JP2005268821A - セラミックス回路基板及びこれを用いたパワー半導体モジュール - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 セラミックス基板の少なくとも一方の面に複数の回路パターンに沿ったろう材層を形成し、当該ろう材層を介して金属板を接合し、当該金属板の不要部分をエッチング処理することにより前記金属板からなる回路パターンを形成すると共に、前記金属板の外縁からはみ出した前記ろう材層によるはみ出し部を形成したセラミックス回路基板において、前記はみ出し部の最大面粗さRmaxが5〜50μmであるセラミックス回路基板である。
【選択図】 図2
Description
第1の発明は、セラミックス基板の少なくとも一方の面に複数の回路パターンに沿ったろう材層を形成し、当該ろう材層を介して金属板を接合し、当該金属板の不要部分をエッチング処理することにより前記金属板からなる回路パターンを形成すると共に、前記金属板の外縁からはみ出した前記ろう材層によるはみ出し部を形成したセラミックス回路基板において、前記はみ出し部の最大面粗さRmaxが5〜50μm、望ましくは20〜40μmであるセラミックス回路基板である。
また、本願発明は上記したセラミックス回路基板の一方の面に接合した金属板に半導体チップを搭載し、前記セラミックス基板の他方の面に放熱板を接合したパワー半導体モジュールである。
即ち、Ag−Cu−In−Ti系のろう材を母材とした合金粉末において、適度な粒径と粒度分布のAg粉末粒子を適切な量だけ後添加することで、金属板接合前の熱処理で生成されるろう材層表面の鱗状凹凸を緩和できること、並びにろう材層の直線性を改善できること、さらにはエッチング処理におけるCu成分溶出によるはみ出し部への影響を最小限に抑えられることができるろう材として、Ag:85〜55質量%、In:5〜25質量%、Ti:0.2〜2.0質量%、残部Cu及び不可避不純物からなる平均粒子径15〜40μmの合金粉末に、さらに平均粒子径1〜15μmのAg粉末粒子を5〜30質量%添加したものが挙げられる。
先ず、ろう材について説明する。本発明のろう材は、母材合金がAg−Cu−In−Tiの4元系であって、質量%でAgを85〜55質量%、Inを5〜25質量%、Tiを0.2〜2.0質量%、Cuを35〜20質量%及び不可避不純物から組成されたものである。合金粉末の作製は、ガスアトマイズ法により平均粒径d50値が50μmとなる様に噴霧し、50μm以上の粉末は篩分けによりカットし、50μmアンダーの粉末を用いるもので、ここでは合金粉末の平均粒子径d50は28μmである。また、合金粉末の作製は、低コストの水アトマイズ法でも可能であるが、活性金属として作用するTiの酸化を防止するため、この場合、合金粉末中の酸素量を0.5質量%以下に制御することが肝要である。
また、図1で示した様に、ろう材ペーストを基板あるいは銅板に印刷した後、観察倍率1000倍にて観察したSEM像について、単位面積当たりの合金粉末および添加したAg粉末の割合を、面積率にて評価することが可能である。また、同様の粒径のAg粉末およびAg−Cu−In−Ti合金粉末との判別には、エネルギー分散型X線分析装置(EDX)の併用によりCu成分の有無を面分析により評価することで可能となる。
また、アルミニウムを金属部材として用いることは、電気的抵抗、高熱伝導性(低熱抵抗性)は、銅に劣るものの、アルミニウムが持つ塑性変形性を利用して、冷熱サイクルに対する実装信頼性を有する点で好ましい。
その他にも電気的抵抗を重視すれば銀を用いることも好ましく、また電気的特性よりも接合後の信頼性を考慮する場合にはモリブデンやタングステンを用いれば、該金属の熱膨張率が窒化アルミニウム、窒化ケイ素に近いことから接合時の熱応力を小さくすることができるので好ましい。
平均粒子径が0.2〜3.0mmの窒化ケイ素粉末:96質量%に対し、MgO:3質量%、および Y2O3:1質量%の焼結助剤を添加した混合粉末を作製した。次に、アミン系の分散剤を2質量%添加したエタノール・ブタノール溶液を満たしたボールミルの樹脂製ポット中に、前記混合粉末および粉砕媒体の窒化ケイ素製ボールを投入し、48時間湿式混合した。次に、前記ポット中の混合粉末:83.3質量%に対しポリビニル系の有機バインダー:12.5質量%および可塑剤(ジメチルフタレ−ト):4.2質量%を添加し、次いで48時間湿式混合し、シート成形用スラリーを得た。この成形用スラリーを脱泡、溶媒除去により粘度を調整後、ドクターブレード法によりグリーンシートを成形した。次に、成形したグリーンシートを空気中400〜600℃で2〜5時間加熱することにより前記有機バインダー成分を十分に脱脂(除去)し、次いで脱脂体を0.9MPa(9気圧)の窒素雰囲気中で1900℃×5時間焼成し、50μm/inch以上の反りが生じた場合について、同窒素雰囲気中で1800℃×5時間の反り直し熱処理を行い、その後室温に冷却した。得られた窒化ケイ素焼結体シートをサンドブラスト処理により表面性状を調整し、縦50mm×横30mm×厚さ0.63mmの窒化ケイ素基板を得た。
また、ろう材ペースト用のバインダー選定により、別途脱脂プロセスを設けることなくろう付け処理の昇温過程で、所定温度にて保持することで、脱脂・ろう付け処理を同時に行うことができる。この場合、バインダー選定が重要となるが、例えば、αテネピネオールを溶媒とし、ポリイソブチルメタクリレート、ジエチレンングリコール・モノブチルエーテルを用いた場合、高真空下熱処理においても、灰化カーボンが残存することなく、接合強度が得られる。本発明では、脱脂・ろう付けの同時処理を行っている。
尚、ろう材が窒化ケイ素基板と銅板を十分に濡らし、また、回路パターン潰れがなく、回路端部に位置するろう材はみ出し部を形成するため、更に両者の熱膨張の違いからくる残留応力による耐熱衝撃性の低下を防止するためには、接合温度は700〜800℃が好ましい。また、雰囲気については真空中で処理を行うことが活性金属粉末及び銅粉末、銅板が酸化されることが無く良好な接合状態を得ることができ、特に10−2Pa以下の真空度で接合することが望ましい。さらに接合時に適度な荷重をかけることで銅板とろう材および窒化ケイ素基板とろう材がより確実に接触でき、良好な接合状態が得られる。重さとしては20〜150g/cm2の荷重を採用できる。
Ag粒子の平均粒径と添加量による凹凸面の粗さ、密着強度の相関を下記する実施例に示す。
これら本発明によるAg粒子の平均粒径と添加量によるうねりの相関についても下記する実施例に示す。
(実施例)
例えば、Ag:58.8質量%、Cu:27.5質量%、In:12.5質量%、Ti:1.2質量%及び不可避不純物からなる合金粉末、100重量部に対し、下表1に示すAg粒子粉末を添加し、全ペーストに占める割合でα−テネピネオール6質量%、ジエチレンングリコール・モノブチルエーテル5質量%、ポリイソブチルメタクリレート5質量%、分散剤0.1質量%を配合したのちプラネタリーミキサーを用いて混合を行い、120Pa・sのペーストを作成した。使用した母材合金粉末の平均粒径は30μmであった。
このペーストを縦50mm×横30mm×厚さ0.63mm寸法の窒化ケイ素質焼結体製の基板上にスクリーン印刷により図3のようなパターンで厚み25μmではみ出し部Lが0.3mmとなるように塗布した。ここで、ろう材はみ出し量を0.25mm以上を設計値としているが、これは、金属回路板端部付近のセラミックス基板への応力集中を緩和する効果が最大となる値であり、この場合、応力集中を約60%に低減できる。
この後、120℃×30分大気中で乾燥し、続いて、回路用銅板−窒化ケイ素基板−放熱用銅板と重ねた後、70g/cm2の荷重をかけながら真空中(10−2Pa)、760℃×10分保持の熱処理を施して銅板と窒化ケイ素基板の接合を行った。用いた銅板の板厚は、エッチング後の回路基板の反り、ならびにはんだリフロー後のモジュール実装形状、さらには、回路基板と放熱基板(例えば、Cu、Cu−W、Mo、Cu−Cu0、Al−SiC等)のはんだ不良欠陥の防止を考慮して、回路側が1.0mmt、放熱側を0.8mmtとした。その後、図4のパターンとするためにエッチング公差を考慮したレジストパターンの印刷、不要部分の銅部材の除去を行い各々のセラミックス回路基板を作製した。
それぞれのセラミックス回路基板の銅板間の間隙へのろう材の流れ出しを観察し、また超音波探傷機で接合状態を観察した。さらに、接合した銅板を窒化ケイ素基板に対して90°方向に引っ張り、ピール強度を測定して密着強度とした。また、はみ出し部の外縁部の最大面粗さRmax(表面凹凸)と、最外縁のうねり量H及びはみ出し部のろう材層の残留率をそれぞれ測定した。
ろう材ペーストの作製、窒化ケイ素基板への印刷、ろう付け条件等は上記実施例と同様に行い、表1の試料No.31〜41に示す合金粉末及びAg粉末添加した。これらについて上記と同様に表面粗さ、密着強度、うねり量、ろう材層残留率を測定した。
Ag:85〜55質量%、In:5〜25質量%、Ti:0.2〜2.0質量%、残部Cu及び不可避不純物からなる平均粒子径1〜40μm合金粉末に、さらに平均粒子径1〜15μmのAg粉末粒子を5〜30質量%添加した場合、スクリーン印刷後の印刷パターンむらが生じるなどの不具合がなく、ろう材層表面の鱗状凹凸を緩和する効果が確認できた。また、Ag−Cu−In−Ti系合金粉末の平均粒径は15〜40μmであって、これに上記仕様のAg粉末を添加することで、ろう材の充填密度を向上することができ、特に、添加するAg粉末の粒度分布を規定することで、ろう材の最密充填を達成することができた。これらによりペースト印刷時の塗布量の制御、ろう付け過程での粒子間の反応性促進が達成できる。よって、銅板とセラミックス基板の接合強度を強化することが可能となった。
No.31は、合金粉末中のAg含有量が85%超の90%であり、ろう付け接合後の銅板表面にろう材の流れ出しが生じる不具合があった。
No.32は、合金粉末中のAg含有量が55%未満の50%であり、Cu含有量が多く、ろう材と銅板との接合強度が低下するため、密着強度が15.0(kN/m)に低下した。また、ろう材組成中のCu含有量が増大するため、エッチング後のはみ出し部のろう材層の残留率も低下し、73%となった。
No.33および34のAg粉末の無添加では、ろう材表面部の凹凸が50μm超、密着強度が20(kN/m)未満、ろう材はみだし端部のうねりが100μm超、ろう材層残留率が80%未満となった。
No.35は、Ag粉末の添加量が30%超であり、ろう付け接合後の銅板表面にろう材の流れ出しが生じる不具合があった。
No.37は、合金中のIn含有量が25%超であり、この場合ろう材の融点が低下し、700℃〜800℃のろう付け処理では、回路パターンくずれがあり、また、ろう付け接合後の銅板表面にろう材の流れ出しが生じる不具合があった。更に、ろう材表面部の凹凸が50μm超、密着強度が20(kN/m)未満、ろう材はみだし端部のうねりが100μm超、ろう材残留率が80%未満となった。
No.39は、合金粉末中のTi含有量が2.5%超であり、この場合ろう材層中に脆性相のTi−Si相が形成されるため、ピ−ル強度は低下し15.0(kN/m)となった。
No.41は、合金粉末の平均粒径が55μm超であり、この場合加熱過程でろう材粉末の反応性が悪く、700℃〜800℃のろう付け処理では、接合に充分なろう材融液を生じることができず、未接合部が多く、このときにもピ−ル強度は低下し、18.5(kN/m)となった。また、エッチング処理後のろう材残留率も76%に低下した。
上記実施例の回路基板に対し、3点曲げ強度の評価および耐冷熱サイクル試験を行った。その結果、曲げ強度が600MPa以上と大きく、回路基板の実装工程における締め付け割れおよびはんだ付け工程時の熱応力に起因するクラックの発生する頻度がほぼ見られなくなり、回路基板を使用した半導体装置の製造歩留まりを大幅に改善できることが実証された。また、耐熱サイクル試験は、−40℃での冷却を20分、室温での保持を10分および125℃における加熱を20分とする昇温/降温サイクルを1サイクルとし、これを繰り返し付与し、基板部にクラック等が発生するまでのサイクル数を測定した。その結果、3000サイクル経過後においても窒化ケイ素質焼結体製基板の割れや銅製回路板の剥離はなく、優れた耐久性と信頼性を兼備することが確認された。また、3000サイクル経過後においても耐電圧特性の低下は発生しなかった。
3、4、5:金属(銅)板
3a、4a、5a:傾斜面
3b、4b、5b:半導体チップとの接合面
3c、4c、5c:セラミックス基板との接合面
7:セラミックス基板
8、9、10:ろう材層
11:金属(銅)板
12:ろう材層
20:はみ出し部
Claims (6)
- セラミックス基板の少なくとも一方の面に複数の回路パターンに沿ったろう材層を形成し、当該ろう材層を介して金属板を接合し、当該金属板の不要部分をエッチング処理することにより前記金属板からなる回路パターンを形成すると共に、前記金属板の外縁からはみ出した前記ろう材層によるはみ出し部を形成したセラミックス回路基板において、前記はみ出し部の最大面粗さRmaxが5〜50μmであることを特徴とするセラミックス回路基板。
- セラミックス基板の少なくとも一方の面に複数の回路パターンに沿ったろう材層を形成し、当該ろう材層を介して金属板を接合し、当該金属板の不要部分をエッチング処理することにより前記金属板からなる回路パターンを形成すると共に、前記金属板の外縁からはみ出した前記ろう材層によるはみ出し部を形成したセラミックス回路基板において、前記はみ出し部の境界線における凹所と凸所との距離が10〜100μmであることを特徴とするセラミックス回路基板。
- セラミックス基板の少なくとも一方の面に複数の回路パターンに沿ったろう材層を形成し、当該ろう材層を介して金属板を接合し、当該金属板の不要部分をエッチング処理することにより前記金属板からなる回路パターンを形成すると共に、前記金属板の外縁からはみ出した前記ろう材層によるはみ出し部を形成したセラミックス回路基板において、前記はみ出し部におけるろう材層の残留率が80%以上であることを特徴とするセラミックス回路基板。
- 前記はみ出し部におけるろう材層において、Ag−rich相がCu−rich相よりも多く占めることを特徴とする請求項3に記載のセラミックス回路基板。
- 前記セラミックス基板は窒化ケイ素質焼結体からなり、前記金属板が銅板であることを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載のセラミックス回路基板。
- 前記請求項1〜5の何れかに記載のセラミックス回路基板の一方の面に接合した金属板に半導体チップを搭載し、前記セラミックス基板の他方の面に放熱板を接合したことを特徴とするパワー半導体モジュール。
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