JP2005272868A - 高剛性・低線膨張率を有する鋳造用アルミニウム合金 - Google Patents

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Abstract

【課題】 高剛性および低線膨張係数を実現すると同時に、コスト高にならず、リサイクル時の制約が少ない鋳造用アルミニウム合金。
【解決手段】 Si:13〜25質量%、Cu:2〜8質量%、Fe:0.5〜3質量%、Mn:0.3〜3質量%、P:0.001〜0.02質量%を含み、残部がAlと不可避的不純物からなり、FeとMnの合計量が3.0質量%以上であることを特徴とする剛性に優れ、低線膨張率を有する鋳造用アルミニウム合金。当該合金はさらに、Ni:0.5〜6質量%を含み、Fe、MnおよびNiの合計量が3.0質量%以上であってもよい。さらに、当該合金はさらに、Cr:0.1〜1.0質量%、Mg:0.05〜1.5質量%、Ti:0.01〜1.0質量%、B:0.0001〜1.0質量%、Zr:0.1〜1.0質量%、V:0.1〜1.0質量%、Mo:0.01〜1.0質量%の何れか1種以上を含んでもよい。
【選択図】 なし

Description

本発明は、鋳造用アルミニウム合金に関し、特に自動車等各種車両のラダー型フレーム、ペリメータ型フレームやケース類のように、特に高剛性と低線膨張率を必要とされる部材の鋳造に好適に用いることができる鋳造用アルミニウム合金に関するものである。
従来、自動車のフレームのように特に高い剛性が必要とされる部材には鋳鉄が使用されてきたが、近年は、省エネルギーの観点から自動車の軽量化の要求が高まり、この要求に答えうる材料としてアルミニウム合金が注目されている。
高い剛性を有するアルミニウム合金としては、アルミニウム合金中に、強化材としてAl2O3やSiC等を複合させたアルミニウム合金複合材が知られているが、これらの複合材は、製造工程が複雑でコスト高になる問題がある。また、Al2O3やSiC等を含んでいるためにリサイクル時に制約が多い等の問題もある。
特開平1−180938号公報は、耐摩耗性を向上させたアルミニウム合金を開示したものであるが、ここに開示されたアルミニウム合金は、自動車のフレーム等に使用されている鋳鉄品と置換しようとした場合には、剛性が小さく、線膨張係数が大きすぎる問題が有る。また、特開平3−199336号公報も同様に耐摩耗性を向上させたアルミニウム合金を開示したものであるが、ここに開示されたアルミニウム合金もまた自動車のフレーム等に使用されている鋳鉄品と置換しようとした場合には、剛性が小さく、線膨張係数が大きすぎ、さらに金型への焼きつきが起こり易いという問題もある。
特開平1−180938号公報 特開平3−199336号公報
従来のアルミニウム合金が有する上記のような問題を解決するため、本発明は、Si:13〜25質量%、Cu:2〜8質量%、Fe:0.5〜3質量%、Mn:0.3〜3質量%、P:0.001〜0.02質量%を含み、残部がAlと不可避的不純物からなり、FeとMnの合計量が3.0質量%以上であることを特徴とする剛性に優れ、低線膨張率を有する鋳造用アルミニウム合金を提案する。
さらに、Fe、MnおよびNiの合計量が3.0質量%以上となるようにNi:0.5〜6質量%を加えても良い。
さらに、上記Niに代えて、あるいはNiに加えて、Cr:0.1〜1.0質量%、Mg:0.05〜1.5質量%、Ti:0.01〜1.0質量%、B:0.0001〜1.0質量%、Zr:0.1〜1.0質量%、V:0.1〜1.0質量%、Mo:0.01〜1.0質量%の何れか1種以上を含んでも良い。
本発明の合金は、冷却速度30°C/秒以上で鋳造することが好ましく、高い冷却速度で鋳造するためにはダイカスト法で鋳造することが好ましい。
本発明の発明者は、アルミニウム合金について鋭意研究を行った結果、晶出物の面積率とアルミニウム合金の剛性および線膨張係数に相関があることを発見し、さらに研究を行った結果、上述の合金組成にすることにより、鋳造時にAl-Ni系、Al-Ni-Cu系、Al-Cu系、Al-Fe-Si系、Al-Fe-Mn系あるいはAl-Si-Fe-Mn系化合物の微細な晶出粒子を分散させることができ、必要とする高剛性および低線膨張率を実現できることを発見した。以下に、各成分の当該アルミニウム合金における作用について述べる。
Si:13〜25質量%
Siは、共晶Si、初晶Si、Al-Fe-Si系化合物として晶出し、剛性を向上させる作用がある。この効果は13質量%以上で顕著となるが、25質量%を超えると初晶Siが粗大化して、逆に剛性向上効果が低下する。また、鋳造温度を向上させる必要がある。更に、粗大Siによって切削加工性が著しく悪化する。Siには、線膨張率を低下させる作用、耐摩耗性を向上させる作用もある。Siのより好ましい範囲は、13〜17質量%である。
Cu:2〜8質量%
Cuは、Al-Cu系、Al-Ni-Cu系化合物として晶出し、剛性の向上に寄与する。この作用は4質量%以上の添加で顕著となるが、8質量%を超えると化合物が粗大化して逆に伸びが低下し、さらに耐食性も低下する。Cuのより好ましい範囲は3〜6質量%である。
Fe+Mn(+Ni):3.0質量%以上
Fe、Mn、Niは、Al-Fe-Mn系、Al-Fe-Si系、Al-Ni系、Al-Ni-Cu系、Al-Ni-Fe-Mn系、Al-Si-Fe-Mn系化合物として晶出し、剛性の向上に寄与し、線膨張係数を低下させる作用がある。また、耐熱性を向上させる作用もある。この作用は、Fe+Mn(+Ni)が3質量%以上で顕著となるが、12質量%を超えると晶出物が粗大化し、逆に剛性向上効果が小さくなるので、Fe+Mn+Niは合計で12質量%以下にするのが好ましい。
P:0.001〜0.02
Pは、初晶Siを微細化して均一に分散させる作用を有する。この作用は、0.001質量%以上で顕著であるが、0.02質量%を超えると溶湯の粘性が増加し、鋳造性が悪くなる。
Mg:0.05〜1.5質量%
Mgは、母相中に固溶し、剛性の向上に寄与する。この作用は、0.05質量%以上で顕著であるが、1.5質量%を越えると伸びが低下し、鋳造性が著しく悪化する。さらに好ましくは、Mgは0.4質量%以下である。
Cr:0.1〜1.0質量%
Crは、Al-Si-Fe-Mn-Cr系化合物として晶出し、剛性の向上に寄与する。また、初晶Siを微細且つ均一に分散させる作用をも有する。当該作用は、Crが0.1質量%以上で顕著であるが、1.0質量%を超えると粗大な化合物が形成され、逆に伸びが低下する。
Ti:0.01〜1.0質量%
Tiは、α相を微細化し、鋳造性の向上に寄与するとともに、Al-Ni系化合物の粗大かを防止する作用がある。その作用は、Tiが0.01質量%以上で顕著となるが、1.0質量%を超えると粗大な化合物が形成され、逆に伸びが低下する。
B:0.0001〜1.0質量%、V:0.1〜1.0質量%、Zr:0.1〜1.0質量%、Mo:0.01〜1.0質量%
B、V、Zr、Moは、高剛性晶出物を形成し、剛性の向上に寄与する。何れの元素も上限を超えて添加すると粗大な晶出物を形成して、伸びが低下する。
本出願の発明者は、本発明にかかるアルミニウム合金を製造し、組成と結晶構造及び剛性と線膨張係数との関係について実験的に確認したので、その結果を以下に述べる。
実験に用いたアルミニウム合金の組成を表1に示す。実験に用いたアルミニウム合金は、PFダイカスト法により、鋳造温度720°Cで200×200×10mmの平板形状に鋳造した後、200°Cで4時間保持して時効させた後、剛性(ヤング率)と線膨張係数(熱膨張係数)を測定した。合金No.1〜17は本発明に基づくアルミニウム合金、合金No.18〜24は、組成の範囲のうちの少なくとも1つが上述の条件を満たさない比較例である。条件を満足していない組成には下線を引いて示した。
Figure 2005272868
上記の測定結果を、表1に、組成とともに示す。
ここでは、ヤング率に関しては基準値を90GPaとして、これ以上のものが基準を満足すると判断し、線膨張係数については基準値を18×10−6/°Cとして、これ未満のものが基準を満足すると判断した。
表1に示されているように、合金No.18は、ヤング率が80GPaと基準値(90GPa)を下回っており、同時に、線膨張係数は20.0×10−6/°Cと基準値(18×10−6/°C)より大きく、何れの値も基準を満足していない。これは、Si、Cu、Ni+Fe+Mnの含有量が何れも不十分である、つまり上述の範囲を下回っていることが原因であると考えられる。
合金No.19もまた、合金No.18と同様に、ヤング率、線膨張係数ともに基準を満足していない。これは、Cuについては上述の範囲に入っているものの、SiとNi+Fe+Mnの含有量が何れも不十分である(上述の範囲を下回っている)ことが原因であると考えられる。
合金No.20は、ヤング率が基準値よりも低いが、これはNi+Fe+Mnの含有量が合計2.0質量%であって、上述の条件、Ni+Fe+Mn3.0質量%を下回っていることが原因と考えられる。
合金No.21は、ヤング率と線膨張係数は基準を満足しているが、金型に焼きつきを生じた。これは、Feが実質的に添加されておらず、上述の条件を満足していなかったことが原因と考えられる。
合金No.22は、延びが不十分で、弾性変形領域内で試験片が割れてしまったためにヤング率を測定することができなかった。これは、Mnが実質的に添加されておらず、組成に関する上述の条件を満足していないためと考えられる。
合金No.23は、ヤング率、線膨張係数ともに基準を満足していない。これは、Cuが1質量%では不十分である(上述の範囲を下回っている)ことが原因であると考えられる。
合金No.24もまた、ヤング率、線膨張係数ともに基準を満足していない。これは、Siが12質量%では不十分である(上述の範囲を下回っている)ことが原因であると考えられる。
これに対して、上述の組成範囲を満足する本発明のアルミニウム合金No.1〜17は、表1に示されている予に何れも、ヤング率および線膨張係数の値が基準を満足している。
本発明の鋳造用アルミニウム合金は、特に自動車等各種車両のラダー型フレーム、ペリメータ型フレームやケース類のように、特に高剛性と低線膨張率を必要とされる部材の鋳造に好適に用いることができる。

Claims (3)

  1. Si:13〜25質量%、Cu:2〜8質量%、Fe:0.5〜3質量%、Mn:0.3〜3質量%、P:0.001〜0.02質量%を含み、残部がAlと不可避的不純物からなり、FeとMnの合計量が3.0質量%以上であることを特徴とする剛性に優れ、低線膨張率を有する鋳造用アルミニウム合金。
  2. Si:13〜25質量%、Cu:2〜8質量%、Fe:0.5〜3質量%、Mn:0.3〜3質量%、Ni:0.5〜6質量%、P:0.001〜0.02質量%を含み、残部がAlと不可避的不純物からなり、Fe、MnおよびNiの合計量が3.0質量%以上であることを特徴とする剛性に優れ、低線膨張率を有する鋳造用アルミニウム合金。
  3. さらに、Cr:0.1〜1.0質量%、Mg:0.05〜1.5質量%、Ti:0.01〜1.0質量%、B:0.0001〜1.0質量%、Zr:0.1〜1.0質量%、V:0.1〜1.0質量%、Mo:0.01〜1.0質量%の何れか1種以上を含むことを特徴とする請求項1又は2のいずれかに記載の、剛性に優れ、低線膨張率を有する鋳造用アルミニウム合金。
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