JP2005277202A - 有機電界効果トランジスタ - Google Patents

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Abstract

【課題】 漏れ電流や移動度の経時的劣化を抑制し安定性を高めた有機電界効果トランジスタを提供する。
【解決手段】 有機半導体層4と有機半導体層4に接合したソース電極2及びドレイン電極3とを備えた有機電界効果トランジスタ1の、有機半導体層4とソース電極2及びドレイン電極3の少なくとも一方との接合面8,9に、オーミック接合面8A,9AとSchottky接合面8B,9Bと形成する。
【選択図】 図3

Description

本発明は、有機電界効果トランジスタに関するものである。
従来、電界効果トランジスタ(以下適宜「FET」と呼ぶ)等の電子デバイスは、半導体層としてシリコン(Si)やガリウム砒素単結晶などの無機半導体材料を用いたものが広く利用されてきた。しかし、無機半導体材料を用いた電子デバイスは、製造時に300℃以上の高温で処理する必要があり、このため、基板にプラスチック(樹脂)などを用いることが難しいので材料の選択範囲が小さく、また、製造に多くのエネルギーを要していた。さらに、蒸着、PVD(物理蒸着法)、CVD(化学蒸着法)などの真空下での素子作製プロセスを経るため、大面積の素子を製造するのが困難であり、また、製造ラインに高価な設備を必要とした。
これらの無機半導体材料に代わるものとして、近年、トランジスタをはじめとして発光ダイオード、非線形光デバイスなど電子デバイスの半導体層に有機半導体材料を使用した有機電子デバイスが提案されている。
有機半導体材料を電子デバイスの半導体層に用いるようにすれば、比較的低温のプロセスで電子デバイスを製造することができる。このため、基板にプラスチックフィルムを使用でき、軽量で柔軟性に優れた壊れにくい電子デバイスを作製できる利点がある。
また、有機半導体材料を用いた半導体層は、塗布法や印刷法によって形成できるので、大面積の電子デバイスを高価な設備を必要とせず低コストで製造できる利点もある。
さらに、有機半導体材料は、材料のバリエーションが豊富であり、分子構造を変化させて材料特性を根本的に変えることもできるので、無機半導体材料にはない機能を有する素子が得られる可能性がある。
このような有機半導体材料を用いた電子デバイスのひとつとして、有機FETがある。これは、FETの半導体層に有機半導体材料を用いたものであり、最近その研究開発が盛んになされている。例えば、特許文献1には、銅フタロシアニンで形成された有機半導体層と、金で形成された電極とを備えた有機FETが記載されている。
特開平11−251601号公報
ところで、有機半導体材料は酸化されやすい傾向があるため、これを特許文献1のように有機FETに用いた場合、安定性の面で課題がある。即ち、空気中の酸素が有機半導体材料で形成された半導体層(以下適宜、「有機半導体層」という)にドーピングされ、有機半導体層内のキャリア密度が上がってしまい、漏れ電流が多くなったり、移動度が経時的に変化して安定な特性が得られなくなったりするという課題がある。
このような安定性の課題に対しては、従来、有機半導体材料を変更することなどにより改良が試みられてきたが、いまだ十分な効果が得られていなかった。特に、少数キャリアに起因したキャリア密度の上昇に対しては、何ら改善が試みられていなかった。ここで、少数キャリアとは半導体層中の正孔及び電子のうち、密度が小さいほうのものを指す。
本発明は上記の課題に鑑みて創案されたもので、漏れ電流や移動度の経時的劣化を抑制し、安定性を高めた有機電界効果トランジスタを提供することを目的とする。
本発明の発明者は、上記の課題を解決するべく鋭意検討した結果、有機電界効果トランジスタの有機半導体層とソース電極及びドレイン電極の少なくとも一方との接合面に、オーミック接合面とSchottky接合面とを形成することにより、漏れ電流や移動度の経時的劣化を抑制することができることを見出し、本発明を完成させた。
即ち、本発明の要旨は、有機半導体層と、該有機半導体層に接合したソース電極及びドレイン電極とを備えた有機電界効果トランジスタであって、該有機半導体層と、該ソース電極及び該ドレイン電極の少なくとも一方との接合面が、オーミック接合面とSchottky接合面とを有することを特徴とする、有機電界効果トランジスタに存する(請求項1)。これにより、Schottky接合面から少数キャリアを有機半導体層の外部に取り除くことができ、漏れ電流や移動度の経時的劣化を抑制し、有機電界効果トランジスタの安定性を高めることができる。
このとき、該ソース電極及び該ドレイン電極の少なくとも一方が、該有機半導体層との接合面において(即ち、面して)、異なる材料からなる部位を有することにより、該オーミック接合面と該Schottky接合面とが形成されていることが好ましい(請求項2)。これにより、異なる材料からなる部位によってオーミック接合面とSchottky接合面とを形成することができるため、簡単な構成でオーミック接合面及びSchottky接合面を形成することができる。
また、該有機半導体層が、該ソース電極及び該ドレイン電極の少なくとも一方との接合面において(即ち、面して)、異なるドープ率で不純物がドープされた部位を有することにより、該オーミック接合面と該Schottky接合面とが形成されていても好ましい(請求項3)。これにより、異なるドープ率で不純物がドープされた部位によってオーミック接合面とSchottky接合面とを形成することができるため、簡単な構成でオーミック接合面及びSchottky接合面を形成することができる。
さらに、該有機半導体層が、該ソース電極及び該ドレイン電極の少なくとも一方との接合面において(即ち、面して)、異なる不純物がドープされた部位を有することにより、該オーミック接合面と該Schottky接合面とが形成されていても好ましい(請求項4)。これにより、異なる不純物がドープされた部位によってオーミック接合面とSchottky接合面とを形成することができるため、簡単な構成でオーミック接合面及びSchottky接合面を形成することができる。
本発明によれば、漏れ電流や移動度の経時的劣化を抑制し、有機電界効果トランジスタの安定性を高めることができる。
[I.概要]
本発明の有機電界効果トランジスタ(有機FET)は、有機半導体層と、有機半導体層に接合したソース電極及びドレイン電極とを備えた有機電界効果トランジスタであって、有機半導体層と、ソース電極及びドレイン電極の少なくとも一方との接合面が、オーミック接合面とSchottky接合面とを有することを特徴とする。オーミック接合面及びSchottky接合面は、有機半導体層と、ソース電極及び/又はドレイン電極(以下適宜、ソース電極とドレイン電極とを区別せずにいう場合、単に「電極」という)との間に形成される面であり、有機半導体層を形成する材料(以下適宜「有機半導体材料」という)のFermiエネルギーと、電極を形成する材料(以下適宜「電極材料」という)のFermiエネルギーとの関係により決定される。
具体的には、有機半導体がp型半導体である場合には、有機半導体材料のFermiエネルギーが電極材料のFermiエネルギーよりも高いときには有機半導体層と電極との接合面はオーミック接合面となり、逆に、有機半導体材料のFermiエネルギーが電極材料のFermiエネルギーよりも低いときには有機半導体層と電極との接合面はSchottky接合面となる。
有機半導体がn型半導体である場合には、上記のp型半導体の場合とは逆になる。即ち、有機半導体材料のFermiエネルギーが電極材料のFermiエネルギーよりも低いときには有機半導体層と電極との接合面はオーミック接合面となり、逆に、有機半導体材料のFermiエネルギーが電極材料のFermiエネルギーよりも高いときには有機半導体層と電極との接合面はSchottky接合面となる。
以上のように、有機半導体層と電極との接合面がオーミック接合面とSchottky接合面とのいずれになるかは、有機半導体層及び電極それぞれの材料のFermiエネルギーによる。よって、有機半導体層及び電極それぞれの材料を適切に選択することにより、オーミック接合面とSchottky接合面とを任意に形成することができる。
オーミック接合面とSchottky接合面とを形成する方法に特に制限は無く、これらの接合面は任意の方法により形成することができるが、例えば、次のような方法で形成することができる。
(1)有機半導体層を単一の有機半導体材料で形成し、電極のオーミック接合面に面する部位とSchottky接合面に面する部位とを異なるFermiエネルギーを有する電極材料で形成する。
(2)電極を単一の電極材料で形成し、有機半導体層のオーミック接合面に面する部位とSchottky接合面に面する部位とを異なるFermiエネルギーを有する有機半導体材料で形成する。
また、上記(2)の方法については、有機半導体材料のFermiエネルギーは、有機半導体材料中にドープされる不純物の濃度や種類によっても決定される。したがって、オーミック接合面に面する部位とSchottky接合面に面する部位とで有機半導体材料自体の種類を異なるものとするほか、前記の各部位間で不純物の濃度を変えたり、不純物の種類を変えたりすることによっても、本発明の構成を実現することができる。
さらに、上記(1)及び(2)を組み合わせて、有機半導体層及び電極の両方を、オーミック接合面に面する部位とSchottky接合面に面する部位とを異なるFermiエネルギーを有する材料で形成するようにしても、オーミック接合面及びSchottky接合面を形成することは可能である。
ここで、図面を用いて、本発明の構成により有機電解トランジスタの漏れ電流や移動度の経時的劣化を抑制することができる仕組みを説明する。
従来の有機FETにおいては、有機半導体層と電極との接合面は全面がオーミック接合面となっており、電極には金属や導電性高分子などが用いられてきた。これは、オーミック接合面は有機FETの多数キャリアをよく通すため、有機FETの移動度を高めることができるからである。なお、多数キャリアとは、半導体層中の正孔及び電子のうち密度が大きい方のものを指し、この多数キャリアがソース電極からドレイン電極へと流れることで有機FETに電流が流れるようになっている。
しかし、オーミック接合面は多数キャリアはよく通すものの、少数キャリア(即ち、多数キャリアが正孔であれば電子、多数キャリアが電子であれば正孔)は通しにくかった。このオーミック接合面の性質について、p型の有機FETを例として、図1を用いて説明する。図1は、オーミック接合面付近におけるキャリアのエネルギーを模式的に表わした電子状態図で、縦軸はエネルギーを表わし、横軸は電極から有機半導体層にかけての位置を表わす。なお、電子のエネルギーは縦軸の上に行くほど高くなり、逆に、正孔のエネルギーは縦軸の下に行くほど高くなるとする。
オーミック接合面においては、電極の方が有機半導体層よりも高いFermiエネルギーを有している。したがって、図1に示すように、p型有機FETの多数キャリアである正孔のエネルギーバンドは有機半導体層から電極に移る方がエネルギー的に有利となっており、有機半導体層中の多数キャリアは、トンネル伝導によって、オーミック接合面を通って電極へと自由に移動する。しかし、少数キャリアである電子は有機半導体層から電極に移動する際にエネルギー障壁を乗り越える必要があるため、有機半導体層中の少数キャリアがオーミック接合面を通って電極に自由に移動することは禁止される。即ち、オーミック接合面においては、整流作用により有機半導体層から電極への少数キャリアの移動が抑制されている。したがって、従来の有機FETにおいては、有機半導体中に少数キャリアがドープされると、その少数キャリアは有機半導体層から電極に放出さず、このため、有機半導体材料の酸化などの要因により有機半導体層中に少数キャリアがドープされた場合には、そのドープされた少数キャリアは有機半導体層中に蓄積される。その結果、有機半導体層中の少数キャリアが経時的に増加する。従来は、こうして有機半導体層中の少数キャリアが増加することで、漏れ電流や、移動度の経時的劣化が生じていた。
これに対して、Schottky接合面においては、キャリアのエネルギーは図2に示すようになっている。図2は、Schottky接合面付近におけるキャリアのエネルギーを模式的に表わした電子状態図で、図1と同様に、縦軸はエネルギーを表わし、横軸は電極から有機半導体層にかけての位置を表わす。なお、電子のエネルギーは縦軸の上に行くほど高くなり、逆に、正孔のエネルギーは縦軸の下に行くほど高くなるとする。
Schottky接合面においては、有機半導体層の方が電極よりも高いFermiエネルギーを有している。したがって、図2に示すように、p型有機FETの少数キャリアである電子のエネルギーバンドは有機半導体層から電極に移る方がエネルギー的に有利となっており、このため、Shottky接合面には少数キャリアの整流作用が無く、有機半導体層中の少数キャリアはトンネル伝導によりShottky接合面を通って電極へと自由に移動できる。このため、空気中の酸素がドーピングされることなどにより有機半導体層に少数キャリアがドープされた場合には、ドープされた少数キャリアはSchottky接合面を通って電極に移動し、電極から有機FET外部に放出される。その結果、有機半導体層における少数キャリアの蓄積が抑制されるため、本発明の有機FETは、漏れ電流や、移動度の経時的劣化を抑制することができる。
ただし、Schottky接合面においては、多数キャリアである正孔は、有機半導体層から電極に移動する際にエネルギー障壁を乗り越える必要があり、このため有機半導体層中の多数キャリアはSchottky接合面を通って電極へ移動できない。しかし、多数キャリアは、上記のオーミック接合面から電極に移動することができるため、有機FETの移動度は十分に確保される。
また、上記の例ではp型の有機半導体材料を用いた場合を説明したが、n型の有機半導体層を用いた場合もその作用効果は同様であり、多数キャリアが電子となり、少数キャリアが正孔となり、オーミック接合面及びSchottky接合面の電子状態図(図1,2)における有機半導体層のエネルギーバンドの曲がり方が逆になる他は、その仕組みも同様である。
以上のようにして、本発明の有機FETは、有機電解効果トランジスタの漏れ電流や移動度の経時的劣化を抑制することができる。なお、各電極材料や有機半導体材料のFermiエネルギーの値は公知の文献に記載のものを用いてもよいが、光電子分光法により測定するようにしてもよい。
[II.実施形態]
以下、有機FETの一例として横型FETを挙げ、実施形態を示して本発明について更に詳細に説明する。ただし、本発明は以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において任意に変形して実施することができる。
図3は本発明の一実施形態としての横型FET1の要部を示す断面図である。
横型FET1は、ソース電極2及びドレイン電極3と、ソース電極2とドレイン電極3との間の電流の流路(チャネル)を形成する有機半導体層4と、入力電圧を印加するためのゲート電極5とを備えている。この構成により、横型FET1は、ゲート電極5から印加する入力電圧によってソース電極2及びドレイン電極3の間を流れる電流を制御するようになっている。なお、図3においては、ソース電極2、ドレイン電極3及びゲート電極5それぞれに接続される配線は図示を省略する。
ソース電極2、ドレイン電極3、ゲート電極5及び有機半導体層4は、通常、基板6上に設けられる。さらに、ソース電極2とドレイン電極3との間を流れる電流は、ゲート電極5には基本的に流れないように構成される。このため、横型FET1には普通、ゲート電極5と、ソース電極2、ドレイン電極3及び有機半導体層4との間で電流が流れることを防止するために絶縁体層7が設けられる。本実施形態においても、横型FET1は基板6及び絶縁体層7を備えるとする。
さらに、本発明においては、上述したように、ソース電極2と有機半導体層4との接合面8、及び、ドレイン電極3と有機半導体層4との接合面9の少なくとも一方に、オーミック接合面とSchottky接合面とをともに形成するようにする。オーミック接合面及びSchottky接合面は接合面8,9のいずれに形成してもよいが、効率よく少数キャリアを有機半導体層4から放出する観点から、接合面8,9の両方に、オーミック接合面とSchottky接合面とを形成することが好ましい。本実施形態においても、接合面8,9の両方に、オーミック接合面とSchottky接合面とが形成されているとする。なお、図3において、接合面8のオーミック接合面は符号8Aで表わし、Schottky面は符号8Bで表わす。また、接合面9のオーミック接合面は符号9Aで表わし、Schottky接合面は符号9Bで表わす。
[1.ソース電極,ドレイン電極]
(構成)
横型FET1において、ソース電極2は配線(図示略)を通じて外部から電流が流入する電極であり、ドレイン電極3は配線(図示略)を通じて外部に電流を送る電極である。そして、多数キャリアがチャネルを通ってソース電極2からドレイン電極3に流れることにより、ソース電極2とドレイン電極3との間に電流が流れるようになっている。
本実施形態では、有機半導体層4とソース電極2との接合面8、及び、有機半導体層4とドレイン電極3との接合面9の両方に、オーミック接合面8A,9AとSchottky接合面8B,9Bとが形成されている。
オーミック接合面8A,9A及びSchottky接合面8B,9Bの形成方法は任意であるが、本実施形態では、上記(1)として説明したように、電極2,3それぞれが、有機半導体層4との接合面8,9に面するように、異なる電極材料からなる部位を有することにより、オーミック接合面8A,9A及びSchottky接合面8B,9Bが形成されているとして説明する。この場合、電極2,3の、オーミック接合面8A,9Aに面する部位をそれぞれオーミック部位2A,3Aと呼び、Schottky接合面8B,9Bに面する部位をそれぞれSchottky部位2B,3Bと呼ぶ。なお、オーミック部位2A,3A及びSchottky部位2B,3Bはそれぞれオーミック接合面8A,9A及びSchottky接合面8B,9Bに面する部分にさえ形成されていればその厚みは任意であるが、本実施形態では、電極2,3の厚み方向全体にそれぞれ形成されているものとする。
異なる電極材料を用いてオーミック接合面8A,9A及びSchottky接合面8B,9Bを形成するには、有機半導体層4の有機半導体材料と、電極2,3のオーミック部位2A,3A及びSchottky部位2B,3Bの電極材料とについて、ぞれぞれのFermiエネルギーを比較し、適切な組み合わせを選択する。
具体的には、有機半導体材料がp型である場合、オーミック部位2A,3Aの電極材料は接合する有機半導体層4の有機半導体材料よりも低いFermiエネルギーを有し、Schottky部位2B,3Bの電極材料は接合する有機半導体層4の有機半導体材料よりも高いFermiエネルギーを有するように選択する。これは、すなわち、オーミック部位2A,3Aの電極材料は、有機半導体層4の有機半導体材料よりも大きな仕事関数を有する、ということと同値である。例えば、有機半導体層4が接合面8,9に面する部分の有機半導体材料としてベンゾポルフィリンを用いて形成されていた場合、オーミック部位2A,3Aの電極材料にはAuを、Schottky部位2B,3BにはAlを用いることができる。
一方、有機半導体材料がn型である場合、オーミック部位2A,3Aの電極材料は接合する有機半導体層4の有機半導体材料よりも高いFermiエネルギーを有し、Schottky部位2B,3Bの電極材料は接合する有機半導体層4の有機半導体材料よりも低いFermiエネルギーを有するように選択する。
ただし、Schottky接合面8B,9Bにおいては、有機半導体材料のFermiエネルギーと電極材料のFermiエネルギーとの差が通常0.1eV以上、好ましくは1eV以上が望ましい。有機半導体材料のFermiエネルギーと電極材料のFermiエネルギーとの差が大きいほど、有機半導体層4中の少数キャリアを放出しやすい。
また、オーミック接合面8A,9A及びSchottky接合面8B,9Bの形成パターンは任意であり、接合面8,9のどの位置にどのような形状で形成するかなど、その用途に応じて選択することができる。例えば、図4(a)に示すような市松状に形成してもよいし、図4(b)に示すような縞状に形成してもよし、図4(c)に示すように網目状に形成してもよい。なお、図4は、説明のために接合面8,9についてオーミック接合面8A,9A及びSchottky接合面8B,9Bを色分けして示す図である。
ただし、通常は、チャネルと電極2,3との間で多数キャリアの移動を行なう部分については、オーミック接合面8A,9Aを形成することが好ましい。横型FET1では、チャネルを多数キャリアが流れることがオン電流の主原因となっている。したがって、多数キャリアの移動に対しては、接合面8,9のなかでも、有機半導体層4のチャネルが形成される部分と接合する領域においては、接合面8,9はオーミック接合面8A,9Aとして形成されていることが好ましい。
さらに、オーミック接合面8A,9A及びSchottky接合面8B,9Bの面積比率も任意である。一般に、Schottky接合面の面積比率が増加するに従い、少数キャリア蓄積抑制効果が増し、漏れ電流抑制や移動度の経時劣化抑制の効果が増す。しかし、Schottky接合面の面積比率が増加しすぎると、ソース電極2とドレイン電極3との間を流れる電流(FETの場合は、オン電流)の大きさが低下する。したがって、オーミック接合面8A,9AとSchottky接合面8B,9Bとの面積比率(オーミック接合面8A,9Aの面積/Schottky接合面8B,9Bの面積)は、上記の傾向を考慮して設定することが望ましい。
また、電極2,3の電極材料としては、金属、合金、導電性高分子などの導電性材料を用いることができ、これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。なお、電極2,3にオーミック部位2A,3A及びSchottky部位2B,3Bを形成する場合には、上述したように、有機半導体層4及び電極2,3それぞれの材料のFermiエネルギーに基づいて複数の電極材料を用いるが、形成しない場合には、電極2,3を単一の素材で形成することもできる。
具体例を挙げると、白金、金、アルミニウム、クロム、ニッケル、銅、チタン、マグネシウム、カルシウム、バリウム、ナトリウム等の金属やこれらの合金の他、ポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリアセチレン等の導電性高分子、並びに、これに塩酸、硫酸、スルホン酸等の酸、PF6、AsF5、FeCl3等のルイス酸、ヨウ素等のハロゲン原子、ナトリウム、カリウム等の金属原子などのドーパントを混合したもの、カーボンブラックや金属粒子を分散した導電性の複合材料等の導電性を有する材料が挙げられる。
また、電極2,3自体の形状も任意である。通常は、電極材料を島状に形成した島状構造薄膜に成形して用いる。
さらに、電極2,3の厚さは任意であるが、通常1nm以上、好ましくは10nm以上、また、通常100nm以下、好ましくは50nm以下である。
(製法)
電極2,3を形成する方法は任意であるが、通常は、電極材料を成膜することにより、電極2,3を形成する。成膜にあたっては公知の各種方法を任意に用いることができ、例えば、真空蒸着法、スパッタ法、塗布法、印刷法、ゾルゲル法等を用いることができる。
さらに、成膜により電極2,3を形成する場合、所望の形状になるよう、必要に応じてパターニングを行なうことが望ましい。パターニングの方法も任意であり、例えば、フォトレジストのパターニングとエッチング(エッチング液によるウエットエッチングや反応性のプラズマによるドライエッチング等)とを組み合わせたフォトリソグラフィー法;インクジェット印刷、スクリーン印刷、オフセット印刷、凸版印刷等の印刷法;マイクロコンタクトプリンティング法等のソフトリソグラフィーの手法などが挙げられる。また、これらの手法を複数組み合わせて用いてもよい。さらに、レーザーや電子線等のエネルギー線を照射して不要部分の電極材料を除去したり、電極材料の導電性を変化させたりすることにより、直接パターンを作製しても良い。
[2.半導体層]
(構成)
横型FET1において、有機半導体層4はソース電極2とドレイン電極3との間の多数キャリアが流れるチャネルを構成する部分である。本実施形態では、有機半導体層4は、単一の有機半導体材料が膜状に形成された層である。
有機半導体層4を形成する有機半導体材料に制限は無く、本発明の要旨の範囲内で公知の有機半導体材料を任意に用いることができる。
例を挙げると、ナフタセン、ペンタンセン、ピレン、フラーレン等の縮合芳香族炭化水素;α−セキシチオフェン等のオリゴマー類;フタロシアニンやポルフィリン等の大環状化合物;α−セキシチオフェン、ジアルキルセキシチオフェンに代表されるチオフェン環を4個以上含むオリゴチオフェン類;チオフェン環、ベンゼン環、フルオレン環、ナフタレン環、アントラセン環、チアゾール環、チアジアゾール環、ベンゾチアゾール環を合計4個以上連結したもの;アントラジチオフェン、ジベンゾチエノビスチオフェン、α,α′−ビス(ジチエノ[3,2−b′:2′,3′−d]チオフェン)等の縮合チオフェン及びその誘導体;ナフタレンテトラカルボン酸無水物、ナフタレンテトラカルボン酸ジイミド、ペリレンテトラカルボン酸無水物、ペリレンテトラカルボン酸ジイミド等の芳香族カルボン酸無水物やそのイミド化物;銅フタロシアニン、パーフルオロ銅フタロシアニン、テトラベンゾポルフィリン及びその金属塩等の大環状化合物;ポリチオフェン、ポリフルオレン、ポリチエニレンビニレン、ポリフェニレンビニレン、ポリフェニレン、ポリアセチレン、ポリピロール、ポリアニリンなどが挙げられる。これらの中でも特に、レジオレギュラーポリチオフェンのような自己組織化を示すものや、ポリフルオレンやその共重合体に代表される液晶性を示す高分子などが好ましい。
また、有機半導体材料の中でも、ペンタセン、ポルフィリン骨格を持つ化合物(ポルフィリン類化合物)なども好ましく、ポルフィリン骨格を有する化合物がより好ましい。有機FETである横型FET1の動作特性は、有機半導体層4のキャリア移動度μ及び電導度σ、絶縁層7の静電容量Ci、横型FET1の構成(ソース・ドレイン電極間距離L及び幅W、絶縁層7の膜厚D等)などにより決まるが、ポルフィリン骨格を有する化合物を用いた有機FET1は、キャリア移動度μやオンオフ比が大きくなり好ましい。ポルフィリン骨格を有する化合物として、特に好ましいものとしては、下記一般式1又は一般式2で表される構造を有するものが挙げられる。
Figure 2005277202
Figure 2005277202
上記一般式1及び一般式2中、Zia及びZib(iは1以上4以下の整数)はそれぞれ独立に、水素原子、水酸基、ハロゲン原子、アミノ基、ニトロ基又は1価の有機基を表す。
ia及びZibとなり得る1価の有機基の例としては、アルキル基、アルコキシ基、メルカプト基(アルキルチオ基)、アシル基、カルボキシル基と炭素数1〜10のアルコールとのエステル、ホルミル基、カルバモイル基などが挙げられる。また、Zia及びZibが1価の有機基である場合、その炭素数は通常1以上、また、通常10以下である。さらに、これらの有機基は置換基を有していてもよい。
また、Zia及びZibがアミノ基またはニトロ基である場合には、そのアミノ基又はニトロ基はアルキル基で置換されていても良い。さらに、アミノ基又はニトロ基に置換するアルキル基の炭素数は通常1以上10以下である。
さらに、Zia及びZibがハロゲン原子である場合、その具体例としては、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素などが挙げられる。
また、ZiaとZibとは結合して環を形成していてもよい。この場合に形成される環の例としては、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環等の芳香環;ピリジン環、キノリン環、フラン環、チオフェン環等の複素環;シクロヘキセン等の非芳香族環などが挙げられる。
さらに、上記一般式1及び一般式2中、R1〜R4はそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子又は1価の有機基を表す。この有機基としては、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、メルカプト基、カルボキシル基と炭素数1〜10のアルコールとのエステルなどが挙げられる。さらに、これらの有機基は置換基を有していても良い。また、R1〜R4がハロゲン原子である場合、具体例としてはフッ素、塩素、臭素、ヨウ素などが挙げられる。
以下に、ポルフィリン類化合物の例を挙げる。ただし、ここでは無金属体の構造を例示しているが、以下の例に対応する金属塩や、置換基を有する分子であっても同様に好ましい有機半導体材料として使用することができる。また、対称性の良い分子構造を主に例示しているが、部分的な構造の組み合わせによる非対称構造であっても使用できる。また、ポルフィリン類化合物はこれらの例示化合物に限定されるわけではない。なお、以下の記載において、Meはメチル基を表わし、Etはエチル基を表わす。
Figure 2005277202
Figure 2005277202
また、有機半導体材料は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
さらに、有機半導体層4には、有機半導体材料の他、特性を改善したり他の特性を付与したりするために、各種添加剤を混合してもよい。添加剤の例としては、酸化防止剤などが挙げられる。
また、有機半導体層4の形状も任意である。本実施形態では、基板6の上面全面を覆うように形成した有機半導体膜として形成しているとする。
さらに、有機半導体層4は本実施形態のように単一の層から形成されていてもよく、2層以上の層から形成されていてもよい。
有機半導体層4の膜厚は任意であるが、通常は、必要な機能を果たせる範囲で薄いほど好ましい。例えば本実施形態の横型FET1のように、ソース電極2とドレイン電極3とがほぼ有機半導体層4の膜面と平行に配置されている場合においては、所定以上の膜厚があれば横型FETの特性は膜厚に依存しない一方、膜厚が厚くなると漏れ電流が増加してくる虞が大きくなるためである。有機半導体層4の膜厚の具体的な範囲を挙げると、通常1nm以上、好ましくは5nm以上、より好ましくは10nm以上であり、また、通常10μm以下、好ましくは1μm以下、より好ましくは500nm以下である。
さらに、有機半導体層4を形成する有機半導体材料のオンオフ比は任意であるが、通常は高いほど望ましい。有機半導体材料のオンオフ比は、通常800以上、好ましくは1000以上である。
なお、オンオフ比の測定方法に制限は無いが、例えば、以下の方法により測定することができる。p型半導体の場合、ドレイン電圧(即ち、ソース電極に対するドレイン電極の電位)VDを−30Vに固定し、ゲート電圧VGを−50V,+30Vにした時のドレイン電流(即ち、ソース電極−ドレイン電極間に流れる電流)ID(−50V),ID(+30V)をそれぞれ測定して、この際のID(−50V)/ID(+30V)によってオンオフ比を定義する。一方、n型半導体の場合、ドレイン電圧VDを−30Vに固定し、ゲート電圧VGを+50V,−30Vにした時のドレイン電流ID(+50V),ID(−30V)をそれぞれ測定して、この際のID(+50V)/ID(−30V)によってオンオフ比を定義する。
(製法)
有機半導体層4を形成する方法について制限は無く、公知の方法を任意に用いることができるが、例えば、スパッタリング法、真空蒸着法等の真空プロセスでの形成方法、塗布法、印刷法等の溶液プロセスでの形成方法などが挙げられる。なお、これらの有機半導体層4を形成する方法は、1種を単独で行なってもよく、2種以上の方法を適宜組み合わせて行なってもよい。
(真空プロセス)
以下、有機半導体材料を真空プロセスによって成膜し、有機半導体層4を得る方法について詳しく説明する。真空プロセスによる成膜では、真空又は減圧環境下、有機半導体材料を基板6に付着させることにより成膜を行なう。
例えば真空蒸着法では、有機半導体材料を真空中で加熱し、蒸発させ、蒸発した有機半導体材料を基板6に付着させることにより有機半導体層4を得る。
真空蒸着法では、圧力条件は通常1×10-3Torr(1.3×10-1Pa)以下、好ましくは1×10-6Torr(1.3×10-4Pa)以下とする。
また、基板6の温度によって有機半導体層4、ひいては横型FET1の特性が変化するので、基板6の温度を最適な基板温度にする。具体的には、通常0℃、好ましくは10℃以上、また、通常200℃以下、好ましくは50℃以下とする。
さらに、蒸着速度は任意であるが、通常0.001nm/s以上、好ましくは0.01nm/s以上、また、通常10nm/s以下、好ましくは1nm/s以下である。
また、例えばスパッタリング法によって有機半導体層4を得るようにしてもよい。スパッタリング法では、有機半導体材料を、加熱により蒸発させる代わりに、加速したアルゴン等のイオンを有機半導体材料ターゲットに衝突させて有機半導体材料原子を叩きだし、基板6に付着させる以外は真空蒸着法と同様にして、有機半導体層4を得る。
一般に、比較的低分子量の有機半導体材料を用いる場合に、このような真空プロセスが用いて好適である。また、真空プロセスには、高価な設備が必要であるものの、有機半導体層4を形成する際の成膜性が良く、均一な膜が得られやすいという利点がある。
(溶液プロセス)
次に、有機半導体材料を溶液プロセスによって成膜し、有機半導体層4を得る方法について詳しく説明する。
溶液プロセスによる成膜では、有機半導体材料を溶媒に溶かして溶液とし、その溶液を基板6上に塗布して有機半導体層4を得る。
有機半導体材料を溶解させる溶媒に制限は無く、有機半導体材料の種類などに応じて任意の溶媒を用いることができる。
また、塗布の方法についても制限はなく、例えば、溶液をたらすだけのキャスティング、スピンコーティング、ディップティング、ブレードコーティング、ワイヤバーコーティング、スプレーコーティング等のコーティング法(塗布法)や、インクジェット印刷、スクリーン印刷、オフセット印刷、凸版印刷等の印刷法や、マイクロコンタクトプリンティング法等のソフトリソグラフィーの手法などが挙げられる。また、これらの手法は適宜2種以上組み合わせて用いてもよい。
さらに、塗布に類似の技術として、水面上に形成した有機半導体材料の単分子膜を基板6に移し積層するLangmuir−Blodgett法、液晶や融液状態の有機半導体材料を2枚の基板6で挟んだり毛管現象で基板6間に導入したりする方法なども挙げられる。
このような溶液プロセスを用いると、比較的安価な設備で、大面積の有機半導体層4を作製しやすいという利点がある。
また、有機半導体材料の中でも、ポルフィリン類化合物などは、溶液プロセスにより有機半導体層4を形成する場合、有機半導体材料自体を溶媒に溶解した溶液を基板6に塗布するほかに、有機半導体材料の前駆体を溶媒に溶解して前駆体溶液を調製し、この前駆体溶液を基板6に塗布し、基板6上で前駆体の化学構造を変化させて最終的な有機半導体材料とし、有機半導体層4を形成する方法をとることもできる。この方法は、特に溶媒に難溶な有機半導体材料を溶液プロセスにより膜形成して有機半導体層4を作製する際に有用である。
前駆体としては、例えば、次に示すビシクロ構造を有するもの挙げられる。なお、下記ビシクロ構造及びそれが変化したベンゼン環の2本の結合手は、ポルフィリンなどに連結するための結合手である。
Figure 2005277202
このビシクロ構造は、加熱によりエチレン分子が解離して、ベンゼン環に変化する。
Figure 2005277202
ビシクロ構造は立体的にかさ高いため、結晶性が低い。そのため、ビシクロ構造を有する分子は溶解性が良好であり、その溶液を塗布した際に、結晶性が低い、又は無定形な塗布膜が得られやすい。また、ビシクロ構造は、加熱工程を経ることによりベンゼン環に変化すると平面性の良好な分子構造になるために、結晶性が良好になる。したがって、ビシクロ構造を有する前駆体からの化学変化を利用することにより、溶媒への溶解性が低い有機半導体材料を用いて有機半導体層4を溶液プロセスで作製する場合でも、結晶性の良好な有機半導体層4を塗布により得ることができる。なお、この加熱工程は、塗布溶媒を留去するなどの他の目的を兼ねていても良い。
具体例を挙げると、ポルフィリン類化合物の中では、ベンゾポルフィリン類と呼ばれるピロール環、チオフェン環、フラン環にベンゼン環が縮合している化合物は、ビシクロ構造を有する前駆体を用いて得ることができるので、上記の方法を用いて塗布により有機半導体層4を形成するのに有利である。
また、溶液プロセスでは、塗布工程と乾燥工程とを必要なだけ繰り返して有機半導体層4の厚さを大きくし、有機半導体層4を厚膜にすることができる。さらに、前駆体を用いて有機半導体層4を形成する場合には、前駆体溶液の塗布工程と、化学構造変化工程とを繰り返せば、前駆体と有機半導体材料との溶解性が異なることを利用して有機半導体層4が前駆体溶液に溶解しないようにしながら積層し、厚膜を形成することができる。
一般に、溶液プロセスによると、成膜性が高くならず、結晶性の高い有機半導体膜が得られにくいとされている。しかし、上記前駆体を用いる方法によれば、簡便な溶液プロセスで結晶性の高い特性の良い有機半導体膜が得られ、好ましい。このようにして形成された有機半導体層4は、キャリア移動度が高く、且つ、オンオフ比が高いという好ましい特性を有する。なお、上記前駆体を用いる方法は、ポルフィリン類化合物に限らず、広く有機半導体材料一般に適用しうる優れた方法である。
有機半導体層4には、微量の元素や原子団、分子、高分子などの不純物を含有させてもよい。このように有機半導体層4に不純物を含有させることをドーピングといい、これにより有機半導体層4の特性を変化させ好ましいものにすることができる。
不純物には、形成しようとする有機半導体層4の特性などに応じて公知のものを任意に用いることができる。具体例を挙げると、酸素、水素、塩酸、硫酸、スルホン酸等の酸、PF6、AsF5、FeCl3等のルイス酸、ヨウ素等のハロゲン原子、ナトリウム、カリウム等の金属原子などが挙げられる。
ドーピングを行なう方法も任意であるが、例えば、有機半導体層4を不純物のガスに接触させたり、不純物の溶液に浸したり、電気化学的な処理をすることにより行なうことができる。また、ドーピングは有機半導体層4の形成後でなくても、有機半導体層4形成前の有機半導体材料合成時に不純物を混合することなどにより行なうことができる。また、溶液プロセスにより有機半導体層4を形成する場合は、有機半導体材料や前駆体の溶液に不純物を混合したり、前駆体膜の段階で不純物のガスや溶液を用いることにより、ドーピングを行なうことが可能である。また、真空プロセスにより有機半導体層4を形成する場合は、蒸着時に不純物を共蒸着したり、真空プロセスの雰囲気に不純物を混合したり、さらには不純物のイオンを真空中で加速して有機半導体層4に衝突させたりすることでドーピングを行なうことも可能である。
ドーピングの効果としては、多数キャリア密度の増加あるいは減少による電気伝導度の変化、多数キャリアの極性(p型またはn型)の変化、Fermi準位の変化等が挙げられる。
このように作製された有機半導体層4は、後処理により、さらに特性を改良することが可能である。例えば、加熱処理により、成膜時に生じた有機半導体層4中の歪みを緩和することができ、特性の向上を図ることができる。また、酸素や水素等の酸化性あるいは還元性の気体や液体にさらすことにより、酸化あるいは還元による特性変化を誘起することもできる。これは、例えば、有機半導体層4中のキャリア密度の増加、あるいは減少の目的に利用される。
[3.基板]
一般に、有機FETなどの有機電子デバイスは、基板6上に必要な層や電極を設けることで作製される。本実施形態の横型FET1も基板6を備えている。
基板6を形成する材料について特に制限は無く、任意の材料によって形成することができる。具体例を挙げると、Si、SiO2、金属などの無機材料、合成樹脂などの有機材料、及び、無機材料と有機材料との複合材などを用いることができる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。例えば、無機材料の基板の表面を合成樹脂などの絶縁体によりコーティングすることで表面に絶縁性を持たせたものを用いてもよい。
また、基板6の形状も任意であり、例えば板状、フィルム状など、様々な形状のものを用いることができる。ただし、フレキシブルであるという点から、基板6としては樹脂フィルムが好ましい。
さらに、基板6の寸法についても制限は無く、その用途に応じて任意に設計することができる。
また、横型FET1などの有機FETにおいては、半導体として有機半導体材料を用いるため、比較的低温のプロセスでの製造が可能になる。そのため、基板6にプラスチックフィルムなどを使用することができ、軽量で柔軟性に優れた壊れにくい電子デバイスを作製できる利点を有する。したがって、従来の無機半導体を用いたFETよりも薄く可撓性のあるFETの製造が可能になるので、これを各セルのスイッチング素子に利用することで、可撓性のあるアクティブマトリクス液晶ディスプレーが作製できるなど、広い応用が期待できる。
また、基板6は、複数の層からなっていても良い。複数の層からなる場合、各層は同一の材料から形成されていてもよく、互いに異なる材料で形成されていてもよい。
さらに、基板6に所定の表面処理を行なうことで、横型FET1などの有機FETの特性を向上できる場合がある。例えば、基板6表面の親水性、疎水性の度合いを調整することでその上に成膜される膜(ソース電極2、ドレイン電極3、ゲート電極5、有機半導体層4など。本実施形態では、有機半導体層4)の膜質を改良しうる。特に、有機半導体材料は、分子の配向など層の状態によって特性を大きく変えるが、基板6の表面処理によって、基板6と有機半導体層4との界面部分における分子配向が制御され、特性が改善される。
このような表面処理としては、例えば、ヘキサメチルジシラザン、シクロヘキセン、オクタデシルトリクロロシラン等による疎水化処理、塩酸や硫酸、酢酸等による酸処理、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、アンモニア等によるアルカリ処理、オゾン処理、フッ素化処理、酸素やアルゴン等のプラズマ処理、Langmuir−Blodgett膜の形成処理、その他の絶縁体や半導体の薄膜の形成処理、機械的処理、コロナ放電などの電気的処理、などが挙げられる。
[4.ゲート電極]
ゲート電極5は、有機半導体層4にゲート電圧を印加するもので、このゲート電極5から印加されるゲート電圧により横型FET1のオン、オフが制御される。
ゲート電極5の材料、寸法、形成方法については任意であり、その詳細は、上述したソース電極2及びドレイン電極3と同様にして形成することができる。
[5.絶縁体層]
ゲート電極5と、ソース電極2、ドレイン電極3及び有機半導体層4との間には、通常、絶縁体層7やエネルギー障壁を設け、ゲート電極5からソース電極2、ドレイン電極3及び有機半導体層4へ多数キャリアが出入りすることを防止する。
有機FETの場合、一般に、ゲート電極5と有機半導体層4とが絶縁体層7で絶縁されている構造{Metal−Insulator−Semiconductor;以下適宜、「MIS構造」と呼ぶ}が用いられる。また、ゲート電極5の周りに絶縁体層7をパターニングして、形成することもできる。なお、ゲート電極5の電極材料として、有機半導体材料とエネルギー障壁を作りうる金属を選択し、有機半導体層4とのあいだで多数キャリアの出入りを押さえても良い。例えば、ゲート電極5の電極材料としてAlを選ぶことで、p型半導体との間にエネルギー障壁としてSchottky障壁を形成することができる。なお、本実施形態では、上記のように、ゲート電極5と有機半導体4との間に絶縁体層7を形成し、ゲート電極5から、ソース電極2、ドレイン電極3及び有機半導体層4への多数キャリアの出入りを防止している。
絶縁体層7には、絶縁性を有する任意の材料を用いることができる。例えば、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン、ポリビニルフェノール、ポリイミド、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、ポリウレタン、ポリスルホン、エポキシ樹脂、フェノール樹脂等のポリマー及びこれらを組み合わせた共重合体、二酸化珪素、酸化アルミニウム、酸化チタン等の酸化物、SrTiO3、BaTiO3等の強誘電性酸化物、窒化珪素等の窒化物、硫化物、フッ化物などの誘電体、あるいは、これら誘電体の粒子を分散させたポリマー等が挙げられる。
絶縁体層7の膜厚は任意であるが、必要な機能を果たせる範囲で薄いほど好ましい。通常、膜厚は1nm以上、好ましくは5nm以上、より好ましくは10nm以上であり、また、通常10μm以下、好ましくは1μm以下、より好ましくは500nm以下である。
また、絶縁体層7を形成するにあたっては公知の各種方法を任意に用いうるが、例えば、スピンコーティングやブレードコーティングなどの塗布法、スクリーン印刷やインクジェット等の印刷法、真空蒸着法、スパッタリング法、その他、アルミニウム上のアルマイトのように金属上に酸化物膜を形成する方法等を用いることができる。
なお、後述するような、絶縁体層7上に有機半導体層4を形成する態様においては、両層4,7の界面で有機半導体材料分子を良好に配向させるために、絶縁体層7に所定の表面処理を行なうことができる。表面処理の手法は、基板6の表面処理と同様のものを用いることができる。
[6.その他の層]
横型FET1などの有機FETには、各層(ソース電極、ドレイン電極、有機半導体層、ゲート電極及び絶縁体層)2〜7のあいだや素子1の外面に、必要に応じて他の層を設けることが出来る。例えば、有機半導体層4上に直接または他の層を介して、保護層を形成すると、湿度などの外気の影響を最小限にできる利点がある。また、保護層により有機FETのオンオフ比を向上させる等、電気的特性を安定化できる利点もある。
保護層の材料は特に限定されず目的に応じて任意の材料を用いることができるが、例えば、エポキシ樹脂、ポリメチルメタクリレート等のアクリル樹脂、ポリウレタン、ポリイミド、ポリビニルアルコール、フッ素樹脂、ポリオレフィン等の各種樹脂や、酸化珪素、酸化アルミニウム、窒化珪素等、無機酸化膜や窒化膜等の誘電体などが好ましく挙げられる。これらの中でも特に、酸素や水分の透過率や吸水率が小さい樹脂(ポリマー)を用いることが好ましい。
保護層を成膜する方法について制限は無く、公知の各種方法を任意に用いうるが、保護層が樹脂からなる場合は、例えば、樹脂溶液を塗布後乾燥させて樹脂膜とする方法、樹脂モノマーを塗布あるいは蒸着したのち重合する方法などが挙げられる。また、成膜後に適宜後処理を行なってもよく、例えば、成膜後に架橋処理を行ってもよい。また、例えば、保護層が無機物からなる場合は、例えば、スパッタリング法、蒸着法等の真空プロセスでの形成方法や、ゾルゲル法に代表される溶液プロセスでの形成方法を用いることができる。
また、ソース電極2、ドレイン電極3及びゲート電極5に連結された配線(図示略)の素材は任意であるが、通常は、ソース電極2、ドレイン電極3及びゲート電極5とほぼ同様の材料により作製される。
さらに、有機FETを構成する材料、特に、有機半導体層4に用いられる有機半導体材料の中には光を吸収して電荷を発生するものがあるため、必要であればトランジスタ部分を遮光することが好ましい。これは、例えば、所望の領域に光の透過率の小さいパターン(いわゆるブラックマトリクス)を形成することで実現される。このパターンには、クロムやアルミニウム、銀、金等の金属の膜、カーボンブラック等の顔料を分散した樹脂膜、有機色素の膜等が用いられる。
[7.作用効果]
本発明の一実施形態としての横型FET1は以上のように構成されているので、使用時には、ソース電極2からドレイン電極3に電流を流すように電圧を印加し、ゲート電極5に印加する入力電圧によりソース電極2及びドレイン電極3間の電流を制御する。これにより、入力電圧に応じて、ソース電極2からオーミック接合面8A、有機半導体層4、及びオーミック接合面9Aの順に多数キャリアがドレイン電極3に流れ、ソース電極2からドレイン電極3に電流が流れる。
この際、横型FET1を継続的に使用することで、酸化などにより有機半導体層4中に少数キャリアがドープされるが、本実施形態ではSchottky接合面8B,9Bが形成されているため、Schottky接合面8B,9Bから少数キャリアを有機半導体層4の外部に取り除くことができ、漏れ電流や移動度の経時的劣化を抑制し、横型FET1の安定性を高めることができる。
[III.その他]
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は以上の実施形態に制限されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、任意に変形して実施することができる。
例えば、上記実施形態では、電極2,3が異なる電極材料からなる部位を有し、有機半導体層4が単一の有機半導体材料から形成されるようにしたが、電極2,3を単一の電極材料で形成し、有機半導体層4をオーミック接合面8A,9Aに面する部位とSchottky接合面8B,9Bに面する部位とで異なるFermiエネルギーを有する有機半導体材料で形成することによっても、オーミック接合面8A,9AとSchottky接合面8B,9Bとを形成することができる。以下、図5を参照して、この形態について説明する。
図5(a)は、有機半導体層4を、オーミック接合面8A,9Aに面する部位とSchottky接合面8B,9Bに面する部位とで異なるFermiエネルギーを有する有機半導体材料で形成した場合の横型FET1の要部を示す断面図である。なお、図3と同様の符号で指す部分は、図3と同様のものを表わす。図5(a)の横型FET1においても有機半導体層4と、電極2,3との間の接合面8,9には、オーミック接合面8A,9A及びSchottky接合面8B,9Bが形成されている。ただし、図5(a)に示す横型FET1では、電極2,3はそれぞれ単一の電極材料で形成されていて、有機半導体層4は、電極2,3に面する部位に、第1有機半導体部位10と、第2有機半導体部位11とを有するように形成されている。
図5(a)に示す横型FETでは、接合面8に面する部分と接合面9に面する部分とは同様に形成されている。そこで、接合面8に面する部分を取り上げて、その構成を詳しく説明する。
図5(b)は、図5(a)の接合面8に面する部分Xを拡大して示す拡大断面図である。上記のように、有機半導体層4が接合面8に面する部位には、第1有機半導体部位10と第2有機半導体部位11とが形成されている。第1及び第2半導体部位10,11は、第1有機半導体部位10の有機半導体材料がソース電極2の電極材料よりも大きいFermiエネルギーを有する場合は、第2有機半導体部位11の有機半導体材料がソース電極2の電極材料よりも小さいFermiエネルギーを有するように形成されている。逆に、第1有機半導体部位10の有機半導体材料がソース電極2の電極材料よりも小さいFermiエネルギーを有する場合は、第2有機半導体部位11の有機半導体材料がソース電極2の電極材料よりも大きいFermiエネルギーを有するように形成されている。即ち、第1有機半導体部位10とソース電極2との接合面がオーミック接合面8Aとなる場合には第2有機半導体部位11とソース電極2との接合面はSchottky接合面8Bとなり、第1有機半導体部位10とソース電極2との接合面がSchottky接合面8Bとなる場合には第2有機半導体部位11とソース電極2との接合面2がオーミック接合面8Aとなるように構成されている。
第1及び第2有機半導体部位10,11の有機半導体材料のFermiエネルギーが上記の関係を満たせば、第1及び第2有機半導体部位10,11の構成は任意である。
例えば、第1有機半導体部位10と第2有機半導体部位とで、異なる有機半導体材料を用いることにより、上記のFermiエネルギーの関係を満たすことができる。具体的には、第1有機半導体部位10がp型有機半導体材料で形成されている場合には第2有機半導体部位11をn型有機半導体材料で形成し、逆に、第1有機半導体部位10がn型有機半導体材料で形成されている場合には第2有機半導体部位11をp型有機半導体材料で形成すればよい。この際、第1有機半導体部位10を、有機半導体層4の電極2,3に面していない部分(以下適宜「半導体主要部」)12と同様の有機半導体材料で形成すれば、第1有機半導体部位10を有機半導体層4の半導体主要部12と別に形成する手間が不要となり、製造が簡単になる。
また、例えば、第1有機半導体部位10と第2有機半導体部位11とで不純物のドープ率を異なるものとすることによっても、上記のFermiエネルギーの関係を満たすことができる。具体例としては、第2有機半導体部位11に、第1有機半導体部位10と同様の不純物を第1有機半導体部位10よりも高濃度にドープし(即ち、ドープ率を高くし)、多数キャリアの密度を高める。ドープの濃度を適切に選択することで、第2有機半導体部位11とソース電極2との接合面はオーミック接合面8Aが形成され、高濃度にドープされていない層、即ち、第1有機半導体部位10とソース電極2との接合面はSchottky接合8Bが形成される。これは、例えば、電極材料にアルミニウムを用い、有機半導体材料に上記一般式1又は一般式2で表されるポルフィリン化合物を用い、前記ポルフィリン化合物の一般式1,2のR1〜R4をフッ素基で置換することでドープを行なった場合などに実施できる。
さらに、例えば、第1有機半導体部位10と第2有機半導体部位11とで異なる不純物をドープすることによっても、上記のFermiエネルギーの関係を満たすことができる。
なお、接合面9に面する部分は、上記の接合面8に面する部分についての説明において、ソース電極2の代わりにドレイン電極3が用いられる他は同様の構成となっている。
さらに、例えば、図5(b)で説明した形態では接合面8,9に面した有機半導体部位10,11が2種で場合を説明したが、3種以上の有機半導体部位を用いてもよい。
また、例えば、上記例示した以外の構成により、オーミック接合面8A,9A及びSchttky接合面8B,9Bを形成してもよい。具体例としては、上記(1),(2)を組み合わせた方法、即ち、有機半導体層4のドープ率や有機半導体材料に異なるものを用いるとともに、電極2,3の電極材料に2種以上のものを用いて、オーミック接合面8A,9A及びSchttky接合面8B,9Bを形成してもよい。
また、例えば、上記実施形態ではオーミック接合面8A,9A及びSchttky接合面8B,9Bが、各接合面8,9においてそれぞれ1種だけ形成されている場合を説明したが、オーミック接合面8A,9A及びSchttky接合面8B,9Bはそれぞれ2種以上形成してもよい。
また、横型FET1の構成は上記実施形態で説明したものに限定されず、各層2〜7の配置等は任意に設定することができる。例えば、図6(a)に示すように、基板6の上にゲート電極5、絶縁体層7、ソース電極2及びドレイン電極3、及び有機半導体層4の順に配置してもよく、また、図6(b)に示すように、基板6の上にゲート電極5、絶縁体層7、有機半導体層4、及びソース電極2及びドレイン電極3の順に配置してもよい。さらに、図6(c)に示すように、基板6の上にソース電極2及びドレイン電極3、有機半導体層4、絶縁体層7、及びゲート電極5の順に配置してもよく、また、図6(d)に示すように、基板6の上に有機半導体層4、ソース電極2及びドレイン電極3、絶縁体層7及びゲート電極5の順に配置してもよい。このような横型FET1においても、ソース電極2と有機半導体層4との接合面8及びドレイン電極3と有機半導体層4との接合面9の少なくともいずれかに、オーミック接合面及びSchottky接合面を形成することができる。ただし、図6(a)〜(d)において、図3〜5で用いた符号と同様の符号で示すものは、同様のものを表わす。なお、横型FET1は、基板6と平行方向に電流が流れるため、横型FETと呼ばれている。
さらに、例えば、本発明はソース電極2、ドレイン電極3、ゲート電極5及びチャネルを備え、チャネルとして有機半導体層4を有するものであれば、横型FET1以外の任意の有機FETに用いることができる。たとえば、静電誘導トランジスタ(以下適宜「SIT」という)に用いることができる。
以下、SITの構造を説明する。
横型FET1ではソース電極2及びドレイン電極3が基板6上に並べて配置され、電流の流れる方向がゲート電極5により誘起される電場に垂直方向であるのに対し、SITではソース電極2とドレイン電極3との間の適当な位置にゲート電極5がグリッド状に配置され、電流の方向がゲート電極5により誘起される電場に平行方向である点を特徴とする。
図7はSITの構成の一例の要部を示す断面図である。SIT13は、基板6上にソース電極2、有機半導体層4及びドレイン電極3がこの順に積層され、有機半導体層4中のソース電極2とドレイン電極3との間に、絶縁体層7により有機半導体層4から絶縁されたゲート電極5が設けられている。このようなSIT13においても、ソース電極2と有機半導体層4との接合面8及びドレイン電極3と有機半導体層4との接合面9の少なくともいずれかに、オーミック接合面及びSchottky接合面を形成することができる。ただし、図7において図3〜6で用いた符号と同様の符号で示すものは、同様のものを表わす。
SIT13において、ソース電極2、ドレイン電極3、有機半導体層4、基板6及び絶縁体層7は、上記実施形態で説明したのと同様の構成となっている。
また、ゲート電極5は、その電極材料及び形成方法は上記実施形態と同様であるが、その形状は、多数キャリアがゲート電極9間を図7に矢印で示すように通り抜けるために網目状、縞状、格子状等のように所定の間隔を有する形状に設けられている。さらに、ゲート電極5の間隔の大きさは任意であるが、通常は、ソース電極2とドレイン電極3との距離(有機半導体層4の厚さに相当)よりも小さいことが好ましい。また、ゲート電極5の厚さは通常10nm以上、好ましくは20nm以上、また、通常10μm以下、好ましくは1μm以下である。
上記の構成により、SIT13においても、少数キャリアが有機半導体層4中に蓄積し、漏れ電流や移動度の経時的劣化が起こることを抑制することができる。また、SIT13によれば、多数キャリアの流れが平面状に広がるので、一度に大量の多数キャリアをソース電極2からドレイン電極3へ流れさせることができる。また、ソース電極2とドレイン電極3とが縦に配されているので、電極2,3間の距離を小さくできるため応答が高速である。したがって、SIT13は大電流を流したり、高速のスイッチングを行なったりする用途に好ましく適用される。
なお、SIT13においても、各層2〜7の間やSIT13外面には、必要に応じて他の層を設けてもよい。
本発明の有機電界効果トランジスタは例えば電子デバイスを用いる広い産業分野において使用することができ、具体例としては、液晶表示素子、高分子分散型液晶表示素子、電子ペーパー、有機LED表示素子、電気泳動表示素子、無機EL表示素子、エレクトロクロミック素子等のディスプレイのアクティブマトリクスとして用いることができる他、ICタグ、ICチップ、センサーなどにも用いることができる。
オーミック接合面付近におけるキャリアのエネルギーを模式的に表わした電子状態図である。 Schottky接合面付近におけるキャリアのエネルギーを模式的に表わした電子状態図である。 本発明の一実施形態としての横型FETの要部を模式的に示す断面図である。 (a)〜(c)はいずれも、本発明の一実施形態としての横型FETのオーミック接合面及びSchottky接合面の形成パターンを模式的に示す平面図である。 (a)は本発明の別の実施形態としての横型FETの要部を模式的に示す断面図であり、(b)は図5(a)の部分Xを拡大して模式的に示す拡大断面図である。 (a)〜(d)はいずれも、本発明の別の実施形態としての横型FETの要部を模式的に示す断面図である。 本発明の別の実施形態としてのSITの要部を模式的に示す断面図である。
符号の説明
1 横型FET(有機FET)
2 ソース電極
2A オーミック部位
2B Schottky部位
3 ドレイン電極
3A オーミック部位
3B Schottky部位
4 有機半導体層
5 ゲート電極
6 基板
7 絶縁体層
8,9 接合面
8A,9A オーミック接合面
8B,9B Schottky接合面
10 第1有機半導体部位
11 第2有機半導体部位
12 半導体主要部
13 SIT

Claims (4)

  1. 有機半導体層と、該有機半導体層に接合したソース電極及びドレイン電極とを備えた有機電界効果トランジスタであって、
    該有機半導体層と、該ソース電極及び該ドレイン電極の少なくとも一方との接合面が、オーミック接合面とSchottky接合面とを有することを特徴とする、有機電界効果トランジスタ。
  2. 該ソース電極及び該ドレイン電極の少なくとも一方が、該有機半導体層との接合面において、異なる材料からなる部位を有することにより、該オーミック接合面と該Schottky接合面とが形成されていることを特徴とする、請求項1記載の有機電界効果トランジスタ。
  3. 該有機半導体層が、該ソース電極及び該ドレイン電極の少なくとも一方との接合面において、異なるドープ率で不純物がドープされた部位を有することにより、該オーミック接合面と該Schottky接合面とが形成されていることを特徴とする、請求項1記載の有機電界効果トランジスタ。
  4. 該有機半導体層が、該ソース電極及び該ドレイン電極の少なくとも一方との接合面において、異なる不純物がドープされた部位を有することにより、該オーミック接合面と該Schottky接合面とが形成されていることを特徴とする、請求項1記載の有機電界効果トランジスタ。
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