JP2005277204A - 有機電界効果トランジスタ - Google Patents

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Abstract

【課題】 漏れ電流の増大等による経時的劣化が少ない、安定性に優れた有機電界効果トランジスタを提供する。
【解決手段】 有機半導体層4と、ソース電極2及びドレイン電極3とを有し、ソース電極2とドレイン電極3との間における有機半導体層4の表面にチャネル面4Aが形成される有機電界効果トランジスタ1において、有機半導体層4の、チャネル面4Aに対して平行方向における電気抵抗率と垂直方向における電気抵抗率との比が、1/10以下であるようにする。
【選択図】 図1

Description

本発明は、有機電界効果トランジスタに関する。
従来、電界効果トランジスタ(以下適宜「FET」と呼ぶ)等の電子デバイスは、半導体層としてシリコン(Si)やガリウム砒素単結晶などの無機半導体材料を用いたものが広く利用されてきた。しかし、無機半導体材料を用いた電子デバイスは、製造時に300℃以上の高温で処理する必要があり、このため、基板にプラスチック(樹脂)などを用いることが難しいので材料の選択範囲が小さく、また、製造に多くのエネルギーを要していた。さらに、蒸着、PVD(物理蒸着法)、CVD(化学蒸着法)などの真空下での素子作製プロセスを経るため、大面積の素子を製造するのが困難であり、また、製造ラインに高価な設備を必要とした。
これらの無機半導体材料に代わるものとして、近年、トランジスタをはじめとして発光ダイオード、非線形光デバイスなど電子デバイスの半導体層に有機半導体材料を使用した有機電子デバイスが提案されている。
有機半導体材料を電子デバイスの半導体層に用いるようにすれば、比較的低温のプロセスで電子デバイスを製造することができる。このため、基板にプラスチックフィルムを使用でき、軽量で柔軟性に優れた壊れにくい電子デバイスを作製できる利点がある。
また、有機半導体材料を用いた半導体層は、塗布法や印刷法によって形成できるので、大面積の電子デバイスを高価な設備を必要とせず低コストで製造できる利点もある。
さらに、有機半導体材料は、材料のバリエーションが豊富であり、分子構造を変化させて材料特性を根本的に変えることもできるので、無機半導体材料にはない機能を有する素子が得られる可能性がある。
このような有機半導体材料を用いた電子デバイスのひとつとして、有機FETがある。これは、FETの半導体層に有機半導体材料を用いたものであり、最近その研究開発が盛んになされている。例えば、特許文献1には、銅フタロシアニンで形成された有機半導体層と、金で形成された電極とを備えた有機FETが記載されている。
特開平11−251601号公報
しかしながら、特許文献1記載の技術などの従来の有機電界効果トランジスタの場合、半導体材料として用いた有機材料は酸化されやすい傾向があるので、経時的劣化が大きく、安定性の面で課題がある。即ち、空気中の酸素が有機半導体層にドーピングされ、少数キャリア密度が上昇してしまう等の原因によって、漏れ電流が増大してしまうといった課題が生じていた。ここで、少数キャリアとは、半導体層中の正孔及び電子のうち密度が小さい方を指す。
本発明は上述の課題に鑑みてなされたもので、その目的は、漏れ電流の増大等による経時的劣化が少ない、安定性に優れた有機電界効果トランジスタを提供することに存する。
本発明者らは、鋭意検討の結果、有機半導体層のチャネル面に対し平行方向の電気抵抗率と垂直方向の電気抵抗率との比を一定値以下とすることにより、漏れ電流の増大を抑え、有機電界効果トランジスタの経時的劣化を抑制することが可能となり、上記課題を効果的に解決できることを見出して、本発明を完成するに至った。
本発明の要旨は、有機半導体層と、ソース電極及びドレイン電極とを有し、該ソース電極と該ドレイン電極との間の該有機半導体層表面にチャネル面が形成されるとともに、該有機半導体層の、チャネル面に対して平行方向における電気抵抗率と垂直方向における電気抵抗率との比が、1/10以下であることを特徴とする、有機電界効果トランジスタに存する(請求項1)。
なお、有機半導体層が主に、2次元構造を有する有機物結晶からなるとともに、有機物結晶の2次元構造がチャネル面と平行であること(請求項2)、又は、有機半導体層が主に、1次元構造を有する有機物結晶からなるとともに、有機物結晶の1次元構造がチャネル面と平行であること(請求項3)が好ましい。
本発明によれば、漏れ電流の増大等による経時的劣化が少ない、安定性に優れた有機電界効果トランジスタが実現される。
以下、本発明の実施の形態につき詳細に説明するが、以下に記載する実施形態はあくまでも本発明の代表的な実施形態であって、本発明はこれらの実施形態に制限されるものではない。
[I.概要]
本発明の有機電界効果トランジスタは、有機半導体層と、ソース電極及びドレイン電極とを有し、ソース電極とドレイン電極との間の有機半導体層表面にチャネル面が形成されたものである。チャネル面とは、ゲート電極に電圧が印加される際に生ずるキャリアが分布している平面のことで、ソース−ドレイン方向に沿って形成される。電界効果トランジスタは、ソース−ドレイン間の電流を、チャネル面のキャリアの寄与により生じさせることを原理としている。なお、ソース−ドレイン方向とは、ソース電極とドレイン電極との最短距離を結ぶ線分の方向で定義される。
そして、本発明の有機電界効果トランジスタは、有機半導体層の、チャネル面に対して平行方向における電気抵抗率と、チャネル面に対して垂直方向(例えば、ソース−ドレイン方向と垂直方向)における電気抵抗率との比(即ち、以下の式(I)で定義される値。これを「電気抵抗率異方比」と呼ぶことにする。)が、1/10以下であることを特徴とする。
Figure 2005277204
なお、「チャネル面に対して平行方向」には、ソース−ドレイン方向を含め、チャネル面に平行な平面内に存在する様々な方向が含まれる。本発明では、これらの全方向における有機半導体層の電気抵抗率が式(I)を満たしている必要はなく、少なくともソース−ドレイン方向における有機半導体層の電気抵抗率が式(I)を満たしていればよい。
従来の有機電界効果トランジスタでは、この電気抵抗率異方比がほぼ1であった。酸化などの影響でチャネル面から離れた位置に生じたキャリアが、OFF時、即ちゲート電圧が印加されていない時に、チャネル面に流れ込むという現象が生じ、これが漏れ電流の原因となっていた。
これに対して、本発明では、有機半導体層の電気抵抗率異方比の値を上述の範囲とすることにより、有機半導体層内で、チャネル面とチャネル面から離れた位置との間のキャリアの授受を抑制することが可能となる。これによって、上述した様なチャネル面から離れた位置に生じたキャリアがチャネル面に流れ込むという現象を抑制することができ、その結果として、漏れ電流の経時的増大を抑制することが可能となるのである。
有機半導体層の電気抵抗率異方比の値は、好ましくは1/100以下、更に好ましくは1/1000以下、特に好ましくは1/106以下の範囲である。有機半導体層中で、チャネル面とチャネル面から離れた位置との間のキャリアの授受の抑制効果がより得られるからである。なお、下限は特に制限はないが、通常は1/1030以上である。
有機半導体層の電気抵抗率異方比を測定する手法としては、例えば、有機半導体層に用いられている材料の単独の結晶について、チャネル面に対して平行方向及び垂直方向の各電気抵抗率を測定することにより求めればよい。前記単独の結晶は、電気抵抗率測定の精度が保てる適切な大きさのものを用いることが好ましい。前記単独の結晶を有機電界効果トランジスタの有機半導体層に用いた場合に、チャネル面に対して平行となる方向(ソース−ドレイン方向)、及び、チャネル面に対して垂直となる方向(ソース−ドレイン方向に対して垂直となる方向)が、前記単独の結晶においてどちらの方向になるかを確認し、該当方向の電気抵抗率をそれぞれ測定する。前記単独の結晶と有機半導体層との方向の対応は、例えば、X線回折法等の各種の結晶構造解析法によって決定することができる。電気抵抗率の測定には、例えば4端子法を用いることができる。
上記規定の電気抵抗率異方比を有する有機半導体層を形成する手法は特に制限されないが、好ましい態様としては以下の2つが挙げられる。
(a)有機半導体層の材料(以下、適宜「有機半導体材料」という。)として、主に、2次元構造を有する有機物結晶を用い、且つ、有機物結晶の2次元構造がチャネル面に対して平行となる様に有機半導体層を形成する。
(b)有機半導体材料として、主に、1次元構造を有する有機物結晶を用い、且つ、有機物結晶の1次元構造がチャネル面に対して平行となる様に有機半導体層を形成する。
従来の有機電界効果トランジスタに用いられてきた有機半導体材料は、通常は3次元構造を有するものである。これに対して、このように1次元構造又は2次元構造を有する有機物結晶を有機半導体材料として用い、且つ、その1次元構造又は2次元構造がチャネル面に対して平行になるように有機半導体層を形成することで、有機半導体層の電気抵抗率異方比の値を上記規定の範囲に制御することが可能となる。
ここで、2次元構造とは、電子軌道の重なりが大きく電子の交換が起こり得る空間が、概ね2次元面に閉じこめられているものを言う。言い換えれば、電子の運動の自由度はこの2次元面内に限られる。そして、結晶はこれらの2次元面が積層された構造を取る。
なお、「2次元構造を有する有機物」という言葉の中には、完全に2次元平面内で等方的ではないもの、例えば波状面、凹凸面、湾曲面等の面構造を有する物質、擬2次元構造物質なども含むものとする。
また、1次元構造とは、電子軌道の重なりが大きく電子の交換が起こり得る空間が、概ね1次元鎖に閉じこめられているものを言う。言い換えれば、電子の運動の自由度はこの1次元鎖内に限られる。
なお、「1次元構造を有する有機物」という言葉の中には、完全に1次元面内で等方的ではないもの、例えば梯子状構造の物質、擬1次元構造物質なども含むものとする。
また、有機物結晶の2次元構造や1次元構造がチャネル面に対して「平行」とは、チャネル面が平面であって、それに対して厳密に平行である場合に限られない。チャネル面は有機半導体材料の種類や有機半導体層の製法等によってその表面が平面でなく、凹凸を有する場合もあるが、その凹凸面を平均的に見た場合に、有機物結晶の2次元構造や1次元構造に対して概ね平行になっていれば良い。
なお、2次元構造を有する有機物の例としては、BEDT−TTFなどが挙げられる。
また、1次元構造を有する有機物の例としては、ポリシランなどが挙げられる。
上記例示した、2次元構造を有する有機物、1次元構造を有する有機物ともに、何れか1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせで用いても良い。また、2次元構造を有する1種又は2種以上の有機物と、1次元構造を有する1種又は2種以上の有機物とを組み合わせて用いても良い。いずれの場合も、上記規定の範囲の電気抵抗率異方比を有する有機半導体層が得られれば良い。
上述した有機物を材料として有機半導体層を形成する際に、結晶の向きを制御する手法としては、例えば、エピタキシャル成長法、塗布後のラビング等が挙げられる。
なお、電気抵抗率異方比を上述の値に保つためには、必要に応じて有機電界トランジスタの温度を室温よりも低温又は高温に保つようにしても良い。
〔II.横型FET〕
以下、本発明の実施の形態として、有機FETの一例である横型FETに本発明を適用した場合を例に挙げて、図を用いて詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る横型FET1の要部を示す断面図である。横型FET1は、ソース電極2及びドレイン電極3と、ソース電極2とドレイン電極3との間の電流の流路(チャネル)を形成する有機半導体層4と、入力電圧を印加するためのゲート電極5とを備えている。ソース電極2とドレイン電極3との間の有機半導体層4表面には、ゲート電極5に電圧が印加される際にキャリアが分布するチャネル面4Aが形成される。この構成により、横型FET1は、ゲート電極5から印加する入力電圧によってソース電極2及びドレイン電極3の間を流れる電流を制御するようになっている。なお、図1においては、各電極2,3,5に接続される配線は図示を省略する。また、チャネル面4Aは当然ながら厚みを有していないが、図中では明確にすべく太線で示している。
ソース電極2、ドレイン電極3、ゲート電極5及び有機半導体層4は、通常、基板6上に設けられる。さらに、ソース電極2とドレイン電極3との間を流れる電流は、ゲート電極には基本的に流れないように構成される。このため、横型FET1には普通、ゲート電極5と、ソース電極2、ドレイン電極3及び有機半導体層4との間で電流が流れることを防止するために絶縁体層7が設けられる。
[1.ソース電極,ドレイン電極]
横型FET1において、ソース電極2は配線(図示略)を通じて外部から電流が流入する電極であり、ドレイン電極3は配線(図示略)を通じて外部に電流を送る電極である。そして、多数キャリアがチャネルを通ってソース電極2からドレイン電極3に流れることにより、ソース電極2とドレイン電極3との間に電流が流れるようになっている。
電極2,3の電極材料としては、金属、合金、導電性高分子などの導電性材料を用いることができ、これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
導電性材料の具体例としては、白金、金、アルミニウム、クロム、ニッケル、銅、チタン、マグネシウム、カルシウム、バリウム、ナトリウム等の金属;ポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリアセチレン等の導電性高分子;及び、それらに塩酸、硫酸、スルホン酸等の酸、PF6、AsF6、FeCl3等のルイス酸、ヨウ素等のハロゲン原子、ナトリウムカリウム等の金属原子等のドーパントを添加したもの、カーボンブラックや金属粒子を分散させた導電性の複合材料などが挙げられる。
また、電極2,3自体の形状も任意である。通常は、電極材料を島状に形成した島状構造薄膜に成形して用いる。
さらに、電極2,3の厚さは任意であるが、通常1nm以上、好ましくは10nm以上、また、通常100nm以下、好ましくは50nm以下である。
電極2,3を形成する方法は任意であるが、通常は、電極材料を成膜することにより形成する。成膜にあたっては公知の各種方法を任意に用いることができ、例えば、真空蒸着法、スパッタ法、塗布法、印刷法、ゾルゲル法等を用いることができる。
さらに、成膜により電極2,3を形成する場合、所望の形状になるよう、必要に応じてパターニングを行なうことが望ましい。パターニングの方法も任意であり、例えば、フォトレジストのパターニングとエッチング(エッチング液によるウエットエッチングや反応性のプラズマによるドライエッチング等)とを組み合わせたフォトリソグラフィー法;インクジェット印刷、スクリーン印刷、オフセット印刷、凸版印刷等の印刷法;マイクロコンタクトプリンティング法等のソフトリソグラフィーの手法などが挙げられる。また、これらの手法を複数組み合わせて用いてもよい。さらに、レーザーや電子線等のエネルギー線を照射して不要部分の電極材料を除去したり、電極材料の導電性を変化させたりすることにより、直接パターンを作製しても良い。
[2.半導体層]
有機半導体層4は、ソース電極2とドレイン電極3との間の多数キャリアが流れるチャネルを構成する部分である。上述のように、有機半導体層4は、チャネル面に対して平行方向における電気抵抗率と、チャネル面に対して垂直方向における電気抵抗率との比(電気抵抗率異方比)が、1/10以下に制御されている。この特徴については上に詳述したので、以下の説明においては、一般的な事項についてのみ述べる。
有機半導体層4を形成する材料は、上述の範囲の電気抵抗率異方比を達成できるものであれば、その種類に特に制限は無く、本発明の要旨を超えない範囲内で任意の材料を用いることができる。
但し、上述の範囲の電気抵抗率異方比を容易且つ効率的に達成する観点からは、有機半導体層4の材料として、上述のように、2次元構造を有する有機物結晶又は1次元構造を有する有機物結晶を用いることが好ましい。その詳細及び具体例については上述した。なお、有機半導体層4の全部をこれらの有機物結晶で形成しても良く、チャネル面4Aに相当する部分のみだけをこれらの有機物結晶で形成しても良い。
なお、上述の有機半導体材料は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
さらに、有機半導体層4には、有機半導体材料の他、特性を改善したり他の特性を付与したりするために、酸化防止剤などの各種添加剤を混合してもよい。
また、有機半導体層4の形状も任意である。図1では、基板6の上面全面を覆うように膜状に形成した場合を示している。
さらに、有機半導体層4は単一の層から形成されていてもよく、2以上の層から形成されていてもよい。図1では、単一の層から形成した場合を示している。
有機半導体層4の膜厚は任意であるが、通常は、必要な機能を果たせる範囲で薄いほど好ましい。図1の横型FET1のように、ソース電極2とドレイン電極3とがほぼ有機半導体層4の膜面と平行に配置されている場合、所定以上の膜厚があれば横型FETの特性は膜厚に依存しない一方、膜厚が厚くなるほど漏れ電流が増加してくる虞が大きくなるためである。有機半導体層4の膜厚の具体的な範囲を挙げると、通常1nm以上、好ましくは5nm以上、より好ましくは10nm以上であり、また、通常10μm以下、好ましくは1μm以下、より好ましくは500nm以下である。
さらに、有機半導体層4を形成する有機半導体材料のオンオフ比は任意であるが、通常は高いほど望ましい。有機半導体材料のオンオフ比は、通常800以上、好ましくは1000以上である。
なお、オンオフ比の定義について説明すると、ドレイン電圧VD(ソース電極に対するドレイン電極の電位)を−30Vに固定し、ゲート電圧VGを、p型半導体の場合、−50V,+30Vにした時のソース−ドレイン間に流れる電流ID(−50V),ID(+30V)をそれぞれ測定し、これらのID(−50V)/ID(+30V)によってオンオフ比を定義する。n型半導体の場合、ID(+50V),ID(−30V)をそれぞれ測定し、これらのID(+50V),ID(−30V)によってオンオフ比を定義する。
有機半導体層4を形成する方法は、上述の範囲の電気抵抗率異方比を達成できるものであれば特に制限は無く、公知の方法を任意に用いることができるが、例えば、スパッタリング法,真空蒸着法等の真空プロセスでの形成方法や、塗布法,印刷法等の溶液プロセスでの形成方法などが挙げられる。なお、これらの有機半導体層4を形成する方法は、1種を単独で行なってもよく、2種以上の方法を適宜組み合わせて行なってもよい。
(真空プロセス)
以下、有機半導体材料を真空プロセスによって成膜し、有機半導体層4を得る方法について詳しく説明する。真空プロセスによる成膜では、真空又は減圧環境下、有機半導体材料を基板6に付着させることにより成膜を行なう。
例えば真空蒸着法では、有機半導体材料を真空中で加熱し、蒸発させ、蒸発した有機半導体材料を基板6に付着させることにより有機半導体層4を得る。
真空蒸着法では、圧力条件は通常1×10-3Torr(1.3×10-1Pa)以下、好ましくは1×10-6Torr(1.3×10-4Pa)以下とする。
また、基板6の温度によって有機半導体層4、ひいては横型FET1の特性が変化するので、基板6の温度を最適な基板温度にする。具体的には、通常0℃、好ましくは10℃以上、また、通常200℃以下、好ましくは50℃以下とする。
さらに、蒸着速度は任意であるが、通常0.001nm/s以上、好ましくは0.01nm/s以上、また、通常10nm/s以下、好ましくは1nm/s以下である。
また、例えばスパッタリング法によって有機半導体層4を得るようにしてもよい。スパッタリング法では、有機半導体材料を、加熱により蒸発させる代わりに、加速したアルゴン等のイオンを有機半導体材料ターゲットに衝突させて有機半導体材料原子を叩きだし、基板6に付着させる以外は真空蒸着法と同様にして、有機半導体層4を得る。
一般に、比較的低分子量の有機半導体材料を用いる場合に、このような真空プロセスを用いるのが好ましい。また、真空プロセスには、高価な設備が必要であるものの、有機半導体層4を形成する際の成膜性が良く、均一な膜が得易いという利点がある。
(溶液プロセス)
次に、有機半導体材料を溶液プロセスによって成膜し、有機半導体層4を得る方法について詳しく説明する。
溶液プロセスによる成膜では、有機半導体材料を溶媒に溶かして溶液とし、その溶液を基板6上に塗布して有機半導体層4を得る。
有機半導体材料を溶解させる溶媒に制限は無く、有機半導体材料の種類などに応じて任意の溶媒を用いることができる。
また、塗布の方法についても制限はなく、例えば、溶液をたらすだけのキャスティング、スピンコーティング、ディップティング、ブレードコーティング、ワイヤバーコーティング、スプレーコーティング等のコーティング法(塗布法)や、インクジェット印刷、スクリーン印刷、オフセット印刷、凸版印刷等の印刷法や、マイクロコンタクトプリンティング法等のソフトリソグラフィーの手法などが挙げられる。また、これらの手法は適宜2種以上組み合わせて用いてもよい。
さらに、塗布に類似の技術として、水面上に形成した有機半導体材料の単分子膜を基板6に移して積層するLangmuir−Blodgett法、液晶や融液状態の有機半導体材料を2枚の基板6で挟んだり毛管現象で2枚の基板6間に導入したりする方法なども挙げられる。
このような溶液プロセスを用いると、比較的安価な設備で、大面積の有機半導体層4を作製しやすいという利点がある。
また、溶液プロセスにより有機半導体層4を形成する場合、有機半導体材料自体を溶媒に溶解させた溶液を基板6に塗布する他に、有機半導体材料の前駆体を溶媒に溶解して前駆体溶液を調製し、この前駆体溶液を基板6に塗布し、基板6上で前駆体の化学構造を変化させて最終的な有機半導体材料とし、有機半導体層4を形成する方法をとることもできる。この方法は、特に溶媒に難溶な有機半導体材料を溶液プロセスにより膜形成して有機半導体層4を作製する際に有用である。
また、溶液プロセスでは、塗布工程と乾燥工程とを必要なだけ繰り返して有機半導体層4の厚さを大きくし、有機半導体層4を厚膜にすることができる。さらに、前駆体を用いて有機半導体層4を形成する場合には、前駆体溶液の塗布工程と、化学構造変化工程とを繰り返せば、前駆体と有機半導体材料との溶解性が異なることを利用して積層し、厚膜を形成することができる。
一般に、溶液プロセスによると、成膜性が高くならず、結晶性の高い有機半導体膜が得られにくいとされている。しかし、上記前駆体を用いる方法によれば、簡便な溶液プロセスで結晶性の高い特性の良い有機半導体膜が得られるので、好ましい。このようにして形成された有機半導体層4は、キャリア移動度が高く、且つ、オンオフ比が高いという好ましい特性を有する。なお、上記前駆体を用いる方法は、広く有機半導体材料一般に適用しうる優れた方法である。
なお、有機半導体層4の材料として、上述のように、2次元構造を有する有機物結晶又は1次元構造を有する有機物結晶を用いる場合には、その結晶の向きを制御する手法として、エピタキシャル成長法、塗布後のラビング等の手法を用いる。これらの手法によって有機物結晶の方向を制御することにより、上記規定の範囲の電気抵抗率異方比を有する有機半導体層4を容易に効率よく得ることが可能となる。エピタキシャル成長法等の結晶の向きを制御する方法については既に上に詳述した。
有機半導体層4には、微量の元素や原子団、分子、高分子などの不純物を含有させてもよい。このように有機半導体層4に不純物を含有させることをドーピングといい、これにより有機半導体層4の特性を変化させ好ましいものにすることができる。
不純物には、形成しようとする有機半導体層4の特性などに応じて公知のものを任意に用いることができる。具体例を挙げると、酸素、水素、塩酸、硫酸、スルホン酸等の酸、PF6、AsF5、FeCl3等のルイス酸、ヨウ素等のハロゲン原子、ナトリウム、カリウム等の金属原子などが挙げられる。
ドーピングの手法は任意であるが、例えば、有機半導体層4を不純物のガスに接触させたり、不純物の溶液に浸したり、電気化学的な処理をすることにより行なうことができる。また、ドーピングは有機半導体層4の形成後でなくても、有機半導体層4形成前の有機半導体材料合成時に不純物を混合することなどにより行なうことができる。また、溶液プロセスにより有機半導体層4を形成する場合は、有機半導体材料や前駆体の溶液に不純物を混合したり、前駆体膜の段階で不純物のガスや溶液を用いることにより、ドーピングを行なうことが可能である。また、真空プロセスにより有機半導体層4を形成する場合は、蒸着時に不純物を共蒸着したり、真空プロセスの雰囲気に不純物を混合したり、さらには不純物のイオンを真空中で加速して有機半導体層4に衝突させたりすることでドーピングを行なうことも可能である。
ドーピングの効果としては、キャリア密度の増加あるいは減少による電気伝導度の変化、キャリアの極性(p型またはn型)の変化、Fermi準位の変化等が挙げられる。
このように作製された有機半導体層4は、後処理により、さらに特性を改良することが可能である。例えば、加熱処理により、成膜時に生じた有機半導体層4中の歪みを緩和することができ、特性の向上を図ることができる。また、酸素や水素等の酸化性あるいは還元性の気体や液体にさらすことにより、酸化あるいは還元による特性変化を誘起することもできる。これは、例えば、有機半導体層4中のキャリア密度の増加、あるいは減少の目的に利用される。
[3.基板]
一般に、有機FETなどの有機電子デバイスは、基板6上に必要な層や電極を設けることで作製される。本実施形態の横型FET1も基板6を備えている。
基板6を形成する材料について特に制限は無く、任意の材料によって形成することができる。具体例を挙げると、Si、SiO2、金属などの無機材料、合成樹脂などの有機材料、及び、無機材料と有機材料との複合材などを用いることができる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。例えば、向き物質の基板の表面を合成樹脂などの絶縁体によりコーティングすることで表面に絶縁性を持たせたものを用いてもよい。
また、基板6の形状も任意であり、例えば板状、フィルム状など、様々な形状のものを用いることができる。ただし、フレキシブルであるという点から、基板6としては樹脂フィルムが好ましい。
さらに、基板6の寸法についても制限は無く、その用途に応じて任意に設計することができる。
また、横型FET1などの有機FETにおいては、半導体として有機半導体材料を用いるため、比較的低温のプロセスでの製造が可能になる。そのため、基板6にプラスチックフィルムなどを使用することができ、軽量で柔軟性に優れた壊れにくい電子デバイスを作製できる利点を有する。したがって、従来の無機半導体を用いたFETよりも薄く可撓性のあるFETの製造が可能になるので、これを各セルのスイッチング素子に利用することで、可撓性のあるアクティブマトリクス液晶ディスプレイが作製できるなど、広い応用が期待できる。
また、基板6は、複数の層からなっていても良い。複数の層からなる場合、各層は同一の材料から形成されていてもよく、互いに異なる材料で形成されていてもよい。
さらに、基板6に所定の表面処理を行なうことで、横型FET1などの有機FETの特性を向上できる場合がある。例えば、基板6表面の親水性、疎水性の度合いを調整することでその上に成膜される膜(ソース電極2、ドレイン電極3、ゲート電極5、有機半導体層4など。本実施形態では、有機半導体層4)の膜質を改良しうる。特に、有機半導体材料は、分子の配向など層の状態によって特性を大きく変えるが、基板6の表面処理によって、基板6と有機半導体層4との界面部分における分子配向が制御され、特性が改善される。
このような表面処理としては、例えば、ヘキサメチルジシラザン、シクロヘキセン、オクタデシルトリクロロシラン等による疎水化処理、塩酸や硫酸、酢酸等による酸処理、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、アンモニア等によるアルカリ処理、オゾン処理、フッ素化処理、酸素やアルゴン等のプラズマ処理、Langmuir−Blodgett膜の形成処理、その他の絶縁体や半導体の薄膜の形成処理、機械的処理、コロナ放電などの電気的処理、などが挙げられる。
[4.ゲート電極]
ゲート電極5は、有機半導体層4にゲート電圧を印加するもので、このゲート電極5から印加されるゲート電圧により横型FET1のオン、オフが制御される。
ゲート電極5の材料、寸法、形成方法については任意であり、その詳細は、上述したソース電極2及びドレイン電極3と同様にして形成することができる。
[5.絶縁体層]
ゲート電極5と、ソース電極2、ドレイン電極3及び有機半導体層4との間には、通常、絶縁体層7やエネルギー障壁を設け、ゲート電極5からソース電極2、ドレイン電極3及び有機半導体層4へ多数キャリアが出入りすることを防止する。
有機FETの場合、一般に、ゲート電極5と有機半導体層4とが絶縁体層7で絶縁されている構造{Metal−Insulator−Semiconductor;以下適宜、「MIS構造」と呼ぶ}が用いられる。また、ゲート電極5の周りに絶縁体層7をパターニングして、形成することもできる。なお、ゲート電極5の電極材料として、有機半導体材料とエネルギー障壁を作り得る金属を選択し、有機半導体層4とのあいだで多数キャリアの出入りを押さえても良い。例えば、ゲート電極5の電極材料としてAlを選ぶことで、p型半導体との間にエネルギー障壁としてSchottky障壁を形成することができる。なお、本実施形態では、上記のように、ゲート電極5と有機半導体4との間に絶縁体層7を形成し、ゲート電極5から、ソース電極2、ドレイン電極3及び有機半導体層4への多数キャリアの出入りを防止している。
絶縁体層7には、絶縁性を有する任意の材料を用いることができる。例えば、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン、ポリビニルフェノール、ポリイミド、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、ポリウレタン、ポリスルホン、エポキシ樹脂、フェノール樹脂等のポリマー及びこれらを組み合わせた共重合体、二酸化珪素、酸化アルミニウム、酸化チタン等の酸化物、SrTiO3、BaTiO3等の強誘電性酸化物、窒化珪素等の窒化物、硫化物、フッ化物などの誘電体、あるいは、これら誘電体の粒子を分散させたポリマー等が挙げられる。
絶縁体層7の膜厚は任意であるが、必要な機能を果たせる範囲で薄いほど好ましい。膜厚は通常1nm以上、好ましくは5nm以上、より好ましくは10nm以上であり、また、通常10μm以下、好ましくは1μm以下、より好ましくは500nm以下である。
また、絶縁体層7を形成するにあたっては公知の各種方法を任意に用いうるが、例えば、スピンコーティングやブレードコーティングなどの塗布法、スクリーン印刷やインクジェット等の印刷法、真空蒸着法、スパッタリング法、その他、アルミニウム上のアルマイトのように金属上に酸化物膜を形成する方法等を用いることができる。
なお、後述するような、絶縁体層7上に有機半導体層4を形成する態様においては、両層4,7の界面で有機半導体材料分子を良好に配向させるために、絶縁体層7に所定の表面処理を行なうことができる。表面処理の手法は、基板6の表面処理と同様のものを用いることができる。
[6.その他の層]
横型FET1などの有機FETには、各層(ソース電極、ドレイン電極、有機半導体層、ゲート電極及び絶縁体層)2〜7のあいだや素子1の外面に、必要に応じて他の層を設けることが出来る。例えば、有機半導体層4上に直接または他の層を介して、保護層を形成すると、湿度などの外気の影響を最小限にできる利点がある。また、保護層により有機FETのオンオフ比を向上させる等、電気的特性を安定化できる利点もある。
保護層の材料は特に限定されず目的に応じて任意の材料を用いることができるが、例えば、エポキシ樹脂、ポリメチルメタクリレート等のアクリル樹脂、ポリウレタン、ポリイミド、ポリビニルアルコール、フッ素樹脂、ポリオレフィン等の各種樹脂や、酸化珪素、酸化アルミニウム、窒化珪素等、無機酸化膜や窒化膜等の誘電体などが好ましく挙げられる。これらの中でも特に、酸素や水分の透過率や吸水率が小さい樹脂(ポリマー)を用いることが好ましい。
保護層を成膜する方法について制限は無く、公知の各種方法を任意に用いうるが、保護層が樹脂からなる場合は、例えば樹脂溶液を塗布後乾燥させて樹脂膜とする方法、樹脂モノマーを塗布あるいは蒸着したのち重合する方法などが挙げられる。また、成膜後に適宜後処理を行なってもよく、例えば、成膜後に架橋処理を行ってもよい。また、例えば、保護層が無機物からなる場合は、例えば、スパッタリング法、蒸着法等の真空プロセスでの形成方法や、ゾルゲル法に代表される溶液プロセスでの形成方法を用いることができる。
また、ソース電極2、ドレイン電極3及びゲート電極5に連結された配線(図示略)の素材は任意であるが、通常は、ソース電極2、ドレイン電極3及びゲート電極5とほぼ同様の材料により作製される。
さらに、有機FETを構成する材料、特に、有機半導体層4に用いられる有機半導体材料の中には光を吸収して電荷を発生するものがあるため、必要であればトランジスタ部分を遮光することが好ましい。これは、例えば、所望の領域に光の透過率の小さいパターン(いわゆるブラックマトリクス)を形成することで実現される。このパターンには、クロムやアルミニウム、銀、金等の金属の膜、カーボンブラック等の顔料を分散した樹脂膜、有機色素の膜等が用いられる。
[7.作用効果]
横型FET1を使用する時には、ソース電極2からドレイン電極3に電流を流すように電圧を印加し、ゲート電極5に印加する入力電圧によりソース電極2及びドレイン電極3間の電流を制御する。これにより、入力電圧に応じて、ソース電極2から有機半導体層4(チャネル面A)を通じて多数キャリアがドレイン電極3に移動し、これによってソース電極2からドレイン電極3に電流が流れる。
ここで、有機半導体層4の電気抵抗率異方比、即ち、チャネル面4Aに対して平行方向における電気抵抗率と、チャネル面4Aに対して垂直方向における電気抵抗率との比が、上述の範囲に設定されているので、有機半導体層4内で、チャネル面4Aとチャネル面4Aから離れた位置との間のキャリアの授受を抑制することが可能となる。これによって、チャネル面4Aから離れた位置に生じたキャリアがチャネル面4Aに流れ込むという現象を抑制することができ、その結果、漏れ電流の経時的増大を抑制することが可能となる。
[III.その他]
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は以上の実施形態に制限されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、任意に変形して実施することができる。
例えば、横型FET1の構成は上記実施形態で説明したものに限定されず、各層2〜7の配置等を任意に設定することができる。例えば、図2(a)に示すように、基板6の上にゲート電極5、絶縁体層7、ソース電極2及びドレイン電極3、及び有機半導体層4の順に配置してもよく、また、図2(b)に示すように、基板6の上にゲート電極5、絶縁体層7、有機半導体層4、及びソース電極2及びドレイン電極3の順に配置してもよい。さらに、図2(c)に示すように、基板6の上にソース電極2及びドレイン電極3、有機半導体層4、絶縁体層7、及びゲート電極5の順に配置してもよく、また、図2(d)に示すように、基板6の上に有機半導体層4、ソース電極2及びドレイン電極3、絶縁体層7及びゲート電極5の順に配置してもよい。ただし、図2(a)〜(d)において、図1で用いた符号と同じ符号で示す構成要素は、同様の構成要素を表わす。なお、横型FET1は、基板6と並行方向に電流が流れるため、横型FETと呼ばれている。
さらに、例えば、本発明はソース電極2、ドレイン電極3、ゲート電極5及びチャネルを備え、チャネルとして有機半導体層4を有するものであれば、横型FET1以外の任意の有機FETに用いることができる。たとえば、静電誘導トランジスタ(以下適宜「SIT」という)に用いることができる。
以下、SITの構造を説明する。
横型FET1では、ソース電極2及びドレイン電極3が基板6上に並べて配置され、電流の流れる方向がゲート電極5により誘起される電場に垂直方向であったのに対し、SITでは、ソース電極2とドレイン電極3との間の適当な位置にゲート電極5がグリッド状に配置され、電流の方向がゲート電極5により誘起される電場に平行方向である点を特徴とする。
図3は、SITの構成の一例の要部を示す断面図である。SIT8は、基板6上にソース電極2、有機半導体層4及びドレイン電極3がこの順に積層され、有機半導体層4中のソース電極2とドレイン電極3との間に、絶縁体層7により有機半導体層4から絶縁されたゲート電極5が設けられている。ただし、図3において、図1又は図2で用いた符号と同じ符号で示す構成要素は、同様の構成要素を表わす。
SIT8において、ソース電極2、ドレイン電極3、有機半導体層4、基板6及び絶縁体層7は、上記実施形態で説明したのと同様の構成となっている。
また、ゲート電極5は、その電極材料及び形成方法は上記実施形態と同様であるが、その形状は、多数キャリアがゲート電極9間を図7に矢印で示すように通り抜けるために網目状、縞状、格子状等のように所定の間隔を有する形状に設けられている。さらに、ゲート電極5の間隔の大きさは任意であるが、通常は、ソース電極2とドレイン電極3との距離(有機半導体層4の厚さに相当)よりも小さいことが好ましい。また、ゲート電極5の厚さは通常10nm以上、好ましくは20nm以上、また、通常10μm以下、好ましくは1μm以下である。
上記の構成により、SIT8においても、少数キャリアが有機半導体層4中に蓄積し、漏れ電流や移動度の経時的劣化が起こることを抑制することができる。また、SIT8によれば、多数キャリアの流れが平面状に広がるので、一度に大量の多数キャリアをソース電極2からドレイン電極3へ流れさせることができる。また、ソース電極2とドレイン電極3とが縦に配されているので、電極2,3間の距離を小さくできるため応答が高速である。したがって、SIT8は大電流を流したり、高速のスイッチングを行なったりする用途に好ましく適用される。
なお、SIT8においても、各層2〜7の間やSIT8外面には、必要に応じて他の層を設けてもよい。
本発明の有機電界効果トランジスタは、例えば電子デバイスを用いる広い産業分野において使用することができる。具体例としては、液晶表示素子、高分子分散型液晶表示素子、電子ペーパー、有機LED表示素子、電気泳動表示素子、無機EL表示素子、エレクトロクロミック素子等のディスプレイのアクティブマトリクスとして用いることができる他、ICタグ、ICチップ、センサーなどにも用いることができる。
本発明の一実施形態としての横型FETの要部を模式的に示す断面図である。 (a)〜(d)はいずれも、本発明の別の実施形態としての横型FETの要部を模式的に示す断面図である。 本発明の別の実施形態としてのSITの要部を模式的に示す断面図である。
符号の説明
1 横型FET(有機FET)
2 ソース電極
3 ドレイン電極
4 有機半導体層
4A チャネル面
5 ゲート電極
6 基板
7 絶縁体層
8 SIT(有機FET)

Claims (3)

  1. 有機半導体層と、ソース電極及びドレイン電極とを有し、
    該ソース電極と該ドレイン電極との間における該有機半導体層の表面に、チャネル面が形成されるとともに、
    該有機半導体層の、チャネル面に対して平行方向における電気抵抗率と垂直方向における電気抵抗率との比が、1/10以下である
    ことを特徴とする、有機電界効果トランジスタ。
  2. 該有機半導体層が、2次元構造を有する有機物結晶から主になるとともに、
    有機物結晶の2次元構造がチャネル面と平行である
    ことを特徴とする、請求項1記載の有機電界効果トランジスタ。
  3. 該有機半導体層が、1次元構造を有する有機物結晶から主になるとともに、
    有機物結晶の1次元構造がチャネル面と平行である
    ことを特徴とする、請求項1記載の有機電界効果トランジスタ。
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