JP2005265151A - リング保持装置およびその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】 樹脂製のフロントハウジング18でリングギヤ27を保持させる要求があるが、リングギヤ27の内部ストレスによってリングギヤ27とともにフロントハウジング18も変形してしまうため、従来ではフロントハウジング18をコストのかかる金属で形成する必要があった。
【解決手段】 リングギヤ27の外周縁は、樹脂材料よりなるフロントハウジング18によって外周側より強固に保持されるものであり、フロントハウジング18を成す樹脂材料の内部には、リングギヤ27の径が伸びる方向Aに対して直交する方向Bに繊維物質が配向されるものである。フロントハウジング18は樹脂材料であるため、成形後に樹脂が硬化する際に収縮力が発生する。樹脂は、繊維物質の配向方向Bには収縮しにくいが、繊維物質の配向方向に対して直交する方向Dに大きな収縮力が発生する。これによって、リングギヤ27の楕円化が抑えられ、リングギヤ27の真円を保つことができる。
【選択図】 図1

Description

本発明は、内部ストレスによって一方向に径が伸びて変形する金属製のリング部材と、そのリング部材を外周側から保持する保持部材とを備えたリング保持装置および製造方法に関するものであり、特に内歯歯車であるリングギヤ(リング部材)を外周側から固定保持する技術に用いて好適なものである。
(従来の技術)
例えば、金属を圧延加工した金属板(例えば、圧延鋼帯板)をプレスの打ち抜き加工によって真円のリング部材(例えば、リングギヤ)を形成すると、打ち抜き前に金属板に与えられていた内部ストレスによってリング部材が真円から楕円に変形することが知られている。
従来は、アルミニウム等の金属材料よりなる保持部材(例えば、ケーシング)に、内周円が真円となる円筒圧入部(嵌合壁)を形成しておき、その内周にリング部材の外周縁を嵌め入れる(例えば、圧入嵌合)ことで、リング部材の変形(楕円化)を防いでいた(例えば、特許文献1参照)。
(従来の技術の不具合)
保持部材を金属材料で形成する場合、保持部材の材料コスト、保持部材の加工コスト、およびリング部材と保持部材の組付けコストによって、リング保持装置のコストが上昇する不具合がある。
そこで、リングギヤを樹脂製の保持部材の内部にインサート成形し、樹脂製の保持部材でリングギヤを保持させる要求がある。
しかし、樹脂材料はアルミニウム等の金属材料に比較して変形し易いため、リング部材に残っている内部ストレスによってリング部材とともに樹脂製の保持部材も変形し、リング部材が楕円化する不具合が生じる。例えば、リング部材の一例としてリングギヤを示すと、リングギヤの内部ストレスによってリングギヤが楕円化すると、内側で噛合するギヤとの噛合精度が低下する不具合が生じて、ギヤの伝達効率が低下して伝達ロスが生じてしまう。
特開2000−274494号公報
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、樹脂材料よりなる保持部材でリング部材を保持する構成を採用しても、リング部材の有する内部ストレスによってリング部材が楕円化することのないリング保持装置およびその製造方法の提供にある。
[請求項1の手段]
請求項1の手段を採用するリング保持装置は、リング部材の外周縁が、樹脂材料よりなる保持部材に保持されるものであり、保持部材の樹脂材料の内部には、リング部材の径が伸びる方向に対して直交する方向に繊維物質が配向されているものである。
樹脂材料は、保持部材の成形後に樹脂が硬化する過程において樹脂に収縮力が発生する。一方、繊維物質が一方向に向けて配向された樹脂は、繊維物質の配向方向には収縮しにくく、繊維物質の配向方向に対して直交する方向へ大きな収縮力が発生する。この作用によって、樹脂製の保持部材は、リング部材の径が伸びる方向とは逆方向に縮む力が発生する。
このように、リング部材の径が伸びる方向とは逆方向に、樹脂製の保持部材に縮む力が生じるため、リング部材の径の伸びが逆に保持部材の収縮力によって押さえつけられることになり、両者の打消合いによってリング部材の楕円化を防ぐことができる。
保持部材を樹脂製にできるため、保持部材の材料コストおよび保持部材の加工コストを抑えることができる。また、保持部材の成形時にリング部材をインサート成形することにより、リング部材と保持部材の組付けコストを抑えることができる。
[請求項2の手段]
請求項2の手段を採用するリング保持装置のリング部材はリングギヤである。
これによって、保持部材を樹脂材料で設けても、リングギヤの楕円化を抑えることができ、リングギヤの楕円化によって生じるギヤの伝達効率の低下を防ぐことができる。
[請求項3の手段]
請求項3の手段を採用するリング保持装置におけるリングギヤは、遊星歯車装置の一部品である。
これによって、遊星歯車装置においてリングギヤを保持する部分(リング保持装置)のコストを下げることができ、結果的に遊星歯車装置のコストを下げることができる。
[請求項4の手段]
請求項4の手段を採用するリング保持装置におけるリングギヤは、内接噛合遊星歯車減速機の一部品である。
これによって、内接噛合遊星歯車減速機においてリングギヤを保持する部分(リング保持装置)のコストを下げることができ、結果的に内接噛合遊星歯車減速機のコストを下げることができる。
[請求項5の手段]
請求項5の手段を採用するリング保持装置の製造方法は、リング部材を保持部材の成形型の内部に配置し、成形型の内部に樹脂を流し込んで保持部材を成形するものであり、リング部材の径が伸びる方向に対して直交する方向から、繊維物質が配合された樹脂を成形型内に流し込むものである。
このように、リング部材の径が伸びる方向に対して直交する方向から、繊維物質が配合された樹脂を成形型内に流し込むことにより、リング部材の径が伸びる方向に対して直交する方向に繊維物質を配向できる。
リング保持装置は、内部ストレスによって一方向に径が伸びて変形する金属製のリング部材と、このリング部材を保持する保持部材とからなる。
リング部材の外周縁は、樹脂材料よりなる保持部材に保持されるものであり、 保持部材の樹脂材料の内部には、リング部材の径が伸びる方向に対して直交する方向に繊維物質が配向されている。
本発明を自動変速機のシフトレンジ切替装置(パーキング切替機構の切替装置を含む)においてシフトレンジ切り替えのための動力を発生する回転式アクチュエータに適用した実施例1を図1〜図15を参照して説明する。
(シフトレンジ切替装置の説明)
シフトレンジ切替装置は、回転式アクチュエータ1(図4参照)によって、車両用自動変速機2(図5参照)に搭載されたシフトレンジ切替装置3(パーキング切替装置4を含む:図6参照)を切り替えるものである。
回転式アクチュエータ1は、シフトレンジ切替装置3を駆動するサーボ機構として用いられるものであり、同期電動機5(以下、電動機と称す)と内接噛合遊星歯車減速機6(以下、減速機と称す)によって構成される。なお、図4の右側をフロント(あるいは前)、左側をリヤ(あるいは後)としてこの実施例を説明する。
(電動機5の説明)
電動機5を図4、図7を参照して説明する。
この実施例の電動機5は、永久磁石を用いないSRモータ(スイッチド・リラクタンス・モータ)であり、回転自在に支持されるロータ11と、このロータ11の回転中心と同軸上に配置されたステータ12とで構成される。
ロータ11は、ロータ軸13とロータコア14で構成されるものであり、ロータ軸13は前端と後端に配置された転がり軸受(フロント転がり軸受15、リヤ転がり軸受16)によって回転自在に支持される。
なお、フロント転がり軸受15は、減速機6の出力軸17の内周に配置されたものであり、減速機6の出力軸17はフロントハウジング18の内周に配置されたメタルベアリング19によって回転自在に支持されている。つまり、ロータ軸13の前端は、フロントハウジング18に設けられたメタルベアリング19→出力軸17→フロント転がり軸受15を介して回転自在に支持される。
ここで、メタルベアリング19の軸方向の支持区間は、フロント転がり軸受15の軸方向の支持区間にオーバーラップするように設けられている。このように設けることによって、減速機6の反力(具体的には、後述するサンギヤ26とリングギヤ27の噛合にかかる負荷の反力)に起因するロータ軸13の傾斜を回避することができる。
一方、リヤ転がり軸受16は、リヤハウジング20によって支持されるものである。
ステータ12は、ステータコア21およびコイル22(具体的には、コイル22A〜22L:図7参照)から構成される。
ステータコア21は、薄板を多数積層して形成されたものであり、リヤハウジング20に固定されている。このステータコア21には、内側のロータコア14に向けて30度毎に突設されたステータティースが設けられており、各ステータティースのそれぞれにはコイル22A〜22Lが巻回されている。ここで、コイル22A、22D、22G、22JがU相であり、コイル22B、22E、22H、22KがV相であり、コイル22C、22F、22I、22LがW相である。
一方、ロータコア14は、薄板を多数積層して形成されたものであり、ロータ軸13に圧入固定されている。このロータコア14には、外周のステータコア21に向けて45度毎に突設された突極24が設けられている。そして、図7の状態からW相→V相→U相の順番に通電を切り替えるとロータ11が反時計回り方向に回転し、逆にV相→W相→U相の順番に通電を切り替えるとロータ11が時計回り方向に回転するものであり、U、V、W相の通電が一巡する毎にロータ11が45度回転する構成になっている。
(減速機6の説明)
減速機6を図4、図8〜図10を参照して説明する。
減速機6は、遊星歯車装置の一種であり、ロータ軸13(減速機6において入力軸に相当する)に設けられた偏心部25を介してロータ軸13に対して偏心回転可能な状態で取り付けられたサンギヤ26(インナーギヤ:外歯歯車)と、このサンギヤ26が内接噛合するリングギヤ27(アウターギヤ:内歯歯車)と、サンギヤ26の自転成分のみを出力軸17に伝達する伝達手段28とを備える。
偏心部25は、ロータ軸13の回転中心に対して偏心回転してサンギヤ26を揺動回転させる軸であり、偏心部25の外周に配置された中間転がり軸受31を介してサンギヤ26を回転自在に支持するものである。
サンギヤ26は、上述したように、中間転がり軸受31を介してロータ軸13の偏心部25に対して回転自在に支持されるものであり、偏心部25の回転によってリングギヤ27に噛合した状態で回転するように構成されている。リングギヤ27はフロントハウジング18に固定されるものであり、その詳細は後述する。
伝達手段28は、出力軸17と一体に回転するフランジ33の同一円周上に形成された複数の内ピン穴34と、サンギヤ26に形成され、内ピン穴34にそれぞれ遊嵌する複数の内ピン35とによって構成される。
複数の内ピン35は、サンギヤ26のフロント面に突出する形で設けられている。
複数の内ピン穴34は、出力軸17の後端に設けられたフランジ33に設けられており、内ピン35と内ピン穴34の嵌まり合いによって、サンギヤ26の自転運動が出力軸17に伝えられるように構成されている。
このように設けられることにより、ロータ軸13が回転してサンギヤ26が偏心回転することにより、サンギヤ26がロータ軸13に対して減速回転し、その減速回転が出力軸17に伝えられる。なお、出力軸17は、シフトレンジ切替装置3のコントロールロッド45(後述する)に連結される。
なお、この実施例とは異なり、複数の内ピン穴34をサンギヤ26に形成し、複数の内ピン35をフランジ33に設けて構成しても良い。
(シフトレンジ切替装置3の説明)
シフトレンジ切替装置3を図6を参照して説明する。
シフトレンジ切替装置3(パーキング切替装置4を含む)は、上述した減速機6の出力軸17によって切り替え駆動されるものである。
自動変速機2における各シフトレンジ(P、R、N、D)の切り替えは、油圧コントロールボックス41に設けられたマニュアルスプール弁42を適切な位置にスライド変位させることによって行われる。
一方、パーキング切替装置4のロックとアンロックの切り替えは、パークギヤ43の凹部43aとパークポール44の凸部44aの係脱によって行われる。なお、パークギヤ43は、図示しないディファレンシャルギヤを介して図示しない自動変速機2の出力軸に連結されたものであり、パークギヤ43の回転を規制することで車両の駆動輪がロックされて、パーキングのロック状態が達成される。
減速機6によって駆動されるコントロールロッド45には、略扇形状を呈したディテントプレート46が図示しないスプリングピン等を打ち込むことで取り付けられている。
ディテントプレート46は、半径方向の先端(略扇形状の円弧部)に複数の凹部46aが設けられており、油圧コントロールボックス41に固定された板バネ47が凹部46aに嵌まり合うことで、切り替えられたシフトレンジが保持されるようになっている。
ディテントプレート46には、マニュアルスプール弁42を駆動するためのピン48が取り付けられている。
ピン48は、マニュアルスプール弁42の端部に設けられた溝49に係合しており、ディテントプレート46がコントロールロッド45によって回動操作されると、ピン48が円弧駆動されて、ピン48に係合するマニュアルスプール弁42が油圧コントロールボックス41の内部で直線運動を行う。
コントロールロッド45を図6中矢印A方向から見て時計回り方向に回転させると、ディテントプレート46を介してピン48がマニュアルスプール弁42を油圧コントロールボックス41の内部に押し込み、油圧コントロールボックス41内の油路がD→N→R→Pの順に切り替えられる。つまり、自動変速機2のレンジがD→N→R→Pの順に切り替えられる。
逆方向にコントロールロッド45を回転させると、ピン48がマニュアルスプール弁42を油圧コントロールボックス41から引き出し、油圧コントロールボックス41内の油路がP→R→N→Dの順に切り替えられる。つまり、自動変速機2のレンジがP→R→N→Dの順に切り替えられる。
一方、ディテントプレート46には、パークポール44を駆動するためのパークロッド51が取り付けられている。パークロッド51の先端には円錐部52が設けられている。 この円錐部52は、自動変速機2のハウジングの突出部53とパークポール44の間に介在されるものであり、コントロールロッド45を図6中矢印A方向から見て時計回り方向に回転させると(具体的には、R→Pレンジ)、ディテントプレート46を介してパークロッド51が図6中矢印B方向へ変位して円錐部52がパークポール44を押し上げる。すると、パークポール44が軸44bを中心に図6中矢印C方向に回転し、パークポール44の凸部44aがパークギヤ43の凹部43aに係合し、パーキング切替装置4のロック状態が達成される。
逆方向へコントロールロッド45を回転させると(具体的には、P→Rレンジ)、パークロッド51が図6中矢印B方向とは反対方向に引き戻され、パークポール44を押し上げる力が無くなる。パークポール44は、図示しないねじりコイルバネにより、図6中矢印C方向とは反対方向に常に付勢されているため、パークポール44の凸部44aがパークギヤ43の凹部43aから外れ、パークギヤ43がフリーになり、パーキング切替装置4がアンロック状態になる。
(回転角度検出装置60の説明)
回転角度検出装置60を図4、図7、図11〜図15を参照して説明する。
上述した回転式アクチュエータ1には、そのハウジング(フロントハウジング18+リヤハウジング20)内に、ロータ11の回転角度を検出する回転角度検出装置60が搭載されている。この回転角度検出装置60によってロータ11の回転角度を検出することにより、電動機5を脱調させることなく高速運転することが可能になる。
この回転角度検出装置60は、インクリメンタル型エンコーダであり、ロータ11と一体に回転する磁石61と、リヤハウジング20に配置される磁気検出用の磁気検出素子62(具体的には、第1〜第3磁気検出素子62A、62B、62Z)と、この磁気検出素子62をリヤハウジング20内において支持する基板63とを備える。
磁石61は、略リング円板形状を呈するものであり、ロータ軸13と同芯上に配置されるものであり、図11に示されるように、ロータコア14の軸方向の端面に接合されている。
磁石61は、ロータコア14に接合された後、図12に示されるように、磁気検出素子62と対向する面(後面)に回転位置検出用の着磁が施される。この着磁は、磁石61の軸方向に磁力が発生するように着磁されるものであり、この着磁によって、図13に示すように、回転方向にN極とS極とが多極繰り返すようになる。
具体的な着磁について説明する。
図13に示されるように、磁石61の外周側には、7.5度ピッチでN極とS極とが繰り返して着磁された外周着磁部が設けられており、この外周着磁部における回転方向のN極とS極との繰り返しによって、第1、第2磁気検出素子62A、62Bからロータ11の精密な回転角度を検出するためのA相、B相出力(図15参照)が得られる。
磁石61の内周側には、45度間隔にS極が着磁され、その回転方向の両脇にN極が着磁された内周着磁部61aが設けられており、この内周着磁部61aにおける45度間隔の磁極変化によって、第3磁気検出素子62Zから電動機5の同期信号を得るためのZ相出力(図15参照)が得られる。
第1〜第3磁気検出素子62A、62B、62Zは、通過する磁束量に応じた出力を発生するホール素子と、そのホール素子の出力を増幅する増幅回路とからなるホールICである。なお、この実施例では、磁気検出素子62の一例としてホールICを用いる例を示すが、ホールICに代えてホール素子、MRIC等の磁束変化を検出する素子を用いても良い。
第1、第2磁気検出素子62A、62Bは、A相、B相をそれぞれ検出するものであり、磁石61の外周着磁部に対向する円周上に配置されて、外周着磁部の磁束変化によってA相出力およびB相出力を得るものである。
第3磁気検出素子62Zは、Z相を検出するものであり、磁石61の内周着磁部61aに対向する円周上に配置されて、内周着磁部61aの磁束変化によってZ相出力を得るものである。
次に、図15(A)、(B)を用いて回転角度検出装置60によるA相、B相、Z相の出力波形について説明する。
A相およびB相は、電気角で90度の位相差を持った出力信号であり、本実施例ではロータ11が15度回転する毎にA相とB相がそれぞれ1周期出力されるように構成されている。
Z相は、ロータ11が45度回転する毎に1回ずつ出力するインデックスパルスであり、このZ相によって電動機5の通電相と、A相、B相の相対位置関係を定義できる。
(ECU70の説明)
ECU70を図5を参照して説明する。
ECU70は、乗員によって操作されるレンジ操作手段(図示しない)、回転角度検出装置60によって検出されるロータ11の回転角度等に基づいて電動機5の回転を制御し、減速機6を介して駆動されるシフトレンジ切替装置3を切替制御するものである。
なお、図5中に示す符号71は車載バッテリ、符号72はシフトレンジおよび回転式アクチュエータ1の状態を示す表示装置類(通常運転時の視覚表示手段、警告灯、警告ブザー等)、符号73は電動機5の給電回路、符号74は車速センサ、符号75はレンジ操作手段、ブレーキスイッチ、その他の車両状態を検出するセンサ類を示す。
〔実施例1の特徴〕
減速機6に用いられるリングギヤ27は、金属を所定の厚みに圧延加工した金属板(圧延鋼帯板等)をプレスの打ち抜き加工によって真円のリングギヤ27にしたものである。このように形成されたリングギヤ27は、リングギヤ27を打ち抜く前に金属板に与えられていた内部ストレスによって、真円から楕円に変形してしまう。
具体的に、打ち抜き加工されたリングギヤ27には、図1に示すように、圧延方向とは逆の方向A’に縮む内部ストレスが加わっており、打ち抜き後に外部から加圧しない自然状態で放置しておくと、方向A’に径が縮み、これと直交する方向Aに径が伸びて楕円化する。
従来では、アルミニウム合金製のフロントハウジング18に、内周円が真円となる円筒壁81を形成しておき、その内周にリングギヤ27の外周縁を嵌め入れ、リングギヤの外周に複数設けられた爪部27aの周囲の部材(フロントハウジング18の金属)を潰して爪部27aをフロントハウジング18に固定することで、リングギヤ27の変形(楕円化)を防ぎつつ、リングギヤ27の固定を実施していた。
しかし、フロントハウジング18をアルミニウム合金などの金属で形成する場合、フロントハウジング18の材料コスト、フロントハウジング18の加工コスト、およびリングギヤ27とフロントハウジング18の組付けコストによって、製造コストが上昇する不具合がある。
そこで、金属製のリングギヤ27を樹脂製のフロントハウジング18内にインサート成形させる要求がある。
しかし、樹脂材料は変形し易いため、リングギヤ27に残っている内部ストレスによってリングギヤ27とともに樹脂製で設けたフロントハウジング18も変形してしまう。そして、リングギヤ27が楕円化すると、内側で噛合するサンギヤ26との噛合精度が低下し、ギヤの伝達効率が低下して減速機6において伝達ロスが生じてしまう。
本実施例は、上記の不具合を無くすべく構成されたものであり、その特徴を図1〜図3を参照して説明する。
リングギヤ27はリング部材に相当するものであり、このリングギヤ27を固定するフロントハウジング18は保持部材に相当するものである。
リングギヤ27の外周縁は、樹脂材料よりなるフロントハウジング18によって覆われ、フロントハウジング18に強固に保持されている。具体的にリングギヤ27は、樹脂製のフロントハウジング18内にインサート成形されたものであり、リングギヤ27の外周縁が、インサート成形時に形成されたフロントハウジング18の円筒壁81内に覆われて、フロントハウジング18に固定されている。この構成によって、リングギヤ27の径方向の変形力がフロントハウジング18に伝えられる。逆の言い方をすれば、フロントハウジング18の径方向の変形力がリングギヤ27に伝えられる構造になっている。
なお、この実施例におけるフロントハウジング18の外周には、フロントハウジング18とリヤハウジング20とを組付けるための複数の固定リブ82、および回転式アクチュエータ1を車両の車体に組付けるための複数の取付ステー83が形成されている。各取付ステー83には、締結用ボルトを挿通するための筒状座金84がインサート成形されている。
フロントハウジング18を成す樹脂材料(例えば、PPS)の内部には、多数の繊維物質がムラなく混入されている。樹脂材料に混入された繊維物質の大半は、リングギヤ27の径が伸びる方向Aに対して直交する方向Bに長手方向が向くよう配向されている。
繊維物質は、一方向に伸びる微細径(円である必要はない)の硬質な繊維であり、例えばガラス繊維、カーボン繊維等が用いられる。
樹脂材料と繊維物質の混入割合は、成形後の樹脂の収縮力およびリングギヤ27の楕円化する変形力に応じて配合されるものであり、例えば樹脂材料85〜70重量%に対し、15〜30重量%ほどである。
フロントハウジング18は、次の工程によって製造される。
金属板から打ち抜きで形成されたリングギヤ27、筒状座金84などのインサート部品をフロントハウジング18の成形型の内部に配置する。このとき、リングギヤ27の径が伸びる方向Aは、打ち抜き前の金属板の方向などから予めわかっているため、図1に示すように、リングギヤ27の径が伸びる方向Aが、成形型の内部に樹脂を注入する樹脂注入方向CまたはC’に対して直交する方向へ配置される。
次に、成形型の樹脂注入口から、注入方向C(またはC’)に向けて、繊維物質がムラなく混入された樹脂を成形型の内部に注入する。この注入工程において、樹脂に混入された繊維物質の長手方向は、樹脂の流れ方向に向くため、樹脂に混入された大半の繊維物質の長手方向は、リングギヤ27の径が伸びる方向Aに対して直交する方向Bに配向される。
その後、成形型の内部よりリングギヤ27がインサート成形されたフロントハウジング18が取り出され、フロントハウジング18の製造が完了する。なお、リングギヤ27をインサート成形したフロントハウジング18をリヤ側から見た図を図1、リングギヤ27をインサート成形したフロントハウジング18の軸方向に沿う断面図を図2、フロントハウジング18をフロント側から見た図を図3に示す。
この実施例に示すリングギヤ27の外周に等間隔で設けた複数の爪部27aは、成形型への組付けの際にリングギヤ27の位置決めとして用いられるとともに、フロントハウジング18内にモールドされて、フロントハウジング18とリングギヤ27の剥離を防ぎ、且つリングギヤ27とフロントハウジング18の回転方向の結合力を高めるように作用する。
〔実施例1の効果〕
回転式アクチュエータ1に搭載される減速機6は、上述したように、リングギヤ27の外周縁が、樹脂材料よりなるフロントハウジング18によって外周側より強固に保持されるものであり、フロントハウジング18を成す樹脂材料の内部には、リングギヤ27の径が伸びる方向Aに対して直交する方向Bに繊維物質が配向されるものである。
ここで、フロントハウジング18を成す樹脂は、製造後に硬化する過程において収縮力が発生するが、繊維物質の配向方向Bには収縮しにくいが、繊維物質の配向方向Bに対して直交する方向Dには大きな収縮力が発生する。即ち、樹脂製のフロントハウジング18には、リングギヤ27の径が伸びる方向Aに抗する逆方向Dの縮む力が発生する。
このように、リングギヤ27の径が伸びる方向Aとは逆方向Dに、樹脂製のフロントハウジング18に縮む力が生じるため、リングギヤ27の径の伸びが逆にフロントハウジング18の収縮力によって押さえつけられることになり、両者の打消合いによってリングギヤ27の楕円化が防がれ、リングギヤ27の真円を長期に亘って保つことができる。
このように、リングギヤ27を金属板から打ち抜きによって形成してコストを抑えることができる。
また、フロントハウジング18を樹脂材料で設けてもリングギヤ27の楕円化を抑えることができ、リングギヤ27の楕円化によって生じる減速機6の伝達効率の低下を防ぐことができる。
さらに、リングギヤ27の楕円化を防いでフロントハウジング18を樹脂製にできるため、フロントハウジング18の材料コスト、フロントハウジング18の加工コスト、およびリングギヤ27とフロントハウジング18の組付けコストを抑えることができ、減速機6のコストを抑えることができ、結果的に回転式アクチュエータ1のコストを抑えることができる。
〔変形例〕
上記の実施例では、本発明をサイクロイド式の減速機6(内接噛合遊星歯車減速機)に適用する例を示したが、サンギヤ、このサンギヤの外周に噛み合う複数のプラネタリピニオン、この複数のプラネタリピニオンの外周側で噛み合うリングギヤ27等によりなる遊星歯車装置のリングギヤ27の固定技術に本発明を適用しても良い。
上記の実施例では、シフトレンジ切替装置における回転式アクチュエータ1の減速機6に本発明を適用する例を示したが、リダクション型スタータの減速歯車機構など、他の歯車装置のリングギヤ27の固定技術に本発明を適用しても良い。
上記の実施例では、リング部材の一例としてリングギヤ27を用いる例を示したが、内周にセンサ突起を有するリング部材の固定技術に適用するなど、他のリング部材の固定技術に本発明を適用しても良い。
フロントハウジングをリヤ側から見た図である。 フロントハウジングの軸方向に沿う断面図である。 フロントハウジングをフロント側から見た図である。 回転式アクチュエータの断面図である。 シフトレンジ切替装置のシステム構成図である。 パーキング切替装置を含むシフトレンジ切替装置の斜視図である。 電動機の正面図である。 減速機をリヤ側から見た斜視図である。 減速機をフロント側から見た斜視図である。 減速機をフロント側から見た分解斜視図である。 磁石が組付けられたロータをリヤ側から見た斜視図である。 磁石が組付けられたロータの断面図である。 着磁状態を示す磁石の平面図である。 基板をリヤ側から見た第1〜第3磁気検出素子の配置図である。 ロータが回転した際におけるA、B、Z相の出力波形図である。
符号の説明
6 内接噛合遊星歯車減速機(遊星歯車装置)
13 ロータ軸(入力軸)
17 出力軸
18 フロントハウジング(保持部材)
25 偏心部
26 サンギヤ
27 リングギヤ(リング部材)
28 伝達手段

Claims (5)

  1. 内部ストレスによって一方向に径が伸びて変形する金属製のリング部材と、
    このリング部材を保持する保持部材と、
    を備えるリング保持装置において、
    前記リング部材の外周縁は、樹脂材料よりなる前記保持部材に保持されるものであり、 前記保持部材の樹脂材料の内部には、前記リング部材の径が伸びる方向に対して直交する方向に繊維物質が配向されていることを特徴とするリング保持装置。
  2. 請求項1に記載のリング保持装置において、
    前記リング部材は、内周面に内歯が多数形成されたリングギヤであることを特徴とするリング保持装置。
  3. 請求項2に記載のリング保持装置において、
    前記リングギヤは、遊星歯車装置の一部品であることを特徴とするリング保持装置。
  4. 請求項3に記載のリング保持装置において、
    前記遊星歯車装置は、
    前記保持部材によって固定された前記リングギヤと、
    回転する入力軸に設けられ、当該入力軸に対して偏心回転する偏心部と、
    前記リングギヤに噛合するとともに、前記偏心部の偏心回転を受けて揺動回転するサンギヤと、
    このサンギヤの自転成分のみを出力軸に伝達する伝達手段と、
    を備えた内接噛合遊星歯車減速機であることを特徴とするリング保持装置。
  5. 請求項1〜請求項4のいずれかに記載のリング保持装置において、
    前記保持部材は、前記リング部材を前記保持部材の成形型の内部に配置し、前記成形型の内部に樹脂を流し込んで成形するものであり、
    前記リング部材の径が伸びる方向に対して直交する方向から、繊維物質が配合された樹脂を前記成形型内に流し込むことを特徴とするリング保持装置の製造方法。
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