以下、本発明の実施の形態について実施例などを挙げつつ説明する。
[実施の形態1]
図1は、本発明の実施の形態1に係る光沢付与装置1Aおよびこれを適用したカラー画像形成装置10Aの概要を示す説明図である。
このカラー画像形成装置10Aは、大別すると、図示するように有色トナー像形成装置11と定着装置12とを備えている。有色トナー像形成装置11は、矢印方向に回転する感光ドラム20の周囲に、帯電装置21、像露光装置22、現像装置23、中間転写ベルト30、第1転写装置24、第2転写装置32、34等をほぼこの順で配置して構成されている。定着装置12は、後記する光沢付与装置1で構成されている。
像露光装置22は、通常、画像読取装置としてのカラースキャナでカラー原稿40の画像を読み取った画像データを画像処理装置45で所定の処理をした後に得られる画像信号に基づいて露光を行うものである。像露光装置22は、図示しないパーソナルコンピュータ等の外部接続機器から送信して入力される画像データから生成される画像信号に基づいて露光を行うことも可能になっている。
カラースキャナは、搬送移動するまたはプラテンガラス上に載置固定されるカラー原稿40の画像を光源41によって照明し、そのときの原稿40からの反射光を図示しない光学素子を介してCCD等からなるカラー画像読取素子43上に入力させることにより、カラー原稿40の画像をRGBの画像信号として読み取るように構成されている。このカラースキャナで読み取られた画像信号は、画像処理装置45において所定の画像処理が施された後、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の色成分の画像信号として像露光装置22に送られる。
像露光装置22は、たとえば、半導体レーザ22aと、f−θレンズやポリゴンミラー等からなる走査光学系22b等を備えたレーザビーム走査式露光装置(ROS)として構成されている。そして、この像露光装置22では、その半導体レーザ22aから画像信号に応じて変調された状態で出射されるレーザビーム光LBを、走査光学系22bを介して感光ドラム20上に走査露光する。
感光ドラム20の表面は、上記画像露光に先立って、帯電装置21としての帯電ロールやスコロトロン等により所定の電位に一様に帯電される。その後、感光ドラム20の帯電された表面には、像露光装置22によってイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックに対応する各色の画像露光が順次行われ、対応する色成分の静電潜像が形成される。
感光ドラム20は、特に制限はなく公知のものを使用することができる。具体的には、有機感光材料からなる感光層を形成したものが使用されるが、必要に応じて無機感光材料からなる感光層を形成したものを使用してもよい。
感光ドラム20上に順次形成される各色の静電潜像は、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの各有色トナーを収容した現像器23Y、23M、23C、23Kを回転可能な支持体にその回転周方向に沿って順次配設し、その各現像器のうち現像に必要な現像器を感光ドラム20に対向させるように支持体を回転させることで移動させる、いわゆるロータリー式現像装置23によってそれぞれ現像される。これにより、感光ドラム20上には、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの各有色トナーからなる有色トナー像が順次形成される。
この現像装置23で使用される有色トナー(シアントナー、マゼンタトナー、イエロートナー、ブラックトナー)はいずれも、少なくとも結着樹脂と所定の着色剤を含有してなる絶縁性の微粒子(粉体)である。有色トナーの粒径は、特に限定されないが、像露光装置22により形成される静電潜像を忠実に現像して再現できる観点からすると、4〜8μmの範囲であることが望ましい。この有色トナーは、現像装置23による現像方式等に応じて、トナーとキャリアからなる二成分現像剤や、トナーのみからなる一成分現像剤として構成される。このような有色トナーとしては、公知の製法によって製造したものを使用するか、あるいは、市販品のものを使用する。
感光ドラム20に順次形成される4色の有色トナー像は、感光ドラム20に接するような状態で矢印方向に回転する中間転写ベルト30に、転写ロール、コロトロン等の第一転写装置24によって形成される転写電界により、互いに重ね合わせた状態で静電的に一次転写される。中間転写ベルト30は、ポリイミド等の誘電体に、所望の電位半減時間を示すように調整するため導電性カーボン等の導電性無機粉、ポリアニリン等の導電性有機材料等を分散した材料にて形成される誘電体層を形成したものである。この中間転写ベルト30は、上記転写装置としての転写ロール24を含む複数の支持ロール31〜33に張架された状態で掛け回されている。支持ロール32は二次転写装置を構成するバックアップロールとして使用され、支持ロール33は駆動ロールとして使用される。
中間転写ベルト30に多重転写された有色トナー像YTは、二次転写装置を構成する二次転写ロール34と前記バックアップロール32との間に印加される二次転写バイアスによって形成される転写電界により、その二次転写位置に搬送される記録シートPに対して静電的に二次転写される。記録シートPは、図示しない給紙装置にてレジストロールを経由して所定のタイミングで二次転写位置に搬送される。二次転写装置は、中間転写ベルト30を挟んだ状態で対向して圧接配置されるロール対32、34にて構成される。二次転写ロール32は、少なくとも二次転写実行時期に中間転写ベルト30に当接し、それ以外の時期は中間転写ベルト30から離間するように変位可能に支持されている。図中の矢付一点鎖線は記録シートPの搬送経路を示す。
以上のように未定着の有色トナー像YTが転写された記録シートPは、定着装置12としての光沢付与装置1A(の透明トナー層形成手段の転写部)にむけて搬送される。
光沢付与装置1Aは、大別すると、図1や図2に示すように透明トナー層形成手段2と転写手段3とベルト定着手段4とで構成されている。
透明トナー層形成手段2は、回転する感光ドラム50の周囲に、帯電装置51、像露光装置52、透明用現像装置53等がこの順で設置されている。この透明トナー層形成手段2は、前記有色トナー像の形成動作に連動させて所定のタイミングで透明トナー層の形成動作を開始する。
上記感光ドラム50は、基本的に前記有色トナー像形成装置11における感光ドラム20と同じ構成からなるものであり、図示しない駆動装置により矢印方向に回転するようになっている。この感光ドラム50は、透明トナー層形成時になると、所定の速度で回転し始め、その感光層が帯電ロール等からなる帯電装置51により一定の電位に一様に帯電された後、LEDアレイ(発光ダイオード素子)からなる露光装置52により露光されることにより一定の電位からなる透明トナー層形成用の静電潜像が形成される。この際、露光装置52は、有色トナー像形成装置11における記録シートPに関する情報(そのサイズ、種類、厚さなど)や画像処理装置45の画像情報を入手し、それらの情報に応じた所望の透明トナー層を形成するための静電潜像を形成する露光を行うように構成するとよい。
感光ドラム50に形成された静電潜像は、透明用現像装置53から現像ロール53aを介して供給される透明トナーにより現像される。このときの現像は、感光ドラム50と現像ロール53aの間に印加される現像バイアス電圧にて形成される現像電界により、現像ロール53a上に静電的に担持された(帯電した)透明トナーが感光ドラム50の潜像部分に移動して付着することで行われる。この現像により、感光ドラム50上に一定の厚さからなる透明トナー層CTが形成される。この透明トナー層CTは、記録シートPの表面全体と同じ大きさに形成するか、あるいは、その表面の一部となる大きさ(例えば、有色トナー像YTの大きさに相応させた大きさ)に形成される。
上記透明トナーとしては、有色トナーの製造に使用される結着樹脂を用いて形成する微粒子が使用される。その結着樹脂としては、実質的に透明であればよく、目的に応じて適宜選択される。具体的には、例えば、ポリエステル系樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリアクリル樹脂、その他のビニル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリウレア系樹脂などの一般トナー用に用いられる公知の樹脂とその重合体が使用可能である。このなかでも、低温定着性、定着強度、保存性などの特性を同時に満足し得る点でポリエステル系樹脂が好ましい。
また、透明トナーの粒径は、特に限定する必要はないが、有色トナー像を乱さないという観点からは8〜20μmの範囲が望ましい。その粒径が8μm未満の場合には、現像装置53と感光体ドラム50の間に高い電界を印加する必要がある。反対に20μmを越えると、一様な透明トナー像を形成することが困難となる。透明トナーは、二成分現像剤として構成することも可能であるが、その現像剤を構成するキャリアが透明トナー層の形成に際して定着ベルト60に転移してそのベルト表面の平滑性を損なうという不具合を未然に防ぐことができる観点からは、一成分現像剤として構成することが好ましい。
さらに、透明トナーは、高い光沢度をムラなく均一に付与する観点からすると、トナーの流動性と帯電性を適宜制御することが必要になる。その制御のためには、透明トナーの粒子表面に無機微粒子、樹脂微粒子の一方または双方を外添ないし付着させることが好ましい。
その無機微粒子としては、トナーの外添剤として用いられている公知の微粒子の中から目的に応じて適宜選択したものを同様に用いることができるが、例えば、シリカ、二酸化チタン、酸化すず、酸化モリブデンなどが挙げられる。また、帯電性などの安定性を考慮し、これらの無機微粒子に対して、シランカップリング剤、チタンカップリング剤等を用いて疎水化処理を施したものも使用できる。一方、上記有機微粒子としては、トナーの外添剤として用いられている公知の微粒子の中から目的に応じて適宜選択して使用することができるが、例えば、ポリエステル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリアクリル系樹脂、ビニル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリウレア系樹脂、フッ素系樹脂などが挙げられる。上記無機微粒子及び有機微粒子の平均粒径は0.005〜1μmであることが好ましい。これは、前記平均粒子径が0.005μm未満であると、透明トナーの表面に当該無機微粒子及び/又は樹脂微粒子を付着させたときに凝集がおこり所望の効果が得られないことがあり、反対に1μmを越えると、より高光沢な画像を得ることが困難になるためである。
また、転写手段3は、透明トナー層形成手段1Aにおける感光ドラム50に接して回転するとともに、図示しないバイアス電源から転写バイアスが印加される転写ロール55により構成されている。
さらに、ベルト定着手段4は、支持ロール61、62に張架されて矢印方向に回転する無端状の定着ベルト60と、この定着ベルト60の外周面に、前記有色トナー像YTを担持した記録シートPをそのトナー像担持面が当接する状態で導入して加熱加圧する定着ニップ部Nを形成する第1定着ロール65および第2定着ロール66からなる定着ロール対と、定着ニップ部Nを通過した後の定着ベルト60と記録シートP(有色トナー像を含む)を冷却する冷却装置68とで主に構成されている。
定着ベルト60は、無端状のベルト基材上に、トナー等に対する良好な剥離性を付与する観点等から、シリコーン樹脂、フッ素系樹脂等からなる表面層を形成したものである。また、このベルト60の外周面は、定着するトナー像等の表面を微小な凹凸を無くして平滑にするという高光沢の付与という観点から、好ましくは、75度光沢度計で測定したときの表面の光沢度が60度以上となるように形成される。また、この定着ベルト60は、図示しない駆動モータからの駆動力により回転駆動する第1定着ロール65により回転するようになっている。
第1定着ロール65および第2定着ロール66は、中空のロール体からなるものであり、図示しない加圧機構により所定の加圧力で(定着ベルト60を挟んで)圧接されるように設置されているとともに、その各ロールの中空内部に定着ニップ部Nにおける温度が所定の定着温度に加熱して維持するための加熱源を設置している。冷却装置68は、放熱部材(ヒートシンクなど)、空冷装置、ヒートパイプ等にて構成されるものであり、第1定着ロール65と支持ロール62との間となる定着ベルト60の内周面に接触した状態で設置される。また、支持ロール62は、第1定着ロール65よりも小径のものを使用し、定着ベルト60に密着して搬送される記録シートPを支持ロール62の通過部分でその自らの腰の強さにより剥離させるように構成している。
また、この光沢付与装置1Aでは、有色トナー像形成装置11で有色トナー像YKが転写された記録シートPを光沢付与装置1の転写部にまで搬送する第1シート搬送装置90を設置するとともに、透明トナー層形成手段2と転写手段3において透明トナー像が転写された記録シートPをベルト定着手段4の定着ニップ部Nにまで搬送する第2シート搬送装置92を設置している。この第1シート搬送装置90と第2シート搬送装置91はいずれも、記録シートPを載せて搬送する搬送ベルト92を複数の支持ロール(1つは駆動ロールである)93、94に張架させてシート搬送方向に回転させる構成になっている。
そして、このような構成からなる光沢付与装置1Aにおいては、前記有色トナー像形成装置11で有色トナー像YKが転写された記録シートPを、中間転写ベルト30から剥離した後、第1シート搬送装置90の搬送ベルト91により透明トナー層形成手段1Aにおける感光ドラム50と転写ロール55との間(転写部)に導入するように搬送する。
この転写部に導入された記録シートPには、前述したように感光ドラム50上に形成された透明トナー層CTが、転写ロール55と感光ドラム50の間に形成される転写電界により静電的に転写される。これにより、未定着の有色トナー像YKの上に透明トナー層CTが転写される。
続いて、透明トナー層CTが転写された未定着の有色トナー像YKを担持する記録シートPは、感光ドラム50から剥離して転写部から排出されると、第2搬送装置91の搬送ベルト91によりベルト定着手段1Cの定着ニップ部Nに導入されるように搬送される。
定着ニップ部Nでは、未定着の有色トナー像YTおよび透明トナー層CTを担持する記録シートPが加熱加圧される。これにより、透明トナー層CTが有色トナー像とともに記録シートPに熱定着される。また、定着ニップ部Nを通過したシートPは、定着ベルト60に密着した状態のままで搬送され、冷却装置68を通過する際に冷却された後、支持ロール62の通過部分で定着ベルト60から剥離される。
これにより、記録シートPの有色トナー像YTの担持面に透明なコート層がコーティングされた状態の記録シートPが得られる。このようにして得られた画像は、透明トナー層CTが形成されることと定着ベルト60の平滑表面の状態が転写されることが相俟って高い光沢が付与されたものとなる。また、有色トナー像は、2度の定着工程を経ることなく、透明トナー層とともにベルト定着されるため、その有色トナー像の画質が損なわれることがない。さらに、その透明トナー層からなるコート層は、微細な凹凸も発生しない平滑な層として形成されるため、光沢性に優れたものとなる。
なお、上記光沢付与装置1Aは、図2に示すように、独立した装置として構成することもできる。この場合には、有色トナー像YTを記録シートPに形成することができる画像形成装置と適宜組み合わせて使用される。また、その場合、有色トナー像YKが転写された記録シートPは、有色トナー像の転写後、その画像形成装置が本来備える定着装置を通すことなく(具体的には、その定着装置を通さないシート搬送路を設けて搬送路を切り替えるように構成する)、その画像形成装置に接続する光沢付与装置1に例えば前記したような第1搬送装置90などを利用して搬送するように構成する。
[実施の形態2]
図3は、実施の形態2に係る光沢付与装置およびカラー画像形成装置の概要を示す説明図である。この実施の形態2に係る光沢付与装置1Bおよびカラー画像形成装置10Bは、仮定着が可能な第1定着装置35と搬送路の切替が可能な切替式搬送装置95とを定着装置12Bの一部として追加して設けた以外は実施の形態1の各装置1A、10Aと同じ構成からなるものである。
第1定着装置35は、回転可能に固定設置される第1定着ロール(主に加圧用のロール)36と、この第1定着ロール36に対して接離可能に上下動する第2定着ロール(主に加熱用のロール)37とで構成されるものであり、有色トナー像形成装置11の二次転写部の出口側近傍に設置される。
この第1定着装置35は、図示しないシステム制御部により、有色トナー像を担持する記録シートに透明トナー層を形成するときには(仮定着を行うために)第2定着ロール37が第1定着ロール36から所定の距離だけ離間するように作動し、また、その透明トナー層を形成しないときには(本定着を行うために)第2定着ロール37が第1定着ロール36に当接してロールニップ部を形成するように作動するように制御される設定になっている。
切替式搬送装置95は、まず前記第1搬送装置90の支持ロール93、94に張架されて回転する搬送ベルト92を、第1定着装置35から排出される記録シートPを光沢付与装置1に搬送するための搬送ベルトとして使用するとともに、そのシート搬送方向と直交する方向に間隔をあけて複数平行に並べた状態で設置する第1分割搬送ベルトとしている。そして、この第1分割搬送ベルト92どうしの間に、支持ロール93を共通に使用するとともにその支持ロール93を中心にして上下方向に揺動する第2分割搬送ベルト96を設置したものである。この第2分割搬送ベルト96は、前記支持ロール93以外に例えば上記方向に揺動する変位支持ロール97に支持している。
この切替式搬送装置95は、図示しないシステム制御部により、有色トナー像を担持する記録シートに透明トナー層を形成するときには第2分割搬送ベルト97が下方に移動して第1分割搬送ベルト92と並んだ(格納された)状態となって前記仮定着された後の記録シートを透明トナー層形成手段2に搬送するように作動し、また、その透明トナー層を形成しないときには上方に移動して第1分割搬送ベルト92とは異なる搬送路を形成する状態となって前記本定着された後の記録シートを図示しない排出部に搬送するように作動するように制御される設定になっている。
次に、この第1定着装置35と切替式搬送装置95を設けた光沢付与装置1Bおよびカラー画像形成装置10Bの主な動作について説明する。
まず、画像形成装置10Bの操作パネル等の操作部におけるユーザの操作指示により、前記有色トナー像形成装置11において有色トナー像YTが転写された記録シートPに透明トナー層を形成しないで通常(非光沢付与)の画像形成を行う場合には、第1定着措置35における第2定着ロール37が下方に移動することにより第1定着ロール36に当接してロールニップ部を形成した状態となり、また、切替式搬送装置95における第2分割搬送ベルト96が上方に揺動して所定の位置で停止し「通常排出モード」に切り替わる。
これにより、有色トナー像形成装置11の二次転写位置で有色トナー像YTが転写された記録用紙Pは、中間転写ベルト30から剥離した後に第1定着装置35の定着ロール36、37で形成される定着ニップ部に送り込まれて加熱加圧されることにより有色トナー像YTが本定着される。次いで、その本定着された記録シートPは、切換式搬送装置95における第2分割搬送ベルト96により排出部にむけて搬送排出される。
一方、前記ユーザの操作指示により、有色トナー像YTが転写された記録シートPに透明トナー層を形成する光沢付与の画像形成を行う場合には、第1定着装置35における第2定着ロール37が少なくとも記録シートの厚さと有色トナー像YTの最大厚さとを合計した厚さ寸法を超える距離程度だけ(実際は1mm程度でも十分である)上方に移動することにより第1定着ロール36から離間して微小な隙間を形成した状態となり、また、切替式搬送装置95における第2分割搬送ベルト96が下方に揺動して第1分割搬送ベルト92と並んだ状態となる位置で停止し「光沢付与排出モード」に切り替わる。
これにより、有色トナー像形成装置11の二次転写位置で有色トナー像YTが転写された記録用紙Pは、中間転写ベルト30から剥離した後に第1定着装置35の定着ロール36、37の間の隙間を通過するように送り込まれて加熱される(加圧はほとんどされない)ことにより有色トナー像YTが仮定着される。すなわち、有色トナー像YTは押しつぶれることなく単に溶融した状態になる。次いで、その仮定着された記録シートPは、切換式搬送装置95における第1分割搬送ベルト92および第2分割搬送ベルト96により実施の形態1の場合と同様に光沢付与装置1Aに導入されるように搬送される。その後は、実施の形態1の場合と同様に、その仮定着された有色トナー像YTを担持した記録シートPに透明トナー層CTが転写された後にベルト定着される。
このような第1定着装置35と切換式搬送装置95を定着装置12Bの一部として追加して設けることにより、実施の形態1における作用効果に加えて、次のような作用効果が併せて得られる。
特に、光沢付与の画像形成を行う場合には、記録シートPに転写された有色トナー像YTが、透明トナー層CTの転写前に、第1定着装置35において加熱による仮定着されるため、そのトナー像YTの表面段差が小さくなり、この結果、光沢付与装置1Bにおける透明トナー層CTの転写が、ホロキャラクタなどの発生もなく良好に行われるようになる。また、記録シートPに転写された有色トナー像YTは、加圧をしない仮定着により、本定着のように押しつぶされて画質が劣化してしまう問題もない。また、光沢付与をしない通常の画像形成動作(有色トナー像YTが転写された記録シートPを本定着した後にそのまま排出する動作)を行うことも可能である。
[実施の形態3]
図4および図5は、実施の形態3に係る光沢付与装置およびカラー画像形成装置の概要を示す説明図である。この実施の形態3に係る光沢付与装置1Cおよびカラー画像形成装置10Cは、透明トナー層形成手段2の転写手段3Bとしてベルト式の転写装置を適用した以外は実施の形態2の各装置1B、10Bと同じ構成からなるものである。
ベルト式の転写装置(3B)は、2つの支持ロール(片方が駆動ロール)57a、57bによって前記切替式搬送装置95の送り出し側とベルト定着手段4の定着ニップ部Nの手前側までの間で張架され、有色トナー像YTを担持する記録シートPを感光ドラム50の転写位置を通過させるように搬送する無端状の搬送ベルト56と、この搬送ベルト56の感光ドラム50と対向する内周面側の位置に設置され、図示しない電源から転写電圧が印加される転写用コロトロン58と、このコロトロン58のうち搬送ベルト56の回転方向上流側となる部位の上方位置において、転写電界のおよぶ領域を調整しつつ、搬送ベルト56をその内周面側から押し上げて感光ドラム50の転写位置に当接させるように揺動するバッフル59とで構成されている。
上記搬送ベルト56としては、誘電体からなる材料であるものが使用される。コロトロン58への転写電圧の印加は、透明トナー層の転写時よりも前から行われ、これにより搬送ベルト56の内周面が帯電して記録シートPを搬送ベルト56に静電吸着させるようになっている。
次に、このベルト式の転写装置(3B)を設けた光沢付与装置1Cおよびカラー画像形成装置10Cの主な動作について説明する。
光沢付与の画像形成動作を行う場合には、トナー像形成装置11の二次転写位置で有色トナー像YTが転写された記録用紙Pは、中間転写ベルト30から剥離した後に第1定着装置35において仮定着された後、切換式搬送装置95の第1分割搬送ベルト92および第2分割搬送ベルト96により光沢付与装置1Aに導入されるように搬送される。
この切換式搬送装置95により搬送される仮定着後の記録シートPは、ベルト式の転写装置におけるコロトロン58からの放電により帯電した搬送ベルト56に静電的に吸着された状態で保持され、感光ドラム50の転写位置を通過するように搬送される。この通過の際に、コロトロン58に再度転写電圧が印加されることにより、感光ドラム50の透明トナー層CTが記録シートPの仮定着後の有色トナー像担持面に対して静電的に転写される。この透明トナー層CTが転写された記録シートPは、搬送ベルト56の保持された状態のままで排出された後、ベルト定着手段4の定着ニップ部Nの手前で搬送ベルト56から剥離される。その後、転写された未定着の透明トナー層CTと先に仮定着された有色トナー像YTとを担持する記録シートPがベルト定着手段4で実施の形態1、2の場合と同様にベルト定着される。
このようなベルト式の転写装置を転写手段3Bとして適用することにより、実施の形態1、2における作用効果に加えて、次のような作用効果が併せて得られる。
特に、有色トナー像YKを担持した記録シートPが搬送ベルト56に保持されて確実かつ安定した状態で感光ドラム50の転写位置を通過するようになり、この結果、その感光ドラム50上の透明トナー層CTを記録シートP側に位置ずれすることなく良好かつ正確に静電転写させることが可能となる。また、実施の形態1、2のように転写ロール55を使用する場合に比べて、各トナー像やトナー層を加圧してつぶすことがなく、特に透明トナー層を的確に転写することができ、ホロキャラクタの発生を低減することができる。
なお、上記光沢付与装置1C(第1定着装置35と切換式搬送装置95は除く部分)は、図5に示すように、独立した装置として構成することもできる。この場合には、有色トナー像YTを記録シートPに形成することができる画像形成装置と適宜組み合わせて使用される。また、その場合、有色トナー像YKが転写された記録シートPは、有色トナー像の転写後、その画像形成装置が本来備える定着装置を通すことなく(具体的には、その定着装置を通さないシート搬送路を設けて搬送路を切り替えるように構成する)、その画像形成装置に接続する光沢付与装置1Cに例えば前記したような第1搬送装置90などを利用して搬送するように構成する。
また、実施の形態3に係る画像形成装置10おいては、第1定着装置35と切換式搬送装置95を設けることなく、常に光沢付与の画像形成動作を行うように構成してもよい。この場合、有色トナー像形成装置11の二次転写部と光沢付与装置1Cの間には、有色トナー像YTが二次転写された記録シートPを搬送するため、実施の形態1の場合と同様の第1搬送装置90などを設置すればよい。
[実施の形態4]
図6は、実施の形態4に係る光沢付与装置およびカラー画像形成装置の概要を示す説明図である。この実施の形態4に係る光沢付与装置1およびカラー画像形成装置10Cは、透明トナー層形成手段2の転写手段3Cとして有色トナー像形成装置11の二次転写部にもおよぶベルト式の2連転写装置を適用した以外は実施の形態3の各装置1C、10Cと同じ構成からなるものである。
このベルト式の2連転写装置(3C)は、実施の形態3におけるベルト式転写装置(3B)のうちの搬送ベルト62を有色トナー像形成装置11の二次転写部にもおよぶまで延長して設けたような形態のものである。すなわち、搬送ベルト71は、二次転写ロール(34)としての第1支持ロール72と支持ロール73によってその二次転写位置からベルト定着手段4の定着ニップ部Nの手前側までの間で張架され、給紙装置から搬送される記録シートPを二次転写位置と感光ドラム20の転写位置とを連続して通過させるように搬送する無端状のベルトである。
また、その搬送ベルト71の感光ドラム50と対向する内周面側の位置には、図示しない電源から転写電圧が印加される転写用コロトロン74を配置している。さらに、実施の形態3の転写装置と同様のバッフル59を設けている。なお、搬送ベルト71は、第1支持ロール72によって、二次転写ロール34の場合と同様に、バックアップロール32に支持されている中間転写ベルト30部分に対して接離可能に変位するように支持されている。
次に、このベルト式の2連転写装置(3C)を設けた光沢付与装置1Dおよびカラー画像形成装置10Dの主な動作について説明する。
有色トナー像形成装置11における有色トナー像YTの記録シートPへの二次転写は、中間転写ベルト30と搬送ベルト71が当接するニップ部に記録シートPが搬送されて送り込まれることで行われる。すなわち、中間転写ベルト30上の有色トナー像YTが、搬送ベルト71に静電的に吸着保持された記録シートPに対して転写電界により静電的に転写される。
続いて、有色トナー像YTが二次転写された記録シートPは、搬送ベルト71に吸着保持されているため中間転写ベルト30から良好に剥離されるとともに、その搬送ベルト71に吸着保持されたままで感光ドラム50の転写位置を通過するように搬送される。その通過の際に、コロトロン74により帯電された搬送ベルト71と感光ドラム50との間で静電的作用が発生し、感光ドラム50の透明トナー層CTが記録シートPの未定着有色トナー像の担持面に対して静電的に転写される。この透明トナー層CTが転写された記録シートPは、搬送ベルト71の保持された状態のままで排出された後、ベルト定着手段4の定着ニップ部Nの手前で搬送ベルト71から剥離される。その後、未定着の透明トナー層CTが転写され、未定着の有色トナー像YTを担持する記録シートPがベルト定着手段4で実施の形態1、2の場合と同様にベルト定着される。
このようなベルト式の2連転写装置(3C)を設けることにより、実施の形態3における作用効果(仮定着による作用効果は除く)に加えて、さらに次のような作用効果が併せて得られる。
特に、記録シートPが搬送ベルト71に保持された状態のままで、最初に有色トナー像形成装置11において有色トナー像YTが転写され、次いで透明トナー層形成手段2において透明トナー層CTが転写される。これにより、記録シートPはスキューした状態や位置ずれした状態になることがほとんどなく安定した姿勢でかつ正確なタイミングで2つの転写位置を通過するように搬送されるようになり、しかも、そのように搬送される記録シートP上に有色トナー像YTと透明トナー層CTとをほとんど位置ずれすることなく正確に重ね合わせることができる。
また、二次転写後における記録シートPの中間転写ベルト30からの剥離が安定して行われるようになり、画質が安定するようになるとともに、その記録シートPが光沢付与装置1側に正確に安定して搬送されるようになる。さらに、記録シートPとしてサイズや厚さなどが異なるものを種々使用することが多い用途の場合には、その種々の記録シートがいずれも上述したように良好に搬送されるようになり有効である。このような効果が得られるのは、このベルト式の2連転写装置(3C)では、主に、記録シートPが薄紙であったり小サイズであるときであっても、その中間転写ベルト30からの剥離がそのシート先端部および後端部で剥離角度が互いに異なることもなく安定することや、その剥離角度が異なることによる画質が劣化する部位が発生することもなく良好になされることにためである。
<評価試験>
次に、実施の形態1〜4に係る光沢付与装置1A〜1Dおよびカラー画像形成装置10〜10Dをそれぞれ用いて以下のような評価試験を行った。
評価試験は、まずカラー画像形成装置10の有色トナー像形成装置11において坪量が異なる2種の記録シートA,Bに対してテスト用の有色トナー像YKを形成した後、光沢付与装置1においてその各記録シートの像担持面に透明トナー層を各構成の内容で形成すると同時にベルト定着を行った。そして、そのときに得られた各画像を観察し、図7に示すように、表面光沢性の状態、有色トナー像のつぶれ状態や、有色トナー像の二次転写直後における面内の粒状むら状態、ホロキャラの発生状況、透明トナー層の文字画像回りに対する転写不良の状況、透明トナー層の位置ずれ状況について調べた。
この際、上記の各評価項目については、得られた各画像や表面状態などを目視により観察して評価するという官能試験により調べた。なお、有色トナー像の二次転写直後における面内の粒状むら状態についてはカメラで撮影したトナー像の粒状態を計算により求めることで調べた。上記官能試験は、20人の評価者により以下の5段階評価を行った。1:非常に悪い。2:悪い。3:普通。4:良い。5:非常に良い。次いで、評価者全員の評価結果(5段階の1〜5の数値を合計した結果)の平均値を求め、その平均値について以下の基準で最終的な評価を行った。このときの結果を図7に示す。なお、図7の図表中において「−」が記載された欄は、評価項目についての評価が不要であり、その評価をしてない場合を示す。
◎:5の場合。
○:4の場合。
△:2以上かつ4未満の場合。
×:2未満の場合。
また、この試験においては、記録シートA,Bとして、坪量が105gsmと105gsmからなるA6版サイズのアート紙(新王子製紙製:OK特アート紙)を使用し、いずれも縦送りを適用した。現像装置23の有色トナーとしては富士ゼロックス製:A−Color用のシアン現像剤、マゼンタ現像剤、イエロー現像剤、ブラック現像剤を用いた(平均粒径はいずれも7μmであった)。現像する有色トナーの重量は、各色とも画像信号Cin:100%の部分で0.5(mg/cm2) とした。中間転写体30としては、導電性カーボン粒子を分散したポリイミド樹脂からなる無端状ベルト(半減時問は0.1 秒)を用いた。そして、テスト用の有色トナー像YKは、人物写真の画像データに基づいて形成した。この有色トナー像の形成は、カラー複写機(富士ゼロックス製:Docu Centre Color 500)を使用した。
一方、光沢付与装置1については、実施の形態1に係るものとして、透明トナー層形成手段2の露光装置52を、テスト用有色トナー像の画像情報に連動させて透明トナー層CTのサイズや形成領域などを適合させるように制御した。また、転写手段3の転写電流についても、テスト用有色トナー像の画像情報に連動させて電流値や印加タイミングを制御した。さらに、ベルト定着手段4において、その定着ロール65に、A3版サイズの記録シートPを縦送りしたときの送り幅を加熱することが可能な加熱ランプ、即ち軸方向に分割した2本の加熱ランプを設置し、送り幅が小さい記録シートに対して定着を行う際には、その片方の加熱ランプのみを点灯させかつその軸方向の半分の領域は加熱しないように制御した。その定着ニップ部Nでは、記録シート上の有色トナー像と透明トナー層を重ね合わせた状態で110〜200℃の温度で加熱加圧するようにした。その加熱加圧後は冷却装置68の通過により50〜95℃まで冷却させ、その冷却した後に記録シートを定着ベルト60から剥離させるように設定した。
透明トナーとしては、以下の一成分現像剤として製造したものを使用した。まず、透明トナーの結着樹脂として、テレフタル酸/ビスフェノールAエチレンオキサイド付加物/シクロヘキサンジメタノールから得た線状ポリエステル(モル比=5:4:1、ガラス転移温度Tg=62℃、数平均分子量Mn=4500、重量平均分子量Mw=10000)を用い、これをジェットミルで粉砕した後、風力式分級機で分級することでd50=11μmの透明微粒子を作製した。次いで、この透明微粒子100重量部に下記の2種類の無機微粒子A及びBを高速混合機で混合することにより付着させた。無機微粒子Aとしては、Si02(シランカップリング剤で表面を疎水化処理、平均粒径0.05μm、添加量1.0重量部)を用いた。無機微粒子BはTi02( シランカップリング剤で表面を疎水化処理、平均粒径0.02μm、屈折率2.5、添加量1.0重量部) である。
比較例として、前記テスト用有色トナー像を形成するために使用したカラー複写機を、その本来装備するロールニップ式の定着装置をそのまま使用する構成としたうえで、同じ記録シートに同じ有色トナー像を形成した後、ロールニップ式の定着装置による定着を行い、その得られた画像について同様の評価試験を行った。結果を図7に併せて示す。
また、実施の形態2に係る画像形成装置10Bにおいては、第1定着装置35の第1定着ロール36として金属製の中空ロール体に耐熱性シリコーンゴム層を形成し、そのロール体内部に加熱ランプを設置したものを用いた。その第2定着ロール37としては、金属製の中空ロール体にシリコーン樹脂層を形成し、そのロール体内部に加熱ランプを設置したものを用いた。第1定着ロール36の加熱温度は150℃、第2定着ロール37の加熱温度は180℃になるように設定した。そして、第2定着ロール37は、仮定着時には、第1定着ロール36から約1mmの隙間が形成される程度に離間させるように設定した。
また、実施の形態3に係る光沢付与装置12Cにおいては、そのベルト式の転写手段3Bにおける搬送ベルト56としては、市販のポリイミド(呉羽化学工業社製:KFシートA)からなるベルトを使用した。その体積抵抗について10-13Ωとなるように調製した。
実施の形態4に係る画像形成装置10Dの搬送ベルト71としては、上記搬送ベルト56と同じ材質のものを使用した。
図7に示す結果から、まず表面光沢性についてみると、各実施の形態1〜4の場合のようにベルト定着手段を適用することにより、ロールニップ式の定着装置を適用する比較例に比べて、良好な結果が得られることがわかる。
次に、有色トナー像の評価結果についてみると、そのつぶれ状況に関しては仮定着を行う実施の形態2を除いて他の実施の形態1〜2、4の場合につぶれのない画質が得られた。また、その粒状むら状況に関しては、特に記録シートを二次転写部から透明トナー層転写部まで搬送ベルトに保持した状態のままで搬送通過させる実施の形態4において良好な結果が得られた。
次に、透明トナー層の評価結果についてみると、そのホロキャラや転写不良の状況に関しては、実施の形態2のように透明トナー層の転写前に有色トナー像を仮定着をすると良好な結果が得られることがわかる。また、その位置ずれの状況に関しては、実施の形態4のように記録シートを二次転写部から透明トナー層転写部まで搬送ベルトに保持した状態のままで搬送通過させるようにすると、最も良好な結果が得られた。
1A〜1D…光沢付与装置、2…透明トナー層形成手段、3A〜3C…転写手段、4…ベルト定着手段、10A〜10D…カラー画像形成装置、11…有色トナー像形成装置、12A〜12D…定着装置、20…感光ドラム(像担持体)、35…第1定着装置(仮定着の手段)、50…感光ドラム(像担持体)、60…中間転写ベルト(中間転写体)、56、71…搬送ベルト、58,74…コロトロン(静電転写手段)、60…定着ベルト、P…記録シート、YT…有色トナー像、CT…透明トナー層。