JP2005268547A - 光電変換装置 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】本発明の光電変換装置は、半導体からなる第1導電型層、微結晶半導体からなるi型層、半導体からなる第2導電型層をこの順に積層して構成された光電変換層を備え、第1導電型層及び第2導電型層の少なくとも一方は、炭素原子を含有した微結晶シリコンからなる炭素含有層である。
発明者は、第1導電型層及び第2導電型層の少なくとも一方を、炭素原子を含有した微結晶シリコンで形成することにより、上記半導体層に含まれる炭素量が少ない場合、例えば、炭素原子の濃度が0.1〜9.8原子%である場合であっても、高い光電変換効率が得られることを見出し、本発明の完成に到った。
【選択図】図1
Description
以上述べてきたように、上記薄膜シリコン太陽電池は、大面積同時形成や投入エネルギー低減効果により、低コスト化が可能であるという利点を持ちながらも、現実的にはバルク結晶系太陽電池と比較して大きく市場拡大するには到っていない。その主要因は、バルク結晶系太陽電池と較べて低い光電変換効率であると考えられる。すなわち、太陽電池の光電変換効率は低くなればなるほど、同発電容量をまかなうための太陽電池モジュール枚数が増加し、それとともに設置コストも増大するため、低コストの薄膜シリコン太陽電池を用いているにも関わらず、システム価格が必ずしもバルク結晶系太陽電池より低くならないという問題がある。したがって、薄膜シリコン太陽電池の本格普及のためには高効率化が重要な課題である。
1−1.一般的事項
本発明の第1の実施形態に係る光電変換装置は、透光性基板上に、透明導電層、上記の光電変換層及び裏面電極をこの順に重ねて備える。この場合、透光性基板側が光入射面となる。また、光電変換層と裏面電極との間に裏面透明導電層を備えることが好ましい。
透光性基板としては、ガラス板、ポリイミド若しくはポリビニルなどの耐熱性を有する透光性樹脂、又はそれらが積層されたものなどが好適に用いられるが、光透過性が高く光電変換装置全体を構造的に支持し得るものであれば特に限定されない。また、それらの表面に金属膜、透明導電膜、又は絶縁膜などを被覆したものであってもよい。
透明導電層は、透明導電性の材料からなり、例えば、ITO、酸化錫又は酸化亜鉛などの透明導電性膜を単層又は積層させたものを用いることができる。透明導電層は、電極としての役割を担っているので、電気伝導性が高い方が好ましく、微量の不純物を添加することで電気伝導性を向上させたものを用いることもできる。透明導電層の製造方法としては、スパッタリング法、CVD法、電子ビーム蒸着法、ゾルゲル法、スプレー法及び電析法などの公知の方法が挙げられる。また、透明導電層の表面に凹凸形状が形成されていることが望ましい。この凹凸によって、透光性基板側から入射した入射光を散乱・屈折させて光路長を伸ばすことができるので、光電変換層内での光閉じ込め効果が高まり短絡電流の向上が期待できる。上記凹凸の形成方法としては、一旦透明導電層を堆積させたのちにエッチング法やサンドブラストのような機械加工により形成する方法のほかに、透明導電層製膜時に膜材料の結晶成長により形成される表面凹凸を利用する方法、結晶成長面が配向しているために規則的な表面凹凸が形成されることを利用する方法などを用いてもよい。
膜材料の結晶成長時に形成される凹凸を利用した基板として、白板ガラス上にCVD法により酸化錫層を堆積させた基板(商品名Asahi−U)を基板として用い、さらに該基板上に、スパッタリング法で酸化亜鉛層を堆積させてもよい。この場合、後に光電変換層を形成する際に、上記酸化錫層がプラズマによる損傷を受けるのを防止することができるので、より好ましい。
1−4−1.一般的事項
光電変換層は、透明導電層上に形成される。光電変換層は、半導体からなる第1導電型層、微結晶半導体からなるi型層、半導体からなる第2導電型層をこの順に重ねて有する。また、第1導電型層及び第2導電型層の少なくとも一方は、炭素原子を含有した微結晶シリコンからなる。ここで、「微結晶」とは、結晶相とアモルファス相とが混在した状態を意味する。従って、「微結晶シリコン」とは、結晶シリコンとアモルファスシリコンとが混在した状態を意味する。また、「炭素原子を含有した微結晶シリコン」とは、微結晶シリコン中に炭素原子が含有されている状態を意味する。言い換えると、これは、シリコンカーバイドの結晶相を実質的に含まない状態を意味する。この状態は、例えば、上記炭素原子を含有した微結晶シリコンのラマン散乱スペクトルを観測したとき、シリコンカーバイド結晶中のシリコン−カーボン結合に帰属されるピークが実質的に検出されないことによって確認することができる。この状態は、また、X線回折法においてシリコンカーバイド結晶構造に帰属される回折ピークが実質的に検出されないことによって確認してもよい。
上記第1導電型層または第2導電型層中の炭素原子の含有量は、二次イオン質量分析(SIMS)により求めることができる。また、「炭素原子を含有した」には、微量の炭素原子が含有されている場合、例えば、0.01原子%より小さい濃度で炭素原子が含有されている場合は、含まれない。また、用語「微結晶シリコン」及び「アモルファスシリコン」は、それぞれ、当該分野で一般的に使われる、水素化微結晶シリコン及び水素化アモルファスシリコンを含むものとする。
1−4−2−1.一般的事項
第1導電型層及び第2導電型層は、それぞれn型及びp型、又はこの逆の導電型の半導体からなる層である。p型層の導電性決定元素としては、ボロン、アルミニウム又はガリウムなどの不純物原子を用いることができる。n型層の導電性決定元素としては、リン、窒素又は酸素などの不純物原子を用いることができる。
また、第1導電型層及び第2導電型層の他方は、半導体からなり、具体的には、シリコン、シリコンに炭素が添加されたSixC1-x又はゲルマニウムが添加されたSixGe1-xなどからなる。この層は、多結晶、微結晶又はアモルファスである。また、この層は、好ましくは、微結晶シリコン又はアモルファスシリコンからなり、さらに好ましくは、炭素原子を含有した微結晶シリコンからなる。
また、炭素含有層は、その中に含まれる炭素原子の濃度(以下、「炭素濃度」という。)が0.1〜9.8原子%であることが好ましい。この場合に、特に高い光電変換効率が得られるからである。
また、炭素含有層は、その中に含まれる水素原子の濃度(以下、「水素濃度」という。)が5〜15原子%であることが好ましい。5原子%よりも低い場合、光電変換効率が低下する。これは、微結晶シリコンのバンドギャップが小さくなること、透過率が低くなること、及び水素原子によるパッシベーション効果が十分得られないことなどの理由により、開放電圧、短絡電流密度及び形状因子が減少するためであると考えられる。また、15原子%よりも高い場合も光電変換効率が低下する。これは、微結晶シリコン中に過剰に入り込んだ水素原子によってシリコンの原子配列が乱されるなどの理由によると考えられる。ここで上記水素濃度とは、二次イオン質量分析(SIMS)により求めた値である。
炭素含有層は、90〜250℃で形成されることが好ましい。90℃より低い場合、プラズマ中の原子状水素によるエッチング効果が生じ易くなり、このため、炭素含有層を均一に形成することが困難になるからである。また、250℃より高い場合、微結晶シリコン中から水素の脱離が生じ易くなり、さらに、微結晶シリコン成長表面における水素被覆率の低下により結晶相の体積分率が低下するからである。また、炭素含有層は、シリコンカーバイドの結晶相を含む必要がないため、とりわけ高温にしなければならない理由はない。
i型層は、特に不純物を添加していない微結晶半導体からなり、好ましくは、微結晶シリコンからなる。ただし、実質的に真性な半導体であれば、少量の不純物元素が含まれていてもよい。また、i型層は、炭素が添加されたSixC1-x、又はゲルマニウムが添加されたSixGe1-xなどからなってもよい。
光電変換層の各層は、CVD法(常圧CVD、減圧CVD、プラズマCVD、熱CVD、ホットワイヤーCVD又はMOCVD法など)などで形成することができる。CVD法により各層を形成する場合に使用するシリコン含有ガスとしては、SiH4又はSi2H6などシリコン原子を含むものであれば特に限定されないが、一般的にSiH4を用いる場合が多い。上記シリコン含有ガスとともに使用される希釈ガスとしては、H2、Ar又はHeなどを用いることができるが、アモルファスシリコン又は微結晶シリコンの形成時にはH2を用いる場合が多い。また、p型層又はn型層形成時には、上記シリコン含有ガス及び希釈ガスとともにドーピングガスを使用し、該ドーピングガスは目的とする型の導電性決定元素を含むガスであれば特に限定されないが、一般的にp型導電性決定元素がボロンである場合はB2H6を、n型導電性決定元素がリンである場合はPH3を用いる場合が多い。上記プラズマCVD法により光電変換層を形成する際に、基板温度、圧力、ガス流量及びプラズマへの投入電力などの製膜パラメータを適切に制御することで、アモルファス相と結晶相の存在比率を制御することが可能である。また、炭素含有層形成時に使用する炭素含有ガスとしては、炭化水素(CH4又はC2H6など)などの炭素原子を含むものを用いることができる。
光電変換層上に、好ましくは、裏面透明導電層が形成される。この場合、入射光に対する光閉じ込め向上効果や光反射率向上効果が得られる。また、裏面電極に含まれる元素の光電変換層への拡散を抑制することができる。裏面透明導電層は、1−3で述べた透明導電層と同様の材料及び製法にて形成することができる。
裏面電極は、導電層が少なくとも1層以上あればよく、光反射率が大きく導電率が高い程好ましい。裏面電極は、光電変換層上に、又は裏面透明導電層上に形成される。裏面電極は、可視光反射率の高い銀、アルミニウム、チタン若しくはパラジウムなどの金属材料、又はこれらの合金などで形成することができる。裏面電極は、CVD法、スパッタリング法、真空蒸着法、電子ビーム蒸着法、スプレー法又はスクリーン印刷法などで形成することができる。裏面電極は、光電変換層で吸収されなかった光を反射して再度光電変換層に戻すため、光電変換効率の向上に寄与する。
スーパーストレート型光電変換装置は、通常、透明導電層が形成された透光性基板上に、第1導電型層、i型層及び第2導電型層をこの順に重ねて備える。第1導電型層及び第2導電型層の何れが炭素含有層であってもよいが、第1導電型層が炭素含有層であることが好ましい。入射光は、第1導電型層、i型層及び第2導電型層をこの順で通過するので、第1導電型層が炭素含有層であることにより、炭素含有層を設けた効果が大きくなるからである。
2−1.構成、作用
本発明の第2の実施形態に係る光電変換装置は、透光性基板上に、透明導電層、複数の光電変換層(各光電変換層は、上記記載のものである。)及び裏面電極をこの順に重ねて備える。また、光電変換層と裏面電極との間に裏面透明導電層を備えることが好ましい。 また、上下に隣接する2つの光電変換層間には、中間層が形成されていることが好ましい。複数の光電変換層は、例えば、基板側から第1の光電変換層及び第2の光電変換層をこの順に重ねて備える。
中間層を除く各構成要素の構造、製造方法などは、上述したものと同様である。
3−1.一般的事項
本発明の第3の実施形態に係る光電変換装置は、金属からなる基板上に、又は表面を金属で被覆した基板上に、上記の光電変換層、透明導電層及びグリッド電極をこの順に重ねて備える。この場合、グリッド電極側が光入射面となる。
基板には、ステンレス鋼(SUS)又はアルミニウムなどの金属などの基板を用いることができる。また、基板には、ガラス、耐熱性の高分子フィルム(ポリイミド、PET、PEN、PES又はテフロン(登録商標)など)又はセラミックスなどを、金属などで被覆したものを用いてもよい。また、基板には、これらを積層したものを用いてもよい。
基板上に光電変換層を形成する。光電変換層の構成及び製造方法などは、1−4で述べたものものと同様である。
光電変換層上に、透明導電層を形成する。透明導電層の構成及び製造方法などは、1−3で述べたものと同様である。
透明導電層上に、好ましくは、グリッド電極を形成する。グリッド電極の構成及び製造方法などは、公知のものを用いることができる。
本明細書において、「基板上に」という語句には、「保護膜又は絶縁膜などを介して基板上に」という場合なども含まれる。その他の「膜上に」又は「層上に」などの語句についても同様である。
1.構造
図1は、本発明の実施例1〜実施例8に係る光電変換装置1の構造を示す断面図である。本実施例に係る光電変換装置1(スーパーストレート型)は、白板ガラス(商品名:Asahi−U)からなる透光性基板3上に、酸化亜鉛からなる透明導電層5、光電変換層7、酸化亜鉛からなる裏面透明導電層9及び銀からなる裏面電極11をこの順で備える。
光電変換装置1は、以下の工程で製造した。
p型層7aを形成するのに用いる反応ガスにCH4ガスを含めずに、p型層7aを形成した。その他の条件は、実施例1と同様である。このp型層7aについて、上記実施例と同様の二次イオン質量分析を行った結果、炭素濃度及び水素濃度は、それぞれ0.002原子%及び10.0原子%であった。また、ラマンスペクトル測定から結晶化率は4.3であった。
このようにして得られた光電変換装置について、AM1.5(100mW/cm2)照射条件下におけるセル面積1cm2の電流−電圧特性を測定した。結果を表1にまとめた。また、光電変換効率の炭素濃度依存性を図3に示した。なお、図3は、炭素含有層に含まれる炭素濃度と、光電変換効率との関係を示すグラフである。
また、炭素濃度が14.8原子%である実施例8は、その光電変換効率については、比較例1のものよりも低い。その原因は、形状因子が大きく低下していることから、炭素濃度が14.8原子%以上の場合には、i型層7bとの界面においてバンドギャップの不連続とミスマッチが大きくなるためであると考えられる。従って、光電変換効率を向上させるためには、p型層7a中の炭素濃度を9.8原子%以下とすることが好ましい。
また、p型層7aの炭素濃度を3.3〜9.8原子%とすることで、さらに開放電圧が高く、従って、さらに光電変換効率の高い光電変換装置を得ることができるので望ましい。また、p型層7aの水素濃度が5〜15原子%の範囲であれば炭素原子添加効果を十分に得ることができるのでより望ましい。また、上記範囲の水素濃度を持つp型層7aを形成するために、形成温度を90〜250℃とすることが望ましい。
(実施例13及び実施例14)
図2は、本発明の実施例13及び実施例14に係る光電変換装置13の構造を示す断面図である。本実施例に係る光電変換装置13は、白板ガラス(商品名:Asahi−U)からなる透光性基板3上に、酸化亜鉛からなる透明導電層5、第1の光電変換層17、第2の光電変換層27、酸化亜鉛からなる裏面透明導電層9及び銀からなる裏面電極11をこの順で積層してなる。
実施例13に係る光電変換装置13は、以下の工程で製造した。
3.実施例14に係る光電変換装置の製造
本実施例においては、第1及び第2の光電変換層17、27のp型層17a、27aの両方の形成時に、CH4ガスを使用した。その他の条件は、実施例13と同様である。p型層17a形成時のH2/SiH4ガス流量比は5倍、B2H6/SiH4ガス流量比は膜中ボロン濃度が0.01原子%となるように調節し、CH4/SiH4ガス流量比は、膜中炭素濃度が5.1原子%となるように調節した。水素濃度は10.0原子%である。
第1及び第2の光電変換層17、27のp型層17a、27aの形成するのに用いる反応ガスにCH4ガスを含めずに、p型層17a、27aを形成した。その他の条件は、実施例13と同様である。p型層27a形成時のH2/SiH4ガス流量比は150倍、B2H6/SiH4ガス流量比は膜中ボロン濃度が0.01原子%となるように調節した。
このようにして得られた光電変換装置について、AM1.5(100mW/cm2)照射条件下におけるセル面積1cm2の電流−電圧特性を測定した。結果を表3にまとめた。
3 透光性基板
5 透明導電層
7 光電変換層
9 裏面透明導電層
11 裏面電極
13 積層型光電変換層
17 第1の光電変換層
27 第2の光電変換層
7a、17a、27a p型層
7b、17b、27b i型層
7c、17c、27c n型層
Claims (6)
- 半導体からなる第1導電型層、微結晶半導体からなるi型層及び半導体からなる第2導電型層をこの順に重ねて有する光電変換層を備え、第1導電型層及び第2導電型層の少なくとも一方は、炭素原子を含有した微結晶シリコンからなる炭素含有層である光電変換装置。
- 炭素含有層は、その中に含まれる炭素原子の濃度が0.1〜9.8原子%である請求項1に記載の光電変換装置。
- 炭素含有層は、その中に含まれる炭素原子の濃度が3.3〜9.8原子%である請求項1に記載の光電変換装置。
- 炭素含有層は、その中に含まれる水素原子の濃度が5〜15原子%である請求項1〜3の何れか1つに記載の光電変換装置。
- 炭素含有層は、90〜250℃で形成される請求項1〜4の何れか1つに記載の光電変換装置。
- 透光性基板上に、透明導電層、請求項1〜5の何れか1つに記載の光電変換層及び裏面電極をこの順で重ねて備える光電変換装置。
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