JP2005266562A - 定着用部材、定着装置および画像形成装置 - Google Patents

定着用部材、定着装置および画像形成装置 Download PDF

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Abstract

【課題】ウォームアップタイムが短く熱効率が高い上に、更に信頼性に優れ、柔軟性の要求されるベルト状等の形態での利用も可能な汎用性の高い電磁誘導加熱方式の定着装置に利用可能な定着用部材、これを用いた定着装置、および、この定着装置を用いた画像形成装置を提供すること。
【解決手段】基体上に少なくとも断熱層と、金属層と、表面層とがこの順に積層され、電磁誘導により発熱する定着用部材であって、前記断熱層の熱伝導率が0.25W/m・℃以下であることを特徴とする定着用部材。
【選択図】 なし

Description

本発明は、電子写真方式を利用した複写機やプリンター等における、電磁誘導加熱用の定着用部材、それを用いた電磁誘導加熱方式の定着装置、および、この定着装置を備えた画像形成装置に関するものである。
従来、電子写真方式を利用した複写機やプリンター等においては、記録媒体上に形成された未定着トナー像を定着して永久画像にする工程を定着工程と呼んでいる。前記定着工程としては、溶剤定着法、圧力定着法、加熱定着法が知られている。溶剤定着法は溶剤蒸気が発散し、臭気や衛生上の問題点がある。
一方、圧力定着法は他の定着法と比較して定着性が悪く、かつ、圧力感応性トナーが高価であるという欠点を有している。溶剤定着法及び圧力定着法は、これらの欠点が原因となり、共にほとんど実用化されていないのが現状で、現実的には加熱によってトナーを溶融させ、記録媒体に熱融着させる加熱定着法が広く採用されている。
加熱定着法としては、従来一般的な方法として、加熱ロール、加圧ロールの両方もしくは一方の内部にハロゲンランプを配置し、このハロゲンランプの輻射熱により、前記加熱ロール、加圧ロールの両方もしくは一方の表面を加熱する方法が採用されてきた。この加熱定着法では、具体的には、加熱ロールと加圧ロールとが互いに圧接したニップに、未定着トナー像が形成された記録媒体を挿通させ、ニップ内で前記ロール表面の熱によりトナーを溶融し、ニップ圧力で記録媒体に固着させることで永久画像を形成していた。
この方法だと、ハロゲンランプと加熱したい加熱ロールまたは加圧ロールの表面との間には、空気層をはじめとする断熱層が存在するため、ロールの表面が定着可能温度に達するまでの時間(以下、単に「ウォームアップタイム」という。)として3〜8分程度の時間が必要になるという欠点がある。そのため、画像形成を行わない待機時においても定着装置の温度をある程度高温に維持する必要があり、これが複写機等の消費電力の大部分を占めているのが現状である。
一方、定着可能温度に達するまでの時間を短縮した定着装置として、薄膜フィルムと固定ヒーターとを用いた定着装置が提案されている(例えば、特許文献1〜2等参照)。
これらの定着装置では、加熱部材の熱容量を極力減らすために、薄膜フィルムを用いているものの、固定ヒーターが熱容量を有するためにウォームアップタイムを実質的にはなくすことができず、数秒から数十秒の立ち上がり時間が必要となる。
また、直接加熱しているのはあくまでも固定ヒーターであり、これを加熱することで前記固定ヒーターに接触する薄膜フィルムを間接的に加熱するため、熱効率が十分ではない。さらに、固定ヒーターが、回転する薄膜フィルムと摺動するため、固定ヒーターや薄膜フィルム内面の摩耗等の不具合が発生する。
そこで、近年、基体上に金属層を形成した定着用部材を用いて、この定着用部材に対向あるいは内包されたコイルに電流を流して、コイルで発生した磁界によって、加熱部材の金属層に誘導される渦電流で金属層を加熱する電磁誘導加熱定着装置が提案されている(例えば、特許文献3〜4等参照)。
この方式では、熱効率が非常に高く、定着用部材の表面近傍にある金属層を発熱させるため、定着用部材表面を瞬時に定着可能温度に加熱することが可能となる。また、直接接触するのは定着用部材だけになるため、奪われる熱も少なくすることができる。そのためプリントジョブの間の待機時間中に、定着用部材をある程度の高温に保つ必要がなくなる。
一方、このような定着用部材の基体として、ロールタイプのような中空あるいは中実な金属コア材を用いるよりも、樹脂や金属の薄膜フィルムを用いるほうが、定着用部材の熱容量を低く抑えることができるためウォームアップタイムを短くすることが可能となる。そのようなベルト型の定着用部材を用いた電磁誘導加熱定着装置は、定着用部材である金属層を含む電磁誘導定着ベルト(以下単に「誘導定着ベルト」と称す場合がある)と、加圧部材と、電磁誘導コイルと、ベルト内パッド部材とで構成される。
電磁誘導コイルは、誘導定着ベルトに内包されているか、もしくは対向する位置に配置されている。また、ベルト内パッド部材は、無端状の誘導定着ベルトの内側に配され、誘導定着ベルトを介して加圧部材に押圧され、加圧部材との間にニップを形成するものである。
誘導定着ベルトの基体としては、主にニッケル、鉄、ステンレス(SUS)等の金属ベルトや、熱硬化性ポリイミド,芳香族ポリアミド(アラミド)、液晶ポリマー等の耐熱性樹脂等を用いることが多い。これらに共通の特性としては、耐熱性・高強度などが挙げられる。
なお、基体に用いられる液晶ポリマーは、溶液状態又は溶融状態で液晶性を示すポリマーであるが、溶融状態で液晶性を示すサーモトロピックク液晶ポリマーは、特に高強度、高耐熱、低線膨張率、高絶縁、低吸湿、高ガスバリアー性等の優れた特性を持っている。このため、液晶性を利用するものに限らず、機械的な部品や繊維としての用途も増加している。
しかしながら、このような定着用部材では、熱が定着用部材の内部(定着用部材の記録媒体と接触しない側の面)へ逃げるのを防止することができなかった。
そこで、エネルギー供給手段によって加熱される中空円筒部材の内面に断熱層を設けると事で、ウォームアップタイムが短く、かつ熱効率の良い定着用部材が提案されている(特許文献5参照)。この定着用部材の断熱層は、中空ガラスビーズを中空円筒部材の内面に焼き付けて形成されるガラス層、または、中間に空気層を介在させた一対のガラス部材から構成される。
特開昭63−313182号公報 特開平4−44074号公報 特開平11−352804号公報 特開2000−188177号公報 特開2001−135472号公報
しかし、この技術を利用して作製された定着用部材は、断熱層全体が柔軟性に欠け且つ脆性材料であるガラス材料のみから構成されている。すなわち、この定着用部材は、断熱層が脆性材料のみから構成されることから、何らかの衝撃が加わった際の脆性破壊により断熱層が容易に破壊され易く長期間の使用が困難であることが予測され、信頼性に劣ると考えられる。加えて、この定着用部材は、柔軟性の要求されるベルト状等の形態での利用は実質的に不可能であり汎用性に劣る。
また、断熱層が中空ガラスビーズを中空円筒部材の内面に焼き付けて形成されたガラス層である場合には、高温で焼き付けなければならないため製造性に劣る。さらに、この定着用部材と対向配置される加圧部材との押圧力を調整するためにこの定着用部材の内周面側に押圧部材を設けた場合には、脆性材料からのみなる断熱層が破壊される恐れがある。加えて潤滑剤を利用して両者の間の良好な潤滑性を確保することが困難である。これは定着用部材の内周面の表面凹凸が、断熱層を構成するガラスビーズに起因して大きすぎるために、定着用部材内周面と押圧部材との接触が面接触ではなく点接触となることに加え、潤滑剤が双方の界面に均一に分散させることができないと予想されるためである。
一方、断熱層が、中間に空気層を介在させた一対のガラス部材からなる構成については、このような構成からなる断熱層の具体的な形成方法が特許文献5中に全く記載されておらず、実現可能性の点で疑問が残る。加えて、層状の連続した空気層を一対のガラス部材の間に形成しているため、断熱層の強度が確保し難いことが予想され実用性に劣るものと考えられる。これらのことから、このような構成は実現可能性や実用性に極めて乏しい。
本発明は、上記問題点を解決することを課題とする。すなわち、本発明は、ウォームアップタイムが短く熱効率が高い上に、更に信頼性に優れた電磁誘導加熱方式の定着装置に利用可能な定着用部材、これを用いた定着装置、および、この定着装置を用いた画像形成装置を提供することを課題とする。
上記課題は以下の本発明により達成される。すなわち、本発明は、
<1>
基体上に少なくとも断熱層と、金属層と、表面層とがこの順に積層され、電磁誘導により発熱する定着用部材であって、
前記断熱層の熱伝導率が0.25W/m・℃以下であることを特徴とする定着用部材である。
<2>
前記断熱層の厚みが5μm以上100μm以下であることを特徴とする<1>に記載の定着用部材である。
<3>
前記断熱層が、空隙構造を有することを特徴とする<1>または<2>に記載の定着用部材である。
<4>
前記空隙構造を有する断熱層の空隙率が10%以上であることを特徴とする<3>に記載の定着用部材である。
<5>
前記空隙構造を有する断熱層が中空部材を含み、前記中空部材が中空ガラスビーズおよび/または中空樹脂フィラーであることを特徴とする<3>または<4>に記載の定着用部材である。
<6>
前記中空部材の平均粒径が3〜30μmの範囲内であることを特徴とする<5>に記載の定着用部材である。
<7>
無端ベルト状であることを特徴とする<1>〜<6>のいずれか1つに記載の定着用部材である。
<8>
前記金属層と、前記表面層との間に弾性層を設けたことを特徴とする<1>〜<7>のいずれか1つに記載の定着用部材である。
<9>
前記基体上に、少なくとも断熱層と金属層と表面層とをこの順に積層する<5>または<6>に記載の定着用部材の製造方法であって、
前記断熱層が、前記中空部材を分散させた樹脂溶液または樹脂前駆体溶液を用いて形成されることを特徴とする定着用部材の製造方法である。
<10>
<1>〜<8>のいずれか1つに記載の定着用部材と、該定着用部材に磁界を印加する電磁誘導加熱装置と、前記定着用部材の表面層表面と当接する加圧部材と、を含む定着装置である。
<11>
像担持体と、該像担持体表面を帯電させる帯電手段と、帯電させた前記像担持体表面に潜像を形成する潜像形成手段と、前記潜像を現像剤により現像しトナー像を形成する現像手段と、前記トナー像を被転写体に転写する転写手段と、前記トナー像を記録媒体に加熱定着する定着手段とを少なくとも備えた画像形成装置において、
前記定着手段が、<10>に記載の定着装置であることを特徴とする画像形成装置である。
以上に説明したように本発明によれば、ウォームアップタイムが短く熱効率が高い上に、更に信頼性に優れた電磁誘導加熱方式の定着装置に利用可能な定着用部材、これを用いた定着装置、および、この定着装置を用いた画像形成装置を提供することができる。
<定着用部材およびその製造方法>
本発明の定着用部材は、基体上に少なくとも断熱層と、金属層と、表面層とがこの順に積層され、電磁誘導により発熱する定着用部材であって、前記断熱層の熱伝導率が0.25W/m・℃以下であることを特徴とする。
従って、本発明の定着用部材は、電磁誘導により磁界が印加された金属層が発熱した場合に、定着用部材の基体側(以下、「内側」と称す場合がある)へと熱が逃げにくくなる(内側方向の断熱効果が高くなる)ため、熱効率が高くなりウォームアップタイムを短くすることができる。
このような内側方向の断熱効果の向上は、基体と金属層との間に設けられた断熱層の熱伝導率が、基体を構成する一般的な材料であるポリイミド系の耐熱性樹脂の熱伝導率(なお、ポリイミド系樹脂の熱伝導率は約0.29W/m・℃程度である)よりも小さいため、内側方向への熱の流失が、金属層が基体と直接接触した状態で設けられている場合よりも抑制されるためである。
但し、本発明において、断熱層の「熱伝導率」とは、正確には見かけ上の熱伝導率を意味する。例を挙げれて説明すれば、断熱層が1種類の固体材料のみからなる場合には、この固体材料自体の熱伝導率を意味する。一方、断熱層が、固体部分と空孔部分(気体部分)とから構成される多孔質体構造を有するような場合には、固体部分のみの熱伝導率を意味するものではなく、固体部分と空孔部分(気体部分)とから構成される断熱層を、見かけ上ひとつの材料から構成されるものとみなした場合の熱伝導率を意味する。
なお、熱効率をより高めてウォームアップタイムをより短くするためには、断熱層の熱伝導率は、0.18W/m・℃以下であることが好ましく、0.14W/m・℃以下であることがより好ましく、実質的に最も低い熱伝導率を示す空気の熱伝導率に近ければ近いほど好ましい。
一方、断熱層の熱伝導率が小さくても、断熱層の厚みが薄すぎる場合には、十分な断熱効果が得られなくなる場合がある。このため、断熱層の厚みは5μm以上であることが好ましく、10μm以上であることが好ましい。なお、断熱効果を高める点では断熱層の厚みは厚い方がより好ましい。しかし、厚みの上限は後述する断熱層の熱容量および形成方法や構造にも依存するが、実用上は100μm以下であることが好ましい。
また、断熱層を厚くすると単位面積当たりの熱容量(J/℃・cm2)が大きくなってしまう。熱容量が大きくなると熱伝導率が小さい場合でもウォームアップタイムを短くする効果が少なくなるため、単位面積当たりの熱容量は、断熱層にも強度が必要とされることから無限に小さくはできないが、強度が得られている範囲では小さいほうが好ましい。
また、本発明の定着用部材は、金属層の内側に断熱層のみではなく、断熱層と基体とを設けているところに特徴がある。詳細については後述するが、断熱層の形成方法や断熱層の構成は、基体と比べると強度等の機械的特性に劣る場合があるため、金属層の内側に断熱層のみを設けた場合には、内側方向への断熱効果を得ることはできるものの、定着用部材としての強度や耐久性を確保できず高い信頼性を得ることができない。しかし、本発明の定着用部材は、金属層の内側に断熱層を設け、さらにその内側に基体を設けることによって機械的特性に劣る断熱層の弱点をカバーし、定着用部材全体としての強度や耐久性を確保することができ、優れた信頼性を確保することができる。
すなわち、本発明の定着用部材は、金属層の内側に、断熱層と基体とを設けることによって、内側方向への高い断熱効果の確保と、定着用部材全体としての強度や耐久性の確保とを高いレベルで両立させることができる。
また、断熱層の形成方法に関係なく、定着用部材の最も内側に設けられる基体表面は平滑であるため、定着用部材の内側に押圧部材を設けても面接触が確保できる。さらに、基体表面に潤滑剤の広がりを良くするためのガイド溝を設ければ、潤滑剤を定着用部材と押圧部材との間に均一に行き渡らせることができるため、優れた潤滑性を確保することができる。
次に、本発明の定着用部材の構成や、各層の詳細等について説明する。
本発明の定着用部材は、基体上に少なくとも断熱層と、金属層と、表面層とがこの順に積層された層構成を有するものであるが、必要に応じて、金属層と表面層との間に弾性層を設けてもよい。弾性層を設けることにより、定着時に定着用部材の表面層表面と接する紙等の記録媒体により均一に圧力を加えることができるため、より高画質な定着画像を得ることができる。
また、本発明の定着用部材の形状は特に限定されるものではないが、断熱層が適度な柔軟性を持った構造を有する場合には無端ベルト等のベルト状の形状で利用することも可能である。従って、本発明の定着用部材は、特定の形状に限定されず、柔軟性が必要とされるベルト状の形状でも利用が可能であるため、汎用性が高く、本発明の定着用部材を用いて多様な形態・仕様の定着装置の作製が可能である。
−断熱層−
本発明の定着用部材には、基体と金属層との間に断熱層が設けられる。この断熱層は電磁誘導加熱により発熱した金属層の熱を内側に伝えず、断熱するための層である。この断熱層を設けることで、ウォームアップ時間を短縮することが可能となる上、さらに、定着に必要な熱エネルギー量を減らすことが出来るため、電磁誘導加熱定着装置の特徴である省エネ効果をさらに高めることができる。加えて、断熱層を設けたことにより、金属層で発生した熱が基体へと伝わりにくくなるため、基体を構成する材料の選択肢も広げることができる。さらに、基体に熱が伝わりにくくなるため、基体の金属層が設けられる側と反対側の面に接する部材にも金属層で発生した熱が伝わりにくくなるため、この部材を構成する材料の選択が広がり、また信頼性が向上するといった効果も期待できる。
また、断熱層には、基材および金属層に対する接着性が要求される。更に、定着用部材として柔軟性が求められる場合には、繰り返しの折り曲げに耐えられる耐屈曲性なども要求される。
断熱層は、高い断熱効果を確保するために既述したような熱伝導率を満たす必要があるが、このような機能を達成するためには、断熱層が、空隙構造を有することが好ましい。
なお、本発明において、「空隙構造」とは、断熱層が、最も熱伝導率の低い空気等の気体(あるいは真空部分)を含んだ構造を有することを意味し、具体的には多孔質体構造や、繊維の集合体等からなる構造等を挙げることができる。
このような空隙構造を有する断熱層の空隙率としては10%以上であることが好ましく、30%以上であることがより好ましい。空隙率が10%未満である場合には、高い断熱効果を得ることができなかったり、断熱層を構成する固体材料として極めて低い熱伝導率を有する固体材料を選択しなければならず、材料選択肢が限られてしまうという問題が生じる場合がある。なお、高い断熱効果が得られる点では空隙構造を有する断熱層の空隙率は高ければ高い程好ましいが、高すぎる場合には、断熱層自体の強度の確保が困難になる場合があるため、80%以下であることが好ましい。
なお、空隙構造を有する断熱層の具体的な構造としては、多孔質体構造であることが好ましい。この多孔質体構造の具体例としては、例えば、〔1〕発泡剤を利用しマトリックス中に気泡を形成した構造(いわゆる発泡体)、〔2〕中空部材をマトリックス中に分散させた構造、〔3〕2つの溶解性の異なる相からなるバルク状のマトリックスをエッチングを利用して一方の相を選択的に溶出除去して得られる構造等が挙げられる。
なお、多孔質体構造を有する断熱層の空隙率は、上記〔1〕や〔3〕の場合は、例えば、断熱層の断面写真や、断熱層を構成する固体材料そのものの密度および断熱層の見かけ密度の値を利用する等により容易に求めることができ、上記〔2〕の場合には、例えば中空部材の中空率および断熱層中の中空部材の体積比から容易に求めることができる。
以下に、空隙構造を有する断熱層の具体例として、中空部材をマトリックスに分散させた構造を例としてより詳細に説明する。中空部材としては、公知の中空部材を用いることができ、ガラスや、架橋アクリル樹脂等の樹脂材料から構成される中空部材が利用できる。特に架橋アクリル樹脂から構成される中空部材を含む溶液を用いて塗膜を形成し、これを乾燥させて断熱層を形成する場合、塗膜を乾燥させる際に殻が無くなる。このため、ガラスフィラーを添加した断熱層と比べて、架橋アクリル樹脂から構成される中空部材を用いて形成された断熱層は、柔軟性や耐屈曲性が向上するといった信頼性上の効果や、金属層との接着性が向上するといった効果が得られる。
このような中空部材の形状は特に限定されないが球状のものが好ましい。また球状の中空部材の場合の平均粒径としては30μm以下であることが好ましく、10μm以下であることがより好ましい。平均粒径が30μmを超える場合には、断熱層の厚みに対して中空部材が相対的に大きすぎるため、断熱層の強度が低下したり、中空部材に起因する凹凸が発生したり、断熱層の厚みを薄くすることができない等の問題が発生する場合がある。なお、平均粒径の下限値は特に限定されないが、取り扱いや入手の容易さ等の観点から3μm以上であることが好ましい。
また、中空部材を利用して形成される断熱層の空隙率は、使用する中空部材の中空率や、断熱層中に占める中空部材の体積比を選択することにより所望の値に調整することができる。
なお、球状の中空部材としては市販品が利用でき、例えば、ガラスの中空部材(ガラスフィラー)としては、住友スリーエム社製のS60(平均粒径30μm)や東海ガラス社製のSX−39(平均粒径40μm)等を挙げることができ、樹脂の中空部材としては、架橋アクリル中空フィラー(M610、松本油脂社製、平均粒径10μm)等を挙げることができる。なお、断熱層の形成に際しては、予め粒径を選別し、大きい粒径を有するものを排除した中空部材を利用することが好ましい。
断熱層を構成する材料としては、断熱層が発熱する金属層と直接接して設けられるためある程度の耐熱性を有していることが必要であり、また、基本的には熱伝導率が低い材料を用いることが好ましい。しかし、断熱層が空隙構造を有する場合には、空隙部分が高い断熱効果を発揮するため、熱伝導率よりもむしろ断熱層の強度の点で断熱層を構成する材料を選択することができる。
また、定着用部材が無端ベルトのように柔軟性が要求される態様で利用される場合には、耐屈曲性に優れていることも必要である。さらに、断熱層と接して設けられる金属層および基体との接着性に優れていることも重要である。
これらの条件を考慮した場合、断熱層を構成する材料としては、一般的には、適度な耐熱性と柔軟性を有する樹脂材料を利用することが好ましい。このような材料としては、例えば、定着用部材の基体として一般的に用いられるポリイミド系の樹脂やシリコンゴム等を挙げることができる。
−基体−
本発明の定着用部材の基体を構成する材質としては、後述するような電磁誘導加熱方式の定着装置内において繰り返し周動搬送が可能であって、定着温度における物性低下がなく、高強度であれば特に限定するものではないが、金属フィルムや、耐熱性樹脂であることが好ましい。さらに、摺動性の高い耐熱性樹脂から構成される基体を用いることで、押圧部材との摺動抵抗がなく、寿命を延長させることができる。
前記耐熱性樹脂としては、ポリイミド、芳香族ポリアミド、サーモトロピック液晶ポリマー等の液晶材料など、高耐熱・高強度樹脂等が挙げられるが、この中でもポリイミドが好ましい。
本発明の定着用部材を電磁誘導加熱方式の定着装置における定着用ベルトとして用いる場合、基体を構成する材料として、柔軟性のある材料を用いることによって、ベルト状の定着用部材をスムーズに周動搬送することが可能となる。また、記録媒体として、平面以外の形状の記録紙たとえばエンボス紙などを用いた場合においても、良好な転写画像の形成が可能となる点で好ましい。さらに、帯電を防止するために、例えばカーボンブラック等の導電材を分散させることもできる。
なお、基体の柔軟性が不充分な場合には、基体と断熱層との間に弾性層(以下、表面層と金属層との間に設けられる弾性層と区別するために「内側弾性層」と称する。また、以下の説明において単に「弾性層」と記載した場合は、表面層と金属層との間に設けられる弾性層を意味するものとする)を設けることも可能である。この内側弾性層の厚さとしては、特に限定されないが、記録媒体として一般的な記録紙の表面の凹凸から考慮すると、30μm〜500μmの範囲内とすることが好ましく、50μm〜300μmの範囲内とすることがより好ましい。また、内側弾性層の材料としては、その目的からシリコーンゴムが最適である。
基体の厚さとしては、本発明の定着用部材がベルトとして利用される場合、繰り返しの周動搬送を可能とする剛性と柔軟性とを両立するために、10〜200μmの範囲が好ましく、30μm〜100μmの範囲がより好ましい。基体の厚みが10μm未満では剛性が弱く、周動搬送中に皺になったり、両端のエッジ部分に亀裂が生じてしまう場合がある。逆に200μmを超えると、上述した柔軟性を確保できない場合がある。
−金属層−
本発明の定着用部材を構成する金属層は、電磁誘導加熱方式の定着装置内に設けられた、コイルから発生する磁界により渦電流を発生させることで発熱するための層である。この金属層の厚さは3〜50μmの範囲であることが好ましく、3〜30μmの範囲であることがより好ましく、5〜20μmの範囲であることがさらに好ましい。
金属層の厚さが3μm未満になると、金属層の抵抗値が高くなることにより、十分な渦電流が発生し難くなり発熱が不足し、ウォームアップ時間が長くなるか、或いは定着可能温度まで加熱することができなくなる場合がある。また、金属層の厚さが50μmを超えると、十分な発熱は得られるものの、金属層自体の熱容量が大きくなってしまうことからウォームアップ時間が長くなってしまう場合がある。
金属層には、電磁誘導作用を生ずる金属が用いられる。かかる金属としては、例えばニッケル、鉄、銅、金、銀、アルミニウム、スチール、クロムなどが選択可能である。これらのうちコスト、発熱性能、および、加工性を考慮すれば、銅、ニッケル、アルミニウム、鉄、クロムが適しており、特に銅が好ましい。
金属層は、単層構成であってもよいが、2以上の層から構成されていてもよい。特に、金属層がめっき法を利用して作製される場合には、断熱層の外側(断熱層の基体が設けられた側と反対側)の表面に無電解めっきにより形成された第一の金属層と、第一の金属層の表面に電解めっきにより形成された第二の金属層との少なくとも2層から形成されていることが好ましい。
なお、従来の金属層を有する定着用部材において、ポリイミド等のフレキシブルな基体上に薄膜状の金属層を形成する場合、基体と金属層との密着性を高めるために、真空設備を用いた蒸着やスパッタリング等のPVD(Physical Vapor Deposition)法が利用される場合が多い。しかし真空設備を使った成膜方法では、特に定着ベルトのような円筒形状の基体に対してはバッチ処理が必要となるためコストアップとなる場合がある。これは、断熱層の外側面に金属層を形成する本発明においても同様である。
そこで、断熱層と金属層との間で高い密着性が得られるが高コストであるPVD法を利用する代わりに、低コストな無電界めっき法を利用することが好ましい。但し、無電界めっき法により形成される金属膜は断熱層に対する密着力が弱いため、これを補うために金属層が形成される面(すなわち断熱層の外側面)を、ブラスト処理などにより粗面化処理された耐熱性樹脂等で構成された面とすることが好ましい。この場合には、低コストであると共に、金属層と断熱層との間で十分な密着性を得ることができる。
なお、無電界めっきにより形成される金属層は、電界めっきにより形成される金属膜と比較して密度が低く抵抗が高くなる傾向にあるため、金属層は、無電界めっきと電界めっきとを組み合わせて形成することが好ましい。この場合、金属層は、まず断熱層の外側面に無電界めっき法により形成される第一の金属層と、この第一の金属層の表面に形成される第二の金属層とから形成され、第一の金属層により断熱層との密着性を確保すると共に、第二の金属層により金属層全体の低抵抗化を図ることができる。
このような2層構成からなる金属層の場合、無電解めっきにより形成された第一の金属層が、ニッケル、銅、クロムのうちの少なくとも一種類の金属により形成されていることが好ましい。これは無電解めっきにより形成された第一の金属層は、第二の金属層を電解めっきするための電極として使う層であり、ある程度の低抵抗が要求されるからである。さらに、ニッケルや銅を使うことで、断熱層を透過した酸素により第二の金属層が酸化して劣化することを防止することが可能となる。
また、電解めっきにより形成された第二の金属層は、銅を含む層であることが好ましい。銅は鉄やニッケル等の金属と比較して低抵抗であり、電解めっきにより膜形成が可能であることから、電磁誘導加熱方式の定着用部材の金属層として高性能な膜が形成しやすい。
−弾性層−
本発明の定着用部材には、表面層と金属層との間に弾性層を設けても良い。弾性層を設けることで、紙等の記録媒体に均一に圧力を加えることが出来、高画質な定着画像を得ることが可能となる。特に最近ではフルカラーの高画質な印刷物が好まれているため、表面層と金属層との間に弾性層を設けることが好ましい。この弾性層の厚みとしては30〜500μmの範囲が好ましい。
弾性層の厚みが30μmより薄いと圧力を均一にかけることが難しく高画質な定着画像を得られ難い場合がある。また、弾性層の厚みが500μm以上では金属層で発生した熱を表面(外側面)に伝えにくく、ウォームアップ時間をより短くしたり、プリントスピードを早くすることが難しくなる場合がある。
なお、表面層と金属層との間に設けられる弾性層を構成する材料としては、シリコンゴム、フッ素ゴム、フルオロカーボンシロキサンを主成分とするゴム等を利用することができる。
−表面層−
本発明の定着用部材は、最も外側に設けられる層として記録媒体に対する離型性を有する表面層(離型層)が設けられる。表面層には、未定着トナー像を溶融状態として記録媒体表面に固着させる際に、溶融状態のトナーが定着用部材に固着することを防ぐ機能(離型性)が求められるため、離型性を有する材料を含むんでなることが必要である。
このような離型性を有する材料としては、公知の材料から選択することができるが、フッ素系化合物を用いることが好ましく、例えばフッ素ゴムや、ポリテトラフルオロエチレン(以下、「PTFE」という)、パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(以下、「PFA」という)、四フッ化エチレン六フッ化プロピレン共重合体(以下、「FEP」という)等のフッ素樹脂などを用いることができる。
かかる表面層の厚さは、10〜100μmであることが好ましく、20〜50μmであることがより好ましい。前記表面層の厚さが10μm未満であると、記録媒体エッジでの繰り返し擦擦により表面層が摩滅する場合がある。一方、前記表面層の厚さが100μmを超えると表面の柔軟性がなくなる場合があり、その結果トナーを押しつぶす力が働き定着画像の粒状性が損なわれたり、ウォームアップ時間が長くなる場合がある。
−定着用部材の製造方法−
次に、本発明の定着用部材の製造方法について説明する。本発明の定着用部材は、従来の金属層を含む定着用部材と同様に公知の方法を利用して作製することができる。例えば、各々の層を液相成膜や気相成膜等、公知の成膜方法を利用して基体上に断熱層、金属層、表面層をこの順に積層して形成したり、予めフィルム状に形成された各層をラミネートするなどして貼り合わせて積層形成したり、両者を組み合わせて積層形成したり、あるいは、押し出し成形を利用してもよい。
この場合、各々の層を形成する場合には液相成膜や気相成膜を利用できるが、液相成膜はいずれの層でも利用でき、気相成膜は金属層の形成に利用できる。前者の場合、表面層、弾性層、断熱層、内側弾性層、基体を形成する場合には、例えばこれらの層を構成する材料を適当な溶剤に溶解または分散させて塗工液を調製し、塗工液を塗工して乾燥、焼成したりする方法が利用できる。
なお、塗工液の塗工方法としては、ロールコーター法、ブレードコーター法、エアナイフコーター法、ゲートロールコーター法、バーコーター法、サイズプレス法、シムサイザー法、スプレーコート法、グラビアコート法、カーテンコーター法およびディップコート法等が挙げられる。
また、断熱層および基体を、塗工液を用いてそれぞれ形成する場合には、基体を半焼成した後に断熱層を形成することが好ましい。この場合、半焼成状態の基体の表面に断熱層が形成されるため、断熱層形成用の塗工液を塗布した後のいずれかの時点で、再度焼成を行うことにより、基体と断熱層との密着性を向上させることができる。
なお、中空部材を利用して基体上に断熱層を形成する場合には、以下のようにして断熱層を形成することができる。
まず、中空部材と、樹脂材料(あるいは樹脂前駆体材料)と、溶剤とを含む断熱層形成用塗工液を調整する。なお、断熱層形成用塗工液は粒径の大きい固形分である中空部材を含むため、樹脂材料(あるいは樹脂前駆体材料)のみを含む塗工液よりも粘度を低くすることが、断熱層中での中空部材の分散性を向上させる上で好ましい。
例えば、断熱層の形成に用いる樹脂材料(あるいは樹脂前駆体材料)が、基体の形成に用いられるポリイミド系の材料である場合には、断熱層形成用塗工液の粘度を、この材料と溶剤とを含む塗工液の粘度の半分から1/4程度の範囲内に調整することが好ましく、具体的には粘度を2.5〜1Pa.s(30℃における粘度)程度の範囲内とすることが好ましい。
<定着装置および画像形成装置>
次に、本発明の定着用部材を用いた電磁誘導加熱方式の定着装置と、この定着装置を用いた画像形成装置について説明する。
本発明の定着装置は、本発明の定着用部材を用いたものであり、具体的には定着用部材と、この定着用部材に磁界を印加する電磁誘導加熱装置と、定着用部材の表面層表面と当接する加圧部材と、を少なくとも含むものである。この定着装置による定着は、未定着トナー像が形成された記録媒体を定着用部材と加圧部材との当接部を挿通させた際に、電磁誘導加熱装置により加熱された定着部材の熱と、定着用部材と加圧部材との間の押圧力とにより、未定着トナー像が記録媒体表面に加熱定着されることにより行われるものである。
次に、本発明の定着装置について、図面を用いて具体的に説明する。図1は本発明の定着用部材を定着用ベルトとして用いた電磁誘導加熱定着装置の一例を示す概略断面図である。
図1において、10は、表面における算術平均粗さRaが、0.1〜5μmの範囲である基体の表面に断熱層と金属層と表面層とがこの順に積層形成された無端ベルト状の本発明の定着用部材(定着用ベルト)である。
この定着用ベルト10の外周面に接するように加圧ロール11が配され、定着用ベルト10と加圧ロール11との間にニップを形成している。加圧ロール11は、基体11aの外周面上にシリコーンゴム等による弾性体層11bと、フッ素系化合物による表面層11cとがこの順に積層された構成を有している。
定着用ベルト10の内周面側には、加圧ロール11と対向する位置に、押圧部材13が設置されている。なお、この押圧部材13は、定着用ベルト10の内周面と当接し、局所的にニップ圧を高めるニップヘッド13bと、このニップヘッド13bを保持するシリコンゴム等からなるニップパッド13cと、このニップパッド13cを支持する支持体13aとから構成されている。
さらに、定着用ベルト10を中心として加圧ロール11が設けられた側の反対側の位置に、電磁誘導コイルを内蔵した電磁誘導加熱装置12が設けられている。この電磁誘導加熱装置12は、電磁誘導コイルに交流電流を印加することにより、発生する磁場を励磁回路で変化させるものであり、定着用ベルト10に含まれる金属層に磁界を印加することによって、金属層に渦電流を発生させるものである。
この渦電流が金属層の電気抵抗によって熱(ジュール熱)に変換され、結果的に定着用ベルト10の表面(外周面)が発熱する。尚、電磁誘導加熱装置12は、定着用ベルト10内のニップ領域に対して図1中の片矢印で示される回転方向Bの上流に設置されていてもよい。
この電磁誘導加熱定着装置は、不図示の駆動装置により定着用ベルト10が矢印B方向に回転し、それにつれて加圧ロール11も矢印C方向に従動回転する。 この状態で、未定着トナー像14が形成された記録媒体15は矢印A方向に、上記定着装置のニップ部に挿通され、未定着トナー像14を溶融状態として圧力を加えながら記録媒体15に固着させる装置である。尚、駆動方法は、ベルト駆動(ロールが従動)、ロール駆動(ベルトが従動)のどちらでもよい。
図2に、電磁誘導加熱方式の原理を説明するための概略説明図を示す。なお、図2中、10aは基体、10bは金属層、10cは表面層、10dは断熱層、12aは電磁誘導コイル、16は電磁誘導加熱装置、17は定着用ベルトを表す。
図2に示される定着用ベルト17はその一部の断面を表しており、基体10aの表面に、金属層10bで発生した熱を断熱する断熱層10dと、電磁誘導作用により自己発熱する導電部材からなる金属層10bと、フッ素系化合物からなる表面層10cとがこの順に積層形成された構成からなる。
また、電磁誘導加熱装置16は、定着用ベルト17の表面層10cが設けられた側の面上に配置されており、不図示の励磁回路により電磁誘導コイル12aに交流電流が印加され、定着用ベルト17の表面とほぼ直交する交流磁界を形成するものである。
この電磁誘導作用による金属層10bの発熱原理を以下に説明する。不図示の励磁回路により電磁誘導コイル12aに交流電流が印加されると、電磁誘導コイル12aの周囲に磁束が生成消滅を繰り返す。この磁束が定着用ベルト17の金属層10bを横切るとき、その磁束の変化を妨げる磁界を生じるように金属層10b中に渦電流が発生する。この渦電流と金属層10bの固有抵抗によってジュール熱が発生する。
前記渦電流は、表皮効果のためにほとんど金属層10bの電磁誘導加熱装置16側の面に集中して流れ、金属層10bの表皮抵抗Rsに比例した電力で発熱を生じる。ここで、角周波数をω、透磁率をμ、固有抵抗をρとすると、表皮深さδは下式(1)で示される。
・式(1) δ=(2ρ/ωμ)×(1/2)
さらに、表皮抵抗RSは下式(2)で示される。
・式(2) Rs=ρ/δ=(ωμρ/2)×(1/2)
また、定着用ベルト17の金属層10bに発生する電力Pは、定着用ベルト17中を流れる電流をIhとすると、下式(3)で表わされる。
・式(3) P∝Rs∫|Ih|2dS
したがって、表皮抵抗Rsを大きくするか、あるいは、電流Ihを大きくすれば電力Pを増すことができ、発熱量を増すことが可能となる。ここで表皮深さδ(m)は、励磁回路の周波数f(Hz)と、比透磁率μrと、固有抵抗ρ(Ωm)により下式(4)で表わされる。
・式(4) δ=503(ρ/(fμr))×(1/2)
これは電磁誘導で使われる電磁波の吸収の深さを示しており、これより深いところでは電磁波の強度は1/e以下になっており、逆に言うとほとんどのエネルギーはこの深さまで吸収されている。
ここで、金属層10bの厚みは、上の式で表わされる表皮深さより厚く(1〜100μm)することが好ましい。また、発熱層16bの厚みが1μmよりも小さいと、ほとんどの電磁エネルギーが吸収しきれないため効率が悪くなる場合がある。
以上に説明したような定着装置は、定着手段として加熱定着を利用した公知の電子写真方式の画像形成装置に利用できる。
このような画像形成装置としては、具体的には、像担持体と、該像担持体表面を帯電させる帯電手段と、帯電させた前記像担持体表面に潜像を形成する潜像形成手段と、前記潜像を現像剤により現像しトナー像を形成する現像手段と、前記トナー像を被転写体に転写する転写手段と、前記トナー像を記録媒体に加熱定着する定着手段とを少なくとも備えた構成を有することが好ましい。この場合、定着手段として本発明の定着装置が用いられる。
以下、本発明の実施例を説明する。
(実施例1)
−定着用ベルトの作製−
幅350mm、内径30mm、厚さ60μmの無端状ポリイミドベルトの内面に、外径が前記無端状ポリイミドベルトの内径とほぼ同一なステンレス製シャフトを挿入し、粒径が累積高さ50%点の粒子径で100μmのアルミナ砥粒を前記無端状ポリイミドベルトの外周面に吹き付けるサンドブラストにより、前記ポリイミドベルトの外周面を粗面化した。尚、累積高さ50%点については、JIS R6002に記載されている。粗面化後のポリイミドベルトの外周面における算術平均粗さRaは3.0μmだった。
得られたポリイミドベルトの外周面に、宇部興産製ポリイミドワニス(ユーワニスS)に中空のガラスビーズ(平均直径3μm、中空率87%)を体積比で3:1になるように混合してDip方式より厚さ15μmになるように塗布し、段階的に380℃まで加温し、乾燥させた。
次に無端状ポリイミドベルトの場合と同様のサンドブラスト処理で表面を粗面化した。この時の算術平均粗さRaは3.0μmだった。
得られた2層構成のベルトをイソプロピルアルコールにて十分洗浄した。次に、水酸化ナトリウムが100g/L、且つ、イソプロピルアルコール100mL/Lの組成からなるアルカリエッチング液(水溶液)を60℃に加温し、これに洗浄した2層構成のベルトを5分間浸漬することにより、化学的的にエッチングし、酸処理液(組成が35%塩酸50mL/Lの水溶液)により中和した。
その後40℃に加温した塩化パラジウムの30重量%水溶液に、中和処理した2層構成のベルトを5分間浸漬し、その外周面を活性化させた。続いて、この2層構成のベルトを40℃に加温した無電解めっき液(硫酸ニッケル25g/L、ピロリン酸ナトリウム50g/L、次亜リン酸ナトリウム25g/Lの組成の水溶液に、アンモニア水をpHが10になるように添加した水溶液)に5分間浸漬させ、その外周面に厚さ1μmのニッケル層を形成した。
さらに、希硫酸に1分間浸漬させることによりニッケル層表面の酸活性処理を行った上で、硫酸銅めっき浴(組成が硫酸銅70g/L、硫酸200g/Lである水溶液)を25℃に管理した状態で5Aの電流を40分印加することにより電解めっきを行い、ニッケル層表面に厚さ15μmの銅層を形成した。
こうして得られた、ポリイミド/ポリイミドに中空ガラスビーズを分散させた層/金属層からなる3層構成のベルトの表面を十分洗浄した後、金属層の表面に市販のPFA塗料(デュポン社製、水系ディスパージョン塗料EN−510CL)をディップコート法によりコーティングし、380℃で40分かけてを窒素ガス雰囲気中で焼成し、厚さ30μmのPFA層を形成した。
このようにして得られた4層構成のベルトを、更に200℃のオーブン内に100時間放置することにより、ポリイミドからなる基体の外周面に、ポリイミドマトリックスに中空ガラスビーズを分散させた断熱層と、金属層と、PFAからなる表面層とをこの順に形成した定着用ベルトを得た。
なお、断熱層を構成する樹脂材料と中空ガラスビーズとの体積比および中空ガラスビーズの中空率の値から求めたこの定着用ベルトの断熱層の空隙率は約22%であり、熱伝導率は0.22W/m・℃である。
なお、得られた定着用ベルトの断熱層と金属層との界面密着性を目視確認したところ密着性は良好であった。また、この定着用ベルトを図1に示す構成を有する電磁誘導加熱定着装置の定着用ベルト10として用い、実機テストを行い、定着画像および耐久性を評価した。
なお、実機テストに用いた電磁誘導加熱定着装置の加圧ロール部材11としては、ゴム硬度50度(ASKER−C)のシリコーンゴムを肉厚5mmで、中実のシャフト(SUS304、直径15mm)上に形成したロールを用いた。
また、電磁誘導コイルを内蔵した電磁誘導加熱装置12は、定着用ベルト10の内周面側で、ニップ領域に対して回転方向(矢印B方向)の上流に設置した。
−評価−
実機テストを行い、未定着トナー像が形成されている富士ゼロックス社製J紙を10万枚通紙したときの画質の劣化、断熱層と金属層との界面密着性、および、発熱特性としてのウォームアップ時間について評価を行った。
その結果、10万枚通紙後に画質の低下はなく、定着性、オフセット性ともに問題なかった。さらに初期と10万枚通紙後の断熱層と金属層との界面を目視にて確認したところ何らの劣化も見られず、十分な密着性が得られていることがわかった。
また、ウォームアップ時間は、10万枚通紙前後ともに投入電力が1100Wで4.5秒であり、通紙前後で変化がなかった。このように、経時的な発熱特性に何らの低下が見られないことから、断熱層の劣化が起こっていないことがわかった。
(比較例1)
断熱層の代わりに、断熱層と同等の厚みを有し、基体と同じ材料からなるポリイミドからなるダミー層をユーワニスSを用いて形成した以外は実施例1と同じ方法で定着用ベルトを作製し、実施例1と同様にしてウォームアップタイムを評価した。ウォームアップ時間は、投入電力が1100Wで5.5秒ほどかかり、実施例1の定着ベルトより時間がかかることが確認された。
また、以上の結果から、実施例1および比較例1の定着用ベルトのウォームアップタイムの違いは、ダミー層よりも断熱層の方が断熱効果に優れていること、すなわち熱伝導率がより小さいことによるものであることがわかった。
(実施例2)
実施例1と同じ方法で金属層まで塗布形成し、この金属層上に弾性層として信越シリコーン社製シリコーンゴム(X−34−1053AB)を200μm塗布形成し、加熱乾燥させた。さらに実施例1と同様の方法でこの弾性層上に厚さ30μmのPFA層を形成し、定着用ベルトを作製した。
この定着用ベルトを実施例1と同様にして10万枚の通紙試験を行ったところ、10万枚通紙後に画質の低下はなく、定着性、オフセット性ともに問題もなかった。さらに初期と10万枚通紙後の断熱層と金属層との界面を目視にて確認したところ何らの劣化も見られず、十分な密着性が得られていることがわかった。
また、ウォームアップ時間は、10万枚通紙前後ともに投入電力が1100Wで9.5秒であり、通紙前後で変化がなかった。このように、経時的な発熱特性に何らの低下が見られないことから、断熱層の劣化が起こっていないことがわかった。
加えて、10万枚通紙後の画質についてもより詳細に調べたが、白黒プリント、フルカラープリントともに充分であると判断した。
(比較例2)
断熱層の代わりに、断熱層と同等の厚みを有し、基体と同じ材料からなるポリイミドからなるダミー層をユーワニスSを用いて形成した以外は実施例2と同じ方法で定着用ベルトを作製し、ウォームアップ時間を評価した。その結果、1100Wで10.5秒と実施例2よりも時間がかかることが確認された。
また、以上の結果から、実施例2および比較例2の定着用ベルトのウォームアップタイムの違いは、ダミー層よりも断熱層の方が断熱効果に優れていること、すなわち熱伝導率がより小さいことによるものであることがわかった。
(実施例3)
宇部興産製ポリイミドワニス(ユーワニスS)に架橋アクリル中空フィラー(平均直径10μm、中空率32%)を重量比で100:5になるように混合した溶液を用いてDip方式より厚さ15μmになるように塗布して塗膜を形成し、この塗膜を段階的に380℃まで加温し、乾燥させることにより断熱層を形成した以外は実施例2と同様に定着用ベルトを形成し、同様の評価を行った。なお、断熱層の空隙率は比重から計算したところ約30%であり、熱伝導率は0.18W/m・℃である。
この定着用ベルトを実施例2と同様にして10万枚の通紙試験を行ったところ、10万枚通紙後に画質の低下はなく、定着性、オフセット性ともに問題もなかった。さらに初期と10万枚通紙後の断熱層と金属層との界面を目視にて確認したところ何らの劣化も見られず、十分な密着性が得られていることがわかった。
また、ウォームアップ時間は、10万枚通紙前後ともに投入電力が1100Wで9.3秒であり、通紙前後で変化がなかった。このように、経時的な発熱特性に何らの低下が見られないことから、断熱層の劣化が起こっていないことがわかった。
加えて、10万枚通紙後の画質についてもより詳細に調べたが、白黒プリント、フルカラープリントともに充分であると判断した。
(実施例4)
宇部興産製ポリイミドワニス(ユーワニスS)に架橋アクリル中空フィラー(平均直径10μm、中空率32%)を重量比で100:9になるように混合した溶液を用いてDip方式より厚さ15μmになるように塗布して塗膜を形成し、この塗膜を段階的に380℃まで加温し、乾燥させることにより断熱層を形成した以外は実施例3と同様に定着用ベルトを形成し、同様の評価を行った。なお、断熱層の空隙率は比重から計算したところ約50%であり、熱伝導率は0.13W/m・℃である。
この定着用ベルトを実施例2と同様にして10万枚の通紙試験を行ったところ、10万枚通紙後に画質の低下はなく、定着性、オフセット性ともに問題もなかった。さらに初期と10万枚通紙後の断熱層と金属層との界面を目視にて確認したところ何らの劣化も見られず、十分な密着性が得られていることがわかった。
また、ウォームアップ時間は、10万枚通紙前後ともに投入電力が1100Wで9秒であり、通紙前後で変化がなかった。このように、経時的な発熱特性に何らの低下が見られないことから、断熱層の劣化が起こっていないことがわかった。
加えて、10万枚通紙後の画質についてもより詳細に調べたが、白黒プリント、フルカラープリントともに充分であると判断した。
本発明の定着用部材を定着用ベルトとして用いた電磁誘導加熱定着装置の一例を示す概略断面図である。 電磁誘導加熱方式の原理を説明するための概略説明図である。
符号の説明
10,17 定着用ベルト
10a 基体
10b 金属層
10c 表面層
10d 断熱層
11 加圧ロール
12,16 電磁誘導加熱装置
12a 電磁誘導コイル
13 押圧部材
14 未定着トナー像
15 記録媒体

Claims (8)

  1. 基体上に少なくとも断熱層と、金属層と、表面層とがこの順に積層され、電磁誘導により発熱する定着用部材であって、
    前記断熱層の熱伝導率が0.25W/m・℃以下であることを特徴とする定着用部材。
  2. 前記断熱層が、空隙構造を有することを特徴とする請求項1に記載の定着用部材。
  3. 前記空隙構造を有する断熱層が中空部材を含み、前記中空部材が中空ガラスビーズおよび/または中空樹脂フィラーであることを特徴とする請求項2に記載の定着用部材。
  4. 無端ベルト状であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載の定着用部材。
  5. 前記金属層と、前記表面層との間に弾性層を設けたことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1つに記載の定着用部材。
  6. 前記基体上に、少なくとも断熱層と金属層と表面層とをこの順に積層する請求項3に記載の定着用部材の製造方法であって、
    前記断熱層が、前記中空部材を分散させた樹脂溶液または樹脂前駆体溶液を用いて形成されることを特徴とする定着用部材の製造方法。
  7. 請求項1〜5のいずれか1つに記載の定着用部材と、該定着用部材に磁界を印加する電磁誘導加熱装置と、前記定着用部材の表面層表面と当接する加圧部材と、を含む定着装置。
  8. 像担持体と、該像担持体表面を帯電させる帯電手段と、帯電させた前記像担持体表面に潜像を形成する潜像形成手段と、前記潜像を現像剤により現像しトナー像を形成する現像手段と、前記トナー像を被転写体に転写する転写手段と、前記トナー像を記録媒体に加熱定着する定着手段とを少なくとも備えた画像形成装置において、
    前記定着手段が、請求項7に記載の定着装置であることを特徴とする画像形成装置。
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