以下、本発明の実施の形態について実施例などを挙げつつ説明する。
[実施の形態1]
図5は、本発明の実施の形態1に係る透明コート層形成装置およびこれを適用したカラー画像形成装置の概要を示す説明図である。
このカラー画像形成装置15は、大別すると、図示するように有色トナー像形成部10と加熱定着部11を備えている。有色トナー像形成部10は、矢印方向に回転する感光ドラム20の周囲に、帯電装置21、像露光装置22、現像装置23、中間転写体30、第1転写装置24、第2転写装置31等をほぼこの順で配置して構成されている。加熱定着部11は、後記する透明コート層形成装置1で構成されている。
像露光装置22は、通常、画像読取装置としてのカラースキャナでカラー原稿40の画像を読み取った画像データを画像処理装置45で所定の処理をした後に得られる画像信号に基づいて露光を行うものである。像露光装置22は、図示しないパーソナルコンピュータ等の外部接続機器から送信して入力される画像データから生成される画像信号に基づいて露光を行うことも可能である。
カラースキャナは、搬送移動するまたはプラテンガラス上に載置固定されるカラー原稿40の画像を光源42によって照明し、そのときの原稿40からの反射光を図示しない光学素子を介してCCD等からなるカラー画像読取素子43上に入力させることにより、カラー原稿40の画像をRGBの画像信号として読み取るように構成されている。このカラースキャナで読み取られた画像信号は、画像処理装置45において所定の画像処理が施された後、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の色成分の画像信号として像露光装置22に送られる。
像露光装置22は、たとえば、半導体レーザ22aと、f−θレンズやポリゴンミラー等からなる走査光学系22b等を備えたレーザビーム走査式露光装置(ROS)として構成されている。そして、この像露光装置22では、その半導体レーザ22aから画像信号に応じて変調された状態で出射されるレーザビーム光LBを、走査光学系22bを介して感光ドラム20上に走査露光する。
感光ドラム20の表面は、上記画像露光に先立って、帯電装置21としての帯電ロールやスコロトロン等により所定の電位に一様に帯電される。その後、感光ドラム20の帯電された表面には、像露光装置22によってイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックに対応する各色の画像露光が順次行われ、対応する色成分の静電潜像が形成される。
感光ドラム20は、特に制限はなく公知のものを使用することができる。具体的には、有機感光材料からなる感光層を形成したものが使用されるが、必要に応じて無機感光材料からなる感光層を形成したものを使用してもよい。
感光ドラム20上に順次形成される各色の静電潜像は、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの各有色トナーを収容した現像器23Y、23M、23C、23Kを回転可能な支持体にその回転周方向に沿って配設し、その各現像器のうち現像に必要な現像器を感光ドラム20に対向させるように回転移動させる、いわゆるロータリー式現像装置23によってそれぞれ現像される。これにより、感光ドラム20上には、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの各有色トナーからなる有色トナー像が順次形成される。
この現像装置23で使用される有色トナー(シアントナー、マゼンタトナー、イエロートナー、ブラックトナー)はいずれも、少なくとも結着樹脂と所定の着色剤を含有してなる絶縁性の微粒子(粉体)である。有色トナーの粒径は、特に限定されないが、像露光装置22により形成される静電潜像を忠実に現像して再現できる観点からすると、4〜8μmの範囲であることが望ましい。この有色トナーは、現像装置23による現像方式等に応じて、トナーとキャリアからなる二成分現像剤や、トナーのみからなる一成分現像剤として構成される。このような有色トナーとしては、公知の製法によって製造したものを使用するか、あるいは、市販品のものを使用する。
感光ドラム20に順次形成される4色の有色トナー像は、感光ドラム20に接するような状態で矢印方向に回転するドラム状またはベルト状の中間転写体30に、転写ロール、コロトロン等の第一転写装置24によって形成される転写電界により、互いに重ね合わせた状態で静電的に一次転写される。中間転写体30は、ポリイミド等の誘電体に、所望の電位半減時間を示すように調整するため導電性カーボン等の導電性無機粉、ポリアニリン等の導電性有機材料等を分散した材料にて形成される誘電体層を有するものである。
中間転写体30に多重転写された有色トナー像は、二次転写装置31によって形成される転写電界により、図示しない給紙装置にてレジストロールを経由して二次転写位置に所定のタイミングで搬送される記録シート12に対して静電的に一括して二次転写される。二次転写装置31は、たとえば、中間転写体8を挟む状態に対向して圧接配置されるロール対31a、31bにて構成される。図中の矢付一点鎖線は記録シート12の搬送経路を示す。
以上のように未定着の有色トナー像が転写された記録シート12は、加熱定着部11としての透明コート層形成装置1(の定着ニップ部N)にむけて搬送される。
透明コート層形成装置1は、大別すると、図5や図6に示すように定着(転写定着)部1Aと透明トナー層形成部1Bとを備えている。
定着部1Aは、支持ロール61〜64に張架されて矢印方向に回転する無端状の定着ベルト60と、この定着ベルト60の外周面に、前記有色トナーからなる有色トナー像YTを担持した記録シート12をそのトナー像担持面が当接する状態で導入して加熱加圧する定着ニップ部Nを形成する第1定着ロール65aおよび第2定着ロール65bからなる定着ロール対と、定着ニップ部Nを通過した後の定着ベルト60と記録シート12(有色トナー像を含む)を冷却する冷却装置68とで主に構成されている。
定着ベルト60は、無端状のベルト基材上に、トナー等に対する良好な剥離性を付与する観点等から、シリコーン樹脂、フッ素系樹脂等からなる表面層を形成したものである。また、このベルト60の外周面は、定着するトナー像等の表面を微小な凹凸を無くして平滑にするという高光沢の付与という観点から、好ましくは、75度光沢度計で測定したときの表面の光沢度が60度以上となるように形成される。また、この定着ベルト60は、図示しない駆動モータからの駆動力により回転駆動する第1定着ロール65aにより回転するようになっている。
第1定着ロール65aおよび第2定着ロール65bは、図示しない加圧機構により所定の加圧力で(定着ベルト60を挟んで)圧接されるように設置されているとともに、その各ロールの中空内部には定着ニップ部Nにおける温度が所定の定着温度に加熱維持されるようにするために加熱源が設置されている。冷却装置68は、放熱部材(ヒートシンクなど)、空冷装置、ヒートパイプ等にて構成されるものであり、第1定着ロール65aと支持ロール62との間となる定着ベルト60の内周面に接触した状態で設置される。
また、この定着部1Aにおいては、支持ロール62として小径のものを使用して、定着ベルト60に密着して搬送される記録シート12を支持ロール62の通過部分でその自らの腰の強さにより剥離させるように構成している。また、支持ロール63は、定着ベルト0に所定の張力を付与するテンションロールおよびベルトの蛇行を補正するステアリングロールとして構成されている。
透明トナー層形成部1Bは、定着ベルト60に接して矢印方向に回転する感光ドラム50の周囲に、帯電装置51、像露光装置52、透明用現像装置53、転写装置54、クリーニング装置55等がこの順で設置されている。この透明トナー層形成部1Bは、前記有色トナー像の形成動作に連動させて所定のタイミングで透明トナー層の形成動作を開始する。
まず、上記感光ドラム50は、基本的に前記有色トナー像形成部10における感光ドラム20と同じ構成からなるものであるが、特に、定着ベルト60の定着ニップ部Nよりも回転方向上流側となる外周面の位置でその定着ベルト60に接して矢印方向に従動回転するようになっている。
この感光ドラム50は、透明コート層形成時になると、定着ベルト60の回転に従動回転し、その感光層が帯電ロール等からなる帯電装置51により一定の電位(帯電電位:Vh)に一様に帯電される。
一様に帯電された感光ドラム50は、LEDアレイ(発光ダイオード素子)からなる露光装置52により露光されて、一定の電位(潜像電位:VL)からなる透明トナー層形成用の静電潜像が形成される。この露光装置52の露光時の光量Pは、後述する条件となるように設定されている。
感光ドラム50に形成された静電潜像は、透明用現像装置53から現像ロール53aを介して供給される透明トナーにより現像される。このときの現像は、感光ドラム50と現像ロール53aの間に印加される現像バイアス電圧(Vd)にて形成される現像電界により、現像ロール53a上に静電的に担持された透明トナーが感光ドラム50の潜像部分に移動して付着することで行われる。この現像により、感光ドラム50上に一定の厚さからなる透明トナー層CTが形成される。この透明トナー層CTは、記録シート12の表面全体と同じ大きさに形成するか、あるいは、その表面の一部となる大きさ(例えば、シート表面全面に対して縁等を残すような若干小さくした大きさや、有色トナー像YTの大きさに相応させた大きさ)に形成される。
上記透明トナーとしては、有色トナーの製造に使用される結着樹脂を用いて形成する微粒子が使用される。その結着樹脂としては、実質的に透明であればよく、目的に応じて適宜選択される。具体的には、例えば、ポリエステル系樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリアクリル樹脂、その他のビニル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリウレア系樹脂などの一般トナー用に用いられる公知の樹脂とその重合体が使用可能である。このなかでも、低温定着性、定着強度、保存性などの特性を同時に満足し得る点でポリエステル系樹脂が好ましい。
また、透明トナーの粒径は、特に限定する必要はないが、有色トナー像を乱さないという観点からは8〜20μmの範囲が望ましい。その粒径が8μm未満の場合には、現像装置53と感光体ドラム50の間に高い電界を印加する必要がある。反対に20μmを越えると、一様な透明トナー像を形成することが困難となる。透明トナーは、二成分現像剤として構成することも可能であるが、その現像剤を構成するキャリアが透明トナー層の形成に際して定着ベルト60に転移してそのベルト表面の平滑性を損なうという不具合を未然に防ぐことができる観点からは、一成分現像剤として構成することが好ましい。
さらに、透明トナーは、高い光沢度をムラなく均一に付与する観点からすると、トナーの流動性と帯電性を適宜制御することが必要になる。その制御のためには、透明トナーの粒子表面に無機微粒子、樹脂微粒子の一方または双方を外添ないし付着させることが好ましい。
その無機微粒子としては、トナーの外添剤として用いられている公知の微粒子の中から目的に応じて適宜選択したものを同様に用いることができるが、例えば、シリカ、二酸化チタン、酸化すず、酸化モリブデンなどが挙げられる。また、帯電性などの安定性を考慮し、これらの無機微粒子に対して、シランカップリング剤、チタンカップリング剤等を用いて疎水化処理を施したものも使用できる。一方、上記有機微粒子としては、トナーの外添剤として用いられている公知の微粒子の中から目的に応じて適宜選択して使用することができるが、例えば、ポリエステル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリアクリル系樹脂、ビニル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリウレア系樹脂、フッ素系樹脂などが挙げられる。上記無機微粒子及び有機微粒子の平均粒径は0.005〜1μmであることが好ましい。これは、前記平均粒子径が0.005μm未満であると、透明トナーの表面に当該無機微粒子及び/又は樹脂微粒子を付着させたときに凝集がおこり所望の効果が得られないことがあり、反対に1μmを越えると、より高光沢な画像を得ることが困難になるためである。
このように感光ドラム50上に形成された透明トナー層CTは、転写ロール等からなる転写装置54により形成される転写電界により、感光ドラム50に接して回転する定着ベルト60の外周面に静電的に転写される。この転写された未定着の透明トナー層CTは、定着ベルト60の回転に伴って定着ニップ部Nに搬送される。
定着ニップ部Nでは、定着ベルト60に転写された透明トナー層CTが、前記有色トナー像YTを担持する記録シート12に重ね合わせられて加熱加圧される。これにより、透明トナー層が記録シート12側に転写されると同時に、有色トナー像とともに記録シート12に熱定着される。また、定着ニップ部Nを通過した記録シート12は、定着ベルト60に密着した状態のままで搬送され、冷却装置68を通過する際に冷却された後、支持ロール62の通過部分で定着ベルト60から剥離される。
これにより、記録シートの有色トナー像の担持面に均一な透明コート層がコーティングされた状態で形成された記録シート12が得られる。このようにして得られた画像は、透明コート層が形成されることと定着ベルト60の平滑表面が転写されることが相俟って高い均一な光沢度が付与されたものとなる。
この透明コート層形成装置1では、定着部1Aにおける第1定着ロール65aの駆動装置と透明トナー層形成部1Bにおける感光ドラム50の駆動装置とを別個独立したものとして構成するとともに、定着ベルト60を感光ドラム50に接触させて作像するときは定着ベルト60の回転に従動させるように構成している。
特に感光ドラム50の駆動装置80については、図7に示すように、その駆動源となる駆動モータ81と感光ドラム50との間に、ステックスリップ現象の防止手段として1ウェイクラッチ82を設置している。これは、感光ドラム50と定着ベルト60との間の微小な速度差による歪が定着ベルト60側に蓄積し、ある一定レベルに達するとスリップする現象(いわゆるステックスリップ現象)が発生して、作像中の画像を乱すことになり、このような不具合を回避する必要があるため、前述したように定着ベルト60が感光ドラム50に接して作像するときには感光ドラム50が定着ベルト60に従動回転させるために1ウェイクラッチ82を使用している。
上記駆動装置80は、駆動モータ81からの駆動力が、基本的に複数の駆動力伝達ギヤ83〜86を介して感光ドラム50に伝達されるようになっており、その駆動力伝達ギヤ84、85との間に1ウェイクラッチ82を介在させた構成になっている。この1ウェイクラッチ82は、感光ドラム50の回転速度が定着ベルト60の速度変動の影響等をうけて駆動モータ81の駆動速度よりも速い場合には空転して駆動力の伝達がなされず、反対に感光ドラム50の回転速度が駆動モータ81の駆動速度よりも遅くなった場合には駆動力の伝達を行うように回転し、感光ドラム50が駆動モータ81による所定の速度で回転するように構成されている。
また、駆動装置80は、その回転速度が定着ベルト60の回転駆動速度(定常速度)よりも若干(3〜10%)遅くなるように設定している。これにより、定着ベルト60が感光ドラム50に後記のリトラクト装置70によって接触すると、それと同時に1ウェイクラッチ82が空転して駆動モータ81から駆動力を感光ドラム50へ伝達しなくなり、一方、定着ベルト60の駆動力がそのベルトとの接触部から感光体ドラム50側へも伝達されるようになり、その結果、感光ドラム50が定着ベルト60に従動して回転するようになる。また、透明トナー像CTの作像面積が増えること等により感光ドラム50が定着ベルト60に対してスリップすることがあった場合には、1ウェイクラッチ82の駆動伝達機能によって駆動モータ81の駆動力が感光ドラム50に伝達されるようになり、これにより感光ドラム50が所定の速度で回転するようになる。
そして、この透明コート層形成装置1においては、透明トナー層形成部1Bの感光ドラム50に形成する静電潜像の潜像電位(VL)がその感光ドラム50(の感光層)の残留電位(Vrp)の領域内となるように露光装置7の露光光量を設定している。
この例では、例えば、本来の残留電位(Vrp)が−30Vの感光層を形成した感光ドラム50に対し、−630Vの帯電電位(Vh)をその残留電位(Vrp)まで減衰させるために必要な最低光量Pnの2〜10倍の光量Pで露光を行うように設定している。この露光装置7の光量は、図8に示すように、透明コート層形成装置1の制御部90における露光装置52の制御内容として設定される(透明コート層形成装置の露光装置52の動作について画像形成装置15の制御部(91)で制御する構成である場合には、その制御部(91)における露光装置52の制御内容として設定される)。制御部90は、透明コート層形成装置1のシステム全体の制御を行うように構成されているとともに、その制御に必要な所定の情報(例えば、記録シート12の搬送タイミングの情報)が入力されるように構成されている。
このように露光装置52の露光光量を設定することにより、次のような作用効果が得られる。
まず、従来においては、図9(a)〜(c)に示すように、記録シート12が定着ニップ部Nを通過する際、具体的には記録シートの先端部12aが定着ニップ部Nの入口側に突入するときと記録シートの後端部12bが定着ニップ部Nの出口側から排出されるときに、定着ベルト60の回転速度が変動(定常速度に対して増速または減速)し、この速度変動が定着ベルト60と従動回転する感光ドラム50にも同様に伝達されるため、その速度変動が潜像工程時に発生すると、感光ドラム50上に形成される静電潜像の電位(VL)が一点鎖線で示すようにその速度変動に比例するように変動する。
詳しくは、記録シートの先端部12aが定着ニップ部Nに突入する際には、定着ベルト60の回転速度が減速する方向に変動し、これに従動する感光ドラム50も減速するため、露光装置52からの露光光量(単位面積あたりの露光エネルギー量)があたかも増加したかのような状態となり、他の部位よりも電位が多めに減衰した(深い)潜像電位となってしまう。反対に、記録シートの後端部12bが定着ニップ部Nから排出される際には、定着ベルト60の回転速度が増速する方向に変動し、これに従動する感光ドラム50も増速するため、露光装置52からの露光光量があたかも減少したかのような状態となり、他の部位よりも電位の減衰が少ない(浅い)潜像電位となってしまう。
この結果、図9(d)に示すように、定着ベルト60上に現像されて形成される透明トナー層の厚さも、その潜像電位(VL)に変動に相応するように増減して異なってしまう(均一に形成されない)。この透明トナー層の厚さ変動は、記録シートの先端部12aが定着ニップ部Nの入口側に突入するときに比べると、記録シートの後端部12bが定着ニップ部Nから排出されるときの方が大きくなる傾向にある。これは、そのシート先端部12aが定着ニップ部Nの入口側に突入して定着ベルト60が減速するときには、感光ドラム50が前記したように1ウェイクラッチによってその駆動源の駆動モータ81の駆動量を受ける側に切り替わって吸収されるが、そのシート後端部12bがニップ部Nから排出されて定着ベルト60が増速するときには、そのような吸収がなされないためであると考えられる。図9(c)中の符号Vdは前述した現像バイアス電圧を示す。
これに対し、この例(本発明)の透明コート層形成装置1では、図9(c)に示すように、露光装置52により、静電潜像の潜像電位(VL)が感光ドラム50の残留電位(Vrp)の領域内となるように必要以上(過剰)の露光を行って静電潜像を形成している。このため、定着ベルト60の速度変動に伴って感光ドラム50も速度変動して露光光量の増減が発生することがあっても、静電潜像の電位(VL)はほぼ残留電位(Vrp)に維持されて変化しにくくほぼ一定に保たれるようになる。この結果、定着ベルト60上に現像されて形成される透明トナー層の厚さも、その潜像電位(VL)の均一な状態に相応してほぼ一定に保たれるようになる。
したがって、この透明コート層形成装置1やこれを用いたカラー画像形成装置15によれば、記録シート12が定着ニップ部Nを通過する際に定着ベルト60に速度変動が発生して感光ドラム60の速度変動も発生することがあっても、透明トナー層からなる均一な透明コート層を形成することができ、これにより有色トナー像YTを担持する記録シート12に高い光沢度を均一に付与することが可能となる。
[実施の形態1の変形例]
この実施の形態1に係る透明コート層形成装置1および画像形成装置10においては、前記露光装置52の潜像形成時における露光量Pとして常に同じ値のものを適用することも可能であるが、前記した定着ベルト60の速度変動が記録シート12のサイズ、厚さ等の条件によって変化するため、その露光量を定着ベルト2の変動速度(S´)の実態にできるだけ相応させてより適切な光量に調整したものを適用することも可能である。
具体的には、定着ベルト60の定常回転速度をS、感光ドラム50を露光してその帯電電位(Vh)から残留電位(Vrp)まで減衰させるために必要な最低光量をPnとしたとき、露光装置52の露光光量PをP=Pn×(S´/S)に設定する。この露光光量に関する制御内容も前記した制御部90において設定(格納)される。
定着ベルト60の変動速度S´については、予め画像形成装置15で使用可能な記録シート12のサイズ(特に送り方向と直交する方向の幅)、厚さまたは坪量の違いに応じて実測し、図10に例示するように、その実測したデータ(各変動速度S´)を記録シートの上記条件ごとに対照表(ルックアップテーブル)として作成して前記制御部90(の記憶部)に格納しておく。図10のS´は、定常回転速度Sに対して増速した場合を「+S´」、減速した場合を「−S´」としてそれぞれ表示しており、また、各S´に続くかっこ書きは速度の変動レベルを示す。この際、定着ベルトの変動速度S´の計測は、その駆動ロールでもある第1定着ロール65aの回転軸に取り付けたエンコーダの検出信号か、あるいは、定着ロール65aの駆動用サーボモータに内蔵されている速度制御用エンコータの検出信号から計測する。
そして、実際に使用する記録シート12の上記条件に基づいて定着ベルト60の変動速度S´(各レベル値)を読み出し、前記算出式から必要な露光量Pについて算出する。実際に使用する記録シート12の上記条件は、有色トナー像形成部10で把握されている情報が制御部90に送信されることにより入手される(図8参照)。ちなみに、図10中の±S´の各レベル値(代表して、各通紙モードの最小レベルおよび最大レベルの値のみ表示する)は、たとえば、定常回転速度Sを30mm/secという速度にした場合にそれぞれ以下のかっこ書きするような各速度(mm/sec)を示している。+S´=1(29.6)、…、7(33.3)、11(55.2)、…、17(118.4)、21(75.3)、…、27(212.6)。−S´=1(29.5)、…、7(29.0)、11(24.9)、…、17(17.3)、21(20.7)、…、27(2.9)。
このように構成した場合には、記録シート12の上記条件によって種々異なる定着ベルト60の変動速度の内容や程度に応じて露光装置52からの適切な量の露光が行われるようになり、特に感光ドラム50への過剰な露光を行って負荷をかけることなく、透明トナー層形成用の静電潜像をほぼ安定して形成することができる。
[実施の形態2]
実施の形態2に係る透明コート層形成装置1およびカラー画像形成装置15は、図6に示すように、記録シート12の後端部12bが定着ニップ部Nの出口側を通過するときに、感光体50と定着ベルト60とを離間させることが可能なリトラクト機構70を設けた以外は実施の形態1の場合と同様の構成からなるものである。
この例では、上記転写装置54(転写ロール)を偏心カム71を使用したリトラクト機構70により両矢印方向に示すように昇降動させて、定着ベルト60を感光ドラム50に当接させるか、あるいは感光ドラム50から離間させるように形成している。図6中の符号75は転写ロール54を回転可能に支持する転写ユニットフレーム、76はそのユニットフレーム75の転写ロール54よりも定着ベルト回転方向上流側に回転可能に設けられたガイドロールである。
そして、このリトラクト機構70は、図11に示すように、透明コート層の形成時になると、偏心カム(リトラクト)71が転写ユニットフレーム75を上昇させる方向に回転し、これにより定着ベルト60を転写ロール54およびガイドロール76に支持させた状態で持ち上げて感光ドラム50に当接させるように作動する。また、記録シート12の後端部12bが定着ニップ部Nの出口側を通過する際には、偏心カム(リトラクトカム)71が転写ユニットフレーム75を下降させる方向に回転し、これにより定着ベルト60を転写ロール54およびガイドロール76に支持させた状態で下降させて感光ドラム50から離間させるように作動する。記録シート12の後端部12bが定着ニップ部Nの出口側を通過するときのタイミング情報は、定着ニップ部Nの入口側に設置した不図示のシート通過検知センサの検知情報から予測した情報(その検知時間と搬送速度から算出する記録シートの通過時間)として得られる。
このようなリトラクト機構70を設けることにより、次のような作用効果が得られる。
まず、従来においては、図11に示すように、記録シートの先端部12aが定着ニップ部Nの入口側に突入するときと記録シートの後端部12bが定着ニップ部Nの出口側から排出されるときには、前述したように定着ベルト60の回転速度が変動(定常速度に対して増速または減速)し、この速度変動が定着ベルト60と従動回転する感光ドラム50にも同様に伝達されるため、その速度変動が潜像工程時に発生すると、感光ドラム50上に形成される静電潜像の電位(VL)がその速度変動に比例するように変動するが(図9参照))、その速度変動が現像工程時に発生すると、感光ドラム50上の静電潜像が現像装置53によって現像される現像時間が増減し、そのときの現像量(透明トナーの付着量)が変動してしまう。この現像量は、特に、感光ドラム50が増速してそのときの現像時間が減少した場合に少なくなる。一方、この現像量は、感光ドラム50が減速してそのときの現像時間が増加した場合には特に変動しない(現像バイアスにて形成される現像電界により現像量が制限されるからである)。
そして、前述したように、記録シートの後端部12bが定着ニップ部Nから排出される際には、定着ベルト60の回転速度が大幅に増速する方向に変動し、これに従動する感光ドラム50も大幅に増速する。このため、前述したように静電潜像の電位については、他の部位よりも電位の減衰が少ない潜像電位となってしまい、また、そのときの現像量については少なくなってしまう。この結果、定着ベルト60上に現像されて形成される透明トナー層の厚さも、他の部位に比べて薄くなってしまう(均一に形成されない)。
これに対し、この例(本発明)の透明コート層形成装置1では、透明トナー層の潜像形成時における露光に関する構成に加えて、上記のタイミングでリトラクト機構70を作動させて定着ベルト60を感光ドラム50から離間させるように構成しているため、記録シート後端部の定着ニップ部Nから排出時に定着ベルト60の速度変動が発生しても、その速度変動が離間した状態にある感光ドラム50側に伝達されることがない。このため、感光ドラム50の回転速度が大幅に変動することがないため、前記した潜像電位の変動が少なく、しかも現像量の変動も少なく一定に保たれるようになる。この結果、定着ベルト60上に現像されて形成される透明トナー層の厚さも、その潜像電位や現像量の均一な状態に相応してほぼ一定に保たれるようになる。
したがって、この透明コート層形成装置1やこれを用いたカラー画像形成装置15によれば、特に記録シートの後端部12bが定着ニップ部Nの出口側から排出して通過する際に定着ベルト60に大きな速度変動が発生して感光ドラム60の速度変動も同様に発生することがあっても、透明トナー層CTからなる均一な透明コート層を形成することができ、これにより有色トナー像YTを担持する記録シート12に高い光沢度を均一に付与することが可能となる。
ちなみに、この透明コート層形成装置1では、記録シートの先端部12aが定着ニップ部Nに突入する際にも定着ベルト60の速度変動が発生するが(図11参照)、かかる変動は、前述した感光ドラム50の駆動装置80における1ウェイクラッチ82の機能により低減される。しかし、この透明コート層形成装置1では、実施の形態1に係る透明コート層形成装置の場合と同様に、透明トナー層の形成時における露光量Pを特定する構成を併用していることにより、その潜像をほぼ一定に形成することが可能であり、これによっても透明トナー層CTを均一に定着ベルト60に形成することが確保される。
[実施の形態2の変形例]
この実施の形態2に係る透明コート層形成装置1および画像形成装置10においては、既述したように定着ベルト60の速度変動が記録シート12のサイズ、厚さ等によって変化するため、定着ベルト60の変動速度S´が所定値以上になるときにのみリトラクト機構70による前記した離間動作を行い、その所定値に満たないときにはリトラクト機構70による離間動作は行わず露光装置52による残留電位を目安にした露光のみを行うように構成してもよい。
この場合、実施の形態1で説明したように定着ベルト60の変動速度S´は予め求めた記録シート12のサイズ、厚さ等によって定まる情報を使用する(図10参照)。また、より具体的には、選択された記録シートのサイズ、厚さまたは坪量によって定着ベルト60の速度変動量S´を読み出し、その露光光量PについてP=Pn×(S´/S)と設定するのみで対応するかを判断する。そして、その光量の設定のみによる対応では困難な場合には、記録シートの後端部が定着ニップ部Nから排出されるときに上記リトラクト機構70により定着ベルト60と感光ドラム50を離間させる制御を行うようにする。
[実施の形態3]
実施の形態3に係る透明コート層形成装置1およびカラー画像形成装置15は、図12に示すように、定着ニップ部Nから定着ベルト60の回転方向上流側に沿って感光ドラム50と定着ベルト60が接する転写位置(TP)に達するまでの経路長L1からなる経路長をLx、定着ニップ部Nに連続して搬入するときの記録シート12の送り方向最小長さ(J)にその各シート間の送り間隔(K)を加えた搬送長さをM(=J+K)としたとき、Lx=n×M(nは整数)の条件を満たすように設定した以外は実施の形態1の場合と同様の構成からなるものである。図中の符号12(1)〜12(4)は、搬入される4枚の同一の記録シートを示す。
この例では、同一サイズ(送り方向最小長さ:J)からなる記録シート12を一定の送り間隔:Kで連続して搬入する場合において、前記nをn=4に設定した。すなわち、上記経路長Lx(=L1)は搬送長さMの4倍の長さになるよう設定されている。また、経路長:Lxは、上記搬送長Mという条件で連続して搬送される記録シート12の4枚に対して形成する4つの透明トナー層CTを定着ベルト60上に転写するに足る長さ(Q)に相当する。このような経路長Lxと搬送長さMを上記関係に設定するのは、感光ドラム50の設置位置を調整したり、あるいは定着ベルト60の支持ロール61の位置を調整することで行っている。さらに、この例では、透明トナー層CTの作像サイズを記録シート12のサイズよりも少し小さめに設定している。
このような経路長Lxと搬送長さMに関する設定を行うことにより、次のような作用効果が得られる。
すなわち、透明トナー層CTの作像サイズを上記したサイズに設定することとあいまって、上記搬送長さMで連続して搬送される各記録シート12の先端部が定着ニップ部Nに突入する時期およびその後端部が定着ニップ部Nから抜け出す時期と、その各記録シート12に形成すべき透明トナー層CTの転写工程が実行されている時期とが重なることはない。このため、その各記録シート12が定着ニップ部Nに突入する時やその定着ニップ部から排出される時に定着ベルト60の速度変動が発生し、それにより透明トナー層CTの転写動作が悪影響を受けてしまうことが回避されるようになり、透明トナー層CTを均一に定着ベルト60に転写形成することができるようになる。
また、この際、記録シートの端部が定着ニップ部Nの通過時期と露光工程の時期が重なったとしても、前記露光装置52の潜像形成時における露光光量Pを特定する構成を併用していることにより、実施の形態1で説明したように、その潜像をほぼ一定に形成することが可能であり、これによっても透明トナー層CTを均一に定着ベルト60に形成することが確保される。
したがって、この透明コート層形成装置1やこれを用いたカラー画像形成装置15によれば、記録シート12が定着ニップ部Nに突入したり、その定着ニップ部Nから排出される際に定着ベルト60に大きな速度変動が発生して感光ドラム60の速度変動も同様に発生することがあっても、その速度変動が少なくとも透明トナー層の定着ベルト60への転写工程に悪影響を及ぼすことがない。この結果、均一な透明コート層を形成することができ、これにより有色トナー像YTを担持する記録シート12に高い光沢度を均一に付与することが可能となる。
ちなみに、図16に例示するように、Lx=n×M(nは整数)の条件を満たさない設定(例えば、Lx´=3.7×M)である場合には(この場合はLx´≠Qにもなる)、記録シート12(1)の先端部が定着ニップ部Nに突入したときに、感光ドラム50上の透明トナー層CTを定着ベルト60に転写しているときと重なってしまう。これにより、定着ベルト60の回転変動が感光ドラム50にも伝達されることで、転写中の透明トナー層CTが正常に転写されず、定着ベルト60上において所定の一定厚さに形成されない。このような現象は、記録シート12の後端部が定着ニップ部Nから排出されるときにも、感光ドラム50上の透明トナー層CTを定着ベルト60に転写しているときと重なってしまうことがあり、同様に発生する。
また、Lx=n×M(nは整数)の条件を満たし、そのMが最小サイズの記録シートの作像間隔となるように構成しても、連続して搬送する複数の記録シート12が異種サイズのもの(搬送方向の長さJが異なるもの)が混在する場合(ミックスサイズの場合)には、例えば、図17に示すように、その各記録シートの搬送単位長さQがその経路長Lxと異なる場合(Q2)が存在するときには上記したような作用効果が得られない。
その経路長Lxと異なる搬送単位長さQ2が発生する場合とは、以下のようなパターンがある。
1つは、図17aに例示するように、搬送方向の長さが最小サイズJ1の記録シート12と同一の送り間隔Kの組み合わせで設定される経路長さLxの構成において、その最小サイズの3枚の記録シート12(1)〜(3)に対する透明トナー層を形成した後に最小サイズJ1よりも大きなサイズJ3(J1の2倍のサイズ)の記録シート12´(4)に対する透明トナー層を形成するような場合、最小サイズの1枚目の記録シート12(1)の先端部が定着ニップ部Nに突入したときに発生する定着ベルト60の速度変動(減速)によって、上記経路長Lxに相当する4枚目の記録紙12´(4)の中央部に当該定着ベルトの速度変動に伴う転写不良が発生するパターンである。
また、もう1つは、図17bに例示するように、搬送方向の長さが最小サイズJ1の記録シート12と異なる送り間隔K1、K2の組み合わせで設定される経路長さLxの構成において、その最小サイズJ1よりも大きなサイズJ2(<J3)の記録シート12´(1)に対する透明トナー層を形成した後に、たとえば最小サイズJ1よりも大きなサイズJ3(J1の2倍のサイズ)の記録シート12´(2),(3)に対する透明トナー層を形成するような場合、記録シート12´(1)の後端部が定着ニップ部Nから排出されるときに発生する定着ベルト60の速度変動(増速)によって、上記経路長Lxに相当する3枚目の記録紙12´(3)の中央部付近に当該定着ベルトの速度変動に伴う転写不良が発生するパターンである。
このいずれのパターンにおいても、Lx≠Q2の関係にある異種サイズの記録シートが搬送されるときには、或る記録シートの先端部または後端部が転写ニップ部Nを通過する時期と、感光ドラム50上の透明トナー層CTが定着ベルト60に転写されている時期と重なってしまうのである。なお、この場合であっても、例えば送り間隔Kを調整してLx=Q2の関係を満たすような記録シートの搬送を行うことにより、前述したような作用効果を同様に得ることができるようになる。
一方、上記ミッスクサイズの場合でも、図13の中央部および下部に例示するように、サイズが異なる記録シート12、12´、12´´との上記単位搬送長さQが経路長Lxと等しい関係にあるときには、前述したような作用効果が同様に得られる。
[実施の形態3の変形例]
この実施の形態3に係る透明コート層形成装置1および画像形成装置10においては、前記露光装置52の潜像形成時における露光光量Pを特定することと、経路長Lxと搬送長さMに関する設定を行うことを併用する場合について例示したが、その後者の構成のみを採用した場合にも有効な場合がある。
また、実施の形態3に係る透明コート層形成装置1および画像形成装置10においては、実施の形態2の場合と同様に、記録シートの後端部が定着ニップ部の出口から排出されるときにリトラクト機構70により定着ベルト60と感光ドラム50を離間させるように構成することも有効である。
さらに、上記リトラクト機構70により定着ベルト60と感光ドラム50を離間させるように構成を併用する場合においては、既述したように定着ベルト60の速度変動が記録シート12のサイズ、厚さ等によって変化するため、定着ベルト60の変動速度S´が所定値以上になるときにのみリトラクト機構70による前記した離間動作を行い、その所定値に満たないときにはリトラクト機構70による離間動作は行わず露光装置52による残留電位を目安にした露光のみを行うように構成してもよい。この場合、定着ベルト60の変動速度S´は予め求めた記録シート12のサイズ、厚さ等によって定まる情報を使用する(図10参照)。
<評価試験>
次に、実施の形態1〜3に係る透明コート層形成装置1およびカラー画像形成装置15をそれぞれ用いて以下のような評価試験を行った。
評価試験は、まずカラー画像形成装置15の有色画像形成部10において坪量が異なる2種の記録シートA,Bに対してテスト用の有色トナー像YKを形成した後、透明コート層形成装置1においてその各記録シートの像担持面に透明コート層を各構成の透明コート層形成装置1により形成すると同時に定着を行った。そして、そのときの透明コート層形成装置1における感光ドラム50の静電潜像の電位(VL)の変動量(電位差)と、図15に示すように透明コート層の露光部位(位置)、現像部位および転写部位における層厚むらに起因したグロスむらの発生状況とについて調べた。
この際、静電潜像の電位(VL)の電位差については、表面電位計(トレック社製:344)を用いて計測し、所定の潜像電位に対する変動量を調べた。グロスむらについては、定着後の透明コート層の厚さによるグロスむらの発生状況を目視により観察して評価するという官能試験により調べた。その官能試験は、20人の評価者により以下の5段階評価を行った。
1:非常に悪い。
2:悪い。
3:普通。
4:良い。
5:非常に良い。
次いで、評価者全員の評価結果(5段階の1〜5の数値を合計した結果)の平均値を求め、その平均値について以下の基準で最終的な評価を行った。このときの結果を図14に示す。
○:4以上の場合。
△:2以上かつ4未満の場合。
×:2未満の場合。
また、この試験においては、記録シートA,Bとして、坪量が105gsmからなるA4版サイズのコート紙(厚さ100μm)と、坪量が209gsmからなるA4版サイズの印画紙(厚さ220μm)を使用した。現像装置23の有色トナーとしては富士ゼロックス製:A−Color用のシアン現像剤、マゼンタ現像剤、イエロー現像剤、ブラック現像剤を用いた(平均粒径はいずれも7μmであった)。現像する有色トナーの重量は、各色とも画像信号Cin:100%の部分で0.5(mg/cm2) とした。中間転写体30としては、導電性カーボン粒子を分散したポリイミド樹脂からなる無端状ベルト(半減時問は0.1 秒)を用いた。そして、テスト用の有色トナー像YKは、人物写真の画像データに基づいて形成した。この有色トナー像の形成は、カラー複写機(富士ゼロックス製:Docu Centre Color 500)を使用した。
一方、透明コート層形成装置1については、実施の形態1に係るものとして、図9に示すように感光ドラム50を帯電装置51により帯電電位(Vh)が−500Vとなるように帯電させた後、その帯電した感光ドラム50をその残留電位(Vrp)の領域内になるまで減衰させるに必要な最小光量Pnの2倍となる光量Pで一様に露光することにより、潜像電位(VL)が−20Vとなる静電潜像を形成するに設定した装置を使用した。また、その静電潜像を透明トナーにより、前記テスト用の有色トナー像のうち非画像部における透明トナー層CTの現像量が1.0mg/cm2となるように現像した。続いて、その透明トナー層を定着ベルト60に転写させた後、定着ニップ部Nにおいて前記記録シート上の有色トナー像と重ね合わせた状態で110〜200℃の温度で加熱加圧し、さらに冷却装置68の通過により50〜95℃まで冷却させた後、その記録シートを定着ベルト60から剥離した。
透明トナーとしては、以下の一成分現像剤として製造したものを使用した。まず、透明トナーの結着樹脂として、テレフタル酸/ビスフェノールAエチレンオキサイド付加物/シクロヘキサンジメタノールから得た線状ポリエステル(モル比=5:4:1、ガラス転移温度Tg=62℃、数平均分子量Mn=4500、重量平均分子量Mw=10000)を用い、これをジェットミルで粉砕した後、風力式分級機で分級することでd50=11μmの透明微粒子を作製した。次いで、この透明微粒子100重量部に下記の2種類の無機微粒子A及びBを高速混合機で混合することにより付着させた。無機微粒子Aとしては、Si02(シランカップリング剤で表面を疎水化処理、平均粒径0.05μm、添加量1.0重量部)を用いた。無機微粒子BはTi02( シランカップリング剤で表面を疎水化処理、平均粒径0.02μm、屈折率2.5、添加量1.0重量部) である。
比較例として、透明トナー層形成用の静電潜像を従来の装置のように形成し、それ以外については実施の形態1と同様にして透明コート層の形成を行った。すなわち、図9に感光ドラム50を帯電電位(Vh)が−630Vとなるように帯電させた後、潜像電位(VL)が−220Vとなる静電潜像を形成した点が上記実施の形態1の場合と異なるのみである。それ以外は、同様の評価試験を行った。結果を図14に合わせて示す。
また、実施の形態2に係る透明コート層形成装置1としては、最小サイズJ1とそれよりも大きいサイズJ2とからなるミックスサイズの記録シート12、12´を、図17cに示すように最初に最小サイズJ1の記録シート12(1)を搬送した後に間隔k1をあけてサイズJ2からなる4枚の記録シート12(2)〜(5)を同一の間隔K2で連続して搬送し、その先頭の記録シート12の後端部が定着ニップ部Nの出口から排出されるときに、リトラクト機構70により定着ベルト60を感光ドラム50から離間させるように設定したものを用いた。また、記録シートは、その送り間隔Kを図17cで例示するように接離動作の所要時間を確保する程度に広げた状態で搬送した。また、この場合における比較例としては、リトラクト機構70を動作させない場合、つまり前記した比較例と同様のものにした。
さらに、実施の形態3に係る透明コート層形成装置1としては、Lx(L1)=4・Mとなるように設定し、透明トナー層形成用の静電潜像の形成を従来技術のような光量の設定で行った以外は実施の形態1の場合と同じ構成のもの(Lx=n×Mの構成を含む)を使用した。また、この場合における比較例としては、Lx=4・Mとなるように設定を行わない場合、つまり前記した比較例と同様のものにした。
また、実施の形態3に係る別の透明コート層形成装置1として、上記透明トナー層形成用の静電潜像の形成を実施の形態1の場合と同様に、特定の光量Pで露光することにより行うように構成を追加したものを使用した(実施の形態3´)。
図14の結果から、実施の形態1の場合は、先行の記録シートが定着ニップ部Nを通過する際に定着ベルト60の速度変動、さらには感光ドラム50の速度変動が発生し、その際に透明トナー層用の静電潜像を形成するための露光が行われていても、感光ドラム50における静電潜像の電位(VL)の変動は比較例に比べて低減されることが確認できる。特に坪量の大きい記録シートを使用した場合に、より有効であることが認められる。
また、図15の「実施の形態1」の場合として示すように、先行の記録シートが定着ニップ部Nから排出されるときに露光部位(HP)に相当する部位のグロスむらの状況を観測したところ、露光部位(HP)でのグロスむらは少ない結果が得られたため、所望の効果が得られていることが確認された。なお、実施の形態1の場合において上記記録シートにおける現像部位(DP)および転写部位(TP)に相当する部位のグロスむらについて評価していないのは、本実施形態1の装置の原理上有利な効果が得られず比較例と同レベルであるという理由によるものである。
また、実施の形態2の場合は、実施の形態2による効果に加えて、記録シートの後端部が定着ニップ部から排出されるときのリトラクト機構70による離間動作を行う構成により、図15の「実施の形態2」の場合として示すように、先行の記録シートが定着ニップ部Nから排出されるときにそのシートにおける露光部位(HP)および現像部位(DP)に相当する部位でのグロスむらの状況を観測したところ、その露光部位および現像部位におけるグロスむらの発生が少なくなっていることがわかる。このことから、実施の形態2の場合には、その潜像電位が安定し、しかも現像むらもほとんどないことが推認できる。なお、実施の形態2の場合において転写部位のグロスむらについて評価していないのは、先行の記録シートの後端部が定着ニップ部から排出されるときには上記離間動作が行われるため、図17cに評価対象として示す記録シート12´(5)の転写部位(TP)に相当する部位には透明トナー層の転写が行われず、透明トナー層が存在しないことから評価対象から除いたものである。
さらに、実施の形態3の場合は、Lx(L1)=4・Mと設定していることにより、図15の「実施の形態3」の場合として示すように、先行の記録シートが定着ニップ部Nから排出されるときに評価対象となる記録シートに透明トナー層を転写している部位(TP)の位置を、その透明トナー層を転写していない画像間(インターイメージ部)である記録シートの後端部に移動することができた。これにより、その転写部位(TP)には透明トナー層そのものが存在しないためグロスむらも発生しない。なお、実施の形態3の場合において上記記録シートにおける露光部(HP)および現像部位(DP)に相当する部位のグロスむらについて評価していないのは、本実施形態3の装置の原理上有利な効果が得られず比較例と同レベルであるという理由によるものである。
以上の実施形態1〜3の各装置は、記録シートの厚さや搬送向きやサイズが異なる他のプリントジョブの条件に応じて任意に組み合わせても有効である。たとえば、前述した実施の形態3´のようにLx=n×Mの構成と露光量について特定する構成を採用した場合には、図15の「実施の形態3´」の場合として示すように、先行の記録シートにおける転写部位(TP)および露光部位(HP)に相当する部位でのグロスむらの発生が低減されて有効であることがわかる。また、実施の形態3におけるLx=n×Mの構成と実施の形態1におけるリトラクト機構の構成とを組み合わせた場合には、透明トナー層の転写部位(TP)の位置を透明トナー層を転写していない画像間(インターイメージ部)である記録シートの端部に移動することによって、実施の形態2においてリトラクト機構によっても上記転写部位(TP)に透明トナー層を転写できない問題も解消することが可能となる。
1…透明コート層形成装置、1A…透明トナー層形成部、1B…定着部、2,60…定着ベルト、3、61〜64…支持ロール、4、65…定着ロール、5…感光体、6,51…帯電装置、7,52…露光装置、8,53…現像装置、9,54…転写装置、10…有色トナー像形成部、11…加熱定着部、12…記録シート、12b…後端部、13…像担持体、14,30…中間転写体、15…画像形成装置、16,70…(リトラクト)機構、20…感光ドラム(像担持体)、50…感光ドラム(感光体)、N…定着ニップ部、CT…透明トナー層、YT…有色トナー像、CC…透明コート層、VL…潜像電位、Vrp…残留電位、Vh…帯電電位。