの値は0に近づくので、各発熱素子の通電時間が短くなり、印字潰れの発生を回避できることになる。
その後、S18に戻り、S21の計算によるCの値が0未満になったか否かを再び判断する。Cが0未満となったら(S18:YES)、発熱体を所定時間OFFにして(S22)、ヘッドを冷却する。そして、次回の処理ルーチンに備えて前回のテープ種を現在のテープ種に置換する(S23)。そして、印字を継続するか否かを判断し(S24)、継続する場合は(S24:YES)、S2に戻り、継続しない場合は(S24:NO)、処理を終了する。
以上説明したように、第1実施形態のテープ印字装置1によれば、前回検出したテープの種類を記憶しておき、今回検出したテープの種類と同一であるか否かを判断し、前回と異なる場合には、総ドット数を補正して蓄熱情報に反映させるため、テープ種に対応する印字エネルギーの大小による蓄熱の大小を適切に反映して蓄熱制御を実行することができるので、テープの種類が交換された場合でも、印字品質を適切に保つことができる。
なお、第1実施形態において、図9のフローチャートのS8で印字ドット数を加算するCPU21が総ドット数計数手段として機能し、S9で流出量を減算するCPU21が調整手段として機能し、S21で印加エネルギー再評価処理を実行するCPU21がパルス幅設定手段として機能し、S11で総ドット数補正処理を実行するCPU21がパルス幅補正手段として機能する。
次に、テープ印字装置1の第2実施形態にかかるテープ印字動作について図10および図11を参照して説明する。図10は、パラメータ記憶エリア275に記憶されたテープ種定数テーブル65のデータ構成を示す模式図である。図11は、テープ印字装置1の第2実施形態にかかる蓄熱制御処理の流れを示すフローチャートである。第2実施形態では、第1実施形態と同様に、総ドット数Dを補正することにより蓄熱情報を適正値に保つものであるが、テープの種類が交換されたか否かを判断する手段に代えて、テープ種類ごとの定数を代入して計算することにより補正を行う。
図10に示すように、テープ種定数テーブル65は、テープの種類651と、このテープ種類651に応じた定数652とから構成されている。本実施形態では、使用されるテープの種類をラミネートテープ、ノンラミネート(レセプター)テープ、転写テープの3種類としているので、それぞれに対応する定数がラミネートテープでは「1」、ノンラミネートテープでは「0.9」、転写テープでは「1.2」に設定されている。これらの定数値は各テープに対するサーマルヘッド9の各発熱素子R1〜Rnへの印加エネルギーの比率に対応して、任意の数値に変更できるパラメータである。本実施形態では、各テープ種類における1ドットあたりの所要印字エネルギーが、ラミネートテープでは、約1.1mJ、ノンラミネートテープでは、約1.3mJ、転写テープでは約0.7mJであることから、これらの所要エネルギーに対応して、所要エネルギーが大きいテープ種類ほど小さい値となるように構成されている。
図11に示すように、まず、電源が投入されてテープ印字装置1の処理が開始されると、前回テープ種定数dbに初期値を設定し、テープ種メモリ276に格納する(S101)。前回テープ種定数dbは、後述のS104にて検出されるテープ種に基づいて設定された前回の処理における定数が代入されるものであるが、S101においては、電源投入直後の初期処理であるから、初期値として、最も利用頻度の高いテープ種と考えられるラミネートテープに対応する定数1.0がテープ種定数テーブル65から読み出され、代入される。
次に、利用者からの指示に従い、印刷を開始する(S102)。なお、印刷の開始とともにタイマーが開始される(S103)。そして、テープ種検出センサからの信号により、テープ印字装置1に装着されているテープカセット35が有するテープの種類を検出する(S104)。
次に、S104で検出した現在装着されているテープ種に対応する定数をdpに代入する(S105)。例えば、ノンラミネートテープが検出された場合には、テープ種定数テーブル65にしたがって、0.9が代入される。
次に、サーミスタ13から環境温度を取得する(S106)。そして、取得した環境温度に基づいて温度係数t、総量初期値(基準ドット数)、流出量を決定する(S107)。温度係数tは、環境温度のAD変換値に対して、例えば、t=a/温度AD値+b(a,bは固定値)のような式により算出されるものであり、後述する発熱体への印加エネルギー決定の際に使用される。総量値および流出量は、パラメータ記憶エリア275に記憶されているドット数パラメータテーブル61に従って、環境温度に対応する値が代入される。この総量および流出量は、RAM27の総印字ドット数メモリ274に格納される。
次に、S107で決定した総量に今から印字する1ライン分のドット数を加算して総ドット数Dを算出する(S108)。1ライン分のドット数は、RAM27の1ライン印字ドット数メモリ273に格納されているので、この値を使用する。次に、S108で算出された総ドット数Dから、S107で決定した流出量に印字開始からの経過時間を乗じたものを減算してドット数を調整する(S109)。S108およびS109の処理により、ドット数Dは、S107で決定した総量値に今から印字する1ライン分のドット数を加算し、S107で決定した流出量に印字開始からの経過時間を乗じたものが減算されて算出されたことになる(総ドット数←総量+印字ドット数−流出量×経過時間)。このように、印字ドット数を逐次加算し、放熱量をドット数に換算して印字ドット数から減算するという調整を行うことで、サーマルヘッド9の温度の蓄積状況をドット数で表現することができる。
次に、前回のテープ種を示すテープ種定数dbと現在のテープ種を示すテープ種定数dpに基づいて、S109で調整した総ドット数Dを補正する(S111)。この補正は、D=D×dp/dbの式により行われる。例えば、db=1.0(ラミネートテープ)、dp=0.9(レセプターテープ)であれば、補正後の総ドット数はS109で求められたDの値の0.9倍となる。テープ種定数は、テープ種による所要エネルギーの違いに対応して、所要エネルギーが大きいテープ種類ほど小さい値となるように構成されている。従って、この例では、所要エネルギーが小さいテープ種であるラミネートテープから、所要エネルギーが大きいテープ種であるレセプターテープにテープ種類が交換されたので、蓄熱情報である総ドット数Dの値を少なくして、蓄熱制御が過度に行われて印字かすれが発生しないようにできる。また、前回と今回のテープ種定数が同一であれば、補正値dp/dbは1となって総ドット数Dに対する補正は行われないので、前回のテープ種と今回のテープ種が同一か否かの判断を行わなくても、簡単な構成で総ドット数を補正することができる。
次に、S111で補正された現在のドット数Dと基準ドット数(S107で設定した総量初期値)の差分および環境温度に基づいて蓄熱係数dを設定する(S112)。蓄熱係数dは、パラメータ記憶エリア275に記憶されている蓄熱係数テーブル62に従って決定される。1回目の処理では、現在のドット数Dと基準ドット数の差は50000以下であるから、環境温度が何度であっても、蓄熱係数dは1となる。
次に、電圧を検出し(S115)、検出された電圧に基づいて電圧変動係数C(V)を設定する(S116)。電圧変動係数C(V)は、パラメータ記憶エリア275に記憶されている電圧変動係数テーブル63に従って決定され、後述する発熱体への印加エネルギーの設定の際に用いられる。
次に、各発熱素子に対して印加するパルス幅(通電時間)を、印加制御係数Cに所定値を代入することにより設定する(S117)。ここで印加制御係数Cに代入される値は、あらかじめ定められた固定値である。この固定値から、所定時間ごとに、後述の計算式により、環境温度、電圧、蓄熱の状況に応じた値を減算し、Cの値が0になるまで発熱体にエネルギーを印加する(通電する)。ここでは、例えば55400がCに代入される。
次に、印加制御係数Cが0未満となったか否かを判断する(S118)。Cが0以上であれば(S118:NO)、駆動パルスを印加して発熱体をONする(S119)。そして、250マイクロ秒経過したかを判断する(S120)。250マイクロ秒経過するまでは(S120:NO)、駆動パルスの印加を継続する(S119)250マイクロ秒経過したら(S120:YES)、印加制御係数Cの値を再計算して、今後印加すべきエネルギー量を決定する(S121)。この印加エネルギーの再評価は、C←C−C(V)×t×dの計算式により行われる。電圧変動係数C(V)は、電圧値が高くなるほど大きくなり、温度係数tは、環境温度が高くなるほど大きくなり、蓄熱係数dの値は、超過ドット数及び環境温度が高くなるほど大きくなる。従って、これらの要素を全て乗じることにより導き出される値は環境温度が高く、印字継続によるサーマルヘッド9の蓄熱が進んでいる場合に大きくなる。Cの値からこの乗算結果の値を減じて新たなCの値とすると、蓄熱が進んでいる場合にCの値がより小さくなる結果となる。すなわち、より早くCの値は0に近づくので、各発熱素子の通電時間が短くなり、印字潰れの発生を回避できることになる。
その後S118に戻り、S121の計算によるCの値が0未満になったか否かを再び判断する。Cが0未満となったら(S118:YES)、発熱体を所定時間OFFにして(S122)、ヘッドを冷却する。そして、次回の処理ルーチンに備えて現在のテープ種定数dpをdbに代入する(S123)。そして、印字を継続するか否かを判断し(S124)、継続する場合は(S124:YES)、S102に戻り、継続しない場合は(S124:NO)、処理を終了する。
以上説明したように、第2実施形態のテープ印字装置1によれば、テープ種に対応する定数を用いて総ドット数を補正するので、テープ種による印字エネルギーの大小による蓄熱の大小を適切に反映して蓄熱制御を実行することができる。また、テープ種に対応する定数を用いるので、前回と今回でテープ種類が異なるか否かの判断処理を行なう必要がない。
なお、第2実施形態において、図11のフローチャートのS108で印字ドット数を加算するCPU21が総ドット数計数手段として機能し、S109で流出量を減算するCPU21が調整手段として機能し、S121で印加エネルギー再評価処理を実行するCPU21がパルス幅設定手段として機能し、S111で総ドット数補正処理を実行するCPU21がパルス幅補正手段として機能する。
次に、テープ印字装置1の第3実施形態にかかるテープ印字動作について図12および図13を参照して説明する。図12は、パラメータ記憶エリア275に記憶されたドット数補正値テーブル66のデータ構成を示す模式図である。図13は、テープ印字装置1の第3実施形態にかかる蓄熱制御処理の流れを示すフローチャートである。第3実施形態では、第1実施形態と同様に、総ドット数Dを補正することにより蓄熱情報を適正値に保つものであるが、総ドット数Dに補正係数を乗じて補正するに代えて、所定数を加減することにより補正を行う。
図12に示すように、ドット数補正値テーブル66は、ドット数パラメータテーブル61により求められた総量を基準値として、現在の総量ドット数のうち基準値を超える部分の超過ドット数661と、前回と今回のテープ種の組み合わせ662に対応して定められる補正値deの値が記憶されたものである。補正値deの値は正の値である場合も負の値である場合もあり、deの値に応じて総ドット数Dに加算または減算が行われる。ドット数補正値deは、テープ種による所要エネルギーの違いに対応して、所要エネルギーが大きいテープ種類から所要エネルギーが小さいテープ種類に交換された場合には正の値、逆に、所要エネルギーが小さいテープ種類から所要エネルギーが大きいテープ種類に交換された場合には負の値で構成され、さらに超過ドット数が多くなる(蓄熱が進む)に従って、補正値の絶対値が大きくなるように構成されている。
図13に示すように、まず、電源が投入されてテープ印字装置1の処理が開始されると、前回のテープ種類に初期値を設定し、テープ種メモリ276に格納する(S201)。前回テープ種類には、後述のS204にて検出されるテープ種が各回のルーチンの最後に代入されるものであるが、S201においては、電源投入直後の初期処理であるから、初期値として、最も利用頻度の高いテープ種と考えられるラミネートテープが設定される。
次に、利用者からの指示に従い、印刷を開始する(S202)。なお、印刷の開始とともにタイマーのカウントが開始される(S203)。そして、テープ種検出センサからの信号により、テープ印字装置1に装着されているテープカセット35が有するテープの種類を検出し、テープ種メモリ276に格納する(S204)。
次に、サーミスタ13から環境温度を取得する(S206)。そして、取得した環境温度に基づいて温度係数t、総量初期値(基準ドット数)、流出量を決定する(S207)。温度係数tは、環境温度のAD変換値に対して、例えば、t=a/温度AD値+b(a,bは固定値)のような式により算出されるものであり、後述の印字エネルギー決定の際に使用される。総量値および流出量は、パラメータ記憶エリア275に記憶されているドット数パラメータテーブル61に従って、環境温度に対応する値が代入される。この総量および流出量は、RAM27の総印字ドット数メモリ274に格納される。
次に、S207で決定した総量に今から印字する1ライン分のドット数を加算して総ドット数Dを算出する(S208)。1ライン分のドット数は、RAM27の1ライン印字ドット数メモリ273に格納されているので、この値を使用する。次に、S208で算出された総ドット数Dから、S207で決定した流出量に印字開始からの経過時間を乗じたものを減算してドット数を調整する(S209)。S208およびS209の処理により、ドット数Dは、S207で決定した総量値に今から印字する1ライン分のドット数を加算し、S207で決定した流出量に印字開始からの経過時間を乗じたものが減算されて算出されたことになる(総ドット数←総量+印字ドット数−流出量×経過時間)。このように、印字ドット数を逐次加算し、放熱量をドット数に換算して印字ドット数から減算するという調整を行うことで、サーマルヘッド9の温度の蓄積状況をドット数で表現することができる。
次に、テープ種メモリ276に格納された前回のテープの種類と、今回検出されたテープの種類が同一か否かを判断する(S210)。前回と今回のテープの種類が同一であれば(S210:YES)、所要印字エネルギーも変化しないので、補正を行う必要はないから、そのままS212に進む。
前回と今回のテープの種類が異なる場合は(S210:NO)、ドット数補正値テーブル66に従って、S209で調整した総ドット数Dを補正する(S211)。この補正は、D=D+deの式により行われる。例えば、前回のテープの種類がラミネートテープ、今回のテープの種類がレセプターテープであり、超過ドット数が50000〜99999の範囲内であれば、補正値deは−5000となり、補正後の総ドット数はS209で求められた値から5000を減じた値となる。ドット数補正値deは、テープ種による所要エネルギーの違いに対応して、所要エネルギーが大きいテープ種類から所要エネルギーが小さいテープ種類に交換された場合には正の値、逆に、所要エネルギーが小さいテープ種類から所要エネルギーが大きいテープ種類に交換された場合には負の値で構成され、さらに超過ドット数が多くなる(蓄熱が進む)に従って、補正値の絶対値が大きくなるように構成されている。従って、この例では、所要エネルギーが小さいテープ種であるラミネートテープから、所要エネルギーが大きいテープ種であるレセプターテープにテープ種類が交換されたので、蓄熱情報である総ドット数Dの値を少なくして、蓄熱制御が過度に行われて印字かすれが発生しないようにできる。
次に、S211で補正された現在の総ドット数Dと基準ドット数(S207で設定した総量初期値)の差分である超過ドット数およびS206で取得した環境温度に基づいて、蓄熱係数dを設定する(S212)。蓄熱係数dは、パラメータ記憶エリア275に記憶されている蓄熱係数テーブル62に従って決定される。1回目の処理では、現在のドット数Dと基準ドット数の差は50000以下であるから、環境温度が何度であっても、蓄熱係数dは1となる。
次に、電圧を検出し(S215)、検出された電圧に基づいて電圧変動係数C(V)を設定する(S216)。電圧変動係数C(V)は、パラメータ記憶エリア275に記憶されている電圧変動係数テーブル63に従って決定され、後述の印加エネルギーの設定の際に用いられる。
次に、各発熱素子に対して印加するパルス幅(通電時間)を、印加制御係数Cに所定値を代入することにより設定する(S217)。ここで印加制御係数Cに代入される値は、あらかじめ定められた固定値である。この固定値から、所定時間ごとに、後述の計算式により、環境温度、電圧、蓄熱の状況に応じた値を減算し、Cの値が0になるまで発熱体にエネルギーを印加する(通電する)。ここでは、例えば55400がCに代入される。
次に、印加制御係数Cが0未満となったか否かを判断する(S218)。Cが0以上であれば(S218:NO)、駆動パルスを印加して発熱体をONする(S219)。そして、250マイクロ秒経過したかを判断する(S220)。250マイクロ秒経過するまでは、駆動パルスの印加を継続する(S219)。250マイクロ秒経過したら(S220:YES)、駆動パルスの印加を継続すべきか否かを決定するために、印加制御係数Cの値を再計算して、今後印加すべきエネルギー量を決定する(S221)。この印加エネルギーの再評価は、C←C−C(V)×t×dの計算式により行われる。電圧変動係数C(V)は、電圧値が高くなるほど大きくなり、温度係数tは、環境温度が高くなるほど大きくなり、蓄熱係数dの値は、超過ドット数及び環境温度が高くなるほど大きくなる。従って、これらの要素を全て乗じることにより導き出される値は環境温度が高く、印字継続によるサーマルヘッド9の蓄熱が進んでいる場合に大きくなる。Cの値からこの乗算結果の値を減じて新たなCの値とすると、蓄熱が進んでいる場合にCの値がより小さくなる結果となる。すなわち、より早くCの値は0に近づくので、各発熱素子の通電時間が短くなり、印字潰れの発生を回避できることになる。
その後S218に戻り、S221の計算によるCの値が0未満になったか否かを再び判断する。Cが0未満となったら(S218:YES)、発熱体を所定時間OFFにして(S222)、ヘッドを冷却する。そして、次回の処理ルーチンに備えて前回のテープ種を現在のテープ種に置換する(S223)。先の例では、ラミネートテープがノンラミネートテープに置換される。そして、次回のルーチンでは前回テープ種がノンラミネートテープとして処理される。次に、印字を継続するか否かを判断し(S224)、継続する場合は(S224:YES)、S202に戻り、継続しない場合は(S224:NO)、処理を終了する。
以上説明したように、第3実施形態のテープ印字装置1によれば、前回のテープの種類を記憶しておき、今回のテープの種類が前回と異なる場合に総ドット数に補正値を加減して補正して蓄熱情報に反映させるるため、テープ種に対応する印字エネルギーの大小による蓄熱の大小を適切に反映して蓄熱制御を実行することができるので、テープの種類が交換された場合でも、印字品質を適切に保つことができる。
なお、第3実施形態において、図13のフローチャートのS208で印字ドット数を加算するCPU21が総ドット数計数手段として機能し、S209で流出量を減算するCPU21が調整手段として機能し、S221で印加エネルギー再評価処理を実行するCPU21がパルス幅設定手段として機能し、S211で総ドット数補正処理を実行するCPU21がパルス幅補正手段として機能する。
次に、テープ印字装置1の第4実施形態にかかるテープ印字動作について図14及び図15を参照して説明する。図14は、パラメータ記憶エリア275に記憶されたドット数補正定数テーブル67のデータ構成を示す模式図である。図15は、テープ印字装置1の第4実施形態にかかる蓄熱制御処理の流れを示すフローチャートである。第4実施形態では、第3実施形態と同様に総ドット数Dに所定数を加減することにより補正を行なうが、テープの種類が交換されたか否かを判断する手段に代えて、テープ種類ごとの補正定数を代入して計算することにより補正を行う。
図14に示すように、ドット数補正定数テーブル67は、ドット数パラメータテーブル61により求められた総量を基準値として、現在の総量ドット数のうち基準値を超える部分の超過ドット数671と、テープ種672に対応して定められるドット補正定数drの値が記憶されたものである。ドット補正定数drの値は、テープ種による所要エネルギーの違いに対応して、所要エネルギーが大きいテープ種類については大きな値、所要エネルギーが小さいテープ種類については小さな値となるように構成され、さらに超過ドット数が多くなる(蓄熱が進む)に従って、絶対値が大きくなるように構成されている。
図15に示すように、まず、電源が投入されてテープ印字装置1の処理が開始されると、前回補正定数dfに初期値を設定する(S301)。前回補正定数dfは、後述のS304にて検出されるテープ種に基づいて設定された前回の処理における補正定数が代入されるものであるが、S301においては、電源投入直後の初期処理であるから、初期値として、最も利用頻度の高いテープ種と考えられるラミネートテープの超過ドット数50000以下に対応する定数0がドット数補正定数テーブル67から読み出され、代入される。
次に、利用者からの指示に従い、印刷を開始する(S302)。なお、印刷の開始とともにタイマーのカウントが開始される(S303)。そして、テープ種検出センサからの信号により、テープ印字装置1に装着されているテープカセット35が有するテープの種類を検出する(S304)。
次に、S304で検出した現在装着されているテープ種に対応する補正定数をdgに代入する(S305)。例えば、ノンラミネートテープが検出された場合、まだ超過ドット数は50000以下であるから、ドット数補正定数テーブル67にしたがって、0が代入される。
次に、サーミスタ13から環境温度を取得する(S306)。そして、取得した環境温度に基づいて温度係数t、総量初期値(基準ドット数)、流出量を決定する(S307)。温度係数tは、環境温度のAD変換値に対して、例えば、t=a/温度AD値+b(a,bは固定値)のような式により算出されるものであり、後述の印字エネルギー決定の際に使用される。総量値および流出量は、パラメータ記憶エリア275に記憶されているドット数パラメータテーブル61に従って、環境温度に対応する値が代入される。この総量および流出量は、RAM27の総印字ドット数メモリ274に格納される。
次に、S307で決定した総量に今から印字する1ライン分のドット数を加算して総ドット数Dを算出する(S308)。1ライン分のドット数は、RAM27の1ライン印字ドット数メモリ273に格納されているので、この値を使用する。次に、S308で算出された総ドット数Dから、S307で決定した流出量に印字開始からの経過時間を乗じたものを減算してドット数を調整する(S309)。S308およびS309の処理により、ドット数Dは、S307で決定した総量値に今から印字する1ライン分のドット数を加算し、S307で決定した流出量に印字開始からの経過時間を乗じたものが減算されて算出されたことになる(総ドット数←総量+印字ドット数−流出量×経過時間)。このように、印字ドット数を逐次加算し、放熱量をドット数に換算して印字ドット数から減算するという調整を行うことで、サーマルヘッド9の温度の蓄積状況をドット数で表現することができる。
次に前回の補正定数dfと現在の補正定数dgに基づいてS309で調整した総ドット数Dを補正する(S311)。この補正は、D=D+df−dgの式により行われる。例えば、超過ドット数が50000〜99999の範囲内で、df=10000(ラミネートテープ)、dg=15000(レセプターテープ)であれば、補正後の総ドット数はS309で求められたDの値から5000少ない値となる。補正定数は、テープ種による所要エネルギーの違いに対応して、所要エネルギーが小さいテープ種類ほど小さい値となるように構成されている。従って、この例では、所要エネルギーが小さいテープ種であるラミネートテープから、所要エネルギーが大きいテープ種であるレセプターテープにテープ種類が交換されたので、蓄熱情報である総ドット数Dの値が少なくなり、蓄熱制御が過度に行われて印字かすれが発生しないようにできる。また、前回と今回の補正定数が同一であれば、補正定数df−dgは0となって総ドット数に対する補正は行われないので、前回のテープ種と今回のテープ種が同一か否かの判断を行わなくても、簡単な構成で総ドット数を補正することができる。
次に、S311で補正された現在のドット数Dと基準ドット数(S307で設定した総量初期値)の差分および環境温度に基づいて蓄熱係数dを設定する(S312)。蓄熱係数dは、パラメータ記憶エリア275に記憶されている蓄熱係数テーブル62に従って決定される。1回目の処理では、現在のドット数Dと基準ドット数の差は50000以下であるから、環境温度が何度であっても、蓄熱係数dは1となる。
次に、電圧を検出し(S315)、検出された電圧に基づいて電圧変動係数C(V)を設定する(S316)。電圧変動係数C(V)は、パラメータ記憶エリア275に記憶されている電圧変動係数テーブル63に従って決定され、後述の印字エネルギーの設定の際に用いられる。
次に、各発熱素子に対して印加するパルス幅(通電時間)を、印加制御係数Cに所定値を代入することにより設定する(S317)。ここで印加制御係数Cに代入される値は、あらかじめ定められた固定値である。この固定値から、所定時間ごとに、後述の計算式により、環境温度、電圧、蓄熱の状況に応じた値を減算し、Cの値が0になるまで発熱体にエネルギーを印加する(通電する)。ここでは、例えば55400がCに代入される。
次に、印加制御係数Cが0未満となったか否かを判断する(S318)。Cが0以上であれば(S318:NO)、駆動パルスを印加して発熱体をONする(S319)。そして、250マイクロ秒経過したかを判断する(S320)。250マイクロ秒経過するまでは(S320:NO)、駆動パルスの印加を継続する(S319)。250マイクロ秒経過したら(S320:YES)、駆動パルスの印加を継続すべきか否かを決定するために、印加制御係数Cの値を再計算して、今後印加すべきエネルギー量を決定する(S321)。この印加エネルギーの再評価は、C←C−C(V)×t×dの計算式により行われる。電圧変動係数C(V)は、電圧値が高くなるほど大きくなり、温度係数tは、環境温度が高くなるほど大きくなり、蓄熱係数dの値は、超過ドット数及び環境温度が高くなるほど大きくなる。従って、これらの要素を全て乗じることにより導き出される値は環境温度が高く、印字継続によるサーマルヘッド9の蓄熱が進んでいる場合に大きくなる。Cの値からこの乗算結果の値を減じて新たなCの値とすると、蓄熱が進んでいる場合にCの値がより小さくなる結果となる。すなわち、より早くCの値は0に近づくので、各発熱素子の通電時間が短くなり、印字潰れの発生を回避できることになる。
その後S318に戻り、S321の計算によるCの値が0未満になったか否かを再び判断する。Cが0未満となったら(S318:YES)、発熱体を所定時間OFFにして(S322)、ヘッドを冷却する。そして、次回の処理ルーチンに備えて現在のテープ種定数dgをdfに代入する(S323)。そして、印字を継続するか否かを判断し(S324)、継続する場合は(S324:YES)、S302に戻り、継続しない場合は(S324:NO)、処理を終了する。
以上説明したように、第4実施形態のテープ印字装置1によれば、テープ種に対応する定数を用いて蓄熱係数を補正するので、テープ種に対応する印字エネルギーの大小による蓄熱の大小を適切に反映して蓄熱制御を実行することができるので、テープの種類が交換された場合でも、印字品質を適切に保つことができる。
なお、第4実施形態において、図15のフローチャートのS308で印字ドット数を加算するCPU21が総ドット数計数手段として機能し、S309で流出量を減算するCPU21が調整手段として機能し、S321で印加エネルギー再評価処理を実行するCPU21がパルス幅設定手段として機能し、S311で総ドット数補正処理を実行するCPU21がパルス幅補正手段として機能する。
次に、テープ印字装置1の第5実施形態にかかるテープ印字動作について図8及び図16を参照して説明する。図16は、テープ印字装置1の第5実施形態にかかる蓄熱制御処理の流れを示すフローチャートである。第5実施形態では、総ドット数Dを補正するに代えて、発熱体への印加エネルギーを算出する際に使用される蓄熱係数dの値を補正する。
まず、電源が投入されてテープ印字装置1の処理が開始されると、前回のテープ種類に初期値を設定し、テープ種メモリ276に格納する(S401)。前回テープ種類には、後述のS404にて検出されるテープ種が各回のルーチンの最後に代入されるものであるが、S401においては、電源投入直後の初期処理であるから、初期値として、最も利用頻度の高いテープ種と考えられるラミネートテープが設定される。
次に、利用者からの指示に従い、印刷を開始する(S402)。なお、印刷の開始とともにタイマーのカウントが開始される(S403)。そして、テープ種検出センサからの信号により、テープ印字装置1に装着されているテープカセット35が有するテープの種類を検出し、テープ種メモリ276に格納する(S404)。
次に、サーミスタ13から環境温度を取得する(S406)。そして、取得した環境温度に基づいて温度係数t、総量初期値(基準ドット数)、流出量を決定する(S407)。温度係数tは、環境温度のAD変換値に対して、例えば、t=a/温度AD値+b(a,bは固定値)のような式により算出されるものであり、後述の印字エネルギー決定の際に使用される。総量値および流出量は、パラメータ記憶エリア275に記憶されているドット数パラメータテーブル61に従って、環境温度に対応する値が代入される。この総量および流出量は、RAM27の総印字ドット数メモリ274に格納される。
次に、S407で決定した総量に今から印字する1ライン分のドット数を加算して総ドット数Dを算出する(S408)。1ライン分のドット数は、RAM27の1ライン印字ドット数メモリ273に格納されているので、この値を使用する。次に、S408で算出された総ドット数Dから、S407で決定した流出量に印字開始からの経過時間を乗じたものを減算してドット数を調整する(S409)。S408およびS409の処理により、ドット数Dは、S407で決定した総量値に今から印字する1ライン分のドット数を加算し、S407で決定した流出量に印字開始からの経過時間を乗じたものが減算されて算出されたことになる(総ドット数←総量+印字ドット数−流出量×経過時間)。このように、印字ドット数を逐次加算し、放熱量をドット数に換算して印字ドット数から減算するという調整を行うことで、サーマルヘッド9の温度の蓄積状況をドット数で表現することができる。
次に、現在の総ドット数Dと基準ドット数の差分および環境温度から蓄熱係数dを設定する(S412)。蓄熱係数dは、パラメータ記憶エリア275に記憶されている蓄熱係数テーブル62に従って決定される。
次に、テープ種メモリ276に格納された前回のテープの種類と、今回検出されたテープの種類が同一か否かを判断する(S413)。前回と今回のテープの種類が同一であれば(S413:YES)、所要印字エネルギーも変化しないので、補正を行う必要はないから、そのままS415に進む。
前回と今回のテープの種類が異なる場合は(S413:NO)、補正係数テーブル64に従って、S412で求めた蓄熱係数dを補正する(S414)。この補正は、d=d×dcの式により行われる。例えば、前回のテープの種類がラミネートテープであり、今回のテープの種類がレセプターテープであれば、補正係数dcは0.9となり、補正後の蓄熱係数dはS412で求められたdの値の0.9倍となる。補正係数dcは、テープ種による所要エネルギーの違いに対応して、所要エネルギーが大きいテープ種類から所要エネルギーが小さいテープ種類に交換された場合には値が大きくなり、逆に、所要エネルギーが小さいテープ種類から所要エネルギーが大きいテープ種類に交換された場合には値が小さくなるように構成されている。従って、この例では、所要エネルギーが小さいテープ種であるラミネートテープから、所要エネルギーが大きいテープ種であるレセプターテープにテープ種類が交換されたので、後述の印加エネルギー算出に使用される蓄熱係数dの値を少なくして、蓄熱制御が過度に行われて印字かすれが発生しないようにできる。
次に、電圧を検出し(S415)、検出された電圧に基づいて電圧変動係数C(V)を設定する(S416)。電圧変動係数C(V)は、パラメータ記憶エリア275に記憶されている電圧変動係数テーブル63に従って決定され、後述の印字エネルギーの設定の際に用いられる。
次に、各発熱素子に対して印加するパルス幅(通電時間)を、印加制御係数Cに所定値を代入することにより設定する(S417)。ここで印加制御係数Cに代入される値は、あらかじめ定められた固定値である。この固定値から、所定時間ごとに、後述の計算式により、環境温度、電圧、蓄熱の状況に応じた値を減算し、Cの値が0になるまで発熱体にエネルギーを印加する(通電する)。ここでは、例えば55400がCに代入される。
次に、印加制御係数Cが0未満となったか否かを判断する(S418)。Cが0以上であれば(S418:NO)、駆動パルスを印加して発熱体をONする(S419)。そして、250マイクロ秒経過したかを判断する(S420)。250マイクロ秒経過するまでは(S420:NO)、駆動パルスの印加を継続する(S419)。250マイクロ秒経過したら(S420:YES)、駆動パルスの印加を継続すべきか否かを決定するために、印加制御係数Cの値を再計算して、今後印加すべきエネルギー量を決定する(S421)。この印加エネルギーの再評価は、C←C−C(V)×t×dの計算式により行われる。電圧変動係数C(V)は、電圧値が高くなるほど大きくなり、温度係数tは、環境温度が高くなるほど大きくなり、蓄熱係数dの値は、超過ドット数及び環境温度が高くなるほど大きくなる。従って、これらの要素を全て乗じることにより導き出される値は環境温度が高く、印字継続によるサーマルヘッド9の蓄熱が進んでいる場合に大きくなる。Cの値からこの乗算結果の値を減じて新たなCの値とすると、蓄熱が進んでいる場合にCの値がより小さくなる結果となる。すなわち、より早くCの値は0に近づくので、各発熱素子の通電時間が短くなり、印字潰れの発生を回避できることになる。
その後S418に戻り、S421の計算によるCの値が0未満になったか否かを再び判断する。Cが0未満となったら(S418:YES)、発熱体を所定時間OFFにして(S422)、ヘッドを冷却する。そして、次回の処理ルーチンに備えて前回のテープ種を現在のテープ種に置換する(S423)。そして、印字を継続するか否かを判断し(S424)、継続する場合は(S424:YES)、S402に戻り、継続しない場合は(S424:NO)、処理を終了する。
以上説明したように、第5実施形態のテープ印字装置1によれば、前回のテープの種類を記憶しておき、今回のテープの種類が前回と異なる場合に蓄熱係数を補正して蓄熱情報に反映させるため、テープ種に対応する印字エネルギーの大小による蓄熱の大小を適切に反映して蓄熱制御を実行することができるので、テープの種類が交換された場合でも、印字品質を適切に保つことができる。
なお、第5実施形態において、図16のフローチャートのS408で印字ドット数を加算するCPU21が総ドット数計数手段として機能し、S409で流出量を減算するCPU21が調整手段として機能し、S421で印加エネルギー再評価処理を実行するCPU21がパルス幅設定手段として機能し、S414で蓄熱係数補正処理を実行するCPU21がパルス幅補正手段として機能する。
次に、テープ印字装置1の第6実施形態にかかるテープ印字動作について図10及び図17を参照して説明する。図17は、テープ印字装置1の第6実施形態にかかる蓄熱制御処理の流れを示すフローチャートである。第6実施形態では、第5実施形態と同様に蓄熱係数dを補正するが、テープの種類が交換されたか否かを判断する手段に代えて、テープ種類ごとの補正定数を代入して計算することにより補正を行う。
図17に示すように、まず、電源が投入されてテープ印字装置1の処理が開始されると、前回テープ種定数dbに初期値を設定する(S501)。前回テープ種定数dbは、後述のS504にて検出されるテープ種に基づいて設定された前回の処理における定数が代入されるものであるが、S501においては、電源投入直後の初期処理であるから、初期値として、最も利用頻度の高いテープ種と考えられるラミネートテープに対応する定数1.0が代入される。
次に、利用者からの指示に従い、印刷を開始する(S502)。なお、印刷の開始とともにタイマーのカウントが開始される(S503)。そして、テープ種検出センサからの信号により、テープの種類を検出する(S504)。
次に、S504で検出した現在装着されているテープ種に対応する定数をdpに代入する(S505)。例えば、ノンラミネートテープが検出された場合には、テープ種定数テーブルにしたがって、0.9が代入される。
次に、サーミスタ13から環境温度を取得する(S506)。そして、取得した環境温度に基づいて温度係数t、総量初期値(基準ドット数)、流出量を決定する(S507)。温度係数tは、環境温度のAD変換値に対して、例えば、t=a/温度AD値+b(a,bは固定値)のような式により算出されるものであり、後述の印字エネルギー決定の際に使用される。総量値および流出量は、パラメータ記憶エリアに記憶されているドット数パラメータテーブルに従って、環境温度に対応する値が代入される。
次に、S507で決定した総量に今から印字する1ライン分のドット数を加算して総ドット数Dを算出する(S508)。次に、S508で算出された総ドット数Dから、S507で決定した流出量に印字開始からの経過時間を乗じたものを減算してドット数を調整する(S509)。S508およびS509の処理により、ドット数Dは、S507で決定した総量値に今から印字する1ライン分のドット数を加算し、S507で決定した流出量に印字開始からの経過時間を乗じたものが減算されて算出されたことになる(総ドット数←総量+印字ドット数−流出量×経過時間)。
次に、現在の総ドット数Dと基準ドット数の差分および環境温度から蓄熱係数dを設定する(S512)。蓄熱係数dは、パラメータ記憶エリアに記憶されている蓄熱係数テーブルに従って決定される。
次に、前回のテープ種を示すテープ種定数dbと現在のテープ種を示すテープ種定数dpに基づいて、S512で求めた蓄熱係数dを補正する(S514)。この補正は、d=d×dp/dbの式により行われる。例えば、d=1.0、db=1.0、dp=0.9であれば、補正後のdは0.9となる。
次に、電圧を検出し(S515)、検出された電圧に基づいて電圧変動係数C(V)を設定する(S516)。電圧変動係数C(V)は、パラメータ記憶エリアに記憶されている電圧変動係数テーブルに従って決定され、後述の印字エネルギーの設定の際に用いられる。
次に、各発熱素子に対して印加するパルス幅(通電時間)を、印加制御係数Cに所定値を代入することにより設定する(S517)。ここで印加制御係数Cに代入される値は、あらかじめ定められた固定値である。この固定値から、所定時間ごとに、後述の計算式により、環境温度、電圧、蓄熱の状況に応じた値を減算し、Cの値が0になるまで発熱体にエネルギーを印加する(通電する)。ここでは、例えば55400がCに代入される。
次に、印加制御係数Cが0未満となったか否かを判断する(S518)。Cが0以上であれば(S518:NO)、駆動パルスを印加して発熱体をONする(S519)。そして、250マイクロ秒経過したかを判断する(S520)。250マイクロ秒経過するまでは(S520:NO)、駆動パルスの印加を継続する(S519)。250マイクロ秒経過したら(S520:YES)、駆動パルスの印加を継続すべきか否かを決定するために、印加制御係数Cの値を再計算して、今後印加すべきエネルギー量を決定する(S521)。この印加エネルギーの再評価は、C←C−C(V)×t×dの計算式により行われる。電圧変動係数C(V)は、電圧値が高くなるほど大きくなり、温度係数tは、環境温度が高くなるほど大きくなり、蓄熱係数dの値は、超過ドット数及び環境温度が高くなるほど大きくなる。従って、これらの要素を全て乗じることにより導き出される値は環境温度が高く、印字継続によるサーマルヘッド9の蓄熱が進んでいる場合に大きくなる。Cの値からこの乗算結果の値を減じて新たなCの値とすると、蓄熱が進んでいる場合にCの値がより小さくなる結果となる。すなわち、より早くCの値は0に近づくので、各発熱素子の通電時間が短くなり、印字潰れの発生を回避できることになる。
その後S518に戻り、S521の計算によるCの値が0未満になったか否かを再び判断する。Cが0未満となったら(S518:YES)、発熱体を所定時間OFFにして(S522)、ヘッドを冷却する。そして、次回の処理ルーチンに備えて現在のテープ種定数dpをdbに代入する(S523)。そして、印字を継続するか否かを判断し(S524)、継続する場合は(S524:YES)、S502に戻り、継続しない場合は(S524:NO)、処理を終了する。
以上説明したように、第6実施形態のテープ印字装置1によれば、テープ種に対応する定数を用いて蓄熱係数を補正するので、テープ種に対応する印字エネルギーの大小による蓄熱の大小を適切に反映して蓄熱制御を実行することができるので、テープの種類が交換された場合でも、印字品質を適切に保つことができる。
なお、第6実施形態において、図17のフローチャートのS508で印字ドット数を加算するCPU21が総ドット数計数手段として機能し、S509で流出量を減算するCPU21が調整手段として機能し、S518で印加エネルギー再評価処理を実行するCPU21がパルス幅設定手段として機能し、S514で蓄熱係数補正処理を実行するCPU21がパルス幅補正手段として機能する。
次に、テープ印字装置1の第7実施形態にかかるテープ印字動作について図18を参照して説明する。図18は、テープ印字装置1の第7実施形態にかかる蓄熱制御処理の流れを示すフローチャートである。第7実施形態では、テープ種類が交換された場合に蓄熱情報である総ドット数Dをリセットすることにより、過制御による印字かすれを回避する。
まず、電源が投入されてテープ印字装置1の処理が開始されると、前回のテープ種類に初期値を設定し、テープ種メモリ276に格納する(S601)。前回テープ種類には、後述のS604にて検出されるテープ種が各回のルーチンの最後に代入されるものであるが、S601においては、電源投入直後の初期処理であるから、初期値として、最も利用頻度の高いテープ種と考えられるラミネートテープが設定される。
次に、利用者からの指示に従い、印刷を開始する(S602)。なお、印刷の開始とともにタイマーが開始される(S603)。そして、テープ種検出センサからの信号により、テープ印字装置1に装着されているテープカセット35が有するテープの種類を検出し、テープ種メモリ276に格納する(S604)。
次に、サーミスタ13から環境温度を取得する(S606)。そして、取得した環境温度に基づいて温度係数t、総量初期値(基準ドット数)、流出量を決定する(S607)。温度係数tは、環境温度のAD変換値に対して、例えば、t=a/温度AD値+b(a,bは固定値)のような式により算出されるものであり、後述の印字エネルギー決定の際に使用される。総量値および流出量は、パラメータ記憶エリア275に記憶されているドット数パラメータテーブル61に従って、環境温度に対応する値が代入される。この総量および流出量は、RAM27の総印字ドット数メモリ274に格納される。
次に、S607で決定した総量に今から印字する1ライン分のドット数を加算して総ドット数Dを算出する(S608)。1ライン分のドット数は、RAM27の1ライン印字ドット数メモリ273に格納されているので、この値を使用する。次に、S608で算出された総ドット数Dから、S607で決定した流出量に印字開始からの経過時間を乗じたものを減算してドット数を調整する(S609)。S608およびS609の処理により、総ドット数Dは、S607で決定した総量値に今から印字する1ライン分のドット数を加算し、S607で決定した流出量に印字開始からの経過時間を乗じたものが減算されて算出されたことになる(総ドット数←総量+印字ドット数−流出量×経過時間)。このように、印字ドット数を逐次加算し、放熱量をドット数に換算して印字ドット数から減算するという調整を行うことで、サーマルヘッド9の温度の蓄積状況をドット数で表現することができる。
次に、テープ種メモリ276に格納された前回のテープの種類と、今回検出されたテープの種類が同一か否かを判断する(S610)。前回と今回のテープの種類が同一であれば(S610:YES)、所要印字エネルギーも変化しないので、補正を行う必要はないから、そのままS612に進む。
前回と今回のテープの種類が異なる場合は(S610:NO)、S609で調整した総ドット数Dに0を代入してリセットする(S611)。この処理により、蓄熱情報である総ドット数Dがリセットされるため、蓄熱制御が過度に行われて印字かすれが発生しないようにできる。また、前回と今回のテープ種が同一であれば、補正は行われないので、余分な制御を行うことを省略できる。
次に、S611で補正された現在の総ドット数Dと基準ドット数(S607で設定した総量初期値)の差分および環境温度に基づいて蓄熱係数dを設定する(S612)。蓄熱係数dは、パラメータ記憶エリア275に記憶されている蓄熱係数テーブル62に従って決定される。現在の総ドット数DはS611で0にリセットされているので、超過ドット数も0であり、これは50000以下であるから、環境温度が何度であっても、蓄熱係数dは1となる。
次に、電圧を検出し(S615)、検出された電圧に基づいて電圧変動係数C(V)を設定する(S616)。電圧変動係数C(V)は、パラメータ記憶エリア275に記憶されている電圧変動係数テーブル63に従って決定され、後述の印字エネルギーの設定の際に用いられる。
次に、各発熱素子に対して印加するパルス幅(通電時間)を、印加制御係数Cに所定値を代入することにより設定する(S617)。ここで印加制御係数Cに代入される値は、あらかじめ定められた固定値である。この固定値から、所定時間ごとに、後述の計算式により、環境温度、電圧、蓄熱の状況に応じた値を減算し、Cの値が0になるまで発熱体にエネルギーを印加する(通電する)。ここでは、例えば55400がCに代入される。
次に、印加制御係数Cが0未満となったか否かを判断する(S618)。Cが0以上であれば(S618:NO)、駆動パルスを印加して発熱体をONする(S619)。そして、250マイクロ秒経過したかを判断する(S620)。250マイクロ秒経過するまでは(S620:NO)、駆動パルスの印加を継続する(S619)。250マイクロ秒経過したら(S620:YES)、駆動パルスの印加を継続すべきか否かを決定するために、印加制御係数Cの値を再計算して、今後印加すべきエネルギー量を決定する(S621)。印加エネルギーの再評価は、C←C−C(V)×t×dの計算式により行われる。電圧変動係数C(V)は、電圧値が高くなるほど大きくなり、温度係数tは、環境温度が高くなるほど大きくなり、蓄熱係数dの値は、超過ドット数及び環境温度が高くなるほど大きくなる。従って、これらの要素を全て乗じることにより導き出される値は環境温度が高く、印字継続によるサーマルヘッド9の蓄熱が進んでいる場合に大きくなる。Cの値からこの乗算結果の値を減じて新たなCの値とすると、蓄熱が進んでいる場合にCの値がより小さくなる結果となる。すなわち、より早くCの値は0に近づくので、各発熱素子の通電時間が短くなり、印字潰れの発生を回避できることになる。
Cが0未満となったら(S621:YES)、発熱体を所定時間OFFにしてその後S618に戻り、S621の計算によるCの値が0未満になったか否かを再び判断する。(S622)、ヘッドを冷却する。そして、次回の処理ルーチンに備えて前回のテープ種を現在のテープ種に置換する(S623)。そして、印字を継続するか否かを判断し(S624)、継続する場合は(S624:YES)、S602に戻り、継続しない場合は(S624:NO)、処理を終了する。
以上説明したように、第7実施形態のテープ印字装置1によれば、前回のテープの種類を記憶しておき、今回のテープの種類が前回と異なる場合に総ドット数を0にして蓄熱情報をリセットするため、それまで記憶された蓄熱情報により印加エネルギーが過小となるために、テープの交換後に適切な印字エネルギーとならない問題の発生を回避でき、印字品質を適切に保つことができる。
なお、第7実施形態において、図18のフローチャートのS608で印字ドット数を加算するCPU21が総ドット数計数手段として機能し、S609で流出量を減算するCPU21が調整手段として機能し、S618で印加エネルギー再評価処理を実行するCPU21がパルス幅設定手段として機能し、S611で総ドット数をリセットするCPU21がパルス幅補正手段として機能する。
なお、本発明は、上述の第1〜第7実施形態に記載の形態に限定されるものではなく、種々の変更が可能である。例えば、テープ印字装置1は、キーボード6を有し、キーボード6から入力されたテキストをテープに印字しているが、テープ印字装置1をパーソナルコンピュータなどの外部機器に接続し、印刷データを外部機器から受信して、これを印刷するようにしてもよい。
また、環境温度は、テープ印字装置1に設置したサーミスタ13で測定するものに限らず、テープ印字装置1周辺の温度を測定して、テープ印字装置1に送信するように構成してもよい。